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特開2024-111417X線検査システム、X線検査システムの制御装置及びX線検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111417
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】X線検査システム、X線検査システムの制御装置及びX線検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/04 20180101AFI20240809BHJP
【FI】
G01N23/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015916
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000142791
【氏名又は名称】株式会社アトックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】市村 健
(72)【発明者】
【氏名】田中 常稔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光吉
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA01
2G001DA09
2G001FA08
2G001GA01
2G001JA06
(57)【要約】
【課題】均一でない構造を持つ構造体の内部の状態を的確に把握することができるX線検査システムを提供する。
【解決手段】X線検査システム1Aは、構造体2を挟んでX線源10とは反対側となる領域を移動しつつ、X線を検出する検出器11と、検出器11の動作を制御する制御装置12と、制御装置12で決定された動作態様に基づいて、検出器11を動作させる動作機構13とを備える。制御装置12は、構造体2の構造に基づいて、検出器11に入射するX線の計数を認識する計数認識部12bと、認識されたX線の計数に基づいて、検出器11が移動する各位置で検出器11に入射するX線の計数が所定量以上になるように、検出器11の動作態様を決定する動作態様決定部12cとを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体の検査のために前記構造体の内部の状態を認識するためのX線検査システムにおいて、
前記構造体にX線を照射するX線源と、
前記構造体を挟んで前記X線源とは反対側となる領域を移動しつつ、前記構造体を透過したX線を検出する検出器と、
前記検出器の動作を制御する制御装置と、
前記制御装置で決定された動作態様に基づいて、前記検出器を動作させる動作機構と、
前記検出器で検出されたX線に基づいて、前記構造体の内部の状態を認識するためのデータを生成するデータ生成部とを備え、
前記制御装置は、前記構造体の構造に基づいて、前記検出器に入射するX線の計数を認識する計数認識部と、前記計数認識部で認識されたX線の計数に基づいて、前記検出器が移動する各位置で前記検出器に入射するX線の計数が所定量以上になるように、前記検出器の動作態様を決定する動作態様決定部とを有していることを特徴とするX線検査システム。
【請求項2】
請求項1に記載のX線検査システムにおいて、
前記動作態様決定部は、前記検出器の位置における移動速度を、前記計数認識部で認識されたX線の計数が少ない位置ほど遅くなるように決定し、
前記動作機構は、前記動作態様決定部が決定した速度となるように、前記検出器の速度を変更することを特徴とするX線検査システム。
【請求項3】
請求項1に記載のX線検査システムにおいて、
前記検出器は、前記構造体を透過したX線が入射する入射部を備え、
前記動作態様決定部は、前記検出器の位置における傾斜角度を、前記計数認識部で認識されたX線の計数が少ない位置ほど前記入射部が前記X線源側を向くように決定し、
前記動作機構は、前記動作態様決定部が決定した傾斜角度となるように、前記検出器の傾斜角度を変更することを特徴とするX線検査システム。
【請求項4】
請求項1に記載のX線検査システムにおいて、
前記動作態様決定部は、前記検出器の位置における前記X線源からの距離を、前記計数認識部で認識されたX線の計数が少ない位置ほど短くなるように決定し、
前記動作機構は、前記動作態様決定部が決定した距離となるように、前記検出器を移動させることを特徴とするX線検査システム。
【請求項5】
請求項1に記載のX線検査システムにおいて、
前記計数認識部は、前記構造体の構造に基づいて、前記検出器に入射するX線の計数を、予め推定して認識することを特徴とするX線検査システム。
【請求項6】
請求項1に記載のX線検査システムにおいて、
前記動作態様決定部は、前記検出器に入射するX線の計数が所定量以上になるように、且つ、一定に近づくように、前記検出器の動作態様を決定することを特徴とするX線検査システム。
【請求項7】
請求項1に記載のX線検査システムにおいて、
前記制御装置は、前記構造体の母材である第1構造物の内部に配置されている棒状の第2構造物の延設方向を認識する構造認識部を有し、
前記動作態様決定部は、前記第2構造物の延設方向と交差する方向に移動するように、前記検出器の動作態様を決定することを特徴とするX線検査システム。
【請求項8】
構造体にX線を照射するX線源と、前記構造体を挟んで前記X線源とは反対側となる領域を移動しつつ、前記構造体を透過したX線を検出する検出器と、前記検出器を動作させる動作機構とを備え、前記検出器で検出されたX線に基づいて、前記構造体の検査のために前記構造体の内部の状態を認識するためのX線検査システムの制御装置において、
前記構造体の構造に基づいて、前記検出器に入射するX線の計数を認識する計数認識部と、
