(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111246
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】チップ抵抗器
(51)【国際特許分類】
H01C 1/148 20060101AFI20240808BHJP
H01C 1/032 20060101ALI20240808BHJP
H01C 7/00 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
H01C1/148 Z
H01C1/032
H01C7/00 110
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024100461
(22)【出願日】2024-06-21
(62)【分割の表示】P 2020087482の分割
【原出願日】2020-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 太郎
(72)【発明者】
【氏名】溝上 利文
(57)【要約】
【課題】外部メッキ層の剥がれを防止して耐食性に優れたチップ抵抗器を提供する。
【解決手段】本発明のチップ抵抗器1は、一対の表電極3上における絶縁基板2の端面から離反した領域に、抵抗体5の全体を覆う保護膜11との境界位置を超えて該保護膜11の端部に重なる補助導電膜8が設けられており、この補助導電膜8の抵抗値は表電極3と端面電極9の抵抗値に対して高く設定されており、外部メッキ層10は補助導電膜8を覆って該補助導電膜8と保護膜11の境界位置まで延びている。補助導電膜8は、表電極3から離反した位置で保護膜11の端部上に形成された第1補助導電膜80と、第1補助導電膜80の一部を覆って表電極3に接触する第2補助導電膜81との2層構造からなり、第1補助導電膜80がカーボン系の導電材料で形成されていると共に、第2補助導電膜81が金属系の導電材料で形成されている。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体形状の絶縁基板と、前記絶縁基板の表面両端部に設けられた一対の表電極と、前記絶縁基板の裏面両端部に設けられた一対の裏電極と、一対の前記表電極に跨るように設けられた抵抗体と、前記表電極と前記抵抗体の接続部分を含めて該抵抗体の全体を覆う絶縁性の保護膜と、少なくとも前記絶縁基板の両端面に延在して前記表電極と前記裏電極を導通する一対の端面電極と、前記端面電極を覆うように設けられると共に、前記表電極と前記保護膜の境界位置を超えて該保護膜の端部まで延びる一対の外部メッキ層と、を備えたチップ抵抗器において、
前記表電極上における前記絶縁基板の端面から離反した領域に、前記保護膜との境界位置を超えて該保護膜の端部に重なる補助導電膜が設けられており、
前記補助導電膜の抵抗値は前記表電極および前記端面電極の抵抗値に対して高く設定されており、
前記外部メッキ層は前記補助導電膜を覆って該補助導電膜と前記保護膜の境界位置まで延びており、
前記補助導電膜は、前記表電極から離反した位置で前記保護膜の端部上に形成された第1補助導電膜と、前記第1補助導電膜の一部を覆って前記表電極に接触している第2補助導電膜との2層構造からなり、
前記第1補助導電膜がカーボン系の導電材料で形成されていると共に、前記第2補助導電膜が金属系の導電材料で形成されていることを特徴とするチップ抵抗器。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記第1補助導電膜は前記保護膜の上面よりも高い位置となるように設定されていることを特徴とするチップ抵抗器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面実装タイプのチップ抵抗器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的にチップ抵抗器は、直方体形状の絶縁基板と、絶縁基板の表面に所定間隔を存して対向配置された一対の表電極と、絶縁基板の裏面に所定間隔を存して対向配置された一対の裏電極と、表電極と裏電極を導通する一対の端面電極と、これら各電極を覆う一対の外部メッキ層と、対をなす表電極どうしを橋絡する抵抗体と、抵抗体を覆う絶縁性の保護膜等によって主に構成されている。
【0003】
