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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111279
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】加湿装置、呼吸補助装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/16 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
A61M16/16 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024101156
(22)【出願日】2024-06-24
(62)【分割の表示】P 2019182403の分割
【原出願日】2019-10-02
(71)【出願人】
【識別番号】517127584
【氏名又は名称】株式会社MAGOS
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】新田 一福
(57)【要約】
【課題】
小型化、軽量化が可能であり、貯留させる水全体を熱することなく、素早く十分な加湿が可能な加湿装置、及び、呼吸補助装置を提供する。
【解決手段】
使用者へ送気される送気ガスを加湿する加湿装置であって、送気ガスを加湿するために用いる液体を加熱して気化させる発熱部と、液体を発熱部へ供給する液体供給部と、発熱部へエネルギーを供給する電源と、電源から発熱部へ投入される投入電力を測定する投入電力測定部と、加湿装置内、又は、前記加湿装置に接続される呼吸回路内の温度を参照して投入電力を制御する発熱制御部と、送気ガスについて目標とする加温加湿状態から、目標となる目標投入電力を算出する目標投入電力算出部と、測定された投入電力と目標投入電力との差分値に基づいて液体供給量を制御する液体供給制御部とを備えることを特徴とする加湿装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者へ送気される送気ガスを加湿する加湿装置であって、
前記送気ガスを加湿するために用いる液体を加熱して気化させる発熱部と、
前記液体を前記発熱部へ供給する液体供給部と、
前記発熱部へエネルギーを供給する電源と、
前記電源から前記発熱部へ投入される投入電力を測定する投入電力測定部と、
前記加湿装置内、又は、前記加湿装置に接続される呼吸回路内の温度を参照して前記投入電力を制御する発熱制御部と、
前記送気ガスについて目標とする加温加湿状態から、目標となる目標投入電力を算出する目標投入電力算出部と、
測定された前記投入電力と前記目標投入電力との差分値に基づいて液体供給量を制御する液体供給制御部と
を備えることを特徴とする加湿装置。
【請求項2】
前記使用者がいる環境の温度である外気温を測定する外気温測定部と、
前記使用者がいる環境の湿度である外湿度を測定する外湿度測定部と、
前記送気ガスが呼吸回路に送られる出口となる送気ガス出口部近傍に設けられ、前記呼吸回路に送られる前記送気ガスの温度である出口温度を測定する送気ガス出口温度測定部と
を備え、
前記発熱制御部は、前記出口温度と予め設定された目標温度の差分値に基づいて前記発熱部への投入電力を制御し、
前記目標投入電力算出部は、少なくとも前記外気温と、前記外湿度と、前記出口温度の値に基づいて前記目標投入電力を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の加湿装置。
【請求項3】
前記液体供給部による前記液体の供給量を調節する液体供給量調節部をさらに備え、前記液体供給制御部が、前記液体供給量調節部を制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の加湿装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の加湿装置を備える呼吸補助装置。
【請求項5】
使用者へ送気され送気ガスを加湿するために用いる液体を加熱して気化させる発熱部と、
前記液体を前記発熱部へ供給する液体供給部と、
前記発熱部へエネルギーを供給する電源と、
前記電源から前記発熱部へ投入される投入電力を測定する投入電力測定部と、
を備える前記送気ガスを加湿する加湿器において、
前記加湿器内、又は、前記加湿器に接続される呼吸回路内の温度を参照して前記投入電力を制御する発熱制御ステップと、
前記送気ガスについて目標とする加温加湿状態から、目標となる目標投入電力を算出する目標投入電力算出ステップと、
測定された前記投入電力と前記目標投入電力との差分値に基づいて液体供給量を制御する液体供給制御ステップと
を備えることを特徴とする加湿方法。
【請求項6】
前記使用者がいる環境の温度である外気温を測定する外気温測定部と、
前記使用者がいる環境の湿度である外湿度を測定する外湿度測定部と、
前記送気ガスが呼吸回路に送られる出口となる送気ガス出口部近傍に設けられ、前記呼吸回路に送られる前記送気ガスの温度である出口温度を測定する送気ガス出口温度測定部と
を備える前記加湿器において、
前記発熱制御ステップは、前記出口温度と予め設定された目標温度の差分値に基づいて前記発熱部への投入電力を制御し、
前記目標投入電力算出ステップは、前記外気温と、前記外湿度と、前記出口温度の値に基づいて前記目標投入電力を算出する
ことを特徴とする請求項5に記載の加湿方法。
【請求項7】
前記液体供給部による前記液体の供給量を調節する液体供給量調節部をさらに備え、前記液体供給制御ステップが、前記液体供給量調節部を制御することを特徴とする請求項5または請求項6に記載の加湿装置。
【請求項8】
請求項5から請求項7のうちのいずれか一項に記載の加湿方法を含む呼吸補助方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は使用者に送気する送気ガスを加湿する加湿装置、および、加湿装置を備える呼吸補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
