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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111311
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】鋼桁とコンクリート桁との接合構造
(51)【国際特許分類】
   E01D 1/00 20060101AFI20240808BHJP
   E01D 2/00 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
E01D1/00 D
E01D2/00
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024101833
(22)【出願日】2024-06-25
(62)【分割の表示】P 2022153643の分割
【原出願日】2022-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2021158955
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】菅原 淳
(57)【要約】
【課題】比較的簡単な構造により鋼桁とコンクリート桁とを確実に剛接合でき、工数やコストの削減を図ることができる、鋼桁とコンクリート桁との接合構造を提供する。
【解決手段】箱桁形状の鋼桁の外殻部分を接合部内に延長し、接合部の鋼桁側の端部位置に、箱桁の長さ方向と交差する向きにダイアフラムを配設し、接合部内の箱桁の内面上に、箱桁の長さ方向に平行に第一のずれ止め部材を接合し、接合部内の箱桁の内面から離れた位置に、箱桁の長さ方向に平行に第二の接合部材を配設して、ダイアフラムに接合し、接合部のコンクリート桁側の端部位置に、箱桁の長さ方向と交差する向きに、前記第二のずれ止め部材の位置を保持する保持部材を配設して、接合部内にコンクリート桁から連続するようにコンクリートを打設するとともに、コンクリート桁から連続する補強材をダイアフラムに固定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱桁形状の鋼桁が接合部を介してコンクリート桁と接合される、鋼桁とコンクリート桁との接合構造であって、
前記接合部内には前記鋼桁から前記箱桁の外殻部分が延長され、
前記接合部の前記鋼桁側の端部位置に、前記箱桁の長さ方向と交差する向きに配設され、前記箱桁の内面に接合されるダイアフラムと、
前記接合部内に、前記箱桁の長さ方向に平行に配設される長尺のずれ止め部材と、
前記接合部内の前記箱桁と前記ダイアフラムとで囲まれる空間に前記コンクリート桁から連続するように充填されるコンクリートおよび前記コンクリート桁から連続するように前記コンクリートに埋設され前記接合部に端部が定着される補強材と
を備え、
前記ずれ止め部材は、前記箱桁の内面から離れた位置に配設され前記ダイアフラムに接合される第二のずれ止め部材を含み、
前記接合部の前記コンクリート桁側の端部位置に、前記箱桁の長さ方向と交差する向きに配設され、前記箱桁内における前記第二のずれ止め部材の位置を保持する保持部材を備え、
前記第二のずれ止め部材は、該第二のずれ止め部材の長さ方向の両端部のみが、前記ダイアフラムおよび前記保持部材により保持されていることを特徴とする鋼桁とコンクリート桁との接合構造。
【請求項2】
前記第二のずれ止め部材は、H形鋼または鋼管により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の鋼桁とコンクリート桁との接合構造。
【請求項3】
前記ずれ止め部材は、前記箱桁の内面上に配設され該箱桁の内面に接合される第一のずれ止め部材を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の鋼桁とコンクリート桁との接合構造。
【請求項4】
前記第一のずれ止め部材は、表面の少なくとも一部に凸部が設けられるT形鋼を含むことを特徴とする請求項3に記載の鋼桁とコンクリート桁との接合構造。
【請求項5】