この種のチップ抵抗器において、通常、表電極には比抵抗の低いAg(銀)系の金属材料が用いられており、この表電極を覆うように外部メッキ層が形成された構成となっているが、外部メッキ層と保護膜の境界部分となる隙間から腐食性の強い硫化ガス等が侵入し易いため、表電極と保護膜の境界位置における表電極部分が硫化ガス等によって腐食されて抵抗値変化や断線等の不具合を招来する虞がある。
【0004】
そこで従来より、
図12(a)に示すように、一対の端面電極100を表電極104と保護膜101の境界位置を超えて保護膜101の端部まで覆うように形成すると共に、外部メッキ層102を保護膜101の端部に密着させることにより、外部メッキ層102と保護膜101との境界部分となる隙間をなくして、表電極104と保護膜101の境界位置における表電極部分が硫化ガスに晒されないようにしたチップ抵抗器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。なお、
図12において、符号103は絶縁基板、符号105は抵抗体、符号106は裏電極をそれぞれ示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の一般的なチップ抵抗器においては、外部メッキ層を形成する場合、無電解めっきに比べて価格的に安くめっき処理時間も短い等の利点を有するため、電解めっきが広く採用されている。かかる電解めっきにおいて、電流は被めっき物である電極表面の等電位面に垂直に流れることから、複雑な形状の被めっき物では電流分布が不均一になり、均一な厚さのメッキ皮膜を形成することが困難となる。
【0007】
前述した
図12(a)に示す構成のチップ抵抗器では、電解めっきによって外部メッキ層102を形成する場合、外部メッキ層102の先端に電流密度が集中するため、
図12(b)に示すように、保護膜101の端部に密着する外部メッキ層102の先端に膜厚部102aが生じ易くなる。そして、このような膜厚部102aが形成されると、保護膜101の端部に密着する外部メッキ層102が、先端の膜厚部102a側から剥がれ易くなるため、結果的に外部メッキ層102と保護膜101の境界部分に隙間ができ、当該部分から硫化ガス等が入り込んでしまうことになる。
【0008】
本発明は、上記した従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、外部メッキ層の剥がれを防止して耐食性に優れたチップ抵抗器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明のチップ抵抗器は、直方体形状の絶縁基板と、前記絶縁基板の表面両端部に設けられた一対の表電極と、前記絶縁基板の裏面両端部に設けられた一対の裏電極と、一対の前記表電極に跨るように設けられた抵抗体と、前記表電極と前記抵抗体の接続部分を含めて該抵抗体の全体を覆う絶縁性の保護膜と、少なくとも前記絶縁基板の両端面に延在して前記表電極と前記裏電極を導通する一対の端面電極と、前記端面電極を覆うように設けられると共に、前記表電極と前記保護膜の境界位置を超えて該保護膜の端部まで延びる一対の外部メッキ層と、を備えたチップ抵抗器において、前記表電極上における前記絶縁基板の端面から離反した領域に、前記保護膜との境界位置を超えて該保護膜の端部に重なる補助導電膜が設けられており、前記補助導電膜の抵抗値は前記表電極および前記端面電極の抵抗値に対して高く設定されており、前記外部メッキ層は前記補助導電膜を覆って該補助導電膜と前記保護膜の境界位置まで延びており、前記補助導電膜は、前記表電極から離反した位置で前記保護膜の端部上に形成された第1補助導電膜と、前記第1補助導電膜の一部を覆って前記表電極に接触している第2補助導電膜との2層構造からなり、前記第1補助導電膜がカーボン系の導電材料で形成されていると共に、前記第2補助導電膜が金属系の導電材料で形成されていることを特徴としている。
【0010】
このように構成されたチップ抵抗器では、保護膜の両端部に表電極との境界位置を超える位置まで延びる補助導電膜が設けられており、この補助導電膜が表電極上における前記絶縁基板の端面から離反した位置で該表電極に接触していると共に、補助導電膜の抵抗値が表電極や端面電極の抵抗値よりも高く設定されている。そして、補助導電膜が、表電極から離反した位置で保護膜の端部上に形成された第1補助導電膜と、第1補助導電膜の一部を覆って表電極に接触している第2補助導電膜との2層構造からなり、第1補助導電膜がカーボン系の導電材料で形成されていると共に、第2補助導電膜が金属系の導電材料で形成されているため、補助導電膜の抵抗値を保護膜側が高くて端面側が低いものにすることができる。これにより、外部メッキ層を電解めっきによって形成する際に、外部メッキ層の先端の電流密度を下げることができるため、外部メッキ層の先端が膜厚部とならず、外部メッキ層の剥がれを防止して耐食性に優れたチップ抵抗器を実現することができる。