前記計数認識部で認識されたX線の計数に基づいて、前記検出器が移動する各位置で前記検出器に入射するX線の計数が所定量以上になるように、前記動作機構による前記検出器の動作態様を決定する動作態様決定部とを備えていることを特徴とするX線検査システムの制御装置。
【請求項9】
構造体の検査のために前記構造体の内部の状態を認識するためのX線検査方法において、
前記構造体にX線を照射するX線源と、前記構造体を挟んで前記X線源とは反対側となる領域を移動しつつ、前記構造体を透過したX線を検出する検出器と、前記検出器の動作を制御する制御装置と、前記制御装置で決定された動作態様に基づいて、前記検出器を動作させる動作機構と、前記検出器で検出されたX線に基づいて、前記構造体の内部の状態を認識するためのデータを生成するデータ生成部とを備え、前記制御装置は、前記検出器に入射するX線の計数を認識する計数認識部と、前記検出器の動作態様を決定する動作態様決定部とを有しているX線検査システムを用いて、
前記計数認識部が、前記構造体の構造に基づいて、前記検出器に入射するX線の計数を認識するステップと、
前記動作態様決定部が、前記計数認識部で認識されたX線の計数に基づいて、前記検出器が移動する各位置で前記検出器に入射するX線の計数が所定量以上になるように、前記検出器の動作態様を決定するステップと、
前記動作機構が、前記動作態様決定部で決定された動作態様に基づいて、前記検出器を動作させるステップと、
前記データ生成部が、前記検出器で検出されたX線に基づいて、前記構造体の内部の状態を認識するためのデータを生成するステップとを備えていることを特徴とするX線検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体の検査のために前記構造体の内部の状態を認識するためのX線検査システム、X線検査システムの制御装置及びX線検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路、橋梁といった社会インフラなどを構成する構造体の他、大型車両、航空機などを構成する構造体などについて、その内部の異常を非破壊で検査するための装置がある。この種の装置としては、その構造体を透過させたX線を上下方向に移動する検出器で検出し、検出されたX線に基づいて計測信号を生成し、その計測信号に基づいて構造体の内部の画像を生成するX線撮像システムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
ところで、特許文献1に記載のようなX線検査システムを用いた検査では、ノイズ量を低減させたい(すなわち、S/N比を良好なものにしたい)という要望がある。そこで、このX線検査システムでは、検出器にX線を入射させやすくするために、検出器の検出素子がX線源を通る直線上に位置するように、高さ位置に応じて検出器の傾斜角度を変更している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6411775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、構造体は、必ずしも均一な構造を持っているとは限らない。例えば、橋梁を構成する構造体は、母材であるコンクリートの内部に、鉄筋が埋設されている。そして、一般に、コンクリートと鉄筋とは、X線の透過のしやすさが異なる。そのため、構造体ごとにX線が透過しやすい領域も異なる。
【0006】
しかし、特許文献1のX線検査システムは、検出器の位置を考慮してX線源に対する検出器の傾斜角度を変更するだけのものであるので、そのような均一でない構造を持つ構造体の検査を行う際には、構造体に対する検出器の位置によっては十分な計数のX線を検出することができず、ひいては、その構造体の内部の状態についての十分な鮮明さを持つ画像を取得できず、適切な検査を行うことができないという問題があった。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、均一でない構造を持つ構造体の内部の状態を的確に把握することができるX線検査システム、X線検査システムの制御装置及びX線検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のX線検査システムは、
構造体の検査のために前記構造体の内部の状態を認識するためのX線検査システムにおいて、
前記構造体にX線を照射するX線源と、
前記構造体を挟んで前記X線源とは反対側となる領域を移動しつつ、前記構造体を透過したX線を検出する検出器と、
前記検出器の動作を制御する制御装置と、
前記制御装置で決定された動作態様に基づいて、前記検出器を動作させる動作機構と、
前記検出器で検出されたX線に基づいて、前記構造体の内部の状態を認識するためのデータを生成するデータ生成部とを備え、
前記制御装置は、前記構造体の構造に基づいて、前記検出器に入射するX線の計数を認識する計数認識部と、前記計数認識部で認識されたX線の計数に基づいて、前記検出器が移動する各位置で前記検出器に入射するX線の計数が所定量以上になるように、前記検出器の動作態様を決定する動作態様決定部とを有していることを特徴とする。
【0009】
このように、本発明のX線検査システムは、構造体の構造に基づいて、検出器に入射するX線の計数を認識し、その認識されたX線の計数に基づいて、検出器が移動する各位置で検出器に入射するX線の計数が所定量以上になるように、検出器の動作態様(例えば、移動速度、傾斜角度、X線源からの距離など)を決定している。
【0010】
すなわち、このX線検査システムでは、構造体の構造を考慮して、十分な計数のX線を検出することができるように、検出器の動作態様が決定される。これにより、このX線検査システムでは、均一でない構造を持つ構造体であっても、位置によらず十分な計数のX線を検出することができる。その結果、そのような構造体の内部の状態について十分なデータを生成することができるので、その状態を的確に把握することができる。
