(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111379
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】車両用クッションゴム設置構造
(51)【国際特許分類】
B60J 5/10 20060101AFI20240809BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
B60J5/10 D
B60J5/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015819
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正義
(57)【要約】
【課題】ドア開閉時の耐久性能の向上が可能な車両用クッションゴム設置構造を提供することを目的とする。
【解決手段】ゴム設置構造100のドアインナパネル106は、車体のシール部材に接触するシール形状部116と、シール形状部116から間隔を空けて当該ドアインナパネル106の外周に沿って設けられた外周ビード部120と、シール形状部116と外周ビード部120との間の範囲に設けられて車体側に円錐台状に膨出した台座ビード部110と、台座ビード部110の両脇に台座ビード部110から間隔を空けて設けられてシール形状部116と外周ビード部120とに差し渡された追加ビード部126a、126bと、を有する。台座ビード部110は、クッションゴムが設置される円形の座面112を有し、座面112は、シール形状部116、外周ビード部120、および追加ビード部126a、126bから独立している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ドアの車体側のドアインナパネルを備え、該ドアインナパネルに緩衝用のクッションゴムを設置する車両用クッションゴム設置構造において、
前記ドアインナパネルは、
前記車体のドア用開口部を縁取るシール部材に接触するよう該車体側に膨出したシール形状部と、
前記シール形状部から所定の間隔を空けて当該ドアインナパネルの外周に沿って設けられて前記車体側に膨出した外周ビード部と、
前記シール形状部と前記外周ビード部との間の範囲に設けられて前記車体側に円錐台状に膨出した台座ビード部と、
前記台座ビード部の両脇に該台座ビード部から所定の間隔を空けて設けられて前記シール形状部と前記外周ビード部とに差し渡された一対の追加ビード部と、
を有し、
前記台座ビード部は、前記クッションゴムが設置される円形の座面を有し、
前記座面は、前記シール形状部、前記外周ビード部、および前記一対の追加ビード部から独立していることを特徴とする車両用クッションゴム設置構造。
【請求項2】
前記車両ドアは、バックドアであって、
前記台座ビード部は、前記外周ビード部のうち前記ドアインナパネルの下側の角に沿った部分と前記シール形状部との間の範囲に形成されていて、
前記一対の追加ビード部のうち少なくとも一方は、前記外周ビード部または前記シール形状部に対して直角に延びていることを特徴とする請求項1に記載の車両用クッションゴム設置構造。
【請求項3】
前記台座ビード部と前記一対の追加ビード部それぞれとは、少なくとも該台座ビード部の半径以上の距離を有していることを特徴とする請求項1に記載の車両用クッションゴム設置構造。
【請求項4】
前記台座ビード部の側面は、前記シール形状部に一部がつながっていて、前記外周ビード部からは離間していることを特徴とする請求項1に記載の車両用クッションゴム設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用クッションゴム設置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両ドアのドアインナパネルには、車体に接触するクッションゴム等の緩衝部材が設けられている。例えば、特許文献1の段落0047および
