(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111301
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20240808BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20240808BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240808BHJP
H01L 29/861 20060101ALI20240808BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
H01L29/78 652F
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 652C
H01L29/78 658A
H01L29/78 658E
H01L29/78 658F
H01L29/78 657D
H01L29/91 C
H01L29/91 F
H01L27/06 102A
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024101573
(22)【出願日】2024-06-24
(62)【分割の表示】P 2020046991の分割
【原出願日】2020-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003889
【氏名又は名称】弁理士法人酒井総合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 広幸
(72)【発明者】
【氏名】木下 明将
(57)【要約】
【課題】単位面積あたりのチャネル幅密度が向上し、オン抵抗を減少できる半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置は、第1導電型の半導体基板と、第1導電型の第1半導体層と、第2導電型の第2半導体層3と、第1導電型の第1半導体領域7と、第2導電型の第2半導体領域8と、ゲート絶縁膜と、ゲート電極10と、層間絶縁膜と、第1電極と、第2電極と、トレンチとを備える。第1半導体領域7および第2半導体領域8は、トレンチがストライプ状に伸びる第1方向(y方向)に、互いに離れて周期的に配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の半導体基板を含む半導体基体の第1主面に設けられ、第1方向に伸びる複数の長手部を有するトレンチと、
前記半導体基体の前記第1主面に選択的に設けられ、複数の前記長手部のうち、少なくとも一部の長手部の側壁に接するように設けられた第1導電型の第1半導体領域と、
複数の前記長手部のうち、少なくとも一部の長手部の底部に接するように設けられた第2導電型の底部領域と、
前記半導体基体の前記第1主面に選択的に設けられ、前記第1主面から前記長手部の側壁に沿って前記底部領域に至る第2導電型の第2半導体領域と、
を備えることを特徴とする炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記第2半導体領域は、前記第1方向において、周期的に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
平面視で、前記第1方向において隣り合う前記第2半導体領域同士の間隔は、前記第1方向における前記第2半導体領域の長さよりも大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
平面視で、前記第1方向において隣り合う前記第2半導体領域同士の間隔は、2.514μm以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記第1半導体領域の少なくとも一部は、隣り合う前記長手部の間のメサ領域にわたって設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項6】
前記半導体基体の前記第1主面の上に設けられた層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜を深さ方向に貫通したコンタクトホールと、
前記コンタクトホールを通じて、前記第1主面の前記第1半導体領域および前記第2半導体領域に接するソース電極と、
を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項7】
前記第2半導体領域は、
第2導電型の半導体層と、
前記半導体基体の前記第1主面に選択的に設けられた、前記半導体層よりも高不純物濃度の第2導電型の高濃度半導領域と、
前記半導体層と前記底部領域とを接続する第2導電型の接続領域と、
を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項8】
前記高濃度半導体領域の少なくとも一部は、隣り合う前記長手部の間のメサ領域にわたって設けられていることを特徴とする請求項7に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項9】
前記高濃度半導体領域は、隣り合う前記長手部の片側のみと接していることを特徴とする請求項7に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項10】
第1導電型の半導体基板を含む半導体基体の第1主面に設けられ、第1方向に伸びる複数の長手部を有するトレンチと、
隣り合う前記長手部の間に設けられた複数のメサ領域と、
複数の前記長手部のうち、少なくとも一部の長手部の底部に接するように設けられた第2導電型の底部領域と、
を備え、
前記メサ領域は、
第2導電型の半導体層と、
前記半導体基体の前記第1主面に選択的に設けられ、複数の前記長手部のうち、少なくとも一部の長手部の側壁に接するように設けられた第1導電型の第1半導体領域と、
を有し、
前記第1方向において周期的に、前記半導体層と前記底部領域とを接続する第2導電型の接続領域が設けられていることを特徴とする炭化珪素半導体装置。
【請求項11】
前記接続領域は、隣り合う前記長手部のうち、一方の前記長手部から他方の前記長手部にわたって設けられていることを特徴とする請求項7から10のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項12】
