(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111293
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】温熱具
(51)【国際特許分類】
A61F 7/03 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
A61F7/08 334R
A61F7/08 334S
A61F7/08 334N
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024101366
(22)【出願日】2024-06-24
(62)【分割の表示】P 2020201798の分割
【原出願日】2020-12-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 奈津子
(72)【発明者】
【氏名】樋渡 大樹
(57)【要約】
【課題】温熱の持続性の向上と、過度な膨れの低減とを両立した温熱具を提供すること。
【解決手段】温熱具1は、発熱に伴い蒸気を発生する発熱体3と、該発熱体3を収容する袋体35とを備える。発熱体3は、被酸化性金属、炭素材料、電解質及び水を含む発熱部3Aと、使用時に加熱対象体に対向する面側に配される通気阻害材3Bとを備える。袋体35は、使用時に加熱対象体に対向する面に配される第1シート36と、該面とは反対側の面に配される第2シート37とを備える。温熱具1は、使用者の肌に最も近い側の面を構成する表面シート5と、使用者の肌に最も遠い側の面を構成する裏面シート6とを更に備える。袋体35は、表面シート5と裏面シート6との間に配置されている。通気阻害材3Bの透気度が1000秒/100mL以上4000秒/100mL以下であり、第1シート36の透気度に対する通気阻害材3Bの透気度の比が10以上80以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱に伴い蒸気を発生する発熱体と、該発熱体を収容する袋体とを備えた温熱具であって、
前記発熱体は、被酸化性金属、炭素材料、電解質及び水を含む発熱部と、使用時に加熱対象体に対向する面側に積層される通気阻害材とを備え、
前記袋体は、使用時に加熱対象体に対向する面に配される第1シートと、該面とは反対側の面に配される第2シートとを備え、
前記温熱具は、使用者の肌に最も近い側の面を構成する表面シートと、使用者の肌に最も遠い側の面を構成する裏面シートとを更に備え、
前記袋体は、前記表面シートと前記裏面シートとの間に配置されており、
前記通気阻害材の透気度が1000秒/100mL以上4000秒/100mL以下であり、
第1シートの透気度に対する前記通気阻害材の透気度の比(透気阻害材の透気度/第1シートの透気度)が10以上80以下であり、
前記表面シートの透気度が100秒/100mL以下であり、
前記通気阻害材は、前記発熱部と前記第1シートとの間に配置されている、温熱具。
【請求項2】
前記第1シートの透気度が0秒/100mL超100秒/100mL以下である、請求項1に記載の温熱具。
【請求項3】
前記第2シートの透気度が8000秒/100mL超である、請求項1又は2に記載の温熱具。
【請求項4】
平面視において、前記発熱部の面積に対する前記通気阻害材の面積の百分率が85%超である、請求項1~3のいずれか一項に記載の温熱具。
【請求項5】
前記通気阻害材が多孔質フィルムである、請求項1~4のいずれか一項に記載の温熱具。
【請求項6】
使用時に使用者の鼻及び口を覆う形状を有する本体部と、該本体部に備えられた前記発熱体と、該本体部に取り付けられ且つ該本体部による被覆状態を維持可能な一対の耳掛け部とを備えている、請求項1~5のいずれか一項に記載の温熱具。
【請求項7】
発熱開始10分後における前記袋体の厚みが10mm以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の温熱具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温熱具に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は先に、水蒸気を発生する発熱体と、該発熱体を収容する収容体とを具備する配されるマスク用鼻部温熱具を提案した(特許文献1参照)。
【0003】
また本出願人は、着用時に着用者の鼻と口とを覆うマスク本体部と、マスク本体部に水蒸気発生体とを備えた蒸気温熱マスクを提案した(特許文献2参照)。この水蒸気発生体は、肌対向面に透気度が低いシートが配され、非肌対向面に透気度が高いシートが配されているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-136060号公報
【特許文献2】国際公開第2016/199245号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2に記載の温熱具はいずれも、蒸気の発生によって加熱対象物に温熱を付与できるものであるが、温熱の持続性の向上や、蒸気の発生に起因した温熱具の過度な膨張を低減することに関して、改善の余地があった。
【0006】
本発明は、温熱の持続性の向上と、過度な膨れの低減とを両立した温熱具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、発熱に伴い蒸気を発生する発熱体と、該発熱体を収容する袋体とを備えた温熱具に関する。
前記発熱体は、被酸化性金属、炭素材料、電解質及び水を含む発熱部と、使用時に加熱対象体に対向する面側に積層される通気阻害材とを備えることが好ましい。
前記袋体は、使用時に加熱対象体に対向する面に配される第1シートと、該面とは反対側の面に配される第2シートとを備えることが好ましい。
前記通気阻害材の透気度が1000秒/100mL以上4000秒/100mL以下であることが好ましい。
第1シートの透気度に対する前記通気阻害材の透気度の比が10以上80以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、温熱の持続性の向上と、過度な膨れの低減とを両立した温熱具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の温熱具の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す温熱具の一実施形態を示す、長手方向に沿う模式的な拡大断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す温熱具の別の実施形態を示す、長手方向に沿う模式的な拡大断面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す温熱具の更に別の実施形態を示す、長手方向に沿う模式的な拡大断面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示す温熱具の更に別の実施形態を示す、長手方向に沿う模式的な拡大断面図である。
【
図6】
図6は、温熱具から発生した蒸気量を測定する装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。本発明の温熱具は、その使用時に加熱対象体に当接させて、該加熱対象体に対して温熱を付与するために用いられる。加熱対象体としては、例えばヒトの皮膚、眼、鼻、口、及び粘膜等の各種部位や、硬質表面を有する物品などが挙げられる。
【0011】
図1には、本発明の温熱具の一実施形態が示されている。同図に示す温熱具1は、いわゆるシート状の口腔用マスクタイプのものであり、その使用時に加熱対象体の一態様であるヒトの口、好ましくはヒトの鼻及び口を覆うように当接させて、鼻、口及びその周囲に温熱を付与するために用いられるものである。同図に示す温熱具1は、後述する発熱体が発熱し、発熱に伴って所定温度に加熱された水蒸気が発生するように形成されている。これによって、温熱具1は、加熱対象体に対して温熱を付与することができる。
【0012】
図1に示す温熱具1は、使用時に使用者の口及び鼻の少なくとも一方を被覆する本体部2と、本体部2に収容された発熱体3と、一対の耳掛け部4,4とを備えている。本実施形態における本体部2はその中央部に設けられた折り曲げ線25によって二つ折りできるようになっている。このような温熱具1は、使用状態において本体部2が立体形状を有するようになっており、着用時に本体部2と使用者の口元との間に空間を形成し、使用感が向上する。
以下の説明では、温熱具1の長手方向に相当する方向を横方向Xともいい、横方向Xに直交する方向を縦方向Yともいう。
