(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011136
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】内燃機関の排気通路構造
(51)【国際特許分類】
F01N 13/08 20100101AFI20240118BHJP
F01N 13/14 20100101ALI20240118BHJP
【FI】
F01N13/08 A
F01N13/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112893
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】521537852
【氏名又は名称】ダイムラー トラック エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】小坂 秀信
【テーマコード(参考)】
3G004
【Fターム(参考)】
3G004AA01
3G004BA09
3G004DA01
3G004DA11
3G004DA14
3G004EA05
3G004FA01
(57)【要約】
【課題】エンジンから排気浄化装置までの排気通路を構成する中空二重管を分割することなく、振れを抑制することができる内燃機関の排気通路構造を提供する。
【解決手段】内燃機関の排気通路構造10は、内燃機関の排気を通過させる内管111と、内管111の外周を囲む外管112と、外管112に固定され内管111を弾性支持する支持部材15と、を備え、外管112は、複数の開口1121が形成され、支持部材15は、各開口1121を被覆するベース部151と、ベース部151から内管111に向かって延出し、端部1521が内管111に接する突起部152と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気を通過させる内管と、
前記内管の外周を囲む外管と、
前記外管に固定され前記内管を弾性支持する支持部材と、
を備え、
前記外管は、複数の開口が形成され、
前記支持部材は、
前記各開口を被覆するベース部と、
前記ベース部から前記内管に向かって延出し、端部が前記内管に接する突起部と、
を有する、
ことを特徴とする内燃機関の排気通路構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気通路構造に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンを備える車両においては、排気浄化のため、例えば尿素水などの還元触媒を用いた排気浄化装置が排気通路に備えられる。この場合、還元剤を活性化させるために排気の温度が一定以上であることが必要になる。エンジンから排出される排気は、排気管を介して、排気浄化装置に送られるが、排気管の通過時に温度が低下することがある。そこで、排気管として、温度降下抑制のため中空二重管からなる断熱管を採用することがある。
【0003】
例えば、特許文献1に中空二重管を使用した断熱管が開示されている。特許文献1では、内管と外管の間にワイヤメッシュからなる環状の断熱保持部材を設け支持部材とすることで、内管と外管の間に空気層を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、中空二重管が長くなるとエンジンや排気の脈動などの車両振動により内管の振れが大きくなることがある。ところが、特許文献1のようなワイヤメッシュは、製造上、中空二重管の端部にしか設けることができない。
【0006】
そのため、エンジンから排気浄化装置までの距離が長い排気通路の中間にワイヤメッシュによる支持を用いる場合は、複数の中空二重管をつなぎ合わせる必要があった。すなわち、エンジンから排気浄化装置までの排気通路を分割する必要があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、エンジンから排気浄化装置までの排気通路を構成する中空二重管を分割することなく、振れを抑制することができる内燃機関の排気通路構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
【0009】
本適用例に係る内燃機関の排気通路構造は、内燃機関の排気を通過させる内管と、前記内管の外周を囲む外管と、前記外管に固定され前記内管を弾性支持する支持部材と、を備え、前記外管は、複数の開口が形成され、前記支持部材は、前記各開口を被覆するベース部と、前記ベース部から前記内管に向かって延出し、端部が前記内管に接する突起部と、を有する、ことを特徴とする。
【0010】
このように構成された分割構造を採用する内燃機関の排気通路構造は、エンジンから排気浄化装置までの排気通路を構成する中空二重管を分割することなく、振れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態の内燃機関の排気通路の概略構成図である。
【
図2】排気通路に設けられる中空二重管の構造要部を拡大した斜視図である。
【
図3】
図2の領域Bに示す中空二重管の軸を通る部分断面図である。
【
図4】(A)支持部材の斜視図である。(B)支持部材の側面図である。(C)支持部材の前面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。なお、以下の説明において、上流、下流とは、排気の流れる方向を基準としている。また、管については、軸方向と軸に垂直な径方向を用いて説明する場合がある。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態の内燃機関の排気通路構造10を含む排気通路1の概略構成図である。
