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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111413
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】スライド調節式モンキーレンチ
(51)【国際特許分類】
   B25B 13/12 20060101AFI20240809BHJP
   B25B 13/20 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
B25B13/12
B25B13/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015910
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】壽 丈都
(57)【要約】
【課題】可動あごの緩みを軽減しつつ口幅を容易且つ直ぐに調節することが可能になるスライド調節式モンキーレンチを提供する。
【解決手段】スライド調節式モンキーレンチ10は、グリップ11に沿ってスライドするスライダ22を、グリップ11を握りつつスライドさせることで、上あご12と下あご14との間の口幅を、ボルトBの頭部の対辺に合わせて直ぐに調節できる。また、上あご(固定あご)12に対し下あご(可動あご)14は、上あご(固定あご)12の基部から下斜め前方に向けて一体に形成した下あごガイド13を下あご14のガイド孔15に寸法精度よく嵌挿させた状態で、下あごガイド13に沿って上下に移動されるので、ボルトBの締め付けに際し下あご(可動あご)14が外側へ開いて緩んでしまうのを大幅に軽減できる。
【選択図】 図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に上あごを有する棒状のグリップと、
前記上あごの基部から下方へ伸びて一体に形成される下あごガイドと、
前記下あごガイドが嵌挿されるガイド孔を有し、前記下あごガイドに沿って上下動することで前記上あごとの口幅が調節される下あごと、
前記上あごの基部よりも後方の前記グリップに設けられ、前記グリップに沿って前後方向にスライドするスライダと、
前記スライダと前記下あごとを連結し、前記スライダの前方へのスライドに応じて前記下あごを下方へ移動させ、前記スライダの後方へのスライドに応じて前記下あごを上方へ移動させるスライド連結部と、
を備えるスライド調節式モンキーレンチ。
【請求項2】
前記スライダは、前記グリップが嵌挿される筒状部を有して前記グリップに沿って前後方向にスライドし、
前記スライダをスライドさせる範囲に対応して前記グリップの左右を貫通して形成されるスライダ可動孔と、
前記スライダの左側面と右側面との間に前記グリップの前記スライダ可動孔を通して設けられるスライダ可動軸と、
前記下あごを上下に移動させる範囲に対応して前記下あごガイドの左右を貫通して形成される下あご可動孔と、
前記下あごの前記ガイド孔に対応する左側面と右側面との間に前記下あごガイドの前記下あご可動孔を左右に通して設けられる下あご可動軸と、を備え、
前記スライド連結部は、前記スライダ可動軸の両端部と前記下あご可動軸の両端部との間を前記グリップないし前記下あごに至る左右を挟むようにそれぞれ連結する一対の連結部を有する、
請求項1に記載のスライド調節式モンキーレンチ。
【請求項3】
前記グリップに対する前記スライダのスライドする位置を、任意の位置で固定したり固定を解除したりするスライドロック機構を備える、
請求項1または請求項2に記載のスライド調節式モンキーレンチ。
【請求項4】
前記スライドロック機構は、
前記スライダの側面に形成された取付孔を通して前記グリップの側面に向かう方向と前記グリップから離れる方向とに動作可能に設けられ、前記グリップの側面に向かう方向の端面に突起を有するスライダ固定器具と、
前記グリップの側面に前記スライダがスライドする方向に沿って複数形成され、前記スライダ固定器具が前記グリップの側面に向かう方向に押し込まれた場合に前記突起が選択的に嵌合される固定穴と、を備える、
請求項3に記載のスライド調節式モンキーレンチ。
【請求項5】
前記スライダは、前記グリップの左右側面に対応して分割された左スライダ部と右スライダ部とを有し、
前記スライドロック機構は、
前記スライダをスライドさせる範囲に対応して前記グリップの左右を貫通して形成されるクランプ軸可動孔と、
前記左スライダ部の左側面と前記右スライダ部の右側面との間に前記グリップの前記クランプ軸可動孔を通して設けられるクランプ軸と、
前記左スライダ部の左側面または前記右スライダ部の右側面に露出した前記クランプ軸の一端に取り付けられ、前記左スライダ部の左側面または前記右スライダ部の右側面に沿わせて倒した場合に、前記クランプ軸を介して前記左スライダ部と前記右スライダ部とを引き寄せ、前記左スライダ部と前記右スライダ部との間に前記グリップを挟み込んで固定するクランプレバーと、を備える、
請求項3に記載のスライド調節式モンキーレンチ。
【請求項6】
前記スライドロック機構は、
前記スライダの側面に前記グリップの長さ方向に沿って形成されたストッパ可動孔と、
前記ストッパ可動孔を通して設けられ、前記スライダの表面に露出して配置されるストッパ操作子と、前記スライダの内壁と前記グリップの側面との隙間に配置されるストッパ部材と、を有するストッパと、
前記ストッパ可動孔に対応する前記スライダの内壁に形成され、前記グリップの側面との隙間が前記グリップの先端寄りで前記ストッパ部材の厚みよりも大きくなり、前記グリップの後端寄りで前記ストッパ部材の厚みよりも小さくなるように傾斜した面と、を備え、
前記ストッパを前記グリップの後端寄りに移動させた場合に、前記ストッパ部材を前記グリップの側面との隙間に挟み込んで固定する、
請求項3に記載のスライド調節式モンキーレンチ。
【請求項7】
前記スライダは、前記グリップの左右側面に対応して分割され、上面側と下面側とが何れも互いの櫛歯状部を組み合わせて一体化される左スライダ部と右スライダ部とを有し、
左スライダ部と右スライダ部とは、上面側と下面側との何れも前記互いの櫛歯状部を前後方向に貫通して挿抜可能に設けられる固定金具により固定される、
請求項6に記載のスライド調節式モンキーレンチ。
【請求項8】
前記スライドロック機構は、
