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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111411
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】マルチエレメントファイバ
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20240809BHJP
【FI】
G02B6/44 366
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015902
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】竹永 勝宏
【テーマコード(参考)】
2H201
【Fターム(参考)】
2H201AX17
2H201BB05
2H201BB12
2H201BB22
2H201BB24
2H201BB33
2H201BB34
2H201BB97
2H201DD06
2H201DD21
2H201DD31
2H201DD42
2H201KK02
2H201KK17
2H201KK42C
2H201KK62
2H201KK63
2H201KK72
2H201KK75
(57)【要約】
【課題】 被覆層内の光ファイバを識別し得るマルチエレメントファイバを提供する。
【解決手段】 マルチエレメントファイバ1は、コア11とコア11の外周面を囲うクラッド12とを有する複数の光ファイバ10A-10Cと、それぞれの光ファイバ10A-10Cのクラッド12の外周面を囲う被覆層と、を備え、光ファイバ10A-10Cの少なくとも1つにおける長手方向に垂直な断面での屈折率の分布が、他の光ファイバの少なくとも1つおける長手方向に垂直な断面での屈折率の分布と異なることを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのコアと前記コアの外周面を囲うクラッドとを有する複数の光ファイバと、
それぞれの前記光ファイバの前記クラッドの外周面を囲う被覆層と、
を備え、
前記光ファイバの少なくとも1つにおける長手方向に垂直な断面での屈折率の分布が、他の前記光ファイバの少なくとも1つにおける長手方向に垂直な断面での屈折率の分布と異なる
ことを特徴とするマルチエレメントファイバ。
【請求項2】
前記光ファイバの少なくとも1つは、他の前記光ファイバの少なくとも1つと識別可能な識別部を前記クラッド内に有する
ことを特徴とする請求項1に記載のマルチエレメントファイバ。
【請求項3】
前記光ファイバの少なくとも1つの前記クラッドの外形は、他の前記光ファイバの少なくとも1つの前記クラッドの外形と異なる
ことを特徴とする請求項1に記載のマルチエレメントファイバ。
【請求項4】
前記光ファイバの少なくとも1つの前記クラッドの太さは、他の前記光ファイバの少なくとも1つの前記クラッドの太さと異なる
ことを特徴とする請求項1に記載のマルチエレメントファイバ。
【請求項5】
それぞれの前記光ファイバにおける長手方向に垂直な断面での屈折率の分布は、互いに異なる
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のマルチエレメントファイバ。
【請求項6】
互いに隣り合う前記光ファイバの前記クラッドのそれぞれの一部は、互いに融着している
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のマルチエレメントファイバ。
【請求項7】
前記光ファイバの前記クラッドのそれぞれは互いに非融着である
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のマルチエレメントファイバ。
【請求項8】
少なくとも1つの前記光ファイバが、前記被覆層の中心軸の周りを回転するように螺旋状に配置される
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のマルチエレメントファイバ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチエレメントファイバに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、一般的に普及している光ファイバ通信システムに用いられる光ファイバは、一本のコアの外周がクラッドにより囲まれた構造をしており、このコアを光信号が伝搬することで情報が伝達される。そして、近年、光ファイバ通信システムの普及に伴い、伝達される情報量が飛躍的に増大している。
【0003】
