(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011143
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】レンズユニット、カメラモジュール、車載システム及び移動体
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20240118BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20240118BHJP
G03B 30/00 20210101ALI20240118BHJP
H04N 23/55 20230101ALI20240118BHJP
【FI】
G02B7/02 A
G02B7/02 D
G03B15/00 V
G02B7/02 Z
G03B30/00
G03B15/00 Q
H04N5/225 400
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112906
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100206612
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 修博
(74)【代理人】
【識別番号】100209749
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 和輝
(74)【代理人】
【識別番号】100217755
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 淳史
(72)【発明者】
【氏名】米川 翔太
【テーマコード(参考)】
2H044
5C122
【Fターム(参考)】
2H044AA02
2H044AA10
2H044AA14
2H044AA17
2H044AD02
2H044AJ03
2H044AJ04
2H044AJ06
5C122DA14
5C122EA02
5C122FB03
5C122FB08
5C122GE11
(57)【要約】
【課題】最も物体側に位置されるレンズの曲率半径の大小にかかわらず、該レンズと鏡筒との間を気密状態に確実に保持できるレンズユニット、カメラモジュール、車載システム及び移動体を提供する。
【解決手段】本発明のレンズユニットにおいて、第1のレンズ13の周側面13cと座面13bとにわたる面領域と、鏡筒12の内周側面部12bと対向面部12cとにわたる面領域との間には、これらの間を全周にわたって気密状態に封止する物体側接着層40及び像側接着層42が互いに離間して設けられる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレンズが光軸に沿って並べられて成るレンズ群と、該レンズ群を収容保持するための内側収容空間を有する鏡筒とを備えるレンズユニットにおいて、
前記レンズ群の最も物体側に位置される第1のレンズは、物体側に面する表面と、光軸方向の位置決めのために径方向外側に位置されて像側に面する座面と、前記表面と前記座面とを接続する周側面とを有し、
前記鏡筒は、前記第1のレンズの前記周側面と嵌合する内周側面部と、前記第1のレンズの前記座面と部分的に対向する対向面部とを有し、
前記第1のレンズの前記周側面と前記座面とにわたる面領域と、前記鏡筒の前記内周側面部と前記対向面部とにわたる面領域との間には、これらの間を全周にわたって気密状態に封止する物体側接着層及び像側接着層が互いに離間して設けられることを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
前記物体側接着層が前記第1のレンズの前記周側面と前記鏡筒の前記内周側面部との間に設けられ、前記像側接着層が前記第1のレンズの前記座面と前記鏡筒の前記対向面部との間に設けられることを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項3】
前記第1のレンズには、前記周側面と前記座面との間に面取りされた面取り部が設けられ、この面取り部と前記鏡筒の前記内周側面部及び前記対向面部との間には、これらの間を全周にわたって気密状態に封止する中間接着層が、前記物体側接着層と前記像側接着層との間に位置して設けられることを特徴とする請求項2に記載のレンズユニット。
【請求項4】
前記中間接着層が前記像側接着層から連続していることを特徴とする請求項3に記載のレンズユニット。