前記スライダをスライドさせる範囲に対応して前記グリップの上下を貫通して形成されるネジ締め部可動孔と、
前記スライダの上面板に沿って回転可能に設けられる操作子と、前記操作子の回転の中心から前記グリップの前記ネジ締め部可動孔を通して下方へ伸びるネジと、を有するネジ締め部と、
前記スライダの下面板として設けられ、前記ネジに螺合されるネジ孔を有し、前記ネジの回転に応じて上下に移動するスライダ下面板と、を備え、
前記ネジ締め部の前記操作子を一方に回転させた場合に、前記スライダ下面板を上昇させ、前記上面板との間に前記グリップを挟み込んで固定する、
請求項3に記載のスライド調節式モンキーレンチ。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、スライド調節式モンキーレンチに関する。
【背景技術】
【0002】
手元付近にあるボルトの締め付けを行うのに適した工具の一つにモンキーレンチがある。
【0003】
従来のモンキーレンチでは、使用する際にボルトの頭部の一辺にレンチの固定あごを当て、ウォームギアを回すことにより対辺に合わせて可動あごを移動させ、固定あごに対する可動あごとの間の口幅を調節している(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平06-027068号公報
【特許文献2】特開2005-349501号公報
【特許文献3】特表2007-510556号公報
【特許文献4】特開2005-169607号公報
【特許文献5】特開2003-181775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のモンキーレンチでは、ウォームギアを片手で回して口幅を調節するため、ボルトの頭部に合わせて口幅を直ぐに調節することができない。
【0006】
また、従来のモンキーレンチでは、口幅の保持をウォームギアの機械的な摩擦に依存するため、ウォームギアの遊び(バックラッシ)に応じて可動あごが外側へ開いて(緩んで)しまう問題がある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、可動あごの緩みを軽減しつつ口幅を容易且つ直ぐに調節することが可能になるスライド調節式モンキーレンチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態のスライド調節式モンキーレンチは、
先端に上あごを有する棒状のグリップと、
前記上あごの基部から下方へ伸びて一体に形成される下あごガイドと、
前記下あごガイドが嵌挿されるガイド孔を有し、前記下あごガイドに沿って上下動することで前記上あごとの口幅が調節される下あごと、
前記上あごの基部よりも後方の前記グリップに設けられ、前記グリップに沿って前後方向にスライドするスライダと、
前記スライダと前記下あごとを連結し、前記スライダの前方へのスライドに応じて前記下あごを下方へ移動させ、前記スライダの後方へのスライドに応じて前記下あごを上方へ移動させるスライド連結部と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態のスライド調節式モンキーレンチ10の構成を示す図であり、同図(A)はその左側面図、同図(B)はその上面図、同図(C)は同図(B)のA-A矢視断面図。
図2】スライド調節式モンキーレンチ10のグリップ11の構成を主体として示す部分透視図であり、同図(A)はその左側面図、同図(B)はその正面図。
図3】スライド調節式モンキーレンチ10によるボルトBの締め付けに先立ち口幅を広げる動作を説明する図。
図4】スライド調節式モンキーレンチ10の口幅をボルトBの頭部に合わせる動作を説明する図。
図5】スライド調節式モンキーレンチ10によるボルトBの締め付け後に口幅を広げる動作を説明する図。
図6】スライド調節式モンキーレンチ10の押し込み式スライドロック機構L1の構成を示す図であり、同図(A)はその左側面図、同図(B)はその右側面図、同図(C)はその下面図。
図7】スライド調節式モンキーレンチ10の押し込み式スライドロック機構L1により押し込み式専用スライダ22P(押し込み式スライドロック機構L1の専用スライダ)を固定する動作を説明する図6(C)のB-B矢視断面図。
図8】スライド調節式モンキーレンチ10の押し込み式スライドロック機構L1により押し込み式専用スライダ22Pの固定を解除する動作を説明する図6(C)のB-B矢視断面図。
図9】スライド調節式モンキーレンチ10のクランプ式スライドロック機構L2の構成(その1)を示す図であり、同図(A)はその左側面図、同図(B)はその右側面図。
図10】スライド調節式モンキーレンチ10のクランプ式スライドロック機構L2の構成(その2)を示す図であり、同図(A)はその上面図、同図(B)はその下面図。
図11】クランプ式スライドロック機構L2のクランプ式専用スライダ22Cを抜き出して示す図であり、同図(A)はその正面図、同図(B)はその背面図。
図12】スライド調節式モンキーレンチ10のクランプ式スライドロック機構L2によりクランプ式専用スライダ22Cを固定する動作を説明する図。
図13】スライド調節式モンキーレンチ10のクランプ式スライドロック機構L2によりクランプ式専用スライダ22Cの固定を解除する動作を説明する図。
図14】スライド調節式モンキーレンチ10のストッパ式スライドロック機構L3の構成(その1)を示す図であり、同図(A)はその左側面図、同図(B)はその右側面図。
図15】スライド調節式モンキーレンチ10のストッパ式スライドロック機構L3の構成(その2)を示す図であり、同図(A)はその上面図、同図(B)はその下面図。
図16】ストッパ式スライドロック機構L3の非ロック(非固定)状態での構成を示す図であり、同図(A)はその左側面図、同図(B)は同図(A)のC-C矢視断面図、同図(C)は同図(B)のa部分拡大図。
図17】ストッパ式スライドロック機構L3のロック(固定)状態での構成を示す図であり、同図(A)はその左側面図、同図(B)は同図(A)のD-D矢視断面図、同図(C)は同図(B)のb部分拡大図。
図18】ストッパ式スライドロック機構L3のストッパ式専用スライダ22Sを抜き出して示す図であり、同図(A)はその正面図、同図(B)はその背面図、同図(C)は同図(B)のE-E矢視断面図、同図(D)は同図(B)の固定金具53/56を除いたE-E矢視断面図。
