(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111356
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04701 20160101AFI20240809BHJP
H01M 8/04014 20160101ALI20240809BHJP
H01M 8/0606 20160101ALI20240809BHJP
H01M 8/04828 20160101ALI20240809BHJP
【FI】
H01M8/04701
H01M8/04014
H01M8/0606
H01M8/04828
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015782
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000103921
【氏名又は名称】オリオン機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】高井 希紗
(72)【発明者】
【氏名】北條 芙美
(72)【発明者】
【氏名】中根 孝浩
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AC07
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA23
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB18
5H127BB37
5H127DC27
5H127DC82
5H127EE13
(57)【要約】
【課題】必要十分な量の第2の気体を貯蔵部から確実かつ継続的に供給可能としつつ、その設計の自由度を十分に向上させる。
【解決手段】空気および水素を反応させて発電可能に構成された発電用セル11を備えた燃料電池発電部2と、発電用セル11に空気を供給するポンプ5と、水素が吸蔵された水素キャニスターCを接続可能に構成されると共に水素キャニスターCから発電用セル11に水素を供給するキャニスター接続部3および流量調整部4と、ポンプ5による空気の供給、および流量調整部4による水素の供給を制御する制御部8とを備え、燃料電池発電部2によって発電された電力を供給対象に対して供給可能に構成された電源装置1であって、ポンプ5によって発電用セル11に供給されて水素と反応させられた空気を加熱用流体として使用してこの空気との熱交換によって水素キャニスターCを加熱可能に構成された加熱部6を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化剤を含む第1の気体および水素を含む第2の気体を反応させて発電可能に構成された発電用セルを備えた燃料電池発電部と、
前記発電用セルに前記第1の気体を供給する第1の供給部と、
前記第2の気体が吸蔵された貯蔵部を接続可能に構成されると共に当該貯蔵部から前記発電用セルに当該第2の気体を供給する第2の供給部と、
前記第1の供給部による前記第1の気体の供給、および前記第2の供給部による前記第2の気体の供給を制御する制御部とを備え、
前記燃料電池発電部によって発電された電力を供給対象に対して供給可能に構成された電源装置であって、
前記第1の供給部によって前記発電用セルに供給されて前記第2の気体と反応させられた前記第1の気体を加熱用流体として使用して当該加熱用流体との熱交換によって前記貯蔵部を加熱可能に構成された加熱部を備えている電源装置。
【請求項2】
酸化剤を含む第1の気体および水素を含む第2の気体を反応させて発電可能に構成された発電用セル、および第3の気体との熱交換によって当該発電用セルを冷却する冷却用セルを備えた燃料電池発電部と、
前記発電用セルに前記第1の気体を供給する第1の供給部と、
前記第2の気体が吸蔵された貯蔵部を接続可能に構成されると共に当該貯蔵部から前記発電用セルに当該第2の気体を供給する第2の供給部と、
前記冷却用セルに前記第3の気体を供給する第3の供給部と、
前記第1の供給部による前記第1の気体の供給、前記第2の供給部による前記第2の気体の供給、および前記第3の供給部による前記第3の気体の供給を制御する制御部とを備え、
前記燃料電池発電部によって発電された電力を供給対象に対して供給可能に構成された電源装置であって、
前記第3の供給部によって前記冷却用セルに供給されて前記発電用セルを冷却した前記第3の気体を加熱用流体として使用して当該加熱用流体との熱交換によって前記貯蔵部を加熱可能に構成された加熱部を備えている電源装置。
【請求項3】
前記加熱部は、前記貯蔵部の近傍に配置される管体を備えて前記加熱用流体が当該管体に供給されることで当該管体からの放熱によって当該貯蔵部を加熱可能に構成されている請求項1または2記載の電源装置。
【請求項4】
前記加熱部は、前記貯蔵部に前記加熱用流体を吹き付けて当該貯蔵部を加熱可能に構成されている請求項1または2記載の電源装置。
【請求項5】
前記加熱部は、前記貯蔵部を収容可能な収容部を備えて前記加熱用流体を当該収容部に供給することで当該収容部内において当該貯蔵部に当該加熱用流体を吹付け可能に構成されている請求項4記載の電源装置。
【請求項6】
前記第2の供給部は、N個(Nは、2以上の自然数)の前記貯蔵部を接続可能に構成されると共に当該N個の貯蔵部のうちの予め指定されたM個(Mは、(N-1)以下の自然数)の当該貯蔵部から前記発電用セルに当該第2の気体を供給可能に構成され、
前記加熱部は、前記M個の貯蔵部の加熱の度合いが前記N個の貯蔵部のうちの当該M個の貯蔵部を除くL個の当該貯蔵部の加熱の度合いよりも大きくなるように前記加熱用流体を供給可能に構成されている請求項1または2記載の電源装置。
【請求項7】
前記第1の供給部は、前記発電用セルから前記第1の気体を吸引する第1のポンプを備え、
前記加熱部は、前記第1のポンプによって吸引された前記第1の気体を前記加熱用流体として使用して前記貯蔵部を加熱可能に構成されている請求項1記載の電源装置。
【請求項8】
前記第3の供給部は、前記冷却用セルから前記第3の気体を吸引する第2のポンプを備え、
前記加熱部は、前記第2のポンプによって吸引された前記第3の気体を前記加熱用流体として使用して前記貯蔵部を加熱可能に構成されている請求項2記載の電源装置。
【請求項9】
前記第1の気体から水分を除去するドレントラップを備え、
前記加熱部は、前記ドレントラップにおいて水分が除去された前記第1の気体を前記加熱用流体として使用して前記貯蔵部を加熱する請求項1記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化剤を含む第1の気体および水素を含む第2の気体を反応させて発電可能に構成された燃料電池発電部を備えた電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の電源装置として、下記の特許文献には、酸化剤極、燃料極および高分子電解質膜を備えて構成された発電部において外気(酸素)と燃料(水素)とを反応させて発電することができるように構成された燃料電池が開示されている。
