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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111359
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】光測距装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/481 20060101AFI20240809BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G01C3/06 120Q
G01C3/06 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015785
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新村 康介
(72)【発明者】
【氏名】恩田 一寿
【テーマコード(参考)】
2F112
5J084
【Fターム(参考)】
2F112AD01
2F112BA06
2F112CA12
2F112DA02
2F112DA04
2F112DA15
2F112DA25
2F112DA28
2F112EA05
2F112GA01
5J084AA05
5J084AC02
5J084AD01
5J084BA04
5J084BA07
5J084BA11
5J084BA36
5J084BA40
5J084BA50
5J084BB04
5J084BB05
5J084BB10
5J084BB37
5J084CA03
5J084CA70
5J084EA04
(57)【要約】
【課題】レンズアレイを用いてスキャンする光測距装置において、受光素子での受光信号の低下を抑制して検出精度を向上させる技術を提供する。
【解決手段】測距装置100は、パルス光DLを発光する複数の発光素子44と、複数の発光素子のそれぞれに対応する複数の発光側レンズ466を同一平面上に配列して備える発光側レンズアレイ464、および発光側レンズアレイを移動させる発光側駆動部462を含み、パルス光を走査する発光側走査部46と、物体OBによって反射されたパルス光の反射光RLを受光する複数の受光素子64と、受光素子で受光された反射光の飛行時間を用いて、物体までの距離を算出する算出部924と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光測距装置(100,100b)であって、
パルス光(DL)を発光する複数の発光素子(44)と、
前記複数の発光素子のそれぞれに対応する複数の発光側レンズ(466)を同一平面上に配列して備える発光側レンズアレイ(464)、および前記発光側レンズアレイを移動させる発光側駆動部(462)を含み、前記パルス光を走査する発光側走査部(46)と、
物体(OB)によって反射された前記パルス光の反射光(RL)を受光する複数の受光素子(64)と、
前記受光素子で受光された前記反射光の飛行時間を用いて、前記物体までの距離を算出する算出部(924)と、を備える、
光測距装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光測距装置であって、
第一発光側レンズ(466p,466s)によって形成されるパルス光の照射範囲(H1)と、前記第一発光側レンズに隣接する第二発光側レンズ(466q,466t)によって形成されるパルス光の照射範囲(H2)とが互いに接するように構成されている、
光測距装置。
【請求項3】
さらに、前記第一発光側レンズと前記第二発光側レンズとの間の距離が、前記第一発光側レンズの半径以下の距離である、請求項2に記載の光測距装置。
【請求項4】
請求項1に記載の光測距装置であって、
前記複数の発光素子は、同一平面上の予め定められた発光範囲(DA)に配列され、
前記複数の受光素子は、同一平面上の予め定められた受光範囲(RA)に配列され、
前記受光範囲の面積は、前記発光範囲の面積よりも大きい、
光測距装置。
【請求項5】
請求項1に記載の光測距装置であって、
さらに、前記複数の受光素子のそれぞれに対応する複数の受光側レンズ(666)を同一平面上に配列して備える受光側レンズアレイ(664)、および前記受光側レンズアレイを移動させる受光側駆動部(662)を含む受光側走査部(66)を備える、
光測距装置。
【請求項6】
請求項5に記載の光測距装置であって、
第一受光側レンズ(666p)によって形成される反射光の受光範囲(HR1)と、前記第一受光側レンズに隣接する第二受光側レンズ(666q)によって形成される反射光の受光範囲(HR2)とが互いに接するように構成されている、
光測距装置。
【請求項7】
さらに、前記第一受光側レンズと前記第二受光側レンズとの間の距離が、前記第一受光側レンズの半径以下の距離である、請求項6に記載の光測距装置。
【請求項8】
請求項1に記載の光測距装置であって、
さらに、前記発光素子および前記発光側走査部を制御可能な制御部(922)を備え、
前記制御部は、前記発光素子の発光と、前記発光側レンズアレイの移動とを交互に実行する、
光測距装置。
【請求項9】
請求項1に記載の光測距装置であって、
さらに、前記発光素子および前記発光側走査部を制御可能な制御部(922)を備え、
前記制御部は、前記発光側レンズアレイを移動させながら、前記発光素子を発光させる、
光測距装置。
【請求項10】
請求項1に記載の光測距装置であって、
さらに、前記発光素子および前記発光側走査部を制御可能な制御部(922)を備え、
前記複数の発光側レンズは、奇数列と偶数列とを有する格子状に配列され、
前記制御部は、前記奇数列に属する発光側レンズに対応する前記発光素子と、前記偶数列に属する発光側レンズに対応する前記発光素子とを交互に発光させる、
光測距装置。
【請求項11】
請求項1に記載の光測距装置であって、
さらに、前記発光素子および前記発光側走査部を制御可能な制御部(922)を備え、
前記複数の発光側レンズは、複数の列を有する格子状に配列され、
前記制御部は、前記発光側レンズアレイの一端に近い列に属する発光側レンズに対応する前記発光素子から、前記発光側レンズアレイの他端に近い列に属する発光側レンズに対応する前記発光素子までを順次に発光させる、
光測距装置。
【請求項12】
請求項8から請求項11までのいずれか一項に記載の光測距装置であって、
前記制御部は、前記発光側レンズアレイを、前記発光側レンズの光軸と、前記発光側レンズに対応する前記発光素子からのパルス光の光軸とが離れる位置に移動する場合には、前記発光側レンズの光軸と、前記発光側レンズに対応する前記発光素子からのパルス光の光軸とが一致する場合よりも前記発光素子による発光回数を増加させる、
光測距装置。
【請求項13】
請求項8から請求項11までのいずれか一項に記載の光測距装置であって、
さらに、前記複数の受光素子のそれぞれに対応する複数の受光側レンズ(666)を同一平面上に配列して備える受光側レンズアレイ(664)、および前記受光側レンズアレイを移動させる受光側駆動部(662)を含む受光側走査部(66)を備え、