【請求項5】
前記鏡筒は、径方向内側にカシメられることにより前記第1のレンズを固定するためのカシメ部を有し、前記物体側接着層が前記カシメ部に隣接して設けられることを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項6】
前記鏡筒は、前記レンズ群のうち物体側に位置される一部のレンズを収容する物体側収容空間と前記レンズ群の像側に位置される残りの一部のレンズを収容する像側収容空間とに前記内側収容空間を部分的に区画して前記物体側収容空間内のレンズのうち最も像側に位置されるレンズを光軸方向で支持するレンズ支持部を有することを特徴とする請求項5に記載のレンズユニット。
【請求項7】
前記物体側接着層及び前記像側接着層は、前記第1のレンズ及び/又は前記鏡筒に形成された溝内に接着剤が充填されることによって形成されることを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のレンズユニットと、前記レンズユニットの前記レンズ群を通じて集光される光を電気信号に変換する撮像素子とを備えることを特徴とするカメラモジュール。
【請求項9】
車両に搭載される車載システムであって、
請求項8に記載のカメラモジュールと、
前記カメラモジュールの前記撮像素子から出力される撮像画像を処理して、前記撮像画像の中の対象物の認識を行なう制御部と、
を有することを特徴する車載システム。
【請求項10】
請求項9に記載の車載システムと乗員への情報を出力する出力装置とを搭載した移動体であって、
前記制御部は、前記対象物の認識情報を前記出力装置に出力するように構成されていることを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に自動車等の車両に搭載される車載カメラを構成し得るレンズユニット、カメラモジュール、車載システム、及び、車載システムを搭載した移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車に車載カメラを搭載し、駐車をサポートしたり、画像認識により衝突防止を図ったりすることが行なわれており、さらにそれを自動運転に応用する試みもなされている。また、このような車載カメラ等のカメラモジュールは、一般に、複数のレンズが光軸に沿って並べられて成るレンズ群と、このレンズ群を収容保持する鏡筒(バレル)と、レンズ群の少なくとも一個所のレンズ間に配置される絞り部材とを有するレンズユニットを備える(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特に、車載カメラ用のレンズユニットでは、少なくとも一部が車外に設置される場合、防水及び防塵の目的で、
図6に示されるように、鏡筒102の内側収容空間S内にレンズ群Lが組み込まれて収容保持された状態で、レンズ群Lの最も物体側に位置されるガラスレンズ100と鏡筒102との間にOリング104が介挿され、鏡筒102の内側のレンズ群L内に水や塵埃が侵入しないようにしている。この場合、ガラスレンズ100の外周面100aに、該レンズ100の像側部分で径が小さくなった段差状の縮径部100bが設けられ、この縮径部100bにOリング104が装着されて、ガラスレンズ100の外周面100aと鏡筒102の内周面102aとの間でOリング104が径方向で圧縮されることにより、鏡筒102の物体側端部が封止された状態となっている。
【0004】
また、鏡筒102は、その内側収容空間S内にレンズ群Lが組み込まれて収容保持された状態で、その物体側の端部(
図6において上端部)のカシメ部123が径方向内側にカシメられることにより、レンズ群Lの最も物体側に位置されるガラスレンズ100をこのカシメ部123で鏡筒102の物体側端部に固定する。この場合、安定したカシメを行なえるように、カシメ部123が圧接されるガラスレンズ100の部位は平面状に斜めにカットされた平坦部100eとして形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、最も物体側に位置されるガラスレンズ100は、球面レンズが多用されており、近年、レンズの広角化が進むにつれて、その像側の凹面100c及び物体側の凸面100dの曲率半径が小さく(曲率がきつく)なってきている。魚眼レンズなど、特に広角レンズユニットにおいては、凹面100c及び凸面100dの曲率半径がかなり小さくなり、従来から行なわれてきているレンズ加工法では、ガラスレンズ100の縮径部100bの光軸O方向の長さ寸法を十分に確保することが難しくなってきている。