【0003】
この燃料電池では、燃料タンクに水素吸蔵合金が収容されており、この水素吸蔵合金から放出される水素を燃料極に供給して外気中の酸素と反応させることで電力を発生させる構成が採用されている。この場合、水素吸蔵合金から水素が放出されるときには、吸熱反応によって水素吸蔵合金(燃料タンク)の温度が低下する。また、水素吸蔵合金は、その温度が低下することで水素の放出速度(単位時間当りの放出量)が低下することが知られている。したがって、発電に必要とされる十分な量の水素を燃料タンクから発電部に継続して供給するには、燃料タンクの温度低下を防ぎ、水素吸蔵合金から好適に水素が放出され得る温度を維持する必要がある。
【0004】
そこで、この燃料電池では、水素と酸素との反応によって発電部に生じる熱を利用して燃料タンクを加熱することで好適な温度を維持する構成が採用されている。具体的には、この燃料電池は、燃料タンクに固定された固定熱接続部材と、発電部の熱を外部へ放出するための外部放熱部と、固定熱接続部材および外部放熱部のいずれかに発電部の熱を選択的に伝熱する可動式熱接続部材とを備えて構成されている。また、この燃料電池は、可動式熱接続部材が発電部に対して常時接触させられると共に、温度によって形状が変形する形状記憶合金バネとバイアスバネとを備えた駆動部によって可動式熱接続部材を移動させて固定熱接続部材および外部放熱部のいずれか一方に接触させる構成が採用されている。
【0005】
より具体的には、この燃料電池では、駆動部によって可動式熱接続部材が移動させられて発電部と固定熱接続部材とが可動式熱接続部材を介して熱的に接続されることで、発電部に生じた熱が燃料タンクに伝熱され、これにより、水素吸蔵合金が加熱されて、必要とされる水素を放出可能な温度が維持される。また、この燃料電池では、駆動部によって可動式熱接続部材が移動させられて発電部と外部放熱部とが可動式熱接続部材を介して熱的に接続されることで、発電部に生じた熱が燃料タンクに伝熱されずに外部放熱部から放出され、燃料タンクの過剰な温度上昇を回避することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-080587号公報(第5-18頁、第1-10C図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記特許文献に開示の燃料電池には、以下のような解決すべき問題点が存在する。すなわち、上記特許文献に開示の燃料電池では、可動式熱接続部材を介して発電部と固定熱接続部材とが熱的に接続されて発電部に生じた熱が燃料タンクに伝熱されることにより、燃料タンク内の水素吸蔵合金が加熱されて吸熱反応による過剰な温度低下が回避され、これにより、発電に必要な量の水素が燃料タンク(水素吸蔵合金)から放出されて発電部(燃料極)に供給される構成が採用されている。
【0008】
この場合、この燃料電池では、可動式熱接続部材および固定熱接続部材を介して発電部の熱を燃料タンクに対して確実に伝熱するために、発電部と可動式熱接続部材とを伝熱ロスが生じないように確実に接触させると共に、可動式熱接続部材と固定熱接続部材とを伝熱ロスが生じないように確実に接触させ、かつ固定熱接続部材と燃料タンクとを伝熱ロスが生じないように確実に接触させる必要がある。その一方で、この燃料電池では、発電部に対して接触させた状態を維持しつつ、固定熱接続部材および外部放熱部のいずれかに接触させるように可動式熱接続部材を駆動部によって移動させる必要がある。このため、この燃料電池では、伝熱ロスを回避するために各部材を密着させたときに、駆動部による可動式熱接続部材のスムースな移動が困難となり、可動式熱接続部材のスムースな移動を可能としたときには、各部材の密着の度合いが低下して伝熱ロスが生じるため、燃料タンクを確実かつ容易に加熱するのが困難となっている。
【0009】
また、発電部と燃料タンクとの間の伝熱経路が長いときには、可動式熱接続部材や固定熱接続部材から外気への放熱によって発電部の熱を燃料タンクに対して効率良く伝熱するのが困難となる。したがって、上記特許文献に開示の燃料電池では、伝熱効率の低下を回避するために、上記の伝熱経路の長さ、すなわち、発電部と燃料タンクとの離間距離を十分に短くする必要がある。このため、この燃料電池には、発電部や燃料タンクの配置に関する設計の自由度が低いという問題点が存在する。さらに、この燃料電池では、発電部に対する水素の安定的な供給を可能とするために複数本の燃料タンクを接続して使用する構成としたときに、各燃料タンク毎に可動式熱接続部材や固定熱接続部材を配設したり、複数の燃料タンクにおいて共用可能な可動式熱接続部材や固定熱接続部材を配設したりする必要がある。このため、複数本の燃料タンクを接続して使用する構成としたときには、製造コストが高騰してしまう。
【0010】
本発明は、かかる解決すべき問題点に鑑みてなされたものであり、製造コストの高騰を招くことなく、必要十分な量の第2の気体を貯蔵部から確実かつ継続的に供給可能としつつ、その設計の自由度を十分に向上させ得る電源装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成すべく、請求項1記載の電源装置は、酸化剤を含む第1の気体および水素を含む第2の気体を反応させて発電可能に構成された発電用セルを備えた燃料電池発電部と、前記発電用セルに前記第1の気体を供給する第1の供給部と、前記第2の気体が吸蔵された貯蔵部を接続可能に構成されると共に当該貯蔵部から前記発電用セルに当該第2の気体を供給する第2の供給部と、前記第1の供給部による前記第1の気体の供給、および前記第2の供給部による前記第2の気体の供給を制御する制御部とを備え、前記燃料電池発電部によって発電された電力を供給対象に対して供給可能に構成された電源装置であって、前記第1の供給部によって前記発電用セルに供給されて前記第2の気体と反応させられた前記第1の気体を加熱用流体として使用して当該加熱用流体との熱交換によって前記貯蔵部を加熱可能に構成された加熱部を備えている。
【0012】
請求項2記載の電源装置は、酸化剤を含む第1の気体および水素を含む第2の気体を反応させて発電可能に構成された発電用セル、および第3の気体との熱交換によって当該発電用セルを冷却する冷却用セルを備えた燃料電池発電部と、前記発電用セルに前記第1の気体を供給する第1の供給部と、前記第2の気体が吸蔵された貯蔵部を接続可能に構成されると共に当該貯蔵部から前記発電用セルに当該第2の気体を供給する第2の供給部と、前記冷却用セルに前記第3の気体を供給する第3の供給部と、前記第1の供給部による前記第1の気体の供給、前記第2の供給部による前記第2の気体の供給、および前記第3の供給部による前記第3の気体の供給を制御する制御部とを備え、前記燃料電池発電部によって発電された電力を供給対象に対して供給可能に構成された電源装置であって、前記第3の供給部によって前記冷却用セルに供給されて前記発電用セルを冷却した前記第3の気体を加熱用流体として使用して当該加熱用流体との熱交換によって前記貯蔵部を加熱可能に構成された加熱部を備えている。
