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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111357
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】冷温蔵装置
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/12 20060101AFI20240809BHJP
   A47B 31/00 20060101ALI20240809BHJP
   A47B 31/02 20060101ALI20240809BHJP
   A47J 39/02 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
F25D23/12 P
A47B31/00 H
A47B31/02 A
A47B31/02 D
A47J39/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015783
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 智也
(72)【発明者】
【氏名】横山 竜也
【テーマコード(参考)】
4B066
【Fターム(参考)】
4B066AA05
4B066AB10
4B066BD01
4B066DD02
4B066DD08
(57)【要約】
【課題】停電した場合に冷却や加熱の開始が遅延することを抑制できる冷温蔵装置を提供する。
【解決手段】温蔵室18と冷蔵室17とを有する箱体11と、温蔵室18の加熱と冷蔵室17の冷却が可能な加熱冷却装置50と、制御部70と、を備え、制御部70は、加熱冷却装置50の駆動を開始するまでの第1時間Mが定められた後に、制御部70への通電が停止した停電状態となり、再び通電された復電状態となった場合に、第1時間Mの計時の開始から停電状態になるまでの第2時間Mを、第1時間Mから差し引くことにより、第3時間Mを算出し、復電状態において第3時間Mが経過した場合に、加熱冷却装置50の駆動を開始する、冷温蔵装置10。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温蔵室と冷蔵室とを有する箱体と、
前記温蔵室の加熱と前記冷蔵室の冷却が可能な加熱冷却装置と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記加熱冷却装置の駆動を開始するまでの第1時間が定められた後に、前記制御部への通電が停止した停電状態となり、再び通電された復電状態となった場合に、前記第1時間の計時の開始から前記停電状態になるまでの第2時間を、前記第1時間から差し引くことにより、第3時間を算出し、
前記復電状態において前記第3時間が経過した場合に、前記加熱冷却装置の駆動を開始する、冷温蔵装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1時間が定められたことに基づく情報を不揮発性の記憶部に記憶し、
前記不揮発性の記憶部に記憶した前記情報に基づいて、前記復電状態であるか否かを判定し、前記復電状態である場合に、前記第3時間を算出する、請求項1に記載の冷温蔵装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1時間の計時の開始後、経過する時間を単位時間ごとに不揮発性の記憶部に記憶することにより、前記第2時間を算出する、請求項1または請求項2に記載の冷温蔵装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第1時間の計時の開始後、経過する時間を単位時間ごとに、前記不揮発性の記憶部のうち第1部に記憶し、
その記憶した回数が前記第1部の上限回数に達した場合に、引き続き経過する時間を単位時間ごとに、前記不揮発性の記憶部のうち前記第1部とは異なる第2部に記憶する、請求項3に記載の冷温蔵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷温蔵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷温蔵装置として、特許文献1に記載のものが知られている。具体的に、特許文献1には、収容庫を備えた冷温蔵装置(配膳車)が、収容庫の冷却及び加熱機能の可動開始時刻を設定することができるタイマーと制御部とを具備し、このタイマーに設定された可動開始時刻に基づいて、制御部が、冷却又は加熱の可動信号を出力することが、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-119337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の構成に関して、例えばリアルタイムクロックのような現在時刻の計時に基づく加熱等の開始を行う機能が無い冷温蔵装置の場合、任意の時間を設定して、その設定時間が経過後、制御部が加熱等の開始を行うことが考えられる。その場合、停電等が生じると、設定時間の経過が無かったものとされ(計時がリセットされ)、その後復電したとしても、その復電したときを基準として設定時間の経過が再び最初から始まり、これにより、加熱等の開始が大幅に遅延する虞がある。
