(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111378
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】モジュールケース、中空糸膜モジュール及び糸束装填方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20240809BHJP
B01D 63/02 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
H01M8/04 N
B01D63/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015818
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】弘瀬 寛和
(72)【発明者】
【氏名】田宮 竜太
【テーマコード(参考)】
4D006
5H127
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006HA02
4D006JA10A
4D006JA10C
4D006JA12A
4D006JA12C
4D006JA13A
4D006JA13C
4D006JA22A
4D006JB02
4D006JB06
4D006JB08
4D006MA01
4D006MC22
4D006MC58
4D006MC62
4D006MC63
4D006PA01
4D006PB17
4D006PB65
4D006PC80
5H127BB02
5H127BB34
5H127EE17
(57)【要約】
【課題】
直方体のモジュールケースへ擦過に弱い中空糸膜の装填を行う際、ケースの側壁を外すことで中空糸膜に無理な力を与えずに損傷を防ぎつつ、ケースの角部分にまで素早く中空糸膜を充填でき、更に、外側を継ぎ目の無い別のケースで密接して覆うことで処理流体の漏出を防いで加湿性能の低下を防止することが可能なモジュールケース及び糸束装填方法を提供する。
【解決手段】
外ケースと内ケースからなる2重構造の直方体モジュールケースであり 、該外ケースは継ぎ目の無い一体構造であり、該内ケースと該外ケースとは密接しており、
該内ケースを構成する側壁面のうち少なくとも1面が着脱可能であり、軸方向における該内ケースの両端部が該外ケース両端部より内側に存在し、モジュールケースの対向する一対の側壁面に貫通孔を有するモジュールケース。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外ケースと内ケースからなる2重構造の直方体モジュールケースであり 、
該外ケースは継ぎ目の無い一体構造であり、
該内ケースと該外ケースとは密接しており、
該内ケースを構成する側壁面のうち少なくとも1面が着脱可能であり、
軸方向における該内ケースの両端部が該外ケース両端部より内側に存在し、
モジュールケースの対向する一対の側壁面に貫通孔を有するモジュールケース。
【請求項2】
中空糸膜束内包用の請求項1記載のモジュールケース。
【請求項3】
請求項1に記載のモジュールケースに中空糸膜束を内包した中空糸膜モジュール。
【請求項4】
継ぎ目の無い一体構造の外ケースと、内ケースとからなる2重構造の直方体モジュールケース内に、一方向に配列した状態で複数の中空糸膜を装填する糸束装填方法であって、
軸方向の全長が外ケースよりも長く、軸方向に3分割することが可能な内ケースに、着脱可能な側壁を取り外して開口した面から糸束を装填する糸束装填工程と、
内ケースに着脱可能な側壁を取り付ける側壁取り付け工程と、
内ケースを外ケースに挿入するケース挿入工程と、
内ケースを軸方向に対して3つに分離することで、軸方向の全長が外ケースよりも短い中央部分の内ケースを残して、両端部の内ケースを取り除く内ケース分離工程
とを有する糸束装填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直方体形状の中空糸膜モジュール及び、直方体形状の中空糸膜モジュールケースおよびその糸束装填方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、中空糸膜を含む機能糸素材の利用が進み、燃料電池のイオン交換膜への保湿を行う加湿用途のモジュールにも、中空糸膜が適用されるようになってきた。