【0013】
耳掛け部4は、本体部2の横方向Xの両外端域に設けられており、横方向Xの外方へ向けて反転可能となっている。これによって、温熱具1の使用時には、各耳掛け部4,4を使用者の耳にそれぞれ掛けて、本体部2による使用者の口及び鼻の少なくとも一方の被覆状態を維持できるようになっている。同図に示す実施形態のように、各耳掛け部4は、装着性の向上の観点から、耳掛け部4を構成するシートは、伸縮性を有するシートであることが好ましい。
【0014】
本体部2は、加熱対象体に対向して配される表面シート5と、加熱対象体から遠い側に位置する裏面シート6とを備える。本体部2は、好ましくは扁平のものである。表面シート5は、温熱具1の使用時において、使用者の肌に近い側に配され、使用者の肌と当接する部位を含む面を構成する。裏面シート6は、使用者の肌から遠い側の面に位置し、温熱具1の外面を形成している。本実施形態における本体部2は、折り曲げ線25が可撓軸となって、表面シート5どうしが対向するように二つ折りできるように構成されている。本体部2は、その平面視において、折り曲げ線25を対称軸として線対称に形成されている。
【0015】
本実施形態における本体部2は、使用時において上方に位置するように配される上縁部27と、使用時において下方に位置するように配される下縁部28とを有する。
図1に示すように、上縁部27は、温熱具1の着用時に使用者の頬骨等の形状に沿う形状に湾曲して形成されている。また同図に示すように、下縁部28は、温熱具1の使用者の顎全体を覆う形状に湾曲して形成されている。
【0016】
表面シート5及び裏面シート6は、これらを重ね合わせた状態で、融着又は接着によって互いに接合されている。典型的には、発熱体3を収容した袋体35は、温熱具1の平面視において折り曲げ線25を対称軸として線対称となるように配され、両シート5,6の間に横方向Xに互いに離間して2つ保持されている。
表面シート5及び裏面シート6のうち、少なくとも表面シート5は、通気性を有する繊維シートから構成されることが好ましい。各シート5,6の詳細な説明は後述する。繊維シートは、複数の構成繊維が絡合、融着及び接着の少なくとも一種の態様によりシート状に保形された構成繊維の集合体である。
【0017】
表面シート5及び裏面シート6の間に保持される発熱体3は、空気中の酸素と反応して発熱して、発熱に伴って、所定温度に加熱された水蒸気が発生するように形成されている。つまり、発熱体3は、発熱に伴い蒸気を発生する機能を有する。
【0018】
図1に示す耳掛け部4はシートからなり、該シートに、横方向Xに延びる挿通部4Aが形成されている。挿通部4Aは、耳掛け部4を耳に掛ける際に耳を通すための穴である。これに代えて、挿通部4Aは、耳を通すことができる貫通スリット等によって形成されていてもよい。
図1に示すように、耳掛け部4は、横方向Xの両外端域において、本体部2における表面シート5の外面に連続的に又は間欠的に接合されている。これによって、本体部2と耳掛け部4とが接合された接合領域9が形成されている。接合領域9は、接合端部9sを軸として、耳掛け部4を反転させるときの折り曲げ部としても機能する。
【0019】
図2及び
図3には、温熱具1における発熱体3の断面の一実施形態が模式的に示されている。同図に示すように、発熱体3は、好ましくは扁平状のものである。発熱体3は、空気中の酸素との酸化反応に伴う発熱を生じさせる被酸化性金属3a、酸化反応の触媒となる活性炭等の炭素材料3b、アルカリ金属塩等の電解質3c及び水を含む発熱部3Aを備える。被酸化性金属3a及び炭素材料3bは好ましくはいずれも粒子である。同図に示す実施形態では。説明の便宜上、電解質3cが固体状で存在する形態として説明しているが、この形態に限られず、電解質3cが発熱部3Aに含まれる水に溶解して目視できない形態で存在していてもよい。発熱部3Aがこのような構成となっていることによって、発熱体3は、発熱に伴い水蒸気を発生できるようになっている。
【0020】
発熱部3Aは、例えば、被酸化性金属3a、炭素材料3b、電解質3c及び水を含むペースト状の発熱組成物が基材シート40上に備えられたシート状物を用いることができる。この形態の一例が
図2に示されている。
これに代えて、発熱部3Aとしては、被酸化性金属3a、炭素材料3b、電解質3c、繊維状物3e及び水を含む繊維シートから構成された発熱シートが基材シート40上に備えられたシート状物を用いることができる。この形態の一例が
図3に示されている。
発熱シートや発熱組成物を構成する各種材料としては、例えば後述する各種材料を用いることができる。
【0021】
本発明において「蒸気が発生する」とは、後述する方法によって測定される水蒸気の総発生量が好ましくは10mg/10分以上であることをいう。この水蒸気発生量は、発熱部3Aとして、例えば被酸化性金属、炭素材料、電解質及び水を含有させた上述のシート状物を用いることによって容易に達成することができる。
【0022】
図2及び
図3に示す発熱体3は、上述した発熱部3Aと、発熱部3Aの一方の面に配される基材シート40とに加えて、発熱部3Aの他方の面に配される通気阻害材3Bを更に備える。通気阻害材3Bは好ましくは扁平状である。発熱体3を構成する通気阻害材3Bは、温熱具の使用時において、加熱対象体であるヒトの鼻や口に対向する面側に積層されて配される。また、基材シート40は、加熱対象体に対向する面とは反対側の面側に配される。つまり、通気阻害材3Bは、その外面が表面シート5の内面と対向するように配される。また基材シート40は、その外面が裏面シート6の内面と対向するように配される。通気阻害材3Bは、発熱部3Aの他方の面に隣接するように直接積層されていてよく、発熱部3Aの他方の面に他の部材が介在した状態で間接的に積層されていてもよい。
【0023】
図2及び
図3に示す袋体35はいずれも、発熱体3とは別体に構成されており、発熱体3を収容可能に構成されている。
図2及び
図3に示す袋体35はいずれも、一方の面が第1シート36から構成され、他方の面が第2シート37から構成される。袋体35は、好ましくは扁平状のものである。袋体35は、温熱具の使用時において、第1シート36が加熱対象体に対向する面(以下、この面を対向面ともいう。)側に配され、第2シート37が加熱対象体に対向する面とは反対側の面(以下、この面を非対向面ともいう。)側に配される。
【0024】
発熱体3、袋体35及び本体部2を構成するシートの配置関係の詳細は以下のとおりである。
図2及び
図3に示すように、温熱具の対向面側においては、発熱体3における通気阻害材3Bと、使用者の肌に最も近い側の面を構成する表面シート5との間に、袋体35における第1シート36が配されている。同図に示す発熱体3を構成する通気阻害材3Bと、袋体35における第1シート36とは互いに分離している。
【0025】
また
図2及び
図3に示すように、温熱具の非対向面側においては、発熱体3における基材シート40と、使用者の肌に最も遠い側の面を構成する裏面シート6との間に、袋体35における第2シート37が配されている。発熱体3を構成する基材シート40と袋体35における第2シート37とは互いに分離している。
【0026】
本発明の温熱具は、発熱体3の加熱対象体に対向する面側に配される通気阻害材3Bの透気度と、袋体35の加熱対象体に対向する面側に配される第1シート36の透気度とが所定の関係を有することに特徴の一つを有している。本明細書では、特に断りのない限り、JIS P8117に記載の方法によって測定された透気抵抗度(秒/100mL)を、単に「透気度」ともいう。
【0027】
詳細には、JIS P8117に記載の方法によって各シートの透気度を測定したときに、第1シート36の透気度P1に対する通気阻害材3Bの透気度PBの比(PB/P1)は、好ましくは10以上、より好ましくは20以上、更に好ましくは30以上であり、好ましくは80以下、より好ましくは70以下、更に好ましくは60以下である。
【0028】
透気度の値が小さいことは、空気の通過に時間がかからないことを意味しているので、通気しやすいことを意味している。反対に、透気度の値が大きいことは、空気の通過に時間がかかることを意味しているので、通気しにくいことを意味している。つまり、上述した比(PB/P1)は、第1シート36が通気阻害材3Bよりも通気しやすいことを実質的に意味している。このような構成となっていることによって、発熱体3から温熱を長時間発生させることができるとともに、水蒸気を温熱具外部に放出させることができるので、水蒸気の発生に起因する袋体35の膨張を低減することができる。
【0029】