【0005】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、停電した場合に冷却や加熱の開始が遅延することを抑制できる冷温蔵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、温蔵室と冷蔵室とを有する箱体と、前記温蔵室の加熱と前記冷蔵室の冷却が可能な加熱冷却装置と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記加熱冷却装置の駆動を開始するまでの第1時間が定められた後に、前記制御部への通電が停止した停電状態となり、再び通電された復電状態となった場合に、前記第1時間の計時の開始から前記停電状態になるまでの第2時間を、前記第1時間から差し引くことにより、第3時間を算出し、前記復電状態において前記第3時間が経過した場合に、前記加熱冷却装置の駆動を開始する、冷温蔵装置である。
【0007】
このような冷温蔵装置によると、加熱冷却装置の駆動を開始するまでの第1時間が使用者によって定められた後に、制御部が、例えば停電等により停電状態となり、その後、停電等が解消されることにより復電状態となったとしても、第1時間から第2時間が差し引かれた第3時間が経過した場合に、加熱冷却装置の駆動を開始することができる。これにより、復電状態において、加熱冷却装置の駆動の開始が、第1時間の経過後に行われて大幅に遅延することを回避し、加熱冷却装置の駆動の開始が、第1時間よりも第2時間分短い第3時間の経過後に行われるものとすることができる。
【0008】
上記構成において、前記制御部は、前記第1時間が定められたことに基づく情報を不揮発性の記憶部に記憶し、前記不揮発性の記憶部に記憶した前記情報に基づいて、前記復電状態であるか否かを判定し、前記復電状態である場合に、前記第3時間を算出してもよい。
【0009】
このような冷温蔵装置によると、第1時間が定められたことに基づく情報を不揮発性の記憶部に記憶することにより、停電状態において当該情報が消えることがない。そして、制御部が、当該情報に基づいて復電状態であるか否かを判定し、復電状態である場合に、第3時間を算出し、その後の処理を実行することができる。
【0010】
上記構成において、前記制御部は、前記第1時間の計時の開始後、経過する時間を単位時間ごとに不揮発性の記憶部に記憶することにより、前記第2時間を算出してもよい。
【0011】
このような冷温蔵装置によると、第1時間の計時の開始後、経過する時間を単位時間ごとに不揮発性の記憶部に記憶することにより、停電状態においても第2時間を記憶した状態を好適に維持することができる。
【0012】
上記構成において、前記制御部は、前記第1時間の計時の開始後、経過する時間を単位時間ごとに、前記不揮発性の記憶部のうち第1部に記憶し、その記憶した回数が前記第1部の上限回数に達した場合に、引き続き経過する時間を単位時間ごとに、前記不揮発性の記憶部のうち前記第1部とは異なる第2部に記憶してもよい。
【0013】
一般的に、不揮発性の記憶部は、情報を記憶する回数(書き込み回数)の上限回数が定められている。しかしながら、上記のような冷温蔵装置によると、記憶した回数が、記憶部のうち第1部の上限回数に達した場合に、記憶部のうち第1部とは異なる領域の第2部に記憶することにより、その上限回数を超えて情報の記憶を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、停電した場合に冷却や加熱の開始が遅延することを抑制できる冷温蔵装置の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係る冷温蔵装置を側方から視た図
図2】扉を外した状態の箱体と加熱冷却装置を側方から視た図
図3】冷温蔵装置の電気的構成を示すブロック図
図4】制御部が各部を制御するメインの処理を示すフローチャート
図5】計時処理を示すフローチャート
図6】冷温蔵装置への通電後の経時変化を示すタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態>
