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特開2024-111372空気の流れ検知装置ならびにそれを用いた映像・音響システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111372
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】空気の流れ検知装置ならびにそれを用いた映像・音響システム
(51)【国際特許分類】
   G01P 13/00 20060101AFI20240809BHJP
   G03B 21/56 20060101ALI20240809BHJP
   G03B 21/14 20060101ALI20240809BHJP
   G10K 15/04 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
G01P13/00 C
G03B21/56
G03B21/14 Z
G10K15/04 302Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015804
(22)【出願日】2023-02-06
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】591097702
【氏名又は名称】京都府
(74)【代理人】
【識別番号】100088948
【弁理士】
【氏名又は名称】間宮 武雄
(72)【発明者】
【氏名】徳本 幸紘
【テーマコード(参考)】
2F034
2H021
2K203
【Fターム(参考)】
2F034AA02
2F034CA04
2H021BA01
2K203GB53
2K203GB69
2K203GC22
2K203GC30
2K203KA36
(57)【要約】
【課題】微かな空気の流れでも確実に電気的に検知し、検出器の近くに居ない人にも報知することができ、その電気信号を二次的に使用して映像装置や音響機器などを動作させるといった利用方法を可能にする検知装置を提供する。
【解決手段】経糸と緯糸とを組み合わせて織られた薄布12に導電糸14を取り付けた布帛感知部材10と、布帛感知部材を、その上辺部を保持して固定し吊下する固定保持部材16と、導電糸を含む電子回路に一定の電圧を印加する電圧印加部および布帛感知部材が空気の流れに応じて揺れ動くときに導電糸における抵抗値の変化による電圧の変動を検出する電圧検出部を有するマイコンボード22と、マイコンボードに給電する電源を有するパソコン20とにより検知装置を構成した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内等における微かな空気の流れを検知する装置において、
経糸と緯糸とを組み合わせて織られた薄布の、その布平面内に導電糸を取り付けた布帛感知部材と、
この布帛感知部材の上辺部を保持して固定し布帛感知部材を吊下する固定保持部材と、
前記布帛感知部材の導電糸の両端に電気的に接続され導電糸を含む電子回路に一定の電圧を印加する電圧印加部と、
前記布帛感知部材が空気の流れに応じて揺れ動くときに導電糸における抵抗値の変化による電圧の変動を検出する電圧検出部と、
を備え、前記電圧検出部によって検出される電圧の変動から前記布帛感知部材の揺らぎを感知して空気の流れを検知するようにしたことを特徴とする空気の流れ検知装置。
【請求項2】
前記布帛感知部材の薄布は、縦方向および横方向に伸縮性を有するジョーゼットまたはシフォン生地であり、前記導電糸が薄布の左辺縁部から底辺縁部を経て右辺縁部にかけて織り込まれもしくは縫い付けられた請求項1に記載の空気の流れ検知装置。
【請求項3】
経糸と緯糸とを組み合わせて織られた薄布の、少なくとも一側辺縁部から底辺縁部にかけて導電糸を取り付けた布帛感知部材と、
この布帛感知部材の上辺部を保持して固定し布帛感知部材を吊下する固定保持部材と、
前記布帛感知部材の導電糸の両端に電気的に接続され導電糸を含む電子回路に一定の電圧を印加する電圧印加部と、
前記布帛感知部材が空気の流れに応じて揺れ動くときに導電糸における抵抗値の変化による電圧の変動を検出する電圧検出部と、
この電圧検出部によって検出される電圧をデジタル信号に変換するA/D変換部と、
このA/D変換部から出力されるデジタル信号を用いて、前記布帛感知部材の揺れ動きに即応した映像信号を作成する映像信号作成部と、
この映像信号作成部によって作成された映像信号により映像を表示媒体に表示する映像表示手段と、
を備え、空気の流れを映像として現出させることを特徴とする映像システム。
【請求項4】
前記布帛感知部材の薄布は、縦方向および横方向に伸縮性を有するジョーゼットまたはシフォン生地であり、前記導電糸が薄布の左辺縁部から底辺縁部を経て右辺縁部にかけて織り込まれもしくは縫い付けられた請求項3に記載の映像システム。
【請求項5】
前記映像表示手段は、映像を被照射体に投射する映像投影装置であり、前記被照射体が前記布帛感知部材自体である請求項3または請求項4に記載の映像システム。
【請求項6】
経糸と緯糸とを組み合わせて織られた薄布の、少なくとも一側辺縁部から底辺縁部にかけて導電糸を取り付けた布帛感知部材と、
この布帛感知部材の上辺部を保持して固定し布帛感知部材を吊下する固定保持部材と、
前記布帛感知部材の導電糸の両端に電気的に接続され導電糸を含む電子回路に一定の電圧を印加する電圧印加部と、
前記布帛感知部材が空気の流れに応じて揺れ動くときに導電糸における抵抗値の変化による電圧の変動を検出する電圧検出部と、
