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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111327
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】光透過性積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/892 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
G01N21/892 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024102530
(22)【出願日】2024-06-26
(62)【分割の表示】P 2024071634の分割
【原出願日】2020-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】田中 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】望月 政和
(72)【発明者】
【氏名】小西 隆博
(72)【発明者】
【氏名】伊▲崎▼ 章典
(57)【要約】
【課題】従来に比べて格段に微小な異物を検出し得る光透過性積層体を提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態による光透過性積層体は、第1主面と第2主面とを有し;第1主面側に剥離可能に仮着された少なくとも1つの反射性保護フィルムを含み;反射性保護フィルムは、所定倍率の光学系の焦点を第1主面の表面に合わせるときの照射光を反射し、かつ、検査光を透過する機能を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層および光学フィルムを備える光透過性積層体の製造方法であって、
粘着剤層と光学フィルムと少なくとも1枚の反射性保護フィルムとをこの順に備える積層体の異物検査する工程を含み、
前記異物検査する工程は、枚葉の前記積層体を中空に固定した状態で透過検査を行い、前記積層体における8μm~50μmサイズの欠点を検出することを含み、
前記欠点の検出が、
所定倍率の光学系の焦点を前記積層体の第1主面の表面に合わせ、前記光学系で前記積層体を走査して欠点のXY座標マップを作成すること;
前記光学系の焦点を前記積層体の第1主面の表面から厚み方向内方に所定距離ずらして、前記光学系で前記積層体を走査して別の欠点のXY座標マップを作成すること;および
前記作成した欠点のXY座標マップを統合すること;
を含む、
光透過性積層体の製造方法。
【請求項2】
前記異物検査する工程前に、前記粘着剤層と前記光学フィルムとがロールトゥロールにより積層されて長尺状の積層体が形成されてから、前記長尺状の積層体が枚葉状に裁断されることを含む、請求項1に記載の光透過性積層体の製造方法。
【請求項3】
前記異物検査する工程後に、少なくとも1枚の前記反射性保護フィルムを剥離することを含む、請求項1または2に記載の光透過性積層体の製造方法。
【請求項4】
前記異物検査をする工程後に、最終製品サイズに裁断されることを含む、請求項1から3のいずれかに記載の光透過性積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光透過性積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置に適用される光透過性積層体(例えば、光学部材、光学積層体、光学フィルム、光透過性粘着シート)は、画像表示欠陥等を防止するために当該積層体内部の異物を排除する必要がある。そのため、このような光透過性積層体は、代表的には異物検査に供される。異物検査は、代表的には、光透過性積層体の長尺状のウェブを搬送しながら行われる透過検査であり、当該透過検査において異物および/または欠点は暗点として認識され得る。近年、画像表示装置に要求される表示性能が格段に高くなり、その結果、光透過性積層体の異物検査の精度についても格段に高いものが要求されるようになっている。