【0011】
また、本発明のX線検査システムにおいては、
前記動作態様決定部は、前記検出器の位置における移動速度を、前記計数認識部で認識されたX線の計数が少ない位置ほど遅くなるように決定し、
前記動作機構は、前記動作態様決定部が決定した速度となるように、前記検出器の速度を変更することが好ましい。
【0012】
検出器の位置における移動速度が遅いほど、その位置で検出されるX線の計数は多くなる。そこで、このように、検出器の位置における移動速度を、計数認識部で認識されたX線の計数が少ない位置ほど遅くなるように決定すると、簡単な制御で、各位置で検出器に入射するX線の計数を所定量以上としやすくなる。ひいては、簡単な制御で、構造が均一ではない構造体の内部の状態について十分なデータを生成することができるようになる。
【0013】
また、本発明のX線検査システムにおいては、
前記検出器は、前記構造体を透過したX線が入射する入射部を備え、
前記動作態様決定部は、前記検出器の位置における傾斜角度を、前記計数認識部で認識されたX線の計数が少ない位置ほど前記入射部が前記X線源側を向くように決定し、
前記動作機構は、前記動作態様決定部が決定した傾斜角度となるように、前記検出器の傾斜角度を変更することが好ましい。
【0014】
検出器へX線が入射する入射部がX線源側を向いているほど、検出されるX線の計数は多くなる。そこで、このように、検出器の位置における傾斜角度を、計数認識部で認識されたX線の計数が少ない位置ほど入射部がX線源を向くように決定すると、簡単な制御で、各位置で検出器に入射するX線の計数を所定量以上としやすくなる。ひいては、簡単な制御で、構造が均一ではない構造体の内部の状態について十分なデータを生成することができるようになる。
【0015】
また、本発明のX線検査システムにおいては、
前記動作態様決定部は、前記検出器の位置における前記X線源からの距離を、前記計数認識部で認識されたX線の計数が少ない位置ほど短くなるように決定し、
前記動作機構は、前記動作態様決定部が決定した距離となるように、前記検出器を移動させることが好ましい。
【0016】
X線源から離れるほど、そのX線源から出射されたX線は弱くなるので、検出されるX線の計数も減少する。そこで、このように検出器の位置におけるX線源からの距離を、計数認識部で認識されたX線の計数が少ない位置ほど短くなるように決定すると、簡単な制御で、各位置で検出器に入射するX線の計数を所定量以上としやすくなる。ひいては、簡単な制御で、構造が均一ではない構造体の内部の状態について、十分なデータを生成することができるようになる。
【0017】
また、本発明のX線検査システムにおいては、
前記計数認識部は、前記構造体の構造に基づいて、前記検出器に入射するX線の計数を、予め推定して認識することが好ましい。
【0018】
道路、橋梁といった社会インフラを構成する構造体は、その構造を設計図などによって事前に把握することができる。すなわち、そのような構造体は、その設計図などを利用して、予め検出器に入射するX線の計数を推定することもできる。そして、そのように予め推定を行うと、例えば、同様の構造を持つ複数の構造体を連続的に検査する場合などには、構造体ごとにX線の計数を認識するよりも、スムーズに検査を行うことができるようになる。
【0019】
なお、推定を行うために用い得る構造体の構造としては、例えば、X線源と検出器との間における構造体の厚さ、構造体を構成する材料の種類又はその材料の配置位置などが挙げられる。
【0020】
また、本発明のX線検査システムにおいては、
前記動作態様決定部は、前記検出器に入射するX線の計数が所定量以上になるように、且つ、一定に近づくように、前記検出器の動作態様を決定することが好ましい。
【0021】
検出器に入射するX線の計数が所定量以上であり、構造体の内部の状態について十分なデータを生成することができる場合であっても、そのデータの詳細さ(例えば、そのデータによって生成される画像の鮮明さ)が、位置によって大きく異なっていると、そのデータに基づく異常を発見しにくくなってしまう場合がある。
【0022】
そこで、検出器に入射するX線の計数が所定量以上になるようにするだけではなく、一定に近づくように、検出器の動作態様を決定すると、得られたデータの詳細さが位置によって大きく異なってしまうことが抑制されるので、そのデータに基づく異常を発見しにくくなってしまうことを抑制できる。
【0023】
また、本発明のX線検査システムにおいては、
前記制御装置は、前記構造体の母材である第1構造物の内部に配置されている棒状の第2構造物の延設方向を認識する構造認識部を有し、
前記動作態様決定部は、前記第2構造物の延設方向と交差する方向に移動するように、前記検出器の動作態様を決定することが好ましい。
【0024】
一般に、橋梁などを構成する構造体では、コンクリートの母材に、棒状の鉄筋が埋設されているものが多数ある。そのような構造体では、コンクリートと鉄筋との線状の境界部分に何らかの異常が生じやすい。そのため、その線状の境界部分を詳細に観察したいという要望がある。
【0025】
一方、一般に用いられているラインセンサーのような検出器の検出領域は、複数の素子を検出器の移動方向に対して横に並べて構成されているものが多く、それらの素子の境界部分では、検出がしにくい。ひいては、その検出器を移動させつつ検出を行った場合には、その移動方向に沿って、検出のしにくい線状の領域が形成されてしまうおそれがある。そのため、そのような検出器で検出を行った場合、検出のしにくい線状の領域と詳細に観察したい線状の境界部分とが同じ方向を向いているので、それらを見分けにくくなってしまうおそれがあった。
【0026】
そこで、このように、構造体の内部に棒状の構造物が存在する場合には、その構造物の延設方向と交差する方向に検出器を移動させるようにすると、検出のしにくい線状の領域と詳細に観察したい線状の境界部分とが異なる方向を向くことになるので、それらを見分けやすくなり、鮮明に線状の境界部分の状態を把握しやすくなる。