図19】ストッパ式スライドロック機構L3のストッパ式専用スライダ22Sのグリップ11に対する固定状態を強制的に解除する動作(その1)を説明するための左側面図。
図20】ストッパ式スライドロック機構L3のストッパ式専用スライダ22Sのグリップ11に対する固定状態を強制的に解除する動作(その2)を説明する図であり、同図(A)はその左側面図、同図(B)はその背面図。
図21】ストッパ式スライドロック機構L3のストッパ式専用スライダ22Sのグリップ11に対する固定状態を強制的に解除した後にストッパ式専用スライダ22Sのスライド位置が固定されない状態で元に戻す動作(その1)を説明するための左側面図。
図22】ストッパ式スライドロック機構L3のストッパ式専用スライダ22Sのグリップ11に対する固定状態を強制的に解除した後にストッパ式専用スライダ22Sのスライド位置が固定されない状態で元に戻す動作(その2)を説明するための左側面図。
図23】スライド調節式モンキーレンチ10のネジ締め式スライドロック機構L4の構成を示す図であり、同図(A)はその左側面図、同図(B)はその上面図、同図(C)はその下面図。
図24】スライド調節式モンキーレンチ10のネジ締め式スライドロック機構L4によりネジ締め式専用スライダ22Nを固定する動作を説明するための図23(B)のF-F矢視断面図。
図25】スライド調節式モンキーレンチ10のネジ締め式スライドロック機構L4によりネジ締め式専用スライダ22Nの固定を解除する動作を説明するための図23(B)のF-F矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0011】
(実施形態の構成)
図1は、実施形態のスライド調節式モンキーレンチ10の構成を示す図であり、同図(A)はその左側面図、同図(B)はその上面図、同図(C)は同図(B)のA-A矢視断面図である。
【0012】
図2は、スライド調節式モンキーレンチ10のグリップ11の構成を主体として示す部分透視図であり、同図(A)はその左側面図、同図(B)はその正面図である。
【0013】
スライド調節式モンキーレンチ10は、例えば断面矩形の棒状のグリップ11と、グリップ11の先端に予め設定された長さで一体に形成される上あご(固定あご)12と、上あご12の基部の下面側の幅方向の中央から(図2(B)参照)、上あご12の幅の半分程度の幅で下斜め前方に伸びて一体に形成される例えば断面矩形の下あごガイド13と、下あごガイド13が寸法精度よく嵌挿されるガイド孔15を有し下あごガイド13に沿って上下動(Y1←→Y2)することで上あご(固定あご)12との口幅が調節される上あご12と同じ幅の下あご14(可動あご)と、を備える。
【0014】
一方、上あご12および下あごガイド13の基部よりも後方のグリップ11の前端部には、グリップ11が嵌挿される断面矩形の筒状部を有しグリップ11に沿って前後方向にスライドするスライダ22を設ける。
【0015】
スライダ22の前端部に近い左側面と右側面との間には、グリップ11を左右に貫通して形成したスライダ可動孔16を通してスライダ用丸形スペーサ(スライダ可動軸)18を設け、スライダ用丸形スペーサ18がスライダ可動孔16を前後方向に移動可能な範囲で、スライダ22を前後方向にスライド可能にする。
【0016】
また、下あご14のガイド孔15に対応する左側面と右側面との間には、下あごガイド13を左右に貫通して形成した下あご可動孔17を通して下あご用丸形スペーサ(下あご可動軸)19を設け、下あご用丸形スペーサ19が下あご可動孔17を上下方向に移動可能な範囲で、下あご14を上下方向に移動可能にする。
【0017】
そして、スライダ用丸形スペーサ(スライダ可動軸)18の両端部と、下あご用丸形スペーサ(下あご可動軸)19の両端部との間は、該当する位置のグリップ11ないし下あご14に至る左右側面を挟むように、それぞれ薄板で短冊状の一対のスライド連結板20L,20Rを介して連結する。
【0018】
スライダ用丸形スペーサ18の両端部にそれぞれ連結されるスライド連結板20L,20Rの上端部は、グリップ11の左右側面とスライダ22の左右の内側面との間に設けた隙間に配置され、スライダ用丸形スペーサ18がグリップ11のスライダ可動孔16およびスライド連結板20L,20Rの上端部を貫通した状態で、スライダ22の左右側面に貫通して露出したスライダ用丸形スペーサ(スライダ可動軸)18の両端部をスライダ側留め金23によりスライダ22に係止する。
【0019】
また、下あご用丸形スペーサ(下あご可動軸)19の両端部は、下あご用丸形スペーサ(下あご可動軸)19が下あごガイド13の下あご可動孔17および下あご14およびスライド連結板20L,20Rの下端部を貫通した状態で、下あご側留め金21によりスライド連結板20L,20Rに係止する。
【0020】
スライダ22を、矢印X2に示すように、グリップ11の前方にスライドさせると、スライダ用丸形スペーサ(スライダ可動軸)18、スライド連結板20L,20Rおよび下あご用丸形スペーサ(下あご可動軸)19を介して、下あご14が、矢印Y2に示すように、下あごガイド13に沿って下方に移動し、上あご12との間の口幅が広がる。
【0021】
また逆に、スライダ22を、矢印X1に示すように、グリップ11の後方にスライドさせると、スライダ用丸形スペーサ(スライダ可動軸)18、スライド連結板20L,20Rおよび下あご用丸形スペーサ(下あご可動軸)19を介して、下あご14が、矢印Y2に示すように、下あごガイド13に沿って上方に移動し、上あご12との間の口幅が狭まる。
【0022】
下あごガイド13の下あご可動孔17の長さと、グリップ11のスライダ可動孔16の長さとは、上あご12と下あご14との間の口幅が、“0”の状態からモンキーレンチ10の使用対象とする最大のボルトB(図3図5参照)の対辺の幅に広がるまで、下あご用丸形スペーサ(下あご可動軸)19およびスライダ用丸形スペーサ(スライダ可動軸)18が移動可能になる長さに設定される。
【0023】
スライダ22の下面には、図1(A)および図1(C)に示すように、スライダ22のスライドに伴いスライド連結板20L,20Rがその傾斜角を変化させつつ動作するのを可能にするための連結板可動切り欠き22mが形成される。
【0024】
なお、スライド調節式モンキーレンチ10を構成する各部の部材は、金属材料でよいがそれには限らない。
【0025】
(実施形態の動作)