前記制御部は、
さらに、前記受光側走査部を制御可能であり、
前記発光側走査部と、前記受光側走査部とを互いに同期して制御する、
光測距装置。
【請求項14】
請求項1に記載の光測距装置であって、
前記複数の発光素子、前記発光側走査部、および前記複数の受光素子を収容する筐体(80)を備え、
前記複数の発光素子および前記複数の受光素子は、熱伝導材料を用いて前記筐体に固定される、
光測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を発生させる発光素子と、物体で反射されたレーザ光の戻り光を受光する受光素子とを備える光測距装置が知られている。例えば、特許文献1には、レーザ光を透過する単数の発光側レンズ、および戻り光を透過する単数の受光側レンズを備えるレンズユニットをリニアモータによって左右に移動させることで、レーザ光を光測距装置の前方で左右方向に走査する光測距装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-198951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、レンズユニットを左右に移動させると、受光側レンズの端部に入射する戻り光の屈折度が大きくなるため、受光素子の近傍で像のひずみが発生することがある。この場合には、受光素子の受光量が低下し、検出精度が低下する可能性がある。そのため、レーザ光をレンズの移動により走査する光測距装置において、検出精度を向上させる技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
本開示の一形態によれば、光測距装置(100,100b)が提供される。この光測距装置は、パルス光(DL)を発光する複数の発光素子(44)と、前記複数の発光素子のそれぞれに対応する複数の発光側レンズ(466)を同一平面上に配列して備える発光側レンズアレイ(464)、および前記発光側レンズアレイを移動させる発光側駆動部(462)を含み、前記パルス光を走査する発光側走査部(46)と、物体(OB)によって反射された前記パルス光の反射光(RL)を受光する複数の受光素子(64)と、前記受光素子で受光された前記反射光の飛行時間を用いて、前記物体までの距離を算出する算出部(924)と、を備える。
【0007】
この形態の光測距装置によれば、複数の発光素子および複数の発光側レンズを備えることにより、発光視野を複数に分割することができ、単数の発光側レンズのみを備える光測距装置と比較して、発光側レンズ一つあたりの収差による像のひずみを小さくすることができる。したがって、受光素子での受光信号の低下を抑制することができ、光測距装置の検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る光測距装置の概略構成を断面視で示す説明図。
図2】制御装置の機能構成を示すブロック図。
図3】発光部および受光部の構成を平面視で示す説明図。
図4】発光側レンズアレイおよび受光側レンズアレイが上側に移動された状態を断面視で示す説明図。
図5】発光側レンズアレイおよび受光側レンズアレイが上側に移動された状態を平面視で示す説明図。
図6】発光側レンズアレイおよび受光側レンズアレイが下側に移動された状態を断面視で示す説明図。
図7】発光側レンズアレイおよび受光側レンズアレイが下側に移動された状態を平面視で示す説明図。
図8】発光側レンズアレイの光学的な構成を示す説明図。
図9】比較例としての発光側レンズアレイの光学的な構成を示す説明図。
図10】受光側レンズアレイの光学的な構成を示す説明図。
図11】発光側走査部および受光側走査部のスキャン方法を概念的に示す説明図。
図12】発光側走査部および受光側走査部の移動と、発光および受光タイミングとを示すタイミングチャート。
図13】他の実施形態における発光側レンズアレイの光学的な構成を示す説明図。
図14】他の実施形態における発光側走査部および受光側走査部の移動と、発光および受光タイミングとを示すタイミングチャート。
図15】第2実施形態に係る光測距装置の概略構成を断面視で示す説明図。
図16】第2実施形態に係る光測距装置の発光側走査部および受光側走査部のスキャン方法を概念的に示す説明図。
図17】第2実施形態に係る光測距装置の発光側レンズアレイが上側に移動された状態を示す説明図。
図18】第2実施形態に係る光測距装置の発光側レンズアレイが下側に移動された状態を側面視で示す説明図。
図19】第3実施形態に係る光測距装置の発光側走査部および受光側走査部のスキャン方法を概念的に示す第1の説明図。
図20】第3実施形態に係る光測距装置の発光側走査部および受光側走査部のスキャン方法を概念的に示す第2の説明図。
図21】他の実施形態に係る光測距装置の発光側走査部および受光側走査部のスキャン方法を概念的に示す第1の説明図。
図22】他の実施形態に係る光測距装置の発光側走査部および受光側走査部のスキャン方法を概念的に示す第2の説明図。
図23】第4実施形態に係る光測距装置の発光側走査部および受光側走査部のスキャン方法を概念的に示す説明図。
図24】第5実施形態に係る光測距装置の発光側走査部および受光側走査部のスキャン方法を概念的に示す説明図。
図25】他の実施形態に係る光測距装置の発光側走査部および受光側走査部のスキャン方法を概念的に示す第3の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A1.第1実施形態:
図1に示す光測距装置100は、レーザ光DLを発光し、対象物OBによって反射された反射光RLを受光することによって、対象物OBまでの距離を検出する。本実施形態において、光測距装置100は、LiDAR(Light Detection And Ranging)である。光測距装置100は、例えば、車両に搭載されて、車両の周囲に存在する物体の距離を測定するために使用される。光測距装置100は、発光部40と、受光部60と、発光部40および受光部60を収容する筐体80と、制御装置90とを備えている。筐体80は、レーザ光DLを透過する窓部82を備えている。
【0010】
図2に示すように、制御装置90は、中央演算処理装置としてのCPU92と、ROMやRAM等のメモリ94とを備えるコンピュータとして構成されている。メモリ94には、制御部922および算出部924など、本実施形態において提供される各機能を実現するためのプログラムが格納されており、各機能は、CPU92によってプログラムが実行されることによって実現される。
【0011】
制御部922は、発光部40と、発光側走査部46と、受光部60との動作を制御する。算出部924は、受光部60から入力された検出信号を用いて、対象物OBまでの距離を算出する。具体的には、算出部924は、レーザ光DLが発光されてから反射光RLが受光されるまでの時間である飛行時間(TOF:Time of Flight)を用いて、対象物OBまでの距離を算出する。制御部922および算出部924は、電子回路により実現されてもよい。
【0012】
