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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111371
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】操舵支援装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20240809BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20240809BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20240809BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20240809BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D101:00
B62D113:00
B62D119:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015803
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105980
【弁理士】
【氏名又は名称】梁瀬 右司
(74)【代理人】
【識別番号】100121027
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 公一
(72)【発明者】
【氏名】井口 涼平
【テーマコード(参考)】
3D232
【Fターム(参考)】
3D232CC20
3D232DA03
3D232DA15
3D232DA23
3D232DA77
3D232DA84
3D232DA87
3D232DA90
3D232DC08
3D232DC33
3D232DC34
3D232DC38
3D232DD03
3D232DD17
3D232DE06
3D232EA01
3D232EB04
3D232EC24
3D232EC34
3D232GG01
(57)【要約】
【課題】操舵支援において、ユーザによる操舵介入の検出精度の向上、及び、操舵介入時における操舵支援のコントローラビリティを確保できるようにする。
【解決手段】駐車支援中にトルクセンサ13により検出される操舵トルクTに応じて舵角サーボ指令電流Scを制限する可変リミッタ25を備えるとともに、車側センサSによる車速情報を取得し該車速情報に基づき操舵に必要な必要操舵トルクを演算する必要操舵トルク演算部22を備え、駐車支援中のトルクセンサ13により検出される操舵トルクT1の大きさが所定値T1以上のときに、演算された必要操舵トルクに応じて、可変リミッタ25による動作サーボ指令電流Scの制限量を可変して緩和する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のステアリングに付与されるトルクを発生するモータと、前記ステアリングの操舵トルクを検出するトルク検出手段と、前記ステアリングの舵角を検出する舵角検出手段と、指示舵角に応じて前記モータを制御して、前記ステアリングの舵角を前記指示舵角に一致させるように前記モータに指令値を与えて操舵支援を行う操舵支援手段とを備える操舵支援装置であって、
前記トルク検出手段により検出される前記操舵トルクに応じて前記操舵支援手段による前記指令値を制限する制限手段と、
所定の外部情報を取得し該外部情報に基づき操舵に必要な必要操舵トルクを演算する演算手段とを備え、
前記制限手段は、前記操舵支援手段による操舵支援中における前記トルク検出手段により検出される前記操舵トルクが所定値以上のときに、前記演算手段により演算された必要操舵トルクに応じて、前記指令値の制限量を可変することを特徴とする操舵支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の操舵支援装置において、
前記トルク検出手段により検出される前記操舵トルクが、前記演算手段により演算される必要操舵トルクを超えるときに、前記操舵支援手段による前記操舵支援を停止させる操舵支援停止手段を更に備えることを特徴とする操舵支援装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の操舵支援装置において、