前記底部領域は、前記半導体層よりも高不純物濃度であることを特徴とする請求項7から11のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項13】
前記接続領域は、前記半導体層よりも高不純物濃度であることを特徴とする請求項7から12のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項14】
1または複数の前記長手部にゲート絶縁膜を介し埋め込まれるゲート電極を備えることを特徴とする請求項7から13のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項15】
複数の前記メサ領域は、
前記ゲート絶縁膜に接する前記半導体層および前記第1半導体領域を有する第1メサ領域と、
隣り合う前記長手部の間にわたって前記接続領域が設けられた第2メサ領域と、
を有することを特徴とする請求項14に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項16】
第1導電型の半導体基板を含む半導体基体の第1主面に設けられ、第1方向に伸びる複数の長手部を有するトレンチと、
隣り合う前記長手部の間に設けられた複数の第1メサ領域と、
隣り合う前記長手部の間に設けられた複数の第2メサ領域と、
1または複数の前記長手部にゲート絶縁膜を介し埋め込まれるゲート電極と、
を備え、
前記第1メサ領域は、
前記半導体基体の前記第1主面に選択的に設けられ、前記ゲート絶縁膜に接するように設けられた第1導電型の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域の下方で前記ゲート絶縁膜に接する第2導電型の半導体層と、
を有し、
前記第2メサ領域は、
隣り合う前記長手部のうち、一方の前記長手部の底部から他方の前記長手部の底部にかけて設けられた第2導電型の第2半導体領域を有することを特徴とする炭化珪素半導体装置。
【請求項17】
2つの前記第2メサ領域の間に、複数の前記第1メサ領域が設けられていることを特徴とする請求項15または16に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項18】
複数の前記長手部のうち、少なくとも一部の長手部の底部に接するように設けられた第2導電型の底部領域を備え、
前記第1メサ領域は、前記半導体層と前記底部領域とを接続する第2導電型の接続領域を有することを特徴とする請求項16に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項19】
前記第1メサ領域は、MOSセル領域の一部として機能し、
前記第2メサ領域は、ダイオードセル領域の一部として機能することを特徴とする請求項15から18のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炭化珪素半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素(SiC)は、シリコン(Si)に代わる次世代の半導体材料として期待されている。炭化珪素を半導体材料に用いた半導体素子(以下、炭化珪素半導体装置とする)は、シリコンを半導体材料に用いた従来の半導体素子と比較して、オン状態における素子の抵抗を数百分の1に低減可能であることや、より高温(200℃以上)の環境下で使用可能なこと等、様々な利点がある。これは、炭化珪素のバンドギャップがシリコンに対して3倍程度大きく、シリコンよりも絶縁破壊電界強度が1桁近く大きいという材料自体の特長による。
【0003】
炭化珪素半導体装置としては、現在までに、ショットキーバリアダイオード(SBD:Schottky Barrier Diode)、プレーナゲート構造やトレンチゲート構造の縦型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)が製品化されている。
【0004】
トレンチゲート構造は、半導体基板(半導体チップ)のおもて面に形成したトレンチ内にMOSゲートを埋め込んだMOSゲート構造であり、トレンチの側壁に沿って半導体基板のおもて面と直交する方向にチャネル(反転層)が形成される。このため、半導体基板のおもて面に沿ってチャネルが形成されるプレーナゲート構造と比べて、単位面積当たりの単位セル(素子の構成単位)密度を増やすことができ、単位面積当たりの電流密度を増やすことができるため、コスト面で有利である。プレーナゲート構造は、半導体基板のおもて面上に平板状にMOSゲートを設けたMOSゲート構造である。
【0005】
従来の炭化珪素半導体装置の構造について、トレンチ型MOSFETを例に説明する(例えば、下記特許文献1、2参照)。
図17は、従来の炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。
図17に示すように、トレンチ型MOSFET150は、n
+型炭化珪素基板101のおもて面にn型炭化珪素エピタキシャル層102が堆積される。n型炭化珪素エピタキシャル層102のn
+型炭化珪素基板101側に対して反対側の表面側は、n型高濃度領域106が設けられている。また、n型高濃度領域106のn
+型炭化珪素基板101側に対して反対側の表面層には、第1p
+型ベース領域104が選択的に設けられている。n型高濃度領域106には、トレンチ118の底面全体を覆うように第2p
+型ベース領域105が選択的に設けられている。
【0006】
また、トレンチ型MOSFET150には、さらにp型炭化珪素エピタキシャル層103、n+型ソース領域107、p++型コンタクト領域108、ゲート絶縁膜109、ゲート電極110、層間絶縁膜111、ソース電極113、裏面電極114、トレンチ118、ソース電極パッド(不図示)およびドレイン電極パッド(不図示)が設けられている。ソース電極113は、n+型ソース領域107、p++型コンタクト領域108上に設けられ、ソース電極113上にソース電極パッドが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-019045号公報
【特許文献2】特開2018-019046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図18は、従来の炭化珪素半導体装置の構造を示す
図17のA-A’平面図である。
図18に示すように、トレンチ118は、ストライプ状に設けられ、トレンチ118の間にn
+型ソース領域107、p
++型コンタクト領域108、n
+型ソース領域107がこの順にストライプ状に設けられている。
【0009】