前記T形鋼に設けられる前記凸部は、前記T形鋼のフランジとウェブの少なくとも一方の表面に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の鋼桁とコンクリート桁との接合構造。
【請求項6】
前記第二のずれ止め部材は、表面の少なくとも一部に凸部が設けられるH形鋼を含むことを特徴とする請求項1に記載の鋼桁とコンクリート桁との接合構造。
【請求項7】
前記H形鋼に設けられる前記凸部は、前記H形鋼のフランジとウェブの少なくとも一方の表面に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の鋼桁とコンクリート桁との接合構造。
【請求項8】
前記第二のずれ止め部材は、表面の少なくとも一部に凸部が設けられる鋼管を含むことを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の鋼桁とコンクリート桁との接合構造。
【請求項9】
前記凸部は、前記箱桁の長さ方向と交差する方向に沿って伸びるように所定間隔で設けられるリブにより形成されていることを特徴とする請求項4~7のいずれかに記載の鋼桁とコンクリート桁との接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼桁とコンクリート桁との接合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
橋梁等に用いられる鋼桁とコンクリート桁との接合構造として、例えば、特許文献1および非特許文献1に開示されるように、鋼部材とコンクリート部材のずれ止めとして孔空き鋼板ジベルやスタッドを、鋼桁とコンクリート桁との接合部内に設け、鋼桁とコンクリート桁とのずれ止めとして機能させるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-232009号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】縄田俊文、外5名「新川橋(鋼・PC複合上部工)工事の設計・施工~四国横断自動車道~」川田技報、vol.19、2000年、pp.41~46
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および非特許文献1に開示される接合構造では、鋼桁とコンクリート桁との間の接合部内に鋼桁を延長することにより鋼殻セルを設け、この鋼殻セル内に孔空き鋼板ジベルまたはスタッドを配置し、鋼殻セル内にコンクリートを充填することで、鋼桁とコンクリート桁とが接合されている。
【0006】
しかし、このような接合構造では、鋼桁とコンクリート桁との間の接合部内に多数の鋼殻セルを設けるとともに、この鋼殻セル内に多数の孔空き鋼板ジベルまたはスタッドを接合する必要があるため、鋼桁の製作時に鋼殻セル、孔空き鋼板ジベルやスタッドの組み立てや溶接に多くの時間を要する。また、鋼桁の製作時の溶接量が多くなるため、鋼殻セルが歪んでしまい、鋼殻セルが設けられる鋼桁の製作精度の管理が難しい。さらに、鋼桁、コンクリート桁の架設現場において、コンクリートを多数の鋼殻セル内に充填することになるため、コンクリートの打設にも手間がかかる問題があった。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、比較的簡単な構造により鋼桁とコンクリート桁とを確実に剛接合でき、工数やコストの削減を図ることができる、鋼桁とコンクリート桁との接合構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は以下の特徴を有する。
【0009】
[1] 箱桁形状の鋼桁が接合部を介してコンクリート桁と接合される、鋼桁とコンクリート桁との接合構造であって、前記接合部内には前記鋼桁から前記箱桁の外殻部分が延長され、前記接合部の前記鋼桁側の端部位置に、前記箱桁の長さ方向と交差する向きに配設され、前記箱桁の内面に接合されるダイアフラムと、前記接合部内に、前記箱桁の長さ方向に平行に配設される長尺のずれ止め部材と、前記接合部内の前記箱桁と前記ダイアフラムとで囲まれる空間に前記コンクリート桁から連続するように充填されるコンクリートおよび前記コンクリート桁から連続するように前記コンクリートに埋設され前記接合部に端部が定着される補強材とを備えることを特徴とする鋼桁とコンクリート桁との接合構造。