具体的には、従来は50μm程度の異物および/または欠点を検出すれば許容されていたところ、10μm程度の異物および/または欠点を検出する必要が生じている。しかし、上記のような長尺状のウェブを搬送しながら行われる異物検査では、このように小さな異物および/または欠点を検出することはきわめて困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-062165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、従来に比べて格段に微小な異物および/または欠点を検出し得る光透過性積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態による光透過性積層体は、第1主面と第2主面とを有し;該第1主面側に剥離可能に仮着された少なくとも1つの反射性保護フィルムを含み;該反射性保護フィルムは、所定倍率の光学系の焦点を該第1主面の表面に合わせるときの照射光を反射し、かつ、検査光を透過する機能を有する。
1つの実施形態においては、上記反射性保護フィルムは以下の関係を満足する:
y≧0.0181x-11.142
ここで、xは650nm~800nmの波長領域での検出波長の絶対値であり、yは反射率の絶対値である。
1つの実施形態においては、上記光透過性積層体は、上記反射性保護フィルムの表面に剥離可能に仮着された表面保護フィルムをさらに含む。
1つの実施形態においては、上記光透過性積層体は、上記反射性保護フィルムの表面に形成されたハードコート層をさらに含む。
1つの実施形態においては、上記光透過性積層体は、枚葉で中空に固定された状態で、8μm~50μmサイズの欠点を検出する透過検査に用いられる。
1つの実施形態においては、上記光透過性積層体は、上記透過検査の検査後に検査済み領域を認識可能な認識手段が設けられている。
1つの実施形態においては、上記認識手段は、検査済み領域を包囲する直線または破線、クロスマーク、あるいは一定間隔のドットである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態による光透過性積層体によれば、従来に比べて格段に微小な(例えば、8μmサイズ程度の)異物および/または欠点を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の1つの実施形態における透過検査の一例を説明する概略側面図である。
図2】(a)~(d)は、透過検査の欠点の検出における光透過性積層体の支持部材への固定方法の手順の一例を説明する概略側面図である。
図3】透過検査の欠点の検出における撮像素子の焦点合わせを説明する概略図である。
図4】透過検査の欠点の検出における撮像素子による光透過性積層体のXY平面の走査を説明する概略斜視図である。
図5】透過検査の欠点の検出における欠点のXY座標マップの一例を説明する概念図である。
図6】透過検査の欠点の検出における所定数の欠点のXY座標マップの統合の一例を説明する概念図である。
図7】(a)~(c)は、光透過性積層体に設けられ得る認識手段を説明する概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。また、図面はすべて模式的に表されており、実際の状態を正確に描いたものではない。
【0009】
A.光透過性積層体の検査方法の概略
本発明の実施形態による光透過性積層体の検査方法は、枚葉の光透過性積層体を中空に固定した状態で透過検査を行う。図1は、透過検査の一例を説明する概略側面図である。透過検査は、例えば、光学系を用いて、一対の支持部材20、20に横架された光透過性積層体10の画像を得ることを含む。光学系は、例えば、光透過性積層体10の一方の側(図示例では上方)に配され、光透過性積層体の画像を得る撮像素子30と;光透過性積層体10の他方の側(図示例では下方)に配され、光透過性積層体10を照射する照射光を発する光源40と;を含む。なお、撮像素子30が光透過性積層体10の下方に配され、光源40が光透過性積層体10の上方に配されてもよい。撮像素子30は、透過光(検査光)像を撮像し、当該撮像した画像において、異物および/または欠点(以下、文脈に応じて単に異物または欠点と称する場合がある)は暗点として認識され得る。