p++型コンタクト領域108は、p型炭化珪素エピタキシャル層103をソース電極113と同じ電位に保つために必要である。従来の炭化珪素半導体装置では、ストライプ状のn+型ソース領域107に挟まれたp++型コンタクト領域108により、p型炭化珪素エピタキシャル層103とソース電極113とを同じ電位に保っていた。
【0010】
しかしながら、トレンチ118の間にn+型ソース領域107、p++型コンタクト領域108、n+型ソース領域107を設ける構造では、セルピッチを狭める限界があり、チャネル幅密度の向上に限界があった。
【0011】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、セルピッチ(トレンチ間の距離)を狭めることが可能になる炭化珪素半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、次の特徴を有する。炭化珪素半導体装置は、第1導電型の半導体基板を含む半導体基体の第1主面に設けられ、第1方向に伸びる複数の長手部を有するトレンチと、前記半導体基体の前記第1主面に選択的に設けられ、複数の前記長手部のうち、少なくとも一部の長手部の側壁に接するように設けられた第1導電型の第1半導体領域と、複数の前記長手部のうち、少なくとも一部の長手部の底部に接するように設けられた第2導電型の底部領域と、前記半導体基体の前記第1主面に選択的に設けられ、前記第1主面から前記長手部の側壁に沿って前記底部領域に至る第2導電型の第2半導体領域と、を備える。
【0013】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる他の炭化珪素半導体装置は、次の特徴を有する。他の炭化珪素半導体装置は、第1導電型の半導体基板を含む半導体基体の第1主面に設けられ、第1方向に伸びる複数の長手部を有するトレンチと、隣り合う前記長手部の間に設けられた複数の第1メサ領域と、隣り合う前記長手部の間に設けられた複数の第2メサ領域と、1または複数の前記長手部にゲート絶縁膜を介し埋め込まれるゲート電極と、を備え、前記第1メサ領域は、前記半導体基体の前記第1主面に選択的に設けられ、前記ゲート絶縁膜に接するように設けられた第1導電型の第1半導体領域と、前記第1半導体領域の下方で前記ゲート絶縁膜に接する第2導電型の半導体層と、を有し、前記第2メサ領域は、隣り合う前記長手部のうち、一方の前記長手部の底部から他方の前記長手部の底部にかけて設けられた第2導電型の第2半導体領域を有する。
【0014】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる他の炭化珪素半導体装置は、次の特徴を有する。他の炭化珪素半導体装置は、第1導電型の半導体基板を含む半導体基体の第1主面に設けられ、第1方向に伸びる複数の長手部を有するトレンチと、隣り合う前記長手部の間に設けられた複数の第1メサ領域と、隣り合う前記長手部の間に設けられた複数の第2メサ領域と、1または複数の前記長手部にゲート絶縁膜を介し埋め込まれるゲート電極と、を備え、前記第1メサ領域は、前記半導体基体の前記第1主面に選択的に設けられ、前記ゲート絶縁膜に接するように設けられた第1導電型の第1半導体領域と、前記第1半導体領域の下方で前記ゲート絶縁膜に接する第2導電型の半導体層と、を有し、前記第2メサ領域は、隣り合う前記長手部のうち、一方の前記長手部の底部から他方の前記長手部の底部にかけて設けられた第2導電型の第2半導体領域を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる炭化珪素半導体装置によれば、セルピッチ(トレンチ間の距離)を狭めることが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す平面図である。
【
図2】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す
図1のA-A’断面図である。
【
図3】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す
図1のB-B’断面図である。
【
図4】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す
図1のC-C’断面図である。
【
図5】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の他の構造を示す平面図である。
【
図6】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置のチャネル幅密度を示すグラフである。
【
図7】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その1)。
【
図8】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その2)。
【
図9】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その3)。
【
図10】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その4)。
【
図11】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その5)。
【
図12】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その6)。
【
図13】実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す平面図である。
【
図14】実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す
図12のA-A’断面図である。
【
図15】実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す
図12のB-B’断面図である。
【
図16】実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置のチャネル幅密度を示すグラフである。
【
図17】従来の炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。
【
図18】従来の炭化珪素半導体装置の構造を示す