一般に、この種のモジュールは、外部配管と接続するための箱状の筐体の中に、複数本並べた状態で搭載されている。そして、モジュール本体は、直方体の筒状容器の内部に中空糸膜束が収納され、両端部分では、中空糸膜間の隙間及び中空糸膜と筒状容器の内径部が封止材により固定された構造となっている。また、中空糸膜の両端部は、断面が開口されて中空糸膜内部を通る第1の流路を形成しており、更に、筒状容器の側面には、導入孔および排出孔を有することで、中空糸膜外を通る第2の流路が形成されている。第2の流路では、処理流体が導入孔から入り、筒状容器に内包する中空糸膜同士の隙間を通過した後、排出孔から排出される。
この第2の流路を通過する処理流体は、燃料電池内の化学反応により発生した水蒸気を含む気体であることが一般的であり、中空糸膜の壁面を介して第1の流路内に水分を供給することで、第1の流路内の気体を加湿する仕組みとなっている。そのため、モジュール内に流入した水蒸気が、ショートパスや漏れを生じることなく、しっかりと中空糸に当たることが、加湿器としての効率を高めるために重要となる。
また、水蒸気が通過する際の圧損が許容される範囲内で、筒状容器内部に中空糸膜を可能な限り多く充填されていることも、モジュール単位での加湿性能を高めるために必須となる。上述のモジュールを作製するためには、筒状容器の開口部分から中空糸膜を軸方向に挿入して、中空糸膜を筒状容器内に配置することになるが、挿入作業時には、中空糸膜が、筒状容器の内壁部分や他の中空糸膜と擦れてしまう。この時、一部の中空糸膜には軸方向に対して圧縮する側に力がかかるので、中空糸膜は座屈して折れ曲がってしまう。また、挿入を開始する側の一部の中空糸膜は、ケースの全長に亘ってケース壁面と擦れることになるので、長い距離を擦れている間に中空糸膜の壁面が破れて損傷してしまう。
そのため、特に中空糸膜の充填密度が高い場合は、中空糸膜同士が強く押し合った状態で筒状容器内に挿入する必要があるので、中空糸膜が損傷しない様に装填作業を行うには慎重を期する必要があり、熟練の作業者であっても多くの時間が必要となる。
ここで、円筒状容器に対して中空糸膜束を装填する手段としては、筒状に形成したシート状物の中に中空糸膜束を内蔵し、シート状物を半径方向に絞り込み、そのまま筒状容器に挿入した後、シート状物のみを抜き取る提案がされている。(特許文献1)
また、両側面がラウンド処理された直方体形状の筒状容器に対して中空糸膜束を装填する手段としては、筒状容器の側壁の一部を分割することで開口し、その開口部分から中空糸膜束を平行に挿入した後、分割した筒状容器の壁面を溝や爪状の突起により固定して閉じる提案がされている(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2964848号公報
【特許文献2】特開2022-130548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載されているような中空糸膜束の装填手段は、あくまでも円筒状容器に適するものであり、直方体の筒状容器には適用できない。
すなわち、この方式であれば、中空糸膜を束状にして筒状容器へ挿入するため、中空糸膜同士の擦れを発生させず、更に短時間で作業が完了する。また、中空糸膜がシート状物で保護された状態であるため、中空糸膜と筒状容器との擦れも防止することができる。しかしながら、この方式を直方体の筒状容器に対して用いた場合、円筒形状に絞られた中空糸膜の束は、直方体の筒状容器内でシート状物が抜き取られた後も、円筒形状を維持したまま径方向に広がってしまうので、筒状容器の角部分には中空糸膜が充填されない状態となってしまう。そして、径方向に絞る力を加えた中空糸膜の束は、中空糸膜同士が絡み合った状態で癖が付くため、後工程で直方体形状の容器に合わせて、中空糸膜を配置し直すことはできない。そのため、完成したモジュールは、筒状容器の角部分に中空糸膜が詰まっておらず、前述したモジュール内の第2の流路に水蒸気を導入すると、水蒸気は流路抵抗の少ない角部分に集中的に流れてしまう、いわゆるショートパスを発生させてしまい、中空糸膜全体が有効に活用されず、加湿性能が大幅に低下してしまう。
一方で、特許文献2に記載されているような中空糸膜束の装填手段は、筒状容器が分割されており側壁部分の一部を開口することができるため、中空糸膜が直方体の筒状容器内で偏らない様に素早く装填することができる。また、中空糸膜を軸方向に擦ることがないため、中空糸膜が曲がったり破れたりすることもないので、中空糸膜束の装填において作業性に優れる。しかしながら、分割された筒状容器は、その分割面同士を突き合わせて固定しているだけであるため、シール性は皆無であり、この部分で圧力のかかった流体を塞き止めることはできない。
これでは、完成したモジュールの第2の流路に水蒸気を導入すると、導入された水蒸気の一部が、上記の分割面から外に漏れてしまうので、加湿性能は低下してしまう。更に、装置の運転条件により、導入する水蒸気の圧力が変化した際には、水蒸気の漏れ量も変化するので、加湿性能そのものが不安定になってしまう。