【0013】
請求項3記載の電源装置は、請求項1または2記載の電源装置において、前記加熱部は、前記貯蔵部の近傍に配置される管体を備えて前記加熱用流体が当該管体に供給されることで当該管体からの放熱によって当該貯蔵部を加熱可能に構成されている。
【0014】
請求項4記載の電源装置は、請求項1または2記載の電源装置において、前記加熱部は、前記貯蔵部に前記加熱用流体を吹き付けて当該貯蔵部を加熱可能に構成されている。
【0015】
請求項5記載の電源装置は、請求項4記載の電源装置において、前記加熱部は、前記貯蔵部を収容可能な収容部を備えて前記加熱用流体を当該収容部に供給することで当該収容部内において当該貯蔵部に当該加熱用流体を吹付け可能に構成されている。
【0016】
請求項6記載の電源装置は、請求項1または2記載の電源装置において、前記第2の供給部は、N個(Nは、2以上の自然数)の前記貯蔵部を接続可能に構成されると共に当該N個の貯蔵部のうちの予め指定されたM個(Mは、(N-1)以下の自然数)の当該貯蔵部から前記発電用セルに当該第2の気体を供給可能に構成され、前記加熱部は、前記M個の貯蔵部の加熱の度合いが前記N個の貯蔵部のうちの当該M個の貯蔵部を除くL個の当該貯蔵部の加熱の度合いよりも大きくなるように前記加熱用流体を供給可能に構成されている。
【0017】
請求項7記載の電源装置は、請求項1記載の電源装置において、前記第1の供給部は、前記発電用セルから前記第1の気体を吸引する第1のポンプを備え、前記加熱部は、前記第1のポンプによって吸引された前記第1の気体を前記加熱用流体として使用して前記貯蔵部を加熱可能に構成されている。
【0018】
請求項8記載の電源装置は、請求項2記載の電源装置において、前記第3の供給部は、前記冷却用セルから前記第3の気体を吸引する第2のポンプを備え、前記加熱部は、前記第2のポンプによって吸引された前記第3の気体を前記加熱用流体として使用して前記貯蔵部を加熱可能に構成されている。
【0019】
請求項9記載の電源装置は、請求項1記載の電源装置において、前記第1の気体から水分を除去するドレントラップを備え、前記加熱部は、前記ドレントラップにおいて水分が除去された前記第1の気体を前記加熱用流体として使用して前記貯蔵部を加熱する。
【発明の効果】
【0020】
請求項1記載の電源装置では、燃料電池発電部によって発電された電力を供給対象に対して供給可能に構成されると共に、第1の供給部によって燃料電池発電部の発電用セルに供給されて第2の気体と反応させられた第1の気体を加熱用流体として使用して加熱用流体との熱交換によって貯蔵部を加熱可能に構成された加熱部を備えている。また、請求項2記載の電源装置では、燃料電池発電部によって発電された電力を供給対象に対して供給可能に構成されると共に、第3の供給部によって燃料電池発電部の冷却用セルに供給されて発電用セルを冷却した第3の気体を加熱用流体として使用して加熱用流体との熱交換によって貯蔵部を加熱可能に構成された加熱部を備えている。
【0021】
したがって、請求項1,2記載の電源装置によれば、燃料電池発電部と貯蔵部とを熱接続部材等で直接接続して燃料電池発電部から貯蔵部に伝熱をする構成とは異なり、燃料電池発電部と貯蔵部との位置関係を任意に規定しても、燃料電池発電部から排気される第1の気体を加熱用流体として加熱部に供給することで貯蔵部を確実かつ容易に加熱することができる。これにより、電源装置の設計の自由度を十分に向上させつつ、貯蔵部から燃料電池発電部に対して必要十分な量の第2の気体を確実かつ継続的に供給させることができる。また、構成の複雑化や大形化を招くことなく、複数の貯蔵部を加熱することが可能であるため、製造コストの高騰を招くことなく、燃料電池発電部に対して水素を安定的に供給することができる。
【0022】
請求項3記載の電源装置によれば、貯蔵部の近傍に配置される管体を備えて加熱用流体が管体に供給されることで管体からの放熱によって貯蔵部を加熱可能に加熱部を構成したことにより、燃料電池発電部から排気される第1の気体に含まれる水分等を貯蔵部に付着させることなく、管体からの放熱によって貯蔵部を加熱することができる。これにより、貸与品の貯蔵部や、水分等の付着が許容されない貯蔵部などを使用する場合にも好適に発電をすることができる。
【0023】
請求項4記載の電源装置によれば、貯蔵部に加熱用流体を吹き付けて貯蔵部を加熱可能に加熱部を構成したことにより、比較的簡易な構成でありながら、燃料電池発電部から排気される高温の加熱用流体によって貯蔵部を確実に加熱することができる。
【0024】
請求項5記載の電源装置によれば、貯蔵部を収容可能な収容部を備えて加熱用流体を収容部に供給することで収容部内において貯蔵部に加熱用流体を吹付け可能に加熱部を構成したことにより、貯蔵部に吹き付けた高温の空気が貯蔵部によって跳ね返されて貯蔵部の周囲の構成部品に吹き付けられるこいとがないため、収容部内の貯蔵部を効率良く加熱することができると共に、貯蔵部の周囲の構成部品が不要に温度上昇させられる事態を好適に回避することができる。
【0025】
請求項6記載の電源装置では、第2の供給部が、N個の貯蔵部を接続可能に構成されると共にN個の貯蔵部のうちの予め指定されたM個の貯蔵部から発電用セルに第2の気体を供給可能に構成され、加熱部が、M個の貯蔵部の加熱の度合いがN個の貯蔵部のうちのM個の貯蔵部を除くL個の貯蔵部の加熱の度合いよりも大きくなるように加熱用流体を供給可能に構成されている。
【0026】
したがって、請求項6記載の電源装置によれば、燃料電池発電部に対して第2の気体を供給していない貯蔵部が不必要に加熱され、これにより、その貯蔵部の内圧が過剰に高くなって危険な状態に陥る事態を回避することができるだけでなく、燃料電池発電部に対して第2の気体を供給している貯蔵部を効率よく加熱して吸熱効果に起因する過剰な温度低下を回避し、この貯蔵部から燃料電池発電部に対して必要十分な量の第2の気体を一層確実に供給することができる。
【0027】
請求項7記載の電源装置では、第1の供給部が、発電用セルから第1の気体を吸引する第1のポンプを備え、加熱部が、第1のポンプによって吸引された第1の気体を加熱用流体として使用して貯蔵部を加熱可能に構成されている。また、請求項8記載の電源装置では、第3の供給部が、冷却用セルから第3の気体を吸引する第2のポンプを備え、加熱部が、第2のポンプによって吸引された第3の気体を加熱用流体として使用して貯蔵部を加熱可能に構成されている。
【0028】
したがって、請求項7,8記載の電源装置1によれば、圧送型のポンプ等によって燃料電池発電部に第1の気体等を圧送して燃料電池発電部を通過させられた第1の気体を加熱用流体として加熱部に供給して貯蔵部を加熱する構成とは異なり、加熱部に到達する前に圧損によって加熱用流体の移動が困難となる事態を招くことなく、また、燃料電池発電部に対する新たな第1の気体等の供給も妨げることなく、燃料電池発電部から排気された高温の加熱用流体を加熱部に対して確実に供給することができる。