この電圧検出部によって検出される電圧をデジタル信号に変換するA/D変換部と、
このA/D変換部から出力されるデジタル信号を用いて、前記布帛感知部材の揺れ動きに即応した音響信号を作成する音響信号作成部と、
この音響信号作成部によって作成された音響信号により音響を発生する音響装置と、
を備え、空気の流れを音響として現出させることを特徴とする音響システム。
【請求項7】
前記布帛感知部材の薄布は、縦方向および横方向に伸縮性を有するジョーゼットまたはシフォン生地であり、前記導電糸が薄布の左辺縁部から底辺縁部を経て右辺縁部にかけて織り込まれもしくは縫い付けられた請求項6に記載の音響システム。
【請求項8】
経糸と緯糸とを組み合わせて織られた薄布の、少なくとも一側辺縁部から底辺縁部にかけて導電糸を取り付けた布帛感知部材と、
この布帛感知部材の上辺部を保持して固定し布帛感知部材を吊下する固定保持部材と、
前記布帛感知部材の導電糸の両端に電気的に接続され導電糸を含む電子回路に一定の電圧を印加する電圧印加部と、
前記布帛感知部材が空気の流れに応じて揺れ動くときに導電糸における抵抗値の変化による電圧の変動を検出する電圧検出部と、
この電圧検出部によって検出される電圧をデジタル信号に変換するA/D変換部と、
このA/D変換部から出力されるデジタル信号を用いて、前記布帛感知部材の揺れ動きに即応した映像信号を作成する映像信号作成部と、
この映像信号作成部によって作成された映像信号により映像を表示媒体に表示する映像表示手段と、
前記A/D変換部から出力されるデジタル信号を用いて、前記布帛感知部材の揺れ動きに即応した音響信号を作成する音響信号作成部と、
この音響信号作成部によって作成された音響信号により音響を発生する音響装置と、
を備え、空気の流れを映像および音響として現出させることを特徴とする映像・音響システム。
【請求項9】
前記布帛感知部材の薄布は、縦方向および横方向に伸縮性を有するジョーゼットまたはシフォン生地であり、前記導電糸が薄布の左辺縁部から底辺縁部を経て右辺縁部にかけて織り込まれもしくは縫い付けられた請求項8に記載の映像・音響システム。
【請求項10】
前記映像表示手段は、映像を被照射体に投射する映像投影装置であり、前記被照射体が前記布帛感知部材自体である請求項8または請求項9に記載の映像・音響システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物内等における微かな空気の流れを検知するために使用される空気の流れ検知装置、ならびに、その検知装置を用いて、空気の流れを映像として現出させ、また空気の流れを音響として現出させる映像・音響システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常の風力計では検出することができないような微かな空気の流れ(微風)を検出する検出器としては、防塵処理された矩形状の紙、例えば長手方向の寸法が幅方向の寸法の10倍程度である紙に、その幅方向の中央部における長手方向の中心線に沿った折り込み線を形成し、折り込み線によって二分された紙の各側部の一方に、等間隔でその側部における紙の側縁から折り込み線に達する切り込みを複数、それぞれ折り込み線に対して垂直に形成し、紙の各側部の他方に、各側部の一方に形成された複数本の切り込みとは長手方向における位置をずらして、等間隔でその側部における紙の側縁から折り込み線に達する切り込みを複数、それぞれ折り込み線に対して垂直に形成し、各側部において隣接する切り込み間に形成される紙片を、折り込み線に沿って隣接する紙片同士が相互に垂直状態となるように、折り込み線に沿って折り曲げた構成を有する微風検出器が提案されている。この微風検出器をクリーンルームの開口部の近辺に吊り下げておくことにより、クリーンルーム内に微風が進入すると、いずれの方向からの微風であっても、その微風がいずれかの紙片に衝突し、微風によって紙が確実に揺動することになり、クリーンルーム内への微風の進入を検出することができる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、風力に連動した光の揺らぎや音色を楽しむ鑑賞用具として、ガラス、磁気等で形成された釣鐘内にボタン電池やLED駆動回路などで構成され音センサを内蔵した電源を、釣鐘上端から紐で吊り下げて配置し、電源の出力を、多数の糸から構成された組紐や織紐の一部に導電糸を含んだ導電糸入り紐に接続し、この紐の導電糸に微小LEDチップを直接接続し、紐に振り子および短冊を吊り下げ、布からなる短冊を構成する縦糸および横糸の一部を規則的に導電繊維に置き換え織り込んで配線パターンを形成し、短冊における導電繊維の配線パターンによりLEDを動作させるようにLED電極と導電繊維を直接接続して構成された発光風鈴が提案されている。この発光風鈴は、風力により振り子が釣鐘の縁に衝突し、電源に内蔵された音センサが音を検知すると、電源の回路に連続またはパルス状の出力電圧が一定時間発生し、導電糸を通し紐および短冊に埋め込まれたLEDが一定時間点灯または点滅する、といったものである(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-134222号公報(第4-5頁、図1