【0010】
[2] 前記ずれ止め部材は、前記箱桁の内面上に配設され該箱桁の内面に接合される第一のずれ止め部材を含むことを特徴とする[1]に記載の鋼桁とコンクリート桁との接合構造。
【0011】
[3] 前記ずれ止め部材は、前記箱桁の内面から離れた位置に配設され前記ダイアフラムに接合される第二のずれ止め部材を含み、前記接合部の前記コンクリート桁側の端部位置に、前記箱桁の長さ方向と交差する向きに配設され、前記箱桁内における前記第二のずれ止め部材の位置を保持する保持部材を備えることを特徴とする[1]に記載の鋼桁とコンクリート桁との接合構造。
【0012】
[4] 前記ずれ止め部材は、前記箱桁の内面上に配設され該箱桁の内面に接合される第一のずれ止め部材と、前記箱桁の内面から離れた位置に配設され前記ダイアフラムに接合される第二のずれ止め部材とを含み、前記接合部の前記コンクリート桁側の端部位置に、前記箱桁の長さ方向と交差する向きに配設され、前記箱桁内における前記第二のずれ止め部材の位置を保持する保持部材を備えることを特徴とする[1]に記載の鋼桁とコンクリート桁との接合構造。
【0013】
[5] 前記第一のずれ止め部材は、表面の少なくとも一部に凸部が設けられるT形鋼を含むことを特徴とする[2]に記載の鋼桁とコンクリート桁との接合構造。
【0014】
[6] 前記第一のずれ止め部材は、表面の少なくとも一部に凸部が設けられるT形鋼を含むことを特徴とする[4]に記載の鋼桁とコンクリート桁との接合構造。
【0015】
[7] 前記T形鋼に設けられる前記凸部は、前記T形鋼のフランジとウェブの少なくとも一方の表面に配置されていることを特徴とする[5]に記載の鋼桁とコンクリート桁との接合構造。
【0016】
[8] 前記T形鋼に設けられる前記凸部は、前記T形鋼のフランジとウェブの少なくとも一方の表面に配置されていることを特徴とする[6]に記載の鋼桁とコンクリート桁との接合構造。
【0017】
[9] 前記第二のずれ止め部材は、表面の少なくとも一部に凸部が設けられるH形鋼を含むことを特徴とする[3]に記載の鋼桁とコンクリート桁との接合構造。
【0018】
[10] 前記第二のずれ止め部材は、表面の少なくとも一部に凸部が設けられるH形鋼を含むことを特徴とする[4]に記載の鋼桁とコンクリート桁との接合構造。
【0019】
[11] 前記H形鋼に設けられる前記凸部は、前記H形鋼のフランジとウェブの少なくとも一方の表面に配置されていることを特徴とする[9]に記載の鋼桁とコンクリート桁との接合構造。
【0020】
[12] 前記H形鋼に設けられる前記凸部は、前記H形鋼のフランジとウェブの少なくとも一方の表面に配置されていることを特徴とする[10]に記載の鋼桁とコンクリート桁との接合構造。
【0021】
[13] 前記第二のずれ止め部材は、表面の少なくとも一部に凸部が設けられる鋼管を含むことを特徴とする[3]、[4]、[9]~[12]のいずれかに記載の鋼桁とコンクリート桁との接合構造。
【0022】
[14] 前記凸部は、前記箱桁の長さ方向と交差する方向に沿って伸びるように所定間隔で設けられるリブにより形成されていることを特徴とする[5]~[12]のいずれかに記載の鋼桁とコンクリート桁との接合構造。
【発明の効果】
【0023】
本発明の鋼桁とコンクリート桁との接合構造によれば、箱桁形状の鋼桁が接合部内まで連続的に延長されるとともに、長尺のずれ止め部材が接合部内に、箱桁の長さ方向に平行に配設されている。そして、ずれ止め部材により、コンクリート桁から連続するように接合部内に打設されるコンクリートに対する拘束および付着効果が得られ、接合部内に鋼殻セルを設けたりさらに鋼殻セル内に孔空き鋼板ジベルやスタッドを接合しなくても、鋼桁とコンクリート桁とが確実に剛接合される。
【0024】