通気阻害材3Bの透気度は、好ましくは1000秒/100mL以上、より好ましくは1200秒/100mL以上、更に好ましくは1500秒/100mLである。また通気阻害材3Bの透気度は、好ましくは4000秒/100mL以下、より好ましくは3500秒/100mL以下、更に好ましくは3000秒/100mL以下である。通気阻害材3Bの透気度がこのような範囲であることによって、発熱体3からの発熱のコントロールが更に容易となる。
【0030】
第1シート36の透気度は、温熱及び水蒸気の放出を第1シートが配された面側から放出させやすくする観点から低いことが好ましく、好ましくは100秒/100mL以下、より好ましくは50秒/100mL以下、更に好ましくは10秒/100mL以下であり、0秒/100mL超以上がより更に好ましい。第1シート36の透気度がこのような範囲であることによって、発熱体3から発生した温熱及び水蒸気を袋体35の外部へ容易に放出することができ、袋体の膨れをより低減することができる。
【0031】
以上の構成を有する温熱具は、通気の度合いが相対的に低い通気阻害材3Bによって発熱体3の酸化反応及び該反応に伴う発熱を適切に制御して、温熱を持続的に発生させて、使用者の鼻や口等の加熱対象体に対して温熱を長時間付与させることができる。これに加えて、通気の度合いが相対的に高い第1シート36を含む袋体35を発熱体3とは別体に設けることによって、発熱体3への空気中の酸素供給を容易にしながらも、発熱体3の発熱によって発生した水蒸気を袋体35を介して外部に放出しやすくすることができ、使用者に対して心地よい温感を与えることができる。更に、発熱体3によって水蒸気が多く発生した場合でも、袋体35から容易に水蒸気を放出して袋体35の膨れを抑制することができるので、使用時における肌への圧迫等の不快感を低減したり、膨れに起因する使用時の温熱具の外観の悪化を抑制したりすることができる。
【0032】
後述する実施例に示すように、通気阻害材3B及び第1シート36としてともに透気度が低いシート(すなわち通気しやすいシート)を用いた場合は、使用時における袋体35の膨れは少ないが、発熱体3の酸化反応が短時間で進行してしまうため、温熱及び水蒸気発生の持続性に劣るものとなる。一方、逆に、持続性を改善するには、透気度の高いシート(すなわち通気しにくいシート)を用いればよいが、使用時における袋体35の膨れが大きくなり、使用感に劣ってしまう。この点に関して、本発明によれば、通気阻害材3Bと第1シート36との透気度を所定の関係とし、通気阻害材3B及び第1シート36を別体に設けることによって、酸化反応の制御に起因する発熱持続性の向上と、袋体の過度な膨れの低減とを高いレベルで両立することができる。
【0033】
第2シート37の透気度は、温熱及び水蒸気の放出を加熱対象体に向けて配向される第1シートが配された面側から放出させやすくする観点から、高いことほうが好ましく、好ましくは8000秒/100mL超、より好ましくは10000秒/100mL以上、更に好ましくは非通気のシートである。「非通気」とは、JIS P8117:2009に従って測定される透気度が80000秒/100mL以上であることをいう。第2シート37の透気度がこのような範囲であることによって、発熱体3から発生した温熱及び水蒸気が、温熱具の非対向面側に漏出することを低減することができる。その結果、発熱体3から発生した温熱及び水蒸気を温熱具の対向面側に効率的に供給して、温感及び水蒸気を使用者に更に心地よく知覚させることができる。
【0034】
同様の観点から、基材シート40の透気度は、温熱及び水蒸気の放出を加熱対象体に向けて配向される第1シートが配された面側から放出させやすくする観点から、高いことが好ましく、好ましくは8000秒/100mL以上、より好ましくは20000秒/100mL以上、非通気のシートであることが一層好ましい。
発熱体3から発生した温熱及び水蒸気を対向面側に更に効率的に供給させる観点から、基材シート40の好適な透気度の範囲は、第2シート37の透気度の好適な透気度の範囲とともに満たすことが好ましい。
【0035】
表面シート5の透気度は、好ましくは100秒/100mL以下、より好ましくは50秒/100mL以下、更に好ましくは10秒/100mL以下であり、一層好ましくは1秒/100mL以下であり、より一層好ましくは0秒/100mL超である。表面シート5の透気度がこのような範囲にあることによって、発熱体3から発生した温熱及び水蒸気を表面シート5を介して加熱対象体側に十分に供給させることができる。このような効果を顕著なものとする観点から、表面シート5の好適な透気度の範囲は、通気阻害材3B及び第1シート36の好適な各透気度の範囲とともに満たすことが好ましい。
【0036】
裏面シート6の透気度は、表面シート5よりも透気度が低いことを条件として、好ましくは100秒/100mL以下、より好ましくは50秒/100mL以下、更に好ましくは10秒/100mL以下であり、一層好ましくは1秒/100mL以下であり、より一層好ましくは0秒/100mL超である。このような裏面シート6を用いることによって、発熱体3から発生した熱及び水蒸気が温熱具の非対向面側に漏出することを低減でき、加熱対象体に効率的に温熱及び水蒸気を付与させることができる。
【0037】
上述のとおり、本体部2は、表面シート5と裏面シート6とを備える。温熱具1を口腔用マスクの態様として用いたときに、発熱体3から発生する温熱及び水蒸気を加熱対象体に適切に付与させつつ、温熱具1の使用者が呼吸しやすい程度の通気性を確保して、使用感を良好にする観点から、本体部2は所定の通気抵抗を有することが好ましい。詳細には、本体部2の通気抵抗は、好ましくは0.02(kPa・sec/m)以上、より好ましくは0.03(kPa・sec/m)以上であり、好ましくは0.70(kPa・sec/m)以下、より好ましくは0.40(kPa・sec/m)以下、である。
【0038】
表面シート5の通気抵抗は、0.05(kPa・sec/m)以下が好ましく、0.035(kPa・sec/m)以下がより好ましく、0.01kPa・sec/m)以上が好ましく、0.02(kPa・sec/m)以上がより好ましい。
このような表面シート5を用いることによって、発熱体3から発生した温熱及び水蒸気を表面シート5を介して加熱対象体側に十分に供給させることができる。このような効果を顕著なものとする観点から、温熱具1を口腔用マスクの態様として用いることが好ましく、また、表面シート5の好適な通気抵抗の範囲は、通気阻害材3B及び第1シート36の好適な各透気度の範囲とともに満たすことも好ましい。
【0039】
裏面シート6の通気抵抗は、表面シート5の通気抵抗よりも高いことが好ましく、詳細には、0.1(kPa・sec/m)以下が好ましく、0.06(kPa・sec/m)以下がより好ましく、0.02(kPa・sec/m)以上が好ましく、0.04(kPa・sec/m)以上がより好ましい。
このような裏面シート6を用いることによって、発熱体3から発生した熱及び水蒸気が温熱具の非対向面側に漏出することを更に低減でき、加熱対象体に温熱及び水蒸気を更に効率的に付与させることができる。これに加えて、温熱具1を口腔用マスクの態様として用いたときに、温熱具1の使用者が呼吸しやすい程度の通気性を確保して、使用感を良好にすることができる。
【0040】
本体部2、表面シート5、および裏面シート6の通気抵抗(単位:kPa・sec/m)は、以下の方法で測定される。
詳細には、まず、表面シート5及び裏面シート6を本体部2から5~10cm四方の平面寸法でそれぞれ切り出す。切り出す寸法は、表面シート5及び裏面シート6とで同一とする。切り出した表面シート5及び裏面シート6を隣接して重ね合わせて、シート積層体の状態とし、通気抵抗評価装置(KES-F8、カトーテック(株)製)の通気穴(内径面積2πcm2)を覆うように配置し、板で挟んで固定する。測定は、温度20℃、湿度65%の環境下において、試験面積2πcm2、ピストン速度2cm/sec、通気量4mL/cm2/secにて空気を試料に送り、放出・吸引時の圧力から通気抵抗を測定することで行う。
表面シート5又は裏面シート6の通気抵抗を測定する場合には、上述の通気抵抗評価装置に配置する試料を、シート積層体に代えて、表面シート5単体又は裏面シート6単体を用いて、上述の方法と同様に測定する。
表面シート5及び裏面シート6が複層構造である場合は、層構造を剥離又は分離することなく、全て重ね合わせた状態で測定する。
【0041】
発熱体3における発熱部3Aは、被酸化性金属と水との含有割合が所定の範囲となっていることが好ましい。
