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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111337
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】電源ユニット
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6554 20140101AFI20240809BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240809BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240809BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240809BHJP
   H01M 10/6552 20140101ALI20240809BHJP
   H01M 10/633 20140101ALI20240809BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
H01M10/6554
H01M10/613
H01M10/44 Q
H01M10/0562
H01M10/6552
H01M10/633
H01M10/48 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015753
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】野場 亮汰
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 裕太
(72)【発明者】
【氏名】獅子原 大介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 章弘
(72)【発明者】
【氏名】泰道 明和
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 元彦
【テーマコード(参考)】
5H029
5H030
5H031
【Fターム(参考)】
5H029AK03
5H029AK05
5H029AK15
5H029AL07
5H029AL12
5H029AM12
5H029BJ12
5H029DJ02
5H029DJ04
5H029DJ07
5H029DJ09
5H029EJ01
5H030AA06
5H030AS11
5H030AS15
5H030BB01
5H030FF41
5H031EE01
5H031EE04
5H031HH01
5H031KK01
(57)【要約】
【課題】制御回路の制御を簡易にしつつ動作を確保できる電源ユニットを提供する。
【解決手段】電源ユニットは、発電装置と、発電装置が出力した電気エネルギーを貯める二次電池と、二次電池へ流れる電流および二次電池から流れる電流の少なくとも一方を制御する制御回路と、を備え、二次電池は固体電池を含み、固体電池は、発電装置および制御回路の少なくとも一方と熱伝導により熱を伝達する熱伝達部を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電装置と、
前記発電装置が出力した電気エネルギーを貯める二次電池と、
前記二次電池へ流れる電流および前記二次電池から流れる電流の少なくとも一方を制御する制御回路と、を備える電源ユニットであって、
前記二次電池は固体電池を含み、
前記固体電池は、前記発電装置および前記制御回路の少なくとも一方と熱伝導により熱を伝達する熱伝達部を含む電源ユニット。
【請求項2】
前記固体電池は、集電体、活物質層および電解質層を含む積層構造である請求項1記載の電源ユニット。
【請求項3】
前記熱伝達部は、前記固体電池の表面積の17%以上82%以下の部分を占める請求項1又は2に記載の電源ユニット。
【請求項4】
前記固体電池は、満充電状態と完全放電状態との間の充放電を所定のレートで繰り返すサイクル試験において、前記固体電池の温度が60-100℃のときに容量維持率が60%になった時までのサイクル数が、前記固体電池の周囲の湿度が30%で前記固体電池の温度が25℃のときの前記サイクル試験において容量維持率が60%になった時までのサイクル数の40%以上である請求項1又は2に記載の電源ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発電装置が出力した電気エネルギーを蓄える二次電池を備える電源ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