本技術の実施形態を図1から図6によって説明する。本実施形態では、冷温蔵装置として、温冷配膳車10を例示する。尚、X軸方向を前後方向とし、Z方向を上下方向とする。図1及び図2において、紙面奥手前方向を、側方(左右方向)とする。
【0017】
図1及び図2に示すように、温冷配膳車10は、2つの貯蔵室16を有する断熱性の箱体11と、箱体11の下側に取り付けられ、当該温冷配膳車10を移動可能とするキャスタ12と、箱体11の上方に配される機械室13と、を備える。箱体11は、側方両側が開放された直方体形状をなしており、発泡ウレタン等の断熱材を充填した壁部によって構成されている。機械室13は、板状のパネルによって囲まれている。
【0018】
図2に示すように、箱体11は、内部空間を前後方向において2つの空間(2つの貯蔵室16)に隔てる中間壁15と、2つの貯蔵室16を前後方向においてそれぞれ2つの空間(冷蔵室17と温蔵室18)に隔てる2つの仕切壁30と、を備える。2つの貯蔵室16は、中間壁15を中心として前後対称の構成とされる。各冷蔵室17及び温蔵室18は、その側方に配された扉19(図1参照)によってそれぞれ開閉可能となっている。中間壁15は、例えば、一対の板状部材15A,15Aによって構成され、その内部を空気が流通可能となっている。これにより、中間壁15は、冷気流通用のダクトの機能を有している。
【0019】
箱体11の上側(機械室13内)には、加熱冷却装置50と、制御部70と、が配されている。加熱冷却装置50は、冷蔵室17の冷却が可能な冷却装置51と、温蔵室18の加熱が可能な加熱装置52と、を備える。冷却装置51は、中間壁15や冷蔵室17の上方に配されている。冷却装置51は、圧縮機53と、凝縮器54と、冷却器55と、冷却用ファン(庫内ファン)56と、を備える。圧縮機53、凝縮器54、及び冷却器55は、冷媒が通る冷媒管によって連結されており、この冷媒を循環させることで既知の冷凍サイクルを構成している。圧縮機53は、例えば、速度可変の電動機(モータ)を備えるインバータ圧縮機とされ、この電動機を駆動させることで冷媒を吸引して圧縮し、高温高圧の冷媒を吐出する。
【0020】
冷却装置51が駆動すると、冷却器55で生成された冷気が冷却用ファン56によって中間壁15内(冷気ダクト)に吹き込まれ、中間壁15に形成された通気口を通して左右の冷蔵室17に吹き出される(この冷気の流れを矢印W1で示す)。冷蔵室17に送られた冷気は、冷蔵室17内を通過した後、冷蔵室17の天井に形成された開口から冷却器55に戻る。これにより、冷蔵室17に冷気が循環供給され、冷蔵室17が冷却される。
【0021】
2つの加熱装置52は、冷却装置51の前後両側の方向に1つずつ配されている。加熱装置52は、パネル20の室外側面に貼り付けられたコードヒータ57と、パネル20の上方に配された加熱用ファン58と、を備える。パネル20は、箱体11の前後両側の壁部における室内側面11Aに対向する形で設けられた金属製の板状部材である。加熱装置52が駆動すると、コードヒータ57からジュール熱が生じることにより、箱体11の室内側面11Aとパネル20との間(暖気ダクト)の空気が暖められて暖気となる。また、加熱用ファン58は、温蔵室18の空気を吸引して暖気ダクトに送ることで、パネル20に形成された複数の通気口から温蔵室18に暖気を吹き出す(この暖気の流れを矢印W2で示す)。このように、パネル20の通気口から吹き出される暖気、及びパネル20からの輻射熱により、温蔵室18が加熱される。
【0022】
仕切壁30は、上下方向に並ぶ複数の単位仕切壁31を備える。単位仕切壁31の左右両側には、一対の板状の支持アーム35,35と、支持アーム35における単位仕切壁31と反対側の端部に配されたトレイ受け36と、が設けられている。貯蔵室16は、例えば仕切り(窪み)を有するトレイTを、トレイ受け36に載置しつつ、その仕切り部分を上下方向に並ぶ2つの単位仕切壁31,31の間に挿入することで、収容することができる。温冷配膳車10は、飲食物を載置したトレイTを貯蔵室16に収容することで、その飲食物について、仕切壁30を境として、一方側を冷蔵室17によって冷却し、他方側を温蔵室18によって加熱することができる。
【0023】
次に、温冷配膳車10の電気的構成を、図3により説明する。温冷配膳車10において、制御部70は、操作部14、圧縮機53、冷却用ファン56、コードヒータ57、及び加熱用ファン58等に電気的に接続されている。操作部14は、例えば機械室13のパネルの側壁部に設けられており(図1参照)、後述する第1時間を設定可能とされる。制御部70は、操作部14が使用者によって操作されて、所定の処理(プログラム)を実行することにより、圧縮機53や冷却用ファン56(冷却装置51)を駆動させて冷蔵室17を冷却したり、コードヒータ57や加熱用ファン58(加熱装置52)を駆動させて温蔵室18を加熱したりすることができる。尚、本実施形態では、便宜上、制御部70が、冷却装置51及び加熱装置52のうち少なくとも一方を駆動すれば、加熱冷却装置50を駆動したこととする。また、制御部70は、図示しない外部電源に接続されており、この外部電源から電気が供給されることで通電されていることとする。