詳細には、発熱体3における発熱部3Aは、被酸化性金属3aの含有質量に対する水の含有質量の比(水/被酸化性金属)が、好ましくは0.4以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.6以上である。また、前記質量比(水/被酸化性金属)は、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.0以下、更に好ましくは0.8以下である。このよう含有割合の関係を満たすことによって、良好な発熱特性を発現させ、発熱及び水蒸気の持続性を更に向上することができる。
【0042】
また、発熱体3は、炭素材料3bの含有質量に対する水の含有質量の比(水/炭素材料)が、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは5以上である。また、前記質量比(水/炭素材料)は、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは20以下である。このよう含有割合の関係を満たすことによって、良好な発熱特性を発現させ、発熱及び水蒸気の持続性を更に向上することができる。
【0043】
また発熱体3は、被酸化性金属3aの含有質量に対する炭素材料3bの含有質量の比(炭素材料/被酸化性金属)が、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.03以上、更に好ましくは0.06以上である。また、(炭素材料/被酸化性金属)の質量比は、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.25以下、更に好ましくは0.10以下である。このよう含有割合の関係を満たすことによって、良好な発熱特性を発現させ、発熱及び水蒸気の持続性を更に向上することができる。
【0044】
また温熱具1を平面視したときに、発熱部3Aの面積に対する通気阻害材3Bの配置面積の割合は、百分率で表して、好ましくは85%超、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、一層好ましくは100%、すなわち通気阻害材3Bが発熱部3Aの一方の面全域を覆っていることが一層好ましい。このような面積割合の関係を満たすことによって、良好な発熱特性を発現させ、発熱及び水蒸気の持続性を更に向上することができる。上述した配置面積の割合は、通気阻害材3Bを巨視的に見たときの平面積に基づくものであり、例えば繊維間隙や微細な貫通孔等といった目視にて確認できない空隙は上述の配置面積の算出から除外される。
このような構成とするためには、例えば通気阻害材3Bの平面積が発熱部3Aよりも小さくなるように、ストライプ状や円形状等の平面視形状に構成した通気阻害材3Bを配したり、通気阻害材3Bの平面視外寸法と発熱部3Aの平面視外寸法とを一致させるように配したりすることによって達成することができる。
本実施形態では、通気阻害材3Bが扁平状の発熱部3Aの一方の主面全域を覆っており、且つ基材シート40が扁平状の発熱部3Aの他方の主面全域を覆っている。
【0045】
水蒸気の連続的な発生と、酸化反応の適切な制御とを両立する観点から、
図4及び
図5に示すように、発熱体3中に吸水性樹脂3Gを含むことが好ましい。吸水性樹脂を発熱体中に含むことによって、発熱体に存在する余剰の水分を吸収させることができる。その結果、被酸化性金属の酸化反応を効率良く且つ持続的に進行させて発熱特性を向上させることができるとともに、吸水性樹脂及び発熱体に保持されている水分を水蒸気として持続的に放出させることができるので、温熱具の使用者に対して心地よい温感を与えることができる。
図4及び
図5においては、説明の便宜上、発熱体3としてペースト状の発熱部3Aを用いた場合を例にとり説明しているが、これに代えて、発熱部3Aを発熱シートの態様とした場合でも同様に適用可能である。
【0046】
発熱体3における吸水性樹脂の存在態様の一実施形態が
図4に示されている。同図に示すように、発熱体3は、吸水性樹脂3Gの粒子を含む層(以下、この層を吸水性樹脂層ともいう。)3Lが発熱部3Aと通気阻害材3Bとの間に配されていることが好ましい。
【0047】
図4に示す実施形態では、吸水性樹脂3Gが発熱部3Aと通気阻害材3Bとの間に他の部材を介することなく直接接触して配されており、これによって吸水性樹脂層3Lが単一層状に配されている。本実施形態における吸水性樹脂3Gの粒子は、発熱体3の一部を構成している。同図に示す吸水性樹脂層3Lは、説明の便宜上、該層3Lと隣接した発熱部3Aとの境界が明瞭に図示されているが、実際の温熱具1においては、発熱部3Aとの境界が不明瞭となっている場合がある。
【0048】
発熱体3における吸水性樹脂3Gの存在態様の別の実施形態が
図5に示されている。上述の実施形態と同様に、吸水性樹脂層3Lは、発熱部3Aと通気阻害材3Bとの間に配されている。
図5に示す実施形態の吸水性樹脂層3Lは、吸水性樹脂3Gの粒子が、同一又は異なる2枚の通気性シート38.38間に挟持されて形成されたシート状物である。この場合、典型的には、吸水性樹脂層3Lと発熱部3Aとの境界は明瞭である。本実施形態では、発熱特性の向上と、水蒸気の持続的な向上とを高いレベルで両立する観点から、吸水性樹脂層3Lにおける一方の通気性シート38と、通気阻害材3Bとが互いに接触して配されていることが好ましく、吸水性樹脂層3Lにおける他方の通気性シート38と発熱部3Aとが互いに接触して配されることが好ましい。
【0049】
また、吸水性樹脂3Gの更に別の存在態様として、例えば、吸水性樹脂3Gの粒子が、発熱部3Aにおける被酸化性金属3a、炭素材料3b及び電解質並びに水と混合されて存在している態様(図示せず)が挙げられる。
【0050】
吸水性樹脂3Gの存在態様のうち、
図4又は
図5に示すように、吸水性樹脂層3Lが発熱部3Aと通気阻害材3Bとの間に配されていることが好ましい。この場合、通気阻害材3Bは、発熱体3の一方の外面に配されることも好ましい。また、
図5に示すような吸水性樹脂層3L等の他の部材を発熱部3Aと通気阻害材3Bとの間に配する場合、当該他の部材と通気阻害材3Bとを重ね合わせたときの透気度が、上述した通気阻害材3Bの透気度の範囲となっていることも好ましい。これによって、優れた発熱特性を持続的に発現させつつ水蒸気を持続的に放出させて、水蒸気を従来の温熱具よりも多量に発生させることができるので、温熱具を口腔用マスクの形態とした場合に、加熱対象体として、使用者の口、頬、鼻、喉等の口内及び口外並びにその周囲の部位に心地よい温感と潤いとを両立して知覚させることができる。
【0051】
本発明の温熱具は、発熱開始から10分経過した時点において、発熱体3が収容された袋体35の厚みが所定の範囲となっていることが好ましい。詳細には、発熱開始から10分経過した時点における、発熱体3が収容された袋体35の厚みT2は、好ましくは10mm以下、より好ましくは8mm以下、更に好ましくは6mm以下、一層好ましくは4mm以下である。このような構成になっていることによって、温熱具1の使用時において、袋体35の膨れに起因する圧迫等の不快感が生じづらくすることができ、温熱具の使用感が更に向上する。
このような厚みは、例えば、通気阻害材3Bの透気度を上述した範囲としたり、通気阻害材3Bの配置面積を上述した範囲としたり、比(PB/P1)を上述の範囲となるようにしたりすることによって達成することができる。
【0052】
発熱開始から10分経過した時点における、発熱体3が収容された袋体35の厚みT2は、発熱開始時点から所定時間経過した該袋体の中央部の厚みを対象として、レーザー変位計を用いて無荷重下で3回測定したときの算術平均値とする。
なお発熱開始の時点は、パッケージ等に封入されて密封状態となっている未発熱の温熱具1を対象とし、該パッケージ等の開封を開始して、温熱具1を空気等の酸素含有雰囲気に触れさせ且つ開封開始から平面台上に袋体35を載置するまでに要する時間、つまり開封開始から2秒後の時点と定義する。
【0053】
また、発熱開始時点における発熱体3が収容された袋体35の厚みT1は、袋体35の過度な膨らみによる圧迫を抑制する観点から、好ましくは2mm以上、より好ましくは3mm以上であり、好ましくは8mm以下、より好ましくは5mm以下である。厚みT1は、発熱開始時点における発熱体3が収容された袋体35を対象として、上述の方法と同様に測定することができる。
【0054】
また袋体35の厚み変化量は、袋体35の過度な膨らみによる圧迫を抑制する観点から、厚みT2と厚みT1との差(T2-T1)で表して、厚みT2>厚みT1を条件として、好ましくは10mm以下、より好ましくは8mm以下、更に好ましくは3mm以下であり、0mm超が現実的である。
【0055】