図3は、スライド調節式モンキーレンチ10によるボルトBの締め付けに先立ち口幅を広げる動作を説明する図である。
【0026】
図4は、スライド調節式モンキーレンチ10の口幅をボルトBの頭部に合わせる動作を説明する図である。
【0027】
図5は、スライド調節式モンキーレンチ10によるボルトBの締め付け後に口幅を広げる動作を説明する図である。
【0028】
(1)図3(A)に示すように、ボルトBの締め付けに先立ち、ユーザHの手でスライド調節式モンキーレンチ10のグリップ11を握りつつスライダ22を前方(矢印X2)にスライドさせると、スライド連結板20L,20Rを介して、下あご14が下あごガイド13に沿って下方(矢印Y2)に移動し口幅が広がる。
【0029】
(2)図3(B)の矢印aおよび図3(C)の矢印bに示すように、モンキーレンチ10の上あご12をボルトBの頭部の一辺に当てる。
【0030】
(3)図4(A)に示すように、スライド調節式モンキーレンチ10のグリップ11を握りつつスライダ22を後方(矢印X1)にスライドさせると、スライド連結板20L,20Rを介して、下あご14が下あごガイド13に沿って上方(矢印Y1)に移動し口幅が狭まる。
【0031】
(4)図4(B)に示すように、モンキーレンチ10の口幅をボルトBの頭部の対辺に合わせ上あご12と下あご14との間で掴んだ状態で、図4(C)に示すように、グリップ11に対するスライダ22の位置を、後述するスライドロック機構Ln(押し込み式スライドロック機構L1/クランプ式スライドロック機構L2/ストッパ式スライドロック機構L3/ネジ締め式スライドロック機構L4)により固定して口幅を固定する。
【0032】
(5)ボルトBを支点としてグリップ11を回動させボルトBを締め付けた後、スライドロック機構Lnによりスライダ22ないし口幅を固定した状態を解除する。
【0033】
(6)図5(A)に示すように、スライド調節式モンキーレンチ10のグリップ11を握りつつスライダ22を前方(矢印X2)にスライドさせると、スライド連結板20L,20Rを介して、下あご14が下あごガイド13に沿って下方(矢印Y2)に移動し口幅が広がり、図5(B)に示すように、ボルトBから離れる。
【0034】
(7)図5(C)の矢印cに示すように、口幅を広げたモンキーレンチ10からボルトBを離し、ボルトBの締め付けを終了する。
【0035】
スライド調節式モンキーレンチ10によれば、グリップ11に沿ってスライドするスライダ22を、グリップ11を握りつつスライドさせることで、上あご12と下あご14との間の口幅を、ボルトBの頭部の対辺に合わせて直ぐに調節できる。
【0036】
スライド調節式モンキーレンチ10によれば、上あご(固定あご)12に対し下あご(可動あご)14は、上あご(固定あご)12の基部から下斜め前方に向けて一体に形成した下あごガイド13を下あご14のガイド孔15に寸法精度よく嵌挿させた状態で、下あごガイド13に沿って上下に移動されるので、ボルトBの締め付けに際し下あご(可動あご)14が外側へ開いて緩んでしまうのを大幅に軽減できる。
【0037】
(押し込み式スライドロック機構L1の構成)
図6は、スライド調節式モンキーレンチ10の押し込み式スライドロック機構L1の構成を示す図であり、同図(A)はその左側面図、同図(B)はその右側面図、同図(C)はその下面図である。
【0038】
図7は、スライド調節式モンキーレンチ10の押し込み式スライドロック機構L1により押し込み式専用スライダ22P(押し込み式スライドロック機構L1の専用スライダ)を固定する動作を説明する図6(C)のB-B矢視断面図である。
【0039】
図8は、スライド調節式モンキーレンチ10の押し込み式スライドロック機構L1により押し込み式専用スライダ22Pの固定を解除する動作を説明する図6(C)のB-B矢視断面図である。
【0040】
押し込み式スライドロック機構L1は、押し込み式専用スライダ22Pの下面板(下側面)に形成した固定器具取付孔22hを通して上下動可能に設けたスライダ固定器具31と、グリップ11の下面にその幅の中心線に沿って複数隣接して形成した固定穴32とを備える。
【0041】
スライダ固定器具31は、下端部にユーザが幅方向に指を入れたり掴んだりするための環状の操作孔31aを有し、固定器具取付孔22hを貫通して上下動する固定器具基部31kを介した上端部に固定器具取付孔22hからの抜け落ちを阻止するフランジ部31bを有する。
【0042】
スライダ固定器具31のフランジ部31bの上面の中央には、グリップ11の下面に形成した固定穴32に寸法精度よく挿抜される固定突起31cを設ける。
【0043】
スライダ固定器具31のフランジ部31bの範囲に対応する押し込み式専用スライダ22Pの下面板の内壁部とグリップ11の下面との間には、グリップ11の固定穴32からスライダ固定器具31の固定突起31cが抜けている状態で、押し込み式専用スライダ22Pをグリップ11の前後方向にスライド可能にする隙間が設定され、押し込み式専用スライダ22Pのスライドする位置に応じて、スライダ固定器具31の固定突起31cをグリップ11の複数の固定穴32の何れかに対し選択的に嵌合可能にして構成する。
【0044】
グリップ11の下面に形成した複数の固定穴32それぞれの間隔は、ボルトBのサイズMn(例えば、n=4,5,6,…)のそれぞれに合わせて口幅が調節された状態での押し込み式専用スライダ22Pのスライド位置に応じたスライダ固定器具31の固定突起31cの位置に対応して設定される。
【0045】
(押し込み式スライドロック機構L1の動作)
(1)図7(A)に示すように、スライド調節式モンキーレンチ10のグリップ11をユーザHの手で把持しつつ押し込み式専用スライダ22Pを例えば親指でスライドさせてボルトBの頭部に口幅を合せた状態で、スライダ固定器具31の操作孔31aに例えば人差し指を入れ、矢印P1に示すように、スライダ固定器具31を引き上げる。すると、図7(B)に示すように、スライダ固定器具31の固定突起31cがグリップ11の何れかの固定穴32に嵌合し、押し込み式専用スライダ22Pのグリップ11に対するスライド位置が固定され、ボルトBを掴んだ口幅が固定される。
【0046】