本発明は、直方体のモジュールケースへの糸束装填を行う際に発生する問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、側壁面のうち少なくとも1面が着脱可能な内ケースを外ケースの内側に設けることで、中空糸膜に損傷や偏りを発生させずに、素早くモジュール内に装填することができ、更に、処理流体が漏れない様に外ケースを継ぎ目の無い構造としたことで、加湿性能を犠牲にすることなく糸束装填作業を短時間で行うことが可能なモジュールケース及び糸束装填方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する本発明のモジュールケースは、外ケースと内ケースからなる2重構造の直方体モジュールケースであり 、該外ケースは継ぎ目の無い一体構造であり、
該内ケースと該外ケースとは密接しており、該内ケースを構成する側壁面のうち少なくとも1面が着脱可能であり、軸方向における該内ケースの両端部が該外ケース両端部より内側に存在し、モジュールケースの対向する一対の側壁面に貫通孔を有している。
また、上記課題を解決する本発明の糸束装填方法は、複数の中空糸膜を一方向に配列した状態で、外ケースと内ケースからなる2重構造の直方体モジュールケース内に装填する糸束充填方法であって、軸方向の全長が外ケースよりも長く、軸方向に3分割することが可能な内ケースに、着脱可能な側壁を取り外して開口した面から糸束を装填する糸束装填工程と、内ケースに着脱可能な側壁を取り付ける側壁取り付け工程と、
内ケースを外ケースに挿入するケース挿入工程と、内ケースを軸方向に対して3つに分離することで、軸方向の全長が外ケースよりも短い中央部分の内ケースを残して、両端部の内ケースを取り除く内ケース分離工程とを有している。
【発明の効果】
【0006】
本発明のモジュールケース及び糸束装填方法を用いれば、着脱可能な側壁面を有する内ケースに中空糸膜を装填し、着脱可能な側壁を外すことで、中空糸膜を軸方向に挿入することなく並べる様に配置することができるので、中空糸膜は、内ケースの内部に素早く装填することができる。
また、中空糸膜は、装填される段階において互いに押し付け合う様な力が加わっていないので、絡み合っておらず自由に動くことができるので、自ずと内ケースの断面形状に沿って収まることになり、中空糸膜が内ケースの内部で偏ることがない。
更に、中空糸膜は軸方向には動かさないので、中空糸膜同士が軸方向に擦れて曲がったり破れたりして損傷することも無い。
そして、内ケースは着脱可能な側壁を装着した後に、継ぎ目の無い外ケースの内側に収容されるため、モジュールとしてのシール性は外ケースにより確保されており漏れが発生することがない。また更に、外ケースと内ケースは密接しているため、ケース同士の隙間から処理流体がショートパスをするようなこともない。
すなわち、本発明のモジュールケース及び糸束装填方法を用いれば、直方体の筒状容器内に中空糸膜を装填する作業において、中空糸膜に損傷を発生させることなく、また、加湿性能が低下する要因を作ることなく糸束装填作業を短時間で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明のモジュールケースの側断面図である。
【
図2】本発明のモジュールケースに中空糸膜を内包した中空糸膜モジュールの側断面図である。
【
図3A】本発明のモジュールケースへの糸束装填方法の工程1~2をステップ的に示す説明図である。
【
図3B】本発明のモジュールケースへの糸束装填方法の工程3~4をステップ的に示す説明図である。
【
図3C】本発明のモジュールケースへの糸束装填方法の工程5~6をステップ的に示す説明図である。
【
図4】本発明のモジュールケースを構成する分割型内ケースと外ケースの斜視図である。
【
図5】本発明のモジュールケースを用いた中空糸膜モジュールの端部にリーク検査治具を装着した側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明を、加湿用途の中空糸膜モジュール用のモジュールケースを例として、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係るモジュールケース1の側断面図を例示している。ただし、好ましい態様や例示はこれに限られるものではない。
本発明のモジュールケース1は、2重構造となっており外ケース2の内側に密接する様に内ケース3を設けている。このような本発明の加湿用途の中空糸膜モジュール用のモジュールケース1の形状は、直方体の筒状である。
次に
図2には、
図1で例示したモジュールケース1の内部に、複数の中空糸膜4を一塊の中空糸膜束5として内包した、中空糸膜モジュール6が例示されている。モジュールケース1に内包された中空糸膜4は、モジュールケース1の長手方向に沿って一方向に配列されていることが好ましい。