透過検査のより具体的な実施形態については後述する。枚葉の光透過性積層体を中空に固定した状態で透過検査を行うことにより、光透過性積層体において8μm~50μmサイズ、好ましくは8μm~30μmサイズ、より好ましくは8μm~20μmサイズ、さらに好ましくは8μm~15μmサイズ、特に好ましくは約10μmサイズの欠点を検出することができる。従来、光学フィルムのような光透過性積層体の異物検査は長尺状のウェブを搬送しながら行われている。このような異物検査によれば、小さな(代表的には、50μm以下のサイズの)異物を検出することは実質的に不可能である。なお、従来は50μmサイズ程度の異物を検出すれば許容されていたので、ウェブ搬送による異物検査に特段の問題は生じていなかったところ、画像表示装置の高精度化に伴い、10μmサイズ程度の異物を検出する必要が新たに生じてきた。本発明者らはこのような問題について鋭意検討した結果、搬送時のウェブのバタつきおよび/または搬送装置の振動により撮像素子による正確な画像が得られないことに起因し得ることを見出した。そして、試行錯誤の結果、光透過性積層体を枚葉状に裁断し、当該枚葉状の光透過性積層体を中空に固定した状態で(すなわち、載置せずに)透過検査を行うことにより、搬送時のウェブのバタつきおよび/または搬送装置の振動による悪影響を排除できるのみならず、載置面の異物等の悪影響も排除した。その結果、きわめて高精度の異物検査を実現し、10μmサイズ程度の異物および/または欠点を検出することを可能にした。このように、本発明は、従来になかった新たな課題を解決するものである。
【0010】
B.光透過性積層体
光透過性積層体としては、異物検査が必要とされる任意の適切な光透過性の積層体が挙げられる。具体例としては、光学フィルム、粘着剤シート、およびこれらの組み合わせ(例えば、粘着剤層付光学フィルム)が挙げられる。光学フィルムとしては、例えば、偏光板、位相差板、タッチパネル用導電性フィルム、表面処理フィルム、および、これらを目的に応じて適切に積層した積層体(例えば、反射防止用円偏光板、タッチパネル用導電層付偏光板)が挙げられる。粘着剤シートは、代表的には、粘着剤とその少なくとも一方の側に仮着された離型フィルムとを含む。光透過性積層体は、代表的には、粘着剤層付光学フィルムであり得る。光透過性積層体の厚みは、好ましくは300μm以下であり、より好ましくは280μm以下であり、さらに好ましくは250μm以下である。本発明の実施形態によれば、このような薄型の光透過性積層体においても微小な異物を良好に検出することができる。光透過性積層体の厚みの下限は、例えば30μmであり得る。
【0011】
光透過性積層体は、例えば、光透過性積層体を構成する各層をいわゆるロールトゥロールにより積層することにより作製され得る。光透過性積層体は、第1主面と第2主面とを有する。第1主面は、代表的には光透過性積層体が貼り合わせられる画像表示セルと反対側の表面であり;第2主面は、代表的には画像表示セル側の表面であり、より詳細には粘着剤層の表面であり得る。作製された長尺状の光透過性積層体は、所定サイズに裁断されて異物検査に供される。当該サイズは、代表的には、最終製品が複数枚得られるサイズであり得る。検査終了後、光透過性積層体は、代表的には最終製品サイズに裁断されて出荷され得る。
【0012】
1つの実施形態においては、光透過性積層体は、異物検査に供される際、第1主面に反射性保護フィルムが剥離可能に仮着されてもよい。光透過性積層体の種類・構成によっては(例えば、光透過性積層体が低反射層(AR層)を含む場合には)光透過性積層体の第1主面に撮像素子のオートフォーカスが機能しない場合があるところ、反射性保護フィルムを仮着することにより、そのような場合であっても光透過性積層体の第1主面に撮像素子のオートフォーカスを良好に機能させることができる。反射性保護フィルムは、代表的には、所定倍率の光学系の焦点を光透過性積層体の第1主面の表面に合わせるときの照射光を反射し、かつ、検査光を透過する機能を有する。1つの実施形態においては、反射性保護フィルムは以下の関係を満足する:
y≧0.0181x-11.142
