(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111433
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】レゾルバの端子ピン保護装置
(51)【国際特許分類】
H02K 24/00 20060101AFI20240809BHJP
H02K 3/52 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
H02K24/00
H02K3/52 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015940
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】後澤 武史
(72)【発明者】
【氏名】奥田 佑樹
【テーマコード(参考)】
5H604
【Fターム(参考)】
5H604AA08
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC16
5H604QB03
5H604QB16
(57)【要約】
【課題】互いに隣り合う一対の端子ピンが互いに短絡することを抑制することができるレゾルバの端子ピン保護装置を得る。
【解決手段】このレゾルバの端子ピン保護装置5は、インシュレータ3にそれぞれが一体に形成されている複数の端子ピン6のインシュレータ3から露出している複数の端子ピン6のそれぞれの部分である複数の端子ピン露出部分601のうちの互いに隣り合う一対の端子ピン露出部分601の間に設けられ、一対の端子ピン露出部分601が互いに短絡することを抑制する短絡抑制部材512を備えている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インシュレータ(3)にそれぞれが一体に形成されている複数の端子ピン(6)の前記インシュレータ(3)から露出している前記複数の端子ピン(6)のそれぞれの部分である複数の端子ピン露出部分(601)のうちの互いに隣り合う一対の端子ピン露出部分(601)の間に設けられ、前記一対の端子ピン露出部分(601)が互いに短絡することを抑制する短絡抑制部材(512)を備えているレゾルバの端子ピン保護装置。
【請求項2】
前記インシュレータ(3)に設けられ、前記複数の端子ピン露出部分(601)を覆う端子カバー(501)を備え、
前記端子カバー(501)は、異物が前記端子カバー(501)の外側から内側に進入することを抑制しており、
前記端子カバー(501)には、ステータコア(2)に設けられているコイル(401)から前記複数の端子ピン露出部分(601)まで延びたマグネットワイヤ(7)が通る開口部(508)が形成されている請求項1に記載のレゾルバの端子ピン保護装置。
【請求項3】
前記短絡抑制部材(512)は、前記端子カバー(501)に設けられており、
前記インシュレータ(3)における前記端子カバー(501)に対向する面には、溝(302)が形成されており、
前記短絡抑制部材(512)は、前記溝(302)に挿入されている請求項2に記載のレゾルバの端子ピン保護装置。
【請求項4】
前記インシュレータ(3)に設けられ、前記マグネットワイヤ(7)における前記開口部(508)を通る部分である開口内側ワイヤ部分(701)が前記開口部(508)の内壁面に接触することを防止するマグネットワイヤ保護部材(502)を備えている請求項2に記載のレゾルバの端子ピン保護装置。
【請求項5】
前記マグネットワイヤ保護部材(502)は、前記開口内側ワイヤ部分(701)と前記開口部(508)の内壁面との間に設けられたワイヤ接触部(509)を有し、
前記ワイヤ接触部(509)には、前記開口内側ワイヤ部分(701)が接触している請求項4に記載のレゾルバの端子ピン保護装置。
【請求項6】
前記マグネットワイヤ保護部材(502)は、前記端子カバー(501)の外側に設けられた隙間異物進入抑制部(510)を有し、
前記隙間異物進入抑制部(510)は、前記ワイヤ接触部(509)と前記開口部(508)の内壁面との間の隙間を通って前記異物が前記端子カバーの外側から内側に進入することを抑制する請求項5に記載のレゾルバの端子ピン保護装置。
【請求項7】
前記マグネットワイヤ保護部材(502)は、前記端子カバー(501)の内側に設けられた異物接近抑制部(511)を有し、
前記異物接近抑制部(511)は、前記ワイヤ接触部(509)と前記開口部(508)の内壁面との間の隙間を通って前記端子カバー(501)の外側から内側に進入した前記異物が前記端子ピン露出部分(601)に近づくことを抑制する請求項5または請求項6に記載のレゾルバの端子ピン保護装置。
【請求項8】