【特許文献2】特開2012-24289号公報(第4-5頁、図1図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている微風検出器を使用すると、いずれの方向から微風が通流しても、微風を確実に検出することができるが、その検出は、微風による紙の揺動を目視することによって行われるものである。したがって、この微風検出器のような構成では、微風すなわち微かな空気の流れを電気的に検出し、検出器の近くに居ない人に報知したり、その電気信号を二次的に使用して何らかの機器やシステムを作動させたりする、といった利用の仕方はできない。
【0006】
また、特許文献2に開示されている発光風鈴は、風力により短冊と共に振り子が振れて釣鐘の縁に衝突した時に、その衝突音を音センサで検知し、電源回路に発生する出力電圧により、導電糸を通し紐および短冊に埋め込まれたLEDを点灯または点滅させる、といったものである。したがって、この発光風鈴は、振り子が僅かに振れても釣鐘の縁に衝突しない程度の微かな空気の流れでは全く動作しないし、振り子が釣鐘の縁に衝突した時の衝突音を音センサで検知するものであって、風力による短冊または振り子の振れを直接的に検知するものではない。また、この発光風鈴は、風力により振り子が振れて釣鐘の縁に衝突した時に、単に、その衝突音と共に紐および短冊に埋め込まれたLEDを点灯または点滅させるだけのものであり、演出的な効果はそれほど高くない。
【0007】
この発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、微かな空気の流れであっても確実にそれを電気的に検知し、検出器の近くに居ない人にも報知することができ、その電気信号を二次的に使用して映像装置や音響機器などを動作させる、といった利用方法を可能にする空気の流れ検知装置を提供することを目的とし、また、その空気の流れ検知装置の構成をシステムの一部として含み、微かな空気の流れでも電気的にかつ空気の流れを直接的に検知して動作し、高い演出的な効果を生み出すことができる映像・音響システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明では、微かな空気の流れを受けて揺れ動く薄布に導電糸を取り付け、その導電糸の両端に電圧を印加し、薄布が空気の流れに応じて揺れ動くときに導電糸における抵抗値の変化による電圧の変動を検出し、その電圧の変動から薄布の揺らぎを感知して空気の流れを検知する、といった技術的思想により上記目的を達成し、また、そのようにして得られる電気信号から映像信号や音響信号を作り出し、その映像信号や音響信号によって映像装置や音響機器を動作させ、空気の流れを映像や音響として現出させる、といった技術的思想により上記目的を達成した。
【0009】
すなわち、請求項1に係る発明は、建物内等における微かな空気の流れを検知する装置において、経糸と緯糸とを組み合わせて織られた薄布の、その布平面内に導電糸を取り付けた布帛感知部材と、この布帛感知部材の上辺部を保持して固定し布帛感知部材を吊下する固定保持部材と、前記布帛感知部材の導電糸の両端に電気的に接続され導電糸を含む電子回路に一定の電圧を印加する電圧印加部と、前記布帛感知部材が空気の流れに応じて揺れ動くときに導電糸における抵抗値の変化による電圧の変動を検出する電圧検出部とを備え、前記電圧検出部によって検出される電圧の変動から前記布帛感知部材の揺らぎを感知して空気の流れを検知するようにしたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の空気の流れ検知装置において、布帛感知部材の薄布として、縦方向および横方向に伸縮性を有するジョーゼットまたはシフォン生地を使用し、導電糸を薄布の左辺縁部から底辺縁部を経て右辺縁部にかけて織り込みもしくは縫い付けたことを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、経糸と緯糸とを組み合わせて織られた薄布の、その布平面内に導電糸を取り付けた布帛感知部材と、この布帛感知部材の上辺部を保持して固定し布帛感知部材を吊下する固定保持部材と、前記布帛感知部材の導電糸の両端に電気的に接続され導電糸を含む電子回路に一定の電圧を印加する電圧印加部と、前記布帛感知部材が空気の流れに応じて揺れ動くときに導電糸における抵抗値の変化による電圧の変動を検出する電圧検出部と(この項において以下、これら布帛感知部材と固定保持部材と電圧印加部と電圧検出部とを合わせて「空気の流れ検知装置部」という)、この電圧検出部によって検出される電圧をデジタル信号に変換するA/D変換部と、このA/D変換部から出力されるデジタル信号を用いて、前記布帛感知部材の揺れ動きに即応した映像信号を作成する映像信号作成部と、この映像信号作成部によって作成された映像信号により映像を表示媒体に表示する映像表示手段とを備えることにより、空気の流れを映像として現出させる映像システムを構成したことを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明は、空気の流れ検知装置部と、この空気の流れ検知装置部の電圧検出部によって検出される電圧をデジタル信号に変換するA/D変換部と、このA/D変換部から出力されるデジタル信号を用いて、前記空気の流れ検知装置部の布帛感知部材の揺れ動きに即応した音響信号を作成する音響信号作成部と、この音響信号作成部によって作成された音響信号により音響を発生する音響装置とを備えることにより、空気の流れを音響として現出させる音響システムを構成したことを特徴とする。
【0013】