そして、中空糸膜4の長手方向の両端部においては、中空糸膜4間の隙間並びに中空糸膜4とモジュールケース1との隙間が封止材7によって封止されている。これについてより詳細に説明すると、筒状のモジュールケース1は、モジュールケース1の両端部において、モジュールケース1と中空糸膜4とが同じ方向に配列しており、中空糸膜4の両端部では、中空糸膜4間の隙間及び中空糸膜4とモジュールケース1との隙間が封止材7によって固定、つまり封止処理され、モジュールケース1の両端で、中空糸膜束5の断面が開口することで、一方が乾燥空気導入口8となり、もう一方が湿潤空気排出口9となっている。
ここで、内ケース3の全長L2は、外ケース2の全長L1よりも短く、内ケース3の両端部が外ケース2の両端部より内側に位置する様に配置されている。内ケース3と外ケース2とが密接して対向している壁面は、僅かな隙間が生じることになるが、この僅かな隙間部分には封止材7が入り辛く、封止不良が発生する虞がある。そこで、内ケース3の両端部が外ケース2両端部より内側に位置する様に配置することで、中空糸膜束5の断面が開口する面には外ケース2のみが露出し、前述の隙間部分が露出しない構造となる。その結果、封止不良の発生を防止することができる。
なお、外ケース2の全長L1と内ケース3の全長L2との差分は、外ケース2と封止材7との接着代となり、片側あたり5mm程度確保できれば、接着効果を十分に得られるので、外ケース2の全長L1と内ケース3の全長L2の関係は、10mm≦L1-L2とすることが好ましい。
また、外ケース2と内ケース3は、軸方向に対して位置ずれが生じない様に、図示しない凸形状のツメと凹状の溝等の固定機構で双方を固定することが好ましい。
次に、モジュールケース1の対向する一対の側壁面には、処理流体である水蒸気がモジュールケース1内に出入りするための孔として、水蒸気導入口10と水蒸気排出口11が貫通して設けられており、モジュールケース1内の中空糸膜4に水蒸気を供給する構造となっている。すなわち、組付状態の外ケース2と内ケース3には、それぞれ同じ位置に水蒸気導入口10と水蒸気排出口11が貫通して設けられている。そして、前述の乾燥空気導入口8から入った低湿度の空気は、中空糸膜4内部を通過する際に中空糸膜4の外壁を通じて水蒸気交換を行い、湿度を高めた湿潤空気として湿潤空気排出口9から排出されることで、加湿用途として機能する仕組みである。
【0009】
ここで、効率良く水蒸気交換するためには、中空糸膜束5全体に水蒸気を供給する必要があるので、モジュールケース1の対向する面の一方の面全体に孔である水蒸気導入口10を、もう一方の面全体にも孔である水蒸気排出口11を配置することが好ましい。すなわち、壁面全体に亘って水蒸気導入口10と水蒸気排出口11とを中空糸膜束5を挟んで配置することにより、水蒸気導入口10からモジュールケース1内に入った水蒸気は、中空糸膜束5全体に触れながら水蒸気排出口11からモジュールケース1の外に排出されることになるので、中空糸膜4を全長に亘って有効に使うことができて加湿性能を高めることができる。
但し、水蒸気導入口10や水蒸気排出口11と封止材7との距離が極端に近くなった場合は、水蒸気が封止材7に直接触れることとなるので、一般的によく用いられるウレタン系の封止材では、材料そのものの耐熱温度を超えることがある。この場合は、水蒸気が封止材7に直接触れることを回避すれば、封止材7の温度上昇を抑える効果が期待できる。そのため、加湿性能が多少下がるが、水蒸気導入口10と水蒸気排出口11の孔の配置をモジュールケース1の両端部から離し、中央部へ寄せた配置とすることが好ましい。
さらに、水蒸気導入口10から入った水蒸気は、意図しない箇所から漏れることなく水蒸気排出口11のみから排出される様に、外ケース2は継ぎ目の無い一体構造となっている。
一方で、内ケース3は、後述のモジュールへの糸束装填方法に記載の通り、構成する側壁面のうち少なくとも1面が着脱可能な構造となっており、中空糸膜4を装填する段階において、この着脱可能な側壁を外すことで、中空糸膜4に無理な力を加えることなく並べる様に素早く装填することができる。
[モジュールへの糸束装填方法]
次に
図3A、B、Cを参照しながら、外ケース2と3つに分割された分割型内ケース12からなる2重構造のモジュールケースを用いて、モジュールケース内に中空糸膜4を装填する、糸束装填方法を、工程1~6で示すステップを追って説明する。
図3A、B、C、は、モジュールケース内への中空糸膜装填方法の一態様をステップ的に示す説明図である。