そのため、Oリング104によって気密構造をとることが難しいケースが増加している。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、最も物体側に位置されるレンズの曲率半径の大小にかかわらず、該レンズと鏡筒との間を気密状態に確実に保持できるレンズユニット、カメラモジュール、車載システム及び移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、複数のレンズが光軸に沿って並べられて成るレンズ群と、該レンズ群を収容保持するための内側収容空間を有する鏡筒とを備えるレンズユニットにおいて、
前記レンズ群の最も物体側に位置される第1のレンズは、物体側に面する表面と、光軸方向の位置決めのために径方向外側に位置されて像側に面する座面と、前記表面と前記座面とを接続する周側面とを有し、
前記鏡筒は、前記第1のレンズの前記周側面と嵌合する内周側面部と、前記第1のレンズの前記座面と部分的に対向する対向面部とを有し、
前記第1のレンズの前記周側面と前記座面とにわたる面領域と、前記鏡筒の前記内周側面部と前記対向面部とにわたる面領域との間には、これらの間を全周にわたって気密状態に封止する物体側接着層及び像側接着層が互いに離間して設けられることを特徴とする。
【0009】
本発明の上記構成によれば、第1のレンズの周側面と座面とにわたる面領域と、鏡筒の内周側面部と対向面部とにわたる面領域との間に、これらの間を全周にわたって気密状態に封止する2つの別個の接着層、すなわち、物体側接着層及び像側接着層が互いに離間して設けられるため、水蒸気や塵埃等が物体側接着層を仮に通過したとしても、これらの異物を像側接着層によって捕捉して内側収容空間内へ侵入させないようにすることができる。すなわち、接着層がOリングに取って代わることができるため、Oリングが不要となり、したがって、従来のように第1のレンズにOリング装着用の段差状の縮径部を設ける必要がなくなる。そのため、第1のレンズの成形の自由度が高まり、所望の光学性能が容易且つ確実に得られるようになる。言い換えると、最も物体側に位置される第1のレンズの曲率半径の大小にかかわらず、該レンズと鏡筒との間を気密状態に確実に保持できる。また、Oリングが不要になることから、部品点数の減少によるコスト低減を図ることもできる。
【0010】
なお、上記構成において、「接着層」とは、内側収容空間内への水蒸気や塵埃等の異物の侵入を許容する鏡筒と第1のレンズとの間の流路を気密状態に封止するように鏡筒と第1のレンズとを接着する接着剤の層を意味し、接着剤は、一般に第1のレンズの周側面及び座面の全体にわたって遮光用の墨が塗布されることを考えると、例えば、墨によって透過されずに遮断されるような紫外線の外部からの照射に依存する紫外線硬化樹脂ではなく、墨の有無にかかわらず外部からレンズへと確実に伝達可能な熱により硬化する熱硬化樹脂から形成されることが好ましい。
【0011】
また、上記構成では、物体側接着層及び像側接着層のいずれも、第1のレンズの周側面と鏡筒の内周側面部との間に設けられてもよく、また、物体側接着層及び像側接着層のいずれも、第1のレンズの座面と鏡筒の対向面部との間に設けられてもよい。特に、物体側接着層が第1のレンズの周側面と鏡筒の内周側面部との間に設けられ、像側接着層が第1のレンズの座面と鏡筒の対向面部との間に設けられることが好ましい。これによれば、接着層が略光軸方向及び略径方向といった方向が異なる2つの経路にそれぞれ分配して設けられるため、内側収容空間内へと向かう異物(水蒸気や塵埃等)の直線的で直接的な流れを困難ならしめることができる。また、上記構成において、物体側接着層及び像側接着層はそれぞれ、互いに離間する複数の接着層部から成っていてもよい。
【0012】
また、上記構成において、第1のレンズには、周側面と座面との間に面取りされた面取り部が設けられ、この面取り部と鏡筒の内周側面部及び対向面部との間に、これらの間を全周にわたって気密状態に封止する中間接着層が、物体側接着層と像側接着層との間に位置して設けられてもよい。これによれば、略光軸方向及び略径方向といった方向が異なる2つの経路の方向転換部に更に中間の接着層を設けることで、3重の封止形態をより効果的に実現でき、水蒸気や塵埃等の異物の侵入防止を確実ならしめることができる。
【0013】