【0014】
排気通路1は、車両のエンジン等の内燃機関(以下エンジンという)の排気を排出する経路として設けられている。排気通路1は、上流から下流に向かって、中空二重管11及び排気浄化装置20を備えている。
【0015】
中空二重管11は、エンジンルーム内において、エンジンと排気浄化装置20との間を連結できる長さを有し、その進行方向を変更するために中間部において適宜曲げられている(
図1に示す中空二重管11の形状は一例である)。中空二重管11は上流側においてフランジ12(12a、12b)を介して不図示のエンジンに接続されている。また、中空二重管11は下流側においてフランジ13(13a、13b)を介して排気浄化装置20に接続されている。エンジンからの排気は、中空二重管11を通過し、排気浄化装置20に入力される。本実施形態の内燃機関の排気通路構造10(以下、排気通路構造10という)は、中空二重管11に適用されている。排気通路構造10の詳細については後述する。
【0016】
排気浄化装置20は、排気通路1において、中空二重管11より下流側に配設されている。排気浄化装置20は、排気に含まれる大気汚染物質である窒素酸化物(NOx)、粒子状物質(PM)、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)等を除去するためのものである。排気浄化装置20により浄化された排気は、排気浄化装置20の下流側に接続される不図示のサイレンサー等を経由して大気に放出される。
【0017】
排気浄化装置20は、前段酸化触媒及びディーゼル・パティキュレート・フィルター(以下、DPFという)を内包する前段部21と、選択還元触媒(以下、SCRという)及び後段酸化触媒を内包する後段部22とから構成され、上流側から下流側に向かって前段部入力管23、前段部21、中間接続管24、後段部22、後段出力管25の順に設けられている。前段酸化触媒SCRで窒素酸化物(NOx)の還元反応を促進させるため、一酸化窒素の一部を二酸化窒素に酸化させるための触媒である。。DPFは、排気中の粒子状物質(PM)を捕集するために設けられている。SCRは、排気中の窒素酸化物(NOx)を低減するために設けられている。また、後段酸化触媒は、尿素水の過剰供給や低温時の未反応におけるアンモニアの排出を抑制するものである。なお、図示しないが、前段部21と後段部22との間に還元剤である尿素水を排気中に噴射可能な尿素噴射部が設けられている。
【0018】
排気浄化装置20においては、前段部21、及び後段部22がそれぞれの機能を正常に発揮する上で、流入する排気の温度が適度に上昇している必要がある。そのため、排気浄化装置20の上流側には、断熱性を有する中空二重管11が設けられている。
【0019】
図2は、排気通路1に設けられる中空二重管11の構造要部を拡大した斜視図である。具体的には、中空二重管11とその両端に設けられたフランジ12b、13aを含めた
図1の一点鎖線で囲んだ領域Aの要部を拡大した図である。
【0020】
中空二重管11は、断面円形状の中空の内管111(
図2では破線で表示)と、内管111と同軸で、内管111より径が大きく、内管111の外周を囲む、断面円形状の中空の外管112と、を有する。中空二重管11は金属等の耐熱性を有する材料で形成される。
【0021】
内管111は、上流側端部113に、径拡大部1111と内管環状部1112を有する。径拡大部1111は、上流へ向かうにつれて外径が大きくなっている。内管環状部1112は、径拡大部1111より上流側に設けられ、外径が外管112の内径とほぼ等しくなっている。すなわち、内管環状部1112の外周面は、外管112の内周面に接している。中空二重管11は、上流側端部113において、内管環状部1112と外管112とをスポット溶接することで、内管111が外管112に固定されている。すなわち、内管111は、上流側端部113において、外管112内で支持されている。
【0022】
一方、中空二重管11は、上述した上流側端部113を除き、内管111の外周と外管112の内周の間に間隙Sを有する。中空二重管11の下流側端部114において、内管111と外管112の間隙Sに、内管111を外管112内で支持するためのワイヤメッシュ14が設けられている。中空二重管11の中間において、外管112は、周方向に所定の間隔で配置される複数の開口1121(
図2においては破線で表示)を有する。本実施形態では、周方向に90度の間隔で4つの開口1121(
図2においては2つのみ図示)が設けられている。開口1121には、支持部材15が取り付けられている。本実施形態の排気通路構造10は、上記のように上流側端部113において内管111と外管112が固定され、下流側端部114においてワイヤメッシュ14で内管111が外管112に対して支持された中空二重管11と、中空二重管11の中間部に設けられる支持部材15と、から構成される。
【0023】
図3は、
図2の領域Bについて中空二重管11の軸を通る部分断面図である。
図4(A)は支持部材15の斜視図であり、
図4(B)は支持部材15の側面図であり、
図4(C)は支持部材15の前面図である。
【0024】
支持部材15は、ベース部151と、断面略S字形状またはかぎ形状の突起部152を有する。
【0025】