使用者の気道に接続して、換気を調節又は補助するように設計された自動的換気装置が医療の現場において広く使用されており、睡眠時無呼吸症候群に対する治療であるCPAP療法(Continuous Positive Airway Pressure:経鼻的持続陽圧呼吸療法)に使用される呼吸補助装置も含まれる。
【0003】
気道に乾燥したガスを送気し続けると使用者に不快感を引き起こし、場合によっては気道へ損傷を与えるきっかけにもなり得る。そこで呼吸補助装置には、送気ガスへ水分を付加する加湿装置を接続する。
【0004】
従来、呼吸補助装置に使用される加湿装置は、発熱体(ヒータープレート)で貯水槽に入れた水全体を加熱して蒸発させる方式のものが多かった(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図9(A)は、従来の呼吸補助装置101の概念図である。呼吸補助蔵置101は、加熱蒸発方式を採用する加湿装置105を備える。加湿装置105は、ベンチレーター110から送気される送気ガスを送気ガス入口部115から取り入れ、加温加湿して送気ガス出口部120から吸気側呼吸回路127へと送り出す。送気ガスは蛇管130を通ってインターフェース135から使用者Uへと送気される。呼気は呼気側呼吸回路125を通じて外界に放出される。
【0006】
図9(B)は、従来の加湿装置105の説明図である。加湿装置105は筐体内部に液体(水)155を貯留する。液体(水)155は発熱体150によって加熱蒸発される。発熱体150は、例えば電気抵抗体(図示省略)を有して電源160から電流を流すことで加熱される。
【0007】
具体的には、送気ガス入口部115から流入する送気ガスは加湿空間145において、液体(水)155の表面から蒸発した水蒸気を含み、加湿された後に送気ガス出口部120から、呼吸回路を通じて使用者Uの気道へと送られる。このとき送気ガス出口温度測定部140で送気ガスの出口温度が測定され、使用者Uの気道において適切な温度及び湿度となるように発熱体150へ投入される電力が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2009-504277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1記載の技術では、貯水槽全体の水の温度を上昇させなければ、十分な量の水蒸気を発生させることができない。このためエネルギー消費量が多く、加湿が可能になるまで時間が掛かる。また熱水を多く貯留しなければならないので小型化も難しい。また多くの熱水を貯留する必要があるので、加湿装置を倒すことで熱水が漏れ、使用者等が熱傷を負う危険も大きい。将来、呼吸補助器は在宅医療で用いられる機会が多くなると考えられており、その意味でも医療従事者以外の家族が扱うには不便である。
【0010】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、小型化、軽量化が可能であり、貯留させる水全体を熱することなく素早く十分な加湿が可能な加湿装置、及び、呼吸補助装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明は、使用者へ送気される送気ガスを加湿する加湿装置であって、前記送気ガスを加湿するために用いる液体を加熱して気化させる発熱部と、前記液体を前記発熱部へ供給する液体供給部と、前記発熱部へエネルギーを供給する電源と、前記電源から前記発熱部へ投入される投入電力を測定する投入電力測定部と、前記加湿装置内、又は、前記加湿装置に接続される呼吸回路内の温度を参照して前記投入電力を制御する発熱制御部と、前記送気ガスについて目標とする加温加湿状態から、目標となる目標投入電力を算出する目標投入電力算出部と、測定された前記投入電力と前記目標投入電力との差分値に基づいて液体供給量を制御する液体供給制御部とを備えることを特徴とする加湿装置を提供する。
【0012】
上記(1)に記載する発明によれば、加湿装置に接続される呼吸回路内の温度を参照して投入電力を制御することと、送気ガスについて目標とする加温加湿状態から目標となる目標投入電力を算出する目標投入電力を算出することと、投入電力と目標投入電力との差分値に基づいて液体供給量を制御することを独立におこなうことで、高速な加温加湿制御と、最小限の液体供給での加湿制御が可能になるという極めて優れた効果を奏する。
【0013】
(2)本発明は、前記使用者がいる環境の温度である外気温を測定する外気温測定部と、前記使用者がいる環境の湿度である外湿度を測定する外湿度測定部と、前記送気ガスが呼吸回路に送られる出口となる送気ガス出口部近傍に設けられ、前記呼吸回路に送られる前記送気ガスの温度である出口温度を測定する送気ガス出口温度測定部とを備え、前記発熱制御部は、前記出口温度と予め設定された目標温度の差分値に基づいて前記発熱部への投入電力を制御し、前記目標投入電力算出部は、少なくとも前記外気温と、前記外湿度と、前記出口温度の値に基づいて前記目標投入電力を算出することを特徴とする上記(1)に記載の加湿装置を提供する。
【0014】
上記(2)に記載する発明によれば、使用者のいる環境の環境変数に基づいて発熱部への投入電力を決定するので、最低限のエネルギーと液体量(水量)で素早く十分な加温加湿が可能になるという優れた効果を奏する。
【0015】
(3)本発明は、前記液体供給部による前記液体の供給量を調節する液体供給量調節部をさらに備え、前記液体供給制御部が、前記液体供給量調節部を制御することを特徴とする上記(1)または上記(2)に記載の加湿装置。
【0016】
上記(3)に記載する発明によれば、加温加湿に必要な量だけ発熱部に液体(水)を供給することができるので、液体の水が滞留することが無くなり細菌の繁殖を抑えることができ衛生面でも優れた加湿装置が提供できるという優れた効果を奏する。
【0017】
(4)本発明は、上記(1)乃至上記(3)のうちのいずれかに記載の加湿装置を備える呼吸補助装置を提供する。
【0018】