【0029】
請求項9記載の電源装置によれば、加熱部が、ドレントラップにおいて水分が除去された第1の気体を加熱用流体として使用して貯蔵部を加熱することにより、貯蔵部の加熱後に加熱部から排気される空気と共に液相の水分が加熱部から排出される事態を好適に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図3】水素キャニスターCおよび加熱部6(スパイラルチューブ21a~21f)の配置の一例について説明するための説明図である。
【
図8】水素キャニスターCおよび加熱部9C(スパイラルチューブ21a~21fおよびキャニスター収容部25a~25f)の配置の一例について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面を参照して、電源装置の実施の形態について説明する。
【0032】
図1に示す電源装置1は、「電源装置」の一例であって、発電用の気体が供給されることによって電力を生じさせて各種の供給対象に供給することができるように構成されている。具体的には、電源装置1は、燃料電池発電部2、キャニスター接続部3、流量調整部4、ポンプ5、加熱部6、ドレントラップ7および制御部8を備えて構成されている。
【0033】
燃料電池発電部2は、「燃料電池発電部」の一例であって、複数の発電用セル11および複数の冷却用セル12が積層されて構成されている。なお、
図1では電源装置1の構成に関する理解を容易とするために発電用セル11および冷却用セル12をそれぞれ1つずつ図示しているが、実際には、電源装置1に求められる発電能力に応じて多数の発電用セル11を備えると共に、発電に際して発電用セル11に生じる熱量に応じて多数の冷却用セル12を備えて燃料電池発電部2が構成されている。
【0034】
発電用セル11は、「発電用セル」の一例であって、「第1の気体」の一例である空気と、「第2の気体」の一例である水素(水素ガス)とが供給されることで、これらの気体を反応させて発電することができるように構成されている。具体的には、発電用セル11は、水素ガスセパレータおよび酸素セパレータ(空気セパレータ)の間にMEA(燃料電池用膜電極接合体)が挟み込まれて一体化されている。また、冷却用セル12は、「冷却用セル」に相当し、「第3の気体」の一例である空気が供給されることにより、供給された空気との熱交換によって発電用セル11を冷却可能に発電用セル11,11の間に挟み込まれている。
【0035】
キャニスター接続部3は、流量調整部4と相俟って「第2の供給部」を構成し、一例として、N=6個(6本)の水素キャニスターCを接続可能に構成されている。この場合、水素キャニスターCは、「貯蔵部」の一例であって、水素吸蔵合金が圧力容器内に収容されて「第2の気体」としての水素を吸蔵/放出可能に構成されている。なお、本例の電源装置1では、一例として、水素(水素ガス)の提供者から貸与される「水素が充填された水素キャニスターC」をキャニスター接続部3に接続して流量調整部4を介して燃料電池発電部2(発電用セル11の水素ガスセパレータ)に水素ガスを供給することができるように構成されているが、このような構成に代えて、「電源装置」の構成要素として固定的に設置した圧力容器に水素(水素ガス)だけを補充して「貯蔵部」として機能させる構成を採用することもできる。
【0036】
流量調整部4は、制御部8の制御に従って各水素キャニスターCから燃料電池発電部2(発電用セル11)に供給する水素(水素ガス)の流量を調整する。この場合、本例の電源装置1では、キャニスター接続部3に接続されているN=6個(6本)の水素キャニスターC,C・・の全てから燃料電池発電部2に水素ガスを供給する動作モード(以下、「全使用モード」ともいう)と、一例として、キャニスター接続部3に接続された6個(6本)の水素キャニスターC,C・・のうちのM=3個(3本)の水素キャニスターC,C,Cから燃料電池発電部2に水素ガスを供給し、この3個の水素キャニスターC,C,Cの水素残量が予め規定された量まで減少したときに、N=6個の水素キャニスターC,C・・のうちの他のM=3個の水素キャニスターC,C,Cから燃料電池発電部2に水素ガスを供給する動作モード(以下、「交互使用モード」ともいう)とのいずれかを任意に選択して発電することができるように構成されている。
【0037】
ポンプ5は、「第1の供給部」としての「第1のポンプ」、および「第3の供給部」としての「第2のポンプ」を構成し、制御部8の制御に従って燃料電池発電部2(発電用セル11の酸素セパレータ、および冷却用セル12)から「第1の気体」および「第3の気体」の一例である空気(大気)を吸引することで発電用セル11(酸素セパレータ)および冷却用セル12に新たな空気を供給する。なお、本例の電源装置1では、1台のポンプ5によって発電用セル11(酸素セパレータ)および冷却用セル12から空気を吸引することで両セル11,12に空気を供給する構成を採用しているが、このような構成に代えて、「第1の供給部」を構成する「第1のポンプ」、および「第3の供給部」を構成する「第2のポンプ」を別個に備えて両セル11,12に空気を別個に供給することもできる。
【0038】
加熱部6は、「加熱部」の一例であって、ポンプ5によって発電用セル11(酸素セパレータ)に供給されて水素(水素ガス)と反応させられた空気、およびポンプ5によって冷却用セル12に供給されて発電用セル11を冷却した空気を「加熱用流体」として使用し、この「加熱用流体」としての空気との熱交換によって水素キャニスターCを加熱可能に構成されている。この場合、本例の電源装置1では、「貯蔵部の近傍に配置される管体」を備えて構成された加熱部6a,6bを備えて加熱部6が構成されている。
【0039】
この加熱部6a,6bは、
図2,3に示すように、水素キャニスターCを挿通可能な内径となるように金属パイプを螺旋状に巻回したスパイラルチューブ21a~21f(以下、区別しないときには「スパイラルチューブ21」ともいう)と、制御部8の制御に従って各スパイラルチューブ21に対する空気の流路を切り替える流路切替部22とをそれぞれ備えている。この加熱部6a,6bは、スパイラルチューブ21に空気が供給されることでスパイラルチューブ21からの放熱によって水素キャニスターCを加熱可能に構成されている(「第1のポンプによって吸引された第1の気体を加熱用流体として使用して貯蔵部を加熱可能」との構成、および「第2のポンプによって吸引された第3の気体を加熱用流体として使用して貯蔵部を加熱可能」との構成の一例)。
【0040】
この場合、本例の電源装置1では、一例として、燃料電池発電部2から、加熱部6a、ドレントラップ7、ポンプ5および加熱部6bの順で「加熱用流体」としての空気が流動させられて加熱部6a,6bにおいて水素キャニスターCを加熱する構成が採用されている。なお、本例の電源装置1では、加熱部6bによって水素キャニスターCを加熱する構成が「ドレントラップにおいて水分が除去された第1の気体を加熱用流体として使用して貯蔵部を加熱する」との構成に相当する。