前記制限手段は、前記演算手段により演算される前記必要操舵トルクが大きいときに前記指令値の制限量を小さく可変することを特徴とする操舵支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車などの車両の操舵を支援する操舵支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両において、車両のユーザによる操舵を支援する操舵支援機能を搭載したものがある。具体例として、車両を駐車する場合における駐車支援を行う駐車支援機能がある。この駐車支援機能によると、例えば商業施設などの駐車場において、車両のユーザにより駐車可能な駐車枠(駐車位置の目標)が設定されたときに、車両が現在位置から目標の駐車位置までの目標の軌跡どおりに移動して駐車位置に駐車されるように、ステアリング操作などが自動で行われる。
【0003】
このような駐車支援機能によるステアリングの動作中に、ユーザがその動作を解除(終了)したい意思を示した場合、それを常に優先させる必要がある。ユーザによる解除意思が示される操作として例えばユーザによるハンドル操作がある。そして、このハンドル操作を検出する手法として、EPS(Electric Power Steering)システムに搭載されているトルクセンサの情報(トルクセンサ値)を用いる手法がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-142891号公報(段落0002-0004参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このように駐車支援等の操舵支援において、ユーザによる操舵介入の意思の判断を行う装置において、ユーザによる操舵介入がある場合であっても、ユーザの介入操舵トルクが小さくてもステアリングが切れるように操舵支援を行い、操舵支援のコントローラビリティを確保する必要性がある一方、駐車支援中にユーザによる操舵介入があった場合に、ユーザの操舵支援を優先するために操舵支援を停止するという必要性もあり、相反する2つの必要性を両立させなければならない。
【0006】
このとき、ステアリングのハンドル部分に静電センサを設け、ユーザがハンドルに触れたことを検知した後、ユーザによる操舵介入の意思があったと判断できるようにすることが考えられるが、静電センサを設ける分コストの上昇を招く。
【0007】
また、静電センサを新たに設けることなく既存のトルクセンサによる検出トルクからユーザによる操舵介入を判断することも考えられるが、ユーザの操舵介入により操舵トルクが上昇しても、操舵支援制御によって操舵トルクが直ぐに小さくなるように制御されてトルクセンサにより検出される操舵トルクが小さくなるため、ユーザによる操舵介入かあるかどうかを精度よく判断することが難しく、ユーザの操舵介入の意思をより精度の高く判断できる技術の開発が望まれている。
【0008】
この発明は、操舵支援において、ユーザによる操舵介入の検出精度の向上、及び、操舵介入時における操舵支援のコントローラビリティを確保できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するために、本発明の操舵支援装置は、車両のステアリングに付与されるトルクを発生するモータと、前記ステアリングの操舵トルクを検出するトルク検出手段と、前記ステアリングの舵角を検出する舵角検出手段と、指示舵角に応じて前記モータを制御して、前記ステアリングの舵角を前記指示舵角に一致させるように前記モータに指令値を与えて操舵支援を行う操舵支援手段とを備える操舵支援装置であって、前記トルク検出手段により検出される前記操舵トルクに応じて前記操舵支援手段による前記指令値を制限する制限手段と、所定の外部情報を取得し該外部情報に基づき操舵に必要な必要操舵トルクを演算する演算手段とを備え、前記制限手段は、前記操舵支援手段による操舵支援中における前記トルク検出手段により検出される前記操舵トルクが所定値以上のときに、前記演算手段により演算された必要操舵トルクに応じて、前記指令値の制限量を可変することを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、トルク検出手段により検出される操舵トルクに応じて操舵支援手段による指令値を制限する制限手段を備えるとともに、所定の外部情報を取得し該外部情報に基づき操舵に必要な必要操舵トルクを演算する演算手段を備え、操舵支援手段による操舵支援中にトルク検出手段により検出される操舵トルクが所定値以上のときに、演算手段により演算された必要操舵トルクに応じて、制限手段による指令値の制限量を可変する。
