(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111375
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】車両用ウィンドシールドモール周辺構造
(51)【国際特許分類】
B60R 13/04 20060101AFI20240809BHJP
【FI】
B60R13/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015809
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】安田 貴裕
【テーマコード(参考)】
3D023
【Fターム(参考)】
3D023AA01
3D023AB01
3D023AC26
3D023AD27
(57)【要約】
【課題】簡便な構造でウィンドシールドモールとフロントピラーとの間の空間を流れる水が滴下することで発生する打音を防ぐ。
【解決手段】車両のフロントピラー104を形成する車体パネル112と、ウィンドシールド108の縁に沿って取り付けられたウィンドシールドモール106と、ピラーウィンドウ116の縁に沿って取り付けられたピラーガラスモール114とを備えた車両用ウィンドシールドモール周辺構造100において、ウィンドシールドモール106は、ウィンドシールド108の縁に沿って取り付けられた本体106Aと、本体106Aから延びてピラーガラスモール114に到達しフロントピラー104との間に空間120を形成しているリップ部106Bとを有し、ウィンドシールドモール106の下端には、下降しながら空間120に突出しその中央120Aを覆う突起形状部122が形成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロントピラーを形成する車体パネルと、
前記フロントピラーの外側に設置されウィンドシールドの縁に沿って取り付けられたウィンドシールドモールと、
前記ウィンドシールドモールの後側に設置されピラーウィンドウの縁に沿って取り付けられたピラーガラスモールとを備えた車両用ウィンドシールドモール周辺構造において、
前記ウィンドシールドモールは、
前記ウィンドシールドの縁に沿って取り付けられた本体と、
前記本体から延びて前記ピラーガラスモールに到達し前記フロントピラーとの間に所定の空間を形成しているリップ部とを有し、
前記ウィンドシールドモールの下端には、先端ほど下降しながら前記空間に突出し該空間の少なくとも中央を覆う突起形状部が形成されていることを特徴とする車両用ウィンドシールドモール周辺構造。
【請求項2】
前記ウィンドシールドモールの突起形状部は、前記フロントピラーの長手方向に沿って見たとき、前記ウィンドシールドモールの本体および前記ピラーガラスモールに重なっていて、これにより前記空間の全体を覆い、
前記突起形状部の先端は、前記フロントピラーの下方において前記車体パネルに近接していることを特徴とする請求項1に記載の車両用ウィンドシールドモール周辺構造。
【請求項3】
前記車体パネルは、
下方へゆくほど車外側に張り出す第1傾斜部と、
前記第1傾斜部からさらに下方へゆくほど車内側に窪んで該第1傾斜部との境界に稜線を形成する第2傾斜部とを有し、
前記ウィンドシールドモールの突起形状部を延長すると、前記稜線または前記第1傾斜部に交差することを特徴とする請求項2に記載の車両用ウィンドシールドモール周辺構造。
【請求項4】
前記車体パネルに形成された稜線は、上方に凸の曲線を描いていて、該曲線の頂部と前記ウィンドシールドモールの突起形状部の先端は、車両側面視で実質的に同じ位置にあることを特徴とする請求項3に記載の車両用ウィンドシールドモール周辺構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ウィンドシールドモール周辺構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のウインドシールドの縁に沿って取り付けられたウインドシールドモールは、フロントピラーの外側に設置されている。ウインドシールドモールは、その構造上、フロントピラーとの間に上下方向に延びる空間を形成し、ここに雨水などの水を流すことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の空間を流れた水が、ウインドシールドモールの下方に位置するフェンダライニング等に滴下して打音が発生するという問題が生じる。
【0005】
そこでウインドシールドモールの下端に止水機能を有する、例えば特許文献1に記載の接着剤やあるいは発泡剤を塗布し、それよりも下側に水が流れないようにする対策が考えられる。しかしながら、かかる方法によれば、接着剤や発泡剤の塗布の位置や量などの設定や調整が必要になり、コストや工数が増大してしまう。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑み、簡便な構造でウィンドシールドモールとフロントピラーとの間の空間を流れる水が滴下することで発生する打音を防ぐことが可能な車両用ウィンドシールドモール周辺構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の代表的な構成は、車両のフロントピラーを形成する車体パネルと、フロントピラーの外側に設置されウィンドシールドの縁に沿って取り付けられたウィンドシールドモールと、ウィンドシールドモールの後側に設置されピラーウィンドウの縁に沿って取り付けられたピラーガラスモールとを備えた車両用ウィンドシールドモール周辺構造において、ウィンドシールドモールは、ウィンドシールドの縁に沿って取り付けられた本体と、本体から延びてピラーガラスモールに到達しフロントピラーとの間に所定の空間を形成しているリップ部とを有し、ウィンドシールドモールの下端には、先端ほど下降しながら上記の空間に突出しその空間の少なくとも中央を覆う突起形状部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡便な構造でウィンドシールドモールとフロントピラーとの間の空間を流れる水が滴下することで発生する打音を防ぐことが可能な車両用ウィンドシールドモール周辺構造を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明による車両用ウィンドシールドモール周辺構造の実施例を適用した車両の斜視図である。