前記端子カバー(501)の表面に設けられ、前記異物を吸着する異物吸着部材(513)を備えている請求項2から請求項6までの何れか一項に記載のレゾルバの端子ピン保護装置。
【請求項9】
前記開口部(508)を通って前記異物が前記端子カバー(501)の外側から内側に進入することを抑制する開口部異物進入抑制部材(514)を備えている請求項2から請求項6までの何れか一項に記載のレゾルバの端子ピン保護装置。
【請求項10】
前記インシュレータ(3)における前記端子カバー(501)の内側を向く面には、前記開口部(508)を通って前記端子カバー(501)の外側から内側に進入した前記異物が入る異物収容溝(515)が形成されている請求項2から請求項6までの何れか一項に記載のレゾルバの端子ピン保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レゾルバの端子ピン保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステータコアと、インシュレータと、端子ピンと、コイルと、マグネットワイヤと、を備えたレゾルバステータが知られている。インシュレータは、ステータコアに設けられている。端子ピンは、インシュレータと一体に形成されている。端子ピンは、インシュレータから露出している端子ピン露出部分を有している。コイルは、ステータコアに設けられている。マグネットワイヤは、コイルから端子ピンまで延びている。マグネットワイヤは、端子ピン露出部分に接続されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、例えば、レゾルバロータから飛散した異物が端子ピン露出部分に付着する可能性がある。互いに隣り合う一対の端子ピン露出部分の間に異物が嵌まり込んだ場合には、互いに隣り合う一対の端子ピンが互いに短絡してしまうおそれがあるという問題点があった。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、互いに隣り合う一対の端子ピンが互いに短絡することを抑制することができるレゾルバの端子ピン保護装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るレゾルバの端子ピン保護装置は、インシュレータにそれぞれが一体に形成されている複数の端子ピンのインシュレータから露出している複数の端子ピンのそれぞれの部分である複数の端子ピン露出部分のうちの互いに隣り合う一対の端子ピン露出部分の間に設けられ、一対の端子ピン露出部分が互いに短絡することを抑制する短絡抑制部材を備えている。
また、この発明に係るレゾルバの端子ピン保護装置は、インシュレータに設けられ、複数の端子ピン露出部分を覆う端子カバーを備え、端子カバーは、異物が端子カバーの外側から内側に進入することを抑制しており、端子カバーには、ステータコアに設けられているコイルから複数の端子ピン露出部分まで延びたマグネットワイヤが通る開口部が形成されている。
また、この発明に係るレゾルバの端子ピン保護装置では、短絡抑制部材は、端子カバーに設けられており、インシュレータにおける端子カバーに対向する面には、溝が形成されており、短絡抑制部材は、溝に挿入されている。
また、この発明に係るレゾルバの端子ピン保護装置は、インシュレータに設けられ、マグネットワイヤにおける開口部を通る部分である開口内側ワイヤ部分が開口部の内壁面に接触することを防止するマグネットワイヤ保護部材を備えている。
また、この発明に係るレゾルバの端子ピン保護装置では、マグネットワイヤ保護部材は、開口内側ワイヤ部分と開口部の内壁面との間に設けられたワイヤ接触部を有し、ワイヤ接触部には、開口内側ワイヤ部分が接触している。
また、この発明に係るレゾルバの端子ピン保護装置では、マグネットワイヤ保護部材は、端子カバーの外側に設けられた隙間異物進入抑制部を有し、隙間異物進入抑制部は、ワイヤ接触部と開口部の内壁面との間の隙間を通って異物が端子カバーの外側から内側に進入することを抑制する。
また、この発明に係るレゾルバの端子ピン保護装置では、マグネットワイヤ保護部材は、端子カバーの内側に設けられた異物接近抑制部を有し、異物接近抑制部は、ワイヤ接触部と開口部の内壁面との間の隙間を通って端子カバーの外側から内側に進入した異物が端子ピン露出部分に近づくことを抑制する。
また、この発明に係るレゾルバの端子ピン保護装置は、端子カバーの表面に設けられ、異物を吸着する異物吸着部材を備えている。
また、この発明に係るレゾルバの端子ピン保護装置は、開口部を通って異物が端子カバーの外側から内側に進入することを抑制する開口部異物進入抑制部材を備えている。