下記特許文献1には、こうした光ファイバ通信システムの伝送容量増大を実現するために、複数のシングルコアファイバが1つの被覆層内に配置されたマルチエレメントファイバを用いて、それぞれのコアを伝搬する光により複数の信号を伝送させることが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】S Jain et al., “Multi-element fiber technology for space-division multiplexing applications,” Opt. Express, Vol. 2, issue 4, pp. 3787-3796, 2014.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなマルチエレメントファイバのそれぞれのシングルコアファイバを他の導波路に接続する際に、少なくとも1つのシングルコアファイバを特定の少なくとも1つの導波路に光学的に接続させたい場合がある。しかし、マルチエレメントファイバでは、マルチエレメントファイバの断面を見ても特定の導波路に接続させるシングルコアファイバと他のシングルコアファイバとの識別が困難な傾向にある。また、上記非特許文献1のシングルコアファイバがマルチコアファイバであったとしても同様にマルチコアファイバの識別は困難な傾向にある。このため、被覆層内に配置された光ファイバの識別をしたいとの要請がある。
【0006】
そこで、本発明は、被覆層内の少なくとも1つの光ファイバと他の光ファイバとを識別し得るマルチエレメントファイバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的の達成のため、本発明の態様1は、コアと前記コアの外周面を囲うクラッドとを有する複数の光ファイバと、それぞれの前記光ファイバの前記クラッドの外周面を囲う被覆層と、を備え、前記光ファイバの少なくとも1つにおける長手方向に垂直な断面での屈折率の分布が、他の前記光ファイバの少なくとも1つおける長手方向に垂直な断面での屈折率の分布と異なることを特徴とするマルチエレメントファイバである。
【0008】
このマルチエレメントファイバによれば、少なくとも1つの光ファイバと他の光ファイバの少なくとも1つとで、長手方向に垂直な断面における屈折率分布が異なるため、光ファイバを当該断面から見ることで、少なくとも1つの光ファイバと他の光ファイバとを識別し得る。
【0009】
本発明の態様2は、前記光ファイバの少なくとも1つは、他の前記光ファイバの少なくとも1つと識別可能な識別部を前記クラッド内に有することを特徴とする態様1のマルチエレメントファイバである。
【0010】
このマルチエレメントファイバでは、クラッド内の識別部により光ファイバの識別をし得る。従って、このマルチエレメントファイバによれば、それぞれの光ファイバの外径や外形を同様の構成として揃えることができる。このような識別部としては、クラッドの屈折率と異なる屈折率を有するマーカやクラッドの屈折率と異なる屈折率を有する層等を挙げることができる。
【0011】
本発明の態様3は、前記光ファイバの少なくとも1つの前記クラッドの外形は、他の前記光ファイバの少なくとも1つの前記クラッドの外形と異なることを特徴とする態様1または2のマルチエレメントファイバである。
【0012】
このマルチエレメントファイバによれば、クラッド内の屈折率分布を認識せずとも、クラッドの外形により、容易に光ファイバの識別をし得る。
【0013】
本発明の態様4は、前記光ファイバの少なくとも1つの前記クラッドの太さは、他の前記光ファイバの少なくとも1つの前記クラッドの太さと異なることを特徴とする態様1から3のいずれかのマルチエレメントファイバである。
【0014】
このマルチエレメントファイバによれば、クラッド内の屈折率分布を認識せずとも、クラッドの太さにより、容易に光ファイバの識別をし得る。
【0015】
本発明の態様5は、それぞれの前記光ファイバにおける長手方向に垂直な断面での屈折率の分布は、互いに異なることを特徴とする態様1から4のいずれかのマルチエレメントファイバである。
【0016】
このようなマルチエレメントファイバによれば、それぞれの光ファイバを識別し得る。
【0017】
本発明の態様6は、互いに隣り合う前記光ファイバの前記クラッドのそれぞれの一部は、互いに融着していることを特徴とする態様1から5のいずれかのマルチエレメントファイバである。
【0018】
このようなマルチエレメントファイバによれば、それぞれの光ファイバの相対的な位置関係の変化を長手方向において抑制し得る。従って、マルチエレメントファイバの一方の端部と他方の端部とで、光ファイバを容易に対応させることができる。
【0019】
本発明の態様7は、前記光ファイバの前記クラッドのそれぞれは互いに非融着であることを特徴とする態様1から5のいずれかのマルチエレメントファイバである。