モータジェネレータ(発電装置)と、発電装置が出力した電気エネルギーを蓄えるリチウムイオン電池(二次電池)と、二次電池の充放電を制御するコンバータ(制御回路)とを備える電源システムに関する先行技術は特許文献1に開示されている。正極と負極とを隔離するセパレータが電解液を保持するリチウムイオン電池は、温度が高くなるにつれて劣化が促進したり電解液が漏れ易くなったりするため、先行技術は、複数設けたリチウムイオン電池の温度を検知し、電源ユニットが接続された負荷の要求電力をリチウムイオン電池の温度に応じて分配し、リチウムイオン電池ごとに設定した目標電力に従って制御回路を制御する。これにより負荷の要求電力を満足させながらリチウムイオン電池の温度管理を実現し、電源ユニットの動作を確保する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-154302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術は、電源ユニットの動作の確保のために制御回路の煩雑な制御を要するという問題点がある。
【0005】
本発明はこの問題点を解決するためになされたものであり、制御回路の制御を簡易にしつつ動作を確保できる電源ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の第1の態様は、発電装置と、発電装置が出力した電気エネルギーを貯める二次電池と、二次電池へ流れる電流および二次電池から流れる電流の少なくとも一方を制御する制御回路と、を備え、二次電池は固体電池を含み、固体電池は、発電装置および制御回路の少なくとも一方と熱伝導により熱を伝達する熱伝達部を含む。
【0007】
第2の態様は、第1の態様において、固体電池は、集電体、活物質層および電解質層を含む積層構造である。
【0008】
第3の態様は、第1又は第2の態様において、熱伝達部は、固体電池の表面積の17%以上82%以下の部分を占める。
【0009】
第4の態様は、第1から第3の態様のいずれかにおいて、固体電池は、満充電状態と完全放電状態との間の充放電を所定のレートで繰り返すサイクル試験において、固体電池の温度が60-100℃のときに容量維持率が60%になった時までのサイクル数が、固体電池の周囲の湿度が30%で固体電池の温度が25℃のときのサイクル試験において容量維持率が60%になった時までのサイクル数の40%以上である。
【発明の効果】
【0010】
発電装置は温度が高くても低くても発電効率が低下することがある。制御回路は温度が高くなると劣化の促進や暴走のおそれがあり、温度が低くなると動作が不安定になる。本発明によればリチウムイオン電池と比較して高温劣化や電解液の漏れが生じ難い固体電池と、発電装置および制御回路の少なくとも一方と、の間を、固体電池の熱伝達部を介して熱伝導により熱が移動する。発電装置や制御回路、固体電池の過熱を防ぎ、制御回路の制御によらずに発電効率や制御回路の動作を確保できるので、制御回路の制御を簡易にしつつ電源ユニットの動作を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施の形態における電源ユニットのブロック図である。
図2】固体電池の断面図である。
図3】変形例における固体電池の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は一実施の形態における電源ユニット10のブロック図である。電源ユニット10は、発電装置11、二次電池12及び制御回路15を備えている。
【0013】
発電装置11は電気エネルギーを出力する装置である。発電装置11は交流電力、直流電力のいずれを出力しても良い。発電装置11は、機械エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機、光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池、燃料の化学エネルギーを電気エネルギーに変換する燃料電池が挙げられる。発電機は磁束の変化によって誘導電流を生じさせる装置であり、内燃機関や外燃機関を動力とする発電機、原子力発電機、水力発電機、風力発電機、地熱発電機が例示される。太陽電池はシリコン系、化合物半導体系、色素増感型(有機系)が例示される。燃料電池は固体高分子形、アルカリ形、リン酸形、溶融炭酸塩形、固体酸化物形が例示される。
【0014】
二次電池12は、発電装置11が出力した電気エネルギーを化学エネルギーに変換して蓄え、必要に応じて起電力として取り出す装置である。二次電池12は、鉛蓄電池、リチウムイオン電池、リチウム硫黄電池、リチウム酸素電池、リチウム空気電池、ニッケル水素電池、ナトリウム硫黄電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタが例示される。二次電池12には固体電池13が含まれる。
【0015】
固体電池13は発電要素が固体で構成された二次電池である。発電要素が固体で構成されているとは、発電要素の骨格が固体で構成されていることを意味し、骨格中に電解液などの液体が含浸した形態を含む。固体電池13は正極と負極との間に固体電解質が介在する。固体電池13は、正極と負極との間に固体電解質に加えて電解液が介在する場合と、正極と負極との間に電解液が介在しない場合とがある。
【0016】
固体電池13は、熱伝導により発電装置11及び制御回路15の少なくとも一方と熱を伝達する熱伝達部14を含む。熱伝達部14は、固体電池13のうち発電装置11や制御回路15に接している部分、発電装置11や制御回路15に接する熱の良導体が固体電池13に接している部分が挙げられる。本実施形態では発電装置11と制御回路15の両方に接する熱伝達部14が固体電池13に設けられているが、発電装置11と制御回路15のどちらかに接する熱伝達部14を固体電池13に設けても良い。