ベース部151は、その内径が外管112の外径と等しい円筒から、円筒の軸方向が長手方向と一致するように矩形に切り出した形状の板材であり、金属等の耐熱性を有する材料で形成される。ベース部151は、第1面1511と第2面1512を有する。第1面1511は、切り出された円筒の内周面に該当する面であり、第2面1512は、切り出された円筒の外周面に該当する面であり、第2面1512の方が第1面1511より曲率半径が大きい(曲率が小さい)。
【0026】
ベース部151は、開口1121を十分覆うことができる大きさを有する。支持部材15は、断熱性を有する金属等の材料で形成され、例えば、中空二重管11の内管または外管と同じ材料で形成されても良い。ベース部151の厚みは、外管112の厚みと同程度が好ましい。
【0027】
突起部152は、略台形形状の板材を、断面略S字に折り曲げた形状で、板バネとしての機能を有する。具体的には、突起部152は、台形の上底側端部1521と下底側端部1522を折り曲げた形状である。突起部152は、突起部152の長手方向とベース部151の長手方向とが略平行となるように配置されて、下底側端部1522において、ベース部151の第1面1511の中央付近に溶接や溶着等で固定されている。すなわち、
図3に示すように、突起部152は、中空二重管11に取り付けられた状態で、ベース部151から内管111に向かって延出している。突起部152は、
図4(C)に示す距離D1、即ちベース部151の第1面1511から下底側端部1522のまでの距離D1、を有する。距離D1は、
図3に示す、外管112の外周面から内管111の外周面までの距離D2よりわずかに大きく設定される。下底側端部1522は、ベース部151と対向する面が、ベース部151の第1面1511の曲率半径とほぼ同じ曲面になるよう形成される。
【0028】
次に、支持部材15の組付け手順について説明する。支持部材15のベース部151に、その中央付近を避けて、隅肉溶接のための小さい開口を設けておく。次に、支持部材15を、ベース部151の第1面1511が外管112の外周面に対向する向きにする。そして、外管112の開口1121から突起部152を間隙Sに挿入しながら、第1面1511を外管112の外周面に被覆して、支持部材15を外管112に密着させる。次に、ベース部151と、外管112とを、ベース部151の開口を埋めるように隅肉溶接して固定する。支持部材15は、外管112に固定された状態で、突起部152の下底側端部1522が内管111の外周面に圧接している。このようにして、支持部材15は、外管112に固定され内管111を弾性支持している。
【0029】
以上のように構成された排気通路構造10は、1本の長い中空二重管11の中間部分において、支持部材15が外管112に固定されて内管111を支持することができる。これにより、排気通路1の組付け工数を減少することができる。また、中空二重管11の形状の設計上の自由度が増す。また、中空二重管11の両端のみで内管111が支持されている場合に比べて、中間でも内管111が支持されることで、中空二重管11全体の振れを抑制することができ、中空二重管11の両端の固定部分にかかる応力を減少させることができる。すなわち、排気通路構造10は、中空二重管11を分割することなく、振れを抑制することができる。また、中空二重管11の両端にフランジ12b、13aを取り付けた後であっても、支持部材15を取り付けることができる。
【0030】
以上で本発明に係る排気通路構造10の実施形態についての説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。
【0031】
上記実施形態においては、支持部材15は周方向に約90度の間隔で4つ設けられていたが、支持部材15は約120度の間隔で3つでもよく、所定の間隔で4つ以上設けられてもよい。
【0032】
上記実施形態においては、突起部152は、その長手方向がベース部151の長手方向とほぼ平行であったが、必ずしも平行である必要はなく、例えば、直角であっても良い。直角の場合、下底側端部1522のベース部151と対向する面が平坦でもベース部151の長手方向の長さにより溶接や溶着の強度が確保できる。
【0033】
上記実施形態においては、ベース部151は矩形であったが、開口1121を被覆できる形状であれば、矩形に限られない。
【0034】
上記実施形態においては、開口1121は楕円形状であったが、支持部材15の突起部152を挿入できる形状であれば構わない。
【0035】
また、上記実施形態の突起部152の代わりにコイルバネを用いてもよい。
【0036】
上記実施形態においては、中空二重管11は、不図示のエンジン側と排気浄化装置20側それぞれにフランジ12(12a、12b)、フランジ13(13a、13b)で締結されているが、これに限らず、例えば、V―クランプなどにより締結されていても良い、
【0037】
また、上記実施形態においては、排気浄化装置20の下流側に接続される不図示のサイレンサーを搭載しているが、サイレンサーは搭載していなくても良い。
【0038】
また、上記実施形態において、中空二重管11の下流側端部114においては、ワイヤメッシュ14を用いて内管111を外管112に対して支持していたが、ワイヤメッシュ14に替えて開口1121と支持部材15を用いて内管111を外管112に対して支持してもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 :排気通路
10 :排気通路構造
11 :中空二重管
12、13 :フランジ
14 :ワイヤメッシュ
15 :支持部材
20 :排気浄化装置
111 :内管
112 :外管
151 :ベース部
152 :突起部
1121 :開口
S :間隙