図5には、リヤサイドドアに設置されるドアストッパ60が開示されている。ドアストッパ60は、円錐台形の弾性体で形成されていて、頂部60Aが車体側に接触する構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来から、クッションゴムはドアを閉めるときに相応の荷重を受けるため、クッションゴムの設置部は剛性が高く設定されていた。しかしながら、クッションゴムの設置部とその周囲の領域との剛性差が大きくなると、ドアインナパネルに局所的な応力集中を招くおそれがある。特に、近年におけるバックドア等の車両ドアが大型化した車両においては、クッションゴムの設置部とその周囲の領域との剛性差が拡大する傾向にあり、この剛性差に起因する不具合について対策が求められている。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑み、車両ドアの耐久性能の向上が可能な車両用クッションゴム設置構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両用クッションゴム設置構造の代表的な構成は、車両ドアの車体側のドアインナパネルを備え、ドアインナパネルに緩衝用のクッションゴムを設置する車両用クッションゴム設置構造において、ドアインナパネルは、車体のドア用開口部を縁取るシール部材に接触するよう車体側に膨出したシール形状部と、シール形状部から所定の間隔を空けて当該ドアインナパネルの外周に沿って設けられて車体側に膨出した外周ビード部と、シール形状部と外周ビード部との間の範囲に設けられて車体側に円錐台状に膨出した台座ビード部と、台座ビード部の両脇に台座ビード部から所定の間隔を空けて設けられてシール形状部と外周ビード部とに差し渡された一対の追加ビード部と、を有し、台座ビード部は、クッションゴムが設置される円形の座面を有し、座面は、シール形状部、外周ビード部、および一対の追加ビード部から独立していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ドア開閉時の耐久性能の向上が可能な車両用クッションゴム設置構造を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施例に係る車両用クッションゴム設置構造の概要を示した図である。
【
図2】
図1(b)のゴム設置構造の各断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施の形態に係る車両用クッションゴム設置構造は、車両ドアの車体側のドアインナパネルを備え、ドアインナパネルに緩衝用のクッションゴムを設置する車両用クッションゴム設置構造において、ドアインナパネルは、車体のドア用開口部を縁取るシール部材に接触するよう車体側に膨出したシール形状部と、シール形状部から所定の間隔を空けて当該ドアインナパネルの外周に沿って設けられて車体側に膨出した外周ビード部と、シール形状部と外周ビード部との間の範囲に設けられて車体側に円錐台状に膨出した台座ビード部と、台座ビード部の両脇に台座ビード部から所定の間隔を空けて設けられてシール形状部と外周ビード部とに差し渡された一対の追加ビード部と、を有し、台座ビード部は、クッションゴムが設置される円形の座面を有し、座面は、シール形状部、外周ビード部、および一対の追加ビード部から独立していることを特徴とする。
【0010】
上記の台座ビード部の座面は、車両ドアを閉じたときにクッションゴムから荷重が直接的に入力される。上記構成では、当該台座ビード部の周囲を追加ビード部等の膨出部で囲んで全体的な剛性を向上させつつ、台座ビード部の座面を周囲の追加ビード部等とは独立して形成することで、台座ビード部から周囲の構造に荷重を偏らせることなく分散し、応力集中を防いでいる。よって、上記構成によれば、ドア開閉時におけるドアインナパネルの振動や変形を抑えて、亀裂等の発生を防ぐなど、車両ドアの耐久性能を向上させることが可能になる。
【0011】
上記の車両ドアは、バックドアであって、台座ビード部は、外周ビード部のうちドアインナパネルの下側の角に沿った部分とシール形状部との間の範囲に形成されていて、一対の追加ビード部のうち少なくとも一方は、外周ビード部またはシール形状部に対して直角に延びている。
【0012】
上記構成によれば、追加ビード部を外周ビード部等に直角につなぐことで、応力集中を防ぎつつ荷重の分散を図り、バックドアのドアインナパネルの角付近の剛性を向上させることが可能になる。
【0013】
上記の台座ビード部と一対の追加ビード部それぞれとは、少なくとも台座ビード部の半径以上の距離を有している。
【0014】
上記構成によれば、台座ビード部と追加ビード部とを間隔を空けて設けることで、応力集中を防ぐことが可能になる。
【0015】
台座ビード部の側面は、シール形状部に一部がつながっていて、外周ビード部からは離間している。
【0016】