図1に示すように、発光部40は、制御部922による制御のもとで、測距のためのレーザ光DLを発光する。発光部40は、複数の発光素子44と、発光側走査部46とを備えている。発光側走査部46と発光素子44との間には、さらに、集光用のコンデンサレンズ、クロストークを提言するためのピンホールなどが設けられてもよい。発光側走査部46と窓部82との間には、レーザ光DLの照度を向上させるために、発光側レンズアレイ464が結像させた光を平行光として出射するトランスミッションレンズが設けられていてもよい。
【0013】
発光素子44は、パルス状のレーザ光DLを発光する。発光素子44は、例えば、垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL: Vertical Cavity Surface Emitting Laser)である。発光素子44から発せられたレーザ光DLは、発光側走査部46に入射して、窓部82から外部へと出射される。
【0014】
図1に示すように、発光素子44は、発光側サブマウント42上に配列されている。発光側サブマウント42は、熱伝導材料41を介して、LDドライバなどのICチップを搭載するプリント基板86上に配置されている。熱伝導材料(TIM:Thermal Interface Material)とは、シリコーンなどの樹脂に、窒化ホウ素(BN)や窒化アルミニウム(AlN)などの熱伝導性を有するフィラーを含有させた材料である。プリント基板86は、筐体80の内壁に熱伝導材料84を介して固定されている。このように構成することにより、発光素子44や受光素子64から発生する熱を筐体80に放熱しやすくすることができる。なお、発光素子44は、端面発光型であってもよい。
【0015】
発光側走査部46は、制御部922による制御のもと、予め定められた走査範囲MRを含む角度範囲でレーザ光DLを走査する。発光側走査部46は、複数の発光側レンズ466を同一平面上に配列して備える発光側レンズアレイ464と、発光側駆動部462とを備えている。図1には、発光素子44から出射されるレーザ光DLの光軸LA1が示されている。図1の例では、光軸LA1は、発光側レンズ466の中心と一致している。図3に示すように、複数の発光側レンズ466は、例えば、鉛直方向に150個、水平方向に200個など、水平方向に沿って長尺な発光範囲DA内に格子状に配列されている。なお、本実施形態では、発光範囲DAの外形サイズは、発光側サブマウント42のサイズと略同じである。
【0016】
図1に示すように、発光側駆動部462は、発光側レンズアレイ464を平面上で移動させるアクチュエータ、およびエンコーダである。発光側駆動部462によって発光側レンズアレイ464が平面上の予め定められた領域内で移動されることにより、レーザ光DLが走査範囲MR内で走査される。図1ならびに図1以降の各図には、発光側レンズアレイ464ならびに後述する受光側レンズアレイ664を走査する方向D11,D12,D21,D22が示されている。図1の例では、方向D12は鉛直下向き、方向D11は鉛直上向きを示し、方向D21は、水平方向のうち一方側の向き、方向D22は、方向D22とは逆側の向きを示している。
【0017】
受光部60は、発光素子44から発光されたレーザ光DLが対象物OBにより反射された反射光RLを受光する。受光部60は、複数の受光素子64と、受光側走査部66とを備えている。受光素子64は、例えば、SPAD(Single Photon Avalanche Diode)である。受光素子64は、受光した光の強度に応じた検出信号を算出部924に出力する。受光素子64は、APDであってもよい。受光側走査部66と受光素子64との間には、さらに、外乱光を遮光するためのピンホール、受光素子64によって構成される画素サイズの平行光に拡散光を調整するためのコリメートレンズなどが設けられてもよい。
【0018】
受光素子64は、受光側サブマウント62上に配列されている。複数の受光素子64によって一つの画素が形成されている。なお、画素数は、発光素子44の数と同じ数で設定されている。一つの画素に含まれる受光素子64の数は、スキャン1周期内のスキャン回数と同数である。受光側サブマウント62は、TIMを用いた熱伝導材料61を介してプリント基板86上に配置されている。このように構成することにより、受光素子64から発生する熱を筐体80に放熱させやすくすることができる。
【0019】
受光側走査部66は、制御部922による制御のもとで、予め定められた走査範囲MRを含む角度範囲からの反射光RLを受光素子64に結像させる。受光側走査部66は、複数の受光側レンズ666を同一平面上に配列して備える受光側レンズアレイ664と、受光側駆動部662とを備えている。図1には、受光素子64に入射するレーザ光DLの光軸LA2が示されている。図1の例では、光軸LA2は、受光側レンズ666の中心と一致している。図3に示すように、複数の受光側レンズ666は、発光範囲DAと略同じ大きさの受光範囲RA内に格子状に配列されている。なお、本実施形態では、受光範囲RAの外形サイズは、受光側サブマウント62のサイズと略同じである。
【0020】
受光側駆動部662は、受光側レンズアレイ664を平面上で移動させるアクチュエータ、およびエンコーダである。受光側駆動部662によって受光側レンズアレイ664が平面上の予め定められた領域内で移動されることにより、走査範囲MRからの反射光RLが各画素に結像される。受光側走査部66と窓部82との間には、受光側レンズアレイ664に入射する反射光RLの光量を大きくするための受光レンズが設けられてもよい。本実施形態では、制御部922は、受光側走査部66の走査と発光側走査部46の走査とを互いに同期して移動させる。ただし、受光側走査部66の走査と発光側走査部46の走査とは必ずしも同期されていなくてもよい。例えば、発光側レンズアレイ464の移動タイミングと、受光側レンズアレイ664の移動タイミングとが互いに一致していなくてもよい。この場合には、発光部40を発光させるタイミングで、制御部922による発光側レンズアレイ464の移動と、受光側レンズアレイ664の移動とが完了されていればよい。
【0021】
図4および図5に示すように、発光側レンズアレイ464が光軸LA1に対して方向D11、すなわち上側に移動されると、発光側レンズ466の下端あたりに入射したレーザ光DLは上向きに屈折する。このとき、受光側レンズアレイ664が光軸LA2に対して上側に移動されると、反射光RLが受光側レンズ666の下端あたりに入射して屈折し、光軸LA2に沿って受光素子64へと入射する。
【0022】
図6および図7に示すように、発光側レンズアレイ464が光軸LA1に対して方向D12、すなわち下側に移動されると、発光側レンズ466の上端あたりに入射したレーザ光DLは下向きに屈折する。このとき、受光側レンズアレイ664が光軸LA2に対して下側に移動されると、反射光RLが受光側レンズ666の上端あたりに入射して屈折し、光軸LA2に沿って受光素子64へと入射する。
【0023】