(2)ボルトBの締め付けを完了した後に、図8(A)に示すように、ユーザHの指をスライダ固定器具31の操作孔31aに掛け、矢印P2に示すように、スライダ固定器具31を引き下げる。すると、図8(B)に示すように、スライダ固定器具31の固定突起31cは、それまで嵌合されていたグリップ11の固定穴32から引き抜かれ、押し込み式専用スライダ22Pのグリップ11に対する固定状態、すなわち口幅の固定は解除される。
【0047】
押し込み式スライドロック機構L1によれば、押し込み式専用スライダ22Pの下面に備わるスライダ固定器具31を、当該専用スライダ22PのスライドによるボルトBに合わせた口幅の調節と共に引き上げたり引き下げたりするだけで、簡単且つ確実に口幅を固定してボルトBを締め付けたり、口幅の固定を解除したりすることができる。
【0048】
(クランプ式スライドロック機構L2の構成)
図9は、スライド調節式モンキーレンチ10のクランプ式スライドロック機構L2の構成(その1)を示す図であり、同図(A)はその左側面図、同図(B)はその右側面図である。
【0049】
図10は、スライド調節式モンキーレンチ10のクランプ式スライドロック機構L2の構成(その2)を示す図であり、同図(A)はその上面図、同図(B)はその下面図である。
【0050】
図11は、クランプ式スライドロック機構L2のクランプ式専用スライダ22Cを抜き出して示す図であり、同図(A)はその正面図、同図(B)はその背面図である。
【0051】
クランプ式スライドロック機構L2は、グリップ11の左側面と右側面とに沿って左右に分割した左スライダ部22CLと右スライダ部22CRとを含むクランプ式専用スライダ22Cを備える。
【0052】
左スライダ部22CLの左側面の中央部と、これに対応する右スライダ部22CRの右側面の中央部との間には、グリップ11を左右に貫通して形成したクランプ軸可動孔41cを通してクランプ軸41bを設ける。
【0053】
左スライダ部22CLの左側面に貫通したクランプ軸41bの一端は、クランプ軸留め金41dに係止される。また、右スライダ部22CRの右側面に貫通したクランプ軸41bの他端は、クランプレバー41aの基部であってクランプレバー41aをグリップ11の後方に向けて倒し込むことで一体に回動するクランプ回動部41a1の偏心軸41a2に係止される。
【0054】
クランプ回動部41a1の回動する表面と右スライダ部22CRの右側面との間には、クランプ軸41bを貫通させた状態の薄板円形板41eを介在して設ける。
【0055】
左スライダ部22CLと右スライダ部22CRとの対向する内側壁同士の間隔は、クランプレバー41aをグリップ11の後方に向けて倒し込んだ場合に(図12参照)、クランプ回動部41a1の回動に伴い、クランプ回動部41a1の偏心軸41a2に係止されたクランプ軸41bを介して、左スライダ部22CLがグリップ11の左側面に向けて引き寄せられると同時に右スライダ部22CRがグリップ11の右側面に向けて押し込まれることで、左スライダ部22CLと右スライダ部22CRとがグリップ11の左右側面を挟み込み、クランプ式専用スライダ22Cのグリップ11に対するスライド位置が固定された状態になる間隔に設定される。
【0056】
なお、グリップ11に形成するクランプ軸可動孔41cの長さは、スライダ可動孔16の長さと同様に、上あご12と下あご14との間の口幅が、“0”の状態からモンキーレンチ10の使用対象とする最大のボルトBの対辺の幅に広がるまで、クランプ式専用スライダ22Cがグリップ11に沿って移動可能になる長さに設定される。
【0057】
(クランプ式スライドロック機構L2の動作)
図12は、スライド調節式モンキーレンチ10のクランプ式スライドロック機構L2によりクランプ式専用スライダ22Cを固定する動作を説明する図である。
【0058】
図13は、スライド調節式モンキーレンチ10のクランプ式スライドロック機構L2によりクランプ式専用スライダ22Cの固定を解除する動作を説明する図である。
【0059】
(1)スライド調節式モンキーレンチ10のグリップ11をユーザHの手で把持しつつクランプ式専用スライダ22CをスライドさせてボルトBの頭部に口幅を合せた状態で(図4参照)、図12(A)の矢印P1に示すように、クランプレバー41aをグリップ11の後方に向けて倒し込む。すると、左スライダ部22CLと右スライダ部22CRとがグリップ11の左右側面を挟み込み、クランプ式専用スライダ22Cのグリップ11に対するスライド位置が固定され、ボルトBを掴んだ口幅が固定される。
【0060】
(2)ボルトBの締め付けを完了した後に、図13(A)の矢印P2に示すように、グリップ11の後方に向けて倒し込まれているクランプレバー41aを引き起こす。すると、図13(B)に示すように、左スライダ部22CLと右スライダ部22CRとによりグリップ11の左右側面を挟み込んだ状態が解除され、クランプ式専用スライダ22Cのグリップ11に対する固定状態、すなわち口幅の固定は解除される。
【0061】
クランプ式スライドロック機構L2によれば、クランプ式専用スライダ22Cの右スライダ部22CRに備わるクランプレバー41aを、当該専用スライダ22CのスライドによるボルトBに合わせた口幅の調節と共にグリップ11の後方に向けて倒し込んだり引き起こしたりするだけで、簡単且つ確実に口幅を固定してボルトBを締め付けたり、口幅の固定を解除したりすることができる。
【0062】
ここで説明したクランプ式スライドロック機構L2のクランプ式専用スライダ22Cにおいて、クランプレバー41aを設ける場所は、右スライダ部22CRに限らず、前述した構成とは左右反対にして、左スライダ部22CLに設けてもよいのは勿論である。
【0063】
(ストッパ式スライドロック機構L3の構成)
図14は、スライド調節式モンキーレンチ10のストッパ式スライドロック機構L3の構成(その1)を示す図であり、同図(A)はその左側面図、同図(B)はその右側面図である。
【0064】
図15は、スライド調節式モンキーレンチ10のストッパ式スライドロック機構L3の構成(その2)を示す図であり、同図(A)はその上面図、同図(B)はその下面図である。
【0065】
図16は、ストッパ式スライドロック機構L3の非ロック(非固定)状態での構成を示す図であり、同図(A)はその左側面図、同図(B)は同図(A)のC-C矢視断面図、同図(C)は同図(B)のa部分拡大図である。
【0066】
図17は、ストッパ式スライドロック機構L3のロック(固定)状態での構成を示す図であり、同図(A)はその左側面図、同図(B)は同図(A)のD-D矢視断面図、同図(C)は同図(B)のb部分拡大図である。