本発明の温熱具1は、45℃以上の温度が保持される時間(以下、45℃以上保持時間ともいう。)が、好ましくは45分以上、より好ましくは60分以上であり、好ましくは90分以下、より好ましくは75分以下である。このような構成となっていることによって、温熱具を口腔用マスクの形態とした場合に、温熱具1の使用時において、心地よい温熱を使用者の口、頬、鼻、喉等の口内及び口外並びにその周囲の部位等の加熱対象体により持続的に知覚させることができる。
このような温度の持続時間は、例えば
図4又は
図5に示すような構成で吸水性樹脂3Gを配した構成を採用することによって、容易に達成することができる。
【0056】
45℃以上保持時間は、例えば室温20℃、湿度50%RHの環境下において、以下の方法で測定することができる。
まず、酸素遮断袋内に密閉収容した測定対象の温熱具を対象として、酸素遮断袋を開封し、そして、1つの発熱体を袋体に収容された状態で温熱具から取り出す。
次いで、袋体の第2シート37の外面に温度センサーを設置して、袋体35の第1シート36が上面となるように固定する。温度センサーは、SUS板(500gの開孔プレート)の第1シートとの対向面にJIS S4100に記載された被覆材(綿100%、テックス番手5.905双糸のネルを8枚重ねたもの)を配した状態で、該被覆材と第1シート36との間に固定する。
そして、JIS S4100に記載された測定機を温度センサーに接続した状態で、温度を経時的に測定する。発熱開始時点を測定開始時点として10秒間隔で温度を測定し、計120分間測定を行う。
縦軸を計測温度(℃)、横軸を計測時間(秒)としてプロットした発熱プロファイルから、45℃以上の温度が計測された時間の長さを45℃以上保持時間とする。また温熱具の最高到達温度を測定及び算出する場合には、同発熱プロファイルから計測された最高温度を、最高到達温度とする。
【0057】
本発明の温熱具1は、発熱体3の坪量(g/m
2)に対して、温熱具1の発熱開始時点から60分後までに発生した水蒸気の総発生量(mg・10min)の比R5が、所定の範囲であることが好ましい。
詳細には、比R5は、好ましくは0.34以上、より好ましくは0.4以上、更に好ましくは0.5以上である。また比R5は、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.7以下、更に好ましくは0.6以下である。このような構成となっていることによって、発熱特性に優れ且つ、水蒸気発生量が高いので、温熱具を口腔用マスクの形態とした場合に、加熱対象体として、使用者の口、頬、鼻、喉等の口内及び口外並びにその周囲の部位に心地よい温感と潤いとを両立して知覚させることができる。
このような比R5は、例えば
図4又は
図5に示すような構成で吸水性樹脂3Gを配した構成を採用したり、上述した透気度を有する通気阻害材3Bを第1シート36と対向するように配したり、比(PB/P1)を上述した範囲とすることによって容易に達成することができる。
【0058】
水蒸気発生量の測定は、例えば
図6に示す構成を有する装置100を用いて測定することができる。
装置100は、アルミニウム製の測定室101(容積4.2L)、測定室101の下部に連通して配された流入路102、及び測定室101の上部に連通して配された流出路103を備える。流入路102は、空気供給部(図示せず)から供給された除湿空気(湿度2%RH未満、流量2.1L/分)を測定室101に流入できるようになっている。これに加えて、装置100は、流入路102に設けられた入口温湿度計104及び入口流量計105、流出路103に設けられた出口温湿度計106及び出口流量計107、測定室101内に設けられた温度計(サーミスタ)108を備える。温度計108としては、好ましくは温度分解能が0.01℃程度のものを使用する。
【0059】
装置100を用いた水蒸気の総発生量の測定方法は、以下のとおりである。
まず、酸素遮断袋内に密閉収容した測定対象の温熱具を対象として、酸素遮断袋を開封し、そして、1つの発熱体を取り出す。発熱体が袋体に収容されている場合、発熱体を袋体とともに取り出す。
取り出した発熱体の袋体の一方の面が外面に向くように測定室101に載置し、温度計108をその上に載せる。袋体の一方の面と他方の面とが通気性の異なるシートで構成されている場合、袋体における通気性の高いシート側の面が外面に向くように測定室101に載置し、該面上に温度計108を載せる。
この状態で測定室101の下部より流入路102を介して除湿空気を流し、入口温湿度計104と出口温湿度計106とで計測される各温度及び各湿度から、測定室101の空気流通前後の絶対湿度の差を求める。さらに入口流量計105と出口流量計107とで計測される空気流量から、発熱具から放出された水蒸気量を算出する。水蒸気の総発生量は、温熱具を酸素遮断袋から取り出して発熱体を空気に接触させた時点を測定開始時点とし、該時点から所定時間に測定された総量とする。所定時間は、例えば10分間、30分間又は60分間とすることができるが、これらの時間に限られず適宜設定可能である。
【0060】
以下に、温熱具の構成材料について説明する。
発熱体3を構成する被酸化性金属3aの粒子としては、例えば、鉄、アルミニウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム及びカルシウム等の粒子が挙げられる。これらは単独で又は二種以上組み合わせて用いることができる。
これらの中でも取り扱い性、安全性、製造コストの点から、金属鉄の粒子集合体を用いることが好ましい。すなわち、鉄粉が好ましく用いられる。鉄粉としては、例えば、還元鉄粉及びアトマイズ鉄粉から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0061】
発熱体3を構成する炭素材料3bの粒子としては、酸化反応を促進させるための機能を有し、具体的には、被酸化性金属への酸素保持供給材及び触媒能のうち一種以上としての機能を有しているものを用いることができる。
このような炭素材料としては、例えば、椰子殻炭、木炭粉、暦青炭、泥炭及び亜炭等の活性炭、カーボンブラック、アセチレンブラック、並びに黒鉛等の粉末が挙げられる。これらは単独で又は二種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、酸素供給能及び触媒能の良好なバランスを有する点から、炭素材料の粒子として、活性炭の粒子の集合体である粉末が好ましく用いられる。
【0062】
発熱体3に含まれる電解質3cとしては、例えば、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属とリン酸若しくは硫酸との塩、又はアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の塩化物若しくは水酸化物のうち一種又は二種以上が挙げられる。これらのうち、化学的安定性及び生産コストに優れる観点から、電解質としては、リン酸三カリウム、水酸化カリウム、塩化ナトリウム、及び塩化カリウムのうち一種又は二種以上を用いることが好ましい。
【0063】
発熱体3に含まれる吸水性樹脂3Gとしては、例えばデンプン、架橋カルボキシルメチル化セルロース、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合体又は共重合体等、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリアクリル酸塩グラフト重合体の一種以上が挙げられる。ポリアクリル酸塩としては、ナトリウム塩を用いることができる。
また、吸水性樹脂の形状としては、球状、塊状、ブドウ房状、繊維状、又はこれらの組み合わせ等からなる粒子が挙げられ、好ましくはこれらの粒子の集合体からなる粉末である。
【0064】
発熱体3における発熱部3Aが繊維材料を含んで構成される発熱シート(
図3参照)の態様である場合、繊維材料としては、天然及び合成の繊維材料や、再生繊維材料を特に制限無く用いることができる。
天然繊維材料としては、例えば、コットン、カボック、木材パルプ、非木材パルプ、落花生たんぱく繊維、とうもろこしたんぱく繊維、大豆たんぱく繊維、マンナン繊維、ゴム繊維、麻、マニラ麻、サイザル麻、ニュージーランド麻、羅布麻、椰子、竹、いぐさ、麦わら等の植物繊維;羊毛、やぎ毛、モヘア、カシミア、アルカパ、アンゴラ、キャメル、ビキューナ、シルク、羽毛、ダウン、フェザー、アルギン繊維、キチン繊維、ガゼイン繊維等の動物繊維;石綿等の鉱物繊維等が挙げられる。これらの繊維材料は単独で又は複数組み合わせて用いることができる。
【0065】