【0017】
固体電池13に接する熱の良導体は、金、銀、銅、アルミニウム、鉄などの熱伝導性に優れる金属製の部材、カーボンナノチューブや黒鉛など炭素製の部材、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、変成ポリフェニレンエーテル、ポリアミド等の合成樹脂製の部材、金属製や合成樹脂製のパイプや中空のパネルに作動液を封入したヒートパイプが例示される。電流を流す電線は熱の良導体に含まれない。固体電池13と制御回路15とを電気的に接続する電線は熱の良導体に含まれないので、固体電池13のうち電線が接続された部分は熱伝達部14に相当しない。
【0018】
制御回路15は、二次電池12へ流れる電流および二次電池12から流れる電流の少なくとも一方を制御する電気回路である。本実施形態では制御回路15はコンバータ16,17、充放電回路18及びインバータ19を含む。コンバータ16,17、充放電回路18及びインバータ19は制御装置(図示せず)によって制御される。
【0019】
コンバータ16は、発電装置11が交流電力を出力する場合は、主に交流を直流に変換するAC/DCコンバータが例示され、発電装置11が直流電力を出力する場合は、主に電圧値を変換するDC/DCコンバータが例示される。コンバータ17は、商用の外部電源20(交流)を直流に変換する電気回路である。コンバータ17は電圧値を変換する機能を有していても良い。
【0020】
充放電回路18は二次電池12の充放電電流を制御する電気回路である。充放電回路18は電圧値を変換する機能を有していても良い。発電装置11や外部電源20は充放電回路18を通して二次電池12を充電し、二次電池12は充放電回路18を通して放電する。
【0021】
インバータ19は直流を交流に変換する電気回路である。インバータ19は、パワートランジスタ等のスイッチング素子を含み、例えばスイッチング素子で幅が異なる短冊状のパルスを作り、このパルスを合成して作った疑似的な正弦波(交流)を負荷21へ出力する。
【0022】
負荷21は、電源ユニット10が出力する電力の入力により作動する装置である。負荷21の種類は特に制限が無い。例えば負荷21はLED等を利用した照明装置、光センサーや人感センサー等の各種センサー、撮像素子などを含むカメラ、ネットワーク機器、微弱電流の発生装置が挙げられる。負荷21は、センサーと照明装置とを組み合わせた自律型照明システム、センサー、カメラ及びネットワーク機器を組み合わせた自律型遠隔監視システム、微弱電流の発生装置を用いた船底や海洋構造物の防汚システム、微弱電流の発生装置とセンサーとを組み合わせた害獣駆除システムが例示される。負荷21が直流電力の入力を要する装置の場合、制御回路15のインバータ19は省略できる。
【0023】
図2は固体電池13の断面図である。固体電池13は順に、集電体22、活物質層23、電解質層24、活物質層25及び集電体26を含む積層構造である。集電体22及び活物質層23は正極を構成し、活物質層25及び集電体26は負極を構成する。本実施形態では集電体22、活物質層23、電解質層24、活物質層25及び集電体26の形状は矩形である。
【0024】
集電体22は導電性を有する部材である。集電体22の材料はNi,Ti,Fe及びAlから選ばれる金属、これらの2種以上の元素を含む合金やステンレス鋼、炭素材料が例示される。
【0025】
活物質層23は正極用活物質を含む。活物質層23にさらに固体電解質(後述する)が含まれていても良い。活物質層23の抵抗を低くするために、活物質層23に導電助剤が含まれていても良い。導電助剤は、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、Ni、Pt及びAgが例示される。
【0026】
正極用活物質は、遷移金属を有する金属酸化物、硫黄系活物質、有機系活物質が例示される。遷移金属を有する金属酸化物は、Mn,Co,Ni,Fe,Cr及びVの中から選択される1種以上の元素とLiとを含む金属酸化物が例示される。遷移金属を有する金属酸化物は、LiCoO,LiNi0.8Co0.15Al0.05,LiMn,LiNiVO,LiNi0.5Mn1.5,LiNi1/3Mn1/3Co1/3及びLiFePOが例示される。
【0027】
硫黄系活物質は、S,TiS,NiS,FeS,LiS,MoS及び硫黄-カーボンコンポジットが例示される。有機系活物質は、2,2,6,6-テトラメチルピペリジノキシル-4-イルメタクリレートやポリテトラメチルピペリジノキシルビニルエーテルに代表されるラジカル化合物、キノン化合物、ラジアレン化合物、テトラシアキノジメタン、及び、フェナジンオキシドが例示される。
【0028】