【
図2】
図1の車両からフェンダパネルを外した状態を示す斜視図である。
【
図3】
図2のウィンドシールドモールを車両左側から見た側面図である。
【
図4】
図3のウィンドシールドモールのA-A断面図である。
【
図5】
図3のウィンドシールドモールのB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態は、車両のフロントピラーを形成する車体パネルと、フロントピラーの外側に設置されウィンドシールドの縁に沿って取り付けられたウィンドシールドモールと、ウィンドシールドモールの後側に設置されピラーウィンドウの縁に沿って取り付けられたピラーガラスモールとを備えた車両用ウィンドシールドモール周辺構造において、ウィンドシールドモールは、ウィンドシールドの縁に沿って取り付けられた本体と、本体から延びてピラーガラスモールに到達しフロントピラーとの間に所定の空間を形成しているリップ部とを有し、ウィンドシールドモールの下端には、先端ほど下降しながら上記の空間に突出しその空間の少なくとも中央を覆う突起形状部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、ウィンドシールドモールの内側に沿って上記の空間内を流れてきた雨水などの水を、ウィンドシールドモールの下端に形成された突起形状部で案内し、ウィンドシールドモールの側方の部材に飛ばすことができる。このように簡便な構造で水の流れる方向を変更することで、水がウィンドシールドモールの下方のフェンダライニング等に直接滴下して打音が発生するのを防ぐことができる。
【0012】
上記のウィンドシールドモールの突起形状部は、フロントピラーの長手方向に沿って見たとき、ウィンドシールドモールの本体およびピラーガラスモールに重なっていて、これにより上記の空間のほとんど全体を覆い、突起形状部の先端は、フロントピラーの下方において車体パネルに近接しているとよい。
【0013】
上記構成によれば、上記の空間を流れてきた水をより確実に捉え、車体パネルに飛ばすことで水の流れる方向を変更し、ウィンドシールドモールから水が直接下方に滴下するのを防ぐことができる。
【0014】
上記車体パネルは、下方へゆくほど車外側に張り出す第1傾斜部と、第1傾斜部からさらに下方へゆくほど車内側に窪んで第1傾斜部との境界に稜線を形成する第2傾斜部とを有し、ウィンドシールドモールの突起形状部を延長すると、上記の稜線または第1傾斜部に交差するとよい。
【0015】
上記構成によれば、突起形状部によって下降しながら車内側に跳ね飛ばされてきた水滴を、車体パネルの有する第1傾斜部にぶつけ、さらに下降しながら逆に車外側に流すことができ、まっすぐ下方に滴下するのを防ぐことができる。
【0016】
上記車体パネルに形成された稜線は、上方に凸の曲線を描いていて、この曲線の頂部とウィンドシールドモールの突起形状部の先端は、車両側面視で実質的に同じ位置にあるとよい。
【0017】
上記構成によれば、突起形状部から跳ね飛ばされた水滴を、車体パネルのうち、放物線のような上方に凸の稜線が存在する限定的な範囲に流すことができる。そのため周囲への被水を低減することができる。
【実施例0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
(車両用ウィンドシールドモール周辺構造)
図1は、本発明による車両用ウィンドシールドモール周辺構造の実施例を適用した車両の斜視図である。
図1その他のすべての図面において、車両前後方向をそれぞれ矢印F(Forward)、B(Backward)、車幅方向の左右をそれぞれ矢印L(Leftward)、R(Rightward)、車両上下方向をそれぞれ矢印U(upward)、D(downward)で示す。
【0020】
図1に示すように、車両用ウィンドシールドモール周辺構造100は、車両102の左側のフロントピラー104(
図4および
図5)の外側に設置されたウィンドシールドモール106を備える。
図1ではフロントピラー104は、ウィンドシールドモール106と、後述のピラーガラスモール114とに覆われていて見えていない。
【0021】
ウィンドシールドモール106はウィンドシールド108の枠であり、ウィンドシールド108の縁に沿って取り付けられている。なお、車両102の右側にも本発明を左右対称な構造で適用可能であるため、本明細書では代表して車両左側だけを図示する。
【0022】
図2は
図1の車両102からフェンダパネル110を外した状態を示す斜視図である。車両用ウィンドシールドモール周辺構造100はさらに、フロントピラー104(
図2でも隠れていて見えていない)を形成する車体パネル112を備える。
図2に示すように、車体パネル112は、ウィンドシールドモール106等に覆われているフロントピラー104を形成するだけでなく、その下方にも連続しているパネルである。
【0023】
車両用ウィンドシールドモール周辺構造100はさらに、ウィンドシールドモール106の後側に設置されたピラーガラスモール114を備える。ピラーガラスモール114もウィンドシールドモール106と同様にフロントピラー104の外側に設置されている。ピラーガラスモール114は、フロントピラー104に固定された固定窓であるピラーウィンドウ116の枠体であり、ピラーウィンドウ116の縁に沿って取り付けられている。