【0020】
このようなマルチエレメントファイバによれば、被覆層を除去することで、それぞれの光ファイバを散けさせることができる。
【0021】
本発明の態様8は、少なくとも1つの前記光ファイバが、前記被覆層の中心軸の周りを回転するように螺旋状に配置されることを特徴とする態様1から7のいずれかのマルチエレメントファイバである。
【0022】
このようなマルチエレメントファイバでは、マルチエレメントファイバが曲げられた場合における曲げ部位において、螺旋状の光ファイバが、被覆層の中心軸より曲げの内側に位置する内側部位と、当該中心軸より曲げの外側に位置する外側部位とを有し、内側部位と外側部位とが長手方向に沿って交互に存在するようにし得る。このため、内側部位で圧縮応力が生じ、外側部位で引張応力が生じるため、光ファイバに加わる応力を平均化し得る。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、被覆層内の少なくとも1つの光ファイバと他の光ファイバとを識別し得るマルチエレメントファイバが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態に係るマルチエレメントファイバの長手方向に垂直な断面の様子を模式的に示す図である。
図2図1のマルチエレメントファイバの各シングルコアファイバを模式的に示す図である。
図3】本発明の第2実施形態に係るマルチエレメントファイバの長手方向に垂直な断面の様子を模式的に示す図である。
図4】本発明の第3実施形態に係るマルチエレメントファイバの長手方向に垂直な断面の様子を模式的に示す図である。
図5】本発明の第4実施形態に係るマルチエレメントファイバの長手方向に垂直な断面の様子を模式的に示す図である。
図6】本発明の第5実施形態に係るマルチエレメントファイバの長手方向に垂直な断面の様子を模式的に示す図である。
図7】本発明の第6実施形態に係るマルチエレメントファイバの長手方向に垂直な断面の様子を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るマルチエレメントファイバを実施するための形態が添付図面とともに例示される。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、以下の実施形態から変更、改良することができる。なお、以下で参照する図面では、理解を容易にするために、各部材の寸法を変えて示す場合がある。
【0026】
(第1実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係るマルチエレメントファイバの長手方向に垂直な断面の様子を模式的に示す図である。図1に示すように、本実施形態のマルチエレメントファイバ1は、複数の光ファイバ10A-10Cと、それぞれの光ファイバ10A-10Cを囲う被覆層としての内側被覆層20及び外側被覆層30とを主な構成として備える。本実施形態のそれぞれの光ファイバ10A-10Cは、それぞれシングルコアファイバであり、コア11と、コア11の外周面を囲うクラッド12とを有する。
【0027】
本実施形態では、光ファイバの数が3つである。また、本実施形態では、それぞれの光ファイバ10A-10Cは、互いに非融着で、互いに離間して、内側被覆層20の中心を囲うようにそれぞれの光ファイバ10A-10Cが配置されている。それぞれの光ファイバ10A-10Cにおいて、本実施形態では、長手方向と垂直な断面におけるコア11の外形及びクラッド12の外形は共に円形状であり、コア11はクラッド12の中心に配置されている。本実施形態では、それぞれの光ファイバ10A-10Cの外径は概ね同じであり、例えば、80μmである。なお、光ファイバ10A-10Cの外径は特に制限されるものではなく、例えば、60μm、100μm、125μmであってもよい。
【0028】
コア11の屈折率はクラッド12の屈折率より高くされる。本実施形態では、コア11はゲルマニウム(Ge)等の屈折率が高くなるドーパントが添加されたシリカガラスから成り、クラッド12は何ら添加物の無いシリカガラスから成る。なお、例えば、コア11は何ら添加物の無いシリカガラスから成り、クラッド12はフッ素(F)等の屈折率が低くなるドーパントが添加されたシリカガラスから成ってもよく、コア11は屈折率が高くなるドーパントが添加されたシリカガラスから成り、クラッド12は屈折率が低くなるドーパントが添加されたシリカガラスから成っていてもよい。また、屈折率が高くなるドーパント及び屈折率が低くなるドーパントは特に制限されるものではない。
【0029】