図8には、発光側レンズ466の一例である第一発光側レンズ466pと第一発光側レンズ466pに隣接する第二発光側レンズ466qとが示されている。図8の中段には、第一発光側レンズ466pおよび第二発光側レンズ466qの中心が発光素子44の光軸LA1にある状態の発光側走査部46qが示されている。図8の上段には、第一発光側レンズ466pおよび第二発光側レンズ466qの中心が発光素子44の光軸LA1よりも方向D11に距離y1だけ移動した状態の発光側走査部46pが示されている。図8の下段には、第一発光側レンズ466pおよび第二発光側レンズ466qの中心が発光素子44の光軸LA1よりも方向D12に距離y1だけ移動した状態の発光側走査部46rが示されている。図8には、第一発光側レンズ466p、第二発光側レンズ466qの焦点f1,f2と、第一発光側レンズ466pによって形成されるレーザ光DLの照射範囲である像高H1および第二発光側レンズ466qによって形成されるレーザ光DLの照射範囲である像高H2が示されている。
【0024】
図9には、比較例としての発光側走査部46RFが示されている。発光側走査部46RFには発光側レンズアレイ464に一つの発光側レンズ466rが設けられている。発光側レンズ466rのレンズ径は、図8で示した第一発光側レンズ466pのレンズ径よりも大きい。発光側レンズ466rを用いて、図8で示した像高H1,H2との総和に相当する大きさの像高Hrを得るためには、発光側レンズ466rを、図8で示した距離y1よりも大きい距離yrだけ移動させることになる。
【0025】
これに対して、本実施形態の光測距装置100では、図8に示すように、発光側レンズアレイ464において、以下(1)(2)を満たすように、第一発光側レンズ466pおよび第二発光側レンズ466qの各パラメータが設定されている。発光側レンズのパラメータとは、例えば、主点から焦点f1,f2までの距離、物体面から主点までの距離、像面から主点までの距離、第一発光側レンズ466pおよび第二発光側レンズ466qのレンズ径・厚さ・形状、倍率などである。
(1)第一発光側レンズ466pによって形成されるパルス光の像高H1と、前記第一発光側レンズに隣接する第二発光側レンズ466qによって形成されるパルス光の像高H2とが、レンズ間の境界BDで互いに接するように構成されている。このように構成することにより、レーザ光DLの出射エリアを重複なく、かつ隙間がないように構成することができる。ただし、これに限らず、像高H1,H2の一部が互いに重複するように構成されてもよい。
(2)第一発光側レンズ466pと第二発光側レンズ466qとの間の距離が、第一受光側レンズの半径以下の距離となるように構成されている。本実施形態では、第一発光側レンズ466pと第二発光側レンズ466qとの間の距離は、発光側レンズアレイ464で構成可能な最小の距離となるように構成されている。このように構成することにより、単位面積あたりの発光側レンズ466の設置数、すなわち発光側レンズ466の密度を最大にでき、光軸外収差を発光側走査部46RFよりも小さくすることができる。
【0026】
図10には、受光側レンズ666の一例である第一受光側レンズ666pと第一受光側レンズ666pに隣接する第二受光側レンズ666qとが示されている。図10の中段には、第一受光側レンズ666pおよび第二受光側レンズ666qの中心が受光素子64の光軸LA2にある状態の受光側走査部66qが示されている。図10の上段には、第一受光側レンズ666pおよび第二受光側レンズ666qの中心が受光素子64の光軸LA2よりも方向D11に距離y2だけ移動した状態の受光側走査部66pが示されている。図10の下段には、第一受光側レンズ666pおよび第二受光側レンズ666qの中心が受光素子64の光軸LA2よりも方向D12に距離y2だけ移動した状態の受光側走査部66rが示されている。なお、本実施形態では、距離y2は、距離y1と等しい。図10には、第一受光側レンズ666p、第二受光側レンズ666qの焦点f1,f2、ならびに第一受光側レンズ666pの像高H1および第二受光側レンズ666qの像高H2が示されている。受光側レンズアレイ664の光学的な構成は、発光側レンズアレイ464の構成と同様であるので説明を省略する。
【0027】
図11には、スキャンエリアSAが示されている。図11では、技術の理解を容易にするために、スキャンエリアSAおよび受光素子64の一つにハッチングを付している。スキャンエリアSAは、1画素に相当する。図11には、受光部60のうち、タテ3画素×ヨコ3画素の合計9画素が図示されている。1つの画素には、タテ3個×ヨコ3個の合計9個の受光素子64が配列されている。本実施形態の光測距装置100のスキャン1周期あたりのスキャン位置は、図11の中央に示すスキャン位置SC、およびスキャン位置S1からスキャン位置S8までの合計9箇所である。なお、制御部922は、スキャン位置ごとの発光部40の発光回数を任意に設定することができる。
【0028】
図11の左上には、発光素子44におけるレーザ光DLの発光視野DSと、受光素子64における反射光RLの受光視野RSとが概念的に示されている。矢印M1-M9で示すように、制御部922が発光側駆動部462および受光側駆動部662を制御することによって、発光側レンズアレイ464および受光側レンズアレイ664は、各スキャン位置SC,S1-S8に対応する位置に移動することによって、発光視野DSおよび受光視野RSは、各スキャン位置SC,S1-S8に移動する。
【0029】
発光視野DSおよび受光視野RSの大きさは、収差の大きさを概念的に表している。図11の中央に示すスキャン位置SCでは、発光素子44の光軸LA1が発光側レンズ466の中心にあり、発光側レンズ466の光軸と、発光側レンズ466に対応する発光素子44からのパルス光の光軸LA1とが一致している。したがって、スキャン位置SCは、収差が最も小さい位置である。これに対して、スキャン位置S1-S8は、発光側レンズ466の光軸と、発光側レンズ466に対応する発光素子44からのパルス光の光軸LA1とが離れる位置である。例えば、図11の四隅に示すスキャン位置S1,S3,S5,S7は、光軸LA1に対して左上、右上、右下、左下というナナメとなる位置である。これらは、発光側レンズ466の光軸と、発光素子44の光軸LA1とが最も離れ、収差が最も大きくなる位置である。スキャン位置S2,S4,S6,S8は、光軸LA1に対して上下左右に隣接する位置である。これらの位置での収差は、スキャン位置SCの収差より大きく、スキャン位置S1,S3,S5,S7の収差より小さくなる。
【0030】
図12には、発光素子44および受光素子64のオンオフのタイミング、ならびに発光側駆動部462および受光側駆動部662の移動タイミングがスキャン位置SC,S1-S8ごとに示されている。横軸は、時間軸であり、発光部40および受光部60の各制御において共通である。発光側駆動部462および受光側駆動部662の波形に付された「M1-M9」の符号は、図11で示した矢印M1-M9と関連付けて示されている。なお、本実施形態では、制御部922による制御を簡易にする観点から、各スキャン位置SC,S1-S8での発光側レンズアレイ464および受光側レンズアレイ664の停止時間は、互いに等しく設定されている。