よって、鋼桁とコンクリートとの間の接合部内に多数の鋼殻セルを設けたり、この鋼殻セル内に多数の孔空き鋼板ジベルやスタッドを接合するのに比べると極めて簡単な構造となり、鋼桁を鉄骨工場で製作するときの溶接量が削減され、工数やコストの削減を図ることができる、また、溶接量が削減されることにより、鋼桁の製作時の溶接の入熱による歪が少なくなり、鋼桁の製作精度の管理が容易となる。
【0025】
また、本発明の鋼桁とコンクリート桁との接合構造では、鋼殻セルを用いる接合構造のように接合部内が多数の区画に仕切られていないため、鋼桁およびコンクリート桁の架設現場において、コンクリートを接合部内に隙間なく充填することが容易となり、コンクリート打設の施工性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の鋼桁とコンクリート桁との接合構造の一例を示す、縦断面図である。
図2図2は、図1におけるII-II断面を示す図である。
図3図3は、本発明の鋼桁とコンクリート桁との接合構造における接合部を模式的に示す斜視図である。
図4図4は、本発明の鋼桁とコンクリート桁との接合構造の適用例を示す図である。
図5図5は、本発明の鋼桁とコンクリート桁との接合構造における第二のずれ止め部材の一例を示す斜視図である。
図6図6(a)は、本発明の鋼桁とコンクリート桁との接合構造における、第二のずれ止め部材のダイアフラムへの接合状況の一例を示す側面図であり、図6(b)は、図6(a)におけるVIB-VIB断面図である。
図7図7は、本発明の鋼桁とコンクリート桁との接合構造における第二のずれ止め部材の他の一例を示す斜視図である。
図8図8(a)は、本発明の鋼桁とコンクリート桁との接合構造における、第二のずれ止め部材のダイアフラムへの接合状況の一例を示す側面図であり、図8(b)は、図8(a)におけるVIIIB-VIIIB断面図である。
図9図9(a)は、本発明の鋼桁とコンクリート桁との接合構造における、第二のずれ止め部材の保持部材への接合状況の一例を示す側面図であり、図9(b)は、図9(a)におけるIXB-IXB断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の鋼桁とコンクリート桁との接合構造の実施形態を詳細に説明する。
【0028】
図1に、本実施形態の鋼桁とコンクリート桁との接合構造1の縦断面図を示す。また、図2に、図1におけるII-II断面を示す。
【0029】
本実施形態の鋼桁とコンクリート桁との接合構造1は、図3に示すように、箱桁形状の主桁を有する鋼桁2と、コンクリート桁3とが、接合部10を介して接合されて構成されるものである。
【0030】
本実施形態の鋼桁とコンクリート桁との接合構造1は、例えば図4に示すように、橋脚4の間隔が比較的大きな径間に架設された鋼桁2と、橋脚4の間隔が比較的小さな径間に架設されたコンクリート桁3とを剛接合する必要がある箇所に用いられる。
【0031】
図1図3に示すように、本実施形態の鋼桁とコンクリート桁との接合構造1は、箱桁20と、ダイアフラム11と、ずれ止め部材12、13と、保持部材16と、コンクリート30と、コンクリート30に埋設される補強材15とを備えている。
【0032】
図1および図3に示すように、接合部10は、鋼桁2の主桁を構成する箱桁20が、鋼桁2から連続的に延長されて設けられている。ただし、鋼桁2の箱桁20のうち、外殻を除く部位(縦リブ等)は、鋼桁2から接合部10内に延長されておらず、その終端が、後述するダイアフラム11に溶接または金物を介して接合されている(図示せず)。また、ダイアフラム11は、接合部10の鋼桁2側の端部位置に、箱桁20の長さ方向と交差する向きに配設され、箱桁20の内面に設けられたブラケット、ガセットプレート等(図示せず)にボルト接合されるか、箱桁20の内面に直接溶接されている。
【0033】
本実施形態の鋼桁とコンクリート桁との接合構造1においては、ずれ止め部材には、第一のずれ止め部材12および第二のずれ止め部材13が含まれる。図1図3に示すように、第一のずれ止め部材12、第二のずれ止め部材13はそれぞれ、長尺のT形鋼、長尺のH形鋼により構成され、接合部10内に箱桁20の長さ方向に平行に配設されている。第一のずれ止め部材12は、箱桁20の内面上に、T形鋼のウェブが箱桁20の内面に対してほぼ垂直となるように配設され、箱桁20の内面に溶接により接合されている。第二のずれ止め部材13は、箱桁20の内面から離れた位置に配設され、ダイアフラム11の接合部10側の面に設けられたブラケット、ガセットプレート等(図示せず)にボルト接合されるか、ダイアフラム11の接合部10側の面に直接溶接により接合されている。