また、本実施形態では、光ファイバ10Aのクラッド12内には、2つのマーカ15が配置されており、光ファイバ10Bのクラッド12内には、1つのマーカ15が配置されており、光ファイバ10Cのクラッド12内には、マーカが配置されていない。マーカ15の屈折率は、クラッド12の屈折率と異なっており、クラッド12の屈折率よりも高くても低くてもよい。このように光ファイバ10A-10Cでは、マーカ15の数が互いに異なるため、長手方向に垂直な断面における屈折率の分布が互いに異なる。このため、本実施形態のマルチエレメントファイバ1では、それぞれの光ファイバ10A-10Cを識別することができる。本実施形態では、マーカ15により光ファイバ10A-10Cの識別ができるため、クラッド12内に配置されクラッド12と異なる屈折率を有するマーカ15は、他の光ファイバと識別可能な識別部である。
【0030】
内側被覆層20は、それぞれの光ファイバ10A-10Cの間を埋めるとともに、それぞれの光ファイバ10A-10Cのクラッド12の外周面を囲う。また、外側被覆層30は、内側被覆層20の外周面を被覆する。つまり、本実施形態では、内側被覆層20及び外側被覆層30から成る被覆層は、それぞれの光ファイバ10A-10Cの全体を囲う。本実施形態では、長手方向と垂直な断面における内側被覆層20及び外側被覆層30の外形は円形状であり、外側被覆層30の外径は、例えば、250μmである。なお、外側被覆層30の外径は、それぞれの光ファイバ10A-10Cを被覆する限りにおいて特に制限されるものではなく、250μmより大きくても小さくてもよい。また、長手方向と垂直な断面における内側被覆層20及び外側被覆層30の外形は、円形状以外の形状であってもよく、例えば、楕円形状や角が面取りされた多角形状等であってもよい。また、外側被覆層30は多層構造とされてもよく、マルチエレメントファイバ1は外側被覆層30を備えなくてもよい。
【0031】
内側被覆層20は、樹脂を含む材料から構成され、当該樹脂としては、例えば紫外線硬化樹脂や熱硬化樹脂が挙げられる。内側被覆層20を構成する材料は、樹脂以外に例えばフィラーとしての無機物等を含んでいてもよい。内側被覆層20のヤング率は、光ファイバ10A-10Cのクラッド12のヤング率より小さく、例えば、0.1MPa以上10MPa以下である。
【0032】
外側被覆層30は、内側被覆層20を構成する樹脂とは異なる樹脂を含む材料から構成され、当該樹脂として例えば紫外線硬化樹脂や熱硬化樹脂が挙げられる。外側被覆層30を構成する材料は、樹脂以外に例えばフィラーとしての無機物等を含んでいてもよい。外側被覆層30のヤング率は、光ファイバ10A-10Cのクラッド12のヤング率より小さく、当該ヤング率は、例えば、上記の内側被覆層20のヤング率よりも大きく、例えば、外側被覆層30のヤング率は100MPa以上2000MPa以下である。
【0033】
図2は、図1のマルチエレメントファイバの各光ファイバを模式的に示す図である。なお、図2では、外側被覆層30を省略し、内側被覆層20を破線で示している。図2に示すように、本実施形態のマルチエレメントファイバ1では、それぞれの光ファイバ10A-10Cが内側被覆層20の中心軸20Cの周りを回転するように螺旋状に配置されている。螺旋状の光ファイバ10A-10Cが中心軸20Cの周りを回転するピッチは、例えば、平均0.1回/m以上である。また、螺旋状の光ファイバ10A-10Cが中心軸20Cの周りを回転する方向は、長手方向に沿って周期的に反転してもよく、光ファイバ10A-10Cの外径は、光ファイバ10A-10Cの回転方向が反転する周期に同期する周期で増加と減少を交互に繰り返してもよい。
【0034】
従って、本実施形態のマルチエレメントファイバ1では、マルチエレメントファイバ1が曲げられた場合における曲げ部位において、螺旋状の光ファイバ10A-10Cが、被覆層の中心軸20Cより曲げの内側に位置する内側部位と、中心軸20Cより曲げの外側に位置する外側部位とを有し、内側部位と外側部位とが長手方向に沿って交互に存在するようにし得る。このため、内側部位で圧縮応力が生じ、外側部位で引張応力が生じるため、光ファイバに加わる応力を平均化し得る。また、本実施形態では、光ファイバ10A-10Cが互いに非融着であるため、当該曲げ部において内側被覆層20が僅かに変形して、光ファイバ10A-10Cの長手方向における相対的な位置が僅かに変化することで、内側部位で生じる圧縮応力と当該内側部位に隣接する外側部位で生じる引張応力とが互いに弱め合うようにし得る。このため、それぞれの光ファイバ10A-10Cが中心軸20Cに沿う方向に直線状に配置される場合と比べて、曲げによって光ファイバ10A-10Cのコア11に生じる応力を低減し得る。
【0035】