【0031】
図12に示すように、本実施形態では、制御部922は、発光素子44の発光と、発光側レンズアレイ464の移動とを交互に実行する。例えば、時間t1において、制御部922は、スキャン位置SCで発光素子44を発光させる。次に、時間t2において、発光側駆動部462および受光側駆動部662を駆動して、発光側レンズアレイ464および受光側レンズアレイ664を、図11で示した矢印M1に従ってスキャン位置S1へと移動させる。制御部922は、時間t3で発光側レンズアレイ464および受光側レンズアレイ664の移動を完了させると、時間t4で発光素子44を発光させる。スキャン位置S1でのスキャンを終えると、制御部922は、時間t5において、発光側駆動部462および受光側駆動部662を駆動して、発光側レンズアレイ464および受光側レンズアレイ664を矢印M2に従ってスキャン位置S2へと移動させて、時間t6で発光素子44を発光させる。スキャン位置S2でのスキャンを終えると、制御部922は、時間t7で、発光側レンズアレイ464および受光側レンズアレイ664を矢印M3に従ってスキャン位置S3へと移動させる。制御部922は、以降も同様に、スキャン位置S4からスキャン位置S8までを繰り返すことによって、スキャンの1周期を完了させる。制御部922は、1周期のスキャンを完了させると、スキャン位置SCに戻り、同様の制御を繰り返す。なお、発光側レンズアレイ464および受光側レンズアレイ664の移動は、発光素子44の発光タイミングまでに完了していれば足りる。したがって、発光側レンズアレイ464および受光側レンズアレイ664の移動は、互いに一致していなくてもよく、個別に制御されてもよい。
【0032】
本実施形態では、制御部922は、上述したスキャン位置S1-S8のように収差が大きくなる位置では、スキャン位置SCのように収差が小さくなる位置よりも発光回数が多くなるように発光素子44を制御する。より具体的には、図12に示すように、制御部922は、光軸が一致するスキャン位置SCでは、発光回数が1回であるのに対して、四隅のスキャン位置S1,S3,S5,S7では、発光回数が3回であり、上下左右のスキャン位置S2,S4,S6,S8では、発光回数は2回である。収差が大きくなる位置での発光回数を増加させることにより、受光素子64での受光信号の低下を抑制し、検出精度の低下を抑制または防止することができる。
【0033】
以上、説明したように、本実施形態の光測距装置100は、レーザ光DLを発光する複数の発光素子44と、複数の発光素子44のそれぞれに対応する複数の発光側レンズ466を同一平面上に配列して備える発光側レンズアレイ464、および発光側レンズアレイ464を移動させる発光側駆動部462を含み、レーザ光DLを走査する発光側走査部46と、反射光RLを受光する複数の受光素子64と、受光素子64で受光された反射光RLの飛行時間を用いて、対象物OBまでの距離を算出する算出部924と、を備えている。本実施形態の光測距装置100によれば、複数の発光素子44および複数の発光側レンズ466を備えることにより、発光視野を複数に分割することができ、例えば単数の発光側レンズ466のみを備える光測距装置と比較して、発光側レンズ466の一つあたりの収差による像のひずみを小さくすることができる。したがって、受光部60による受光信号の低下を抑制することができ、光測距装置100の検出精度を向上させることができる。
【0034】
本実施形態の光測距装置100では、第一発光側レンズ466pによって形成されるレーザ光DLの像高H1と、第一発光側レンズ466pに隣接する第二発光側レンズ466qによって形成されるレーザ光DLの像高H2とが互いに接するように構成されている。本実施形態の光測距装置100によれば、発光側レンズアレイ464において、互いに隣接するレンズのレーザ光DLの出射エリアを、互いに重複なく、かつ隙間が発生しないように最適化することができる。
【0035】
本実施形態の光測距装置100によれば、さらに、第一発光側レンズ466pと第二発光側レンズ466qとの間の距離が、第一発光側レンズ466pの半径以下の距離である。本実施形態の光測距装置100によれば、単位面積あたりの発光素子44および発光側レンズ466の設置数を最大にすることによって、発光側レンズ466の一つあたりに発生する収差を最小にすることができる。
【0036】
本実施形態の光測距装置100は、さらに、複数の受光素子64のそれぞれに対応する複数の受光側レンズ666を同一平面上に配列して備える受光側レンズアレイ664、および受光側レンズアレイ664を移動させる受光側駆動部662を含み、反射光RLを結像させる受光側走査部66を備える。本実施形態の光測距装置100によれば、受光部60に受光側レンズアレイ664を設けることにより、受光部60での収差を抑制することができる。したがって、受光素子64による受光信号の低下を抑制することができ、光測距装置100の検出精度を向上させることができる。
【0037】
本実施形態の光測距装置100によれば、受光側走査部66は、第一受光側レンズ666pによって形成される反射光RLの受光範囲HR1と、第一受光側レンズ666pに隣接する第二受光側レンズ666qによって形成される反射光RLの受光範囲HR2とが互いに接するように構成されている。本実施形態の光測距装置100によれば、受光側レンズアレイ664において、互いに隣接するレンズの反射光RLの受光エリアを、互いに重複なく、かつ隙間が発生しないように最適化することができる。
【0038】
本実施形態の光測距装置100によれば、さらに、第一受光側レンズ666pと第二受光側レンズ666qとの間の距離が、第一受光側レンズ666pの半径以下の距離である。本実施形態の光測距装置100によれば、単位面積あたりの受光素子64および受光側レンズ666の設置数を最大にすることによって、受光側レンズ666の一つあたりに発生する収差を最小にすることができる。
【0039】
本実施形態の光測距装置100によれば、制御部922は、スキャン中における発光素子44の発光と、発光側レンズアレイ464の移動とを交互に実行する。したがって、発光側駆動部462等の動作がスキャン時の収差へ与える影響を小さくすることができ、光測距装置100の検出精度を向上させることができる。
【0040】
本実施形態の光測距装置100によれば、制御部922は、発光側レンズアレイ464を、発光側レンズ466の光軸LA1と、発光側レンズ466に対応する発光素子44からのレーザ光DLの光軸LA1とが離れる位置に移動する場合には、発光側レンズ466の光軸と、発光側レンズ466に対応する発光素子44からのレーザ光DLの光軸LA1とが一致する場合よりも発光素子44による発光回数を増加させる。収差が大きくなる箇所での発光回数を増加させることにより、収差が大きい箇所の検出精度の低下を抑制することができる。
【0041】
本実施形態の光測距装置100によれば、制御部922は、発光側走査部46と、受光側走査部66とを互いに同期して制御する。したがって、制御部922による制御を簡易化することができる。