【0024】
制御部70は、停電により制御部70への電力供給が遮断されたとしても情報が失われない、不揮発性の記憶部71を備えている。この不揮発性の記憶部71としては、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM )を採用することができる。記憶部71は、1番地(第1部)71A、2番地(第2部)71B等、複数の記憶領域を備えている。各記憶領域には、書き込み回数の上限値(上限回数)が定められている。例えば、1番地71A、及び2番地71Bには、それぞれ、100万回の書き込み回数がその上限値として定められている。
【0025】
続いて、制御部70が各プログラム(メイン処理及び計時処理)を実行して各部を制御する流れを、主に図4から図6を用いて説明する。尚、本実施形態では、加熱冷却装置50の各部(圧縮機53、冷却用ファン56、コードヒータ57、及び加熱用ファン58)は、便宜上、その駆動が開始されるまでOFFの状態であるとする。
【0026】
温冷配膳車10が外部電源に接続されて、制御部70に電力が供給された通電状態となると、制御部70は、第1時間が設定されたか否かを判定する(S10)。この第1時間は、後述する計時処理を開始してから、加熱冷却装置50の駆動を開始するまでの間の時間(図6の第1時間を設定した時Tから予約の駆動開始となる時Tまでの間の時間M)である。後述する停電が生じない場合は、予約の駆動開始となる時Tにおいて、加熱冷却装置50の駆動が開始される。第1時間を設定した時Tにおいて使用者により第1時間M(例えば60分とする)が設定された場合(S10においてYES)、制御部70は、S20の処理を開始する。このとき、制御部70は、第1時間Mが設定された予約状態であることを記憶部71に記憶する。一方、そうでない場合(S10でNO)、制御部70は、S10の判定を繰り返す。
【0027】
制御部70は、S20において、計時処理を開始する。この処理では、図5に示すように、制御部70は、まず、計時処理の開始(第1時間Mの計時の開始)後、その経過する時間が単位時間(例えば1分とする)を経過したか否かを判定する(S21)。制御部70は、経過する時間が1分を経過した場合に(S21でYES)、S22の処理を行い、そうでない場合に(S21でNO)、S21の判定を繰り返す。
【0028】
制御部70は、S22では、単位時間が1回経過したことを、記憶部71に書き込む(経過する時間を単位時間ごとに記憶する)。このとき、制御部70は、記憶部71の複数の領域のうち、第1部である1番地(n番地)71Aへ書き込みを行う。また、制御部70は、単位時間が経過した回数(書き込んだ回数)を合計することにより、第2時間を算出し、記憶部71に記録する。この第2時間は、計時処理を開始してから、単位時間の書き込み(制御部70への通電)が停電によって停止された停電状態(計時処理そのものも中断される)になるまでの間の時間(図6の第1時間を設定した時Tから停電が発生した時Tまでの間の時間M)である。
【0029】
制御部70は、S22の処理の後に、1番地71Aへの書き込み回数(記憶回数)が1番地71Aの上限値(上限回数)に達したか否かを判定する(S23)。制御部70は、書き込み回数が上限値に達した場合(S23でYES)、S24の処理に進み、一方そうでない場合(S23でNO)、S21の処理を再び実行する。S24では、制御部70は、単位時間を書き込む領域を、1番地(n番地)71Aから2番地(n+1番地)71Bに変更する。その後、制御部70は、S21の処理に戻り、S22において、引き続き経過する時間を単位時間ごと(1分ごと)に2番地71Bへ書き込んで第2時間を算出する(このとき、例えば1番地71Aの上限回数と2番地71Bへの書き込み回数を合計して、第2時間Mを算出してもよい)。そして、S23では、2番地71Bの記憶回数について上限値に達したか否かの判定を行う。
【0030】
図4に示すように、制御部70は、メイン処理において、計時処理の開始後、記憶部71に記憶した情報に基づいて、復電状態であるか否かを判定する(S30)。制御部70は、温冷配膳車10が外部電源に接続されて、制御部70に電力が供給された通電時に、記憶部71から第2時間Mの値を読み出し、その値が0でない場合、復電状態であると判定し、S40に進む。尚、制御部70は、記憶部71から読み出した第2時間Mの値が0である場合、停電は発生しておらず、復電状態ではないと判定してもよい。