【0067】
ストッパ式スライドロック機構L3は、図14および図15に示すように、グリップ11を挟んで左右に分離可能であって通常時は一体化された左スライダ部22SLと右スライダ部22SRとを含むストッパ式専用スライダ22Sを備える。
【0068】
左スライダ部22SLの側面板には、図14(A)、図16および図17に示すように、グリップ11の左側面の長さ方向に沿ったスリット状のストッパ可動孔51が形成され、ストッパ可動孔51には、ストッパ可動孔51を通して外側に露出する例えば平面矩形のストッパ操作子52aと、ストッパ可動孔51を通して内側に露出しグリップ11の左側面との隙間に配置されるストッパ部材52bとを一体にしたストッパ52を取り付ける。
【0069】
ストッパ可動孔51の内側に対応する左スライダ部22SLの側面板の内壁とグリップ11の左側面との隙間は、図16(B)および図17(B)に示すように、グリップ11の前方寄りでストッパ部材52bの厚みよりも大きく(広く)、その後方寄りでストッパ部材52bの厚みよりも小さく(狭く)なるように、左スライダ部22SL側の内壁を傾斜LTさせて形成する。
【0070】
図16(A)の矢印S2に示すように、ストッパ操作子52aをストッパ可動孔51の前方寄りに移動させて操作した場合、図16(B)および図16(C)に示すように、ストッパ部材52bはグリップ11の左側面との間に隙間を有する状態Z1となり、ストッパ式専用スライダ22Sをグリップ11に対して自在に前後方向にスライドさせることで、上あご12に対する下あご14との口幅を自在に調節可能な状態になる。
【0071】
これとは逆に、図17(A)の矢印S1に示すように、ストッパ操作子52aをストッパ可動孔51の後方寄りに移動させて操作した場合、図17(B)および図17(C)に示すように、ストッパ部材52bはグリップ11の左側面との間に挟み込まれた状態Z2となり、ストッパ式専用スライダ22Sのグリップ11に対する前後方向の位置が固定されることで、上あご12に対する下あご14との口幅が固定された状態になる。
【0072】
ストッパ式専用スライダ22Sの左スライダ部22SLと右スライダ部22SRとは、図15(A)および図15(B)に示すように、上面側および下面側ともに互いの櫛歯状部(上面側:22SA/下面側:22SB)を組み合わせて分離可能に一体化され、通常時は、互いの櫛歯状部22SA/22SBを横断して貫通する固定ピン53P/56Pを備えた固定金具53/56により一体化された状態で固定される。
【0073】
図18は、ストッパ式スライドロック機構L3のストッパ式専用スライダ22Sを抜き出して示す図であり、同図(A)はその正面図、同図(B)はその背面図、同図(C)は同図(B)のE-E矢視断面図、同図(D)は同図(B)の固定金具53/56を除いたE-E矢視断面図である。
【0074】
ストッパ式専用スライダ22Sの左スライダ部22SLと右スライダ部22SRとを一体化した状態で固定する固定金具53/56の固定ピン53P/56Pは、図18(C)および図18(D)に示すように、上面側および下面側ともに互いの櫛歯状部22SA/22SBをストッパ式専用スライダ22Sの背面側から横断し貫通して形成された固定金具通し穴53H/56Hに挿抜可能に挿し込まれる。
【0075】
左スライダ部22SLと右スライダ部22SRとを上面側で固定する固定金具53には、図15(A)および図18(B)に示すように、背面側に露出する一端部にOリング54が取り付けられる。
【0076】
Oリング54は、固定金具53の一端部を支点として上方に引き起こし、ストッパ式専用スライダ22Sの前後方向に回動可能に取り付けられる。
【0077】
Oリング54をストッパ式専用スライダ22Sの前方へ回動させて当該専用スライダ22Sの上面に沿わせた状態で、Oリング54が同専用スライダ22Sの最も前方寄りを通る位置の左スライダ部22SLの上面には、Oリング54の端部を着脱可能に係止するOリング留め金55が設けられる。
【0078】
ストッパ式専用スライダ22Sの上面側は、Oリング54を使用して固定金具53を後方へ引き抜くことで、左スライダ部22SLと右スライダ部22SRとが、下面側の固定金具56を支点として左右に扇状に開いて分離し(左スライダ部22SLと右スライダ部22SRとは、スライダ用丸形スペーサ(スライダ可動軸)18を介して繋がれているので(図1参照)、実際には固定が緩む程度の分離となる)、ストッパ52の操作位置に関わらずストッパ式専用スライダ22Sのグリップ11に対する固定状態は完全に解除される(図20参照)。
【0079】
(ストッパ式スライドロック機構L3の動作)
(1)スライド調節式モンキーレンチ10において、図16の矢印S2に示すように、ストッパ式専用スライダ22Sのストッパ52をストッパ可動孔51の前方寄りに移動させ、当該専用スライダ22Sのグリップ11に対する固定を解除した状態で、グリップ11をユーザHの手で把持しつつ同専用スライダ22SをスライドさせてボルトBの頭部に口幅を合せる(図4参照)。
【0080】
(2)図17の矢印S1に示すように、ストッパ式専用スライダ22Sのストッパ52をストッパ可動孔51の後方寄りに移動させると、ストッパ部材52bが左スライダ部22SLの側面板の内壁とグリップ11の左側面との隙間に挟み込まれた状態Z2となり、ストッパ式専用スライダ22Sのグリップ11に対するスライド位置が固定され、ボルトBを掴んだ口幅が固定される。
【0081】
(3)ボルトBの締め付けを完了した後に、再び図16の矢印S2で示したように、ストッパ式専用スライダ22Sのストッパ52をストッパ可動孔51の前方寄りに移動させると、ストッパ式専用スライダ22Sのグリップ11に対する固定状態、すなわち口幅の固定は解除される。
【0082】
ストッパ式スライドロック機構L3によれば、ストッパ式専用スライダ22Sの左スライダ部22SLに備わるストッパ52を、当該専用スライダ22SのスライドによるボルトBに合わせた口幅の調節と共にグリップ11の後方寄りに移動させたり前方寄り移動させたりするだけで、簡単且つ確実に口幅を固定してボルトBを締め付けたり、口幅の固定を解除したりすることができる。
【0083】