以上説明したように、本実施形態のマルチエレメントファイバ1は、それぞれの光ファイバ10A-10Cにおける長手方向に垂直な断面での屈折率の分布が互いに異なるため、それぞれの光ファイバ10A-10Cの断面を見ることで、それぞれの光ファイバ10A-10Cを識別し得る。従って、それぞれの光ファイバ10A-10Cを別々の導波路に光学的に接続する場合に、それぞれの光ファイバ10A-10Cを適切な導波路に接続し得る。
【0036】
また、本実施形態のマルチエレメントファイバ1では、光ファイバ10A,10Bは、他の光ファイバと識別可能な識別部であるマーカ15をクラッド12内に有する。従って、このマルチエレメントファイバ1では、それぞれの光ファイバ10A-10Cの外径や外形が同じであっても、クラッド12内のマーカ15により光ファイバ10A-10Cの識別をし得る。
【0037】
なお、本実施形態では、マーカ15の数によりそれぞれの光ファイバ10A-10Cの屈折率の分布を互いに異ならせた。このマーカ15の数は、本実施形態と異なってもよい。また、それぞれの光ファイバ10A-10Cにおいて、マーカの数を同じにして、それぞれのマーカ15の形状や径方向の位置を互いに異ならせることで、それぞれの光ファイバ10A-10Cの屈折率の分布を互いに異ならせてもよい。このような場合であっても、光ファイバ10A-10Cの識別をし得る。
【0038】
また、本実施形態では、それぞれの光ファイバ10A-10Cが互いに非融着である。従って、内側被覆層20及び外側被覆層30が除去されることで、それぞれの光ファイバ10A-10Cを散けさせることができる。なお、上記実施形態では、それぞれの光ファイバ10A-10Cが互いに離間する例で説明した。しかし、それぞれの光ファイバ10A-10Cが、互いに接して、互いに非融着とされてもよい。
【0039】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図3を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
【0040】
図3は、本発明の実施形態に係るマルチエレメントファイバの長手方向に垂直な断面の様子を模式的に示す図である。図3に示すように、本実施形態のマルチエレメントファイバ1は、光ファイバ10A,10Bがマーカ15を有さず、トレンチ部16を有する点において、第1実施形態のマルチエレメントファイバ1と異なる。
【0041】
トレンチ部16は、コア11から離れた位置でコア11を囲っている。従って、コア11とトレンチ部16との間には、クラッド12の一部が位置し、トレンチ部16はクラッド12の他の一部で囲われている。トレンチ部16の屈折率は、クラッド12の屈折率より低い。従って、トレンチ部16は、例えば、屈折率が低くなるドーパントが添加されたシリカガラスから成る。
【0042】
光ファイバ10Aのトレンチ部16の径方向の厚みは、光ファイバ10Bのトレンチ部16の径方向の厚みよりも大きい。このように本実施形態のマルチエレメントファイバ1では、光ファイバ10A-10Cにおいて、トレンチ部16の有無や厚みが互いに異なるため、長手方向に垂直な断面における屈折率の分布が互いに異なる。このため、本実施形態のマルチエレメントファイバ1では、それぞれの光ファイバ10A-10Cを識別することができる。本実施形態では、トレンチ部16により光ファイバ10A-10Cの識別ができるため、クラッド12内に配置されクラッド12と異なる屈折率を有するトレンチ部16は、他の光ファイバと識別可能な識別部である。
【0043】
本実施形態のマルチエレメントファイバ1では、光ファイバ10A-10Cの少なくとも1つは、他の光ファイバと識別可能な識別部であるトレンチ部16をクラッド12内に有する。従って、このマルチエレメントファイバ1では、それぞれの光ファイバ10A-10Cの外径や外形が同じであっても、トレンチ部16により光ファイバ10A-10Cの識別をし得る。
【0044】
なお、本実施形態では、トレンチ部16の有無や厚みによりそれぞれの光ファイバ10A-10Cの屈折率の分布を互いに異ならせた。しかし、トレンチ部16により光ファイバ10A-10Cの屈折率の分布を互いに異ならせる形態は、上記実施形態に限らない。例えば、それぞれの光ファイバ10A-10Cにトレンチ部16を設けて、それぞれの光ファイバ10A-10Cのトレンチ部の厚みを互いに異ならせてもよい。また、例えば、光ファイバ10Aのトレンチ部を二重以上にしてもよい。
【0045】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図4を参照して詳細に説明する。なお、上記実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
【0046】