【0011】
また、上記構成のチップ抵抗器において、第1補助導電膜が保護膜の上面よりも高い位置となるように設定されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、外部メッキ層の剥がれを防止して耐食性に優れたチップ抵抗器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るチップ抵抗器の断面図である。
【
図2】該チップ抵抗器の製造工程を示す平面図である。
【
図3】該チップ抵抗器の製造工程を示す断面図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係るチップ抵抗器の断面図である。
【
図5】該チップ抵抗器の製造工程を示す平面図である。
【
図6】該チップ抵抗器の製造工程を示す断面図である。
【
図7】本発明の第3の実施形態に係るチップ抵抗器の断面図である。
【
図8】該チップ抵抗器の製造工程を示す平面図である。
【
図9】該チップ抵抗器の製造工程を示す断面図である。
【
図10】本発明の第4の実施形態に係るチップ抵抗器の断面図である。
【
図11】本発明の第5の実施形態に係るチップ抵抗器の断面図である。
【
図12】従来例に係るチップ抵抗器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明の実施の形態について図面を参照しながら説明すると、
図1は第1の実施形態に係るチップ抵抗器1の断面図、
図2は該チップ抵抗器1の製造工程を示す平面図、
図3は該チップ抵抗器1の製造工程を示す断面図である。
【0015】
図1に示すように、第1の実施形態に係るチップ抵抗器1は、直方体形状の絶縁基板2と、絶縁基板2の上面における長手方向の両端部に設けられた一対の表電極3と、絶縁基板2の下面における長手方向の両端部に設けられた一対の裏電極4と、一対の表電極3に跨るように設けられた長方形状の抵抗体5と、表電極3と抵抗体5の接続部分を含めて抵抗体5の全体を覆うアンダーコート層6と、アンダーコート層6を被覆するオーバーコート層7と、オーバーコート層7の両端部に設けられた一対の補助導電膜8と、絶縁基板2の両端面に延在して対応する表電極3と裏電極4を導通する一対の端面電極9と、端面電極9を覆うように設けられた一対の外部メッキ層10とにより主として構成されている。
【0016】
絶縁基板2はセラミックス等からなり、この絶縁基板2は後述する大判の集合基板を縦横に延びる一次分割溝と二次分割溝に沿って分割することにより多数個取りされたものである。
【0017】
表電極3はPd(パラジウム)を1~5wt%含有するAg(銀)系ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成させたものである。同様に、裏電極4もPdを1~5wt%含有するAg系ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成させたものである。
【0018】
抵抗体5は酸化ルテニウム等の抵抗ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成させたものであり、この抵抗体5の長手方向の両端部は表電極3に重なっている。図示省略されているが、抵抗体5には抵抗値を調整するためのトリミング溝が形成されている。
【0019】
アンダーコート層6とオーバーコート層7は2層構造の保護膜11を構成するものである。アンダーコート層6はガラスペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成させたものであり、このアンダーコート層6はトリミング溝を形成する前に抵抗体5を覆うように形成されている。オーバーコート層7はエポキシ樹脂ペーストをスクリーン印刷して加熱硬化(焼付け)させたものであり、オーバーコート層7はトリミング溝を形成した後のアンダーコート層6を覆うように形成されている。
【0020】
補助導電膜8はカーボン系導電フィラーを充填した樹脂ペーストをスクリーン印刷して加熱硬化させたものであり、この補助導電膜8は、オーバーコート層7の端部を覆って、表電極3とオーバーコート層7との境界位置よりも端面寄りの位置に至る範囲に形成されている。