ここで、xは650nm~800nmの波長領域での検出波長の絶対値であり、yは反射率の絶対値である。このような構成であれば、撮像素子のオートフォーカスをより良好に機能させることができる。反射性保護フィルムとしては、上記機能を有する限りにおいて任意の適切な構成が採用され得る。具体的には、反射性保護フィルムは、例えば特開2019-099751号公報の[0031]に記載の環状オレフィン系樹脂で構成され得る。環状オレフィン系樹脂としては、例えばポリノルボルネンが挙げられる。環状オレフィン系樹脂は、市販品を用いてもよい。市販品の具体例としては、日本ゼオン製のゼオノアおよびゼオネックス、JSR製のアートン、三井化学製のアペル、TOPAS ADVANCED POLYMERS製のトパス等が挙げられる。環状オレフィン系樹脂フィルムは、環状オレフィン系樹脂を50重量%以上含有するものが好ましい。1つの実施形態においては、反射性保護フィルムの表面にハードコート層が形成されていてもよい。ハードコート層を形成することにより、反射性保護フィルムのキズの発生、反射性保護フィルムへの異物の付着等を防止することができるので、より高精度で異物検査を行うことができ、微小な異物および/または欠点を正確に検出することができる。
【0013】
反射性保護フィルムは、予定される検査回数に応じて、複数枚を仮着してもよい。例えば異物検査が2回予定されている場合には、反射性保護フィルムを2枚貼り合わせることにより、2回目の異物検査の前に外側の反射性保護フィルムを1枚剥離すれば、内側の反射性保護フィルムのキズの発生、内側の反射性保護フィルムへの異物の付着等を防止することができるので、より高精度で複数回の異物検査を行うことができる。なお、複数回の検査が予定されている場合であっても、反射性保護フィルムを1枚のみ仮着してもよい。
【0014】
1つの実施形態においては、反射性保護フィルムの表面(反射性保護フィルムが複数存在する場合には、最表の反射性保護フィルム表面)に表面保護フィルムが剥離可能に仮着されてもよい。表面保護フィルムを仮着することにより、反射性保護フィルムのキズの発生、反射性保護フィルムへの異物の付着等を防止することができるので、より高精度で異物検査を行うことができる。表面保護フィルムは、代表的には、検査時に剥離除去される。検査終了後には、検査時に剥離された表面保護フィルムが光透過性積層体の表面に再度仮着されてもよく、別の表面保護フィルムが剥離可能に仮着されてもよい。
【0015】
反射性保護フィルムおよび表面保護フィルムは、ロールトゥロールにより(すなわち、裁断前に)光透過性積層体に仮着されてもよく、裁断後に仮着されてもよい。
【0016】
C.光透過性積層体の検査方法の具体的な実施形態
C-1.中空での固定
以下、透過検査における欠点の検出をより具体的に説明する。欠点の検出においては、上記のとおり、枚葉の光透過性積層体は中空に固定される。光透過性積層体は、例えば上記の図1に示すとおり、一対の支持部材に横架されることにより中空に固定され得る。光透過性積層体は、非製品領域である対向する端部が支持部材に固定され得る。代表的には、光透過性積層体は粘着剤層を含み、光透過性積層体は当該粘着剤層を介して支持部材に固定され得る。図2(a)~図2(d)は、光透過性積層体の支持部材への固定方法の手順の一例を説明する概略側面図である。一連の手順において、好ましくは、光透過性積層体は第1主面10aに反射性保護フィルム50および表面保護フィルム60が剥離可能に仮着されている。まず、図2(a)に示すとおり、光透過性積層体の非製品領域である一方の端部10cのセパレーターが剥離除去され粘着剤層が露出する。当該粘着剤層を介して端部10cが支持部材20に貼り合わせられる。次に、図2(b)に示すとおり、非製品領域である端部10cに対向する端部10dのセパレーターが剥離除去され粘着剤層が露出し、当該粘着剤層を介して端部10dが支持部材20に貼り合わせられる。光透過性積層体(の端部)を粘着剤層により支持部材に貼り合わせることにより、固定治具を別途用いることなく簡便な固定が可能となる。端部10cおよび10dが貼り合わせられると、図2(c)に示すように、セパレーターはすべて除去される。ここで、反射性保護フィルム50および表面保護フィルム60は、光透過性積層体のキズの発生および/または光透過性積層体への異物の付着を防止するだけでなく、セパレーターの除去および端部の貼り合わせの際の補強材としても機能し得る。