なお、図17で示したように、左スライダ部22SLに備わるストッパ52を、グリップ11の後方寄りに移動させて、ストッパ部材52bを左スライダ部22SLの側面板の内壁とグリップ11の左側面との隙間に挟み込んだ状態Z2とし、ストッパ式専用スライダ22Sのグリップ11に対するスライド位置を固定した状態で、ストッパ部材52bの挟み込みが強固になり、ストッパ52をグリップ11の前方寄りに戻せなくなった場合、以下の図19および図20を参照して説明するように、ストッパ式専用スライダ22Sのグリップ11に対する固定状態を左スライダ部22SLと右スライダ部22SRとの分離(固定の緩み)により強制的に解除する。
【0084】
図19は、ストッパ式スライドロック機構L3のストッパ式専用スライダ22Sのグリップ11に対する固定状態を強制的に解除する動作(その1)を説明するための左側面図である。
【0085】
図20は、ストッパ式スライドロック機構L3のストッパ式専用スライダ22Sのグリップ11に対する固定状態を強制的に解除する動作(その2)を説明する図であり、同図(A)はその左側面図、同図(B)はその背面図である。
【0086】
(1)図19(A)の矢印R1に示すように、ストッパ式専用スライダ22Sの上面側の固定金具53に取り付けられたOリング54の端部をOリング留め金55から外して引き起こし、図19(B)の矢印R2に示すように、Oリング54にユーザHの指を掛け、Oリング54を後方に回動させつつ引っ張ることで、図20(A)の矢印R3に示すように、固定金具53およびその固定ピン53Pをストッパ式専用スライダ22Sから引き抜く。
【0087】
(2)ストッパ式専用スライダ22Sから固定金具53を引き抜くと、図20(B)の矢印Wに示すように、左スライダ部22SLと右スライダ部22SRとが、下面側の固定金具56を支点として左右に扇状に開いて緩む程度に分離され、ストッパ式専用スライダ22Sのグリップ11に対する固定状態は強制的に解除される。
【0088】
図21は、ストッパ式スライドロック機構L3のストッパ式専用スライダ22Sのグリップ11に対する固定状態を強制的に解除した後にストッパ式専用スライダ22Sのスライド位置が固定されない状態で元に戻す動作(その1)を説明するための左側面図である。
【0089】
図22は、ストッパ式スライドロック機構L3のストッパ式専用スライダ22Sのグリップ11に対する固定状態を強制的に解除した後にストッパ式専用スライダ22Sのスライド位置が固定されない状態で元に戻す動作(その2)を説明するための左側面図である。
【0090】
(1)図21(A)に示すように、ストッパ式専用スライダ22Sのストッパ52をグリップ11の前方寄りに操作して移動させた後に、左スライダ部22SLと右スライダ部22SRとの上面側を合せて一体化し、互いの櫛歯状部22SAに貫通して形成された固定金具通し穴53H(図18(C)および図18(D)参照)に対し、図21(A)の矢印R4および図21(B)の矢印R5に示すように、ストッパ式専用スライダ22Sの背面側から固定金具53の固定ピン53Pを挿し込む。左スライダ部22SLと右スライダ部22SRとは、ストッパ式専用スライダ22Sとして元通りに一体化され、グリップ11の前後方向に自在にスライド可能な状態になると同時に、口幅を自在に調節可能な状態に戻る。
【0091】
(2)図22(A)の矢印R6および図22(B)に示すように、固定金具53に取り付けられたOリング54をグリップ11の前方へ向けて回動させ、その端部をOリング留め金55に元通りに係止する。
【0092】
なお、ストッパ式専用スライダ22Sの左スライダ部22SLと右スライダ部22SRとをその上面側で一体化して固定する固定金具53ではなく、下面側で一体化して固定する固定金具56を、左スライダ部22SLと右スライダ部22SRの下面側の互いの櫛歯状部22SBに貫通して形成された固定金具通し穴56H(図18(C)および図18(D)参照)から引き抜くことでも、前述同様に、左スライダ部22SLと右スライダ部22SRとを、上面側の固定金具53を支点として左右に扇状に開いて分離させ、ストッパ式専用スライダ22Sのグリップ11に対する固定状態を強制的に解除できる。
【0093】
ここで説明したストッパ式スライドロック機構L3のストッパ式専用スライダ22Sにおいて、ストッパ52を設ける場所は、左スライダ部22SLに限らず、前述した構成とは左右反対にして、右スライダ部22SRに設けてもよいのは勿論である。
【0094】
(ネジ締め式スライドロック機構L4の構成)
図23は、スライド調節式モンキーレンチ10のネジ締め式スライドロック機構L4の構成を示す図であり、同図(A)はその左側面図、同図(B)はその上面図、同図(C)はその下面図である。
【0095】
図24は、スライド調節式モンキーレンチ10のネジ締め式スライドロック機構L4によりネジ締め式専用スライダ22Nを固定する動作を説明するための図23(B)のF-F矢視断面図である。
【0096】
図25は、スライド調節式モンキーレンチ10のネジ締め式スライドロック機構L4によりネジ締め式専用スライダ22Nの固定を解除する動作を説明するための図23(B)のF-F矢視断面図である。
【0097】
ネジ締め式スライドロック機構L4は、グリップ11の左右側面と上面とを3面で囲み下面を開放面とする断面コ字状のネジ締め式専用スライダ22Nを備える。
【0098】
ネジ締め式専用スライダ22Nの開放面である下面には、図23(B)に示すように、当該専用スライダ22Nの開放面を塞ぐように配置された矩形のスライダ下面板(グリップ挟み板)62が設けられる。
【0099】
ネジ締め式専用スライダ22Nの左側面板と右側面板それぞれの内壁には、上下方向直線状に2本ずつの下面板可動溝64が形成される。下面板可動溝64には、スライダ下面板(グリップ挟み板)62の左右側辺のそれぞれ2個所に形成された可動突起63が嵌合され、当該下面板(グリップ挟み板)62は下面板可動溝64に沿ってグリップ11の下面に当たるまでの範囲で上昇下降可能に構成される。
【0100】
一方、ネジ締め式専用スライダ22Nの上面には、水平に回転する平面円形のネジ締め部60が設けられる。ネジ締め部60は、その表面に上方に向けて半月状に立設され、ネジ締め部60を回転させる操作子となるつまみ60Tと、その下面の中心に下方に向けて立設され、グリップ11を上下に貫通して形成したネジ締め部可動孔61を通してネジ締め式専用スライダ22Nの下面に至る長さのネジ60Nとを有する。
【0101】