【0021】
端面電極9はニッケル(Ni)/クロム(Cr)等をスバッタリングすることによって形成されたものであり、この端面電極9によって絶縁基板2の端面を介して離間する表電極3と裏電極4とが導通されている。端面電極9は表電極3と補助導電膜8との境界位置を超えて補助導電膜8の側端部まで延びており、補助導電膜8のオーバーコート層7寄りの上面は端面電極9に覆われずに露出している。
【0022】
外部メッキ層10はバリヤー層と外部接続層の2層構造からなり、そのうちバリヤー層は電解めっきによって形成されたNiメッキ層であり、外部接続層は電解めっきによって形成されたSnメッキ層である。この外部メッキ層10は、端面電極9の表面全体と該端面電極9から露出する裏電極4を覆うと共に、端面電極9から露出する補助導電膜8を覆っている。
【0023】
ここで、表電極3や端面電極9は銀やニッケル等の金属系導電材料で形成されているのに対し、補助導電膜8は金属を含まないカーボン系の導電材料で形成されているため、補助導電膜8の抵抗値は表電極3の抵抗値や端面電極9の抵抗値よりも高いものとなっている。すなわち、補助導電膜8の表面の抵抗値についてみると、端面電極9で覆われた端面側が低くて端面電極9から露出するオーバーコート層7側が高くなっているため、外部メッキ層10を電解めっきによって形成する際に、外部メッキ層10の先端の電流密度を下げることができ、外部メッキ層10の先端が膨らんで膜厚部になってしまうことを防止できる。
【0024】
次に、上記の如く構成されたチップ抵抗器1の製造方法について、
図2と
図3を参照しながら説明する。
【0025】
まず、格子状に延びる一次分割溝と二次分割溝が形成された集合基板2Aを準備する。これら一次分割溝と二次分割溝によって集合基板2Aの表裏両面は多数のチップ形成領域に区画され、これらチップ形成領域がそれぞれ1個分の絶縁基板2となる。
図2と
図3には1つのチップ形成領域が代表的に示されているが、実際には、このようなチップ形成領域が格子状に多数配列されている。
【0026】
そして、
図2(a)と
図3(a)に示すように、集合基板2Aの裏面にAg-Pdペーストをスクリーン印刷した後、これを乾燥・焼成することにより、各チップ形成領域の長手方向両端部に所定間隔を存して対向する一対の裏電極4を形成する。また、これと同時あるいは前後して、集合基板2Aの表面にAg-Pdペーストをスクリーン印刷した後、これを乾燥・焼成することにより、各チップ形成領域の長手方向両端部に所定間隔を存して対向する一対の表電極3を形成する。次に、集合基板2Aの表面に酸化ルテニウム等を含有した抵抗ペーストをスクリーン印刷した後、これを乾燥・焼成することにより、両端部を表電極3に重ね合わせた長方形状の抵抗体5を形成する。
【0027】
次に、
図2(b)と
図3(b)に示すように、抵抗体5を覆う領域にガラスペーストをスクリーン印刷してこれを乾燥・焼成することにより、表電極3との接続端部を含めて抵抗体5の全体を被覆するアンダーコート層6を形成する。そして、このアンダーコート層6の上からレーザー光を照射することにより、抵抗体5に不図示のトリミング溝を形成して抵抗値を調整した後、アンダーコート層6の上からエポキシ樹脂ペーストをスクリーン印刷して加熱硬化(焼付け)することにより、アンダーコート層6の全体と表電極3の端部を被覆するオーバーコート層7を形成する。なお、これらアンダーコート層6とオーバーコート層7によって2層構造の保護膜11が形成される。
【0028】
次に、カーボン系の導電フィラーを充填した樹脂ペーストをスクリーン印刷して加熱硬化することにより、
図2(c)と
図3(c)に示すように、オーバーコート層7の両端部を所定幅で覆う一対の補助導電膜8を形成する。これら補助導電膜8は、オーバーコート層7の端部を覆って、表電極3とオーバーコート層7との境界位置よりも端面寄りの位置に至る範囲に形成されるため、補助導電膜8は表電極3と接続するように形成される。
【0029】
これまでの工程は集合基板2Aに対する一括処理であるが、次なる工程では、集合基板2Aを一次分割溝に沿って短冊状に一次分割することにより、チップ形成領域の長手方向を幅寸法とする短冊状基板2Bを得る。
【0030】
次に、この短冊状基板2Bの分割面に向けてNi/Crをスパッタリングすることにより、
図2(d)と