【0034】
そして、図1図3に示すように、コンクリート桁3の上部および下部には、補強材15が埋設されている。補強材15は、コンクリート桁3から接合部10内に連続するように延長され、接合部10内の第一のずれ止め部材12の間を通すようにして、コンクリート30に埋設されている。補強材15の端部は、ダイアフラム11に固定されることにより、この補強材15の端部が接合部に定着されている。
【0035】
補強材15にPC棒鋼やPCより線等からなる緊張材を用いて、張力を導入すれば、コンクリート桁3がプレストレスト・コンクリート桁となり、コンクリート桁3の径間を大きくすることができる。また、コンクリート桁3をプレストレスト・コンクリート桁とする必要が無い場合には、補強材15として通常の鉄筋を用いてもよい。
【0036】
補強材15にPCより線等からなる緊張材を用いて、コンクリート桁3をプレストレスト・コンクリート桁とする場合には、補強材15の端部は、例えば次のようにして、ダイアフラム11に固定される。まず、ダイアフラム11に孔(図示せず)を設けておき、この孔を通すようにして補強材15の端部をダイアフラム11の反対側に突出させる。さらに、ダイアフラム11から突出する補強材15の端部を、ドーナツ型の支圧板(図示せず)の孔に通す。この状態で、コンクリート桁3から接合部10にかけてコンクリート30を打設する。コンクリート30が硬化した後、補強材15に張力を導入し、この状態で、支圧板から突出する補強材15の端部の外周にアンカーヘッド(図示せず)を巻き付けて取り付ける。アンカーヘッドの外径は、ダイアフラム11及び支圧板の孔の径よりも大きくし、補強材15に設計張力を導入しても抜け落ちないような固定強度で補強材15の外周に固定するようにする。補強材15にPC棒鋼からなる緊張材を用いる場合には、アンカーヘッドに代えて、PC棒鋼の端部にボルトを螺合することにより、補強材15に張力を導入しても良い。このようにして、鋼桁2とコンクリート桁3とが、接合部10を介して剛接合される。
【0037】
なお、補強材15の端部の接合部への定着は、上述の方式に限定されるものでなく、例えば、第一のずれ止め部材12を構成するT形鋼のフランジやウェブに受け材や金物を設けて固定する方式としてもよい。コンクリート桁3をプレストレスト・コンクリート桁とする必要が無い場合等、補強材15の端部に掛かる力を後述する保持部材16で支持可能な場合には、補強材15の端部を保持部材16に固定する方式としてもよい。
【0038】
保持部材16は、箱桁20内における第二のずれ止め部材13の位置を保持するものである。図1および図3に示すように、保持部材16は、例えば等辺山形鋼により構成されている。そして、接合部10のコンクリート桁3側の端部位置に、箱桁20の長さ方向と交差する向きに配設され、その両端部が箱桁20の内面に溶接により接合されているか、箱桁20側の面に設けられたブラケット、ガセットプレート等にボルト接合される。
【0039】
本実施形態の鋼桁とコンクリート桁との接合構造1の各構成要素の寸法および強度は、例えば次のようにして決定することができる。
【0040】
まず、鋼桁2およびコンクリート桁3の各々の死荷重および断面剛性を仮定して骨組モデルを設定する。この骨組モデルに対して、鋼桁2およびコンクリート桁3に作用する死荷重および活荷重を入力する骨組み解析を行うことにより、鋼桁2およびコンクリート桁3の断面に発生する曲げモーメントおよびせん断力を算出する。死荷重は、鋼桁2およびコンクリート桁3自身、およびその上に設置される床版等の上部工の自重等を考慮して設定できる。また、活荷重は、鋼桁2およびコンクリート桁3の設計上想定される道路交通量等を考慮して設定できる。
【0041】