【0027】
また、本発明のX線検査システムの制御装置は、
構造体にX線を照射するX線源と、前記構造体を挟んで前記X線源とは反対側となる領域を移動しつつ、前記構造体を透過したX線を検出する検出器と、前記検出器を動作させる動作機構とを備え、前記検出器で検出されたX線に基づいて、前記構造体の検査のために前記構造体の内部の状態を認識するためのX線検査システムの制御装置において、
前記構造体の構造に基づいて、前記検出器に入射するX線の計数を認識する計数認識部と、
前記計数認識部で認識されたX線の計数に基づいて、前記検出器が移動する各位置で前記検出器に入射するX線の計数が所定量以上になるように、前記動作機構による前記検出器の動作態様を決定する動作態様決定部とを備えていることを特徴とする。
【0028】
また、本発明のX線検査方法は、
構造体の検査のために前記構造体の内部の状態を認識するためのX線検査方法において、
前記構造体にX線を照射するX線源と、前記構造体を挟んで前記X線源とは反対側となる領域を移動しつつ、前記構造体を透過したX線を検出する検出器と、前記検出器の動作を制御する制御装置と、前記制御装置で決定された動作態様に基づいて、前記検出器を動作させる動作機構と、前記検出器で検出されたX線に基づいて、前記構造体の内部の状態を認識するためのデータを生成するデータ生成部とを備え、前記制御装置は、前記検出器に入射するX線の計数を認識する計数認識部と、前記検出器の動作態様を決定する動作態様決定部とを有しているX線検査システムを用いて、
前記計数認識部が、前記構造体の構造に基づいて、前記検出器に入射するX線の計数を認識するステップと、
前記動作態様決定部が、前記計数認識部で認識されたX線の計数に基づいて、前記検出器が移動する各位置で前記検出器に入射するX線の計数が所定量以上になるように、前記検出器の動作態様を決定するステップと、
前記動作機構が、前記動作態様決定部で決定された動作態様に基づいて、前記検出器を動作させるステップと、
前記データ生成部が、前記検出器で検出されたX線に基づいて、前記構造体の内部の状態を認識するためのデータを生成するステップとを備えていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】第1実施形態に係るX線検査システムの概略構成を示す模式図。
図2図1のX線検査システムの検出器の構成を模式的に示す縦断面図。
図3図1のX線検査システムの検出器及び動作機構の斜視図。
図4図1のX線検査システムの検出器の動作態様を模式的に示す側面図。
図5】コンクリート製の構造体の厚みとX線強度及びS/N比との関係の一例を示すグラフ。
図6図1のX線検査システムにおける検出器の動作態様の一例及びそれに対応するX線の計数を示す説明図であり、図中左側のグラフは、位置に対するX線の計数の変化を示すグラフ、図中右側のグラフは、位置に対する検出器の移動速度の変化を示すグラフ。
図7図1のX線検査システムを用いたX線検査方法のフローチャート。
図8図1のX線検査システムによるX線検査の一例を示すグラフ。
図9図1のX線検査システムにより取得した構造体のX線透過画像、及び他のX線検査システムにより取得した構造体のX線透過画像。
図10】第2実施形態に係るX線検査システムの概略構成を示す模式図。
図11図10のX線検査システムにより取得した構造体のX線透過画像、及び他のX線検査システムにより取得した構造体のX線透過画像。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[第1実施形態]
以下、図1図9を参照して、第1実施形態に係るX線検査システム1Aについて説明する。
【0031】
本実施形態では、ブロック状の構造体2を、検査対象とした場合について説明する。この構造体2は、図1などに示すように、コンクリート製の母材20に、鉄筋21が埋設された、いわゆる鉄筋コンクリートである。
【0032】
本実施形態では、X線検査システム1Aを用いて、この構造体2の内部(特に、母材20と鉄筋21とが隣接している領域)で、鉄筋21の腐食、母材20と鉄筋21との断裂などの不具合が生じていないかを、構造体2を破壊せずに検査する場合について説明する。
【0033】
なお、本発明のX線検査システムによって検査し得る構造体は、このような構成に限定されるものではなく、X線を透過可能なものであればよい。そのため、構造体は、例えば、道路といった橋梁以外の社会インフラなどを構成する構造体であってもよいし、大型車両、航空機などを構成する構造体であってもよい。
【0034】
[X線検査システムの構成機器]
まず、図1図4を参照して、X線検査システム1Aの構成機器について説明する。
【0035】
図1に示すように、構造体2にX線を照射するX線源10と、X線源10から照射され、構造体2を透過したX線を検出する検出器11と、検出器11の動作を制御する制御装置12と、制御装置12で決定された動作態様に基づいて、検出器11を動作させる動作機構13と、検出器11で検出されたX線に基づいて、構造体2の内部の状態を把握するためのデータ処理を行うデータ処理装置14とを備えている。
【0036】
X線源10は、支持台(不図示)によって固定されており、動作機構13側に向かって、放射状にX線を出射する。すなわち、X線源10は、X線源10と動作機構13との間に配置されている構造体2に、X線を照射する。
【0037】
検出器11は、後述する動作機構13に移動自在に保持されている。これにより、検出器11は、X線検査システム1Aの固定具(不図示)に構造体2を設置した際に、その構造体2を挟んでX線源10とは反対側となる領域を移動自在となっている。
【0038】