図3(d)に示すように、表電極3と裏電極4を導通する一対の端面電極9を形成する。その際、端面電極9は表電極3と補助導電膜8との境界位置を超えて補助導電膜8の側端部まで形成されるが、補助導電膜8のオーバーコート層7寄りの上面は端面電極9に覆われない。
【0031】
次に、短冊状基板2Bを二次分割溝に沿って複数のチップ状基板2Cに2次分割した後、これらチップ状基板2Cに対して電解ニッケルめっきと電解スズめっきを順次施すことにより、
図2(e)と
図3(e)に示すように、端面電極9と裏電極4を被覆する外部メッキ層10を形成してチップ抵抗器1が完成する。この外部メッキ層10は、Niメッキ層とSnメッキ層の2層構造からなり、端面電極9の表面全体と該端面電極9から露出する裏電極を覆うと共に、端面電極9から露出する補助導電膜8を覆うように形成される。
【0032】
このように第1の実施形態に係るチップ抵抗器1では、オーバーコート層(保護膜)7の両端部に表電極3との境界位置を超える位置まで延びる補助導電膜8が設けられており、この補助導電膜8の抵抗値が表電極3や端面電極9の抵抗値よりも高く設定されているため、電解めっきを施して外部メッキ層10を形成する際に、外部メッキ層10の先端の電流密度を補助導電膜8によって下げることができる。その結果、外部メッキ層10の先端が膨らんで膜厚部になってしまうことはなく、均一厚に形成された外部メッキ層10の先端がオーバーコート層7の端部に密着した構成となるため、膜厚部に起因する外部メッキ層10の剥がれを防止することができ、耐食性(特に耐硫化特性)の高いチップ抵抗器1を実現することができる。
【0033】
図4は第2の実施形態に係るチップ抵抗器20の断面図であり、
図1に対応する部分には同一符号を付してある。
図4に示す第2の実施形態が
図1に示す第1の実施形態と相違する点は、端面電極9のうち、表電極3を覆う上面部9aと裏電極4を覆う下面部9bおよび絶縁基板2の端面を覆う側面部9cとが別方向からのスパッタリングによって形成されることにあり、それ以外の構成は基本的に同じであるため、ここでは重複説明を省略する
【0034】
以下、第2の実施形態に係るチップ抵抗器20の製造方法について、
図5と
図6を参照しながら説明する。なお、このチップ抵抗器20の製造工程において、
図5(a)と
図6(a)に示した補助導電膜8の形成工程までは第1実施形態例と同じであり、
図5と
図6はそれ以降の工程を示している。
【0035】
すなわち、抵抗体5を覆うようにアンダーコート層6とオーバーコート層7からなる2層構造の保護膜11を形成した後、カーボン系導電フィラーを充填した樹脂ペーストをスクリーン印刷して加熱硬化することにより、
図5(a)と
図6(a)に示すように、オーバーコート層7の両端部を所定幅で覆う一対の補助導電膜8を形成する。
【0036】
次に、オーバーコート層7の表面に水等で洗い流せるマスキングペーストをスクリーン印刷して乾燥することにより、
図5(b)と
図6(b)に示すように、一対の補助導電膜8で挟まれたオーバーコート層7の露出部位を覆うマスキング12を形成する。この時、マスキング12は補助導電膜8とオーバーコート層7との境界部分を超えて補助導電膜8の一部を覆うように形成されるが、補助導電膜8の端面寄りの上面はマスキング12に覆われずに露出している。同様に、集合基板2Aの裏面側についても、一対の裏電極4で挟まれた集合基板2Aの露出部位を覆うマスキング13を形成する。
【0037】
次に、集合基板2Aの上面に向けて垂直方向にNi/Crをスパッタリングすることにより、
図5(c)と
図6(c)に示すように、集合基板2Aの表面側に露出する表電極3と補助導電膜8およびマスキング12を覆う端面電極9の上面部9aを形成する。同様に、集合基板2Aの下面に向けて垂直方向にNi/Crをスパッタリングすることにより、集合基板2Aの裏面側に露出する裏電極4とマスキング13を覆う端面電極9の下面部9bを形成する。
【0038】
しかる後、集合基板2Aを一次分割溝に沿って短冊状に一次分割することにより、チップ形成領域の長手方向を幅寸法とする短冊状基板2Bを得る。次に、この短冊状基板2Bの分割面に向けて水平方向にNi/Crをスパッタリングすることにより、
図5(d)と
図6(d)に示すように、短冊状基板2Bの分割面に端面電極9の側面部9cを形成する。
【0039】
次に、短冊状基板2Bを二次分割溝に沿って複数のチップ状基板2Cに2次分割した後、
図5(e)と