このようにして、光透過性積層体が支持部材に横架される。次に、図2(d)に示すように、表面保護フィルム60が剥離されて、反射性保護フィルム50が仮着された光透過性積層体10が異物検査に供される。光透過性積層体を支持部材に固定した後に表面保護フィルムを剥離することにより(すなわち、表面保護フィルムを仮着した状態で光透過性積層体を支持部材に固定することにより)、セパレーターを剥離した後も光透過性積層体の剛性(コシ)を保持することが可能となり、取り扱いが容易となる。その結果、シワ等が防止されるので、高精度で異物検査を実施することができ、微小な異物および/または欠点を正確に検出することができる。さらに、枚葉の光透過性積層体を横架した状態で異物検査を行うことにより、搬送によるバタつきおよび/または搬送装置の振動の影響を排除できるので、表面保護フィルムを剥離した後であっても高精度で異物検査を実施することができ、微小な異物および/または欠点を正確に検出することができる。加えて、表面保護フィルムを剥離することにより、表面保護フィルムの異物を検出することがなくなるので、上記効果との相乗的な効果により、より高精度で異物検査を実施することができる。1つの実施形態においては、上記B項で説明したとおり、反射性保護フィルムは複数枚仮着されていてもよい。この場合、1回目の異物検査時に表面保護フィルムが剥離除去され、反射性保護フィルムは、以降の異物検査のたびに1枚ずつ剥離され得る。
【0017】
一対の支持部材20、20は、代表的には、相対的に近接または離間可能に構成されている。1つの実施形態においては、支持部材は、スライド可能に構成され、かつ、互いに離間する方向に付勢されている。具体的には、支持部材は、図2(b)~図2(d)に示すように、一方(図示例では図面の右側)が固定され、他方(図示例では図面の左側)がスライド可能に構成され、当該他方が弾性部材(例えば、バネ)により離間する方向に付勢されている。このような構成であれば、光透過性積層体に適切な張力(テンション)が付与され、光透過性積層体が張架された状態となる。その結果、光透過性積層体のシワおよび歪みが顕著に抑制されるので、より高精度で異物検査を行うことができ、微小な異物および/または欠点を正確に検出することができる。張力は、バネ自体の強度、バネの固定ねじの締め具合を調整することにより制御することができる。なお、支持部材を両方ともスライド可能に構成し、両方を弾性部材により離間する方向に付勢してもよい。
【0018】
C-2.欠点の検出
欠点の検出は、上記のように、代表的には図1に示すような光学系(撮像素子30および光源40を含む)を用いて行われる。以下、具体的に説明する。まず、図3の左側に示すように、所定倍率(以下、低倍率と称する場合がある)の光学系(実質的には、撮像素子30)の焦点を光透過性積層体10の第1主面10aの表面に合わせる。この状態で、図4に示すようにして撮像素子30で光透過性積層体10の平面(XY平面)全体を走査し、欠点のXY座標マップ(第1のXY座標マップ)を作成する。上記A項に記載のとおり、欠点は暗点として認識されるので、第1のXY座標マップにおいては、光透過性積層体10の第1主面10a近傍(第1主面から厚み方向内方の所定の距離まで)の欠点は、例えば図5に示すような画像上の暗点として認識される。なお、第1のXY座標マップのみでは、厚み方向の深い位置(第2主面に近い位置)の微小欠点を検出できない場合がある。これに対して、本発明の実施形態によれば、後述するように、第1主面の表面から厚み方向内方に所定距離Pずらして欠点の検出を行うことにより、光透過性積層体の厚み方向全体にわたって微小欠点を正確に検出することができる。
【0019】
次いで、図3の中央部に示すように、撮像素子30の焦点を光透過性積層体10の第1主面10aの表面から厚み方向(Z方向)内方に所定距離Pずらして、光透過性積層体10の厚み方向内方の所定の位置に焦点を合わせる。この状態で、上記と同様に図4に示すようにして撮像素子30で光透過性積層体10のXY平面全体を走査して、欠点のXY座標マップ(第2のXY座標マップ)を作成する。第2のXY座標マップにおいては、光透過性積層体10の厚み方向内方の所定位置近傍(当該所定位置から所定の距離まで)の欠点は、例えば図5とは実質的に異なる位置にある画像上の暗点として認識される。なお、本明細書においては、所定距離Pを撮像ピッチと称する場合がある。撮像素子の焦点合わせは、任意の適切な手段を用いて実現され得る。例えば、撮像素子自体をZ方向に移動させてもよく、レンズ等により撮像素子の焦点距離を変更してもよく、これらを組み合わせてもよい。図示例は、レンズ等により撮像素子の焦点距離を変更する形態を示している。