【0042】
本実施形態の光測距装置100によれば、複数の発光素子44および複数の受光素子64は、熱伝導材料41を用いて筐体80に固定されている。したがって、発光素子44から発生する熱を筐体80に放熱しやすくすることができる。「熱伝導材料41を用いて筐体80に固定される」とは、筐体80と発光素子44等との間に熱伝導材料41のみが設けられてもよく、熱伝導材料84、プリント基板86、発光側サブマウント42、熱伝導材料61、受光側サブマウント62などのように、熱伝導材料41とともに熱伝導材料41以外の材料を介して筐体80に固定されていてもよい。
【0043】
本実施形態の光測距装置100によれば、さらに、筐体80と、複数の発光素子44および複数の受光素子64との間に、が設けられる。熱伝導材料41を用いることにより、発光素子44の放熱性能をより向上させることができる。
【0044】
A2.第1実施形態の他の実施形態1:
図13には、発光側レンズ466の一例である第一発光側レンズ466sと第一発光側レンズ466sに隣接する第二発光側レンズ466tとが示されている。図13に示すように、第一発光側レンズ466sと第二発光側レンズ466tとの間の距離は、第一発光側レンズ466sの半径よりも長く設定されてもよい。
【0045】
図13の中段には、第一発光側レンズ466sおよび第二発光側レンズ466tの中心が発光素子44の光軸LA1にある状態の発光側走査部46tが示されている。図13の上段には、第一発光側レンズ466sおよび第二発光側レンズ466tの中心が発光素子44の光軸LA1よりも方向D11に距離y3だけ移動した状態の発光側走査部46sが示されている。図13の下段には、第一発光側レンズ466pおよび第二発光側レンズ466qの中心が発光素子44の光軸LA1よりも方向D12に距離y3だけ移動した状態の発光側走査部46uが示されている。図13には、第一発光側レンズ466s、第二発光側レンズ466tの焦点f1,f2と、第一発光側レンズ466sの像高H3および第二発光側レンズ466tの像高H4とが示されている。像高H3は、図8で示した像高H1と像高H2との総和と等しい。像高H4も同様である。第一発光側レンズ466sおよび第二発光側レンズ466tを移動させる距離y3は、図8で示した第一発光側レンズ466pおよび第二発光側レンズ466qを移動させる距離y1と同じである。
【0046】
本実施形態の光測距装置100によれば、第一発光側レンズ466sおよび第二発光側レンズ466tを、図8で示した距離y1同じ距離y3の移動によって、第1実施形態と同じサイズのスキャンエリアSAを形成することができる。また、発光側レンズアレイ464のレンズ数を減らすことができる。なお、この構成では、第1実施形態の発光側走査部46よりも収差が大きくなり得る。
【0047】
A3.第1実施形態の他の実施形態2:
上記第1実施形態では、制御部922によるスキャンにおいて、発光素子44の発光と、発光側レンズアレイ464の移動とが交互に実行される例を示した。これに対して、制御部922は、発光側レンズアレイ464を移動させながら発光素子44を発光させてもよい。
【0048】
図14に示すように、時間t21において、制御部922は、スキャン位置SCで発光素子44を発光させると、時間t22において、発光側レンズアレイ464および受光側レンズアレイ664のスキャン位置S1への移動を開始する。制御部922は、スキャン位置S1への移動を完了する時間t25よりも前の時間t24で、発光側レンズアレイ464および受光側レンズアレイ664を移動させながら、発光素子44の発光を開始する。この場合には、収差を抑制させる観点から、発光素子44の発光のうち少なくとも一回が、各スキャン位置への移動を完了するタイミングで行われることが好ましい。次に、スキャン位置S2への移動を完了する時間t27よりも前となる時間t26に発光素子44を発光させる。なお、スキャン位置S2では、制御部922は、2回の発光回数のうち1回の発光を時間t27のタイミングで実行する。以降のスキャン位置S3-S8でも同様に繰り返す。
【0049】
本実施形態の光測距装置100によれば、制御部922は、発光側レンズアレイ464を移動させながら、発光素子44を発光させる。したがって、スキャン1周期あたりにかかる時間を短縮し、光測距装置100による単位時間あたりのスキャン回数を増加することができる。
【0050】
B.第2実施形態:
図15に示すように、第2実施形態に係る光測距装置100bでは、受光部60に代えて、受光部60bを備える点において第1実施形態の光測距装置100と相違し、それ以外の構成は同様である。受光部60bは、受光側走査部66を備えない点と、受光範囲RAbの大きさが異なる点において、第1実施形態で示した受光部60と相違する。
【0051】
図16に示すように、発光視野DSは第1実施形態と同様である。本実施形態では、受光部60bが受光側走査部66を備えないため、反射光RLは受光素子64に至るまでの間に広がる。この結果、受光視野RSbは、第1実施形態で示した受光視野RSよりも大きくなる。本実施形態の光測距装置100bでは、図15に示すように、受光素子64の配置数を多くして、受光範囲RAbを、第1実施形態で示した受光範囲RAよりも大きくしている。このように構成することにより、図17および図18に示すように、受光素子64による検出範囲を拡大して、反射光RLの拡散による検出精度の低下を抑制することができる。
【0052】
本実施形態の光測距装置100bによれば、複数の受光素子64が配置される受光範囲RAbの面積は、発光範囲DAの面積よりも大きい。したがって、光測距装置100bの部品点数を低減することができるとともに、受光素子64の検出範囲を拡大することによって、受光部60bが受光側走査部66を備えない場合であっても検出精度が低下することを抑制することができる。
【0053】
C1.第3実施形態:
図19および図20に示すように、本実施形態の光測距装置100では、第1実施形態とは、発光側走査部46および受光側走査部66のスキャン方法が異なる点で相違し、それ以外の構成は第1実施形態と同様である。より具体的には、本実施形態では、制御部922は、鉛直方向における奇数列ORに属する発光側レンズ466に対応する発光素子44と、偶数列ERに属する発光側レンズ466に対応する発光素子44とを交互に発光させる。
【0054】
スキャンエリアSA31およびスキャンエリアSA32は、タテ1個×ヨコ3個の合計3個の受光素子64が配列された範囲である。スキャンエリアSA31には、発光側レンズ466の光軸と発光素子44の光軸LA1とが一致するスキャン位置SC31と、その左右に位置するスキャン位置S31,S32とが含まれる。スキャン位置S31,S32,S33,S34の収差は、スキャン位置SC31,SC32の収差よりも大きい。
【0055】