図6(e)に示すように、マスキング12,13を洗浄して取り除く。これにより、マスキング12で覆われていたオーバーコート層7の上面と補助導電膜8のオーバーコート層7寄りの上面は端面電極9に覆われずに露出すると共に、マスキング13で覆われていたチップ状基板2Cの裏面中央部が露出し、チップ状基板2Cの両端部に対応する表電極3と裏電極4間を導通する一対の端面電極9が形成される。
【0040】
次に、チップ状基板2Cに対して電解ニッケルめっきと電解スズめっきを順次施すことにより、
図5(f)と
図6(f)に示すように、端面電極9と裏電極4を被覆する外部メッキ層10を形成してチップ抵抗器20が完成する。この外部メッキ層10は、Niメッキ層とSnメッキ層の2層構造からなり、端面電極9の表面全体と該端面電極9から露出する裏電極を覆うと共に、端面電極9から露出する補助導電膜8を覆うように形成される。
【0041】
このよう第2の実施形態に係るチップ抵抗器20では、端面電極9を構成する上面部9aと下面部9bおよび側面部9cが別方向からのスパッタリングによって形成され、表電極3と補助導電膜8を覆う上面部9aは基板表面に向かって垂直方向に行われるスパッタリングによって形成されるため、厚みの均一な上面部9aを容易に形成することができる。したがって、その後に電解めっきを行う際に、被めっき物である上面部9aの電流分布が不均一にならず、また、端面電極9の比抵抗を下げることができ、補助導電膜8の露出部分とさらに抵抗値の差をつけることができるため、外部メッキ層10の先端に生じる膜厚部をより確実に阻止することができる。
【0042】
図7は本発明の第3の実施形態に係るチップ抵抗器30の断面図であり、
図1に対応する部分には同一符号を付してある。
【0043】
第3の実施形態に係るチップ抵抗器30が第1の実施形態に係るチップ抵抗器1と相違する点は、端面電極9が表電極3の表面を覆っていないことと、補助導電膜8が、オーバーコート層7の端部上に形成された第1補助導電膜80と、第1補助導電膜80の一部を覆う第2補助導電膜81との2層構造からなることにあり、それ以外の構成は基本的に同じである。
【0044】
すなわち、
図7に示すように、第3の実施形態に係るチップ抵抗器30は、直方体形状の絶縁基板2と、絶縁基板2の上面における長手方向の両端部に設けられた一対の表電極3と、絶縁基板2の下面における長手方向の両端部に設けられた一対の裏電極4と、一対の表電極3に跨るように設けられた長方形状の抵抗体5と、表電極3と抵抗体5の接続部分を含めて抵抗体5の全体を覆うアンダーコート層6と、アンダーコート層6を被覆するオーバーコート層7と、オーバーコート層7の両端部を覆う一対の第1補助導電膜80と、これら第1補助導電膜80の側端部を覆う一対の第2補助導電膜81と、絶縁基板2の両端面に設けられて対応する表電極3と裏電極4を導通する一対の端面電極9と、端面電極9を覆うように設けられた一対の外部メッキ層10とにより主として構成されている。
【0045】
第1補助導電膜80は、カーボン系導電フィラーを充填した樹脂ペーストをスクリーン印刷して加熱硬化させたものであり、この第1補助導電膜80は、オーバーコート層7の端部を覆って、表電極3とオーバーコート層7との境界位置よりも端面寄りの位置に形成されている。第2補助導電膜81は、銀等の導電性金属粒子を充填した樹脂ペーストをスクリーン印刷して加熱硬化させたものであり、この第2補助導電膜81は、第1補助導電膜80の側端部を覆って、表電極3と第1補助導電膜80との境界位置よりも端面寄りの位置に至る範囲に形成されている。これら第1補助導電膜80と第2補助導電膜81は2層構造の補助導電膜8を構成するものであり、第1補助導電膜80と第2補助導電膜81の上面は面一になっている。したがって、補助導電膜8の表面の抵抗値についてみると、第2補助導電膜81が露出する端面側が低く、第1補助導電膜80が露出するオーバーコート層7側が高くなっている。
【0046】
次に、上記の如く構成されたチップ抵抗器30の製造方法について、
図8と
図9を参照しながら説明する。なお、このチップ抵抗器30の製造工程において、
図8(a)と
図9(a)に示したオーバーコート層7の形成工程までは第1実施形態例と同じであり、
図8と
図9はそれ以降の工程を示している。
【0047】
すなわち、
図8(a)と
図9(a)に示すように、抵抗体5を覆うようにアンダーコート層6とオーバーコート層7からなる2層構造の保護膜11を形成した後、カーボン系導電フィラーを充填した樹脂ペーストをスクリーン印刷して加熱硬化することにより、
図8(b)と