ネジ締め部60のネジ60Nの先端(下端)は、スライダ下面板(グリップ挟み板)62の略中央に形成されたネジ孔62Hに螺合される。スライダ下面板(グリップ挟み板)62は、ネジ締め部60のつまみ60Tによりネジ60Nを右に回転させたり左に回転させたりすることで、下面板可動溝64に沿って上昇したり下降したりして移動する。
【0102】
なお、グリップ11を上下に貫通して形成するネジ締め部可動孔61の長さは、スライダ可動孔16の長さと同様に、上あご12と下あご14との間の口幅が、“0”の状態からモンキーレンチ10の使用対象とする最大のボルトBの対辺の幅に広がるまで、ネジ締め式専用スライダ22Nがグリップ11に沿って移動可能になる長さに設定される。
【0103】
ネジ締め部可動孔61は、スライダ可動孔16に対し、例えば図23(A)、図24および図25に示すように、その空間が重なる部分を含む場合があるが、ネジ締め式専用スライダ22Nの前後方向へのスライドに伴い、スライダ可動孔16内を移動するスライダ用丸形スペーサ(スライダ可動軸)18と、ネジ締め部可動孔61内を移動するネジ締め部60のネジ60Nとは、同時に前後方向に移動するため、両者の動きが干渉することはない。
【0104】
(ネジ締め式スライドロック機構L4の動作)
(1)スライド調節式モンキーレンチ10のグリップ11をユーザHの手で把持しつつネジ締め式専用スライダ22NをスライドさせてボルトBの頭部に口幅を合せた状態で(図4参照)、図24(A)の矢印N1に示すように、ネジ締め部60のつまみ60Tを右に回しネジ60Nを右回転させ、矢印N2に示すように、ネジ締め式専用スライダ22Nのスライダ下面板(グリップ挟み板)62を上昇させて行く。すると、図24(B)に示すように、スライダ下面板(グリップ挟み板)62がグリップ11をその下面からネジ締め式専用スライダ22Nの上面板との間に挟み込み、ネジ締め式専用スライダ22Nのグリップ11に対するスライド位置が固定され、ボルトBを掴んだ口幅が固定される。
【0105】
(2)ボルトBの締め付けを完了した後に、図25(A)の矢印N3に示すように、ネジ締め部60のつまみ60Tを左に回しネジ60Nを左回転させ、矢印N4に示すように、ネジ締め式専用スライダ22Nのスライダ下面板(グリップ挟み板)62を下降させて行く。すると、図25(B)に示すように、スライダ下面板(グリップ挟み板)62によりグリップ11を挟み込んだ状態が解除され、ネジ締め式専用スライダ22Nのグリップ11に対する固定状態、すなわち口幅の固定は解除される。
【0106】
ネジ締め式スライドロック機構L4によれば、ネジ締め式専用スライダ22Nの上面に備わるネジ締め部60のつまみ60Tを、当該専用スライダ22NのスライドによるボルトBに合わせた口幅の調節と共に一方(右)に回したり他方(左)に回したりするだけで、簡単且つ確実に口幅を固定してボルトBを締め付けたり、口幅の固定を解除したりすることができる。
【0107】
(実施形態のまとめ)
実施形態のスライド調節式モンキーレンチ10によれば、グリップ11に沿ってスライドするスライダ22(押し込み式専用スライダ22P/クランプ式専用スライダ22C/ストッパ式専用スライダ22S/ネジ締め式専用スライダ22N)を、グリップ11を握りつつスライドさせることで、上あご12と下あご14との間の口幅を、ボルトBの頭部の対辺に合わせて直ぐに調節できるとともに、スライドロック機構Ln(押し込み式スライドロック機構L1/クランプ式スライドロック機構L2/ストッパ式スライドロック機構L3/ネジ締め式スライドロック機構L4)によって、簡単且つ確実に口幅を固定してボルトBを締め付けたり、口幅の固定を解除したりすることができる。
【0108】
また、実施形態のスライド調節式モンキーレンチ10によれば、上あご(固定あご)12に対し下あご(可動あご)14は、上あご(固定あご)12の基部から下斜め前方に向けて一体に形成した下あごガイド13を下あご14のガイド孔15に寸法精度よく嵌挿させた状態で、下あごガイド13に沿って上下に移動されるので、ボルトBの締め付けに際し下あご(可動あご)14が外側へ開いて緩んでしまうのを大幅に軽減できる。
【0109】
よって、下あご(可動あご)14の緩みを軽減しつつ口幅を容易且つ直ぐに調節することが可能になるスライド調節式モンキーレンチ10を提供できる。
【0110】
なお、実施形態のスライドロック機構Lnは、押し込み式スライドロック機構L1、クランプ式スライドロック機構L2、ストッパ式スライドロック機構L3、ネジ締め式スライドロック機構L4に限らない。例えばスライダ22の内壁とグリップ11の表面とが接触する部分に、スライダ22の前後方向に沿って段階的に連続するラッチを設けることで、スライダ22のスライドする位置を口幅を調節した位置でロック(固定)し、スライダ22の表面に設けた操作子によってロック(固定)を解除可能にするラッチ式スライドロック機構などであってよい。
【0111】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0112】
10…スライド調節式モンキーレンチ、11…グリップ、12…上あご(固定あご)、13…下あごガイド、14…下あご(可動あご)、15…ガイド孔、16…スライダ可動孔、17…下あご可動孔、18…スライダ用丸形スペーサ(スライダ可動軸)、19…下あご用丸形スペーサ(下あご可動軸)、20L,20R…スライド連結板、22…スライダ、L1…押し込み式スライドロック機構、22P…押し込み式専用スライダ、31…スライダ固定器具、32…固定穴、L2…クランプ式スライドロック機構、22C…クランプ式専用スライダ、22CL…左スライダ部(クランプ式)、22CR…右スライダ部(クランプ式)、41a…クランプレバー、41b…クランプ軸、41c…クランプ軸可動孔、41d…クランプ軸留め金、L3…ストッパ式スライドロック機構、22S…ストッパ式専用スライダ、22SL…左スライダ部(ストッパ式)、22SR…右スライダ部(ストッパ式)、51…ストッパ可動孔、52…ストッパ、53…固定金具(上面側)、54…Oリング、55…Oリング留め金、56…固定金具(下面側)、L4…ネジ締め式スライドロック機構、22N…ネジ締め式専用スライダ、60…ネジ締め部、61…ネジ締め部可動孔、62…スライダ下面板(グリップ挟み板)、62H…ネジ孔、63…可動突起、64…下面板可動溝。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25