制御部922は、格子状に配列された複数の発光側レンズ466のうち奇数列ORに属する発光側レンズ466に対応する発光素子44を発光させる。図19の例では、制御部922は、奇数列ORに属するスキャンエリアSA31のうち、中央のスキャン位置SC31で発光素子44を発光させる。次に、制御部922は、矢印M31および矢印M32で示すように、発光側レンズアレイ464および受光側レンズアレイ664を、スキャン位置SC31から方向D22へと、およびスキャン位置SC31か方向D21へと移動させる。制御部922は、それぞれのスキャン位置S31,S32で発光素子44を発光させることによって、奇数列ORに属するスキャンエリアSA31でのスキャンを完了させる。したがって、本実施形態では、発光側レンズアレイ464および受光側レンズアレイ664は、上下方向およびナナメ方向には移動されない。
【0056】
図20に示すように、制御部922は、次に、偶数列ERに属する発光側レンズ466に対応する発光素子44を発光させる。より具体的には、制御部922は、偶数列ERに属するスキャンエリアSA32のうち、中央のスキャン位置SC32で発光素子44を発光させる。次に、制御部922は、矢印M31および矢印M32で示すように、発光側レンズアレイ464および受光側レンズアレイ664を、スキャン位置SC32から方向D22へと、およびスキャン位置SC32か方向D21へと移動させる。制御部922は、それぞれのスキャン位置S33,S34で発光素子44を発光させることによって、偶数列ERに属するスキャンエリアSA32でのスキャンを完了させる。奇数列ORのスキャンエリアSA31と、偶数列ERのスキャンエリアSA32とのスキャンにより、1周期分のスキャンが完了する。なお、スキャンエリアSA31,SA32内での発光順序は、上記には限定されず、任意に設定されてもよい。
【0057】
以上のように、本実施形態の光測距装置100によれば、制御部922は、鉛直方向における奇数列ORに属する発光側レンズ466に対応する発光素子44と、偶数列ERに属する発光側レンズ466に対応する発光素子44とを交互に発光させる。したがって、互いに隣接する奇数列ORと偶数列ERとのスキャンエリア同士のクロストークを抑制することができる。また、本実施形態では、ナナメ方向でのスキャンを行わないため、収差を低減することができ、検出精度を向上させることができる。
【0058】
C2.第3実施形態の他の実施形態:
上記第3実施形態では、鉛直方向における奇数列ORのスキャンエリアSA31のスキャンと、偶数列ERのスキャンエリアSA32のスキャンとを交互に実行される例を用いて説明した。これに対して、図21および図22に示すように、水平方向における奇数列OCのスキャンエリアSA41のスキャンと、偶数列ECのスキャンエリアSA42のスキャンとが交互に繰り返されてもよい。
【0059】
スキャンエリアSA41およびスキャンエリアSA42は、タテ3個×ヨコ1個の合計3個の受光素子64が配列された範囲である。スキャン位置S41,S42の収差は、スキャン位置SC41,SC42の収差よりも大きい。このように、制御部922は、水平方向における奇数列OCに属する発光側レンズ466に対応する発光素子44と、偶数列ECに属する発光側レンズ466に対応する発光素子44とを交互に発光させてもよい。このように構成した光測距装置100であっても、上記第3実施形態と同様な効果を奏する。
【0060】
D.第4実施形態:
スキャンエリアは、任意の形状を用いて設定することができる。例えば、図23の左側に示すスキャンエリアSA5のように、十字形状のスキャンエリアにすることもできる。スキャンエリアSA5は、発光側レンズ466の光軸と発光素子44の光軸LA1とが一致するスキャン位置SC5と、スキャン位置SC5の上下に位置するスキャン位置S51,S53と、スキャン位置SC5の左右に位置するスキャン位置S52,S54との合計5箇所のスキャン位置を含んでいる。
【0061】
制御部922は、スキャン位置SC5で発光素子44を発光させたあと、図23に示す矢印M51-M55に従って、発光側レンズアレイ464および受光側レンズアレイ664を上下左右に移動させて、スキャン位置S51,S52,S53,S54の順で1周期のスキャンを実行する。スキャン位置S51,S52,S53,S54の収差は、スキャン位置SC5の収差よりも大きい。このように構成した光測距装置100であっても、ナナメ位置でのスキャンを実行せず、上記第3実施形態と同様な効果を奏する。なお、スキャンエリアSA5内での発光順序は、上記には限定されず、任意に設定されてもよい。
【0062】
E1.第5実施形態:
上記第1実施形態では、分割された複数のスキャンエリアSAごとに発光素子44を発光させることによって走査範囲MRのスキャンを完了させる例を示した。これに対して、図24に示すように、複数の発光側レンズ466が複数の列を有する格子状に配列される場合に、一端側から他端側に向かって順次にスキャンエリアが切り替えられることによって走査範囲MRのスキャンが実行されてもよい。
【0063】
図24に示すように、制御部922は、発光側レンズアレイ464の方向D22側の端部に近い列に属するスキャンエリアSA61に対応する発光素子44から、これに隣接する列のスキャンエリアSA62と、スキャンエリアSA62に隣接する列のスキャンエリアSA63との順でスキャンを実行し、以降も同様に、発光側レンズアレイ464の方向D21側の端部に向かって順次にスキャンを実行する。スキャンエリアSA61では、矢印M61,M62で示すように、中央ならびにその上下のスキャン位置で発光素子44を発光させた後、矢印MS61で示すように、スキャンエリアを方向D21側に1列だけシフトさせる。次に、スキャンエリアSA62において、同様に、中央ならびにその上下のスキャン位置で発光素子44を発光させた後、矢印MS62で示すように、発光位置を方向D21側にさらに1列だけシフトさせて、以降も同様に方向D21側の端部に向かって1列ずつスキャンエリアをシフトさせながら繰り返す。
【0064】
本実施形態の光測距装置100によれば、ナナメ方向でのスキャンを省略して上記第3実施形態と同様の効果を得ることができる。また、列ごとにスキャンするので、分割された複数のスキャンエリアのそれぞれの発光素子44を発光させる場合と比較して、クロストークの発生を抑制することができる。
【0065】
E2.第5実施形態の他の実施形態:
上記第5実施形態では、スキャンエリアを水平方向に沿って列ごとに切り替えて走査範囲MRのスキャンを完了させる例を示した。これに対して、図25に示すように、スキャンエリアを鉛直方向に沿って列ごとに切り替えてスキャンしてもよい。
【0066】
より具体的には、スキャンエリアSA71において、矢印M71,M72で示すように、中央ならびにその左右のスキャン位置で発光素子44を発光させた後、矢印MS71で示すように、スキャンエリアを方向D12側に1列だけシフトさせる。次に、スキャンエリアSA72において、同様に、中央ならびにその左右のスキャン位置で発光素子44を発光させた後、矢印MS72で示すように、発光位置を方向D12側にさらに1列だけシフトさせて、以降も同様に方向D12側の端部に向かって1列ずつスキャンエリアをシフトさせながら繰り返す。このように構成した光測距装置100であっても、上記第5実施形態と同様な効果を奏する。
