IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フジタの特許一覧

特開2024-111381トンネル覆工コンクリート用締固め装置
<>
  • 特開-トンネル覆工コンクリート用締固め装置 図1
  • 特開-トンネル覆工コンクリート用締固め装置 図2
  • 特開-トンネル覆工コンクリート用締固め装置 図3
  • 特開-トンネル覆工コンクリート用締固め装置 図4
  • 特開-トンネル覆工コンクリート用締固め装置 図5
  • 特開-トンネル覆工コンクリート用締固め装置 図6
  • 特開-トンネル覆工コンクリート用締固め装置 図7
  • 特開-トンネル覆工コンクリート用締固め装置 図8
  • 特開-トンネル覆工コンクリート用締固め装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111381
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】トンネル覆工コンクリート用締固め装置
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/10 20060101AFI20240809BHJP
   E04G 21/08 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
E21D11/10 B
E04G21/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015824
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】三河内 永康
【テーマコード(参考)】
2D155
2E172
【Fターム(参考)】
2D155CA03
2D155DA08
2D155KC01
2D155LA14
2E172AA05
2E172FA12
(57)【要約】
【課題】覆工コンクリートの締固めの範囲を広げ覆工コンクリートの品質の向上を図る。
【解決手段】トンネル覆工用型枠12のうち切羽側の妻型枠16に、トンネル10の周方向に延在するガイド路2202と、ガイド路2202を切羽側に開放する切羽側開口部2204と、ガイド路2202を坑口側に開放する坑口側開口部2206とを有するガイド部材22を設ける。切羽側開口部2204と坑口側開口部2206を閉塞しつつガイド路2202に移動可能に配置された可撓性を有する移動部材24を設ける。切羽側開口部2204と坑口側開口部2206とを通って移動部材24の長手方向の中間部に貫通し移動部材24にトンネル10の長手方向に移動可能に挿通されたバイブレータ30を、第1移動部32によってトンネル10の長手方向に移動させると共に、第2移動部34によってトンネル10の周方向に移動させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削されたトンネルの内周面とトンネル覆工用型枠の外周面との間の打設空間に打設された覆工コンクリートの締固めを行なうトンネル覆工コンクリート用締固め装置であって、
トンネル覆工用型枠のうち坑口側の妻型枠に取り付けられ、前記トンネルの周方向に延在するガイド路と、前記ガイド路に沿って延在し前記ガイド路を切羽側に開放する切羽側開口部と、前記ガイド路に沿って延在し前記ガイド路を坑口側に開放する坑口側開口部とを有するガイド部材と、
前記ガイド路の前記切羽側開口部と坑口側開口部を閉塞しつつ前記ガイド路に移動可能に配置された可撓性を有する移動部材と、
前記切羽側開口部と坑口側開口部とを通って前記移動部材の長手方向の中間部に貫通し前記移動部材に前記トンネルの長手方向に移動可能に挿通されたバイブレータと、
前記バイブレータを前記トンネルの長手方向に移動させる第1移動部と、
前記バイブレータを前記トンネルの周方向に移動させる第2移動部と、
前記バイブレータの振動動作と、前記第1移動部による前記バイブレータの移動と、前記第2移動部による前記バイブレータの移動とを制御する制御装置と、
を備えることを特徴とするトンネル覆工コンクリート用締固め装置。
【請求項2】
前記ガイド路は、均一内径の円形断面で形成され、
前記移動部材は、前記ガイド路を移動可能な均一外径の円形断面で形成され、
前記バイブレータは、前記移動部材の長手方向の中間部に貫通形成された挿通孔に挿通して配置され、
前記挿通孔は、前記円形断面の直径よりも小さい寸法で形成されている、
ことを特徴とする請求項1記載のトンネル覆工コンクリート用締固め装置。
【請求項3】
前記打設空間に対向する前記挿通孔の開口部には、前記開口部を常時閉塞する方向に付勢され前記バイブレータの前記切羽側から前記坑口側への移動により前記開口部を開放する蓋板が取り付けられている、
ことを特徴とする請求項2記載のトンネル覆工コンクリート用締固め装置。
【請求項4】
前記移動部材の一端は前記ガイド部材の一端において、第1巻き取り装置に巻き取り繰り出し可能に連結され、
前記移動部材の他端は前記ガイド部材の他端において、第2巻き取り装置に巻き取り繰り出し可能に連結され、
前記制御装置は、前記第2移動部による前記第1移動部の移動に同調して、前記第1巻き取り装置および前記第2巻き取り装置による前記移動部材の巻き取り繰り出しの動作を制御する、
ことを特徴とする請求項1記載のトンネル覆工コンクリート用締固め装置。
【請求項5】
前記第1移動部は、
前記バイブレータを、前記打設空間の内部に挿入した挿入位置と、前記妻型枠から前記切羽側に離間した抜去位置との間で前記トンネルの長手方向に沿って移動可能に支持する第1支持部と、
前記バイブレータを前記挿入位置と前記抜去位置との間で移動させる第1アクチュエータと、
を含んで構成されていることを特徴とする請求項1記載のトンネル覆工コンクリート用締固め装置。
【請求項6】
前記第2移動部は、
前記トンネルの周方向に沿って延在するアーチ状のガイドレールと、
前記バイブレータを支持すると共に前記ガイドレールに沿って移動可能に設けられた第2スライダと、