電解質層24は固体電解質を含む。固体電解質は、酸化物系、硫化物系、水素化物系および有機系から選ばれる1種以上を含む。酸化物系の固体電解質は、NASICON型構造を有する酸化物、ペロブスカイト構造を有する酸化物、ガーネット型構造を有する酸化物が例示される。硫化物系の固体電解質は、結晶性のチオリシコン型、Li10GeP12型、アルジロダイト型、Li11型、LiS-Pに代表されるガラスやガラスセラミック系が例示される。水素化物系の固体電解質は、LiBHとリチウムハライド化合物(LiI,LiBr,LiCl)及びリチウムアミド(LiNH)との固溶体が例示される。有機系の固体電解質は、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリアクリルニトリルが例示される。
【0029】
活物質層25は負極用活物質を含む。活物質層25にさらに固体電解質が含まれていても良い。活物質層25の抵抗を低くするために、活物質層25に導電助剤が含まれていても良い。負極用活物質は、Li、Li-Al合金、LiTi12、黒鉛、In、Si、Si-Li合金、及び、SiOx(例えば0.5<X<1.5)が例示される。
【0030】
電解質層24、活物質層23,25のうちの1つ以上に電解液が含まれていても良い。電解液は溶媒にリチウム塩などの電解質塩が溶解している。溶媒は固体電池13の利用温度域で液体であれば特に制限されない。溶媒は、炭酸エステル、脂肪族カルボン酸エステル、リン酸エステル、γ-ラクトン類、エーテル類、ニトリル類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、フルオラス溶媒、イオン液体が例示される。これらの混合物であっても良い。
【0031】
電解質層24に電解液が存在する場合、電解質層24の全体の体積に対する電解液の体積の割合は51%未満であるのが好ましく、41%未満であるのがより好ましい。固体電池13からの電解液の漏れを低減するためである。
【0032】
電解質層24の体積に対する電解液の体積の割合(体積%)を求めるには、固体電池13を凍結させ、又は、4官能性のエポキシ系樹脂などに固体電池13を埋め込み固めた後、電解質層24の断面(研磨面や集束イオンビーム(FIB)を照射して得られた面)から無作為に選択した5000倍の視野を対象に、エネルギー分散型X線分光器(EDS)が搭載された走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて分析する。分析は元素の分布を特定したり反射電子像のコントラストを画像解析したりして、電解質層24の面積および電解液の面積を特定し、断面における面積の割合を体積の割合とみなして電解液の割合(体積%)を得る。
【0033】
集電体26は導電性を有する部材である。集電体26の材料はNi,Ti,Fe,Cu及びSiから選ばれる金属、これらの元素の2種以上を含む合金やステンレス鋼、炭素材料が例示される。
【0034】
本実施形態では、固体電池13は集電体22、活物質層23、電解質層24、活物質層25及び集電体26を1組として、6組が積層されている(積層型電池)。集電体22には導電性を有するタブリード27がそれぞれ接続され、集電体26には導電性を有するタブリード28がそれぞれ接続されている。タブリード27,28はそれぞれ反対の方向に引き出されている。
【0035】
集電体22、活物質層23、電解質層24、活物質層25及び集電体26は外装材29に包まれている。外装材29に設けられた開口30,31は、それぞれ集電体22の上に位置する。外装材29は、例えば順に、表層、バリア層および接着層(いずれも図示せず)を含む。表層の材料は、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリイミドが例示される。バリア層は、アルミニウム等の金属箔や蒸着層が例示される。接着層の材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンを主成分とする共重合体等のオレフィン系樹脂が例示される。
【0036】
外装材29の外にタブリード27,28を引き出した状態で外装材29の接着層は溶着されている。外装材29の開口30,31の全周はシール材32で集電体22に取り付けられている。シール材32はエポキシ樹脂が例示される。活物質層23、電解質層24、活物質層25及び集電体26は外装材29の中に真空封入されている。
【0037】
タブリード27は固体電池13の正極端子であり、タブリード28は負極端子である。タブリード27に代えて、開口30から露出した集電体22や開口31から露出した集電体22を正極端子にしても良い。
【0038】
固体電池13は、熱伝導により発電装置11及び制御回路15の少なくとも一方と熱を伝達する熱伝達部14(図1参照)を含む。熱伝達部14は、固体電池13の外装材29の表面や集電体22の表面に設けられる。集電体22の表面に密着する絶縁体(図示せず)を配置し、その絶縁体を介して固体電池13に熱伝達部14を設けても良い。固体電池13に設けられた熱伝達部14により、発電装置11及び制御回路15の少なくとも一方と固体電池13との間を熱が移動する。
【0039】
固体電池13は、集電体22、活物質層23、電解質層24、活物質層25及び集電体26からなる発電要素が固体で構成されているので、正極と負極とを隔離するセパレータが電解液を保持する、電解質が液体のみからなる従来のリチウムイオン電池に比べ、熱伝導率を例えば2倍以上高くできる。従来のリチウムイオン電池を利用する場合に比べて、発電装置11及び制御回路15の少なくとも一方と固体電池13との間を移動する熱量を大きくできる。