図2に示すように、検出器11は、X線源10側の面が開放されている直方体状の検出器用筐体11aと、検出器用筐体11aの内部に配置され、検出器用筐体11aに入射したX線を収束するコリメータ11b(入射部)と、コリメータ11bによって収束されたX線による光を発するシンチレータ11cと、シンチレータ11cからの光に基づいて電気信号を生成する受光素子11dとを有している。
【0039】
なお、本発明の検出器は、このような構成に限定されるものではなく、構造体を透過したX線を検出できるものであればよい。そのため、例えば、X線検査を行う構造体の種類によって、構成部材を適宜変更してよい。具体的には、本実施形態におけるコリメータ11bを省略し、検出器用筐体11aの開放部を入射部としてもよい。
【0040】
図1に戻り、本実施形態では、制御装置12は、情報端末を用いて構成されている。その制御装置12は、実装されたハードウェア構成及びプログラムの少なくとも一方により実現される機能(処理部)として、X線検査を行う構造体2の構造を認識する構造認識部12aと、認識された構造体2の構造に基づいて、検出器11に入射するX線の計数を認識する計数認識部12bと、検出器11の動作態様を決定する動作態様決定部12cとを有している。
【0041】
構造認識部12aは、X線検査を行う構造体2の構造を、その構造体2の設計図といった設計データなどに基づいて、推測して認識する。なお、構造認識部12aは、構造体2の構造を、検査を行う者などが直接入力した構造に関するデータ(例えば、数値のみのデータ)を用いて認識してもよい。
【0042】
計数認識部12bは、構造認識部12aによって認識された構造体2の構造、既知の値であるX線検査システムを構成する機器の機能及びレイアウトに基づいて、検出器11に入射するX線の計数を、予め推定して認識する。
【0043】
これは、このように予め推定を行うと、例えば、同様の構造を持つ複数の構造体を連続的に検査する場合などには、構造体ごとにX線の計数を認識するよりも、スムーズに検査を行うことができるようになるためである。ここで、推定を行うために用い得る構造体の構造としては、例えば、X線源と検出器との間における構造体の厚さ、構造体を構成する材料の種類又はその材料の配置位置などが挙げられる。
【0044】
また、計数認識部12bによる認識は、検出器11の状態ごとに行われる。検出器11の状態としては、検出器11の移動可能な位置、検出器11の取ることのできる姿勢(すなわち、傾斜角度)などが挙げられる。
【0045】
なお、本発明の計数認識部は、このような構成に限定されるものではなく、検出器に入射するX線の計数を認識するものであればよい。そのため、例えば、計数認識部は、予めX線の計数を認識するのではなく、リアルタイムで、検出されたX線の計数を、検出器の状態とともに認識するものであってもよい。
【0046】
動作態様決定部12cは、計数認識部12bで認識されたX線の計数に基づいて、検出器11の動作態様を決定する。その具体的な手法については後述する。
【0047】
図3に示すように、動作機構13は、X線源10側の面が開放されている直方体状の動作機構用筐体13aと、動作機構用筐体13aの内部に、上下方向に延びるようにして配置されている第1リニアアクチュエータ13b及び第2リニアアクチュエータ13cと、第1リニアアクチュエータ13b及び第2リニアアクチュエータ13cを駆動させる駆動源(不図示)と、第1リニアアクチュエータ13b及び第2リニアアクチュエータ13cによって保持されている保持板13dとを有している。
【0048】
第1リニアアクチュエータ13bは、2つで1セットとなっている(図3において、手前側のものは図示省略している)。一対の第1リニアアクチュエータ13bの各々は、動作機構用筐体13aのX線源10側の面に対して側方となる2つの面の内側に、互いに対向するようにして配置されている。
【0049】
第2リニアアクチュエータ13cは、2つで1セットとなっている(図3において、手前側のものは図示省略している)。一対の第2リニアアクチュエータ13cの各々は、動作機構用筐体13aのX線源10側の面に対して側方となる2つの面の内側に、互いに対向するようにして配置されている。その配置位置は、対応する第1リニアアクチュエータ13bよりもX線源10から離れた位置となっている。
【0050】
保持板13dは、両側面で、一対の第1リニアアクチュエータ13bに、回動自在に挟持されている。また、保持板13dは、両側面のうち一対の第1リニアアクチュエータ13bに挟持されている部分よりもX線源10から離れた部分で、一対の第2リニアアクチュエータ13cに、回動自在に挟持されている。保持板13dは、その上面に検出器11が載置されて固定される(図4参照)。
【0051】
ここで、一対の第1リニアアクチュエータ13bの各々は、同様に動作する。また、一対の第2リニアアクチュエータ13cの各々は、同様に動作する。ただし、一対の第1リニアアクチュエータ13bと一対の第2リニアアクチュエータ13cとは、独立して動作可能となっている。
【0052】
そのため、図4に示すように、第1リニアアクチュエータ13b及び第2リニアアクチュエータ13cによって保持されている保持板13dは、上下方向に移動自在、且つ、側面視で傾斜自在となっている。ひいては、保持板13dに固定されている検出器11も、上下方向に移動自在、且つ、側面視で傾斜自在となっている。また、その移動速度及び傾斜の変化速度も、適宜調整可能となっている。
【0053】
なお、本発明の動作機構は、このような構成に限定されるものではなく、制御装置で決定された動作態様に基づいて、検出器を動作させることができるものであればよい。そのため、例えば、リニアアクチュエータは1つでもよいし、保持板を用いずに筐体に検出器を直接取り付けてもよい。
【0054】
図1に戻り、本実施形態では、データ処理装置14は、情報端末を用いて構成されている。そのデータ処理装置14は、実装されたハードウェア構成及びプログラムの少なくとも一方により実現される機能(処理部)として、構造体2の内部の状態を認識するためのデータを生成するデータ生成部14aと、構造体2のX線透過画像を生成する画像生成部14bとを有している。