請求項8に係る発明は、空気の流れ検知装置部と、この空気の流れ検知装置部の電圧検出部によって検出される電圧をデジタル信号に変換するA/D変換部と、このA/D変換部から出力されるデジタル信号を用いて、前記空気の流れ検知装置部の布帛感知部材の揺れ動きに即応した映像信号を作成する映像信号作成部と、この映像信号作成部によって作成された映像信号により映像を表示媒体に表示する映像表示手段と、前記A/D変換部から出力されるデジタル信号を用いて、前記空気の流れ検知装置部の布帛感知部材の揺れ動きに即応した音響信号を作成する音響信号作成部と、この音響信号作成部によって作成された音響信号により音響を発生する音響装置とを備えることにより、空気の流れを映像および音響として現出させる映像・音響システムを構成したことを特徴とする。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の映像システムにおいて、請求項7に係る発明は、請求項6に記載の音響システムにおいて、また、請求項9に係る発明は、請求項8に記載の映像・音響システムにおいて、それぞれ、布帛感知部材の薄布として、縦方向および横方向に伸縮性を有するジョーゼットまたはシフォン生地を使用し、導電糸を薄布の左辺縁部から底辺縁部を経て右辺縁部にかけて織り込みもしくは縫い付けたことを特徴とする。
【0015】
請求項5に係る発明は、請求項3または請求項4に記載の映像システムにおいて、また、請求項10に係る発明は、請求項8または請求項9に記載の映像・音響システムにおいて、それぞれ、映像表示手段として、映像を被照射体に投射する映像投影装置を使用し、前記被照射体を布帛感知部材自体としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明の空気の流れ検知装置においては、布帛感知部材の周囲に空気の流れが微かでも生じると、薄布で形成され上辺部を固定保持部材に保持されて吊下された布帛感知部材の布面が揺れ動く。布帛感知部材の導電糸の両端には、電圧印加部により電圧が印加されており、布帛感知部材の布面が揺れ動くと、導電糸における抵抗値が変化し、その抵抗値の変化が電圧検出部によって電圧の変動として検出される。この電圧検出部によって検出される電圧の変動から布帛感知部材の揺らぎが感知され、布帛感知部材の周囲に空気の流れが生じていることが検知される。
したがって、この空気の流れ検知装置を使用すると、微かな空気の流れであっても確実にそれを電気的に検知し、検知装置の近くに居ない人にも報知することができ、また、電気信号を二次的に使用して映像装置や音響機器などを動作させる、といった利用方法を可能にする。
【0017】
請求項2に係る発明の空気の流れ検知装置では、縦方向および横方向に伸縮性を有するジョーゼットまたはシフォン生地を布帛感知部材の薄布として使用しているので、微かな空気の流れであってもより確実に布帛感知部材の布面が揺れ動き、微かな空気の流れをより確実に検知することができる。また、導電糸が薄布の左辺縁部から底辺縁部を経て右辺縁部にかけて織り込まれもしくは縫い付けられていることにより、布帛感知部材の薄布全体にわたって各部の揺らぎを感知することができる。
【0018】
請求項3に係る発明の映像システムにおいては、また、請求項6に係る発明の音響システムにおいては、さらにまた、請求項8に係る発明の映像・音響システムにおいては、布帛感知部材の周囲に空気の流れが微かでも生じると、薄布で形成され上辺部を固定保持部材に保持されて吊下された布帛感知部材の布面が揺れ動き、その揺れ動く様子は、空気の流れの強さや向きが僅かに変化するだけでも変化し、不規則に絶えず変化することになる。布帛感知部材の導電糸の両端には、電圧印加部により電圧が印加されており、布帛感知部材の布面が揺れ動くと、導電糸における抵抗値が変化し、その抵抗値の変化が電圧検出部によって電圧の変動として検出される。電圧検出部によって検出される電圧はA/D変換部によりデジタル信号に変換され、映像信号作成部において、デジタル信号を用いて布帛感知部材の揺れ動きに即応した映像信号が作成され、また、音響信号作成部において、デジタル信号を用いて布帛感知部材の揺れ動きに即応した音響信号が作成される。そして、映像信号作成部によって作成された映像信号により映像表示手段が作動させられ、映像が表示媒体に表示され、また、音響信号作成部によって作成された音響信号により音響装置が作動させられ、音響装置から音響を発生する。このようにして、空気の流れが映像や音響として現出することになるが、上記したように布帛感知部材の布面は不規則に絶えず変化するので、空気の流れに感応した変化に富む映像や音響が作り出される。
したがって、請求項3、請求項6および請求項8に係る各発明によると、微かな空気の流れでも電気的にかつ空気の流れを直接的に検知して動作し高い演出的な効果を生み出すことができる映像システムや音響システム、映像・音響システムを提供することができる。
【0019】
請求項4に係る発明の映像システムでは、また、請求項7に係る発明の音響システムでは、さらにまた、請求項9に係る発明の映像・音響システムでは、縦方向および横方向に伸縮性を有するジョーゼットまたはシフォン生地を布帛感知部材の薄布として使用しているので、微かな空気の流れであってもより高い感度で布帛感知部材の布面が揺れ動き、また、布帛感知部材の布面がより大きく揺らぐことになる。そして、導電糸が薄布の左辺縁部から底辺縁部を経て右辺縁部にかけて織り込まれもしくは縫い付けられていることにより、布帛感知部材の薄布全体にわたって各部の揺らぎを感知することができる。これにより、請求項3、請求項6および請求項8に係る各発明の上記効果が確実に奏される。
【0020】