【0020】
必要に応じて、図3の右側に示すように、撮像素子30の焦点を厚み方向(Z方向)に所定距離Pさらにずらして、光透過性積層体10の厚み方向内方の次の所定の位置に焦点を合わせる。この状態で、上記と同様に図4に示すようにして撮像素子30で光透過性積層体10のXY平面全体を走査して、欠点のXY座標マップ(第3のXY座標マップ)を作成する。この操作を必要に応じて所定回数繰り返し、所定数の欠点のXY座標マップを作成する。撮像ピッチおよび作成する欠点のXY座標マップの数は、光透過性積層体の全体厚み、光透過性積層体を構成する層の数、各層の厚み等に応じて適切に設定され得る。撮像ピッチPは、例えば10μm~100μmであり、好ましくは20μm~80μmであり、より好ましくは40μm~60μmである。このような構成によれば、厚み方向全体を撮像素子で走査することなく、厚み方向に存在する実質的にすべての欠点(したがって、光透過性積層体における実質的にすべての欠点)およびその大まかな位置を検出することができる。図3では欠点のXY座標マップを3つ作成する形態を示しているが、作成される欠点のXY座標マップの数はこれに限定されるものではなく、好ましくは2~10であり、より好ましくは3~8であり、さらに好ましくは4~6である。
【0021】
次いで、上記のようにして作成した所定数の欠点のXY座標マップを統合する。例えば図6は、5つの欠点のXY座標マップを統合して欠点のXY座標マップ(統合XY座標マップ)を作成する一例を示す。図6のように、各画像データを統合することにより、それぞれのXY座標マップに存在する欠点を共通のXY座標上で表すことができる。このようにして、統合XY座標マップが作成され得る。統合XY座標マップにおいては、光透過性積層体における実質的にすべての欠点がXY座標(2次元座標)に表されている。
【0022】
上記のような統合XY座標マップの作成における撮像素子の所定倍率(低倍率)は、好ましくは10倍未満であり、より好ましくは5倍以下である。当該倍率の下限は、例えば1.5倍であり得る。当該倍率がこのような範囲であれば、光透過性積層体の広範囲を効率よく撮像することができ、その結果、統合XY座標マップを効率よく作成することができる。
【0023】
次に、欠点の深度(光透過性積層体の厚み方向における位置)を測定する。ここで、光透過性積層体の平面全面かつ厚み方向全体にわたって欠点を検出することは困難であり、仮に実現できたとしてもコスト、時間および効率性を考慮すると実用的ではない。したがって、本実施形態においては、統合XY座標マップにおける欠点発生座標のみにおいて欠点の厚み方向の位置を測定する。上記のとおり、統合XY座標マップにおいては、光透過性積層体における実質的にすべての欠点が2次元座標に表されているので、欠点発生座標のみにおいて欠点の厚み方向の位置を測定することにより、光透過性積層体における実質的にすべての欠点の厚み方向の位置を検出することができる。
【0024】
欠点の深度の測定は、撮像素子の焦点を光透過性積層体の第1主面の表面に合わせること、および、当該焦点を光透過性積層体の厚み方向内方に移動させて第1主面の表面から欠点までの距離を測定すること、を含む。具体的には、撮像素子の焦点を厚み方向に移動させ、コントラストが高い位置を合焦位置として認定し、第1主面表面から当該合焦位置までの距離を欠点の厚み方向における位置とすることができる。欠点の厚み方向における正確な位置を検出することにより、製品の検査効率および出荷効率を格段に向上させることができる。
【0025】
上記のような欠点の深度測定における撮像素子の倍率(高倍率)は、好ましくは10倍以上であり、より好ましくは20倍以上である。当該倍率の上限は、例えば50倍であり得る。当該倍率がこのような範囲であれば、微小欠点の厚み方向における位置を確実に検出することができる。
【0026】