また、上記構成では、中間接着層が像側接着層から連続していてもよい。これによれば、水蒸気や異物等の侵入防止効果を長い経路にわたって連続的に得ることができる。なお、このような中間接着層も含めて、接着層が3つ以上設けられてもよいが、第1のレンズの径方向の位置決めが接着層によって損なわれないような数、長さ、厚さで接着層が設けられることが好ましい。そのような意味で、特に、第1のレンズの周側面と鏡筒の内周側面部との間に接着層を設ける場合、そのような接着層は、全体として、レンズユニットの光軸方向に沿う断面において、第1のレンズの周側面と鏡筒の内周側面部との嵌合部位の光軸方向の長さの50%~80%を占めることが好ましい。
【0014】
また、上記構成では、径方向内側にカシメられることにより第1のレンズを固定するためのカシメ部が鏡筒に設けられる場合、物体側接着層がカシメ部に隣接して設けられることが好ましい。これは、水蒸気や異物等の侵入源を根元から確実に絶つことができるという点で有益である。
【0015】
また、このようにカシメ部に隣接して接着層を設けると(第1のレンズの周側面と鏡筒の内周側面部との間に接着層を設ける場合も同様)、カシメ部は、接着層の存在により、接着層がない場合と比べて径方向外側寄りからカシメられることになるため、カシメによる第1のレンズに対する固定力が弱くなってしまう虞がある。そのため、上記構成において、鏡筒は、レンズ群のうち物体側に位置される一部のレンズを収容する物体側収容空間とレンズ群の像側に位置される残りの一部のレンズを収容する像側収容空間とに内側収容空間を部分的に区画して物体側収容空間内のレンズのうち最も像側に位置されるレンズを光軸方向で支持するレンズ支持部を有することが好ましい。これによれば、レンズ支持部の存在に起因して、カシメ部により保持されるべきレンズの数を少なくできる。すなわち、カシメ部は、物体側収容空間内のレンズのみに対してカシメによる固定力を付与すればよい。したがって、接着剤の存在によりカシメ部が径方向外側寄りからカシメられる場合であっても、カシメ部によって第1のレンズを(したがって、その像側に位置される物体側収容空間内のレンズも)十分な力で固定することができる。なお、レンズ支持部がその内部にレンズを保持してもよく、また、レンズ支持部は、鏡筒と一体に形成されてもよく、或いは、中間環などのように鏡筒とは別体ものとして形成されて鏡筒に取り付けられてもよい。
【0016】
また、上記構成において、物体側接着層及び像側接着層は、第1のレンズ及び/又は鏡筒に形成された溝内に接着剤が充填されることによって形成されてもよい。これによれば、溝によって接着剤を所望の位置に正確に保持でき、接着剤の塗布も容易になる。この場合、物体側接着層及び像側接着層は、鏡筒のみに形成された溝に接着剤が充填されることによって形成されてもよく、又は、第1のレンズのみに形成された溝に接着剤が充填されることによって形成されてもよく、或いは、第1のレンズの溝と鏡筒の溝とに跨って接着剤が充填されることによって形成されてもよい。また、鏡筒が多角形断面を有するなどして第1のレンズが鏡筒の内周面に対して点接触する場合には、それらの接触点間の隙間も接着剤充填空間として利用できる。
【0017】
また、本発明は、前述のレンズユニットを有するカメラモジュール、該カメラモジュールを有する車載システム、車載システムを搭載して成る移動体も提供する。このようなカメラモジュール、車載システム、移動体によっても前述したレンズユニットと同様の作用効果を得ることができる。なお、「移動体」とは、移動できる物体の全てを指し、例えば車両等を挙げることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、最も物体側に位置される第1のレンズと鏡筒との間をOリングによってではなく物体側接着層及び像側接着層によって封止するようにしているため、第1のレンズにOリング装着用の段差状の縮径部を設ける必要がなく、そのため、第1のレンズの曲率半径の大小にかかわらず、第1のレンズと鏡筒との間を気密状態に確実に保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係るレンズユニットの光軸方向に沿う概略断面図である。
【
図2】
図1のレンズユニットの要部拡大断面図である。
【
図3】
図1のレンズユニットを有するカメラモジュールの概略断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るカメラモジュールを備える撮像システム(車載システム)が搭載される移動体としての車両の概略図である。
【
図5】
図4の撮像システムを構成する撮像装置の構成を示すブロック図である。
【