請求項5に係る発明の映像システムでは、また、請求項10に係る発明の映像・音響システムでは、微かな空気の流れに感応して布帛感知部材の薄布が揺れ動くとともに、その揺れ動く布帛感知部材自体に向けて映像投影装置から、空気の流れに感応して変化する映像が投射されるので、布帛感知部材の揺らぎと映像の変化がシンクロナイズ(同時化)し、あたかも布帛感知部材が揺れ動くことによって映像の変化を起こしているような視覚効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】この発明の実施形態の1例を示し、空気の流れ検知装置の構成を示す概略図である。
図2図1に示した空気の流れ検知装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
図3図1に示した空気の流れ検知装置の布帛感知部材を構成する薄布への導電糸の取付け位置を示す図であって、(a)~(c)は、図1に示したものとはそれぞれ異なる例を示す概略平面図である。
図4図1に示した空気の流れ検知装置において、構成要素の1つである布帛感知部材が揺れ動くときに生じる電圧の変動を電圧検出部によって検出する意味合いを説明するための図である。
図5図1に示した空気の流れ検知装置を使用し、布帛感知部材の薄布が揺れ動くときの、その揺れ動きの大きさや揺らぎ方の違いにより、電圧検出部で検出される電圧が変動する、といったことを検証するために行った実験の方法を説明するための概略平面図である。
図6図4に示した方法での実験において、風力が相対的に弱く布帛感知部材の薄布の揺れ動きが小さいときの電圧の変動を示すグラフである。
図7図4に示した方法での実験において、風力が相対的に中くらいで布帛感知部材の薄布の揺れ動きが中程度であるときの電圧の変動を示すグラフである。
図8図4に示した方法での実験において、風力が相対的強く布帛感知部材の薄布の揺れ動きが激しいときの電圧の変動を示すグラフである。
図9】この発明の実施形態の1例を示し、図1に示した空気の流れ検知装置を用いた映像・音響システムの構成を示す概略図である。
図10図5に示した映像・音響システムの構成の1例を示す機能ブロック図である。
図11図5に示した映像・音響システムにおける動作の流れを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の最良の実施形態について図面を参照しながら説明する。
空気の流れ検知装置は、建物内等における微かな空気の流れを検知するためのものであり、図1に概略構成を示すように、微かな空気の流れによっても揺れ動く布帛感知部材10を備えている。
【0023】
布帛感知部材10は、経糸と緯糸とを組み合わせて織られた薄布12に、その左辺縁部から底辺縁部を経て右辺縁部にかけて導電糸14を取り付けた構成を有している。薄布12への導電糸14の取付け方法としては、薄布12の織り工程で導電糸を織り込んだり、薄布12に後から導電糸14を手で縫い付けたり貼り付けたり留め付けたりするなど、特に限定されない。薄布12としては、経糸および緯糸にそれぞれ強撚糸を用いて製織され縦方向および横方向に伸縮性を有しシャリ感のあるジョーゼットやシフォン生地が好適に使用されるが、そのほか、緯糸に強撚糸を用いて製織し精練してシボ加工した丹後ちりめん、コットンボイル、オーガンジーなど、微かな空気の流れでも揺れ動くような薄くて軽い生地であれば使用し得る。布帛感知部材10は、水平方向に固設された棹状の固定保持部材16に上辺部を保持して固定され、上辺部を除いて自然に揺れ動くように固定保持部材16によって吊下されている。布帛感知部材10の導電糸14の両端には、リード線18が電気的に接続されている。
【0024】
なお、布帛感知部材10の薄布12への導電糸14は、薄布12の左辺縁部から底辺縁部を経て右辺縁部にかけた位置に取り付けるのが最も好ましいが、例えば、図3の(a)に示すように、薄布12の底辺縁部および右辺縁部に導電糸14を取り付けたり、同図(b)に示すように、薄布12の左辺縁部から底辺縁部を経て右下角部から斜め方向に左上角部にかけた位置に導電糸14を取り付けたり、同図(c)に示すように、薄布12の左上角部から斜め方向に右下角部まで、右下角部で折り返して左上角部に向けて斜め方向に導電糸14を取り付けたりするなどしてもよい。
【0025】
また、空気の流れ検知装置は、装置全体の動作をプログラム制御するパーソナルコンピュータ(パソコン)20を備え、パソコン20と布帛感知部材10との間に介在しリード線18が導かれたマイコンボード22を備えている。図2に示すように、パソコン20は、マイコンボード22に給電する電源24を有している。マイコンボード22には、布帛感知部材10の導電糸14を含む電子回路に一定の電圧を印加する電圧印加部26、電子回路内で導電糸14に直列に接続された抵抗器28、および、電子回路の電圧を検出する電圧検出部30が組み込まれている。電圧検出部30は、布帛感知部材10が空気の流れに応じて揺れ動くときに導電糸14における抵抗値の変化による電圧の変動を検出する。この意味合いについて、具体的に次に説明する。
【0026】