【0011】
そのため、ハンドル操舵時に軽い力で操舵できるようにする通常アシスト制御に加えて、指示舵角に実舵角が合うようにコントロールする舵角サーボ制御を実現することができる。そして、舵角サーボ制御により決まる指令電流に対して制限量を設定し、この制限量を可変することによって、通常アシスト制御を打ち消す方向に電流を発生し、これによりユーザが軽い力で操舵できる範囲、且つユーザの操舵介入を検出できるだけのトルクを発生させることができるように調整することができ、ユーザによる操舵介入があったかどうかを精度よく判断することが可能になり、操舵支援において、ユーザによる操舵介入の検出精度の向上を図るとともに、操舵介入時における操舵支援のコントローラビリティを確保することができる。
【0012】
また、前記トルク検出手段により検出される前記操舵トルクが、前記演算手段により演算される必要操舵トルクを超えるときに、前記操舵支援手段による前記操舵支援を停止させる操舵支援停止手段を更に備えるとよい。
【0013】
この場合、トルク検出手段により検出される操舵トルクが、演算手段により演算される必要操舵トルクを超えるときには、ユーザによる確実な操舵介入があったと判断できるため、操舵支援停止手段により操舵支援が停止されてユーザによる操舵介入を優先することができる。
【0014】
また、前記制限手段は、前記演算手段により演算される前記必要操舵トルクが大きいときに前記指令値の制限量を小さく可変するとよい。
【0015】
こうすると、操舵支援中の検出操舵トルクが所定値以上のときに、必要操舵トルクの大、小に応じて指令値の制限量を小、大に可変して緩和することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、操舵支援手段による操舵支援の制御において、ユーザによる操舵介入の検出精度を向上できるとともに、操舵介入時における操舵支援の利便性を確保することができユーザによる操舵介入の検出精度の向上、及び、操舵介入時における操舵支援のコントローラビリティを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る操舵支援装置が搭載された車両の操舵に関する構成を示す図である。
図2図1の操舵支援、特に駐車支援機能に関する構成を示すブロック図である。
図3図1の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る操舵支援装置を駐車支援に適用した一実施形態について、図1ないし図3を参照して詳細に説明する。
【0019】
<操舵構成>
図1に示すように、車両1には、電動パワーステアリング装置2が搭載されている。電動パワーステアリング装置(EPS:Electric Power Steering)2は、電動モータM及びステアリング3を含み、電動モータMが発生するトルクをステアリング3に付与することにより、車両1の操向用の車輪(例えば、左右の前輪)を転舵させる装置である。
【0020】
ステアリング3には、ハンドル(ステアリング)4、ステアリングギヤ機構5及びステアリングシャフト6が含まれる。
【0021】
ハンドル4は、例えば運転者によって車両1の操向のために回転操作されるステアリングホイールであり、車室内における運転席の前方に配設されている。
【0022】
ステアリングギヤ機構5は、たとえば、ラックアンドピニオン式のステアリングギヤを含む機構である。
【0023】
ステアリングシャフト6は、車室内外を貫通して設けられている。ステアリングシャフト6の上端部は、ハンドル4に連結されている。ステアリングシャフト6の下端部は、ステアリングギヤ機構5に連結されている。ステアリングギヤ機構5がラックアンドピニオン式のステアリングギヤを含む構成である場合、ステアリングシャフト6の下端部は、ステアリングギヤのピニオンに相対回転不能に連結されている。