図17のA-A’平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および-は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。+および-を含めたnやpの表記が同じ場合は近い濃度であることを示し濃度が同等とは限らない。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本明細書では、ミラー指数の表記において、“-”はその直後の指数につくバーを意味しており、指数の前に“-”を付けることで負の指数をあらわしている。
【0018】
(実施の形態1)
実施の形態1にかかる半導体装置は、シリコン(Si)よりもバンドギャップが広い半導体(ワイドバンドギャップ半導体とする)を用いて構成される。この実施の形態1にかかる半導体装置の構造について、ワイドバンドギャップ半導体として例えば炭化珪素(SiC)を用いた場合を例に説明する。
図1は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す平面図である。
図2は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す
図1のA-A’断面図である。
図3は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す
図1のB-B’断面図である。
図4は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す
図1のC-C’断面図である。
【0019】
図2~
図4に示すように、トレンチ型MOSFET50は、半導体基板のおもて面(後述するp型炭化珪素エピタキシャル層3側の面)側にトレンチゲート構造のMOSゲートを備えている。炭化珪素半導体基体は、炭化珪素からなるn
+型炭化珪素基板(第1導電型の半導体基板)1上にn型炭化珪素エピタキシャル層(第1導電型の第1半導体層)2およびp型炭化珪素エピタキシャル層(第2導電型の第2半導体層)3を順にエピタキシャル成長させてなる。また、n型高濃度領域6をn型炭化珪素エピタキシャル層2上にエピタキシャル成長させてもよい。
【0020】
トレンチゲート構造のMOSゲートは、p型炭化珪素エピタキシャル層3、n+型ソース領域(第1導電型の第1半導体領域)7、p++型コンタクト領域(第2導電型の第2半導体領域)8、トレンチ18、ゲート絶縁膜9およびゲート電極10で構成される。
【0021】
具体的には、トレンチ18は、半導体基板のおもて面から深さ方向zにp型炭化珪素エピタキシャル層3を貫通して、n型高濃度領域6(n型高濃度領域6が設けられていない場合は、n型炭化珪素エピタキシャル層2、以下(2)と称する)に達する。深さ方向zとは、半導体基板のおもて面から裏面へ向かう方向である。トレンチ18は、ストライプ状に配置されている。
【0022】
トレンチ18の内部には、トレンチ18の内壁に沿ってゲート絶縁膜9が設けられ、ゲート絶縁膜9上にトレンチ18の内部に埋め込むようにゲート電極10が設けられている。1つのトレンチ18内のゲート電極10と、当該ゲート電極10を挟んで隣り合うメサ領域(隣り合うトレンチ18間の領域)と、でメイン半導体素子の1つの単位セルが構成される。
図2および
図3では、1つのトレンチMOS構造のみを図示しているが、さらに多くのトレンチ構造のMOSゲート(金属-酸化膜-半導体からなる絶縁ゲート)構造が並列に配置されていてもよい。
【0023】
n型炭化珪素エピタキシャル層2のソース側(後述するソース電極13側)の表面層に、p型炭化珪素エピタキシャル層3に接するようにn型領域(以下、n型高濃度領域とする)6が設けられていてもよい。n型高濃度領域6は、キャリアの広がり抵抗を低減させる、いわゆる電流拡散層(Current Spreading Layer:CSL)である。このn型高濃度領域6は、例えば、トレンチ18の内壁を覆うように、基板おもて面(半導体基板のおもて面)に平行な方向に一様に設けられている。
【0024】
n型高濃度領域6は、p型炭化珪素エピタキシャル層3との界面から、トレンチ18の底面よりもドレイン側(後述する裏面電極14側)に深い位置に達している。n型高濃度領域6の内部には、第1,2p+型ベース領域4、5がそれぞれ選択的に設けられていてもよい。第1p+型ベース領域4は、隣り合うトレンチ18間(メサ領域)に、第2p+型ベース領域5およびトレンチ18と接して設けられ、かつp型炭化珪素エピタキシャル層3に接する。第2p+型ベース領域5は、トレンチ18の底面および底面コーナー部のうち少なくとも底面を覆う。トレンチ18の底面コーナー部とは、トレンチ18の底面と側壁との境界である。
【0025】
第1,2p+型ベース領域4、5とn型炭化珪素エピタキシャル層2とのpn接合は、トレンチ18の底面よりもドレイン側に深い位置に形成されている。n型高濃度領域6を設けずに、第1,2p+型ベース領域4、5がn型炭化珪素エピタキシャル層2の内部に設けられていてもよい。第1,2p+型ベース領域4、5のドレイン側端部の深さ位置は、第1,2p+型ベース領域4、5とn型炭化珪素エピタキシャル層2とのpn接合がトレンチ18の底面よりもドレイン側に深い位置にあればよく、設計条件に合わせて種々変更可能である。第1,2p+型ベース領域4、5により、トレンチ18の底面に沿った部分でゲート絶縁膜9に高電界が印加されることを防止することができる。
【0026】
p型炭化珪素エピタキシャル層3の内部には、n+型ソース領域7が選択的に設けられている。n+型ソース領域7と間隔を空け、p++型コンタクト領域8が選択的に設けられている。n+型ソース領域7は、トレンチ18の側壁のゲート絶縁膜9に接し、トレンチ18の側壁のゲート絶縁膜9を介してゲート電極10に対向する。
【0027】
層間絶縁膜11は、ゲート電極10を覆うように、半導体基板のおもて面全面に設けられている。層間絶縁膜11には、層間絶縁膜11を深さ方向zに貫通して基板おもて面に達するコンタクトホールが開口されている。
【0028】
ソース電極(第1電極)13は、コンタクトホール内において半導体基板(n+型ソース領域7)にオーミック接触し、かつ層間絶縁膜11によりゲート電極10と電気的に絶縁されている。ソース電極13上に、ソース電極パッド(不図示)が設けられている。p++型コンタクト領域8が設けられている場合、ソース電極13はp++型コンタクト領域8とオーミック接触する。
【0029】
半導体基板の裏面に、ドレイン電極となる裏面電極(第2電極)14が設けられている。裏面電極14上には、ドレイン電極パッド(不図示)が設けられている。
【0030】
ここで、実施の形態1では、