合成繊維材料としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂;ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン及びポリスチレンなどのポリビニル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂;アラミド樹脂;ポリウレタン樹脂;並びにこれらの樹脂の共重合体;等の熱可塑性樹脂を含む合成樹脂繊維、アセテート等の半合成樹脂を含む半合成樹脂繊維、金属繊維、炭素繊維、ガラス繊維等が挙げられる。再生繊維材料としては、キュプラ、レーヨン等の再生繊維が挙げられる。これらの繊維材料は単独で又は複数組み合わせて用いることができる。
これらのうち、被酸化性金属の均一な分散性と、空隙の確保による酸素透過性とを両立して、発熱特性を向上させる観点から、発熱部3Aに含まれる繊維材料は、木材パルプ、コットン及びポリエステルのうち少なくとも一種を用いることが好ましい。
【0066】
温熱具1に用いられ得る各種シート及び通気阻害材は、上述した透気度を満たすことを条件として、透湿性、風合い、伸縮性、強度や、発熱シート及び発熱組成物の構成材料の漏れ出し防止等の性質を考慮して適宜決定すればよい。
温熱具1に用いられ得るシートは、例えば不織布、織布、紙などの繊維シート、孔の有無を問わない樹脂フィルム、樹脂発泡シート、金属シート、繊維シートと樹脂フィルムとのラミネート又はこれらの組み合わせ等が用いられる。
不織布としては、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、ニードルパンチ不織布、メルトブローン不織布、サーマルボンド不織布、ケミカルボンド不織布、スパンレース不織布、カード法又はエアレイド法により製造された不織布等が挙げられる。
紙としては、エアレイド不織布又は湿式抄紙体を用いることができる。この場合、紙は、繊維どうしを物理的に又は化学的に接合するためのバインダ化合物等を含んでいてもよい。
【0067】
通気阻害材3Bとしては、例えば上述した不織布、織布、紙などの繊維シートや、樹脂フィルム等の少なくとも一種が挙げられる。通気阻害材3Bとして樹脂フィルムを用いる場合、該フィルムは透湿性且つ液不透過性であることが好ましい。透湿性且つ液不透過性である樹脂フィルムとしては、例えば、樹脂フィルムに複数の貫通孔を設けたものや、前記ポリオレフィン樹脂と炭酸カルシウム等のフィラーとを含む樹脂混合物のシート状物を一軸又は二軸延伸して得られる多孔質フィルムを用いることができる。透気度や透湿度は、延伸の度合いを調整することによって適宜変更することができる。
これらの材料の他、上述した透気度の条件を満たす限りにおいて、上述した熱可塑性樹脂を発熱部3Aの一方の面に間欠的に又は連続的に塗布する等して層状に形成したものを通気阻害材3Bとしてもよい。
【0068】
温熱具1に用いられ得るシートの原料繊維としては、上述した各種植物繊維、動物繊維、合成樹脂繊維、半合成樹脂繊維、金属繊維、炭素繊維、ガラス繊維、再生繊維等が挙げられる。これらの繊維材料は単独で又は複数組み合わせて用いることができる。
【0069】
通気性が高いシートとしては、メルトブローン不織布が好適に用いられる。風合いを良好にする目的で用いられるシートとしては、エアスルー不織布やサーマルボンド不織布が好適に用いられる。
伸縮性を発現させる目的で用いられるシートとしては、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成繊維を含むエアスルー不織布やスパンボンド不織布、サーマルボンド不織布等が用いられる。このような不織布は、スチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー又はポリウレタン系エラストマー等の熱可塑性エラストマーや、天然ゴム、再生ゴム等を更に含む伸縮性不織布としてもよい。
【0070】
強度を付与する目的で用いられるシートとしては、スパンボンド不織布やスパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、ケミカルボンド不織布等が好適に用いられる。上述した不織布に加えて、又はこれに代えて、不織布をシリコーンや界面活性剤等で表面処理したものを用いたり、ポリエチレンやポリウレタン等の熱可塑性樹脂を原料とする発泡シート等を用いたりすることができる。
また、これらのシートは、繊維の原料、繊維径、繊維の捲縮の度合い等が異なる繊維を複数混合して用いたり、シートを複数組み合わせたりして、所望の性質を発現させることもできる。
温熱具1に用いられ得る各種シートは、それぞれ独立して、単層及び多層を問わない一枚のシートのみからなる単一構造であってもよく、二種以上のシートを重ね合わせた積層構造であってもよい。
【0071】
温熱具に用いられる各種シートの好適な態様は、以下のとおりである。
通気阻害材3Bとしては、発熱部3A中の適切な水分の保持と、酸素及び水蒸気の効果的な流通とを両立する観点から、好ましくは多孔質フィルムである。多孔質フィルムは単独で用いてもよく、あるいは上述した透気度の条件を満たす限りにおいて、必要に応じて、上述した不織布等とのラミネートとして用いてもよい。また上述した透気度の条件を満たす限りにおいて、多孔質フィルムとして、例えばWO2007/046342公報に記載のものや、あるいは炭酸カルシウム含有ポリエチレンフィルム(商品名:TSF-EU、(株)興人フィルム製)などの市販品を用いることができる。
【0072】
第1シート36としては、好ましくは多孔の有無を問わない樹脂フィルム、樹脂発泡シート、又は繊維シートと樹脂フィルムとのラミネートである。発熱部3A中の適切な水分の保持と、酸素及び水蒸気の効果的な流通とを両立する観点から、第1シート36は、更に好ましくは多孔質フィルムである。多孔質フィルムは単独で用いてもよく、あるいは上述した透気度の条件を満たす限りにおいて、必要に応じて、上述した不織布等とのラミネートとして用いてもよい。
【0073】
第2シート37としては、温熱具1の製造効率の観点から、上述した透気度を満たすことを条件として、好ましくは多孔の有無を問わない樹脂フィルム、又は繊維シートと樹脂フィルムとのラミネートである。
【0074】
表面シート5としては、加工のしやすさ及び製造コストの低減の観点、良好な保形性の観点、良好な肌触りを有し使用感を高める観点、並びに温熱具の製造効率の観点から、好ましくは不織布である。不織布を用いる場合、当該不織布は非伸縮性であってもよく、伸縮性であってもよい。
裏面シート6としては、加工のしやすさ及び製造コストの観点、良好な保形性の観点、パッケージから取り出す際における良好な肌触りと、使用時における良好な見栄えを両立する観点から、好ましくは不織布である。不織布を用いる場合、当該不織布は非伸縮性であってもよく、伸縮性であってもよい。
耳掛け部4をシートとして構成する場合、耳掛け部4に用いられるシートとしては、着用時のフィット性を高める観点から、好ましくは伸縮性の不織布である。
【0075】
通気阻害材3B及び第1シート36の少なくとも一方に多孔質フィルムを用いる場合、JIS Z0208に従って測定される透湿度は、それぞれ独立して、好ましくは1500g/(m2・24h)以上、より好ましくは2500g/(m2・24h)以上、更に好ましくは3000g/(m2・24h)以上である。このような透湿度を有することによって、温熱具1外への蒸気放出をスムーズに行うことができる。透湿度は、例えば多孔質フィルムを製造する際の延伸の度合いを調整することによって適宜変更することができる。
上述の透気度を満たすことに加えて、通気阻害材3Bや第1シート36の各透気度あるいは、比(PB/P1)を上述の範囲とする構成を更に採用することで、高い発熱性能を持続的に発現できる発熱体3内の水分量を適切に維持しつつ、温熱具1外への蒸気放出をよりスムーズに行うことができ、袋体の膨らみを低減して、温熱具の使用感が向上する。
【0076】
通気阻害材3Bの坪量は、40g/m2以上であることが好ましく、55g/m2以上であることが更に好ましく、70g/m2以下であることが好ましく、65g/m2以下であることが更に好ましい。
第1シート36の坪量は、20g/m2以上であることが好ましく、40g/m2以上であることが更に好ましく、100g/m2以下であることが好ましく、80g/m2以下であることが更に好ましい。
第2シート37の坪量は、20g/m2以上であることが好ましく、40g/m2以上であることが更に好ましく、100g/m2以下であることが好ましく、80g/m2以下であることが更に好ましい。
【0077】
表面シート5の坪量は、温熱具の取り扱い時や使用時における適度な剛性と柔軟性とを両立する観点から、5g/m2以上であることが好ましく、25g/m2以上であることが更に好ましく、200g/m2以下であることが好ましく、120g/m2以下であることが更に好ましい。