【0024】
また、車両1には、EPSECU7が搭載されている。このEPSECU(Electronic Control Unit)7は、主として電動パワーステアリング装置2の電動モータMの制御を行うECU(電子制御ユニット)である。車両1には、各部を制御するため、EPSECU7以外に、図2に示す車載カメラを制御するカメラECU8など、複数のECUが備えられている。これらのECUは、CAN(Controller Area Network)通信プロトコルによる双方向通信が可能に接続されている。
【0025】
EPSECU7は、CPU及びメモリを含む構成のマイコン(マイクロコントローラユニット)10と、マイコン10からの電流指令値を受ける電流制御部11と、電流制御部11による指示電流を電圧に変換するHブリッジ回路からなるモータ駆動回路12とを備えている。
【0026】
マイコン10には、制御に必要な各種センサが接続されている。各種センサには、例えばハンドル操作時の操舵トルク及び舵角をそれぞれ検出するトルクセンサ13及び舵角センサ14が含まれる。なお、トルクセンサ13が、本発明における「トルク検出手段」に相当する。
【0027】
トルクセンサ13は、ステアリングシャフト6の途中部に介装されたトーションバー15に関連して設けられ、トーションバー15に生じる捩れの大きさ及び方向を操舵トルクとして検出し、その操舵トルクに応じた検出信号を出力する。
【0028】
舵角センサ14は、たとえば、ハンドル4の舵角(ステアリング3の舵角)の中点に対するハンドル4の舵角(絶対舵角)に応じた検出信号を出力する。舵角センサ14が検出する舵角は、例えば舵角中点からハンドル4が右側に回された状態で正の値をとり、左側に回された状態で負の値をとる。
【0029】
マイコン10は、各種センサの検出信号から取得した情報及び/または他のECUから入力される種々の情報などに基づいて指令電流値を設定し、指令電流値に相当する駆動電流を電圧に変換して電動モータMに供給するように、モータ駆動回路12に含まれるスイッチング素子のスイッチングを制御する。
【0030】
<駐車支援機能>
図2は、駐車支援機能に関する構成を示すブロック図である。
【0031】
車両1は、駐車支援機能(自動駐車機能)を有している。駐車支援機能のための機能処理部には、例えば周辺物体検知部、駐車エリア検知部、目標駐車位置設定部、自車位置推定部、駐車軌跡演算部、操舵制御部及びドライバ情報提供部が含まれる。これらの機能処理部のうち、EPSECU7は、操舵制御部の機能を司り、カメラECU8は、車載カメラにより撮影される周辺画像を処理するもので、周辺物体検知部、駐車エリア検知部、目標駐車位置設定部、自車位置推定部、駐車軌跡演算部及びドライバ情報提供部等の機能を司る。
【0032】
周辺物体検知部は、車載カメラにより撮影された画像情報から、車両1の周辺の物体を検知し、また、その物体の形状及び物体までの距離を含む情報(車両1の周辺の情報)を検知する。車載カメラとして、車両1には、車両1の前方を撮影するフロントカメラ、車両1の後方を撮影するバックカメラ及び車両1の左右を撮影するサイドカメラなどが設けられている。
【0033】
駐車エリア検知部は、周辺物体検知部により生成された周辺情報に基づいて、車両1の周辺で車両1を駐車可能な駐車エリアを複数検知する。
【0034】
目標駐車位置設定部は、駐車エリア検知部により検知された駐車エリアの中からユーザにより選択された駐車エリアにおける駐車位置の目標を設定する。
【0035】
自車位置推定部は、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)衛星からの測位信号をGNSSアンテナで受信し、GNSSアンテナが受信する測位信号の車速、操舵角度、前後Gによる自律航法の算出結果のどちらか、または組合せから車両1の現在位置(自車位置)を推定する。
【0036】
駐車軌跡演算部は、自車位置推定部により推定された自車位置から目標駐車位置設定部により設定された目標駐車位置までの車両1の目標軌跡を演算し、その目標軌跡に応じたステアリング3の舵角の目標値である指示舵角を設定する。この設定された指示舵角は、カメラECU8からEPSECU7に入力される。
【0037】
操舵制御部は、その指示舵角に基づいて、車両1の操舵を制御する。