次に、上述の骨組み解析により算出された曲げモーメントおよびせん断力に耐えうるように、鋼桁2およびコンクリート桁3の各部の寸法および強度を決定する。具体的には、鋼桁2の桁高、桁幅、鋼板および鋼材の板厚および強度、コンクリート桁3の桁高、桁幅、コンクリート厚、コンクリート強度、鉄筋径、鉄筋本数等を決定する。
【0042】
さらに、上述のようにして決定された、鋼桁2およびコンクリート桁3の各部の寸法および強度に基づいて、鋼桁2およびコンクリート桁3の死荷重および断面剛性を算出する。そして、上述の骨組み解析で仮定した死荷重および断面剛性からの誤差が、所定の割合(例えば5%)以内に収まっているかどうかを確認する。誤差が所定の割合以内に収まっていない場合には、鋼桁2およびコンクリート桁3の各部の寸法および強度を調整して、鋼桁2およびコンクリート桁3の死荷重および断面剛性を改めて算出し、誤差が所定の割合以内に収まるようにする。
【0043】
このようにして、鋼桁2およびコンクリート桁3の各部の寸法および強度を決定する。そして、これに基づいて、鋼桁2およびコンクリート桁3に死荷重および活荷重が作用するときに、鋼桁2およびコンクリート桁3と接合部10との境界位置に発生する曲げモーメントおよびせん断力を算出する。
【0044】
そして、鋼桁とコンクリート桁との接合構造1が、隣接する鋼桁2およびコンクリート桁3から受ける発生する曲げモーメントおよびせん断力に耐えるよう、接合部10の長さ、ならびに各構成要素の寸法および強度を決定する。具体的には、第一のずれ止め部材12、第二のずれ止め部材13、保持部材16および補強材15を構成する各鋼材やその他素材の寸法および強度、第一のずれ止め部材12、第二のずれ止め部材13および補強材15の本数及び配置、充填するコンクリート30の強度等を決定する。
【0045】
ここでは、上述のようにして算出された、鋼桁2およびコンクリート桁3から接合部10に作用する曲げモーメントにより、接合部10内の各位置に発生する橋軸方向の引張力または圧縮力を求める。そして、第一のずれ止め部材12および第二のずれ止め部材13とコンクリート30との間で発生する抵抗力がこれを上回るように、第一のずれ止め部材12、第二のずれ止め部材13および補強材15の長さ、断面寸法、本数および配置、を決定する。補強材15の長さは、コンクリート桁3への埋め込み長さに、接合部10の長さLを加え、さらに接合形態の詳細に応じた余長を加えて設定する。
【0046】
なお、鋼桁2およびコンクリート桁3の各部の寸法および強度、ならびに接合部10内の各構成要素の寸法および強度を決定する際に用いる応力(曲げモーメントおよびせん断力)については、安全係数を別途乗じることが好ましい。
【0047】
また、上述の骨組み解析に加えて、有限要素解析等、構造物の各部に発生する応力を適切に算出可能な他の解析方法を用いてもよい。
【0048】
このように構成された接合部10の、箱桁20とダイアフラム11とで囲まれる空間に、コンクリート桁3から連続するように、コンクリート30が打設されている。ここで、接合部10の鋼桁2側の端部はダイアフラム11により仕切られているため、接合部10内にコンクリート30を打設する時に、コンクリート30が接合部10から鋼桁2側に漏出しないようになっている。
【0049】
図3に示すように、本実施形態では、コンクリート桁3には、コンクリート桁3の軽量化を図るための空洞部31が設けられているが、コンクリート桁3のうち接合部10に近い部分には空洞部31が設けられていない。このような構造とすることにより、接合部10内に、コンクリート桁3から連続するように、コンクリート30が一体的に打設される。
【0050】
図5に、第二のずれ止め部材13の詳細を示す。図5に示すように、第二のずれ止め部材13の表面の少なくとも一部、例えば、フランジ13fの外側の面には、第二のずれ止め部材13を構成するH形鋼の長さ方向と交差する方向に、所定間隔でリブ13rによる凸部が形成されている。同様に、第一のずれ止め部材12の表面の一部、例えば、フランジの外側の面には、第一のずれ止め部材12を構成するT形鋼の長さ方向と交差する方向に、所定間隔でリブ(図示せず)による凸部が形成されている。
【0051】