裏面シート6の坪量は、温熱具の取り扱い時や使用時における適度な剛性と柔軟性とを両立する観点から、5g/m2以上であることが好ましく、50g/m2以上であることが更に好ましく、200g/m2以下であることが好ましく、120g/m2以下であることが更に好ましい。
【0078】
発熱体3の総坪量は、発熱部3Aに用いられる各種原料の種類及びその量や、通気阻害材3B及び基材シート40の有無あるいは坪量に応じて適宜変更され得るが、温熱具1の発熱特性を維持しつつ、薄型として取り扱い性を高める観点から、1200g/m2以上であることが好ましく、1400g/m2以上であることが更に好ましく、1700g/m2以下であることが好ましく、1600g/m2以下であることが更に好ましい。
【0079】
吸水性樹脂3Gの粒子を更に含む場合、吸水性樹脂3Gの坪量は、50g/m2以上であることが好ましく、60g/m2であることが更に好ましく、70g/m2以下であることが好ましく、65g/m2以下であることが更に好ましい。
【0080】
温熱具1における耳掛け部4の形態は、本体部2を使用者の鼻や口並びにその近傍に固定可能な態様であれば、
図1に示すシート状の部材に限定されない。例えばひも状の部材からなる耳掛け部4を採用したり、糸状又は帯状の部材からなる耳掛け部4を採用したりしてもよい。温熱具のフィット感を高める観点から、ゴムなどの弾性部材を用いて、伸縮可能な耳掛け部4とすることが好ましい。
また耳掛け部4は、
図1に示すように表面シート5及び裏面シート6とは別体の部材であってもよく、表面シート5及び裏面シート6の少なくとも一つから延出して構成された一体の部材であってもよい。
【0081】
本実施形態の温熱具1における発熱体3は、本体部2と脱着不能に構成されていたが、この態様に代えて、本体部2と脱着可能に構成されていてもよい。また発熱体3は、本体部2に2つ備えられていたが、これに代えて、1つ又は3つ以上備えていてもよい。
【0082】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。
【0083】
上述した本発明の実施形態に関し、更に以下の温熱具を開示する。
【0084】
<1>
発熱に伴い蒸気を発生する発熱体と、該発熱体を収容する袋体とを備えた温熱具であって、
前記発熱体は、被酸化性金属、炭素材料、電解質及び水を含む発熱部と、使用時に加熱対象体に対向する面側に積層される通気阻害材とを備え、
前記袋体は、使用時に加熱対象体に対向する面に配される第1シートと、該面とは反対側の面に配される第2シートとを備え、
前記通気阻害材の透気度が1000秒/100mL以上4000秒/100mL以下であり、
第1シートの透気度に対する前記通気阻害材の透気度の比が10以上80以下である、温熱具。
【0085】
<2>
前記発熱体は、前記発熱部と前記通気阻害材との間に、吸水性樹脂の粒子を含む層が更に配されている、前記<1>に記載の温熱具。
<3>
前記吸水性樹脂が前記発熱部と前記通気阻害材との間に他の部材を介することなく直接接触して配されることによって、前記層を形成している、前記<2>に記載の温熱具。
<4>
前記吸水性樹脂が同一又は異なる2枚の通気性シート間に挟持されて形成されたシート状物によって、前記層を形成している、前記<2>に記載の温熱具。
<5>
一方の前記通気性シートと、前記通気阻害材とが互いに接触して配されている、前記<4>に記載の温熱具。
【0086】
<6>
JIS P8117に従って測定された第1シートの透気度が0秒/100mL超100秒/100mL以下である、前記<1>~<5>のいずれか一に記載の温熱具。
<7>
JIS P8117に従って測定された第1シートの透気度が、より好ましくは50秒/100mL以下、更に好ましくは10秒/100mL以下である、前記<1>~<6>のいずれか一に記載の温熱具。
<8>
JIS P8117に従って測定された第2シートの透気度が8000秒/100mL超である、前記<1>~<7>のいずれか一に記載の温熱具。
<9>
JIS P8117に従って測定された第2シートの透気度が、より好ましくは10000秒/100mL以上、更に好ましくは非通気である、前記<1>~<8>のいずれか一に記載の温熱具。
【0087】
<10>
前記発熱体は、前記被酸化性金属の含有質量に対する前記水の含有質量の比(水/被酸化性金属)が0.4以上1.5以下である、前記<1>~<9>のいずれか一に記載の温熱具。
<11>
前記発熱体は、前記被酸化性金属の含有質量に対する前記水の含有質量の比(水/被酸化性金属)が、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.6以上であり、より好ましくは1.0以下、更に好ましくは0.8以下である、前記<1>~<10>のいずれか一に記載の温熱具。
<12>
前記発熱体は、前記炭素材料の含有質量に対する前記水の含有質量の比(水/炭素材料)が、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは5以上であり、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは20以下である、前記<1>~<11>のいずれか一に記載の温熱具。
【0088】
<13>
前記発熱体は、前記被酸化性金属の含有質量に対する前記炭素材料の含有質量の比(炭素材料/被酸化性金属)が、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.03以上、更に好ましくは0.06以上であり、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.25以下、更に好ましくは0.10以下である、前記<1>~<12>のいずれか一に記載の温熱具。
<14>
平面視において、前記発熱部の面積に対する前記通気阻害材の面積の百分率が85%超である、前記<1>~<13>のいずれか一に記載の温熱具。
<15>
平面視において、前記発熱部の面積に対する前記通気阻害材の面積の百分率が、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、一層好ましくは100%である、前記<1>~<14>のいずれか一に記載の温熱具。
【0089】
<16>
前記通気阻害材が多孔質フィルムである、前記<1>~<15>のいずれか一に記載の温熱具。
<17>
前記第1シートが多孔質フィルムである、前記<1>~<16>のいずれか一に記載の温熱具。
<18>
前記多孔質フィルムは透湿性且つ液不透過性である、前記<16>又は<17>に記載の温熱具。
<19>
JIS Z0208に従って測定される前記多孔質フィルムの透湿度は、それぞれ独立して、好ましくは1500g/(m2・24h)以上、より好ましくは2500g/(m2・24h)以上、更に好ましくは3000g/(m2・24h)以上である、前記<16>~<18>のいずれか一に記載の温熱具。
【0090】
<20>
JIS P8117に従って測定された前記通気阻害材の透気度が、より好ましくは1200秒/100mL以上、更に好ましくは1500秒/100mLであり、より好ましくは3500秒/100mL以下、更に好ましくは3000秒/100mL以下である、前記<1>~<19>のいずれか一に記載の温熱具。
<21>
JIS P8117に従って測定された第1シートの透気度に対するJIS P8117に従って測定された前記通気阻害材の透気度の比が、より好ましくは20以上、更に好ましくは30以上であり、より好ましくは70以下、更に好ましくは60以下である、前記<1>~<20>のいずれか一に記載の温熱具。
<22>
前記通気阻害材と前記袋体とは互いに分離している、前記<1>~<19>のいずれか一に記載の温熱具。
【0091】
<23>
使用時に使用者の鼻及び口を覆う形状を有する本体部と、該本体部に備えられた前記発熱体と、該本体部に取り付けられ且つ該本体部による被覆状態を維持可能な一対の耳掛け部とを備え、
前記本体部は、使用者の肌に近い側に位置する表面シートと、使用者の肌から遠い側に位置する裏面シートとを備え、
前記発熱体を収容した前記袋体が、前記表面シートと前記裏面シートとの間に保持されている、前記<1>~<22>のいずれか一に記載の温熱具。
<24>
前記本体部の通気抵抗は、好ましくは0.02(kPa・sec/m)以上、より好ましくは0.03(kPa・sec/m)以上であり、好ましくは0.70(kPa・sec/m)以下、より好ましくは0.40(kPa・sec/m)以下である、前記<23>に記載の温熱具。