図4は、本発明の実施形態に係るマルチエレメントファイバの長手方向に垂直な断面の様子を模式的に示す図である。図4に示すように、本実施形態のマルチエレメントファイバ1は、光ファイバ10A,10Bがマーカ15を有さず、それぞれの光ファイバ10A-10Cのクラッド12の外形が互いに異なる点において、第1実施形態のマルチエレメントファイバ1と異なる。
【0047】
本実施形態のマルチエレメントファイバ1では、光ファイバ10Aのクラッド12の外形が六角形であり、光ファイバ10Bのクラッド12の外形が四角形であり、光ファイバ10Cのクラッド12の外形は円形である。このように本実施形態のマルチエレメントファイバ1では、光ファイバ10A-10Cにおいて、クラッド12の外形が互いに異なる。なお、クラッド12の外形が多角形の場合、図に示すように頂点が丸みを帯びていてもよい。
【0048】
本実施形態のマルチエレメントファイバ1では、光ファイバ10A-10Cのクラッド12の外形が互いに異なることで、クラッド12の屈折率分布のうち、クラッド12の外周部を示す分布の形状が互いに異なる。このため、本実施形態のマルチエレメントファイバ1では、それぞれの光ファイバ10A-10Cを識別することができる。
【0049】
なお、それぞれの光ファイバ10A-10Cのクラッド12の外形が多角形状であってもよい。光ファイバ10A-10Cの一部のクラッド12の外形は、例えば楕円であってもよい。
【0050】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図5を参照して詳細に説明する。なお、上記実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
【0051】
図5は、本発明の実施形態に係るマルチエレメントファイバの長手方向に垂直な断面の様子を模式的に示す図である。図5に示すように、本実施形態のマルチエレメントファイバ1は、光ファイバ10A-10Cのクラッド12の外形が互いに異なる点において、第3実施形態のマルチエレメントファイバ1と共通するが、一部の光ファイバのクラッド12の外形が、円形の一部が除去された形状である点において、第3実施形態のマルチエレメントファイバ1と異なる。本実施形態では、光ファイバ10Aのクラッド12は、円形の一カ所が直線状に除去された所謂D型の外形である。また、光ファイバ10Bのクラッド12は、円形における互いに対向する二か所が直線状に除去されたオーバルトラック形状に近い外形である。このように本実施形態のマルチエレメントファイバ1では、光ファイバ10A-10Cにおいて、クラッド12の外形が互いに異なる。
【0052】
本実施形態のマルチエレメントファイバ1では、光ファイバ10A-10Cのクラッド12の外形が互いに異なることで、クラッド12の屈折率分布のうち、クラッド12の外周部を示す分布の形状が互いに異なる。このため、本実施形態のマルチエレメントファイバ1では、それぞれの光ファイバ10A-10Cを識別することができる。
【0053】
なお、それぞれの光ファイバ10A-10Cのクラッド12の外形が円形の少なくとも一部が除去された形状であってもよい。例えば、クラッド12の外形が、円形の三カ所以上が除去された形状であってもよい。また、それぞれの光ファイバ10A-10Cのクラッド12の外形が円形の一カ所が除去された形状であり、その除去の大きさが互いに異なってもよい。また、上記実施形態では、クラッド12が円形の一部が直線的に除去された例を示したが、直線以外の形状で除去されてもよい。
【0054】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について図6を参照して詳細に説明する。なお、上記実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
【0055】
図6は、本発明の実施形態に係るマルチエレメントファイバの長手方向に垂直な断面の様子を模式的に示す図である。図6に示すように、本実施形態のマルチエレメントファイバ1は、光ファイバ10A,10Bがマーカ15を有さず、クラッド12の太さが互いに異なる点において、第1実施形態のマルチエレメントファイバ1と異なる。光ファイバ10Aは、光ファイバ10Cより細く、光ファイバ10Bは、光ファイバ10Cよりも太い。例えば、光ファイバ10Aのクラッド12の外径が70μmとされ、光ファイバ10Bのクラッド12の外径が90μmとされ、光ファイバ10Cのクラッド12の外径が80μmとされる。
【0056】
本実施形態のマルチエレメントファイバ1では、光ファイバ10A-10Cのクラッド12の太さが互いに異なることで、クラッド12の屈折率分布のうち、クラッドの外周部を示す分布のうち光ファイバの径方向の長さが互いに異なる。また、コア11の直径が光ファイバ10A-10Cで概ね同じであれば、クラッド12の内周部から外周部までの距離を示す屈折率分布が互いに異なる。このため、本実施形態のマルチエレメントファイバ1では、それぞれの光ファイバ10A-10Cを識別することができる。