上記(4)に記載する発明によれば、素早い加温加湿を最小限の液体量(水量)と最適な投入電力で行うことができる小型軽量で加湿装置を備えた呼吸補助装置が提供可能になるという優れた効果を奏する。
【0019】
(5)本発明は、使用者へ送気され送気ガスを加湿するために用いる液体を加熱して気化させる発熱部と、前記液体を前記発熱部へ供給する液体供給部と、前記発熱部へエネルギーを供給する電源と、前記電源から前記発熱部へ投入される投入電力を測定する投入電力測定部とを備える前記送気ガスを加湿する加湿器において、前記加湿器内、又は、前記加湿器に接続される呼吸回路内の温度を参照して前記投入電力を制御する発熱制御ステップと、前記送気ガスについて目標とする加温加湿状態から、目標となる目標投入電力を算出する目標投入電力算出ステップと、測定された前記投入電力と前記目標投入電力との差分値に基づいて液体供給量を制御する液体供給制御ステップとを備えることを特徴とする加湿方法を提供する。
【0020】
上記(5)に記載する発明によれば、加湿装置に接続される呼吸回路内の温度を参照して投入電力を制御することと、送気ガスについて目標とする加温加湿状態から目標となる目標投入電力を算出する目標投入電力を算出することと、投入電力と目標投入電力との差分値に基づいて液体供給部を制御することを独立におこなうことで、高速な加温加湿制御と、最小限の液体供給での加湿制御が可能になるという極めて優れた効果を奏する。
【0021】
(6)本発明は、前記使用者がいる環境の温度である外気温を測定する外気温測定部と、前記使用者がいる環境の湿度である外湿度を測定する外湿度測定部と、前記送気ガスが呼吸回路に送られる出口となる送気ガス出口部近傍に設けられ、前記呼吸回路に送られる前記送気ガスの温度である出口温度を測定する送気ガス出口温度測定部とを備える前記加湿器において、前記発熱制御ステップは、前記出口温度と予め設定された目標温度の差分値に基づいて前記発熱部への投入電力を制御し、前記目標投入電力算出ステップは、少なくとも前記外気温と、前記外湿度と、前記出口温度の値に基づいて前記目標投入電力を算出することを特徴とする上記(5)に記載の加湿方法を提供する。
【0022】
上記(6)に記載する発明によれば、使用者のいる環境の環境変数に基づいて発熱部への投入電力を決定するので、最低限のエネルギーと液体量(水量)で素早く十分な加温加湿が可能になるという優れた効果を奏する。
【0023】
(7)本発明は、前記液体供給部による前記液体の供給量を調節する液体供給量調節部をさらに備え、前記液体供給制御ステップが、前記液体供給量調節部を制御することを特徴とする上記(5)または上記(6)に記載の加湿方法を提供する。
【0024】
上記(7)に記載する発明によれば、加温加湿に必要な量だけ発熱体に液体(水)を供給することができるので、液体の水が滞留することが無くなり細菌の繁殖を抑えることができ衛生面でも優れた加湿装置が提供できるという優れた効果を奏する。
【0025】
(8)本発明は、上記(5)乃至上記(7)のうちのいずれかに記載の加湿方法を含む呼吸補助方法を提供する。
【0026】
上記(8)に記載する発明によれば、加湿装置に接続される呼吸回路内の温度を参照して投入電力を制御することと、送気ガスについて目標とする加温加湿状態から目標となる目標投入電力を算出する目標投入電力を算出することと、投入電力と目標投入電力との差分値に基づいて液体供給部を制御することを独立におこなうことで、高速な加温加湿制御と、最小限の液体供給での加湿制御が可能になるという極めて優れた効果を奏する。
【0027】
(9)本発明は、使用者へ送気する送気ガスに水蒸気を含ませる加湿空間を有する筐体を備え、前記加湿空間には、電磁誘導現象を用いて電気エネルギーを取得することで発熱する発熱部が配設され、前記電磁誘導現象により前記発熱部へエネルギーを伝達するコイルと、前記発熱部と前記コイルとを空間的に分離して電気的接触を防ぐ絶縁部と、前記発熱部に対して前記水蒸気へと気化させる液体を供給する液体供給部とをさらに有することを特徴とする加湿装置を提供する。
【0028】
上記(9)に記載する発明によれば、液体(水)を水蒸気へと気化させる加湿部、具体的には発熱部と、発熱部へエネルギーを供給するエネルギー供給部、具体的にはコイルが空間的に分離可能な加湿装置を構成することができる。そのため水分を含んで菌が発生しやすいといった問題が生じる可能性がある加湿部だけを交換することができるので、メンテナンスが容易であるという優れた効果を奏する。
【0029】
(10)本発明は、前記液体供給部は、前記発熱部の近傍に前記液体が滞留しない状態を維持するように前記液体を供給することを特徴とする上記(9)に記載の加湿装置を提供する。
【0030】
上記(10)に記載する発明によれば、加湿装置の内部に液体(水)が滞留しないので、細菌が繁殖しにくく良い衛生状態を維持しやすいという優れた効果を奏する。
【0031】
(11)本発明は、前記発熱部は筒形であり、前記絶縁部を介して前記コイルが配置されることを特徴とする上記(9)または上記(10)に記載の加湿装置を提供する。
【0032】
上記(11)に記載する発明によれば、電磁誘導現象を用いて発熱部へエネルギーを付与するコイルと発熱部が絶縁部によって電気的に絶縁されているので、ショートなどの事故が起きる可能性が低くなるという優れた効果を奏する。
【0033】
(12)本発明は、前記絶縁部が筒形であり、前記発熱部の内周側に前記絶縁部が配置され、前記絶縁部の内周側に前記コイルが配置されることを特徴とする上記(11)に記載の加湿装置を提供する。
【0034】
上記(12)に記載する発明によれば、筒型の発熱部の内側にコイルが配設されるので、電磁誘導現象を用いてコイルから発熱部へ効率的にエネルギーを付与することができるという優れた効果を奏する。
【0035】
(13)本発明は、前記発熱部の前記筒形の中心軸が、非鉛直方向に向くように配置されることを特徴とする上記(12)に記載の加湿装置を提供する。
【0036】
上記(13)に記載する発明によれば、発熱部が加温加湿したい送気ガスに触れる表面積を大きくすることが容易になるので、小型で十分な加温加湿が可能な加湿装置が提供できるという優れた効果を奏する。
【0037】