欠点の深度測定は、例えば、特開2001-124660号公報、特開2004-077261号公報、特開2009-250893号公報に記載されている。これらの公報の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0027】
1つの実施形態においては、上記欠点の検出は、上記欠点のXY座標マップにおける撮像素子による走査距離1000μmあたりの光透過性積層体の第1主面の厚み方向(Z方向)の変動量が好ましくは±10μm以内、より好ましくは±8μm以内となるような領域で行われ得る。別の実施形態においては、上記欠点の検出は、光透過性積層体の撓み角度が水平方向に対して好ましくは±0.57°以内、より好ましくは±0.50°以内となるような領域で行われ得る。すなわち、いずれの実施形態においても、光透過性積層体の撓みが非常に小さい領域で、欠点の検出が行われ得る。このような構成であれば、光透過性積層体の第1主面への撮像素子の焦点合わせ(結果として、以降の厚み方向内方の所定の位置への焦点合わせ)をきわめて正確に行うことができる。その結果、微小欠点の厚み方向における位置を正確に検出することができる。このような光透過性積層体の撓みが非常に小さい領域は、上記C-1項に記載の光透過性積層体の固定方法により実現され得る。なお、変動量および/または撓み角度が上記範囲を外れる場合には、正確な透過検査が実施できない場合があり、結果として、光透過性積層体において透過検査できない領域が発生する場合がある。このような場合には、後述するように光透過性積層体に検査済み領域を認識する手段を設けることにより、非検査領域が製品として出荷されてしまうという事態を防止することができる。
【0028】
以上のようにして、透過検査(欠点の検出)が行われ得る。検査終了後、光透過性積層体は、上記のとおり、代表的には最終製品サイズに裁断されて出荷され得る。これも上記のとおり、検査終了後には必要に応じて、剥離した表面保護フィルムを光透過性積層体に再度剥離可能に仮着してもよい。
【0029】
1つの実施形態においては、検査後の光透過性積層体(実質的には、光透過性積層体の第1主面側に残っている表面保護フィルムまたは反射性保護フィルム)には、検査済み領域を認識可能な認識手段が設けられている。例えば光透過性積層体の撓み角度が水平方向に対して非常に大きい場合、光透過性積層体において透過検査できない領域が発生し得る。あるいは、上記支持部材による光透過性積層体の固定状態によっては、検査領域が設定とずれてしまう場合がある。検査済み領域を認識する手段を設けることにより、上記のような場合であっても非検査領域が製品として出荷されてしまうという事態を防止することができる。認識手段は、例えば、撮像素子と連動して移動する例えばプロッターにより光透過性積層体にマークすることにより形成され得る。認識手段の具体的な様式としては、例えば、検査済み領域を包囲する直線または破線、クロスマーク、一定間隔のドットが挙げられる。
【0030】
認識手段について、図7(a)~図7(c)を参照して具体的に説明する。例えば図7(a)に示すように支持部材20による光透過性積層体10の固定がずれてしまった場合、撮像素子の走査はXY方向(光透過性積層体10が正しく固定された場合の長辺方向および短辺方向)に行われるので、図7(b)に示すように検査済み領域70aは製品領域80とずれてしまう。認識手段がマークされていなければ、図7(c)に「×」で示す非検査領域が製品として出荷されてしまう可能性があるところ、認識手段70bをマークすることにより、非検査領域を特定することができ、その結果、非検査領域が製品として出荷されてしまうという事態を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の実施形態による光透過性積層体の検査方法は、画像表示装置の製造過程において光学フィルム、粘着剤シート等の異物の検出に好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0032】
10 光透過性積層体
20 支持部材
30 撮像素子
40 光源
50 反射性保護フィルム
60 表面保護フィルム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7