【0038】
ドライバ情報提供部は、車両1の周辺の画像や駐車エリアをディスプレイに表示させる。ディスプレイは、運転者が視認可能な位置に配置されるものであればよく、例えばコンビネーションメータに組み込まれたマルチインフォメーションディスプレイである。駐車エリア検知部によって、車両1を駐車可能な駐車エリアが検知されると、ドライバ情報提供部は、その検知された駐車エリアを含む車両1の周辺の画像をディスプレイに表示させる。この画像が表示されているディスプレイ上で、ユーザによる駐車エリアの選択が行われる。
【0039】
駐車エリアの選択後、ディスプレイ上で駐車支援機能による駐車支援の実行が指示されると、駐車支援動作が開始される。
【0040】
EPSECU7のマイコン10は、プログラム処理によってソフトウエア的に実現される機能処理部として、アシスト制御部21、必要操舵トルク演算部22、舵角サーボ制御部23及ぶ舵角サーボ停止制御部24を有し、EPSECU7における間違った演算による誤作動を防止するための可変リミッタ25を有する。なお、マイコン10が、本発明における「操舵支援手段」及び「操舵支援停止手段」に相当する。
【0041】
アシスト制御部21は、トルクセンサ13により検出される操舵トルク(トルクセンサ13の検出信号から取得される操舵トルク)及びEPCECU7に接続された車速センサSにより検出される車両1の車速に応じたアシスト制御指令電流Saを演算する。具体的には、操舵トルクに対するアシスト制御指令電流Saの特性を定めたアシスト制御指令電流マップが複数の車速域のそれぞれに対して用意されており、アシスト制御部21は、車両1の車速に応じたアシスト制御指令電流マップを選択し、その選択したアシスト制御指令電流マップに従って、トルクセンサ13により検出される操舵トルクに応じたアシスト制御指令電流Saを演算する。なお、車速は、車速センサSにより検出されるものに限らず、他のECUからEPSECU7に送信されてもよい。
【0042】
必要操舵トルク演算部22は、所定の外部情報である車速センサSにより検出される車両1の車速に応じた必要操舵トルクを演算する。具体的には、車速に対する必要操舵トルクの特性を定めた必要操舵トルクマップが複数の車速域のそれぞれに対して用意されており、必要操舵トルク演算部22は、車速センサSにより検出される車速に応じた必要操舵トルクマップを選択し、その選択した必要操舵トルクマップに従って、車速センサSにより検出される車速に応じた必要操舵トルクを演算する。このような必要操舵トルク演算部22の機能が、本発明における「演算手段」に相当する。なお、この場合の車速も、車速センサSにより検出されるものに限らず、他のECUからEPSECU7に送信されてもよい。
【0043】
舵角サーボ制御部23は、舵角制御量を演算する。具体的には、舵角サーボ制御部23には、舵角センサ14により検出される実舵角及び実操舵速度が入力されるとともに、カメラECU8からカメラ画像を処理して得られる指示舵角が入力され、舵角センサ14により検出される舵角がカメラECU8からEPSECU7に入力される指示舵角と一致するように、舵角センサ14により検出される舵角と指示舵角との偏差に応じた舵角制御量を演算する。
【0044】
舵角サーボ停止制御部24は、駐車支援動作が行われている間、駐車支援を停止させるか否かを判断して、停止条件が成立したときに駐車支援を停止させる。具体的には、その停止判定には、トルクセンサ13により検出される操舵トルクが使用され、駐車支援中のトルクセンサ13による操舵トルクの大きさ(絶対値)が所定値以上か否かを判定し、操舵トルクの大きさが所定値を超えない範囲では、舵角サーボ制御部23を後述する可変リミッタ25に接続するように両者間に設けられた切換スイッチSWを切り換え、操舵トルクの大きさが所定値以上であるときには停止条件が成立してユーザによる操舵介入の意思があると判断し、舵角サーボ制御部23と可変リミッタ25との間の切換スイッチSWを“0”側に切り換え、駐車支援を停止すべく舵角サーボ制御部23を可変リミッタ25から切り離す。
【0045】
ここで、例えば図3に示すトルクセンサ13による操舵トルクTがT1以上或いは-T1以下であるとき、つまり操舵トルクTの大きさ(絶対値)が所定値T1以上(|T|≧T1)のときに切換スイッチSWが“0”側に切り換えられる。なお、図3の縦軸は可変リミッタ25による舵角サーボ指令電流Scを示し、横軸はトルクセンサ13により検出される操舵トルクTを示す。