図9(b)に示すように、オーバーコート層7の両端部を所定幅で覆う一対の第1補助導電膜80を形成する。
【0048】
次に、樹脂銀ペーストをスクリーン印刷して加熱硬化することにより、
図8(c)と
図9(c)に示すように、第1補助導電膜80の側端部を覆う一対の第2補助導電膜81を形成する。その結果、第1補助導電膜80と第2補助導電膜81からなる2層構造の補助導電膜8が形成され、この補助導電膜8の表面の抵抗値は、第2補助導電膜81の露出する端面側が低く、第1補助導電膜80の露出するオーバーコート層7側が高くなっている。
【0049】
しかる後、集合基板2Aを一次分割溝に沿って短冊状に一次分割することにより、チップ形成領域の長手方向を幅寸法とする短冊状基板2Bを得る。次に、この短冊状基板2Bの分割面に向けてNi/Crをスパッタリングすることにより、
図8(d)と
図9(d)に示すように、短冊状基板2Bの分割面に表電極3と裏電極4を導通する端面電極9を形成する。
【0050】
次に、短冊状基板2Bを二次分割溝に沿って複数のチップ状基板2Cに2次分割した後、これらチップ状基板2Cに対して電解ニッケルめっきと電解スズめっきを順次施すことにより、
図8(e)と
図9(e)に示すように、表電極3と端面電極9および裏電極4を被覆する外部メッキ層10を形成してチップ抵抗器30が完成する。この外部メッキ層10は、Niメッキ層とSnメッキ層の2層構造からなり、端面電極9と裏電極の表面全体を覆うと共に、表電極3と補助導電膜8(第1補助導電膜80と第2補助導電膜81)を覆ってオーバーコート層7の先端部まで延びるように形成される。
【0051】
このように第3の実施形態に係るチップ抵抗器30では、補助導電膜8が、オーバーコート層7の端部上に形成された第1補助導電膜80と、第1補助導電膜80の一部を覆う第2補助導電膜81との2層構造からなり、第1補助導電膜80がカーボン系の導電材料で形成されていると共に、第2補助導電膜81が銀等の金属系導電材料で形成されているため、端面側よりもオーバーコート層7側の抵抗値を高くした補助導電膜8を容易に形成することができる。
【0052】
図10は第4の実施形態に係るチップ抵抗器40の断面図であり、
図7に対応する部分には同一符号を付してある。
【0053】
図10に示すように、第4の実施形態に係るチップ抵抗器40が第3の実施形態に係るチップ抵抗器30と相違する点は、補助導電膜8を構成する第1補助導電膜80と第2補助導電膜81のうち、第1補助導電膜80が表電極3に接触せずに離反していることにあり、それ以外の構成は基本的に同じである。このように抵抗値の高い方の第1補助導電膜80が表電極3から浮いていると、より効果的に補助導電膜8の抵抗値をオーバーコート層7側が高くて端面側が低いものにすることができる。
【0054】
図11は第5の実施形態に係るチップ抵抗器50の断面図であり、
図1に対応する部分には同一符号を付してある。
【0055】
図11に示すように、第5の実施形態に係るチップ抵抗器50が第1の実施形態に係るチップ抵抗器1と相違する点は、保護膜11を構成するアンダーコート層6とオーバーコート層7のうち、オーバーコート層7がアンダーコート層6の両端部を除く上面中央部に形成され、補助導電膜8がアンダーコート層6の両端部を覆うように形成されていることにあり、それ以外の構成は基本的に同じである。
【0056】
このように構成されたチップ抵抗器50では、アンダーコート層6の両端部に一対の補助導電膜8を形成した後、これら補助導電膜8の間に露出するアンダーコート層6の上面中央部にオーバーコート層7を形成することができるため、オーバーコート層7の直線性を高めることができる。また、オーバーコート層7がアンダーコート層6の両端部を覆っていない分だけ、ガラス材料からなるアンダーコート層6を表電極3に対して広い範囲で密着させることができるため、仮にオーバーコート層7と補助導電膜8の間から硫化ガス等が侵入したとしても、その硫化ガス等が表電極3まで侵入してしまうことをアンダーコート層6によって確実に阻止することができる。
【符号の説明】
【0057】
1,20,30,40,50 チップ抵抗器
2 絶縁基板
2A 集合基板
2B 短冊状基板
2C チップ状基板
3 表電極
4 裏電極
5 抵抗体
6 アンダーコート層
7 オーバーコート層
8 補助導電膜
80 第1補助導電膜
81 第2補助導電膜
9 端面電極
9a 上面部
9b 下面部
9c 側面部
10 外部メッキ層
11 保護膜
12,13 マスキング