【0041】
ドレントラップ7は、「ドレントラップ」の一例であって、ポンプ5によって燃料電池発電部2から吸引される空気から水分を分離させて除去することができるように構成されている。なお、ドレントラップ7による水分の除去については、後に詳細に説明する。
【0042】
制御部8は、「制御部」の一例であって、電源装置1を総括的に制御する。具体的には、制御部8は、ポンプ5による発電用セル11(酸素セパレータ)への空気の供給(発電用セル11からの空気の吸引)、および流量調整部4による水素キャニスターCから発電用セル11(水素セパレータ)への水素の供給を制御して発電用セル11において発電をさせると共に、ポンプ5による冷却用セル12への空気の供給(冷却用セル12からの空気の吸引)を制御して発電用セル11を冷却させる。また、制御部8は、加熱部6(加熱部6a,6b)における流路切替部22を制御して各スパイラルチューブ21に対する空気の流路を切り替えさせる。
【0043】
この電源装置1では、燃料電池発電部2の発電用セル11(酸素セパレータ)および冷却用セル12と加熱部6a(各スパイラルチューブ21)との間、加熱部6aとドレントラップ7との間、ドレントラップ7とポンプ5との間、およびポンプ5と加熱部6b(各スパイラルチューブ21)との間が、空気の通過が可能な配管(一例として、耐熱性を有し、かつ弾性変形が可能な管体:ゴムチューブなど)で構成されている。これらの配管については、通過させる空気の過剰な温度低下を招くことがなければ、その配管長や引き回しの形状などを任意に規定することが可能となっている。したがって、電源装置1に求められる発電能力、および用途に応じて許容される大きさや形状に応じて、燃料電池発電部2(両セル11,12)と加熱部6aとの位置関係、加熱部6aとドレントラップ7との位置関係、ドレントラップ7とポンプ5との位置関係、およびポンプ5と加熱部6bとの位置関係を任意に規定し、規定した位置関係に応じて配管を施すことが可能となっている。
【0044】
また、この電源装置1によって発電して供給対象に対して電力を供給するときには、
図2に示すように、水素ガスが充填されている水素キャニスターCを加熱部6の各スパイラルチューブ21に挿入するようにしてセットする。この場合、
図3に示すように、本例の電源装置1では、一例として、水素キャニスターCにおける下方部位の周囲に加熱部6aを構成するスパイラルチューブ21が位置すると共に、水素キャニスターCにおける上方部位の周囲(水素ガスの排出口の近傍)に加熱部6bを構成するスパイラルチューブ21が位置するように両加熱部6a,6bが構成されている。次いで、
図1,3に示すように、各水素キャニスターCをキャニスター接続部3にそれぞれ接続する。
【0045】
続いて、供給対象を電源装置1に接続した後に、図示しない操作部を操作して発電(供給対象への電力の供給)を開始させる。この際に、制御部8は、ポンプ5を制御して燃料電池発電部2からの空気の吸引を開始させる。この際には、燃料電池発電部2における発電用セル11(酸素セパレータ)からの空気の吸引によって新たな空気が発電用セル11(酸素セパレータ)に供給されると共に、燃料電池発電部2における冷却用セル12からの空気の吸引によって新たな空気が冷却用セル12に供給される。
【0046】
また、制御部8は、流量調整部4を制御して燃料電池発電部2に対する水素の供給を開始させる。この場合、本例の電源装置1では、前述のように、「全使用モード」および「交互使用モード」のいずれかを選択して水素キャニスターCから燃料電池発電部2に水素を供給させることができるように構成されている。
【0047】
ここで、「交互使用モード」が選択されている状態において、キャニスター接続部3に接続されている6個の水素キャニスターCのすべてに十分な量の水素が充填されているときに、制御部8は、流量調整部4を制御することにより、スパイラルチューブ21a~21cに挿入されている水素キャニスターC(以下、「水素キャニスターCa~Cc」ともいう)だけを水素の供給源として使用して発電用セル11(水素セパレータ)に水素を供給させ、この3個の水素キャニスターCa~Ccの水素残量が予め規定された量まで低下したときに、水素キャニスターCa~Ccに代えて、スパイラルチューブ21d~21fに挿入されている3個の水素キャニスターC(以下、「水素キャニスターCd~Cf」ともいう)を新たな供給源として使用して発電用セル11(水素セパレータ)に水素を供給させる。
【0048】
また、水素キャニスターCd~Cfの水素残量が予め規定された量まで低下したときに、スパイラルチューブ21a~21cに新たな水素キャニスターCa~Cc(十分な水素が充填されている水素キャニスターC)が挿入されてキャニスター接続部3に接続されているときには、水素キャニスターCd~Cfに代えて、水素キャニスターCa~Ccを新たな供給源として使用して発電用セル11(水素セパレータ)に水素を供給させる。同様にして、水素キャニスターCa~Ccの水素残量が予め規定された量まで低下したときに、スパイラルチューブ21d~21fに新たな水素キャニスターCd~Cfが挿入されてキャニスター接続部3に接続されているときには、水素キャニスターCa~Ccに代えて、水素キャニスターCd~Cfを新たな供給源として使用して発電用セル11(水素セパレータ)に水素を供給させる。
【0049】
一方、ポンプ5による吸引によって燃料電池発電部2の発電用セル11(酸素セパレータ)に新たな空気が供給され、かつキャニスター接続部3および流量調整部4を介して水素キャニスターCa~Ccから発電用セル11(水素セパレータ)に水素が供給されたときには、水素と空気中の酸素との反応によって発電用セル11において電力が発生し、この電力が電源装置1から供給対象に供給される。
【0050】
この際に、水素と酸素との反応(発熱反応)や、各導電性部材の抵抗成分の存在によって発電用セル11が温度上昇し、この温度が過剰に高い温度となったときには、好適な発電が困難となる。したがって、本例の電源装置1では、ポンプ5による吸引によって新たな空気を冷却用セル12に供給することにより、この空気との熱交換によって発電用セル11を冷却する構成が採用されている。これにより、発電用セル11の過剰な温度上昇が回避されると共に、発電用セル11との熱交換によって温度上昇した空気が冷却用セル12から排気される。
【0051】
また、ポンプ5による吸引によって発電用セル11(酸素セパレータ)に吸引された空気は、水素との反応によって酸素量が減少し、水素と酸素との結合によって生じた水を含んだ状態で発電用セル11(酸素セパレータ)から排気される。この空気は、水素と酸素との反応(発熱反応)や、発電用セル11との熱交換によって温度上昇した状態で発電用セル11から排気される。
【0052】