(14)本発明は、前記発熱部は、金属を含む多孔状に構成される金属多孔体であることを特徴とする上記(9)乃至上記(13)のうちのいずれかに記載の加湿装置を提供する。
【0038】
金属多孔体は電気伝導性を有する。上記(14)に記載する発明によれば、コイルから電磁誘導現象によって金属多孔体に電流が流れることで抵抗加熱が生じ、水を効率的に気化させることができるという優れた効果を奏する。
【0039】
(15)本発明は、前記コイルおよび前記発熱部が磁性体によって磁気結合されていることを特徴とする上記(9)乃至上記(14)のうちのいずれかに記載の加湿装置を提供する。
【0040】
上記(15)に記載する発明によれば、コイルと電磁誘導により電流が流れる発熱部が効率よく磁気結合されるので、コイルから発熱部へのエネルギー付与効率が高まるという優れた効果を奏する。
【0041】
(16)本発明は、上記(9)乃至上記(15)のうちのいずれかに記載された加湿装置を備える呼吸補助装置を提供する。
【0042】
上記(16)に記載する発明によれば、加湿装置の小型化、軽量化が可能であり、貯留させる水全体を熱することなく素早く十分な加湿が可能になるという著しく優れた効果を奏する。
【発明の効果】
【0043】
本発明の請求項1~8記載の加湿装置、呼吸補助装置によれば、メンテナンスが容易で衛生的であり、且つ、小型軽量で素早い加温加湿が可能な加湿装置と、そのような加湿装置を備えた呼吸補助装置が実現できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明の実施形態に係る呼吸補助装置の概念図である。
図2】(A)本発明の実施形態に係る呼吸補助装置における加湿装置の筐体内部の説明図である。(B)加湿装置の断面図である。
図3】(A)本発明の実施形態に係る呼吸補助装置における加湿装置の説明図である。(B)本発明の第一の変形実施例に係る呼吸補助装置における加湿装置の説明図である。
図4】(A)本発明の実施形態に係る呼吸補助装置における加湿装置を構成するエネルギー供給部と加湿部が分離する動作を示す説明図である。(B)本発明の第一の変形実施例に係る呼吸補助装置における加湿装置を構成するエネルギー供給部と加湿部が分離する動作を示す説明図である。(C)筐体内の加湿空間を解放して加湿部のみを分離してメンテナンスする態様を示す説明図である。
図5】(A)本発明の第二の変形実施例に係る呼吸補助装置における加湿装置の筐体内部を説明する説明図である。(B)加湿装置の筐体の断面図である。
図6】呼吸補助装置における加湿装置において送気ガスの出口温度を制御するアルゴリズムを説明するフローチャートである。
図7】呼吸補助装置における加湿装置において、リアルタイムに目標投入電力を算出して設定するアルゴリズムを説明するフローチャートである。
図8】電源から発熱部へ供給される液体(水)量を制御するアルゴリズムを説明するフローチャートである。
図9】(A)従来の呼吸補助装置の概念図である。(B)従来の加湿装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0046】
図1図8は発明を実施する形態の一例であって、図中、同一の符号を付した部分は同一物を表わす。なお、各図において一部の構成を適宜省略して、図面を簡略化する。そして、部材の大きさ、形状、厚みなどを適宜誇張して表現する。
【0047】
図1は、本発明の実施形態に係る呼吸補助装置1の概念図である。使用者Uの呼吸を補助する呼吸補助装置1は、送気ガスを送り出す送風機10と、治療等医療用に用いられる医用ガスを供給する医用ガスボンベ13と、送気ガスを加湿する加湿装置9と、送気ガスを使用者Uへ導く呼吸回路5と、使用者Uの鼻部および/または口腔部近傍に配設されて送気ガスを導く呼吸補助用インターフェース3を備える。
【0048】
送風機10は吸入口40から空気を吸い込み加湿装置30へと送気する。また医用ガスボンベ13から供給される医用ガスも加湿装置30へと送気される。すなわち送気ガスは吸入口40から吸い込んだ空気と医用ガスの混合ガスであってよい。
【0049】
医用ガスは、例えば酸素ガスであってよい。
【0050】
加湿装置9は、筐体30と、電源29と、電源29から発熱部(金属多孔体)59(後述する図2(A)参照)へ投入される投入電力を測定する投入電力測定部31と、発熱部(金属多孔体)59に液体(水)を供給する液体供給装置68と、使用者がいる環境の環境変数を測定する外部環境変数測定部27と、加湿装置9の制御をおこなう制御装置21を有する。また筐体30(後述する図2(A)参照)から送気ガスが送り出される送気ガス出口部35には、呼吸回路5に送られる送気ガスの温度を測定する送気ガス出口温度測定部7が配置される。
【0051】
なおこの「出口部」の場所は特に限定されず、発熱部(金属多孔体)59より下流側のどの場所であってもよい。
【0052】
電源29から投入される電力は、直接的にはコイル57へと送られる電力だが、電気エネルギーは電磁誘導現象を通じて発熱部(金属多孔体)59(後述する図2(A)参照)へ投入されるので上記の表現とした。したがって投入電力測定部31はコイル57に投入される電力または発熱部(金属多孔体)59に伝達されるエネルギーのいずれを測定しても良い。
【0053】
発熱部59は、金属を含む多孔状に構成される金属多孔体である。発熱部(金属多孔体)59は金属繊維を押し固めたメッシュ構造を有してもよい。
【0054】
制御装置21は、加湿装置9内、又は、加湿装置9に接続される呼吸回路5内の温度を参照して投入電力を制御する発熱制御部15と、送気ガスについて目標とする加温加湿状態から、目標となる目標投入電力を算出する目標投入電力算出部17と、測定された投入電力と目標投入電力との差分値に基づいて液体量(後述する図3参照)を制御する液体供給制御部19とを備える。
【0055】
外部環境変数測定部27は、呼吸補助装置1が設置されている環境の温度を測定する外気温測定部23と、呼吸補助装置1が設置されている環境の湿度を測定する外湿度測定部25を有する。外気温測定部23は、例えば抵抗温度計であってよい。また外湿度測定部25は、例えばバイメタル方式であってもよく、感湿剤と櫛形電極を用いたデジタル式出あってもよい。