このように、第一のずれ止め部材12または第二のずれ止め部材13の表面の少なくとも一部に凸部が設けられることにより、第一のずれ止め部材12または第二のずれ止め部材13とコンクリート30との間の付着強度が高められる。そして、接合部10による鋼桁2とコンクリート桁3との間のずれ止め効果を高めることができる。
【0052】
図6(a)に、第二のずれ止め部材13のダイアフラム11への接合状況の詳細を示す。また、図6(b)に、図6(a)におけるVIB-VIB断面図を示す。図6(a)および図6(b)に示すように、第二のずれ止め部材13を構成するH形鋼は、ダイアフラム11の接合部10側の面に、完全溶込みの全周溶接により接合されている。しかし、これに限定されるものでなく、ダイアフラム11と第二のずれ止め部材13を剛結合できる方法であれば、高力ボルトによる接合など、他の方法を採用しても構わない。
【0053】
図5および図6(a)、図6(b)に示した第二のずれ止め部材13は、例えば、次のように変形しても良い。すなわち、図7および図8(a)、図8(b)に示す第二のずれ止め部材14のように、第二のずれ止め部材14の表面のほぼ全面、すなわちフランジ14fの外側および内側の面、ならびにウェブ14wの両側の面に、所定間隔でリブ14rによる凸部が形成されるようにしても良い。同様に、第一のずれ止め部材12の表面のほぼ全面、すなわちフランジの外側および内側の面、ならびにウェブの両側の面に、所定間隔でリブ(図示せず)による凸部が形成されるようにしても良い。
【0054】
図9(a)に、第二のずれ止め部材13の保持部材16への接合状況の詳細を示す。また、図9(b)に、図9(a)におけるIXB-IXB断面図を示す。図9(a)および図9(b)に示すように、第二のずれ止め部材13を構成するH形鋼のウェブと、保持部材16を構成する等辺山形鋼とに、両側から添接板17を当てた上で、ボルトBを締結する。これにより、第二のずれ止め部材13が保持部材16に接合され、箱桁20内における第二のずれ止め部材13の位置が保持されている。
【0055】
なお、上記実施形態においては、第一のずれ止め部材12および第二のずれ止め部材13のフランジの外側の面に、箱桁20の長さ方向と交差する方向に沿って伸びるように、所定間隔でリブによる凸部が形成されている。しかし、これに限定されるものでなく、これに代えて、またはこれに加えて、第一のずれ止め部材12および第二のずれ止め部材13のフランジの内側の面やウェブにリブが設けられていても良い。また、第一のずれ止め部材12および第二のずれ止め部材13の表面の少なくとも一部に、例えば縞鋼板様の突起を形成するなど、連続するリブ以外の手段により凸部が形成されていても良い。
【0056】
また、上記実施形態においては、第二のずれ止め部材13はH形鋼により構成されているが、これに代えて、第二のずれ止め部材13が鋼管等の他の長尺材により構成されていても良い。第二のずれ止め部材13が鋼管により構成されている場合には、鋼管の表面の全体又は少なくとも一部に、鋼管の長さ方向と交差する方向に、所定間隔で設けられるリブまたはスタッド等による凸部が形成されることが好ましい。
【0057】
なお、上記実施形態では、ずれ止め部材には、第一のずれ止め部材12および第二のずれ止め部材13の両方が含まれる例について説明したが、本発明の鋼桁とコンクリート桁との接合構造はこれに限定されない。鋼桁2およびコンクリート桁3の形状やスパン等に応じて、第一のずれ止め部材と第二のずれ止め部材のいずれか一方のみを含むようにしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 鋼桁とコンクリート桁との接合構造
10 接合部
11 ダイアフラム
12 (第一の)ずれ止め部材(T形鋼)
13、14 (第二の)ずれ止め部材(H形鋼)
13f、14f フランジ
13w、14w ウェブ
13r、14r リブ(凸部)
15 補強材
16 保持部材
17 添接板
2 鋼桁
20 箱桁
3 コンクリート桁
30 コンクリート
31 空洞部
4 橋脚
5 支点
W 溶接
B ボルト
L 鋼桁の箱桁が接合部内に延長されている部分の長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9