一方、燃料電池発電部2の両セル11,12から排気された高温の空気の混合気は、加熱部6における加熱部6aおよびドレントラップ7をこの順で通過させられた後にポンプ5に吸気される。この際に、加熱部6aの流路切替部22は、制御部8の制御に従い、燃料電池発電部2から排気された上記の混合気が、燃料電池発電部2に水素を供給している水素キャニスターCa~Ccを囲んでいるスパイラルチューブ21a~21cを通過し、かつ燃料電池発電部2に水素を供給していない水素キャニスターCd~Cfを囲んでいるスパイラルチューブ21d~21fを通過しないように混合器(空気)の流路を切り替える。
【0053】
これにより、燃料電池発電部2に水素を供給していない水素キャニスターCd~Cfが加熱されることなく、スパイラルチューブ21a~21cからの放熱によって、燃料電池発電部2に水素を供給している水素キャニスターCa~Ccが加熱され、これら3本の水素キャニスターCa~Ccが吸熱反応によって過剰に温度低下する事態が回避されて、必要十分な量の水素を燃料電池発電部2(発電用セル11)に供給可能な状態が維持される(「M個の貯蔵部の加熱の度合いがN個の貯蔵部のうちのM個の貯蔵部を除くL個の貯蔵部の加熱の度合いよりも大きくなるように加熱用流体を供給」との処理の一例)。
【0054】
また、加熱部6a(スパイラルチューブ21a~21c)を通過させられた空気は、スパイラルチューブ21a~21cからの放熱によって温度低下した状態でドレントラップ7に流入させられる。この場合、前述のように、燃料電池発電部2の発電用セル11(酸素セパレータ)から排気される空気が水分を含んでいるが、加熱部6a(スパイラルチューブ21a~21c)の通過時に温度低下させられることで、気相の水分の一部が液相に変化させられると共に、発電用セル11から排気されたときよりも相対湿度が高い状態で加熱部6aから放出される。したがって、このような状態の空気がドレントラップ7に流入させられることで、空気中に含まれる水分を好適に分離させて除去することができる。これにより、水分を含んだ空気がポンプ5に吸入される事態が回避され、液相の水分の吸引に起因するポンプ5の破損や吸引効率の低下を回避することができる。
【0055】
また、ポンプ5から排気された(ポンプ5によって圧送される)空気は、加熱部6における加熱部6bのスパイラルチューブ21を通過させられた後に、電源装置1の使用環境において必要とされる処理が施されて大気中に放出される。この際に、加熱部6bの流路切替部22は、制御部8の制御に従い、ポンプ5から排気された空気が、燃料電池発電部2に水素を供給している水素キャニスターCa~Ccを囲んでいるスパイラルチューブ21a~21cを通過し、かつ燃料電池発電部2に水素を供給していない水素キャニスターCd~Cfを囲んでいるスパイラルチューブ21d~21fを通過しないように混合器(空気)の流路を切り替える。
【0056】
この場合、ドレントラップ7を通過してポンプ5に吸入される空気は、加熱部6aにおいて水素キャニスターCa~Ccを加熱する(スパイラルチューブ21a~21cから放熱する)ことで燃料電池発電部2から排気されたときよりも温度低下するものの、ポンプ5における圧縮行程で再び温度上昇させられると共に、高温となっているポンプ5との熱交換によって温度上昇させられる。このため、加熱部6bに導入される空気の温度は非常に高い温度となっている。
【0057】
したがって、このような空気が加熱部6bに供給されることにより、スパイラルチューブ21a~21cからの放熱によって、燃料電池発電部2に水素を供給している水素キャニスターCa~Ccが十分に加熱される。これにより、燃料電池発電部2に水素を供給していない水素キャニスターCd~Cfが加熱されることなく、水素を放出している3本の水素キャニスターCa~Ccが加熱されて吸熱反応によって過剰に温度低下する事態が確実に回避され、必要十分な量の水素を燃料電池発電部2(発電用セル11)に供給可能な状態が確実に維持される。
【0058】
一方、加熱部6a,6bのスパイラルチューブ21a~21cによって加熱している3個の水素キャニスターCa~Ccから十分な量の水素を放出することが困難な状態になったとき(水素キャニスターCa~Ccの水素残量が規定量を下回ったとき)に、制御部8は、流量調整部4を制御して、水素キャニスターCa~Ccに代えて、水素キャニスターCd~Cfを水素の供給源として使用して発電用セル11(水素セパレータ)に水素を供給させると共に、図示しない表示部に水素キャニスターCa~Ccの水素残量が既定値まで低下したことを表示させる(残量低下を示すインジケータを点灯させるなどによる報知)。これにより、燃料電池発電部2に対して発電に必要な水素が継続して供給される。
【0059】
また、水素キャニスターCa~Ccの水素残量が既定値まで低下したことを認識した使用者は、水素キャニスターCd~Cfの水素残量が既定値まで低下する前に、水素キャニスターCa~Ccを新たな水素キャニスターCに交換する。これにより、水素キャニスターCd~Cfの水素残量が既定値まで低下したときに、交換した新たな水素キャニスターCa~Ccから燃料電池発電部2に対して発電に必要な水素を継続して供給することが可能となる。
【0060】
また、水素の供給源を水素キャニスターCd~Cfに切り替える処理と並行して、制御部8は、加熱部6(加熱部6a,6b)の流路切替部22を制御することにより、燃料電池発電部2から排気された前述の混合気が、燃料電池発電部2に水素を供給している水素キャニスターCd~Cfを囲んでいるスパイラルチューブ21d~21fを通過し、かつ燃料電池発電部2に水素を供給していない水素キャニスターCa~Ccを囲んでいるスパイラルチューブ21a~21cを通過しないように混合器(空気)の流路を切り替えさせる。
【0061】
これにより、燃料電池発電部2に水素を供給していない水素キャニスターCa~Ccが加熱されることなく、スパイラルチューブ21d~21fからの放熱によって、燃料電池発電部2に水素を供給している水素キャニスターCd~Ccf加熱され、これら3本の水素キャニスターCd~Cfが吸熱反応によって過剰に温度低下する事態が回避されて、必要十分な量の水素を燃料電池発電部2(発電用セル11)に供給可能な状態が維持される(「M個の貯蔵部の加熱の度合いがN個の貯蔵部のうちのM個の貯蔵部を除くL個の貯蔵部の加熱の度合いよりも大きくなるように加熱用流体を供給」との処理の他の一例)。
【0062】
また、加熱部6a(スパイラルチューブ21d~21f)を通過させられた空気は、ドレントラップ7を通過させられる際に水分を除去された状態でポンプ5に吸引されて加熱部6b(スパイラルチューブ21d~21f)に供給される。この場合、前述したように、ポンプ5から排気される空気は、圧縮行程で再び温度上昇させられると共に、ポンプ5の動作によって生じる熱によってさらに温度上昇させられており、非常に高い温度となっている。
【0063】