【0046】
可変リミッタ25は、EPSECU7でも間違った演算による誤作動を防止するために設けられたものであり、駐車支援中にトルクセンサ13により検出される操舵トルクに応じた舵角サーボ指令電流Scを出力する。
【0047】
具体的には、可変リミッタ25には、図3に示すような駐車支援中のトルクセンサ13による操舵トルクTに応じた舵角サーボ指令電流マップが用意されており、このマップは、操舵トルクの大きさ(絶対値)が所定値T1を超えないとき、つまり-T1<T<tT1であるときには一定の舵角サーボ指令電流Scを出力し、操舵トルクTの大きさ(絶対値)が所定値T1以上(|T|≧T1)のときには、舵角サーボ停止制御部24により、舵角サーボ制御部23と可変リミッタ25との間の切換スイッチSWが“0”側に切り換えられる。このとき、図3中の破線に示すように、舵角サーボ指令電流Sc(本発明における「指令値」)を0に制限すべきところを、以下に説明するように、必要操舵トルク演算部22により演算される必要操舵トルクに応じて舵角サーボ指令電流Scの制限量を緩和する。
【0048】
すなわち、駐車支援中のトルクセンサ13による操舵トルクTの大きさ(絶対値)が所定値T1以上(|T|≧T1)のときに、そのときの車速センサSにより検出される車両1の車速に応じた必要操舵トルクマップが必要操舵トルク演算部22により選択され、選択された必要操舵トルクマップに従って、車速センサSにより検出される車速に応じた必要操舵トルクが演算されて可変リミッタ25に入力され、入力された必要操舵トルクに応じて舵角サーボ指令電流Scの制限量が、図3中の矢印に示すように、-Sc1からSc1(但し、“0”を含まない)の範囲内で可変される。
【0049】
具体的には、車速が大きいときには必要操舵トルクは小さく、車速が小さいときには必要操舵トルクは大きくなるので、必要操舵トルクが小さいときには舵角サーボ指令電流Scの制限量は大きく、つまり図3中の矢印方向に舵角サーボ指令電流ScがSc1または-Sc1側に増大される一方、必要操舵トルクが大きいときには舵角サーボ指令電流Scの制限量は小さく、つまり図3中の矢印方向と反対に舵角サーボ指令電流Scから0に近づく方向に低減される。なお、舵角サーボ指令電流Scの制限量の可変量は、必要操舵トルクの大きさに応じて、例えば2V,3V,4Vのように段階的に可変するのが望ましい。
【0050】
このように、駐車支援中のトルクセンサ13による操舵トルクTの大きさ(絶対値)が所定値T1以上のときに、可変リミッタ25により、必要操舵トルクに応じて舵角サーボ指令電流Scを0に制限するのではなく、必要操舵トルク演算部22により演算される必要操舵トルクの大きさに応じて、所定範囲(-Sc1~Sc1で、0ではない範囲)内で舵角サーボ指令電流Scの制限量を大小に可変して緩和することができるため、駐車支援中のトルクセンサ13により検出される操舵トルクの大きさが所定値以上であっても、操舵支援を完全に停止せずに緩い操舵支援を継続することができる。
【0051】
そのため、ユーザの操舵介入の意思に基づく操舵トルクの増大でないものを操舵介入によるものとの誤認を抑制することができ、ユーザによる操舵介入があったかどうかを精度よく判断することが可能になり、ユーザによる操舵介入の検出精度の向上を図るとともに、操舵介入時における操舵支援のコントローラビリティを確保することができる。
【0052】
ところで、駐車支援中にトルクセンサ13により検出される操舵トルクTが、必要操舵トルク演算部22により演算される必要操舵トルクを超える場合、想定される必要操舵トルクよりも大きな操舵トルクがユーザにより意図的に加えられたと判断できるため、このような場合にはユーザによる確実な操舵介入の意思があったと判断してもよいことから、可変リミッタ25の舵角サーボ指令電流Scを0に制限することにより駐車支援を停止し、ユーザによる操舵介入を優先することができる。
【0053】