図1に示すように、トレンチ18はy方向(第1方向)にストライプ状に伸び、n
+型炭化珪素基板1のおもて面内でy方向と直交するx方向(第2方向に)に複数並んでいる。n
+型ソース領域7およびp
++型コンタクト領域8は、トレンチ18間にx方向にトレンチ18に接するように設けられ、y方向に互いに離れて周期的に配置されている。
【0031】
n+型ソース領域7およびp++型コンタクト領域8を、このように配置することで、n+型ソース領域7および++型コンタクト領域8の幅を狭くすることができ、セルピッチ(トレンチ18間の距離)を狭めることが可能になる。このため、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置は、単位面積あたりのチャネル幅密度を向上させ、オン抵抗を減少することができる。
【0032】
また、n+型ソース領域7とp++型コンタクト領域8との間に間隔が設けられ、そこには、p型炭化珪素エピタキシャル層3が露出している。y方向は、n+型炭化珪素基板1のオフ角方向になるため、イオン注入用マスクの位置がずれやすい。イオン注入用マスクの位置がずれ、n+型ソース領域7とp++型コンタクト領域8とが重なると、点欠陥が発生し、ゲート信頼性が低下する。
【0033】
実施の形態1では、n+型ソース領域7とp++型コンタクト領域8との間に間隔を設けることで、n+型ソース領域7またはp++型コンタクト領域8を形成する際のイオン注入用マスクの位置がずれたとしても、n+型ソース領域7とp++型コンタクト領域8とが重なることを防止できる。このため、n+型ソース領域7とp++型コンタクト領域8とが重なることにより、点欠陥が発生することを防止でき、ゲート信頼性を向上させることができる。
【0034】
また、n+型ソース領域7とp++型コンタクト領域8のそれぞれのイオン注入用マスクの位置は0.2μm程度ずれる可能性がある。さらに、イオン注入時のイオンの拡散で、n+型ソース領域7とp++型コンタクト領域8の領域が0.3μm程度広がる可能性がある。このため、n+型ソース領域7とp++型コンタクト領域8との間の間隔は、(0.3+0.2)×2=1.0μm以上であることが好ましい。
【0035】
また、
図2および
図4に示すように、トレンチ18間でn
+型ソース領域7が設けられた領域と深さ方向zに対向する領域には、p型炭化珪素エピタキシャル層3およびn型高濃度領域6(2)が配置されている。
図3および
図4に示すように、トレンチ18間でp
++型コンタクト領域8が設けられた領域と深さ方向zに対向する領域には、p型炭化珪素エピタキシャル層3、第1p
+型ベース領域4および第2p
+型ベース領域5が互いに接して配置されている。
図4に示すように、トレンチ18間でp
++型コンタクト領域8およびn
+型ソース領域7が設けられていない領域と深さ方向zに対向する領域には、p型炭化珪素エピタキシャル層3、第1p
+型ベース領域4および第2p
+型ベース領域5が互いに接して配置されている。
【0036】
図5は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の他の構造を示す平面図である。
図1に示す構造では、p
++型コンタクト領域8は、両側でトレンチ18と接している。しかしながら、
図5に示すように、p
++型コンタクト領域8は、片側のみトレンチ18と接していてもよいし、両側ともトレンチ18と接していなくてもよい。
【0037】
以下、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置がチャネル幅密度を向上させるための条件を詳細に説明する。最初に、従来の炭化珪素半導体装置のチャネル幅密度Dch’を求める。従来の炭化珪素半導体装置でのゲート電極110の幅をLg’(μm)、n
+型ソース領域107のx方向の長さをLn’(μm)、p
++型コンタクト領域108のx方向の長さをLp’(μm)とする(
図18参照)。例えば、それぞれの値は、Lg’=0.7μm、Ln’=0.85μm、Lp’=1μmである。
【0038】
ここで、y方向のセルピッチPy’を、固定の値で、例えば、1μmにすると、x方向のセルピッチPx’(μm)、y方向のセルピッチPy’(μm)、y方向のチャネル幅Wch’(μm)、チャネル幅密度Dch’(μm/μm2)は、以下のようになる。
Px’=Lg’+2Ln’+Lp’
Py’=1
Wch’=2Py’
Dch’=Wch’/(Px’×Py’)=2/(Lg’+2Ln’+Lp’)
【0039】
実施の形態1でも同様に、ゲート電極10の幅をLg、n
+型ソース領域7のx方向の長さをLnとする。実施の形態1では、さらに、n
+型ソース領域7のy方向の長さをWn、p
++型コンタクト領域8のy方向の長さをWpc、n
+型ソース領域7とp
++型コンタクト領域8との間の間隔のy方向の長さをWpとする(
図1参照)。
【0040】
この場合、x方向のセルピッチPx(μm)、y方向のセルピッチPy(μm)、y方向のチャネル幅Wch(μm)、チャネル幅密度Dch(μm/μm2)は、以下のようになる。
Px=Lg+Ln
Py=2Wp+Wpc+Wn
Wch=2Wn(チャネルはn+型ソース領域7の両側に形成されるため)
Dch=Wch/(Px×Py)=2Wn/{(Lg+Ln)×(2Wp+Wpc+Wn)}
【0041】
これらより、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置でチャネル幅密度が向上するための条件は、Dch≧Dch’である。このため、
Wn≧(2Wp+Wpc)×Px/(Px’-Px)=(2Wp+Wpc)×(Lg+Ln)/(Lg’+2Ln’+Lp’-Lg-Ln)
が成り立つことにより、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置で、従来の炭化珪素半導体装置より、チャネル幅密度を向上させることができる。
【0042】
図6は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置のチャネル幅密度を示すグラフである。
図6では、横軸は、Wn(n
+型ソース領域7のx方向の長さ)を示し、単位はμmである。縦軸は、チャネル幅密度Dchを示し、単位は、μm/μm
2である。従来の炭化珪素半導体装置では、Lg’=0.7μm、Ln’=0.85μm、Lp’=1μmでのチャネル幅密度を示す。
【0043】