図6】従来のレンズユニットの一例を示す光軸方向に沿う概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明するが、本実施形態は、特にセンシングシステムにおいて信頼性の高いシステムを実現でき、強靭なインフラの開発に貢献するものであり、国連の提唱する持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」の、「9.1 すべての人々に安価で公平なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靭(レジリエント)なインフラを開発する。」をターゲットとするものである。
なお、以下で説明される本実施形態のレンズユニットは、特に車載カメラ等のカメラモジュール用のものであり、例えば、自動車の外表面側に固定して設置され、配線は自動車内に引き込まれてディスプレイやその他の装置に接続される。また、前述した
図6を含む全ての図において、レンズについてはハッチングを省略している。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係るレンズユニット11を示している。図示のように、本実施形態のレンズユニット11は、例えば樹脂製(金属製であっても構わない)の円筒状の鏡筒(バレル)12と、鏡筒12の内側収容空間S内に配置される複数のレンズ、例えば、物体側から、第1のレンズ13、第2のレンズ14、第3のレンズ15、第4のレンズ16、第5のレンズ17から成る5つのレンズと、絞り部材22とを備えている。この場合、第3のレンズ15は、第2のレンズ14と第4のレンズ16との間で径方向内側に延びる鏡筒12の円環状のレンズ支持部12aによりその中央で保持されている。また、絞り部材22は、透過光量を制限し、明るさの指標となるF値を決定する「開口絞り」又はゴーストの原因となる光線や収差の原因となる光線を遮光する「遮光絞り」である。このようなレンズユニット11を備える車載カメラは、レンズユニット11と、図示しないイメージセンサを有する基板と、当該基板を自動車等の車両に設置する図示しない設置部材とを備えるものである。
【0022】
鏡筒12の内側収容空間S内に組み込まれて収容保持される複数のレンズ13,14,15,16,17は、それぞれの光軸を一致させた状態で積み重ねられて配置されており、1つの光軸Oに沿って各レンズ13,14,15,16,17が並べられた状態となって、撮像に用いられる一群のレンズ群Lを構成している。この場合、レンズ群Lを構成する最も物体側に位置される第1のレンズ13は、物体側に凸面を有するとともに像側に凹面を有する球面ガラスレンズであり、また、レンズ支持部12aに保持される第3のレンズ15も球面ガラスレンズであり、その他のレンズ14,16,17は樹脂レンズであるが、これに限定されない。また、これらのレンズ13,14,15,16,17の表面(物体側の表面及び/又は像側の表面)には、必要に応じて、反射防止膜、親水膜、撥水膜等が設けられる。
【0023】
また、本実施形態において、第3のレンズ15を保持するレンズ支持部12aは、鏡筒12によって形成されており、レンズ群Lのうち物体側に位置される一部のレンズ(5つのレンズを伴う本実施形態では、第1のレンズ13及び第2のレンズ14)を収容する物体側収容空間S1とレンズ群Lの像側に位置される残りの一部のレンズ(本実施形態では、第4のレンズ16及び第5のレンズ17)を収容する像側収容空間S2とに内側収容空間Sを部分的に区画(レンズ支持部12aに第3のレンズ15が保持されていない状態では、第3のレンズ15を保持するための空間を通じて物体側収容空間S1と像側収容空間S2とが連通し得るような部分的区画)して物体側収容空間S内のレンズのうち最も像側に位置されるレンズ(2つのレンズのみが物体側収容空間S1内に収容される本実施形態では、第2のレンズ14)を光軸方向で支持するようになっている。
【0024】
また、本実施形態において、鏡筒12は、その内側収容空間S内にレンズ群Lが組み込まれて収容保持された状態で、その物体側の端部(
図1において上端部)のカシメ部23が径方向内側にカシメられることにより、レンズ群Lの最も物体側に位置される第1のレンズ13をこのカシメ部23で鏡筒12の物体側端部に固定するようになっている。このカシメ部23とレンズ支持部12aとにより、物体側収容空間S1内に第1のレンズ13及び第2のレンズ14と絞り部材22とが光軸方向で保持固定されている。なお、第1のレンズ13の固定は、カシメ部23に限ることなく、鏡筒12にレンズ13,14,15,16,17を収容した後に鏡筒12の物体側の端部に取り付けられる固定キャップによって行なわれてもよい。