上記構成によれば、台座ビード部の座面を独立させつつも側面の一部を剛性の高いシール形状部につなぐことで、応力集中を避けつつ荷重を剛性の高いシール形状部に分散して吸収することが可能になる。
【実施例0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
図1は、本発明の実施例に係る車両用クッションゴム設置構造(以下、ゴム設置構造100、102)の概要を示した図である。
図1(a)は、車両のバックドア104を前方から見て示している。以下、
図1その他の本願のすべての図面において、車両前後方向をそれぞれ矢印F(Forward)、B(Backward)、車幅方向の左右をそれぞれ矢印L(Leftward)、R(Rightward)、車両上下方向をそれぞれ矢印U(Upward)、D(Downward)で例示する。
【0019】
当該ゴム設置構造100、102は、車両ドアの車体側を構成するドアインナパネル106に、緩衝用のクッションゴムを設置するための構造である。本実施形態では、車両ドアとしてバックドア104を想定していて、ゴム設置構造100、102はバックドア104の下側の左右の角部それぞれに設けられている。
【0020】
ゴム設置構造100、102は左右対称の構成であり、以下の説明では主にバックドア104の車幅方向の右側下部のゴム設置構造100を例に挙げる。
【0021】
図1(b)は、
図1(a)のゴム設置構造100の拡大図である。ゴム設置構造100は、不図示の円筒状のクッションゴムを設置する部位として、台座ビード部110を備えている。
【0022】
台座ビード部110は、車体側、すなわち車両前側に円錐台状に膨出した部位であって、天面がクッションゴムを設置するための円形の座面112になっている。座面112の中央には取付穴114が設けられていて、クッションゴムを取り付けるときにクッションゴムの一部が挿入され固定される構成になっている。
【0023】
本実施形態では、台座ビード部110の周囲の構造を工夫することで、台座ビード部110を中心とした当該バックドア104の角付近の剛性を向上させている。以下、台座ビード部110の周囲の構造について説明する。
【0024】
シール形状部116は、車体のドア用開口部を縁取るウェザストリップ等のシール部材が接触する部位である。後述する
図2に示すように、シール形状部116は、台座ビード部110の周囲の平坦部122に対して、車体側である車両前側に段差状に膨出している。シール形状部116には、シール部材に接触する平らなシール接触面118が形成されている。
【0025】
外周ビード部120は、当該ドアインナパネル106の外周に沿って設けられた車体側に膨出した部位であって、シール形状部116から所定の間隔を空けて設けられている。
【0026】
外周ビード部120のうちのドアインナパネル106の下側の角に沿った部分と、シール形状部116との間には、窪んだ平坦な部位として、三角形の平坦部122が形成されている。上述した台座ビード部110は、この平坦部122に設けられている。特に、台座ビード部110は、平坦部122にて、外周ビード部120からは離間し、シール形状部116に対しては側面124の一部がつながった状態に形成されている。
【0027】
追加ビード部126a、126bは、平坦部122内において台座ビード部110から所定の間隔を空けつつ、台座ビード部110の両脇に一対設けられている。追加ビード部126a、126bは、平坦部122内にてシール形状部116と外周ビード部120とに差し渡されていて、台座ビード部110の周囲の剛性を向上させている。
【0028】
上記のように、台座ビード部110は、シール形状部116、外周ビード部120、および追加ビード部126a、126bによって周りを囲われた状態になっている。すなわち、台座ビード部110は、膨出した形状のシール形状部116、外周ビード部120、追加ビード部126a、126bに周囲を囲われた、断面二次モーメントの大きい領域内に設けられている。
【0029】
図2は、
図1(b)のゴム設置構造100の各断面図である。
図2(a)は、
図1(b)のゴム設置構造100のA-A断面図である。台座ビード部110の座面112は、シール形状部116、外周ビード部120、および一対の追加ビード部126a、126b(
図2(b)参照)とは、独立して形成されている。言い換えると、台座ビード部110の座面112は、シール形状部116等とは同じ高さの平面で連続することなく、島のような状態になっている。
【0030】