したがって、このような空気が加熱部6bに供給されることにより、スパイラルチューブ21d~21fからの放熱によって、燃料電池発電部2に水素を供給している水素キャニスターCd~Cfが加熱される。これにより、燃料電池発電部2に水素を供給していない水素キャニスターCa~Ccが加熱されることなく、水素を放出している3本の水素キャニスターCd~Cfが加熱されて吸熱反応によって過剰に温度低下する事態が確実に回避され、必要十分な量の水素を燃料電池発電部2(発電用セル11)に供給可能な状態が確実に維持される。
【0064】
なお、詳細な説明を省略するが、水素キャニスターCd~Cfの水素残量が規定量を下回ったときには、水素キャニスターCa~Ccの水素残量が規定量を下回ったときと同様にして、水素キャニスターCd~Cfに代えて水素キャニスターCa~Ccを水素の供給源とする処理が行われる。これにより、燃料電池発電部2に対して発電に必要な水素が継続して供給される。
【0065】
このように、この電源装置1では、燃料電池発電部2によって発電された電力を供給対象に対して供給可能に構成されると共に、「第1の供給部(本例では、ポンプ5)」によって燃料電池発電部2の発電用セル11に供給されて「第2の気体(本例では、水素(水素ガス))」と反応させられた「第1の気体(本例では、空気)」を「加熱用流体」として使用して「加熱用流体」との熱交換によって水素キャニスターCを加熱可能に構成された加熱部6を備えている。
【0066】
また、この電源装置1では、燃料電池発電部2によって発電された電力を供給対象に対して供給可能に構成されると共に、「第3の供給部(本例では、ポンプ5)」によって燃料電池発電部2の冷却用セル12に供給されて発電用セル11を冷却した「第3の気体(本例では、空気)」を「加熱用流体」として使用して「加熱用流体」との熱交換によって水素キャニスターCを加熱可能に構成された加熱部6を備えている。
【0067】
したがって、この記載の電源装置1によれば、燃料電池発電部2と水素キャニスターCとを熱接続部材等で直接接続して燃料電池発電部2から水素キャニスターCに伝熱をする構成とは異なり、燃料電池発電部2と水素キャニスターCとの位置関係を任意に規定しても、燃料電池発電部2から排気される空気を加熱部6(加熱部6a,6b)に供給することで水素キャニスターCを確実かつ容易に加熱することができる。これにより、電源装置1の設計の自由度を十分に向上させつつ、水素キャニスターCから燃料電池発電部2に対して必要十分な量の水素を確実かつ継続的に供給させることができる。また、構成の複雑化や大形化を招くことなく、複数の水素キャニスターCを加熱することが可能であるため、製造コストの高騰を招くことなく、燃料電池発電部2に対して水素を安定的に供給することができる。
【0068】
また、この電源装置1によれば、水素キャニスターCの近傍に配置されるスパイラルチューブ21a~21fを備えて「加熱用流体」がスパイラルチューブ21a~21fに供給されることでスパイラルチューブ21a~21fからの放熱によって水素キャニスターCを加熱可能に加熱部6を構成したことにより、燃料電池発電部2から排気される空気に含まれる水分等を水素キャニスターCに付着させることなく、スパイラルチューブ21a~21fからの放熱によって水素キャニスターCを加熱することができる。これにより、貸与品の水素キャニスターCや、水分等の付着が許容されない水素キャニスターCなどを「貯蔵部」として使用する場合にも好適に発電をすることができる。
【0069】
また、この電源装置1では、「第2の供給部(本例では、キャニスター接続部3および流量調整部4)」が、N=6個の水素キャニスターCを接続可能に構成されると共に6個の水素キャニスターCのうちの予め指定されたM=3個の水素キャニスターCから発電用セル11に「第2の気体」を供給可能に構成され、加熱部6が、3個の水素キャニスターCの加熱の度合いが6個の水素キャニスターCのうちのM=3個の水素キャニスターCを除くL=3個の水素キャニスターCの加熱の度合いよりも大きくなるように「加熱用流体」を供給可能に構成されている。
【0070】
したがって、この記載の電源装置1によれば、燃料電池発電部2に対して水素を供給していない水素キャニスターCが不必要に加熱され、これにより、その水素キャニスターCの内圧が過剰に高くなって危険な状態に陥る事態を回避することができるだけでなく、燃料電池発電部2に対して水素を供給している水素キャニスターCを効率よく加熱して吸熱効果に起因する過剰な温度低下を回避し、この水素キャニスターCから燃料電池発電部2に対して必要十分な量の水素を一層確実に供給することができる。
【0071】
また、この電源装置1では、「第1の供給部」が、発電用セル11から「第1の気体」を吸引するポンプ5を備え、加熱部6が、ポンプ5によって吸引された「第1の気体」を「加熱用流体」として使用して水素キャニスターCを加熱可能に構成されている。また、この電源装置1では、「第3の供給部」が、冷却用セル12から「第3の気体」を吸引するポンプ5を備え、加熱部6が、ポンプ5によって吸引された「第3の気体」を「加熱用流体」として使用して水素キャニスターCを加熱可能に構成されている。
【0072】
したがって、この電源装置11によれば、圧送型の「ポンプ」によって燃料電池発電部2に空気を圧送して燃料電池発電部2を通過させられた空気を加熱部6に供給して水素キャニスターCを加熱する構成とは異なり、加熱部6に到達する前に圧損によって空気の移動が困難となる事態を招くことなく、また、燃料電池発電部2に対する新たな空気の供給も妨げることなく、燃料電池発電部2から排気された高温の空気を加熱部6に対して確実に供給することができる。
【0073】
また、この電源装置1によれば、加熱部6(加熱部6b)が、ドレントラップ7において水分が除去された「第1の気体」を「加熱用流体」として使用して水素キャニスターCを加熱することにより、水素キャニスターCの加熱後に加熱部6(加熱部6b)から排気される空気と共に液相の水分が加熱部6(加熱部6b)から排出される事態を好適に回避することができる。
【0074】
なお、「電源装置」の構成は、上記の電源装置1の構成の例に限定されない。
【0075】
例えば、
図4に示す電源装置1Aは、「電源装置」の他の一例であって、前述の電源装置1における加熱部6に代えて、「加熱部」の他の一例である加熱部9を備えて構成されている。なお、この電源装置1Aにおいて電源装置1と同様の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0076】
この場合、この電源装置1Aにおける加熱部9は、
図5に示すように、N-6個(6本)の水素キャニスターCをそれぞれ収容可能なキャニスター収容部25a~25f(「収容部」の一例:以下、区別しないときには「キャニスター収容部25」ともいう)を備え、「加熱用流体」としての空気を各キャニスター収容部25に供給することでキャニスター収容部25内において水素キャニスターCに空気を吹付けてこれを加熱する構成が採用されている。
【0077】
また、この電源装置1Aでは、