【0025】
図示のように、最も物体側に位置されるガラス製の第1のレンズ13は、物体側に面する表面(前述した凸面)13aと、径方向外側に位置されて像側に面する座面13bと、径方向に面して表面13aと座面13bとを接続する周側面13cとを有している。この場合、周側面13cは略光軸方向に延在している。また、座面13bは、第1のレンズ13の径方向外側で環状を成しており、像側に面して物体側へ向けて凹状に窪む中央の凹面13dと連続するように略径方向に延在している。また、この第1のレンズ13の座面13bは、第1のレンズ13とその像側で隣接する樹脂製の第2のレンズ14の座面14aと光軸Oの方向で互いに対向して面接触しており、これにより、第1のレンズ13の光軸方向の位置決めがなされている。なお、座面13b及び周側面13cには、これらの全体にわたって遮光用の墨が塗布されている。
【0026】
また、本実施形態において、鏡筒12は、略光軸方向に延びるとともに第1のレンズ13の周側面13cと嵌合する内周側面部12bと、略径方向に延びるとともに第1のレンズ13の座面13bと部分的に対向する対向面部12cとを有している。
【0027】
そして、本実施形態において、第1のレンズ13の周側面13cと座面13bとにわたる面領域と、鏡筒12の内周側面部12bと対向面部12cとにわたる面領域との間には、これらの間をレンズユニット11の全周にわたって気密状態に封止する物体側接着層40及び像側接着層(物体側接着層40よりも像側に位置される接着層)42が互いに離間して設けられている。特に、本実施形態では、物体側接着層40がカシメ部23に隣接して第1のレンズ13の周側面13cと鏡筒12の内周側面部12bとの間に設けられ、像側接着層42が第1のレンズ13の座面13bと鏡筒12の対向面部12cとの間に設けられている。
【0028】
この場合、物体側接着層40は、
図2に明確に示されるように、鏡筒12の内周側面部12bに形成された環状溝12d内に例えば熱硬化性樹脂から成る接着剤30が充填されることによって形成されている。接着剤30は、内側収容空間S内への水蒸気や塵埃等の異物の侵入を許容し得る鏡筒12の内周側面部12bと第1のレンズ13の周側面13cとの間の流路を気密状態に封止するように周側面13cと内周側面部12bとを接着して、周側面13cと内周側面部12bとの間で環状帯を成すようにレンズユニット11の全周にわたって延在している。
【0029】
また、像側接着層42は、
図2に明確に示されるように、鏡筒12の対向面部12cに形成された環状溝12e内に例えば熱硬化性樹脂から成る接着剤32が充填されることによって形成されている。この接着剤32は、物体側接着層40の接着剤30と同一のものであっても異なっていてもよく、内側収容空間S内への水蒸気や塵埃等の異物の侵入を許容し得る鏡筒12の対向面部12cと第1のレンズ13の座面13bとの間の流路を気密状態に封止するように座面13bと対向面部12cとを接着して、座面13bと対向面部12cとの間で環状帯を成すようにレンズユニット11の全周にわたって延在している。
【0030】
また、
図2に明確に示されるように、本実施形態において、第1のレンズ13には、周側面13cと座面13bとの間に面取りされた面取り部13eが設けられ、この面取り部13eと鏡筒12の内周側面部12b及び対向面部12cとの間には、これらの間をレンズユニット11の全周にわたって気密状態に封止する中間接着層44が、物体側接着層40と像側接着層42との間に位置して設けられている。この場合、中間接着層44は、鏡筒12の内周側面部12bと対向面部12cとが交わる角部に位置して設けられており、第1のレンズ13の面取り部13eと鏡筒12の内周側面部12b及び対向面部12cとの間に形成された隙間に例えば熱硬化性樹脂から成る接着剤34が充填されることによって形成されている。特に、本実施形態において、この中間接着層44は、像側接着層42から連続しており、像側接着層42の接着剤32が前記隙間に流れ込むことによって形成されている。なお、接着剤34は、物体側接着層40及び/又は像側接着層42の接着剤30,32と同一のものであっても異なっていてもよい。
【0031】
なお、物体側接着層40、像側接着層42、及び、中間接着層44のそれぞれを形成する接着剤30,32,34としては、例えば、アクリル系の熱硬化接着剤を挙げることができる。また、接着剤の代わりに、他の気密性材料、シール材など、前記気密封止を行なうことができれば、接着剤以外の封止材を使用することもできる。そのような意味で、本明細書中において、「接着層」という用語は、「気密封止層」という用語と置き換えることもできる。