前記第2スライダを前記ガイドレールに沿って移動させる第2アクチュエータと、
を含んで構成されていることを特徴とする請求項1記載のトンネル覆工コンクリート用締固め装置。
【請求項7】
前記コンクリートの締固めは、前記トンネルの周方向に分割された複数の工区毎に行なわれ、
前記バイブレータ、前記ガイド部材、前記移動部材、第1移動部、第2移動部、前記制御装置は、前記複数の工区毎にそれぞれ設けられている、
ことを特徴とする請求項1記載のトンネル覆工コンクリート用締固め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル覆工コンクリート用締固め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルの内周面とトンネル覆工用型枠との間に打設された覆工コンクリートの締固めを行なうためにバイブレータが用いられている。
例えば、打設された覆工コンクリートにトンネル覆工用型枠に設けられた窓部からバイブレータを手作業で挿入しバイブレータを振動させて締固めを行なう方法が知られている。
また、特許文献1には、トンネルの天端部近傍において、トンネルの内周面とトンネル覆工用型枠との間に、トンネルの長手方向に延在する複数の細長状のバイブレータを予め配置すると共に、各バイブレータに取り付けられたワイヤを捲揚げることで各バイブレータをトンネルの長手方向に沿って移動させる巻揚機構を設ける。
そして、覆工コンクリートが天端部に打設されたのち、各バイブレータを振動させながら切羽側に向かって移動させて覆工コンクリートの締固めを行なったのち、各バイブレータをトンネル覆工用型枠の切羽側の妻型枠から取り出す方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3735600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前者の方法では、トンネル覆工用型枠に設けられた窓部からバイブレータを覆工コンクリートに挿入することからバイブレータで締固めを行なう範囲が限定されてしまう。また、後者の方法では、複数のバイブレータの位置が固定されているため、上記の場合と同様にバイブレータで締固めを行なう範囲が限定されてしまう。
そのため、覆工コンクリートの品質の向上を図る上で改善の余地がある。
本発明は前記事情に鑑み案出されたもので、本発明の目的は、覆工コンクリートの締固めの範囲を広げ覆工コンクリートの品質の向上を図る上で有利なトンネル覆工コンクリート用締固め装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施の形態は、掘削されたトンネルの内周面とトンネル覆工用型枠の外周面との間の打設空間に打設された覆工コンクリートの締固めを行なうトンネル覆工コンクリート用締固め装置であって、トンネル覆工用型枠のうち坑口側の妻型枠に取り付けられ、前記トンネルの周方向に延在するガイド路と、前記ガイド路に沿って延在し前記ガイド路を切羽側に開放する切羽側開口部と、前記ガイド路に沿って延在し前記ガイド路を坑口側に開放する坑口側開口部とを有するガイド部材と、前記ガイド路の前記切羽側開口部と坑口側開口部を閉塞しつつ前記ガイド路に移動可能に配置された可撓性を有する移動部材と、前記切羽側開口部と坑口側開口部とを通って前記移動部材の長手方向の中間部に貫通し前記移動部材に前記トンネルの長手方向に移動可能に挿通されたバイブレータと、前記バイブレータを前記トンネルの長手方向に移動させる第1移動部と、前記バイブレータを前記トンネルの周方向に移動させる第2移動部と、前記バイブレータの振動動作と、前記第1移動部による前記バイブレータの移動と、前記第2移動部による前記バイブレータの移動とを制御する制御装置とを備えることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記ガイド路は、均一内径の円形断面で形成され、前記移動部材は、前記ガイド路を移動可能な均一外径の円形断面で形成され、前記バイブレータは、前記移動部材の長手方向の中間部に貫通形成された挿通孔に挿通して配置され、前記挿通孔は、前記円形断面の直径よりも小さい寸法で形成されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記打設空間に対向する前記挿通孔の開口部には、前記開口部を常時閉塞する方向に付勢され前記バイブレータの前記切羽側から前記坑口側への移動により前記開口部を開放する蓋板が取り付けられていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記移動部材の一端は前記ガイド部材の一端において、第1巻き取り装置に巻き取り繰り出し可能に連結され、前記移動部材の他端は前記ガイド部材の他端において、第2巻き取り装置に巻き取り繰り出し可能に連結され、前記制御装置は、前記第2移動部による前記第1移動部の移動に同調して、前記第1巻き取り装置および前記第2巻き取り装置による前記移動部材の巻き取り繰り出しの動作を制御することを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記第1移動部は、前記バイブレータを、前記打設空間の内部に挿入した挿入位置と、前記妻型枠から前記切羽側に離間した抜去位置との間で前記トンネルの長手方向に沿って移動可能に支持する第1支持部と、前記バイブレータを前記挿入位置と前記抜去位置との間で移動させる第1アクチュエータとを含んで構成されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記第2移動部は、前記トンネルの周方向に沿って延在するアーチ状のガイドレールと、前記バイブレータを支持すると共に前記ガイドレールに沿って移動可能に設けられた第2スライダと、前記第2スライダを前記ガイドレールに沿って移動させる第2アクチュエータとを含んで構成されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記覆工コンクリートの締固めは、前記トンネルの周方向に分割された複数の工区毎に行なわれ、前記バイブレータ、前記ガイド部材、前記移動部材、第1移動部、第2移動部、前記制御装置は、前記複数の工区毎にそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施の形態によれば、トンネル覆工用型枠のうち切羽側の妻型枠に設けたガイド部材のガイド路に移動可能に配置された可撓性を有する移動部材を設け、移動部材の長手方向の中間部に貫通し移動部材にトンネルの長手方向に移動可能に挿通されたバイブレータを、第1移動部によってトンネルの長手方向に移動させると共に、第2移動部によってトンネルの周方向に移動させ、バイブレータの振動動作と、第1、第2移動部によるバイブレータの移動とを制御装置によって制御することで覆工コンクリートの締固めを行なうようにした。