実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置は、実施例1でLg=0.7μm、Ln=1.1μm、Wp=1μm、Wpc=1μm、実施例2でLg=0.7μm、Ln=0.85μm、Wp=1μm、Wpc=1μmの場合を示す。
【0044】
図6より、実施例1では、Wn≧3.375μm以上で、従来の炭化珪素半導体装置よりチャネル幅密度Dchが高くなり、実施例2では、Wn≧2.514μm以上で、従来の炭化珪素半導体装置よりチャネル幅密度Dchが高くなることがわかる。
【0045】
(実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法)
次に、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法について説明する。
図7~
図12は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
【0046】
まず、n型の炭化珪素でできたn
+型炭化珪素基板1を用意する。そして、このn
+型炭化珪素基板1の第1主面上に、n型の不純物、例えば窒素原子(N)をドーピングしながら、第1n型炭化珪素エピタキシャル層2aを、例えば30μm程度の厚さまでエピタキシャル成長させる。ここまでの状態が
図7に示されている。
【0047】
次に、第1n型炭化珪素エピタキシャル層2aの表面上に、フォトリソグラフィ技術によって所定の開口部を有するイオン注入用マスクを例えば酸化膜で形成する。そして、アルミニウム等のp型の不純物を、酸化膜の開口部に注入し、深さ0.5μm程度の第1p+型ベース領域4を形成する。
【0048】
また、隣り合う第1p+型ベース領域4との距離が1.5μm程度となるよう形成する。第1p+型ベース領域4の不純物濃度を例えば5×1018/cm3程度に設定する。
【0049】
次に、イオン注入用マスクの一部を除去し、開口部に窒素等のn型の不純物をイオン注入し、第1n型炭化珪素エピタキシャル層2aの表面領域の一部に、例えば深さ0.5μm程度の下部n型高濃度領域6aを形成してもよい。下部n型高濃度領域6aの不純物濃度を例えば1×10
17/cm
3程度に設定する。ここまでの状態が
図8に示されている。
【0050】
次に、第1n型炭化珪素エピタキシャル層2aの表面上に、窒素等のn型の不純物をドーピングした第2n型炭化珪素エピタキシャル層2bを、0.5μm程度の厚さで形成する。第2n型炭化珪素エピタキシャル層2bの不純物濃度が3×1015/cm3程度となるように設定する。以降、第1n型炭化珪素エピタキシャル層2aと第2n型炭化珪素エピタキシャル層2bとを合わせてn型炭化珪素エピタキシャル層2となる。
【0051】
次に、n+型ソース領域7が設けられない領域と深さ方向zに対向する領域の第2n型炭化珪素エピタキシャル層2bの表面上に、フォトリソグラフィによって所定の開口部を有するイオン注入用マスクを例えば酸化膜で形成する。そして、アルミニウム等のp型の不純物を、酸化膜の開口部に注入し、深さ0.5μm程度の第2p+型ベース領域5(不図示)を、第1p+型ベース領域4に重なるように形成する。第2p+型ベース領域5の不純物濃度を例えば5×1018/cm3程度となるように設定する。
【0052】
次に、イオン注入用マスクの一部を除去し、開口部に窒素等のn型の不純物をイオン注入し、第2n型炭化珪素エピタキシャル層2bの表面領域の一部に、例えば深さ0.5μm程度の上部n型高濃度領域6bを形成してもよい。上部n型高濃度領域6bの不純物濃度を例えば1×10
17/cm
3程度に設定する。この上部n型高濃度領域6bと下部n型高濃度領域6aは少なくとも一部が接するように形成され、n型高濃度領域6を形成する。ただし、このn型高濃度領域6が基板全面に形成される場合と、形成されない場合がある。ここまでの状態が
図9に示されている。
【0053】
次にn型炭化珪素エピタキシャル層2の表面上に、エピタキシャル成長によりp型炭化珪素エピタキシャル層3を1.1μm程度の厚さで形成する。p型炭化珪素エピタキシャル層3の不純物濃度は4×1017/cm3程度に設定する。p型炭化珪素エピタキシャル層3をエピタキシャル成長により形成した後、p型炭化珪素エピタキシャル層3にさらにアルミニウム等のp型の不純物を、p型炭化珪素エピタキシャル層3のチャネル領域にイオン注入を行ってもよい。
【0054】
次に、p型炭化珪素エピタキシャル層3の表面上に、フォトリソグラフィによって所定の開口部を有するイオン注入用マスクを例えば酸化膜で形成する。この開口部に窒素(N)、リン(P)等のn型の不純物をイオン注入し、p型炭化珪素エピタキシャル層3の表面の一部にn
+型ソース領域7を形成する。次に、n
+型ソース領域7の形成に用いたイオン注入用マスクを除去し、同様の方法で、所定の開口部を有するイオン注入用マスクを形成し、p型炭化珪素エピタキシャル層3の表面の一部にリン等のp型の不純物をイオン注入し、p
++型コンタクト領域8(不図示)を形成する。p
++型コンタクト領域8の不純物濃度は、p型炭化珪素エピタキシャル層3の不純物濃度より高くなるように設定する。n
+型ソース領域7およびp
++型コンタクト領域8は
図1の平面図の形状に形成する。ここまでの状態が
図10に示されている。
図10は、
図1のA-A’断面を示している。
【0055】
次に、1700℃程度の不活性ガス雰囲気で熱処理(アニール)を行い、第1p+型ベース領域4、第2p+型ベース領域5、n+型ソース領域7およびp++型コンタクト領域8の活性化処理を実施する。なお、上述したように1回の熱処理によって各イオン注入領域をまとめて活性化させてもよいし、イオン注入を行うたびに熱処理を行って活性化させてもよい。
【0056】
次に、p型炭化珪素エピタキシャル層3の表面上に、フォトリソグラフィによって所定の開口部を有するトレンチ形成用マスクを例えば酸化膜で形成する。次に、ドライエッチングによってp型炭化珪素エピタキシャル層3を貫通し、n型高濃度領域6(2)に達するトレンチ18を形成する。トレンチ18の底部はn型高濃度領域6(2)に形成された第1p
+型ベース領域4に達してもよい。次に、トレンチ形成用マスクを除去する。ここまでの状態が
図11に示されている。
【0057】
次に、n+型ソース領域7の表面と、トレンチ18の底部および側壁に沿ってゲート絶縁膜9を形成する。このゲート絶縁膜9は、酸素雰囲気中において1000℃程度の温度の熱酸化によって形成してもよい。また、このゲート絶縁膜9は高温酸化(High Temperature Oxide:HTO)等のような化学反応によって堆積する方法で形成してもよい。
【0058】