ゴム設置構造100は、台座ビード部110の座面112が周囲のシール形状部116や追加ビード部126a等とは独立して形成されているため、台座ビード部110がクッションゴムから荷重を受けたときに、その荷重をなるべく偏らせることなく分散させ、局所的な応力集中を避けることが可能になっている。
【0031】
図1(b)に示したように、台座ビード部110は、側面124の一部がシール形状部116につながれていて、クッションゴムから受けた荷重をドアインナパネル106の中央側に設けられている剛性の高いシール形状部116に分散させることが可能になっている。その一方で、台座ビード部110の側面124は、ドアインナパネル106の外側の外周ビード部120からは離間している。これによって、台座ビード部110は、ドアインナパネル106の外側、すなわちドアインナパネル106の縁側に荷重が直接的に伝わって振動や変形等の発生を抑制している。
【0032】
ゴム設置構造100では、クッションゴム108から受けた荷重は、特に台座ビード部110とシール形状部116の接続部128、および追加ビード部126a、126bとシール形状部116との接続部130a、130bを通じて周囲に受け流して吸収することができる。
【0033】
これらのように、ゴム設置構造100では、台座ビード部110の周囲を追加ビード部126a、126b等の膨出部で囲うことで全体的な剛性を高めつつ、クッションゴムから荷重が直接的に入力される台座ビード部110の座面112を周囲から独立させることで、応力集中を防ぎつつ荷重をいなし、ドアインナパネル106の振動や変形を防ぐことが可能になっている。よって、当該ゴム設置構造100によれば、ドア開閉時におけるドアインナパネル106の振動や変形を防ぐことで、ドアインナパネル106の亀裂等の発生を防ぎ、その耐久性能を向上させることが可能になる。
【0034】
図1(b)に示すように、本実施形態では、追加ビード部126aは外周ビード部120に対して直角に延びた構成になっている。このように、追加ビード部126a、126bは、周囲の外周ビード部120またはシール形状部116に対して直角につなぐことで、応力集中を避けつつ、荷重が周囲の構造に分散しやすくなる。当該構成においても、ドアインナパネル106の角付近の剛性を向上させて、振動や変形等を抑えることが可能になる。
【0035】
図2(b)は、
図1(b)のゴム設置構造100のB-B断面図である。台座ビード部110と追加ビード部126a、126bそれぞれとは、少なくとも台座ビード部110の半径R1以上の距離を有して配置されている。
【0036】
例えば、台座ビード部110に近い位置の追加ビード部126bは、台座ビード部110から半径R1以上の距離L1を空けて配置されている(L1>R1)。これのように、台座ビード部110と追加ビード部126a、126bとは、間隔を空けて設けることで、クッションゴムから荷重を受けたときに応力集中を防ぐことが可能になる。
【0037】
一例として、台座ビード部110から追加ビード部126bまでの距離L1は、台座ビード部110の半径R1と同程度の10mm程度に設定することができ(L1>10mm)、これによって荷重を分散させる効果を得ることが可能になる。また、バックドア104などの大型のドアにあっては、台座ビード部110の変形R1および追加ビード部126aとの距離L1は、20mm程度に設定してもよい(L1>20mm)。
【0038】
上記構成によって、ゴム設置構造100では、台座ビード部110がクッションゴム108から受けた荷重を受けたとき、台座ビード部110と追加ビード部126a、126bとの間で適度なたわみを許容して荷重をいなしながら、荷重を台座ビード部110から剛性の高いシール形状部116に優先的に流しつつ、その荷重をシール形状部116から追加ビード部126a、126bおよび外周ビード部120へと分散させるなど、台座ビード部110を中心としたインナパネル106の角付近を広く利用して荷重を吸収し、インナパネル106の振動や変形、および亀裂の発生などを防ぐことができる。
【0039】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
100、102…ゴム設置構造、104…バックドア、106…ドアインナパネル、108…クッションゴム、110…台座ビード部、112…座面、114…取付穴、116…シール形状部、118…シール接触面、120…外周ビード部、122…平坦部、124…側面、126a、126b…追加ビード部、128…接続部、130a、130b…接続部、R1…半径、L1…距離