【0057】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について図7を参照して詳細に説明する。なお、上記実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
【0058】
図7は、本発明の実施形態に係るマルチエレメントファイバの長手方向に垂直な断面の様子を模式的に示す図である。図7に示すように、本実施形態のマルチエレメントファイバ1は、光ファイバ10A-10Cにおいて、互いに隣り合う光ファイバのクラッド12における外周の一部が互いに融着している点において、第1実施形態のマルチエレメントファイバ1と異なる。
【0059】
本実施形態のこのようなマルチエレメントファイバによれば、それぞれの光ファイバ10A-10Cの相対的な位置関係の変化を長手方向において抑制し得る。従って、マルチエレメントファイバ1の一方の端部と他方の端部とで、光ファイバ10A-10Cを容易に対応させることができる。また、クラッド12の一部が融着しており、互いに隣り合う光ファイバが離間しないため、マルチエレメントファイバ1を細径にし得る。
【0060】
なお、第2実施形態から第5実施形態のマルチエレメントファイバ1において、本実施形態と同様にして、互いに隣り合う光ファイバのクラッド12の一部が互いに融着されてもよい。
【0061】
以上、本発明について、上記実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0062】
例えば、上記実施形態では、それぞれの光ファイバ10A-10Cの長手方向に垂直な断面での屈折率の分布は、互いに異なる例で説明をした。しかし、光ファイバ10Aのみを識別したいのであれば、光ファイバ10Aにおける長手方向に垂直な断面での屈折率の分布が、他の光ファイバ10B,10Cにおける長手方向に垂直な断面での屈折率の分布と異なれば良い。特に第6実施形態のマルチエレメントファイバ1では、それぞれの光ファイバ10A-10Cの相対的な位置関係が長手方向で変化しないため、1つの光ファイバ10Aのみを識別できれば、他の光ファイバ10B,10Cを、光ファイバ10Aを基準とした位置から識別することができる。
【0063】
また、光ファイバの数は、複数であれば、2つでも4つ以上であってもよい。例えば、光ファイバが6つの場合に、3つの光ファイバの長手方向に垂直な断面での屈折率の分布が、他の3つの光ファイバにおける長手方向に垂直な断面での屈折率の分布と異なってもよい。この場合、例えば、3つの光ファイバを送信用の光ファイバとして、他の3つの光ファイバを受信用の光ファイバとすることができる。
【0064】
また、上記実施形態では、光ファイバとしてシングルコアファイバを例に説明したが、光ファイバがマルチコアファイバであってもよい。この場合、例えば、マルチコアファイバにおけるそれぞれのコアの数が異なることで、それぞれのマルチコアファイバの長手方向に垂直な断面での屈折率の分布が、互いに異なってもよい。この場合、コアがクラッド内に配置される識別部であると理解できる。
【0065】
つまり、本発明では、被覆層で被覆される光ファイバの少なくとも1つにおける長手方向に垂直な断面での屈折率の分布が、他の光ファイバの少なくとも1つにおける長手方向に垂直な断面での屈折率の分布と異なるのである。このような構成により、光ファイバを断面から見ることで、少なくとも1つの光ファイバと他の光ファイバとを識別し得る。
【0066】
また、上記実施形態では、それぞれの光ファイバ10A-10Cが、螺旋状に配置される例を示したが、それぞれの光ファイバ10A-10Cが、中心軸20Cに沿って配置されてもよい。なお、中心に1つの光ファイバが中心軸20Cに沿って配置され、中心軸20Cの周りに螺旋状に少なくとも1つの光ファイバが配置されてもよい。
【0067】
また、被覆層が内側被覆層20のみから成り外側被覆層30が省略されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上説明したように、本発明によれば、被覆層内の光ファイバを識別し得るマルチエレメントファイバが提供され、光ファイバ通信等の分野で利用することが期待される。
【符号の説明】
【0069】
1・・・マルチエレメントファイバ
10A,10B,10C・・・光ファイバ
11・・・コア
12・・・クラッド
15・・・マーカ(識別部)
16・・・トレンチ部(識別部)
20・・・内側被覆層
30・・・外側被覆層

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7