【0092】
<25>
前記表面シートの通気抵抗は、好ましくは0.05(kPa・sec/m)以下、より好ましくは0.035(kPa・sec/m)以下であり、好ましくは0.01kPa・sec/m)以上、より好ましくは0.02(kPa・sec/m)以上である、前記<23>又は<24>に記載の温熱具。
<26>
前記裏面シートの通気抵抗は、前記表面シートの通気抵抗よりも高いことが好ましく、好ましくは0.1(kPa・sec/m)以下、より好ましくは0.06(kPa・sec/m)以下であり、好ましくは0.02(kPa・sec/m)以上、より好ましくは0.04(kPa・sec/m)以上である、前記<23>~<25>のいずれか一に記載の温熱具。
<27>
前記発熱体は、該発熱体の前記通気阻害材が配された面と反対側の面に基材シートを更に備える、前記<1>~<26>のいずれか一に記載の温熱具。
【0093】
<28>
JIS P8117に従って測定された前記基材シートの透気度は、好ましくは8000秒/100mL以上、より好ましくは20000秒/100mL以上、更に好ましくは非通気である、前記<27>に記載の温熱具。
<29>
前記発熱部は、ペースト状の発熱組成物から得られたものである、前記<1>~<28>のいずれか一に記載の温熱具。
<30>
前記発熱部は、繊維状物を更に含む繊維シートである、前記<1>~<28>のいずれか一に記載の温熱具。
【0094】
<31>
使用時に使用者の鼻及び口を覆う形状を有する本体部と、該本体部に備えられた前記発熱体と、該本体部に取り付けられ且つ該本体部による被覆状態を維持可能な一対の耳掛け部とを備え、
前記本体部は、使用者の肌に近い側に位置する表面シートと、使用者の肌から遠い側に位置する裏面シートとを備え、
前記発熱体を収容した前記袋体が、前記表面シートと前記裏面シートとの間に保持されており、
前記発熱体は、吸水性樹脂の粒子を含む層が前記発熱部と前記通気阻害材との間に他の部材を介することなく直接接触して配されており、
前記発熱体は、該発熱体の前記通気阻害材が配された面と反対側の面に基材シートを更に備え、
前記発熱部は、ペースト状の発熱組成物が前記基材シート上に配されており、
前記通気阻害材及び第1シートがいずれも多孔質フィルムである、前記<1>~<29>のいずれか一に記載の温熱具。
【0095】
<32>
45℃以上の温度が保持される時間が45分以上90分以下である、前記<1>~<31>のいずれか一に記載の温熱具。
<33>
発熱開始10分後における前記袋体の厚みが10mm以下である、前記<1>~<32>のいずれか一に記載の温熱具。
<34>
前記発熱体の坪量(g/m2)に対する前記温熱具の発熱開始時点から60分後までに発生した水蒸気の総発生量(mg・60min)の比が、0.34以上0.72以下である、前記<1>~<33>のいずれか一に記載の温熱具。
<35>
口腔用マスクの形態である、前記<1>~<34>のいずれか一に記載の温熱具。
【実施例0096】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
【0097】
以下の説明では、JIS P8117に記載の方法によって測定された透気抵抗度を、単に「透気度」ともいう。また表中、「-」で示す欄は非含有を示す。なお以下の説明では、発熱体の製造方法に応じて、発熱体の種類を塗布型又は抄紙型として分類した。
【0098】
〔実施例1〕
以下のとおり、発熱体3を製造した。まず電解質3cとして、リン酸三カリウム粉末、48質量%水酸化カリウム水溶液及び塩化ナトリウム粉末と、増粘剤(キサンタンガム)とを水に溶解した水溶液に、被酸化性金属3aとして還元鉄粉を投入して攪拌し、更に炭素材料3bとして活性炭を入れて均一分散するまで十分に攪拌して、ペースト状の発熱部3Aを得た。各原料の配合割合は、以下の表1に示すとおりとした。
そして、基材シート40としてポリエチレンをラミネートした薄葉紙(透気度:非通気、坪量:97g/m2)を用い、基材シート40に上述のペースト状の発熱部3Aを3.25g(坪量:1353g/m2)塗布して、塗布型の発熱部3Aを得た。
次いで、発熱部3A上に、吸水性樹脂3Gの粒子を坪量60g/m2で単一層状に直接散布して、吸水性樹脂層3Lを形成した。吸水性樹脂層3L上に通気阻害材3B(炭酸カルシウム及びポリエチレンを含む多孔性シート、コージンTSF-EU 4000秒タイプ、興人フィルム&ケミカルズ(株)製、坪量:40g/m2)を直接積層して、発熱体3を得た。
この発熱体3を50mm×50mmの大きさにカットした。次いで、63mm×63mmにカットした第1シート36(KIPE71、カクケイ(株)製、坪量:50g/m2)と、同寸法にカットした第2シート37(BRN-502、(株)ニトムズ製、坪量:71g/m2)とで、第1シート36と通気阻害材3Bとが対向するように発熱体3を挟み、各シート36,37の四方をヒートシールして、発熱体3が収容された袋体35を得た。
通気阻害材3B,第1シート36及び第2シート37の各透気度は、以下の表1に示すものを用いた。
【0099】
そして、発熱体3が収容された袋体35を、表面シート5と裏面シート6との間に収容するように接合して、
図1に示す構造を有する温熱具を得た。このとき、表面シート5と第1シート36とが対向し、裏面シート6と第2シート37とが対向するように、袋体35を配した。
【0100】
〔実施例2~3〕
吸水性樹脂3Gの粒子の坪量を以下の表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして温熱具を得た。
【0101】
〔実施例4〕
ペースト状の発熱部3Aの塗布量を2.93g(坪量:1220g/m2)に変更した以外は、実施例1と同様にして温熱具を得た。
【0102】
〔実施例5〕
実施例1で用いた被酸化性金属、炭素材料及び水に加えて、繊維材料としてパルプ繊維(針葉樹クラフトパルプ、スキーナ(株)製、商品名「スキーナ」、平均繊維長:2.1mm)を含む混合物を抄紙して中間成形体を抄造し、その後、該中間成形体に電解質を含有させて、抄紙型の発熱部3Aを形成した。そして、実施例1と同様の通気阻害材3Bを直接積層して、発熱体3を得た。
これ以外は、実施例1と同様にして温熱具を得た。
【0103】
〔比較例1~2〕
通気阻害材3B及び第1シート36をそれぞれ以下の表1に示す透気度を有するシートに変更した以外は、実施例1と同様にして温熱具を得た。
【0104】
〔比較例3〕
通気阻害材3B及び第1シート36をそれぞれ以下の表1に示す透気度を有するシートに変更した以外は、実施例5と同様にして温熱具を得た。
【0105】
〔45℃持続時間及び最高到達温度の評価〕
実施例及び比較例の温熱具について、45℃持続時間及び最高到達温度を上述の方法で測定した。45℃持続時間が長いほど発熱持続性が良好であり、細孔到達温度が高いほど発熱特性に優れるものであることを示す。結果を以下の表1に示す。
【0106】
〔水蒸気発生量の評価〕
実施例及び比較例の温熱具について、10分間、30分間及び60分間の水蒸気の総発生量(mg)を上述の方法で測定した。各時間の水蒸気の総発生量の値が高いほど、発熱特性に優れるとともに、水蒸気発生量が高く、加熱対象体に心地よい温感と潤いとを両立して知覚させることができる温熱具であることを示す。結果を以下の表1に示す。
【0107】
〔袋体厚み及び厚み増加量の測定〕
実施例及び比較例の温熱具において、発熱体3が収容された袋体35における発熱開始時点の厚みT1(mm)、及び発熱体3が収容された袋体35における発熱開始時点から10分経過後の厚みT2(mm)を上述の方法でそれぞれ測定した。またこの結果から、発熱体3が収容された袋体35の厚み変化量(T2-T1)(単位:mm)を算出した。測定環境はいずれも、温度26℃、相対湿度50%の室内とした。厚み変化量(T2-T1)が小さいほど、袋体の膨張が少なく、温熱具1の使用感が向上することを意味する。結果を以下の表1に示す。
【0108】
【0109】
表1において、「<1」と示す欄は、「0秒/100mL超1秒/100mL未満」の透気度を有することを示す。また「>8000」と示す欄は「8000秒/100mL超」の透気度を有することを示す。
【0110】
表1に示すように、第1シート36の透気度に対する通気阻害材3Bの透気度の比を所定の範囲とし、所定の透気度を有する通気阻害材3Bを用いた各実施例の温熱具は、比較例の温熱具と比較して、発熱持続性が良好で、袋体の膨らみが低減されていることも判る。また各実施例の温熱具は、発熱持続性が良好であることに伴って、水蒸気の総発生量も高いことが判る。したがって、本発明の温熱具は、温熱の持続性の向上と、過度な膨れの低減とが両立できることが判る。