【0040】
発電装置11や制御回路15の温度が固体電池13の温度よりも高いときは、熱伝達部14を介して伝達された発電装置11や制御回路15の熱を固体電池13が放散する。発電装置11は温度が高くなると発電効率が低下することがあるが、発電装置11の温度を下げられるので発電効率を確保できる。制御回路15は温度が高くなると劣化の促進や暴走のおそれがあるが、制御回路15の温度を下げられるので制御回路15の動作を確保できる。
【0041】
固体電池13は、従来のリチウムイオン電池に比べて電解液の量が少ない、又は、電解液を含まないので、発電装置11や制御回路15の熱を受けて温度が上昇した固体電池13からの液漏れを低減できる。制御回路15を使って二次電池12の煩雑な温度管理をしなくても、発電装置11や制御回路15と固体電池13との間を熱伝達部14でつなぐだけで発電効率や制御回路15の動作を確保できるので、二次電池12の冷却に要する装置やエネルギーを低減し、電源ユニット10の電力効率を向上できる。
【0042】
固体電池13は、順に集電体22、活物質層23、電解質層24、活物質層25及び集電体26を含む積層構造であり、積層方向の最も外側に集電体22が位置する。集電体22は活物質層23,25や電解質層24に比べて熱伝導率が高いので、固体電池13は放熱性に優れている。特に集電体22の一部が外装材29の開口30,31から露出しているので、さらに放熱性に優れる。
【0043】
発電装置11や制御回路15の温度が固体電池13の温度よりも低いときは、放電に伴う固体電池13の発熱によって固体電池13の熱量が大きくなり、熱伝達部14を介して固体電池13の熱が発電装置11や制御回路15に伝わる。発電装置11は温度が低くなると発電効率が低下することがあるが、発電装置11の温度を上げられるので発電効率を確保できる。制御回路15は温度が低くなると動作が不安定になるが、制御回路15の温度を上げられるので制御回路15の動作を確保できる。
【0044】
集電体22、活物質層23、電解質層24、活物質層25及び集電体26(発電要素)を積層方向に投影した範囲内に熱伝達部14(図示せず)が位置すると、発電要素を積層方向に投影した範囲の外、例えば発電要素から引き出されたタブリード27,28と重なる外装材29に熱伝達部14が設けられる場合に比べ、発電要素と熱伝達部14との間の伝熱経路を短縮できる。従って熱伝達部14を介した熱伝導性を向上できる。
【0045】
熱伝達部14は、固体電池13の表面積の17%以上82%以下の部分を占めるのが好ましい。熱伝達部14の伝熱経路の面積を確保すると共に、熱伝達部14以外の部分からの固体電池13の放熱性を確保するためである。固体電池13の表面積に対する熱伝達部14の表面積の割合は、固体電池13の外形を立方体と仮定して求めた値である。固体電池13の1つの面を熱伝達部14とし5つの面を放熱部とする場合が、割合の最小値(17%)であり、固体電池13の5つの面を熱伝達部14とし1つの面を放熱部とする場合が、割合の最大値(82%)である。
【0046】
固体電池13は、初期放電容量に対するあるサイクル時点の放電容量の割合(容量維持率)が大きなものが用いられる。固体電池13は、満充電状態と完全放電状態との間の充放電を所定のレートで繰り返すサイクル試験において、固体電池13の周囲の湿度が30%で固体電池13の温度が25℃のときに容量維持率が60%になった時までのサイクル数に対して、固体電池13の温度が60-100℃のときに容量維持率が60%になった時までのサイクル数が40%以上のものが好適である。熱が伝達された固体電池13の温度が100℃以下のときのサイクル寿命を確保するためである。
【0047】
サイクル試験の充放電プロファイルは、定電流定電圧充電・定電流放電(CCCV充電・CC放電)が例示される。充電時のプロファイルは充電電流0.2C、制御電圧4.2V、終了電流0.1Cが例示され、放電時のプロファイルは放電電流0.3Cが例示される。
【0048】
電源ユニット10において固体電池13の位置は、発電装置11及び制御回路15の少なくとも一方に熱伝達部14が接している、又は、発電装置11及び制御回路15の少なくとも一方に熱伝達部14が近接しており発電装置11及び制御回路15の少なくとも一方と熱伝達部14との間が熱の良導体で接続されていれば、特に制限はない。
【0049】
例えば発電装置11が太陽電池を含む場合、太陽電池パネルのうち光が照射される面の反対側の面に接した状態または近接した状態で固体電池13を配置できる。発電装置11が燃料電池を含む場合、燃料電池に接した状態または近接した状態で固体電池13を配置できる。固体電池13のサイクル寿命を考えると、燃料電池は作動温度が一般に60-80℃の固体高分子形、作動温度が一般に20-90℃のアルカリ形が好適である。制御回路15に含まれるパワー半導体のヒートシンクに、ヒートシンクと固体電池13との間の電気的絶縁を確保した状態で固体電池13を配置しても良い。
【0050】