【0032】
また、
図3は、以上のような構成を成すレンズユニット11を有する本実施形態のカメラモジュール300の概略断面図である。図示のように、このカメラモジュール300は、フィルタ99が像側端部に装着された
図1のレンズユニット11を含んで構成される。
【0033】
カメラモジュール300は、外装部品である上ケース(カメラケース)301と、レンズユニット11を保持するマウント(台座)302とを備えている。また、カメラモジュール300は、シール部材303及びパッケージセンサ(撮像素子)304を備えている。
【0034】
上ケース301は、鏡筒12の外周面12fに鍔状に設けられるフランジ部25に係合されるとともに、レンズユニット11の物体側の端部を露出させて他の部分を覆う部材である。マウント302は、上ケース301の内部に配置されており、レンズユニット11の雄ねじ11aと螺合する雌ねじ302aを有する。シール部材303は、上ケース301の内面とレンズユニット11の鏡筒12の外周面12aとの間に介挿された部材であり、上ケース301の内部の気密性を保持するための部材である。
【0035】
パッケージセンサ304は、マウント302の内部に配置されており、かつ、レンズユニット11により形成される物体の像を受光する位置に配置されている。また、パッケージセンサ304は、外側に透明カバーを有し、その内部にCCDやCMOS等を備えており、レンズユニット11を通じて集光されて到達する光を電気信号に変換する。変換された電気信号は、カメラにより撮影された画像データの構成要素であるアナログデータやデジタルデータに変換される。
【0036】
図4には、
図3のカメラモジュール300を含む撮像装置250を備える車載システム(撮像システム)が搭載される移動体としての車両240が概略的に示されている。図示のように、撮像装置250は車両240に搭載することができ、
図4は、車両240における撮像装置250の搭載位置を例示する配置例である。車両240に搭載される撮像装置250は、車載カメラと呼ぶこともでき、車両240の種々の場所に設置することができる。例えば、第1の撮像装置250aは、車両240が走行する際の前方を監視するカメラとして、フロントバンパー又はその近傍に配置されてもよい。また、前方を監視する第2の撮像装置250bは、車両240の車室内のルームミラー(Inner Rearview Mirror)の近傍に配置されてもよい。第3の撮像装置250cは、運転者の運転状況を監視するカメラとしてダッシュボード上又はインスツルメントパネル内等に配置されてもよい。第4の撮像装置250dは、車両240の後方モニター用に車両240の後部に設置されてもよい。撮像装置250a、250bはフロントカメラと呼ぶことができる。第3の撮像装置250cは、インカメラと呼ぶことができる。第4の撮像装置250dはリアカメラと呼ぶことができる。撮像装置250は、これらに限られず、左後ろ側方を撮像する左サイドカメラ及び右後ろ側方を撮像する右サイドカメラ等、種々の位置に設置される撮像装置を含む。
【0037】
撮像装置250により撮像された画像の画像信号は、車両240内の情報処理装置(制御部)242及び/又は表示装置(出力装置)243等に出力され得る。これらの情報処理装置242及び表示装置243は、撮像装置250と共に車載システムを構成する。車両240内の情報処理装置242は、撮像装置250により取得される画像信号(撮像画像)を処理し、画像を認識(撮像画像の中の対象物を認識)して運転者の運転を支援する装置を含む。また、情報処理装置242は、撮像画像の中の対象物の認識情報を表示装置243に出力するように構成され、例えば、ナビゲーション装置、衝突被害軽減ブレーキ装置、車間距離制御装置、及び、車線逸脱警報装置等を含むが、これらに限定されない。表示装置243は、情報処理装置242により処理されて出力される画像を表示するが、撮像装置250から直接に画像信号を受信することもできる。また、表示装置243は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ、及び、無機ELディスプレイを採用し得るが、これらに限定されない。表示装置243は、リアカメラ等の運転者から視認しづらい位置の画像を撮像する撮像装置250から出力された画像信号を、運転者に対して表示することができる(乗員への情報を出力できる)。
【0038】
図5には、