図3A(a)では、長手方向に対して3つに分割された分割型内ケース12より短く切断された中空糸膜4と外ケース2が並べられている。分割型内ケース12は、中央ケース13と端部ケース14から構成され、中央ケース13の長さL3と端部ケース14の長さL4は、装填する中空糸4の長さをL5とした場合、(L4+L3+L4)-L5≧10の関係となっており、密着して並べた分割型内ケース12の内側に中空糸膜4が収まる形状となっている。
さらに、後述の工程6に記載の通り、外ケース2に挿入された分割型内ケース12は、最終的に中央ケース13のみが外ケース2の内部に残ることとなる。そのため、前述記載の通り外ケース2単体と封止材7との接着代を考慮し、中央ケース13の長さL3は、外ケース2の長さL1に対して、10mm≦L1-L3の関係となっている。
<工程1>(
図3Aの(a)の状況)
準備工程である。長手方向に対して3つに分割された分割型内ケース12は、分割面が密着した状態で並べられており、着脱可能な側壁である中央蓋15と端部蓋16が取り付けられている。また、同じ長さに切りそろえられた複数本の中空糸膜4と外ケース2が並べられている。
【0010】
<工程2>(
図3Aの(b)の状況)
糸束装填工程である。分割型内ケース12の上部から着脱可能な側壁である中央蓋15と端部蓋16が取り外され、次いで、分割型内ケース12の開口した面より複数本の中空糸膜4が装填される。
【0011】
<工程3>(
図3Bの(c)の状況)
側壁取り付け工程である。複数本の中空糸膜4が分割型内ケース12内に装填された状態で、着脱可能な側壁である中央蓋15と端部蓋16が分割型内ケース12の上部に装着される。
【0012】
<工程4>(
図3Bの(d)の状況)
ケース挿入工程1である。複数本の中空糸膜4が装填された分割型内ケース12を、外ケース2の端部の開口部分から挿入を開始する。
【0013】
<工程5>(
図3Cの(e)の状況)
ケース挿入工程2である。ケース挿入工程1より引き続き、分割型内ケース12の外ケース2への挿入を継続する。次いで、外ケース2と分割型内ケース12の水蒸気導入口10もしくは水蒸気排出口11の位置が一致した時点で、図示しない凸形状のツメと凹状の溝の固定機構が作用して、外ケース2と分割型内ケース12の位置が固定される。そして、外ケース2と分割型内ケース12が固定された時点で、挿入動作を停止する。
【0014】
<工程6>(
図3Cの(f)の状況)
内ケース分離工程である。外ケース2の両端から突出した端部ケース14を、外ケース2の長手方向外側に移動させて、外ケース2から抜き取る。
【0015】
以上の本発明の糸束装填方法の一態様で、中空糸膜4を分割型内ケース12に装填する段階において、着脱可能な側壁である中央蓋15及び端部蓋16を外すことで、中空糸膜4に無理な力を加えずに並べる様に素早く装填することができる。また、分割型内ケース12が、中空糸膜4の全長を覆った状態で外ケース2へ挿入できるので、中空糸膜4が外ケース2に接触することが無く、中空糸膜4が外ケース2に引っかかったり損傷したりすることがない。さらに、端部ケース14に触れている中空糸膜4は、前述の通り、外ケース2と封止材7との接着代となる片側5mm程度の領域のみが製品となり、それ以外の部分は後工程で切除される。そのため、端部ケース14を抜き取る際、中空糸膜4の製品部分が、端部ケース14と擦れる距離は僅か5mm程度と極端に短いため、擦れている間に製品部分の中空糸膜4が破れることがない。また、この時、中空糸膜4には、軸方向に対して引っ張る方向にのみ力がかかるので、中空糸膜4が座屈して折れ曲がることもない。
本発明のモジュールケース1に適用できる材料としては、金属や樹脂等、どの様な材質でも良いが、安価で加工性の高く射出成形で大量に製作することができる樹脂を用いることが好ましく、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリプロピレン等がより好ましい。但し、例示した燃料電池用途の様に、水蒸気との接触でモジュールが高温になるという稼働条件の場合は、耐水蒸気性と耐熱性の観点から、ポリスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリエーテルイミド等がさらに好ましい。
また、中空糸膜4の材質としては、特に限定されるものではなく、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリオレフィン等が使用用途や使用条件により適宜選択して用いられる。
【0016】
本発明のモジュールケース1の用途は特に限定されず、加湿用途のモジュールケースや除湿用途のモジュールケース、または空調機内部の熱交換器用途のモジュールケースとして用いることも可能である。
【実施例0017】