したがって、バイブレータをトンネルの周方向に連続させて位置させることができ、覆工コンクリートの締固めの範囲をトンネルの周方向に連続させることができるため、覆工コンクリートの締固めの範囲を広げ覆工コンクリートの品質の向上を図る上で有利となる。
また、覆工コンクリートの締固めに際して、作業員の手作業によるバイブレータの操作が不要となることは無論のこと、予め複数のバイブレータをトンネルの周方向に間隔をおいて配置しておく必要がないため、バイブレータの配置作業を省くと共に、バイブレータの数を低減することができることから、省人化、設備コストの低減、施工効率の向上を図る上で有利となる。
また、ガイド路を均一内径の円形断面で形成し、移動部材を、ガイド路を移動可能な均一外径の円形断面で形成し、バイブレータを移動部材の長手方向の中間部に貫通形成された挿通孔に挿通して配置し、挿通孔を、上記円形断面の直径よりも小さい寸法で形成すると、ガイド路および移動部材の構成の簡素化を図りつつ、移動部材の移動を円滑に行なうことができ、第2移動部によるバイブレータの周方向への移動を円滑に確実に行なう上で有利となる。
また、打設空間に対向する挿通孔の開口部に、開口部を常時閉塞する方向に付勢されバイブレータの切羽側から坑口側への移動により開口部を開放する蓋板を取り付けると、挿通孔から覆工コンクリートの流出を防止するための作業が不要となり、トンネルの覆工作業を効率よく行なう上で有利となる。
また、移動部材の一端および他端を第1巻き取り装置および第2巻き取り装置に巻き取り繰り出し可能に連結し、制御装置により第2移動部によるバイブレータの往移動に同調して、第1巻き取り装置および第2巻き取り装置による移動部材の巻き取り繰り出しの動作を制御するようにすると、第2移動部によるバイブレータの往移動を円滑に行なう上で有利となり、トンネルの覆工作業を効率よく行なう上で有利となる。
また、第1移動部を、バイブレータを打設空間の内部に挿入した挿入位置と、打設空間から抜き出し妻型枠から切羽側に離間した抜去位置との間でトンネルの長手方向に沿って移動可能に支持する第1支持部と、バイブレータを挿入位置と抜去位置との間で移動させる第1アクチュエータとを含んで構成すると、バイブレータを挿入位置と抜去位置との間で移動させる構成の簡素化を図れ、トンネル覆工コンクリート用締固め装置の構成の簡素化を図る上で有利となる。
また、第2移動部を、第1移動部をトンネルの周方向に沿って移動可能に支持する第2支持部と、第1移動部をトンネルの周方向に沿って移動させる第2アクチュエータとを含んで構成すると、バイブレータをトンネルの周方向に沿って移動させる構成の簡素化を図れ、トンネル覆工コンクリート用締固め装置の構成の簡素化を図る上で有利となる。
また、覆工コンクリートの締固めを、トンネルの周方向に分割された複数の工区毎に行ない、ガイド部材、移動部材、第1移動部、第2移動部、制御装置を、トンネルの複数の工区毎にそれぞれ設けるようにすると、バイブレータによる覆工コンクリートの締固め作業を各工区毎にそれぞれ行なうことができるため、トンネルの半径が巨大化した場合などにトンネルの覆工作業の効率化、工期の短縮を図る上でより一層有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態に係るトンネル覆工コンクリート用締固め装置を切羽側から見た正面図であり、第1移動部および第2移動部の図示を省略している。
図2】実施の形態に係るトンネル覆工コンクリート用締固め装置の一部を破断した側面図である。
図3図2のA矢視図である。
図4図2のB-B線断面図である。
図5】(A)は図4のA-A線断面図、(B)は図4のB-B線断面図である。
図6】(A)は蓋板の閉塞位置を示す断面図、(B)は蓋板の開放位置を示す断面図である。
図7】ガイド部材および移動部材の位置関係を示す斜視図である。
図8】実施の形態に係るトンネル覆工コンクリート用締固め装置の制御系の構成を示すブロック図である。
図9】実施の形態に係るトンネル覆工コンクリート用締固め装置の動作フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
まず、トンネル覆工用型枠について説明する。
図1図2に示すように、トンネル覆工用型枠12は、地山18に掘削されたトンネル10の内周面(内壁面)1002に、本実施の形態では、一次覆工がなされたトンネル10の内周面1002に覆工コンクリートを打設して二次覆工を行なうために使用されるものである。
トンネル覆工用型枠12は鋼製であり、トンネル10の床版1004に設けられた不図示のレールに沿ってトンネル10の長手方向に移動可能に設けられている。
トンネル覆工用型枠12は、型枠本体14と、妻型枠16とを含んで構成されている。
型枠本体14は、トンネル10の断面形状に対応したアーチ状の断面形状を構成している。
型枠本体14には、コンクリート打設装置100(図8参照)から供給されるコンクリートを打設するための不図示の複数の打設孔が、トンネル10の周方向とトンネル10の長手方向に間隔をおいて設けられている。