図4に示すように、導電糸14にかかる電圧をE1、抵抗器28にかかる電圧をE2とし、導電糸14の抵抗値をR1、抵抗器28の抵抗値をR2=220Ωとして、電圧印加部26から電子回路にVcc=5Vの一定の電圧を印加する。このとき、E2=Vcc-E1、E1=I1(電流)・R1=〔Vcc/(R1+R2)〕・R1であるから、E2=Vcc-〔Vcc/(R1+R2)〕・R1=5-〔5/(R1+220)〕・R1となる。この式より、導電糸14の抵抗値R1が変化すると、抵抗器28にかかる電圧E2が変動することが分かる。そして、導電糸14の抵抗値R1の変化は、布帛感知部材10が揺れ動くことによって生じる。したがって、電圧検出部30により電圧E2の変動を検出すれば、布帛感知部材10が空気の流れに応じて揺れ動き導電糸14の抵抗値R1が変化する状態を検知することができる。換言すると、電圧検出部30によって検出される電圧の変動は、布帛感知部材10の揺らぎと同期している。そこで、この空気の流れ検知装置では、電圧検出部30によって検出される電圧の変動から布帛感知部材10の揺らぎを感知して空気の流れを検知するようにしている。
【0027】
次に、布帛感知部材10の薄布12に当たる風の強さ(風力)によって布帛感知部材10の揺れ動きの大きさや揺らぎ方が違ってくるが、電圧検出部30で検出される電圧が布帛感知部材10の揺れ動きの違いによって変動することを検証するために行った実験について説明する。
【0028】
実験は、図5に概略平面図を示すような実験設備を使用して行った。布帛感知部材10の薄布12にはジョーゼット生地を用い、幅が1.2mで縦方向の長さが2mである薄布12の裾が床面に触れないような高さ位置に固定保持部材16を水平姿勢で固定し、固定保持部材16に布帛感知部材10を吊下した。布帛感知部材10の手前側に2枚のパネル32、32を布帛感知部材10と平行に直立させた。布帛感知部材10からパネル32までの距離は、a=2.2mとし、2枚のパネル32、32は、それらを直列に、かつ、対向する側辺縁部間に距離bを設けるように配置した。そして、パネル32の手前側の、c=22cmの位置に送風機34を設置し、送風機34の位置からパネル32、32間の間隙を通して布帛感知部材10を臨むようにそれらを配置した。布帛感知部材10から後方の壁面までの距離d=1.1mであった。また、布帛感知部材10の薄布12の中央位置における風量および風速を計測するための風量・風速計36を用意した。
【0029】
実験操作は、まず、送風機34を停止させた状態(無風)で、150秒間、電圧検出部30により電子回路の電圧(上記した電圧E2)を計測するととともに、風量・風速計36により風量および風速を計測し(操作A)、次に、送風機34を作動させ、パネル32間の距離bを10cmとし、150秒間、送風機34からパネル32間の間隙を通して弱風を布帛感知部材10に当て、電圧検出部30により電子回路の電圧を計測するととともに、風量・風速計36により風量および風速を計測し(操作B1)、また、送風機34を作動させた状態で、パネル32間の距離bを20cmに変え、150秒間、送風機34からパネル32間の間隙を通して弱風を布帛感知部材10に当て、電圧検出部30により電子回路の電圧を計測するととともに、風量・風速計36により風量および風速を計測し(操作B2)、最後に、送風機34を作動させた状態で、送風機34の前方位置からパネル32、32を取り除き(パネル無し)、150秒間、送風機34から直接に弱風を布帛感知部材10に当て、電圧検出部30により電子回路の電圧を計測するととともに、風量・風速計36により風量および風速を計測する(操作B3)、といった方法により行った。そして、マイコンボード22の電圧検出部30によって検出された電圧をパソコン20で記録した。また、風量・風速計36によって計測された風量および風速は、その平均値を記録した。
【0030】
実験結果は、操作Aにおける電圧を基準として、その基準値に対する電圧の比で示すようにした。これは、無風の状態でも布帛感知部材10が静止しているときの薄布12の面形状によって基準値も多少変動するため、電圧の変動の度合いを基準値に対する比により評価しようとしたものである。また、電圧の基準値に対する比のばらつきを数1の式により算出した。式中のnはデータ数である。
【0031】
【数1】
【0032】
実験の結果を表1に示す。また、操作Aおよび操作B1における電圧の比の変動を示すグラフを図6に、操作Aおよび操作B2における電圧の比の変動を示すグラフを図7に、操作Aおよび操作B3における電圧の比の変動を示すグラフを図8にそれぞれ示す。
【0033】
【表1】
【0034】
操作A→B1→B2→B3の順に、布帛感知部材10に及ぼす風力が大きくなり、すなわち、風量・風速計36によって計測された風量および風速が大きくなり、それに従って布帛感知部材10の揺らぎが小さい状態から中程度となりさらに大きくなることが観察された。そして、表1および図6図8に示した結果から分かるように、布帛感知部材10の揺らぎが大きくなるのに従って、電圧の基準値に対する比が小さくなり(数値1.00との差が大きくなり)、すなわち、電圧検出部30によって計測された電圧の値が基準値に対して大きく変動することになり、また、電圧の基準値に対する比のばらつきが大きくなり、すなわち、電圧検出部30によって計測された電圧の値が大きく変動することになる。また、表1および図6に示した結果から、操作B1におけるように、風量・風速計36によって計測することができないほどの少ない風量であっても、僅かな風速があれば、電圧検出部30で電圧を計測することにより布帛感知部材10の揺らぎを感知することができることが分かった。
【0035】
この空気の流れ検知装置を使用すると、上記したとおり、電圧検出部30によって電子回路の電圧を検出することにより、その検出された電圧の変動から布帛感知部材10の揺らぎを感知することができ、布帛感知部材10の周囲に空気の流れが生じていることを検知することができる。また、空気の流れが僅かでもあれば、電圧検出部30で電圧を計測することにより、それを検知することができる。布帛感知部材10の揺らぎの感知による空気の流れの検知は、アナログ信号(電圧値)を用いて行ってもよいし、アナログ信号をデジタル信号に変換しデジタル信号を用いて行うようにしてもよい。