次に、ゲート絶縁膜9上に、例えばリン原子がドーピングされた多結晶シリコン膜を設ける。この多結晶シリコン膜はトレンチ18内を埋めるように形成してもよい。この多結晶シリコン膜をフォトリソグラフィによりパターニングし、トレンチ18内部に残すことによって、ゲート電極10を形成する。
【0059】
次に、ゲート絶縁膜9およびゲート電極10を覆うように、例えばリンガラスを1μm程度の厚さで成膜し、層間絶縁膜11を形成する。層間絶縁膜11およびゲート絶縁膜9をフォトリソグラフィによりパターニングしn
+型ソース領域7およびp
++型コンタクト領域8を露出させたコンタクトホールを形成する。その後、熱処理(リフロー)を行って層間絶縁膜11を平坦化する。ここまでの状態が
図12に示されている。また、層間絶縁膜11にコンタクトホールを形成した後に、チタン(Ti)または窒化チタン(TiN)またはチタンと窒化チタンの積層からなるバリアメタルを形成してもよい。この場合、バリアメタルにもn
+型ソース領域7およびp
++型コンタクト領域8を露出させるコンタクトホールが設けられる。
【0060】
次に、層間絶縁膜11に設けられたコンタクトホール内および層間絶縁膜11上にソース電極13となる導電性の膜を形成する。導電性の膜は、例えばニッケル(Ni)膜である。また、n+型炭化珪素基板1の第2主面上にも、同様にニッケル(Ni)膜を形成する。その後、例えば970℃程度の温度で熱処理を行って、コンタクトホール内部のニッケル膜をシリサイド化してソース電極13とする。同時に、第2主面に形成したニッケル膜は、n+型炭化珪素基板1とオーミック接合を形成する裏面電極14となる。その後、未反応のニッケル膜を選択的に除去して、例えばコンタクトホール内にのみソース電極13を残す。
【0061】
次に、コンタクトホールを埋め込むようにソース電極パッド(不図示)を形成する。ソース電極パッドを形成するために堆積した金属層の一部をゲートパッドとしてもよい。n+型炭化珪素基板1の裏面には、裏面電極14のコンタクト部にスパッタ蒸着などを用いてニッケル(Ni)膜、チタン(Ti)膜などの金属膜を形成する。この金属膜は、Ni膜、Ti膜を複数組み合わせて積層してもよい。その後、金属膜がシリサイド化してオーミックコンタクトを形成するように、高速熱処理(RTA:Rapid Thermal Annealing)などのアニールを施す。その後、例えばTi膜、Ni膜、金(Au)を順に積層した積層膜などの厚い膜を電子ビーム(EB:Electron Beam)蒸着などで形成し、裏面電極14を形成する。
【0062】
上述したエピタキシャル成長およびイオン注入においては、n型不純物(n型ドーパント)として、例えば、炭化珪素に対してn型となる窒素(N)やリン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)などを用いればよい。p型不純物(p型ドーパント)として、例えば、炭化珪素に対してp型となるホウ素(B)やアルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)などを用いればよい。このようにして、
図1~
図4に示すトレンチ型MOSFET50が完成する。
【0063】
以上、説明したように、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置によれば、n+型ソース領域およびp++型コンタクト領域は、トレンチ間にx方向にトレンチに接するように設けられ、y方向に互いに離れて周期的に配置されている。これにより、n+型ソース領域および++型コンタクト領域の幅を狭くすることができる。このため、セルピッチを狭めることが可能になり、単位面積あたりのチャネル幅密度を向上させ、オン抵抗を減少することができる。
【0064】
また、n+型ソース領域とp++型コンタクト領域との間に間隔が設けられ、p型炭化珪素エピタキシャル層が露出している。これにより、n+型ソース領域とp++型コンタクト領域とが重なることを防止できる。このため、n+型ソース領域とp++型コンタクト領域とが重なることにより点欠陥が発生することを防止でき、ゲート信頼性を向上させることができる。
【0065】
(実施の形態2)
図13は、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す平面図である。
図14は、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す
図12のA-A’断面図である。
図15は、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す
図12のB-B’断面図である。
【0066】
実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置51が、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置50と異なる点は、トレンチ18に挟まれた全領域にp++型コンタクト領域8が設けられたダイオードセル領域20を備えている点である。ダイオードセル領域20を設けることで、炭化珪素半導体装置51をインバータ等で用いるときに外部にダイオードを接続する必要がなくなる。
【0067】
図14および
図15に示すように、ダイオードセル領域20では、トレンチ18間でp
++型コンタクト領域8が設けられた領域と深さ方向zに対向する領域には、p型炭化珪素エピタキシャル層3、第1p
+型ベース領域4および第2p
+型ベース領域(第2導電型の第3半導体領域)5が互いに接して配置されている。
【0068】
ダイオードセル領域20の間に、トレンチ間にn
+型ソース領域とp
++型コンタクト領域を有するMOSストライプが一つまたは複数配置されたMOSセル領域21が設けられている。
図13は、MOSセル領域21にMOSストライプが3つ配置された例を示している。MOSセル領域21では、実施の形態1と同様に、n
+型ソース領域7およびp
++型コンタクト領域8は、トレンチ18間にx方向にトレンチ18に接するように設けられ、y方向に互いに離れて周期的に配置されている。
【0069】
図14に示すように、MOSセル領域21のトレンチ18間でn
+型ソース領域7が設けられた領域と深さ方向zに対向する領域には、実施の形態1と同様に、p型炭化珪素エピタキシャル層3およびn型高濃度領域6(2)が配置されている。図示されていないが、MOSセル領域21のトレンチ18間でp
++型コンタクト領域8が設けられた領域と深さ方向zに対向する領域には、p型炭化珪素エピタキシャル層3、第1p