妻型枠16は、型枠本体14の切羽側の端部に接続され、トンネル10の周方向に沿った長さと、トンネル10の半径方向に沿った幅とを有し、トンネル10の周方向に沿って延在している。
図2に示すように、妻型枠16のうち、切羽側に対向する面を妻型枠外面1602、坑口側に対向する面を妻型枠内面1604とする。
トンネル10の内周面1002とトンネル覆工用型枠12の外周面との間には、言い換えると、トンネル10の内周面1002と、型枠本体14の外周面1402および妻型枠16の妻型枠内面1604との間には、覆工コンクリートが打設される打設空間Sが形成される。
【0009】
次に、トンネル覆工コンクリート用締固め装置20について説明する。
トンネル覆工コンクリート用締固め装置20は、打設空間Sに打設されたコンクリートの締固めを行なうものである。
図1図2に示すように、トンネル覆工コンクリート用締固め装置20は、ガイド部材22と、移動部材24と、第1巻き取り装置26と、第2巻き取り装置28と、バイブレータ30と、第1移動部32と、第2移動部34と、制御装置36(図8参照)とを含んで構成されている。
【0010】
図4図5に示すように、ガイド部材22は、ガイド路2202と、切羽側開口部2204と、坑口側開口部2206とを備えている。
ガイド路2202は、妻型枠16の幅方向の中間部に介設され、妻型枠16と共にトンネル10の周方向に延在している。
本実施の形態では、ガイド路2202は、トンネル10の半径方向において対向する一対のガイド部材22で構成されている。
一対のガイド部材22は、共に半円弧状を呈し、ガイド路2202は、一対のガイド部材22の間に、均一内径の円形断面で形成されている。
一対のガイド部材22は、トンネル10の長手方向に沿った幅を有している。
【0011】
図4図5(A)に示すように、妻型枠16の幅方向の中間部にトンネル10の周方向に沿って延在するスリットが設けられ、妻型枠16は、トンネル10の半径方向においてスリットにより切り離された一対の妻型枠分割体16Aで構成され、一対の妻型枠分割体16Aは、トンネル10の周方向に間隔をおいた複数箇所で不図示の連結部材により連結されている。
このスリットに一対のガイド部材22が配置され、図5に示すように、一対のガイド部材22の幅方向の中央部の外面が妻型枠16に取り付けられている。
図5に示すように、切羽側開口部2204は、一対のガイド部材22の幅方向の一方の端部間に設けられ、トンネル10の半径方向に沿った均一幅を有してガイド路2202に、ガイド路2202の全長にわたって連続して延在し、ガイド路2202を切羽側に開放している。
坑口側開口部2206は、一対のガイド部材22の幅方向の他方の端部間に設けられ、トンネル10の半径方向に沿った均一幅を有してガイド路2202に、ガイド路2202の全長にわたって連続して延在し、ガイド路2202を坑口側に開放している。
【0012】
移動部材24は、ガイド路2202の切羽側開口部2204と坑口側開口部2206を閉塞しつつ、詳細には、ガイド路2202および切羽側開口部2204並びに坑口側開口部2206を閉塞しつつガイド路2202に移動可能に配置されている。
本実施の形態では、移動部材24は、可撓性を有し均一外径の円形断面で形成されている。
可撓性を有する移動部材24としては、例えば、天然繊維、合成繊維、金属ワイヤなどで構成されたロープを用いることができる。
移動部材24の表面には、覆工コンクリートに対して剥離性を高めるためのコーティングや、覆工コンクリートの付着を抑制するためのコーティングを施すなど任意であり、それらのコーティングには従来公知の様々な材料が使用可能である。
【0013】
図4図5(A)、図7に示すように、移動部材24の長手方向の中間部には、後述するバイブレータ30が貫通可能な挿通孔38が形成され、本実施の形態では、挿通孔38は均一内径の円孔で形成され移動部材24の円形断面の直径よりも小さい寸法で形成されている。
なお、移動部材24の中間部に、移動部材24よりも強度剛性に優れる材料からなり移動部材24と同一の断面で形成された部材を取り付けておき、この部材に挿通孔38を設けるなど任意である。
【0014】
図6(A)、(B)に示すように、移動部材24の挿通孔38の坑口側の開口部3802、すなわち打設空間Sに対向する挿通孔38の開口部3802には、開口部3802を開閉する蓋板40が取り付けられている。なお、図6以外の図面において蓋板40は図示を省略している。
図6(A)に示すように、蓋板40は、ヒンジ4002を介して移動部材24に揺動可能に支持されており、蓋板40はヒンジ4002に設けられた不図示の付勢部材(ねじりスプリング)によって開口部3802を常時閉塞する方向に付勢されている。
図6(B)に示すように、バイブレータ30の切羽側から坑口側への移動により付勢部材の付勢力に抗して蓋板40が揺動されて開口部3802が開放され、バイブレータ30が開口部3802を介して打設空間S内に挿入される。
また、バイブレータ30の坑口側から切羽側への移動によりバイブレータ30が開口部3802から抜去されると、付勢部材の付勢力により蓋板40が揺動されて開口部3802を閉塞し、これにより打設空間Sに打設された覆工コンクリートの挿通孔38からの流出が防止される。
【0015】
なお、蓋板40は省略可能である。ただし、一対のガイド部材22と移動部材24は妻型枠16の幅方向の中間部に介設され、妻型枠16と共にトンネル覆工用型枠12の一部を構成するので、蓋板40を省略した場合には、例えば、挿通孔38にバイブレータ30の先部を挿入しておき、挿通孔38をバイブレータ30で塞ぐことが必要となり、あるいは、挿通孔38からバイブレータ30を抜き取ったのち、挿通孔38にキャップをはめ込んで挿通孔38を塞ぐことが必要となる。したがって、蓋板40を設けると、このような挿通孔38から覆工コンクリートの流出を防止するための作業が不要となるため、蓋板40を設けると、トンネル10の覆工作業を効率よく行なう上で有利となる。
【0016】
図1に示すように、第1巻き取り装置26は、ガイド部材22の一端において移動部材24の一端を巻き取り繰り出し可能に連結している。