そして、図2に示すように、マイコン10では、アシスト制御部21により演算されるアシスト制御指令電流Saと、可変リミッタ25により演算される舵角サーボ指令電流Scとが加算され、その加算値と実際のモータMのモータ電流値との偏差分が、電動モータMに供給される電流の目標値として電流制御部11に入力され、電流制御部11の出力がモータ駆動回路12により電圧に変換されて電動パワーステアリング装置2の電動モータMに印加され、電流目標値に相当する駆動電流が供給され、モータMによるアシストトルクが発生されて操舵支援が行われることになる。
【0054】
なお、ユーザによるハンドル4の操作(ハンドル操作)が行われておらず、トルクセンサ13により検出される操舵トルクが0であるときには、アシスト制御部21により演算されるアシスト指令電流は0となる。そのため、駐車支援中は、基本的には、舵角サーボ制御部23により演算される舵角制御量に基づく舵角サーボ指令電流Scが電流目標値とされて、ハンドル4の舵角が指示舵角に一致するように、モータ駆動回路12から電動モータMに駆動電流が供給される。
【0055】
したがって、上記した実施形態によれば、駐車支援中にトルクセンサ13により検出される操舵トルクTに応じて舵角サーボ指令電流Scを制限する可変リミッタ25を備えるとともに、車速センサSによる車速情報を取得し該車速情報に基づき操舵に必要な必要操舵トルクを演算する必要操舵トルク演算部22を備え、駐車支援中にトルクセンサ13により検出される操舵トルクTの大きさが所定値T1以上のときに、演算された必要操舵トルクに応じて、可変リミッタ25による舵角サーボ指令電流Scの制限量を可変するようにしたため、ハンドル操舵時に軽い力で操舵できるようにする通常アシスト制御に加えて、指示舵角に実舵角が合うようにコントロールする舵角サーボ制御を実現することができ、舵角サーボ制御により決まる舵角サーボ指令電流Scに対して制限量を設定し、この制限量を可変することによって、通常アシスト制御を打ち消す方向に電流を発生し、これによりユーザが軽い力で操舵できる範囲、且つユーザの操舵介入を検出できるだけのトルクを発生させることができるように調整することができ、その結果ユーザによる操舵介入があったかどうかを精度よく判断することが可能になり、駐車支援において、ユーザによる操舵介入の検出精度の向上を図るとともに、操舵介入時における操舵支援のコントローラビリティを確保することができる。
【0056】
また、トルクセンサ13により検出される操舵トルクが、必要操舵トルク演算部22により演算される必要操舵トルクを超えるときには、ユーザによる確実な操舵介入があったと判断できるため、可変リミッタ25の舵角サーボ指令電流Scを0に制限することにより駐車支援を停止して、ユーザによる操舵介入を優先することができる。
【0057】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行なうことが可能である。
【0058】
例えば、上記した実施形態では、操舵支援として駐車支援を行う場合について説明したが、操舵支援は上記した駐車支援に限るものではなく、その他の操舵支援についても本発明を同様に実施することができる。
【0059】
また、上記した実施形態では、指令値を可変リミッタ25による舵角サーボ指令電流とした場合について説明したが、指令値はこのような電流に限らず電圧であってもよい。
【0060】
また、上記した実施形態では、必要操舵トルクを演算するためお外部情報として車速センサSによる車速を用いたが、車両に搭載された横滑り防止装置の路面摩擦係数(路面μ)の検出手段による路面状態情報を用い、路面μが小さいときには指令値の制限量を増大し、大きいときには指令値の制限量を低減するように可変してもよい。また、上記のトルク検出手段により検出される操舵トルクが、演算手段により演算される必要操舵トルクを超えるときに、当該必要操舵トルクを超えたことに関する情報を記憶手段に記憶してもよい。この場合、整備工場などで当該記憶された情報を外部に取り出して、操舵トルクが検出されたことに起因する異常があったことなどを分析することが可能になる。
【0061】
そして、本発明は、広く自動車などの車両の操舵を支援する操舵支援装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 …車両
3 …ステアリング
10 …マイコン(操舵支援手段、操舵支援停止手段)
13 …トルクセンサ(トルク検出手段)
22 …必要操舵トルク演算部(演算手段)
25 …可変リミッタ(制限手段)
図1
図2
図3