【0056】
なお制御装置21はCPU、RAMおよびROMなどから構成され、各種制御を実行する。CPUはいわゆる中央演算処理装置であり、各種プログラムが実行されて様々な機能を実現する。RAMはCPUの作業領域、記憶領域として使用され、ROMはCPUで実行されるオペレーティングシステムやプログラムを記憶する。
【0057】
制御装置21は,呼吸補助装置1全体の動作を制御してもよい。
【0058】
図2(A)は、本発明の実施形態に係る呼吸補助装置1における加湿装置9の筐体30内部の説明図である。筐体30は、送気ガスが送り込まれる送気ガス入口部47と、送気ガスが呼吸回路5(図1参照)へ送り出される送気ガス出口部35と、磁界を発生させるコイル57と、発熱部(金属多孔体)59と、コイル57と発熱部(金属多孔体)59の間の電気的な絶縁をする絶縁部61と、コイル57と発熱部(金属多孔体)59の間の磁気結合の効率を高める磁性体であるフェライト55と、送気ガスが発熱部(金属多孔体)59に十分長い間接触するために、送気ガスの流れを変える整流板51を備える。送気ガスは発熱部(金属多孔体)59で発生した加熱蒸気が加湿空間49に流れ込むことにより加温加湿される。
【0059】
図2(B)は、加湿装置9の断面図である。送気ガスは、送気ガス入口部47から筐体30内に取り込まれ、整流板51によって流れが変えられ、例えば図2(B)中の破線で示される加湿加温経路50のような経路、具体的には送気ガス入口47から発熱部(金属多孔体)59へと向かう進入側経路50Aと、発熱部(金属多孔体)59近傍の発熱体側経路50Bと、発熱部(金属多孔体)59から送気ガス出口35へと向かう出口側経路50Cを備える経路をたどり、発熱部(金属多孔体)59で発生した加熱蒸気を加湿空間49の中で含んで加温加湿された後に、送気ガス出口部35から呼吸回路5へと送り出される。
【0060】
加湿装置9は、使用者Uへ送気する送気ガスに水蒸気を含ませる加湿空間49を有する筐体30を備え、加湿空間49には、発熱部59と、コイル57と、絶縁部61が配設される。さらに発熱部59に対して水蒸気へと気化させる液体を供給する液体供給部63(後述する図3参照)をさらに有する。
【0061】
具体的には発熱部(金属多孔体)59は断面が正円状の円筒形であり、金属を含み全体として電気伝導性を有するが、コイル57から電磁誘導で誘導された電流が流れると加熱する程度の電気抵抗値を有する。コイル57は金属線を螺旋状に巻いた形状でありフェライト55の外周に沿って配設される。コイル57は高い電気伝導性を有する。絶縁部61は発熱部(金属多孔体)59とコイル57の間に配設され、互いを電気的に絶縁するとともに、液体供給装置68から発熱部(金属多孔体)59に供給される液体(水)およびそれが気化した水蒸気からコイル57を空間的に隔離する隔離壁を兼ねる。絶縁部61はガラスであってもよく、合成樹脂であってもよい。
【0062】
また発熱部59は、その内周には絶縁部61を介してコイル57が配置される。
【0063】
絶縁部61は筒形であり、発熱部59の内周側に絶縁部61が配置され、絶縁部61の内周側にコイル57が配置されることを特徴とする。
【0064】
なお発熱部59の筒形の中心軸が、非鉛直方向に向くように配置されることも可能である。ここでは基本姿勢として中心軸が水平となる態様を示したが、この加湿装置の利点として姿勢を変えても加湿加温が可能であることが挙げられる。
【0065】
図3(A)は、本発明の実施形態に係る呼吸補助装置1における加湿装置9の説明図である。
【0066】
本変形実施形態では、発熱部(金属多孔体)59とコイル57の間の磁気結合を高めるために、コイル57の内周側にフェライト55を備える。また絶縁部61(前述の図2(A)参照)は、筐体30の一部がその役割を果たしてよい。筐体30は例えばABS樹脂のような合成樹脂であってよい。
【0067】
コイル57に対する投入電力は、電源29から電源ライン69を通じて印加されるが、電源29は、発熱制御部15によって制御される。投入されている電力値はリアルタイムで投入電力測定部によって測定される。
【0068】
液体(水)は、液体供給装置68から発熱部(金属多孔体)59へと供給される。具体的には液体貯留部67から液体供給部63を通じて発熱部(金属多孔体)59に対して供給される。液体供給部63の端部から少量ずつ発熱部(金属多孔体)59の内側周面へと液体(水)が供給される。液体供給部63は管状であり、その端部が発熱部(金属多孔体)59の内周面に沿って配設されることが望ましい。液体(水)の供給量は液体量調節部65によって調節されるが、液体量調節部65は、例えばピエゾ式のポンプであってよい。液体量調節部65は液体供給制御部19(図1参照)によって制御される。
【0069】
液体供給部19は、発熱部59の近傍に液体が滞留しない状態を維持するように液体を供給する。つまり発熱部(金属多孔体)59が気化させることが可能な最大液体量を超えない程度の液体を供給する。
【0070】
図4(A)は、本発明の実施形態に係る呼吸補助装置1における加湿装置9を構成するエネルギー供給部73と加湿部71が分離する動作を示す説明図である。加温加湿をおこなう状態においては、フェライト55とコイル57を備えたエネルギー供給部73は発熱部(金属多孔体)59を内部に配設する筐体30の凹部に配置され、コイル57と発熱部(金属多孔体)59が磁気回路を形成して電磁誘導現象による発熱部(金属多孔体)59の加熱が可能な状態にある(図4(A)左図参照)。メンテナンスをする場合、具体的には発熱部(金属多孔体)59を有する加湿部71を交換する場合にはエネルギー供給部73と加湿部71が空間的に分離することができる(図4(A)右図参照)。
【0071】
図4(C)は、筐体30内の加湿空間49を解放して加湿部71(発熱部(金属多孔体)59)のみを分離する動作を示す説明図である。加湿装置30は本体部30Aと蓋部30Bを備え、メンテナンス時、具体的には発熱部(金属多孔体)59を交換する場合には蓋部30Bを開放することで発熱部(金属多孔体)59を容易に取り出して交換することができる(図4(C)右図参照)。