第2巻き取り装置28は、ガイド部材22の他端において移動部材24の他端を巻き取り繰り出し可能に連結している。
第1、第2巻き取り装置26、28は、移動部材24が巻回される巻胴部(不図示)と、巻胴部を巻き取り方向および繰り出し方向に回転駆動する駆動部(不図示)とを含んで構成されている。
後述する制御装置36によって第1、第2巻き取り装置26、28の駆動部の回転が制御されることにより、移動部材24がガイド路2202を往復移動する。また、制御装置36の制御により移動部材24の移動量も制御されるようになっている。
【0017】
図2に示すように、バイブレータ30は、均一断面の細長状を呈し、本実施の形態では均一外径の円柱状を呈し、バイブレータ30はその長手方向をトンネル10の長手方向に沿わせて使用される。
バイブレータ30は、制御装置36の制御により振動が制御されるものであり、打設空間Sに打設された覆工コンクリートに挿入された状態で振動することにより覆工コンクリートの締固めを行なう。
図5(A)、図7に示すように、バイブレータ30は、挿通孔38を通って移動部材24の長手方向の中間部を貫通可能に設けられている。
【0018】
図2に示すように、第1移動部32は、バイブレータ30をトンネル10の長手方向に移動させるものであり、第1移動部32は後述する第2移動部34の第2スライダ部50で支持されている。
本実施の形態では、第1移動部32は、リニアアクチュエータ42と、バイブレータガイド44とを含んで構成されている。
リニアアクチュエータ42は、細長形状のテーブル部4202と、テーブル部4202に沿って直線往復移動する第1スライダ部4204とを備え、制御装置36によって第1スライダ部4204の移動が制御される。
テーブル部4202は、その長手方向をトンネル10の長手方向に向けて第2移動部34の第2スライダ部50に取り付けられ、テーブル部4202は第2スライダによりガイド部材22に沿ってトンネル10の周方向に沿って移動される。
第1スライダ部4204には、バイブレータ30の長手方向の基端が取り付けられており、具体的には、バイブレータ30の基端寄りの箇所が取付金具を介して第1スライダ部4204に取り付けられている。
【0019】
バイブレータガイド44は、テーブル部4202の長手方向の一端、言い換えると、打設空間S寄りの箇所に設けられ、バイブレータ30をその長手方向に移動可能にかつ長手方向と直交する方向に移動不能に支持しており、バイブレータガイド44に支持されることでバイブレータ30が円滑に移動されるように図られている。
第1スライダ部4204は、打設空間Sに最も近接した前方限界位置と、打設空間Sから最も離間した後方限界位置との間で移動する。
バイブレータ30は、第1スライダ部4204の前方限界位置で、挿通孔38を貫通して打設空間Sの内部にバイブレータ30の大半が挿入された挿入位置となる。
バイブレータ30は、第1スライダ部4204の後方限界位置で、打設空間Sから抜き出され、移動部材24から切羽側に離間した抜去位置(図2)となる。
本実施の形態では、バイブレータ30を、打設空間Sの内部に挿入した挿入位置と、打設空間Sから抜き出し妻型枠16から切羽側に離間した抜去位置との間でトンネル10の長手方向に沿って移動可能に支持する第1支持部46がリニアアクチュエータ42およびバイブレータガイド44によって構成されている。
また、バイブレータ30を挿入位置と抜去位置との間で移動させる第1アクチュエータがリニアアクチュエータ42によって構成されている。
なお、第1移動部32は、本実施の形態のようにリニアアクチュエータ42を用いた構成に限定されるものではなく、油圧シリンダや空気シリンダなど従来公知の様々なアクチュエータを用いて構成することができる。
【0020】
第2移動部34は、第1移動部32を介してバイブレータ30をトンネル10の周方向に移動させるものである。
図2図3に示すように、本実施の形態では、第2移動部34は、ガイドレール48と、第2スライダ部50と、第2アクチュエータ52(図8参照)とを含んで構成されている。
ガイドレール48は、妻型枠16から切羽側に離間した床版1004から起立され、トンネル10の周方向に沿って延在するアーチ状を呈している。
図3に示すように、ガイドレール48の半径方向外側の面がガイドレール外面4802であり、半径方向内側の面がガイドレール内面4804である。
第2スライダ部50は、第1移動部32を支持すると共にガイドレール48に沿って移動可能に設けられている。
本実施の形態では、第2スライダ部50には、リニアアクチュエータ42のテーブル部4202の長手方向の中央部が取り付けられている。
また、本実施の形態では、図3に示すように、ガイドレール48および第2スライダ部50によって、第1移動部32をトンネル10の周方向に沿って移動可能に支持する第2支持部54が構成されている。
【0021】
第2アクチュエータ52は、第2スライダ部50を介して第1移動部32をガイドレール48に沿って移動させるものである。
本実施の形態では、第2アクチュエータ52は、第2スライダ部50に組み込まれた不図示の駆動ローラおよび駆動モータを含んで構成されている。
駆動ローラは、トンネル10の長手方向に軸線を向け、外周面をガイドレール外面4802に当接させた状態で第2スライダに回転可能に支持されている。
駆動モータは、駆動ローラに回転駆動力を与え、駆動ローラを正逆回転させるものであり、制御装置36によって回転が制御される。
したがって、駆動モータが駆動ローラを正逆回転させることで、駆動ローラがガイドレール外面4802上を転動し、これにより第2スライダ部50がガイドレール48に沿って移動する。
また、駆動モータには、その回転量を検出するロータリーエンコーダ56(図8参照)が設けられており、ロータリーエンコーダ56で検出された回転量を示す検出信号は制御装置36に供給される。
制御装置36は、検出信号に基づいて駆動ローラの回転量を検出し、検出した回転量に基づいて第2スライダ部50のガイドレール48に沿った位置、言い換えると、トンネル10の周方向における位置を算出する機能を備えている。
【0022】