【0055】
データ生成部14aは、検出器11で検出されたX線の計数、変化の度合いなどに基づいて、検出器11の位置ごとに、検出されたX線の内容をデータ化する。
【0056】
画像生成部14bは、データ生成部14aで生成されたデータに基づいて、構造体2のX線透過画像を生成する(図9など参照)。
【0057】
なお、本実施形態においては、最終的に構造体2のX線透過画像を生成し、その画像を観察することによって、この構造体2の内部に断裂などの不具合が生じていないかを検査する。しかし、例えば、機械学習によって生成された予測モデルなどによって不具合の検査を行う場合には、画像ではなくデータを直接用いることもできるので、必ずしも画像を生成する必要がない。そのような場合には、画像生成部は省略してもよい。
【0058】
[動作態様の決定手法]
次に、図5及び図6を参照して、制御装置12が検出器11の動作態様を決定する際に行う手法について説明する。
【0059】
まず、その手法の説明に先立ち、検出されるX線の計数を変化させる要因について説明する。
【0060】
図5に示すグラフは、構造体に一般的に用いられる構造体の厚みと、X線強度(すなわち、検出されるX線の計数)及びS/N比(ノイズ割合)との関係のグラフである。
【0061】
このグラフからもわかるように、構造体の厚みが増加するほど、X線の強度は減少し、S/N比は悪化(すなわち、ノイズが増加)する。なお、構造体の材質が異なる場合であっても、変化の度合いは異なるものの、同様に厚みが増すほど、X線の強度は低下し、S/N比は悪化する。すなわち、構造体の形状、構造体を構成する材質、構造体の内部構造などに応じて、検出器の各位置で検出されるX線の計数は変動する。
【0062】
また、通常、X線検査におけるX線源からのX線は、構造体に均一に照射されるわけではなく、所定の点から放射状に出射されて照射される(例えば、図1参照)。そして、X線検査を行う構造体が直方体状のものであるような場合、X線源が構造体の中央部に対向して配置されているのであれば、構造体の端部では、構造体の中央部に比べて構造体の厚みが相対的に厚くなるので、検出されるX線の計数は減少し、S/N比も悪化する。
【0063】
また、単純に、検出器の移動速度が速かったり、検出器へX線が入射する入射部がX線源側を向いていなかったり、X線源と検出器との距離が長かったりするほど、検出されるX線の計数は減少し、S/N比も悪化する。
【0064】
そのため、構造体を透過したX線を検出する検出器として、構造体の全面をカバーするようなもの(例えば、FPD(フラットパネルディテクター)など)を採用した場合、検出時間は領域に関わらず一定であるので、検出されるX線の計数が少ない領域では、詳細なデータを得ることができない。
【0065】
また、構造体を透過したX線を検出する検出器として、いわゆるラインセンサーを採用した場合、その移動は、通常は、所定の軌道を所定の速度で行われるので、同様に、検出されるX線の計数が少ない領域では、詳細なデータを得ることができない。
【0066】
そこで、X線検査システム1Aの制御装置12では、計数認識部12bによって推定して認識された検出器11に入射するX線の計数に基づいて、動作態様決定部12cが、検出器11の動作態様(具体的には、検出器11の各位置における移動速度及び傾斜角度)を決定する。
【0067】
ここで、X線検査システム1Aでは、計数認識部12bが予めX線の計数を推測して認識することによって、予め検出器11の動作態様を決定している。しかし、本発明のX線検査システムは、このような構成に限定されるものではなく、計数認識部が検出器に入射するX線の計数をリアルタイムで認識し、それによって、検出器の動作態様をリアルタイムで決定してもよい。
【0068】
そして、検出器11の動作態様を決定するに際し、動作態様決定部12cは、検出器11が移動する各位置で検出器11に入射するX線の計数が所定量以上になるように、その動作態様を決定する。
【0069】
具体的には、図6に示すように、図中左側のグラフに示した、検出されるX線の計数の多い領域では、図中右側のグラフに示した移動速度のように、移動速度を速くし、検出されるX線の計数の少ない領域では、移動速度を遅くする。
【0070】
また、図中中央部に示す模式図のように、位置に関わらず、検出器11の入射部がX線源10側を向くように、検出器11の傾斜角度を変化させる。
【0071】
すなわち、このX線検査システム1Aでは、構造体2の構造を考慮して、十分な計数のX線を検出することができるように、検出器11の動作態様が決定される。これにより、このX線検査システム1Aでは、均一でない構造を持つ構造体2であっても、位置によらず、十分な計数のX線を検出することができる。その結果、そのような構造体2の内部の状態について十分なデータを生成することができるので、その状態を的確に把握することができる。
【0072】
ところで、検出器11に入射するX線の計数が所定量以上であり、構造体2の内部の状態について十分なデータを生成することができる場合であっても、そのデータの詳細さ(例えば、そのデータによって生成される画像の鮮明さ)が、位置によって大きく異なっていると、そのデータに基づく異常を発見しにくくなってしまう場合がある。
【0073】
そこで、動作態様決定部12cは、検出器11に入射するX線の計数が所定量以上になるようにするだけではなく、一定に近づくように、検出器11の動作態様を決定する。これにより、X線検査システム1Aでは、得られたデータの詳細さが位置によって大きく異なってしまうことが抑制されるので、そのデータに基づく異常を発見しにくくなってしまうことを抑制できるようになっている。
【0074】