【0072】
図3(B)は、本発明の第一の変形実施例に係る呼吸補助装置1における加湿装置9の説明図である。
【0073】
本変形実施例では発熱部(金属多孔体)59とコイル57の間の磁気回路をなるべく閉じて磁気結合を高めるために、U字状のフェライト55を備える。また絶縁部61(前述の図2(A)参照)は、筐体30の一部がその役割を果たしてよい。筐体30は例えばABS樹脂のような合成樹脂であってよい。
【0074】
コイル57に対する投入電力は、電源29から電源ライン69を通じて印加されるが、電源29は、発熱制御部15によって制御される。投入されている電力値はリアルタイムで投入電力測定部によって測定される。
【0075】
液体(水)は、液体貯留部67から液体供給部63を通じて発熱部(金属多孔体)59に対して供給される。液体(水)の供給量は液体量調節部65によって制御されるが、液体量調節部65は、例えばピエゾ式のポンプであってよい。液体量調節部65は液体供給制御部19(図1参照)によって制御される。
【0076】
液体供給部19は、発熱部59の近傍に液体が滞留しない状態を維持するように液体を供給する。発熱部(金属多孔体)59に対する液体の供給は、図3(A)の場合と同様なので記載を省略する。
【0077】
図4(B)は、本発明の第一の変形実施例に係る呼吸補助装置1における加湿装置9を構成するエネルギー供給部73と加湿部71が分離する動作を示す説明図である。
加温加湿をおこなう状態においては、フェライト55とコイル57を備えたエネルギー供給部73は発熱部(金属多孔体)59を内部に配設する筐体30の凹部に配置され、コイル57と発熱部(金属多孔体)59が磁気回路を形成して電磁誘導現象による発熱部(金属多孔体)59の加熱が可能な状態にある(図4(B)左図参照)。メンテナンスをする場合、具体的には発熱部(金属多孔体)59を有する加湿部71を交換する場合にはエネルギー供給部73と加湿部71が空間的に分離することができる(図4(B)右図参照)。
【0078】
加湿部71には液体(水)が供給されるので細菌が発生する可能性があり、定期的に交換することが望ましい。筐体30が、エネルギー供給部73と加湿部71のように容易に分離できるので、加湿部71だけ新しいものに交換することができるというメンテナンスの容易さを実現している。
【0079】
図5(A)は、本発明の第二の変形実施例に係る呼吸補助装置1における加湿装置9の筐体30内部を説明する説明図である。本変形実施例においては発熱部(金属多孔体)59を有する加温部75と、同様に発熱部(金属多孔体)59を有する加湿部77を備える。送気ガス入口部47から取り入れられた送気ガスは液体が供給されない加温部75によって加温され、液体が供給される加湿部77で加湿された後に、送気ガス出口部35から呼吸回路5(図1参照)へと送り出される。加湿部77における液体の供給は本発明の実施形態と同様なので詳細な記載は省略する。
【0080】
図5(B)は、加湿装置9の筐体の断面図である。加温部75は加温用コイル79と加温用発熱部83を備える。また加湿部77は加湿用コイル81と加湿用発熱部85を備える。加温部75は、後述する図6で示すアルゴリズムに従って制御されてよく、加湿部77は後述する図7図8で示すアルゴリズムに従って制御されてよい。
【0081】
本変形実施例では温度と湿度を独立して制御することができるという効果を奏する。
【0082】
なお本変形実施例においては加温部75が送気の上流側、加湿部77が下流側に配置されているが、逆に加湿部77が送気の上流側、加温部75が下流側に配置されても良い。
【0083】
また加湿部77だけでなく加温部75側に対しても液体を供給して、加湿部77とともに同時に加温部75が送気ガスの加温および加湿をおこなってもよい。
【0084】
一般に呼吸補助装置1において、使用者Uの鼻部や口腔に送気される送気ガスは、例えば温度が37℃で、相対湿度100%という予め医師によって決められた値であることが望ましい。しかし加湿装置9の送気ガス出口部35で上記の決められた値であると、呼吸回路5を送気されていく間に、熱損失をしてしまい送気ガスの温度は低下して、相対湿度も落ちてしまう。この熱損失の程度は、環境温度によっても変動する。
【0085】
したがって呼吸補助装置1が置かれた環境の環境変数、すなわち外気温や外湿度と、呼吸回路5における熱損失の程度を加味して、送気ガス出口部35における送気ガスの目標温度と目標湿度(目標絶対湿度)を算出して、それを達成するように電源29からの投入電力と、液体(水)の供給量を定めることが必要である。
【0086】
ここで本発明の実施形態に係る呼吸補助装置1における加湿装置9では、目標絶対湿度を達成するために必要な水を供給した際に、発熱部(金属多孔体)59で気化させるために必要な電力も鑑みて目標投入電力を目標投入電力算出部17において算出する。
【0087】
具体的には、本実施形態に係る呼吸補助装置1における加湿装置9は、使用者Uへ送気される送気ガスを加湿する加湿装置であって、送気ガスを加湿するために用いる液体を加熱して気化させる発熱部59と、液体を発熱部59へ供給する液体供給部63と、発熱部59へエネルギーを供給する電源29と、電源29から発熱部59へ投入される投入電力を測定する投入電力測定部31と、加湿装置9内、又は、加湿装置9に接続される呼吸回路5内の温度を参照して投入電力を制御する発熱制御部15と、送気ガスについて目標とする加温加湿状態から、目標となる目標投入電力を算出する目標投入電力算出部17と、測定された投入電力と目標投入電力との差分値に基づいて液体供給量を制御する液体供給制御部19とを備える。
【0088】
また本実施形態に係る呼吸補助装置1における加湿装置9は、使用者Uがいる環境の温度である外気温を測定する外気温測定部23と、使用者Uがいる環境の湿度である外湿度を測定する外湿度測定部25と、送気ガスが呼吸回路5(図1参照)に送られる出口となる送気ガス出口部35近傍に設けられ、呼吸回路5に送られる送気ガスの温度である送気ガス出口温度を測定する送気ガス出口温度測定部7とを備え、発熱制御部15は、出口温度と予め設定された目標温度の差分値に基づいて発熱部59への投入電力を制御し、目標投入電力算出部17は、外気温と、外湿度と、出口温度の値に基づいて目標投入電力を算出する。