なお、第2アクチュエータ52は上記構成に限定されるものではなく、従来公知の様々なアクチュエータが使用可能である。
例えば、ガイドレール48の周方向に沿って延在する歯部を設けておき、駆動ローラに代えガイドレール48の歯部に噛合可能な駆動歯車を用いるなど任意である。
あるいは、第2アクチュエータ52は、一端が第2スライダ部50の一側に連結された第1ワイヤと、第1ワイヤの他端が連結され第1ワイヤの巻き取り繰り出しを行なう第1ワイヤ巻き取り装置と、一端が第2スライダ部50の他側に連結された第2ワイヤと、第2ワイヤの他端が連結され第2ワイヤの巻き取り繰り出しを行なう第2ワイヤ巻き取り装置とを備える。
そして、第1ワイヤ巻き取り装置および第2ワイヤ巻き取り装置によって第1ワイヤおよび第2ワイヤを連動して巻き取り繰り出しを行なうことにより第2スライダ部50をガイドレール48に沿って往復移動させるようにしてもよい。
あるいは、第2アクチュエータ52は、第2スライダ部50が連結されると共に、従動スプロケットと駆動スプロケットとにわたって張設された無端チェーンと、駆動スプロケットを回転駆動する駆動モータとを備える。
そして、駆動モータを正逆回転させることにより無端チェーンを回転させることにより第2スライダ部50をガイドレール48に沿って往復移動させるようにしてもよい。
このように第2アクチュエータ52を含む第2移動部34の構成には従来公知の様々な構造が採用可能である。
【0023】
図8に示すように、制御装置36は、コンピュータによって構成され、コンピュータは、トンネル10構内の適宜箇所に設置され、バイブレータ30、第1、第2アクチュエータ42、52、ロータリーエンコーダ56、第1、第2巻き取り装置26、28、コンクリート打設装置100と不図示のケーブルを介して接続されている。
コンピュータは、何れも不図示のCPU、ROM、RAM、ハードディスク装置、キーボード、マウス、ディスプレイ、インターフェースなどを含んで構成されている。
ROMは制御プログラムなどを格納し、RAMはワーキングエリアを提供するものである。
ハードディスク装置は、トンネル覆工コンクリート用締固め装置20の各機能を実現するための制御プログラムなどを格納している。
キーボードおよびマウスは、操作者による操作入力を受け付ける入力装置である。
ディスプレイはデータを表示出力する出力装置である。
インターフェースは、外部機器とデータ、信号の授受を行うためのものである。
本実施の形態では、インターフェースは、コンクリート打設装置100から打設空間Sに打設されたコンクリートの打設量を示す打設量情報を受け付ける。
また、インターフェースは、ロータリーエンコーダ56からの検出信号を受け付ける。
また、インターフェースは、バイブレータ30、第1、第2アクチュエータ42、52、第1、第2巻き取り装置26、28に制御信号を与える。
【0024】
CPUが、ハードディスク装置に格納されている制御プログラムを実行することにより制御装置36(コンピュータ)によって、以下に説明する各機能が実現される。
制御装置36は、第1移動部32(リニアアクチュエータ42)を制御することにより、バイブレータ30を抜去位置と挿入位置との間で移動させる。
なお、制御装置36は、バイブレータ30の抜去位置から挿入位置への移動に先立って、バイブレータ30のトンネル10の周方向の位置が移動部材24の挿通孔38の位置と合致するように、第2移動部34および第1、第2巻き取り装置26、28を制御する。
【0025】
また、制御装置36は、コンクリート打設装置100からの打設量情報が供給(入力)されることにより、打設量情報に基づいてバイブレータ30のトンネル10の周方向における締固め位置を決定する。
打設量情報は、打設空間S内に打設された覆工コンクリートの高さ方向の位置であってもよいし、打設された覆工コンクリートの体積であってもよい。
また、締固め位置とは、打設された覆工コンクリートを締め固めるために適切なバイブレータ30のトンネル10の周方向における位置である。
覆工コンクリートの打設空間Sに対する打設は段階的に行われるため、締固め位置は打設空間Sに打設される覆工コンクリートの打設量に対応して段階的に決定されることになる。
制御装置36による締固め位置の決定は、例えば、打設量情報と締固め位置とが対応付けられたテーブルがハードディスク装置に格納されており、入力された打設量情報に対応する締固め位置をテーブルから特定することでなされる。
なお、打設量情報は、コンクリート打設装置100からコンピュータに供給する他、以下のような方法によってコンピュータに設定してもよい。
1)コンクリート打設装置100によって打設された覆工コンクリートの打設量を把握した作業者がキーボードやマウスなどの入力装置を操作することによって手作業によって打設量情報をコンピュータに入力する。
2)トンネル覆工用型枠12の外周面に、打設空間S内に打設された覆工コンクリートを検出するコンクリートセンサを設置しておき、コンクリートセンサからの検出信号に基づいてコンピュータが打設量情報を算出して設定する。このようなコンクリートセンサとして、従来公知の様々なコンクリートセンサが使用可能である。
【0026】
また、制御装置36は、決定された締固め位置に対応して第2アクチュエータ52を制御して第2移動部34によってバイブレータ30をトンネル10の周方向に沿って移動させ、バイブレータ30を締固め位置に位置させる制御を行なう。
また、制御装置36は、第2移動部34による第1移動部32(バイブレータ30)の移動に同調して、第1巻き取り装置26および第2巻き取り装置28による移動部材24の巻き取り繰り出しの動作を制御し、バイブレータ30のトンネル10の周方向における移動が円滑に行われるようにしている。
【0027】
制御装置36は、バイブレータ30が締固め位置に位置したならば、バイブレータ30の振動動作を実行させつつ、第1アクチュエータ(リニアアクチュエータ42)を制御してバイブレータ30を抜去位置から打設空間Sの内部にバイブレータ30の大半が挿入された挿入位置へ移動させたのち、バイブレータ30を振動させることにより打設空間Sに打設された覆工コンクリートの締固めを行なう。