ただし、検出器11が移動するすべての位置で検出器11に入射するX線の計数が十分に大きい場合などには、検出器11に入射するX線の計数を、一定に近づけなくてもよい。
【0075】
なお、前述のように、X線検査システム1Aの動作態様決定部12cでは、検出器11の位置における移動速度を、計数認識部12bで認識されたX線の計数が少ない位置ほど遅くなるように決定している。そして、動作機構13は、その決定された動作態様に応じて、検出器11の移動速度を変更する。これは、簡単な制御で、各位置で検出器に入射するX線の計数を所定量以上としやすくするためである。
【0076】
しかし、本発明のX線検査システムの制御装置の動作態様決定部は、このような構成に限定されるものではなく、計数認識部で認識されたX線の計数に基づいて、検出器が移動する各位置で検出器に入射するX線の計数が所定量以上になるように、検出器の動作態様を決定するものであればよい。
【0077】
そのため、例えば、動作態様決定部は、本実施形態の動作態様決定部12cのように検出器の位置における傾斜角度を検出器の入射部が常にX線源に向くように決定するのではなく、計数認識部で認識されたX線の計数が少ない位置においてだけ検出器の入射部がX線源側を向くように決定するものであってもよい。
【0078】
また、例えば、動作態様決定部は、検出器の位置におけるX線源からの距離を、計数認識部で認識されたX線の計数が少ない位置ほど短くなるように決定するものであってもよい。
【0079】
さらには、動作態様決定部は、計数認識部で認識されたX線の計数に基づいて、移動速度、傾斜角度、X線源からの距離の変化を組み合わせて、検出器が移動する各位置で検出器に入射するX線の計数が所定量以上になるように、検出器の動作態様を決定するものであればよい。
【0080】
また、動作態様決定部は、移動速度、傾斜角度、X線源からの距離の変化量を決定する要因として、X線の光軸から検出器までの距離を参照してもよい。
【0081】
これは、一般に、X線源からのX線は放射状に出射されるものが多く、そのようなX線では、中心軸線(すなわち、X線の光軸)と検出器との距離に応じて、検出されるX線の計数が変動するためである。そして、このような構成を採用した場合には、さらに簡単な制御で、検出器が移動する各位置で検出器に入射するX線の計数が所定量以上にしやすくなる。
【0082】
[検査手順]
次に、図1図7を参照して、X線検査システム1Aを用いて、構造体2の検査のために、構造体2の内部の状態を認識するためX線検査方法について説明する。
【0083】
このX線検査方法においては、まず、制御装置12の構造認識部12aが、X線検査の対象である構造体2の構造を認識する(図9/STEP1)。
【0084】
具体的には、構造認識部12aは、X線検査を行う構造体2の構造を、構造体2の設計データなどに基づいて、推測して認識する。なお、構造認識部12aは、構造体2の構造を、検査を行う者などが直接入力した構造に関するデータ(例えば、数値のみのデータ)を用いて認識してもよい。また、リアルタイムでX線の計数を計測して動作態様を決定する構成の場合には、このSTEP1は省略してよい。
【0085】
次に、制御装置12の計数認識部12bが、認識された構造体2の構造に基づいて、検出器11に入射するX線の計数を認識する(図9/STEP2)。
【0086】
次に、制御装置12の動作態様決定部12cが、認識されたX線の計数に基づいて、検出器11の動作態様を決定する(図9/STEP3)。
【0087】
具体的には、前述のように、動作態様決定部12cは、検出器11に入射するX線の計数が所定量以上になるようにするだけではなく、一定に近づくように、検出器11の動作態様(具体的には、検出器11の各位置における移動速度及び傾斜角度)を決定する。
【0088】
次に、動作機構13が、決定された動作態様に基づいて、検出器11を動作させる(図9/STEP4)。
【0089】
次に、データ処理装置14のデータ生成部14aが、検出されたX線の計数に基づいて、構造体2の内部の状態を認識するためのデータを生成する(図9/STEP5)。
【0090】
次に、データ処理装置14の画像生成部14bが、生成されたデータに基づいて、画像を生成し(図9/STEP6)、今回の処理を終了する。
【0091】
なお、前述のように、画像の観察ではなく機械学習によっての構造体2の内部に断裂などの不具合が生じていないかを検査するような場合には、STEP6に代わり、そのデータを機械学習によって生成された予測モデルに入力し、検査結果を出力させることになる。
【0092】
[実験データ]
次に、図8及び図9を参照して、前述のX線検査システム1Aを用いて行うX線検査方法によって取得した実験データを示す。
【0093】
図8に示すグラフは、構造体2(鉄筋21が埋設されたコンクリート製の母材20)の厚さに対する、全検査領域の平均S/N比を表すものであり、X線検査システム1Aを用いて行うX線検査方法により、検出器11としてラインセンサーを用いて計測を行ったデータ(実施例1)と、検出器11として構造体2の全面をカバーするFPD(フラットパネルディテクター)を用いて計測を行ったデータ(比較例1)である。
【0094】
このデータからもわかるように、本実施形態に係る実施例1は、構造体2の厚みが約600mm超えると、比較例1に比べて、S/N比が良好になっている。
【0095】
また、図9に示す画像は、図8に示すグラフのA~F点に対応する画像であり、A~Cが実施例1に係る画像、D~Fが比較例1に係る画像である。
【0096】
これらの画像からも明らかなように、本実施形態に係る実施例1は、構造体2の厚みが同じ場合、比較例1に比べ、鮮明な画像となっている。
【0097】
[第2実施形態]
以下、図10を参照して、第2実施形態に係るX線検査システム1Bについて説明する。
【0098】