【0036】
この空気の流れ検知装置は、パソコン20から外部機器38に電気信号を出力することにより、種々の用途・目的で利用することができる。例えば、後述するように、電気信号をデジタル信号に変換し、デジタル信号から映像信号や音響信号を作成して、それらの信号を映像装置や音響装置に出力し、空気の流れを映像や音響として現出させる、といった利用方法が考えられる。もう少し具体的に説明すると、映像投影装置(プロジェクタ)により、空気の流れに即応した映像をスクリーン等に投射したり、空気の流れに応じて映像を加工しそれをスクリーン等に投射したりする。また、空気の流れに即応した音響をスピーカから発生したり、空気の流れを風鈴音に変えてそれをスピーカから流したり、空気の流れに応じてシンセサイザで音を作り出したりする。さらに、空気の流れに即応して、単純にLED照明の明るさやスピーカの音量を変化させたりすることもできる。そのほか、布帛感知部材10の薄布12に絵模様を描出するなどして布帛感知部材10をオーナメントとして室内に設置しておき、電圧検出部30によって検出された電圧を監視機器でモニタリングし、空調装置による室内空気の循環が正常に行われているかどうかを確認する、といったように空気の流れ検知装置をセンシング装置として用いたり、電圧検出部30によって検出される電圧が一定時間以上にわたって一定の電圧(しきい値)を一度も超えないときに、要介護者の動きがないとして報知する、といったように介護システムに利用したり、夜間に電圧検出部30によって一定以上の電圧が検出されたときにライトが点灯する、といったように防犯システムに利用したり、養蚕業において蚕室内の空気の流れを管理するのに使用したりするなど、種々の用途・利用方法が考えられる。
【0037】
次に、上記した空気の流れ検知装置を構成の一部とする映像・音響システムについて説明する。
図9に示すように、この映像・音響システムは、上記した空気の流れ検知装置の構成要素であるところの、薄布12に導電糸14を取り付けた布帛感知部材10、固定保持部材16、パソコン40およびマイコンボード42を備えているほか、パソコン40に接続された映像投影装置(プロジェクタ)44および音響装置(スピーカ)46を備えている。なお、図9および図10において、図1および図2で使用した符号と同一の符号を付した各部材は、図1および図2に関して説明した各部材と同一機能を有するものである。また、図9および図10には、プロジェクタ44およびスピーカ46をパソコン40に接続して構成された映像・音響システムを示しているが、プロジェクタ44のみをパソコン40に接続して構成された映像システムとすることができるし、スピーカ46のみをパソコン40に接続して構成された音響システムとすることもできる。
【0038】
図10に示すように、装置全体の動作をプログラム制御するパソコン40は、その電源24からマイコンボード42に給電する。マイコンボード42には、布帛感知部材10の導電糸14を含む電子回路に一定の電圧を印加する電圧印加部26、電子回路内で導電糸14に直列に接続された抵抗器28、および、電子回路の電圧を検出する電圧検出部30が組み込まれているほか、電圧検出部30によって検出された電圧値(アナログ信号)をデジタル信号に変換するA/D変換部48を具備している。パソコン40では、A/D変換部48から出力されるデジタル信号を用いて、布帛感知部材10の揺れ動きに即応した映像信号および音響信号が作られる。このために、図示例では映像用パラメータ演算部50および映像信号作成部52ならびに音響用パラメータ演算部54および音響信号作成部56が、パソコン40の機能として備わっている。パソコン40に入力されるデジタル信号(デジタル値)から映像信号を作成する具体例について、次に説明する。
【0039】
マイコンボード42においてA/D変換部48により、Vcc=5Vの電圧(アナログ値)が1,024分割されて0~1,023のデジタル値に変換され、そのデジタル信号がパソコン40の映像用パラメータ演算部50に入力される。映像用パラメータ演算部50では、画像を三原色R(赤)、G(緑)、B(青)で最も濃い色から白まで0~255の256階調で表現することにして、
パラメータ=〔(Dmax-Dt)/(Dmax-Dmin)〕×255
の式によりパラメータが算出される。式中、Dtは、マイコンボード42からパソコン40に送信されるデジタル信号値である。ここで、電圧検出部30によって検出される抵抗器28にかかる電圧E2は、布帛感知部材10が静止して導電糸14の抵抗値R1が最も小さいときに最も大きくなり、布帛感知部材10が激しく揺れ動いて導電糸14の抵抗値R1が最も大きくなるときに最も小さくなる(図4および同図に関する上記説明を参照)ことを踏まえ、式中のDmaxは、布帛感知部材10が静止した状態においてデジタル信号値Dtが上回ることがない数値としてその値を設定し、Dminは、布帛感知部材10が激しく揺れ動いてもデジタル信号値Dtが下回ることがない数値としてその値を設定する。DmaxおよびDminは、Dmax≧Dt≧Dminとなるように、オペレータがそれらの値を適宜設定しておくようにする。
【0040】