+型ベース領域4および第2p
+型ベース領域5が互いに接して配置されている。つまり、ダイオードセル領域20と同様の構造を有する。図示されてはいないが、MOSセル領域21のトレンチ18間でp
++型コンタクト領域8およびn
+型ソース領域7が設けられていない領域と深さ方向zに対向する領域には、p型炭化珪素エピタキシャル層3、第1p
+型ベース領域4および第2p
+型ベース領域5が互いに接して配置されている。つまり、ダイオードセル領域20と同様の構造を有する。
【0070】
また、ダイオードセル領域20での第1p+型ベース領域4のn+型炭化珪素基板1側の表面は、MOSセル領域21での第1p+型ベース領域4のn+型炭化珪素基板1側の表面より浅い、つまりソース電極13側にあってもよい。この場合、ダイオードセル領域20が動作し、アバランシェ降伏が発生したときに連続したp型領域を設けることで電流を流れやすくして、電位差を減少させることができる。
【0071】
実施の形態2においても、実施の形態1と同様に、p++型コンタクト領域8は、片側のみトレンチ18と接していてもよいし、また、両側ともトレンチ18と接していなくてもよい。
【0072】
以下、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置がチャネル幅密度を向上させるための条件を詳細に説明する。ダイオードセル領域20の間に、配置されるMOSセル領域21の数をn、p++型コンタクト領域8のx方向の長さをLpとする。
【0073】
この場合、x方向のセルピッチPx(μm)、y方向のセルピッチPy(μm)、y方向のチャネル幅Wch(μm)、チャネル幅密度Dch(μm/μm2)は、以下のようになる。
Px=n×(Lg+Ln)+Lg+Lp
Py=2Wp+Wpc+Wn
Wch=2nWn
Dch=Wch/(Px×Py)=2nWn/[{n(Lg+Ln)+Lg+Lp}×(2Wp+Wpc+Wn)]
【0074】
これらより、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置でチャネル幅密度が向上するための条件は、Dch≧Dch’である。このため、
Wn≧(2Wp+Wpc)×Px/(nPx’-Px)=(2Wp+Wpc)×{n(Lg+Ln)+Lg+Lp}/{n(Lg’+2Ln’+Lp’)-n(Lg+Ln)-Lg-Lp}
が成り立つことにより、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置で、従来の炭化珪素半導体装置より、チャネル幅密度を向上させることができる。
【0075】
図16は、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置のチャネル幅密度を示すグラフである。
図16では、横軸は、Wn(n
+型ソース領域7のx方向の長さ)を示し、単位はμmである。縦軸は、チャネル幅密度Dchを示し、単位は、μm/μm
2である。従来の炭化珪素半導体装置では、Lg’=0.7μm、Ln’=0.85μm、Lp’=1μmでのチャネル幅密度を示す。
【0076】
実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置は、実施例1でLg=0.7μm、Ln=1.1μm、Wp=1μm、Wpc=1μm、実施例2でLg=0.7μm、Ln=0.85μm、Wp=1μm、Wpc=1μmの場合を示す。実施例1および実施例2では、それぞれ、n(MOSセル領域21に含まれる、トレンチ間にn+型ソース領域7とp++型コンタクト領域8を有するMOSストライプの数)=1~4の場合を示している。
【0077】
図16より、実施例1ではn≧2以上の場合、従来の炭化珪素半導体装置よりチャネル幅密度Dchが高くできることがわかる。具体的には、n=2では、Wn≧11.572μm以上で、n=3では、Wn≧7.2μm以上で、n=4では、Wn≧5.87μm以上で、従来の炭化珪素半導体装置よりチャネル幅密度Dchが高くなることがわかる。また、実施例2ではn≧1以上の場合、従来の炭化珪素半導体装置よりチャネル幅密度Dchが高くできることがわかる。具体的には、n=1では、Wn≧31μm以上で、n=2では、Wn≧6.489μm以上で、n=3では、Wn≧4.65μm以上で、n=4では、Wn≧3.975μm以上で、従来の炭化珪素半導体装置よりチャネル幅密度Dchが高くなることがわかる。
【0078】
実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置は、実施の形態1と同様に製造することができるため、製造方法の記載を省略する。
【0079】
以上、説明したように、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置によれば、ダイオードセル領域を設けた場合でも、実施の形態1と同様の効果を有する。また、ダイオードセル領域を設けることで、炭化珪素半導体装置をインバータ等で用いるときに外部にダイオードを接続する必要がなくなる。
【0080】
以上において本発明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であり、上述した各実施の形態において、例えば各部の寸法や不純物濃度等は要求される仕様等に応じて種々設定される。また、各実施の形態では第1導電型をn型とし、第2導電型をp型としたが、本発明は第1導電型をp型とし、第2導電型をn型としても同様に成り立つ。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上のように、本発明にかかる炭化珪素半導体装置は、インバータなどの電力変換装置や種々の産業用機械などの電源装置や自動車のイグナイタなどに使用されるパワー半導体装置に有用である。
【符号の説明】
【0082】
1、101 n+型炭化珪素基板
2、102 n型炭化珪素エピタキシャル層
2a 第1n型炭化珪素エピタキシャル層
2b 第2n型炭化珪素エピタキシャル層
3、103 p型炭化珪素エピタキシャル層
4、104 第1p+型ベース領域
5、105 第2p+型ベース領域
6、106 n型高濃度領域
6a 下部n型高濃度領域
6b 上部n型高濃度領域
7、107 n+型ソース領域
8、108 p++型コンタクト領域
9、109 ゲート絶縁膜
10、110 ゲート電極
11、111 層間絶縁膜
13、113 ソース電極
14、114 裏面電極
18、118 トレンチ
20 ダイオードセル領域
21 MOSセル領域
50、51、150 トレンチ型MOSFET