なお、本実施形態のX線検査システム1Bは、検出器11の動作態様の決定手法が異なることを除き、第1実施形態のX線検査システム1Aと同様の構成を備えている。そのため、以下の説明においては、その動作態様の決定手法についてのみ説明する。また、第1実施形態のX線検査システム1Aと同一の構成又は対応する構成については、同一の符号を付すとともに、詳細な説明は省略する。
【0099】
[動作態様の決定手法]
一般に、橋梁などを構成する構造体では、コンクリートの母材に、棒状の鉄筋が埋設されているものが多数ある(例えば、図1及び図10参照)。そのような構造体では、コンクリートと鉄筋との線状の境界部分に何らかの異常が生じやすい。そのため、その線状の境界部分を詳細に観察したいという要望がある。
【0100】
一方、一般に用いられている検出器の検出領域は、複数の素子を検出器の移動方向に対して横に並べて構成されているものが多く、それらの素子の境界部分では、検出がしにくい。ひいては、その検出器を移動させつつ検出を行った場合には、その移動方向に沿って、検出のしにくい線状の領域が形成されてしまうおそれがある。そのため、そのような検出器で検出を行った場合、検出のしにくい線状の領域と詳細に観察したい線状の境界部分とが同じ方向を向いているので、それらを見分けにくくなってしまうおそれがあった。
【0101】
そこで、X線検査システム1Bでは、検出器11の動作態様を決定するに際し、第1実施形態のX線検査システム1Aと同様に、検出器11に入射するX線の計数が所定量以上になるよう、且つ、一定に近づくようにすることに加えて、構造体2の構造をより考慮して、検出器11の動作態様を決定する。
【0102】
具体的には、まず、制御装置12の構造認識部12aが、構造体2の構造を認識するに際し、構造体2の母材20であるコンクリート(第1構造物)の内部に配置されている棒状の鉄筋21(第2構造物)の延設方向を確認する。
【0103】
そして、その延設方向を考慮したうえで、制御装置12の動作態様決定部12cは、検出器11に入射するX線の計数が所定量以上になるように、且つ、一定に近づくように、且つ、図10に示すようにその鉄筋21の延設方向と交差する方向に移動するように、検出器11の動作態様を決定する。
【0104】
このように、構造体2の内部に棒状の構造物が存在する場合には、その構造物の延設方向と交差する方向に検出器を移動させるようにすると、検出のしにくい線状の領域と詳細に観察したい線状の境界部分とが異なる方向を向くことになるので、それらを見分けやすくなり、鮮明に線状の境界部分の状態を把握しやすくなる。
【0105】
なお、X線検査システム1Bにおいても、動作態様決定部12cは、検出器11が移動する各位置の全てで検出器11に入射するX線の計数が十分に大きい場合などには、検出器11に入射するX線の計数を、一定に近づけなくてもよい。
【0106】
[実験データ]
次に、図11を参照して、前述のX線検査システム1Bを用いて行うX線検査方法によって取得した実験データを示す。
【0107】
図11に示す画像のうち左側の画像(実施例2)は、検出器11を鉄筋21の延設方向と交差するように移動させて取得した画像であり、右側の画像(比較例2)は、検出器11を鉄筋21の延設方向に沿って移動させて取得した画像である。
【0108】
これらの画像からも明らかなように、本実施形態に係る実施例2は、比較例2とは異なり、観察すべき領域である母材20と鉄筋21との境界部分の延びる方向が受光素子11dの境目による境界部分の延びる方向と交わっているので、観察すべき領域の状態を、比較例2の画像に比べて明確に観察することができる。
【0109】
[その他の実施形態]
以上、図示の実施形態について説明したが、本発明はこのような形態に限定されるものではない。
【0110】
例えば、上記実施形態では、X線検査システム1A,1Bを、1か所に設けた機器によって構成している。しかし、本発明のX線検査システムは、そのような構成に限定されるものではなく、構成する機器を設ける場所は適宜設定してよい。
【0111】
そのため、例えば、実際の検査に係る作業を行う機器と、データ処理を行う機器を、異なる場所に設け、それらの機器を、インターネット網、公衆回線などを通じて、相互に情報通信可能に構成してもよい。具体的には、本実施形態における制御装置12及びデータ処理装置14の少なくとも一方を、X線源10、検出器11及び動作機構13と異なる場所に設けてもよい。
【0112】
そして、そのように実際の検査に係る作業を行う機器と、データ処理を行う機器とを、異なる場所に設けた場合には、それらの機器を扱う者は必ずしも同一のものでなくてもよい。すなわち、本発明のX線検査システムは、X線検査の全てを必ずしも単一の者が行う必要はない。
【0113】
そのため、例えば、構造体の構造を解析して検出器の動作態様に関するデータを提供する者、提供されたデータを用いて構造体を透過したX線の計数を調査する者、及び調査されたX線の計数に基づいて解析を行って構造体の検査を行う者が、それぞれ異なっていてもよい。
【0114】
具体的には、図1に示す制御装置12を保有する者、上記実施形態におけるX線源10、検出器11及び動作機構13を使用する者、及びデータ処理装置14を保有する者が、それぞれ異なっていてもよい。このとき、制御装置12には、少なくとも計数認識部12b、動作態様決定部12cを有していればよい。
【符号の説明】
【0115】
1A、1B…X線検査システム、2…構造体、10…X線源、11…検出器、11a…検出器用筐体、11b…コリメータ(入射部)、11c…シンチレータ、11d…受光素子、12…制御装置、12a…構造認識部、12b…計数認識部、12c…動作態様決定部、13…動作機構、13a…動作機構用筐体、13b…第1リニアアクチュエータ、13c…第2リニアアクチュエータ、13d…保持板、14…データ処理装置、14a…データ生成部、14b…画像生成部、20…母材、21…鉄筋。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11