図3を参照して固体電池13の変形例を説明する。図3は変形例における積層構造である固体電池33の断面図である。固体電池33のうち固体電池13(図2参照)と同一の部分は、同一の符号を付して以下の説明を省略する。固体電池33は、集電体34の片方の面に活物質層23が設けられ、集電体34のもう片方の面に活物質層25が設けられたバイポーラ構造である。隣り合う集電体34の間に設けられた活物質層23,25の間に電解質層24が設けられている。本実施形態では集電体34の形状は矩形である。
【0051】
集電体34は、Al箔とCu箔とを貼り合わせたクラッド材、Niめっき鋼箔、ステンレス鋼が例示される。開口30に面した集電体34の片方の面に活物質層23が設けられており、集電体34のもう片方の面は開口30から露出している。開口31に面した集電体34の片方の面に活物質層25が設けられており、集電体34のもう片方の面は開口31から露出している。本実施形態では、固体電池33は活物質層23、電解質層24及び活物質層25を1組として、3組が直列に積層されている(バイポーラ型電池)。
【0052】
外装材29の開口30,31の全周は、シール材32で集電体34に取り付けられている。活物質層23、電解質層24及び活物質層25は外装材29の中に真空封入されている。開口30から露出した集電体34は固体電池33の正極端子であり、開口31から露出した集電体34は負極端子である。
【0053】
固体電池33は、熱伝導により発電装置11及び制御回路15の少なくとも一方と熱を伝達する熱伝達部14(図1参照)を含む。熱伝達部14は、固体電池33の外装材29の表面や集電体34の表面に設けられる。集電体34の表面に密着する絶縁体(図示せず)を配置し、その絶縁体を介して固体電池33に熱伝達部14を設けても良い。固体電池33に設けられた熱伝達部14により、発電装置11及び制御回路15の少なくとも一方と固体電池33との間を熱が移動する。
【0054】
固体電池33は、集電体34、活物質層23、電解質層24及び活物質層25を含む積層構造であり、積層方向の最も外側に集電体34が位置する。集電体34は活物質層23,25や電解質層24に比べて熱伝導率が高いので、固体電池33は放熱性に優れている。特に集電体34の一部が外装材29の開口30,31から露出しているので、さらに放熱性に優れる。
【0055】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0056】
実施形態では矩形の集電体22,26,34等が積層された固体電池13,33について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。固体電池13,33の形状は適宜選択できる。
【0057】
実施形態では、集電体22、活物質層23、電解質層24、活物質層25及び集電体26を1組として6組が積層された固体電池13と、活物質層23、電解質層24及び活物質層25を1組として3組が直列に積層された固体電池33と、を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。固体電池13,33の積層数は一例であり、適宜設定できる。
【0058】
実施形態では積層構造をもつ発電要素を外装材29に1つ封入した固体電池13,33について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。積層構造をもつ複数の発電要素を直列または並列に接続した組電池を固体電池13,33にすることは当然可能である。
【0059】
実施形態では外装材29に2つの開口30,31が設けられる固体電池13について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。タブリード27を固体電池13の正極端子とし、タブリード28を固体電池13の負極端子とする場合には、開口30,31を取り除くことは当然可能である。タブリード27に代えて、開口30から露出した集電体22や開口31から露出した集電体22を正極端子にする場合には、正極端子として用いない集電体22が露出する開口を取り除くことは当然可能である。
【0060】
また制御回路15や発電装置11の発熱や温度、通常想定される環境温度に応じて固体電解質13,33を適温に制御するために、開口30,31のいずれか一方を取り除き、いずれか一方の開口からのみ集電体22,34が露出するようにすることも可能である。
【0061】
実施形態では説明を省略したが、固体電池13,33の外装材29の外側に、外装材29の少なくとも一部を覆う容器を設けることは当然可能である。容器によって外装材29を保護できるからである。固体電池13のタブリード27,28は容器の外に引き出される。タブリード27,28に電流を投入できるようにするためである。外装材29の開口30,31に現れている固体電池33の集電体34は容器から露出させる。集電体34に電流を投入できるようにするためである。容器は外装材29の材料よりも硬いものが好適である。外装材29の保護のためである。外装材29と容器との間にできる隙間に充填材を配置することは当然可能である。
【符号の説明】
【0062】
10 電源ユニット
11 発電装置
12 二次電池
13,33 固体電池
14 熱伝達部
15 制御回路
22,26,34 集電体
23,25 活物質層
24 電解質層
図1
図2
図3