図4の車載システムを構成する撮像装置の構成が示される。図示のように、一実施形態に係る撮像装置250は、制御部252と、記憶部254と、前述した
図3のカメラモジュール300を備える。
【0039】
制御部252は、カメラモジュール300を制御するとともに、カメラモジュール80の撮像素子304から出力される電気信号を処理する。この制御部252は例えばプロセッサとして構成されてもよい。また、制御部252は1つ以上のプロセッサを含んでもよい。プロセッサは、特定のプログラムを読み込ませて特定の機能を実行する汎用のプロセッサ、及び、特定の処理に特化した専用のプロセッサを含んでもよい。専用のプロセッサは、特定用途向けIC(Integrated Circuit)を含んでもよい。特定用途向けICは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)とも称される。プロセッサは、プログラマブルロジックデバイスを含んでもよい。プログラマブルロジックデバイスは、PLD(Programmable Logic Device)とも称される。PLDは、FPGA(Field-Programmable Gate Array)を含んでもよい。制御部252は、1つ以上のプロセッサが協働するSoC(System-on-a-Chip)、及び、SiP(System In a Package)のいずれかであってもよい。また、制御部252は、前述した情報処理装置242と同様の機能を有してもよく、例えば、撮像素子304から出力される撮像画像を処理して、前記撮像画像の中の対象物の認識を行なってもよい。
【0040】
記憶部254は、撮像装置250の動作に係る各種情報又はパラメータを記憶する。記憶部254は、例えば半導体メモリ等で構成されてもよい。記憶部254は、制御部252のワークメモリとして機能してもよい。記憶部254は、撮像画像を記憶してもよい。記憶部254は、制御部252が撮像画像に基づく検出処理を行なうための各種パラメータ等を記憶してもよい。記憶部254は制御部252に含まれてもよい。
【0041】
前述したように、カメラモジュール300は、レンズユニット11を介して結像する被写体像を撮像素子304で撮像し、撮像した画像を出力する。カメラモジュール300で撮像された画像は、撮像画像とも称される。
【0042】
撮像素子304は、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ又はCCD(Charge Coupled Device)等で構成されてよい。撮像素子304は、複数の画素が並ぶ撮像面を有する。各画素は、入射した光量に応じて電流又は電圧で特定される信号を出力する。各画素が出力する信号は、撮像データとも称される。
【0043】
撮像データは、全ての画素についてカメラモジュール300で読み出され、撮像画像として制御部252に取り込まれてもよい。全ての画素について読み出された撮像画像は、最大撮像画像とも称される。撮像データは、一部の画素についてカメラモジュール300で読み出され、撮像画像として取り込まれてもよい。言い換えれば、撮像データは、所定の取り込み範囲の画素から読み出されてもよい。所定の取り込み範囲の画素から読み出された撮像データは、撮像画像として取り込まれてもよい。所定の取り込み範囲は、制御部252によって設定されてもよい。カメラモジュール300は、制御部252から所定の取り込み範囲を取得してもよい。撮像素子304は、レンズユニット11を介して結像する被写体像のうち所定の取り込み範囲の画像を撮像してもよい。
【0044】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、本発明において、レンズ、鏡筒などの形状、並びに、接着層の形態等は、前述した実施形態に限定されない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、前述した実施形態の一部又は全部を組み合わせてもよく、或いは、前述した実施形態のうちの1つから構成の一部が省かれてもよい。
【符号の説明】
【0045】
11 レンズユニット
12 鏡筒
12a レンズ支持部
12b 内周側面部
12c 対向面部
12d 溝
12e 溝
13 第1のレンズ
13a 表面
13b 座面
13c 周側面
23 カシメ部
30,32,34 接着剤
40 物体側接着層
42 像側接着層
44 中間接着層
300 カメラモジュール
L レンズ群
O 光軸
S 内側収容空間
S1 物体側収容空間
S2 像側収容空間