【0067】
F.他の実施形態:
(F1)スキャンエリアSAに含まれる受光素子64の数は、上記各実施形態で示した個数には限定されず、スキャンエリアSAのサイズ等に応じて任意に設定されてよい。
【0068】
(F2)上記各実施形態では、受光範囲RAの面積が発光範囲DAの面積と同じ、あるいは受光範囲RAbの面積が発光範囲DAの面積よりも大きい例を示した。これに対して、受光範囲RAの面積が発光範囲DAの面積よりも小さく設定されてもよい。
【0069】
(F3)上記第1実施形態では、スキャン位置S1-S8のように収差が大きくなる位置では、スキャン位置SCのように収差が小さくなる位置よりも発光回数が多くなるように発光素子44が制御される例を示した。これに対して、例えば、全てのスキャン位置において発光回数が同じにされてもよく、各スキャン位置で任意の発光回数が設定されてもよい。また、発光回数は、1-3回には限らず、4以上の任意の発光回数が設定されてもよい。
【0070】
(F4)上記第1実施形態では、複数の発光素子44および複数の受光素子64は、熱伝導材料41を用いて筐体80に固定される例を示した。これに対して、発光素子44および受光素子64は、熱伝導材料41を用いずに筐体80に固定されてもよい。
【0071】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0072】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0073】
他の形態:
本開示の特徴を以下の通り示す。
(形態1)
光測距装置(100,100b)であって、
パルス光(DL)を発光する複数の発光素子(44)と、
前記複数の発光素子のそれぞれに対応する複数の発光側レンズ(466)を同一平面上に配列して備える発光側レンズアレイ(464)、および前記発光側レンズアレイを移動させる発光側駆動部(462)を含み、前記パルス光を走査する発光側走査部(46)と、
物体(OB)によって反射された前記パルス光の反射光(RL)を受光する複数の受光素子(64)と、
前記受光素子で受光された前記反射光の飛行時間を用いて、前記物体までの距離を算出する算出部(924)と、を備える、
光測距装置。
(形態2)
形態1に記載の光測距装置であって、
第一発光側レンズ(466p,466s)によって形成されるパルス光の照射範囲(H1)と、前記第一発光側レンズに隣接する第二発光側レンズ(466q,466t)によって形成されるパルス光の照射範囲(H2)とが互いに接するように構成されている、
光測距装置。
(形態3)
さらに、前記第一発光側レンズと前記第二発光側レンズとの間の距離が、前記第一発光側レンズの半径以下の距離である、形態2に記載の光測距装置。
(形態4)
形態1から形態3までのいずれか一つに記載の光測距装置であって、
前記複数の発光素子は、同一平面上の予め定められた発光範囲(DA)に配列され、
前記複数の受光素子は、同一平面上の予め定められた受光範囲(RA)に配列され、
前記受光範囲の面積は、前記発光範囲の面積よりも大きい、
光測距装置。
(形態5)
形態1から形態4までのいずれか一つに記載の光測距装置であって、
さらに、前記複数の受光素子のそれぞれに対応する複数の受光側レンズ(666)を同一平面上に配列して備える受光側レンズアレイ(664)、および前記受光側レンズアレイを移動させる受光側駆動部(662)を含む受光側走査部(66)を備える、
光測距装置。
(形態6)
形態5に記載の光測距装置であって、
第一受光側レンズ(666p)によって形成される反射光の受光範囲(HR1)と、前記第一受光側レンズに隣接する第二受光側レンズ(666q)によって形成される反射光の受光範囲(HR2)とが互いに接するように構成されている、
光測距装置。
(形態7)
さらに、前記第一受光側レンズと前記第二受光側レンズとの間の距離が、前記第一受光側レンズの半径以下の距離である、形態6に記載の光測距装置。
(形態8)
形態1から形態7までのいずれか一つに記載の光測距装置であって、
さらに、前記発光素子および前記発光側走査部を制御可能な制御部(922)を備え、
前記制御部は、前記発光素子の発光と、前記発光側レンズアレイの移動とを交互に実行する、
光測距装置。
(形態9)
形態1から形態7までのいずれか一つに記載の光測距装置であって、
さらに、前記発光素子および前記発光側走査部を制御可能な制御部(922)を備え、
前記制御部は、前記発光側レンズアレイを移動させながら、前記発光素子を発光させる、
光測距装置。
(形態10)
形態1から形態7までのいずれか一つに記載の光測距装置であって、
さらに、前記発光素子および前記発光側走査部を制御可能な制御部(922)を備え、
前記複数の発光側レンズは、奇数列と偶数列とを有する格子状に配列され、
前記制御部は、前記奇数列に属する発光側レンズに対応する前記発光素子と、前記偶数列に属する発光側レンズに対応する前記発光素子とを交互に発光させる、
光測距装置。
(形態11)
形態1から形態7までのいずれか一つに記載の光測距装置であって、
さらに、前記発光素子および前記発光側走査部を制御可能な制御部(922)を備え、
前記複数の発光側レンズは、複数の列を有する格子状に配列され、
前記制御部は、前記発光側レンズアレイの一端に近い列に属する発光側レンズに対応する前記発光素子から、前記発光側レンズアレイの他端に近い列に属する発光側レンズに対応する前記発光素子までを順次に発光させる、
光測距装置。
(形態12)
形態8から形態11までのいずれか一項に記載の光測距装置であって、
前記制御部は、前記発光側レンズアレイを、前記発光側レンズの光軸と、前記発光側レンズに対応する前記発光素子からのパルス光の光軸とが離れる位置に移動する場合には、前記発光側レンズの光軸と、前記発光側レンズに対応する前記発光素子からのパルス光の光軸とが一致する場合よりも前記発光素子による発光回数を増加させる、
光測距装置。
(形態13)
形態8から形態11までのいずれか一項に記載の光測距装置であって、
さらに、前記複数の受光素子のそれぞれに対応する複数の受光側レンズ(666)を同一平面上に配列して備える受光側レンズアレイ(664)、および前記受光側レンズアレイを移動させる受光側駆動部(662)を含む受光側走査部(66)を備え、
前記制御部は、
さらに、前記受光側走査部を制御可能であり、
前記発光側走査部と、前記受光側走査部とを互いに同期して制御する、
光測距装置。
(形態14)
形態1から形態13までのいずれか一つに記載の光測距装置であって、
前記複数の発光素子、前記発光側走査部、および前記複数の受光素子を収容する筐体(80)を備え、
前記複数の発光素子および前記複数の受光素子は、熱伝導材料を用いて前記筐体に固定される、
光測距装置。
【符号の説明】
【0074】
44…発光素子、46…発光側走査部、64…受光素子、100,100b…光測距装置、462…発光側駆動部、464…発光側レンズアレイ、466…発光側レンズ、924…算出部
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