【0031】
仮に、図6に示すように、第1時間を設定した時Tから25分が経過した時であるTにおいて停電が発生し、制御部70への通電が停止された停電状態になったとする。そして、その後、停電状態が20分経過した時であるTにおいて停電が解消して制御部70へ再び通電された復電状態になったとする。この場合、制御部70は、上記S30における処理に基づき復電状態であると判定し、S40において、記憶部71から第2時間M(第1時間を設定した時Tから停電が発生した時Tまでの間の、単位時間が記憶された合計回数(合計時間)である、25分)を読み込む。そして、制御部70は、第2時間M(25分)を第1時間M(60分)から差し引くことにより、第3時間M(35分)を算出し、S50に進む。
【0032】
制御部70は、S50では、図5に示す計時処理を再び開始する。例えば、上述のように、仮に25回目の単位時間の書き込み後、停電状態となり、復電状態となった場合、制御部70は、26回目の単位時間の書き込みから(停電前の最終書き込み回数から)再開する。このようにして、制御部70は、停電が解消された時(復電状態となった時)Tから、第3時間Mの計時を開始する。
【0033】
次に、制御部70は、S60において、第3時間Mが経過したか否かを判定する(S60)。停電状態の後、復電状態となり(S30)、第3時間Mが経過した場合は、制御部70は、S60でYESであると判定し、S70の処理に進む。一方、第3時間Mが経過していない場合(S60でNO)、制御部70は、S60の処理を繰り返す。尚、停電が生じなかった場合(S30で復電状態ではないと判定される場合)が想定し得るので、制御部70は、S60において、第1時間M又は第3時間Mが経過したか否かを判定することとしてもよい。
【0034】
仮に第3時間Mが算出され、第3時間Mが経過したとする。その場合、制御部70は、S70において加熱冷却装置50の駆動を開始する(図6に示す、実際の駆動を開始する時T参照)。具体的には、制御部70は、圧縮機53、冷却用ファン56、コードヒータ57、及び加熱用ファン58を駆動する(ON)にする。また、制御部70は、冷却用ファン56の回転数を、低速運転よりもその回転数が高い高速運転にして、駆動する。また、制御部70は、加熱冷却装置50を駆動させると同時に、第2時間Mの値を0にし、これを記憶部71に記録する。
【0035】
次に、制御部70は、S80において、圧縮機53を停止したか否かを判定する。例えば圧縮機53を間欠的に駆動させることにより、圧縮機53が一時的に停止した場合(S80でYES)、制御部70は、S90に進む。一方、そうでない場合(S80でNO)、制御部70は、上記一連の処理を終了し、再びメイン処理を繰り返す(又は、圧縮機53の間欠的な運転を継続し、S80の判定を繰り返してもよい)。
【0036】
制御部70は、S90では、冷却用ファン56の回転数を、高速運転から低速運転に変更して駆動するとともに、コードヒータ57をOFFにする。ここで、図2に示すように、貯蔵室16において、上下方向に並ぶ2つの単位仕切壁31,31の間には、トレイTを挿入する隙間が設けられているため、この隙間を通って温蔵室18の暖気が冷蔵室17へ流れ込むことや、冷蔵室17の冷気が温蔵室18に流れ込む可能性がある。すると、貯蔵室16において空気がかき混ぜられてしまい、例えば、冷蔵室17の温度上昇の傾きが大きくなる等、冷蔵室17を適切に冷却することが難しかったり、冷蔵室17や温蔵室18の温度にばらつきが生じたりする虞がある。しかしながら、上記のように、制御部70がS90の処理において、冷却用ファン56の回転数を低速運転に変更することで、冷蔵室17における空気の循環を抑制し、冷蔵室17と温蔵室18との間で空気が往来することを抑制することができる。また、上記のように、制御部70がS90の処理において、コードヒータ57をOFFにすることで、温蔵室18から冷蔵室17に暖気が流れ込むことを抑制することができる。以上により、冷蔵室17や温蔵室18において理想的な温度変化を実現させることができ、各室の温度のコントロール性能を向上させることができる。
【0037】
続いて、本実施形態の効果について説明する。本実施形態では、温蔵室18と冷蔵室17とを有する箱体11と、温蔵室18の加熱と冷蔵室17の冷却が可能な加熱冷却装置50と、制御部70と、を備え、制御部70は、加熱冷却装置50の駆動を開始するまでの第1時間Mが定められた後に、制御部70への通電が停止した停電状態となり、再び通電された復電状態となった場合に、第1時間Mの計時の開始から停電状態になるまでの第2時間Mを、第1時間Mから差し引くことにより、第3時間Mを算出し、復電状態において第3時間Mが経過した場合に、加熱冷却装置50の駆動を開始する、温冷配膳車10を示した。