以下実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本発明のモジュールケースの一実施態様を以下に説明するが、本発明の内容はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
ポリスルホンを材料として用い、射出成型加工と切削加工により
図4に示す形状の外ケース2と分割型内ケース12を製作した。外ケース2の各部寸法は、L1=200mm、W1=45mm、H1=75mm、T1=2mmとした。
分割型内ケース12の各部の寸法は、L3=190mm、L4=35mm、W2=41mm、H2=71mm、T2=2mmとした。なお、分割型内ケース12は、分割箇所の境界部分が図示しない凹凸状のツメで固定されており、自在に脱着が可能となっている。
また、分割型内ケース12上部の中央蓋15と端部蓋16は、図示の通り凹凸の切り欠きを設ける構造とすることで、着脱可能とした。
さらに、分割型内ケース12を外ケース2に挿入する際の隙間は、0.05~0.15mmの範囲となる様に、射出成型加工における外形の仕上がりを調節した。
そして、外ケース2及び分割型内ケース12の左右の対向する側壁には、一方に水蒸気導入口10を、もう一方に水蒸気排出口11を配置した。水蒸気導入口10及び水蒸気排出口11の開口部は同一の矩形形状とし、寸法はW3=45mm、H3=60mmとした。また、外ケースと内ケースとを組付けた際に、それぞれの開口部分が同じ位置で重なる様に長手方向に対して3個ずつ配置した。
上記の外ケース2及び分割型内ケース12を用いて、中空糸膜4の装填作業を行った。まず、分割型内ケース12の上部の中央蓋15と端部蓋16を取り外し、解放された面より、外径900μm、内径670μm、長さ220mmのポリスルホン製の中空糸膜を1800本装填した後、中央蓋15と端部蓋16を取り付けた。
【0018】
次いで、外ケース2と分割型内ケース12の水蒸気導入口10及び水蒸気排出口11の位置が一致する位置まで、分割型内ケース12を外ケース2に挿入した。この時点で、図示しない凸形状のツメと凹状の溝の固定機構が作用して、外ケース2と分割型内ケース12が固定された。そして、分割型内ケース12両端部の端部ケース14を、長手方向外側に引っ張ることで、外ケース2から抜き取った。そして、外ケース2の両端部からそれぞれ内側に向かって10mmの領域までを、ウレタン系の封止材(サンユレック(株)製、型番:SA8215)で固定した。次いで、モジュールケース両端部からはみ出た中空糸膜及び封止材を、モジュールケース両端部の位置で切断した。
上記の様に作成した中空糸膜モジュールを、後述のエアリーク試験を用いて中空糸膜4の損傷状態を確認した。
エアリーク試験は、中空糸膜モジュール6の両端部に、
図5に示すエア注入治具17と端部閉止治具18とを取り付け、エア注入口19より加圧空気にて100kPaで加圧を行うことで、リークの有無の確認を行った。エア注入治具17及び端部閉止治具18と中空糸膜モジュール6とは、図示しない固定用の治具を用いて固定しており、また、境界部分はOリング20により気密性を保つ構造となっている。そして、この状態で中空糸膜モジュール6全体を水没させ、気泡を目視確認することで中空糸膜4の損傷の有無を判断した。本実施例では、エアリーク試験で、中空糸膜4の損傷が起因となる気泡は確認されなかったため、中空糸膜4をモジュールケースに装填する作業において、中空糸膜4が損傷しないことが確認できた。
また、各作業工程の時間を測定したところ、分割型内ケース12上部の中央蓋15と端部蓋16を外す工程が3秒、分割型内ケース12に1800本の中空糸膜4を装填する工程が5秒、分割型内ケース12上部の中央蓋15と端部蓋16を装着する工程が4秒、分割型内ケース12を外ケース2に挿入する工程が3秒、端部ケース14を外ケース2から抜き取る工程が5秒で、全ての工程が5秒以下で完了しており、また、全ての工程の合計時間は20秒であった。
ここで、複数の中空糸膜モジュールを作ることを想定した場合、上述の各工程は流れ作業にて同時並行で行うことができるので、手作業でのタクトタイムとしては、中空糸膜モジュール1本あたり5秒という短時間で、中空糸膜4をモジュールケースに装填できることがわかった。
[実施例2]
実施例1と同形状・同材質の外ケース2及び分割型内ケース12を用い、実施例1と同じ中空糸膜4を同じ本数挿入して中空糸膜モジュールを製作した後、外ケース2の両端部から内側へ向かって30mmの位置及び中央部分の計3か所を、ウォータージェット加工にて輪切り加工を行った。そして、切断された断面を目視で観察し、中空糸膜4の偏り具合を確認した。結果、中空糸膜4は中空糸膜モジュールの角部分にまで均一に装填されており、中空糸膜モジュール内での偏りは見られなかった。