布帛感知部材10が静止してDt=Dmaxとなったときは、上記式よりパラメータの値が0になり、映像信号作成部52におけるR,G,B表示器58に(R,G,B)=(0,0,0)が入力され、黒を表示する映像信号が作成される。一方、布帛感知部材10が激しく揺れ動いてDt=Dminとなったときは、上記式よりパラメータの値が255になり、映像信号作成部52におけるR,G,B表示器58に(R,G,B)=(255,255,255)が入力され、白を表示する映像信号が作成される。また、Dmax>Dt>Dminとなるときは、パラメータの値が1~254になり、映像信号作成部52におけるR,G,B表示器58に(R,G,B)=(1,1,1)~(254、254,254)が入力され、黒から白までの中間の色を表示する映像信号が作成される。また、さらにパラメータを演算して、R,G,Bにそれぞれ異なる数値を適用するようにすることもでき、256×256×256=16,777,216色の映像信号を作成することも可能である。このようにして、布帛感知部材10の揺らぎ、したがって布帛感知部材10を揺れ動かす空気の流れに即応して画面の色を刻々と変化させる映像信号が作られる。以上の一連の作業は、パソコン20に内蔵されたプログラミングソフトにより実行される。
【0041】
また、映像信号を作成する別の方法として、空気の流れに応じてアニメーション(動画)、例えば炎が燃えさかる映像や桜の花びらが舞い落ちる映像に変化を加えた映像信号を作成する例について説明する。
映像用パラメータ演算部において、パラメータ=Dtmax-Dtminの式によりパラメータを算出する。式中のDtmaxは、一定時間内にマイコンボード42からパソコン40に送信されるデジタル信号値の最大値であり、Dtminは、一定時間内にマイコンボード42からパソコン40に送信されるデジタル信号値の最小値である。そして、演算されたパラメータの値を、炎や桜の花びらのアニメーションのパラメータ(風速、落下早さ、ノイズ等)となるように適当な演算を行うようにする。映像信号作成部では、演算されたパラメータを用いて、記憶部から読み出されるアニメーションの映像データを加工し、例えば、空気の流れが大きくなるほど、したがって布帛感知部材10の揺らぎが激しくなるほど、炎が大きくなりその揺らぎも激しくなるような映像表現、また、舞い落ちる桜の花びらの枚数が多くなりその花びらが横方向に流されるような映像表現をするための映像信号を作成する。
【0042】
なお、上記した映像信号の作成方法は1つの例であり、電圧検出部30によって検出された電圧をA/D変換したデジタル信号から、種々のアニメーション映像やアプリケーションなどを用いて様々な映像信号を作り出すようにすればよい。
【0043】
パソコン40で作成された映像信号Spは、パソコン40から出力され映像投影装置(プロジェクタ)44へ送信され、プロジェクタ44を駆動制御する。そして、プロジェクタ44からスクリーンや壁面などに、空気の流れに感応した布帛感知部材10の揺らぎに即応して刻々と変化する映像が投射され映し出される。この場合において、プロジェクタ44から、空気の流れに感応して揺れ動く布帛感知部材10自体に向けて映像を投射するようにしたときは、布帛感知部材10の揺らぎと映像の変化がシンクロナイズ(同時化)し、あたかも布帛感知部材10が揺れ動くことによって映像の変化を起こしているような視覚効果が得られる。なお、映像装置としては、プロジェクタに限らずパソコンモニタや大型ビジョンなどを使用するようにしてもよい。
【0044】
パソコン40に入力されるデジタル信号から音響信号を作成するときも、映像信号の作成と同様に、音響用パラメータ演算部54でパラメータが算出され、音響信号作成部56において、演算されたパラメータを用いて音響信号が作成される。例えば、音の三要素である音の大きさ、音程(音の高さ)および音色をそれぞれ何段階かで表現することにして、デジタル信号からパラメータを演算し、その演算されたパラメータを用いて、布帛感知部材10の揺らぎ、したがって布帛感知部材10を揺れ動かす空気の流れに即応して音の大きさや高さ、音色を刻々と変化させる音響信号を作り出すようにする。そして、パソコン40で作成された音響信号Saを音響装置(スピーカ)46へ送信し、スピーカ46を駆動制御して、空気の流れに感応した布帛感知部材10の揺らぎに即応して刻々と変化する音響をスピーカ46から発生する。
【0045】
以上説明した映像・音響システムにおける一連の動作・作業を説明するフローチャートを図11に示した。
【産業上の利用可能性】
【0046】
この発明に係る空気の流れ検知装置は、微かな空気の流れでも検知することができるので、空気の流れを映像や音響として現出させる映像・音響システムにおいて利用することができるほか、空調システムや介護システム、防犯システムなど、種々の産業分野で利用することができる。また、その空気の流れ検知装置を用いた映像・音響システムは、高い演出的な効果を生み出すことができるので、インテリア、店舗装飾、アートイベント、展示会等における空間演出などに利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
10 布帛感知部材
12 薄布
14 導電糸
16 固定保持部材
20、40 パーソナルコンピュータ
22、42 マイコンボード
24 電源
26 電圧印加部
28 抵抗器
30 電圧検出部
44 映像投影装置(プロジェクタ)
46 音響装置(スピーカ)
48 A/D変換部
50 映像用パラメータ演算部
52 映像信号作成部
54 音響用パラメータ演算部
56 音響信号作成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11