【0038】
このような温冷配膳車10によると、加熱冷却装置50の駆動を開始するまでの第1時間Mが使用者によって定められた後に、制御部70が、例えば停電等により停電状態となり、その後、停電等が解消されることにより復電状態となったとしても、第1時間Mから第2時間Mが差し引かれた第3時間Mが経過した場合に、加熱冷却装置50の駆動を開始することができる。これにより、復電状態において、加熱冷却装置50の駆動の開始が、第1時間Mの経過後に行われて大幅に遅延することを回避し、加熱冷却装置50の駆動の開始が、第1時間Mよりも第2時間M分短い第3時間Mの経過後に行われるものとすることができる。
【0039】
制御部70は、第1時間Mが定められたことに基づく情報を不揮発性の記憶部71に記憶し、不揮発性の記憶部71に記憶された情報に基づいて、復電状態であるか否かを判定し、復電状態である場合に、第3時間Mを算出する。
【0040】
このような温冷配膳車10によると、第1時間Mが定められたことに基づく情報(第2時間Mの値)を不揮発性の記憶部71に記憶することにより、停電状態において当該情報が消えることがない。そして、制御部70が、当該情報に基づいて復電状態であるか否かを判定し、復電状態である場合に、第3時間Mを算出し、その後の処理を実行することができる。
【0041】
制御部70は、第1時間Mの計時の開始後、経過する時間を単位時間ごとに不揮発性の記憶部71に記憶することにより、第2時間Mを算出する。
【0042】
このような温冷配膳車10によると、第1時間Mの計時の開始後、経過する時間を単位時間ごとに不揮発性の記憶部71に記憶することにより、停電状態においても第2時間Mを記憶した状態を好適に維持することができる。
【0043】
制御部70は、第1時間Mの計時の開始後、経過する時間を単位時間ごとに、不揮発性の記憶部71のうち第1部71Aに記憶し、その記憶した回数が第1部71Aの上限回数に達した場合に、引き続き経過する時間を単位時間ごとに、不揮発性の記憶部71のうち第1部71Aとは異なる第2部71Bに記憶する。
【0044】
このような温冷配膳車10によると、記憶する回数が、記憶部71のうち第1部71Aの上限回数に達した場合に、記憶部71のうち第1部71Aとは異なる領域の第2部71Bに記憶することにより、その上限回数を超えて情報の記憶を行うことができる。
【0045】
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0046】
(1)制御部は、加熱冷却装置の駆動を開始した場合に、任意の運転モード(加熱装置のみの駆動、冷却装置のみの駆動、及び両者の駆動のうちいずれかの運転モード)を開始することとしてもよい。例えば、制御部は、任意の運転モードが第1時間と共に定められた場合に、第3時間の経過後、その定められた任意の運転モードを開始することとしてもよい。この場合、制御部は、第3時間が経過したか否かにかかわらず、その定められた運転モード以外の運転を行ってもよい。例えば、第3時間の経過前に、冷却装置が駆動していてもよい。
【0047】
(2)上記実施形態以外にも、記憶部の構成は適宜変更可能である。例えば、記憶部は、機械室や箱体から離れた外部のサーバーやクラウド上に設けられていてもよい。この場合、制御部は、記憶部との通信処理を行うことにより、記憶部から停電前の情報を読み込んだり、記憶部へ単位時間ごとの書き込みを行ったりしてもよい。
【0048】
(3)制御部は、復電状態にならなかった場合(停電が生じなかった場合)に、第1時間が経過したか否かを判定し、復電状態になった場合(停電が生じた場合)に、第1時間が経過したか否かを判定することなく、第3時間が経過したか否かを判定することとしてもよい。
【0049】
(4)冷温蔵装置は、庫内ファンを複数(2機以上)備えており、制御部は、圧縮機を停止した場合に、庫内ファンの駆動数を減数する処理(例えば、2機の駆動から1機の駆動に変更する処理)を行うこととしてもよい。
【0050】
(5)冷温蔵装置は、バッテリーや電池等の内部電源を備えていてもよい。
【0051】
(6)冷温蔵装置において、温蔵室と冷蔵室の数は限定されない。また、本実施形態の冷温蔵装置は、温冷配膳車に限定されない。例えば、温蔵室と冷蔵室を備える貯蔵庫であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
10…温冷配膳車(冷温蔵装置)、11…箱体、17…冷蔵室、18…温蔵室、50…加熱冷却装置、70…制御部、M…第1時間、M…第2時間、M…第3時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6