この際、例えば、制御装置36は、第1移動部32、第2移動部34を制御することによりバイブレータ30をトンネル10の長手方向に沿って連続的に往復移動させると共に、バイブレータ30をトンネル10の周方向に沿って連続的に往復移動させながら締固め動作を行なう。
あるいは、制御装置36は、第1移動部32、第2移動部34を制御することによりバイブレータ30をトンネル10の周方向に間隔をおいた複数箇所において停止させ、それら複数箇所においてバイブレータ30をトンネル10の長手方向に沿って連続的に往復移動させることで締固め動作を行なうことで締固め動作を行なってもよい。
あるいは、制御装置36は、第1移動部32、第2移動部34を制御することにより、バイブレータ30を挿入位置に停止させた状態でバイブレータ30をトンネル10の周方向に連続的に往復移動させることで締固め動作を行なってもよい。
なお、この場合も制御装置36は、第2移動部34による第1移動部32の移動に同調して、第1巻き取り装置26および第2巻き取り装置28による移動部材24の巻き取り繰り出しの動作を制御する。
制御装置36は、このようにして打設空間Sに打設された覆工コンクリートの締固めを行なう。
【0028】
次に、図9のフローチャートを参照してトンネル覆工コンクリート用締固め装置20の動作について説明する。
予め、発破工法などの公知の掘削方法により地山が掘削され、トンネル10の内周面1002にコンクリートが吹き付けられて一次覆工がなされたものとする。
トンネル10の長手方向における二次覆工を行なう対象となる位置にトンネル覆工用型枠12が移動され設置される(ステップS10)。
これにより、トンネル10の内周面1002と、型枠本体14の外周面1402および妻型枠16の妻型枠内面1604との間に覆工コンクリートが打設される打設空間Sが形成される。
また、トンネル覆工用型枠12が設置されると共に、覆工コンクリートの打設を行なうコンクリート打設装置100の移動、設置も行われる。
【0029】
次に、コンクリート打設装置100により、トンネル覆工用型枠12の打設孔から覆工コンクリートが打設空間Sに打設される(ステップS12)。
コンクリート打設装置100による覆工コンクリートの打設は、トンネル10の内周面1002の下部から上部(天端部)に向かって段階的に行われる。すなわち、1段階毎に所定量の覆工コンクリートが打設される。
所定量の覆工コンクリートが打設されたならば、コンクリート打設装置100は覆工コンクリートの打設動作を停止し、コンクリート打設装置100は、打設された覆工コンクリートの打設量情報を制御装置36に供給する(ステップS14)。
制御装置36は、供給された打設量情報に基づいてバイブレータ30のトンネル10の周方向における締固め位置を決定し、決定した締固め位置に基づいて第2移動部34(第2アクチュエータ52)を制御することでバイブレータ30を締固め位置に位置させる(ステップS16)。
さらに制御装置36は、第2移動部34によるバイブレータ30の移動に同調して、第1巻き取り装置26および第2巻き取り装置28による移動部材24の巻き取り繰り出しの動作を制御し、バイブレータ30が移動部材24の挿通孔38に挿通できるように移動部材24を移動させる(ステップS18)。
なお、移動部材24の初期位置は、挿通孔38が例えば図1に示すように天端部に位置した位置であってもよいし、トンネル10の内周面1002の最も下部に位置した状態であってもよいし、あるいは、トンネル10の内周面1002の下部と天端部との間の中間箇所に位置した状態であっても良い。
【0030】
そして、制御装置36は、第1移動部32を制御してバイブレータ30を抜去位置から挿入位置に向かって移動させる(ステップS20)。これにより、バイブレータ30は、移動部材24の挿通孔38を介して打設空間Sに打設された覆工コンクリートの内部に挿入された状態となる。
この際、移動部材24の挿通孔38の蓋板40は、バイブレータ30の先端によって揺動され蓋板40が開放される。
次いで、制御装置36は、バイブレータ30を振動させ、バイブレータ30による覆工コンクリートの締固め動作を実行する(ステップS22)。
例えば、前述したように、制御装置36は、第1移動部32、第2移動部34を制御することによりバイブレータ30をトンネル10の長手方向に沿って連続的に往復移動させると共に、バイブレータ30をトンネル10の周方向に沿って連続的に往復移動させながら締固め動作を行なう。
【0031】
締固め動作が終了したならば、制御装置36は、第1移動部32を制御してバイブレータ30を抜去位置に向かって移動させ、移動部材24の挿通孔38を介してバイブレータ30を打設空間Sから抜去する(ステップS24)。バイブレータ30が移動部材24の挿通孔38から抜去されることで蓋板40は揺動して挿通孔38を閉塞し、覆工コンクリートの挿通孔38からの流出が防止される。
【0032】
打設空間Sの全域に対する覆工コンクリートの打設が完了していなければ(ステップS26で否定)、ステップS12に移行して次の段階の覆工コンクリートの打設動作を継続し、同様の処理を繰り返して実行する。
一方、打設空間Sの全域に対する覆工コンクリートの打設が完了したならば、すなわち、天端部までの覆工コンクリートの打設が完了したならば(ステップS26で肯定)、コンクリート打設装置100による覆工コンクリートの打設とトンネル覆工コンクリート用締固め装置20による締固めを終了する。
【0033】
以上説明したように本実施の形態によれば、トンネル覆工用型枠12のうち切羽側の妻型枠16に取り付けられトンネル10の周方向に延在するガイド路2202と、ガイド路2202に沿って延在しガイド路2202を切羽側に開放する切羽側開口部2204と、ガイド路2202に沿って延在しガイド路2202を坑口側に開放する坑口側開口部2206とを有するガイド部材22を設け、切羽側開口部2204と坑口側開口部2206を閉塞しつつガイド路2202に移動可能に配置された可撓性を有する移動部材24を設け、切羽側開口部2204と坑口側開口部2206とを通って移動部材24の長手方向の中間部に貫通し移動部材24にトンネル10の長手方向に移動可能に挿通されたバイブレータ30を、第1移動部32によってトンネル10の長手方向に移動させると共に、第2移動部34によってトンネル10の周方向に移動させ、バイブレータ30の振動動作と、第1、第2移動部32、34によるバイブレータ30の移動とを制御装置36によって制御するようにした。