【0024】
(ウィンドシールドモール)
図3は
図2のウィンドシールドモール106を車両左側から見た側面図であり、
図4および
図5は、
図3のウィンドシールドモール106のA-A断面図およびB-B断面図である。
図4および
図5では、本実施例に直接関係のある要素のみを図示し、それ以外の要素は図示省略している。
【0025】
図4に示すように、ウィンドシールドモール106は、ウィンドシールド108の縁に沿って取り付けられた本体106Aと、本体106Aから延びてピラーガラスモール114に到達しているリップ部106Bとを有する。ウィンドシールドモール106の本体106Aとリップ部106Bとの境界を仮想線118で示す。リップ部106Bは、フロントピラー104との間に空間120を形成している。この空間120は、より厳密に述べれば、
図4に示すように、ウィンドシールドモール106とピラーガラスモール114とフロントピラー104とで囲まれたものであり、上下方向にわたって延びている。
【0026】
(ウィンドシールドモールの突出形状部)
図3に示すように、ウィンドシールドモール106の下端には、先端ほど下降しながら空間120に突出する突起形状部122が形成されている。すなわち
図4に示すように、突起形状部122は、空間120の断面に重なるように突出していて、空間120の中央120Aを覆っている。
【0027】
本実施例によれば、ウィンドシールドモール106の内側に沿って空間120内を流れてきた雨水などの水を、ウィンドシールドモール106の下端に形成された突起形状部122で案内し、ウィンドシールドモール106の側方に飛ばすことができる。このように簡便な構造で水の流れる方向を変更することで、水がウィンドシールドモール106の下方のフェンダライニング(図示省略)等に直接滴下して打音が発生するのを防ぐことができる。
【0028】
図5に示すように、また既に述べた通り、車体パネル112はフロントピラー104を形成するだけでなく、その下方にも連続しているパネルであり、突起形状部122の先端は、フロントピラー104の下方において車体パネル112に近接している。
【0029】
かかる構成によれば、空間120を流れてきた水を車体パネル112に飛ばすことで、より確実に水の流れる方向を変更してウィンドシールドモール106から水が直接下方に滴下するのを防ぐことができる。
【0030】
ウィンドシールドモール106の突起形状部122は、
図4に二点鎖線で仮想的に示す突起形状部124に置換してもよい。この突起形状部124は、突起形状部122よりも面積を広くしたものであり、
図4を見るようにフロントピラー104の長手方向に沿って見たとき、突起形状部124は、ウィンドシールドモール106の本体106Aおよびピラーガラスモール114に重なっている。つまり突起形状部124は空間120の断面積より面積が広く、空間120のほとんど全体を覆っている。
【0031】
かかる広い突起形状部124を用いれば、突起形状部122を用いる場合と比較して、空間120を流れてきた水をより確実に捉えて車体パネル112に飛ばすことで水の流れる方向を変更し、水が直接下方に滴下するのを防ぐことができる。
【0032】
(車体パネル)
図5に示すように、車体パネル112は、下方へゆくほど車外側に張り出す第1傾斜部126と、第1傾斜部126からさらに下方へゆくほど車内側に窪んで第1傾斜部126との境界に稜線130を形成する第2傾斜部128とを有する。
【0033】
そして
図5に示すように、ウィンドシールドモール106の突起形状部122を仮想線132で示すように延長すると、第1傾斜部126に交差する。この仮想線132は、突起形状部122の位置を調節して稜線130に交差するようにしてもよい。
【0034】
かかる構成によれば、突起形状部122によって下降しながら車内側に跳ね飛ばされてきた水滴を、車体パネル112の有する第1傾斜部126にぶつけることで、こんどは下降しながら車外側に流すことができる。すなわち水滴が蛇行して流れ、まっすぐ下方に滴下するのを防ぐことができる。
【0035】
図3に示すように、車体パネル112に形成された稜線130は、上方に凸の曲線を描いている。そしてこの稜線130の頂部とウィンドシールドモール106の突起形状部122の先端は、
図3および
図5で示すように、車両側面視で実質的に同じ高さ位置Hにある。
【0036】
既に
図5を用いて説明した通り、突起形状部122を延長した仮想線132は、稜線130または第1傾斜部126に交差する。これは、突起形状部122がある程度車体パネル112から離れていても成立する条件である。しかし、さらに上述のように、稜線130の頂部とウィンドシールドモール106の突起形状部122の先端とが実質的に同じ高さ位置Hにあるため、突起形状部122と車体パネル112とはきわめて近接している。言い換えれば、これらの条件を満たす程度に、突起形状部122と車体パネル112とは近接している。
【0037】
かかる構成によれば、突起形状部122から車体パネル112へ跳ね飛ばされた水滴を、第1傾斜部126から第2傾斜部128へと稜線130を跨いで流すことができる。あるいは水滴を、稜線130に沿って流すことができる。いずれにせよ、水滴を、放物線のような上方に凸の稜線130が存在する限定的な範囲Rに流すことができるため、周囲への被水を低減することができる。
【0038】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0039】
また本発明は、特許請求の範囲の従属関係に関わらず、請求項および実施例に記載の発明同士を自由に組み合わせて実施することができるものである。