【0089】
さらに本実施形態に係る呼吸補助装置1における加湿装置9は、前記液体の供給量を変化させる液体供給量制御部65が前記発熱部59に供給する前記液体の量を、前記液体供給制御部19が制御する。
【0090】
図6は、呼吸補助装置1における加湿装置9において送気ガスの送気ガス出口温度を制御するアルゴリズムを説明するフローチャートである。
【0091】
まず加湿装置9における送気ガス出口部35に配置された送気ガス出口温度測定部7(図1参照)で測定された送気ガス出口温度(以下出口温度と記載を略する)を測定する(ステップS1)。出口温度と予め算出され設定された目標温度に差があるか否かを判定する(ステップS2)。差が無い場合には、発熱制御部15(図1参照)は、投入電力測定部31(図1参照)で測定される投入電力を維持する制御を行う(ステップS6)。差がある場合は、出口温度が予め算出され設定された目標温度より高いかどうかを判定する(ステップS3)。高い場合には、発熱制御部15は、投入電力を下げる制御を行う(ステップS4)。低い場合には、発熱制御部15は、投入電力を上げる制御を行う(ステップS5)。上述したステップS4と、ステップS5と、ステップS6を終了した後、ステップS1へと戻る。
【0092】
以上のフィードバック制御によって送気ガス出口温度は目標温度で安定するように常に投入電力が制御される。
【0093】
なお、発熱制御部15による投入電力の制御は、例えば電流値をコントロールするPID制御であってよい。また具体的な電力制御はPWM制御であることが望ましい。
【0094】
図7は、呼吸補助装置における加湿装置において、リアルタイムに現在の目標投入電力を算出して設定するアルゴリズムを説明するフローチャートである。
【0095】
まず外気温測定部23(図1参照)で外気温を測定し、外湿度測定部25(図1参照)で外湿度を測定する。そして外気温、外湿度及び送気ガスの流量や呼吸回路の熱損失などに基づいて送気ガス出口35における目標となる絶対湿度を定める(ステップU1)。次にこの絶対湿度を達成するために必要とされる水量を算出し、その水量を温度上昇させて気化させ、さらに流れる送気ガスを温度上昇させるために、発熱部(金属多孔体)59へ電源29から投入する目標投入電力を算出する(ステップU2)。そして算出された値を、現在の目標投入電力として設定する(ステップU3)。この現在の目標投入電力は後述する図8で示すアルゴリズムで利用される。
【0096】
以上の動作を絶えず回帰させることで、リアルタイムに最適な目標投入電力を算出し設定することができる。
【0097】
図8は、電源29から発熱部59へ供給される液体(水)量を制御するアルゴリズムを説明するフローチャートである。
【0098】
まず投入電力測定部31によって発熱部(金属多孔体)59への投入電力を測定する(ステップT1)。次に現在の投入電力と、現在の目標投入電力に差があるか否かを判定する(ステップT2)。差が無い場合には、液体供給制御部19は液体供給量を維持するように液体量調節部65(図3参照)を制御する(ステップT6)。差がある場合は、現在の投入電力の値が、予め算出され設定された現在の目標投入電力より大きいか否かを判定する(ステップT3)。大きい場合には、液体供給制御部19は液体供給量を減少させるように液体量調節部65を制御する(ステップT4)。小さい場合には液体供給制御部19は液体供給量を増加させるように液体量調節部65を制御する(ステップT5)。上述したステップT4と、ステップT5と、ステップT6を終了した後、ステップT1へと戻る。
【0099】
以上の液体供給量のフィードバック制御によって、結果として投入電力が目標投入電力で安定するように制御される。
【0100】
なお本実施形態に係る呼吸補助装置1における加湿装置9では、図6で示した制御と、図8で示した制御は独立に制御される。
【0101】
図6から図8で示した本発明に係る呼吸補助装置1のおける加湿装置9の制御は、送気ガス出口35における送気ガス出口温度に基づいた温度制御のみで電源29の投入電力が決められる。したがって液体(水)を供給すると生じる出口温度の低下を補償するために投入電力が制御される。一方で外部環境や送気ガスの流量、出口温度などでリアルタイムに目標投入電力が更新され、現実の投入電力が現実の目標投入電力になるように液体の供給量が制御される。すなわち加湿のために投入電力を直接制御するアルゴリズムではない点が特徴である。
【0102】
本発明の実施形態に係る呼吸補助装置1における加湿装置9によれば、液体(水)を水蒸気へと気化させる加湿部71、具体的には発熱部59と、発熱部59へエネルギーを供給するエネルギー供給部73、具体的にはコイル57とが空間的に分離可能な加湿装置9を構成することができる。そのため水分を含んで菌が発生しやすいといった問題が生じる可能性がある加湿部71だけを交換することができるので、メンテナンスが容易であるという優れた効果を奏する。
【0103】
本発明の実施形態に係る呼吸補助装置1における加湿装置9によれば、加湿装置9の内部に液体(水)が滞留しないので、細菌が繁殖しにくく良い衛生状態を維持しやすいという優れた効果を奏する。
【0104】
本発明の実施形態に係る呼吸補助装置1における加湿装置9によれば、電磁誘導現象を用いて発熱部59へエネルギーを付与するコイル57と発熱部59が絶縁部61によって電気的に絶縁されているので、ショートなどの事故が起きる可能性が低くなるという優れた効果を奏する。
【0105】
本発明の実施形態に係る呼吸補助装置1における加湿装置9によれば、筒型の発熱部59の内側にコイル57が配設されるので、電磁誘導現象を用いてコイル57から発熱部59へ効率的にエネルギーを付与することができるという優れた効果を奏する。
【0106】
本発明の実施形態に係る呼吸補助装置1における加湿装置9によれば、発熱部59が加温加湿したい送気ガスに触れる表面積を大きくすることが容易になるので、小型で十分な加温加湿が可能な加湿装置9が提供できるという優れた効果を奏する。