したがって、覆工コンクリートの締固めに際してバイブレータ30をトンネル10の周方向に連続させて位置させることができ、覆工コンクリートの締固めの範囲をトンネル10の周方向に連続させることができるため、覆工コンクリートの締固めの範囲を広げ覆工コンクリートの品質の向上を図る上で有利となる。
また、従来技術のように作業員がバイブレータをトンネル覆工用型枠の窓部から覆工コンクリートに挿入してバイブレータを操作する作業が不要となることは無論のこと、従来技術のように、予め、複数のバイブレータをトンネル10の周方向に間隔をおいて配置しておく必要がないため、バイブレータの配置作業を省くと共に、バイブレータの数を低減することができることから、省人化、設備コストの低減、施工効率の向上を図る上でも有利となる。
【0034】
また、本実施の形態では、ガイド路2202を均一内径の円形断面で形成し、移動部材24を、ガイド路2202を移動可能な均一外径の円形断面で形成し、バイブレータを移動部材24の長手方向の中間部に貫通形成された挿通孔38に挿通して配置し、挿通孔38を、上記円形断面の直径よりも小さい寸法で形成したので、ガイド路2202および移動部材24の構成の簡素化を図りつつ、移動部材24の移動を円滑に行なうことができ、第2移動部34によるバイブレータ30の周方向への移動を円滑に確実に行なう上で有利となる。
【0035】
また、本実施の形態では、打設空間Sに対向する挿通孔38の開口部3802には、開口部3802を常時閉塞する方向に付勢されバイブレータ30の切羽側から坑口側への移動により開口部3802を開放する蓋板40を取り付けた。
そのため、挿通孔38から覆工コンクリートの流出を防止するための作業が不要となり、トンネル10の覆工作業を効率よく行なう上で有利となる。
【0036】
また、本実施の形態では、移動部材24の一端および他端を第1巻き取り装置26および第2巻き取り装置28に巻き取り繰り出し可能に連結し、制御装置36により第2移動部34によるバイブレータ30の往移動に同調して、第1巻き取り装置26および第2巻き取り装置28による移動部材24の巻き取り繰り出しの動作を制御するようにした。
したがって、第2移動部34によるバイブレータ30の往移動を円滑に行なう上で有利となり、トンネル10の覆工作業を効率よく行なう上で有利となる。
【0037】
また、本実施の形態では、第1移動部32は、バイブレータ30を、打設空間Sの内部に挿入した挿入位置と、打設空間Sから抜き出し妻型枠16から切羽側に離間した抜去位置との間でトンネル10の長手方向に沿って移動可能に支持する第1支持部46と、バイブレータ30を挿入位置と抜去位置との間で移動させる第1アクチュエータとを含んで構成されている。
そのため、バイブレータ30を挿入位置と抜去位置との間で移動させる構成の簡素化を図れ、トンネル覆工コンクリート用締固め装置20の構成の簡素化を図る上で有利となる。
【0038】
また、本実施の形態では、第2移動部34は、第1移動部32をトンネル10の周方向に沿って移動可能に支持する第2支持部54と、第1移動部32をトンネル10の周方向に沿って移動させる第2アクチュエータ52とを含んで構成されている。
そのため、バイブレータ30をトンネル10の周方向に沿って移動させる構成の簡素化を図れ、トンネル覆工コンクリート用締固め装置20の構成の簡素化を図る上で有利となる。
【0039】
また、本実施の形態では、バイブレータ30を1つ設け、この1つのバイブレータ30をトンネル10の周方向に沿って移動させて覆工コンクリートの締固めを行なう場合について説明した。
しかしながら、覆工コンクリートの締固めを、トンネル10の周方向に分割された複数の工区毎に行ない、ガイド部材22、移動部材24、第1移動部32、第2移動部34、制御装置36を、トンネル10の複数の工区毎にそれぞれ設けるようにしてもよい。
このようにすると、バイブレータ30による覆工コンクリートの締固め作業を各工区毎にそれぞれ行なうことができるため、トンネル10の半径が巨大化した場合などにトンネル10の覆工作業の効率化、工期の短縮を図る上でより一層有利となる。
【0040】
なお、実施の形態では、移動部材としてロープを用いた場合について説明したが、移動部材として蛇腹構造の板材などを用いてもよく、移動部材はロープに限定されず従来公知の様々な部材が採用可能である。そして、用いる移動部材の形状に応じてガイド部材の形状が適宜変形される。
【符号の説明】
【0041】
10 トンネル
1002 内周面
1004 床版
12 トンネル覆工用型枠
14 型枠本体
1402 外周面
16 妻型枠
1602 妻型枠外面
1604 妻型枠内面
16A 妻型枠分割体
18 地山
20 トンネル覆工コンクリート用締固め装置
22 ガイド部材
2202 ガイド路
2204 切羽側開口部
2206 坑口側開口部
24 移動部材
26 第1巻き取り装置
28 第2巻き取り装置
30 バイブレータ
32 第1移動部
34 第2移動部
36 制御装置
38 挿通孔
3802 開口部
40 蓋板
4002 ヒンジ
42 リニアアクチュエータ(第1アクチュエータ)
4202 テーブル部
4204 第1スライダ部
44 バイブレータガイド
46 第1支持部
48 ガイドレール
4802 ガイドレール外面
4804 ガイドレール内面
50 第2スライダ部
52 第2アクチュエータ
54 第2支持部
56 ロータリーエンコーダ
100 コンクリート打設装置
S 打設空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9