図4に示すように、ポンプ5による吸引によって燃料電池発電部2(発電用セル11の酸素セパレータ、および冷却用セル12)から排気される高温の空気がドレントラップ7を通過させられる際に水分を除去され、この空気が「加熱用流体」として加熱部9の各キャニスター収容部25に供給される構成が採用されている(「ドレントラップにおいて水分が除去された第1の気体を加熱用流体として使用して貯蔵部を加熱する」との構成の他の一例)。
【0078】
また、この電源装置1Aにおける加熱部9の流路切替部22は、
図5に示すように、制御部8の制御に従い、ドレントラップ7を通過させられた空気を、キャニスター収容部25a~25cおよびキャニスター収容部25d~25fのいずれかに供給するように流路を切り替える。これにより、上記の電源装置1における加熱部6と同様にして、「交互使用モード」が選択されているときに、キャニスター収容部25a~25cに収容されている水素キャニスターC(以下、「水素キャニスターCa~Cc」ともいう)、およびキャニスター収容部25d~25fに収容されている水素キャニスターC(以下、「水素キャニスターCd~Cf」ともいう)のいずれかを選択的に加熱することが可能となっている。
【0079】
この電源装置1Aでは、ポンプ5によって発電用セル11(酸素セパレータ)に供給されて水素(水素ガス)と反応させられた空気(第1の気体)、およびポンプ5によって冷却用セル12に供給されて発電用セル11を冷却した空気(第3の気体)を「加熱用流体」として使用し、この「加熱用流体」としての空気を加熱部9(キャニスター収容部25)に供給することで、キャニスター収容部25内に収容されている水素キャニスターCに高温の空気が吹き付けられ、これにより、水素キャニスターCが加熱されている。
【0080】
なお、この電源装置1Aの動作については、燃料電池発電部2から排気された空気がキャニスター収容部25に供給されて水素キャニスターCに吹き付けられる点を除き、電源装置1の発電時と同様に動作させられるため、詳細な説明を省略する。
【0081】
このように、この電源装置1Aによれば、水素キャニスターCに「加熱用流体」を吹き付けて水素キャニスターCを加熱可能に加熱部9を構成したことにより、比較的簡易な構成でありながら、燃料電池発電部2から排気される高温の空気によって水素キャニスターCを確実に加熱することができる。
【0082】
また、この電源装置1Aによれば、水素キャニスターCを収容可能なキャニスター収容部25を備えて「加熱用流体」をキャニスター収容部25に供給することでキャニスター収容部25内において水素キャニスターCに「加熱用流体」を吹付け可能に加熱部9を構成したことにより、水素キャニスターCに吹き付けた高温の空気が水素キャニスターCによって跳ね返されて水素キャニスターCの周囲の構成部品に吹き付けられるこいとがないため、キャニスター収容部25内の水素キャニスターCを効率良く加熱することができると共に、水素キャニスターCの周囲の構成部品が不要に温度上昇させられる事態を好適に回避することができる。
【0083】
一方、上記の電源装置1Aにおける加熱部9では、N=6個(6本)の水素キャニスターCを個々に収容可能なキャニスター収容部25a~25fを備え、流路切替部22による流路の切り替えによってキャニスター収容部25a~25cおよびキャニスター収容部25d~25fのいずれかに高温の空気を供給する構成が採用されているが、このような構成に代えて、
図6に示す加熱部9Aのように、供給される空気がN=6個(6本)の水素キャニスターCの周囲を順次通過するように6個の水素キャニスターCを収容可能な1つのキャニスター収容部26(「収容部」の他の一例)を備えて構成することもできる。この加熱部9Aでは、燃料電池発電部2において温度上層した高温の空気をキャニスター収容部26に供給して導入口26iから排出口26oまで通過させることにより、キャニスター収容部26内において水素キャニスターCに空気を順次吹き付けてこれを加熱することが可能となっている。
【0084】
また、
図7に示す加熱部9Bのように、N=6個(6本)の水素キャニスターCを収容可能なキャニスター収容部27に2つの導入口27i1,27i2および2つの排出口27o1,27o2を設けることもできる。この場合、同図に示す加熱部9Bでは、導入口27i1から排出口27o1に向かう空気の流れと、導入口27i2から排出口27o2に向かう空気の流れとが対向流となり、かつ導入口27i1からキャニスター収容部27内に導入された空気の一部が排出口27o2に最も近い水素キャニスターCに吹き付けられると共に導入口27i2からキャニスター収容部27内に導入された空気の一部が排出口27o1に最も近い水素キャニスターCに吹き付けられるように各水素キャニスターCの収容位置が規定されている。これにより、この加熱部9Bでは、6個の水素キャニスターCをほぼ均等に加熱することが可能となっている。
【0085】
また、
図8に示す加熱部9Cでは、一例として、前述の加熱部6における加熱部6bに代えて、加熱部9におけるキャニスター収容部25と同様に水素キャニスターCを収容可能なキャニスター収容部25a~25fを備えて構成されている。これにより、この加熱部9Cでは、加熱部6a,6bを備えた加熱部6と同様にして、加熱部6aのスパイラルチューブ21およびキャニスター収容部25によって水素キャニスターCを好適に加熱することが可能となっている。
【0086】
また、「加熱用流体」としての空気を「加熱部」に供給して「貯蔵部」を加熱する構成を例に挙げて説明したが、例えば、「第1の気体」として空気以外の「酸化剤を含む気体」を使用する構成や、「第3の気体」として空気以外の任意の気体を使用する構成を採用する場合には、これらの気体を使用して「燃料電池発電部」において発電を行い、「燃料電池発電部」から排気される高温の気体を「加熱用流体」として使用して「貯蔵部」を加熱する構成とすることができる。
【0087】
また、「第1の気体(発電用セル11から排気された空気)」および「第3の気体(冷却用セル12から排気された空気)」の双方を「加熱用流体」として使用して水素キャニスターCを加熱する構成を例に挙げて説明したが、「第1の気体」および「第3の気体」のいずれか一方だけを「加熱用流体」として使用して「貯蔵部」を加熱する構成を採用することもできる。加えて、N=6個(6本)の水素キャニスターCを使用して発電をする構成を例に挙げて説明したが、「貯蔵部」の数はこれに限定されず、6個以外の任意の複数個としたり、1個としたりすることができる。
【符号の説明】
【0088】
1,1A 電源装置
2 燃料電池発電部
3 キャニスター接続部
4 流量調整部
5 ポンプ5
6,6a,6b,9,9A~9C 加熱部
7 ドレントラップ
11 発電用セル
12 冷却用セル
21a~21f スパイラルチューブ
22 流路切替部
25a~25f,26,27 キャニスター収容部
25i,26i,27i1,27i2 導入口
25o,26o,27o1,27o2 排出口
C 水素キャニスター