【0107】
金属多孔体は電気伝導性を有する。本発明の実施形態に係る呼吸補助装置1における加湿装置9によれば、コイル57から電磁誘導現象によって金属多孔体59に電流が流れることで抵抗加熱が生じ、水を効率的に気化させることができるという優れた効果を奏する。
【0108】
本発明の実施形態に係る呼吸補助装置1における加湿装置9によれば、コイルと電磁誘導により電流が流れる発熱部59が効率よく磁気結合されるので、コイル57から発熱部59へのエネルギー付与効率が高まるという優れた効果を奏する。
【0109】
本発明の実施形態に係る呼吸補助装置1における加湿装置9によれば、加湿装置の小型化、軽量化が可能であり、貯留させる水全体を熱することなく素早く十分な加湿が可能になるという著しく優れた効果を奏する。
【0110】
本発明の実施形態に係る呼吸補助装置1における加湿装置9によれば、加湿装置9に接続される呼吸回路5内の温度を参照して投入電力を制御することと、送気ガスについて目標とする加温加湿状態から目標となる目標投入電力を算出する目標投入電力を算出することと、投入電力と目標投入電力との差分値に基づいて液体量調節部65を制御することを独立におこなうことで、高速な加温加湿制御と、最小限の液体供給での加湿制御が可能になるという極めて優れた効果を奏する。
【0111】
本発明の実施形態に係る呼吸補助装置1における加湿装置9によれば、使用者Uのいる環境の環境変数に基づいて発熱部59への投入電力を決定するので、最低限のエネルギーと液体量(水量)で素早く十分な加温加湿が可能になるという優れた効果を奏する。
【0112】
本発明の実施形態に係る呼吸補助装置1における加湿装置9によれば、加温加湿に必要な量だけ発熱部59に液体(水)を供給することができるので、液体の水が滞留することが無くなり細菌の繁殖を抑えることができ衛生面でも優れた加湿装置が提供できるという優れた効果を奏する。
【0113】
本発明の実施形態に係る呼吸補助装置1によれば、素早い加温加湿を最小限の液体量(水量)と最適な投入電力で行うことができる小型軽量で加湿装置9を備えた呼吸補助装置が提供可能になるという優れた効果を奏する。
【0114】
なお、本発明に係る加湿装置、呼吸補助装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0115】
1 呼吸補助装置
3 インターフェース
5 呼吸回路
7 送気ガス出口温度測定部
9 加湿装置
10 送風機
13 医用ガスボンベ
15 発熱制御部
17 目標投入電力算出部
19 液体供給制御部
21 制御装置
23 外気温測定部
25 外湿度測定部
27 外部環境変数測定部
29 電源
30 筐体
31 投入電力測定部
35 送気ガス出口部
40 吸入口
47 送気ガス入口部
49 加湿空間
50 加湿加温経路
51 整流板
55 フェライト
57 コイル
59 発熱部(金属多孔体)
61 絶縁部
63 液体供給部
65 液体量調節部
67 液体貯留部
68 液体供給装置
69 電源ライン
71 加湿部
73 エネルギー供給部
75 加温部
77 加湿部
79 加温用コイル
81 加湿用コイル
83 加温用発熱部
85 加湿用発熱部
101 呼吸補助蔵置
105 加湿装置
110 ベンチレーター
115 送気ガス入口部
120 送気ガス出口部
125 呼気側呼吸回路
127 吸気側呼吸回路
130 蛇管
135 インターフェース
140 送気ガス出口温度測定部
145 加湿空間
150 発熱体
155 液体(水)
160 電源
U 使用者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2024-07-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者へ送気される送気ガスを加湿する加湿装置であって、
電磁誘導現象を用いて電気エネルギーを取得することで発熱し、前記送気ガスを加湿するために用いる液体を加熱して気化させる発熱部と、
前記電磁誘導現象により前記発熱部へエネルギーを伝達するコイルと、
前記発熱部の近傍に液体が滞留しない状態を維持するように前記液体を前記発熱部へ供給する液体供給部と、
前記発熱部へエネルギーを供給する電源と、
前記電源から前記発熱部へ投入される投入電力を測定する投入電力測定部と、
前記加湿装置内、又は、前記加湿装置に接続される呼吸回路内の温度を参照して前記投入電力を制御する発熱制御部と、
前記送気ガスが目標とする湿度となるように、前記発熱部へ供給する液体供給量を制御する液体供給制御部と、
を備えることを特徴とする加湿装置。
【請求項2】
前記液体供給部による前記液体の供給量を調節する液体供給量調節部をさらに備え、前記液体供給制御部が、前記液体供給量調節部を制御することを特徴とする請求項に記載の加湿装置。
【請求項3】
請求項1から請求項のうちのいずれか一項に記載の加湿装置を備える呼吸補助装置。
【請求項4】
電磁誘導現象を用いて電気エネルギーを取得することで発熱し、使用者へ送気され送気ガスを加湿するために用いる液体を加熱して気化させる発熱部と、
前記電磁誘導現象により前記発熱部へエネルギーを伝達するコイルと、
前記発熱部の近傍に液体が滞留しない状態を維持するように前記液体を前記発熱部へ供給する液体供給部と、
前記発熱部へエネルギーを供給する電源と、
前記電源から前記発熱部へ投入される投入電力を測定する投入電力測定部と、
を備えて前記送気ガスを加湿する前記加湿器の加湿方法であって、
前記加湿器内、又は、前記加湿器に接続される呼吸回路内の温度を参照して前記投入電力を制御する発熱制御ステップと、
前記送気ガスが目標とする湿度となるように、前記発熱部へ供給する液体供給量を制御する液体供給制御ステップと、
を備えることを特徴とする加湿方法。
【請求項5】
前記液体供給部による前記液体の供給量を調節する液体供給量調節部をさらに備え、前記液体供給制御ステップが、前記液体供給量調節部を制御することを特徴とする請求項4に記載の加湿方法。
【請求項6】
請求項4から請求項5のうちのいずれか一項に記載の加湿方法を含む呼吸補助方法。