また、この発明に係るレゾルバの端子ピン保護装置では、インシュレータにおける端子カバーの内側を向く面には、開口部を通って端子カバーの外側から内側に進入した異物が入る異物収容溝が形成されている。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係るレゾルバの端子ピン保護装置によれば、互いに隣り合う一対の端子ピンが互いに短絡することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係るレゾルバの端子ピン保護装置を備えたレゾルバを示す斜視図である。
【
図3】
図2の端子カバーがインシュレータから取り外されたレゾルバの要部を示す図である。
【
図7】実施の形態2に係るレゾルバの端子ピン保護装置の要部を示す断面図である。
【
図8】実施の形態3に係るレゾルバの端子ピン保護装置の要部を示す断面図である。
【
図9】実施の形態4に係るレゾルバの端子ピン保護装置の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るレゾルバの端子ピン保護装置を備えたレゾルバを示す斜視図である。
図2は、
図1のレゾルバの要部を示す拡大図である。レゾルバは、レゾルバステータ1と、レゾルバステータ1に対向して設けられた図示しないレゾルバロータと、を備えている。
【0010】
レゾルバステータ1は、ステータコア2と、インシュレータ3と、コイル集合体4と、端子ピン保護装置5と、を備えている。
【0011】
ステータコア2は、板状に形成されている。ステータコア2は、電磁鋼板から構成されている。ステータコア2は、コアバック201と、コアバック201に一体に形成された複数のティース202と、を有している。
【0012】
ステータコア2の板厚方向に見た場合に、コアバック201は、円環状に形成されている。複数のティース202は、コアバック201の周方向に沿って等間隔に並んで配置されている。複数のティース202のそれぞれは、コアバック201の径方向においてコアバック201からレゾルバロータに向かって突出している。
【0013】
インシュレータ3は、コアバック201に設けられている。インシュレータ3は、樹脂から構成されている。
【0014】
コイル集合体4は、複数のコイル401を有している。複数のコイル401は、複数のティース202のそれぞれに1つずつ巻かれている。
【0015】
端子ピン保護装置5は、端子カバー501と、一対のマグネットワイヤ保護部材502と、を有している。
【0016】
端子カバー501は、インシュレータ3に着脱可能に設けられている。端子カバー501は、樹脂から構成されている。
【0017】
一対のマグネットワイヤ保護部材502のそれぞれは、インシュレータ3に一体に形成されている。一対のマグネットワイヤ保護部材502のそれぞれは、樹脂から構成されている。
【0018】
図3は、
図2の端子カバー501がインシュレータ3から取り外されたレゾルバの要部を示す図である。レゾルバステータ1は、複数の端子ピン6と、複数のマグネットワイヤ7と、を備えている。
【0019】
端子ピン6の数およびマグネットワイヤ7の数は、互いに同一になっている。具体的には、レゾルバステータ1は、6個の端子ピン6と、6個のマグネットワイヤ7と、を備えている。
【0020】
複数の端子ピン6のそれぞれは、インシュレータ3に一体に形成されている。複数の端子ピン6のそれぞれは、インシュレータ3を介してステータコア2に対して絶縁されている。複数の端子ピン6のそれぞれは、一部がインシュレータ3に覆われており、残りの部分がインシュレータ3から露出している。複数の端子ピン6のそれぞれにおいて、インシュレータ3から露出している部分を端子ピン露出部分601とする。
【0021】
複数のマグネットワイヤ7は、複数の端子ピン6のそれぞれの端子ピン露出部分601に1つずつ接続されている。複数のマグネットワイヤ7のそれぞれは、コイル集合体4に接続されている。
【0022】
図4は、
図2のレゾルバの要部を示す断面図である。
図4では、ステータコア2の板厚方向に垂直な平面で切った端子カバー501の断面が示されている。端子カバー501は、複数の端子ピン露出部分601の全体を覆っている。
【0023】
レゾルバステータ1の周囲には、異物が飛散する。レゾルバステータ1の周囲を飛散すうる異物としては、例えば、レゾルバロータから飛散する異物、レゾルバが取り付けられているモータから飛散する異物が挙げられる。
【0024】
レゾルバステータ1の周囲を飛散する異物の一部は、端子ピン露出部分601に向かって飛散する。端子ピン露出部分601に向かって飛散する異物は、端子カバー501に衝突する。これにより、端子ピン露出部分601に向かって飛散した異物が端子ピン露出部分601に接触することが抑制されている。その結果、端子ピン露出部分601に向かって飛散した異物が端子ピン露出部分601に付着することが抑制されている。
【0025】
端子カバー501は、正面壁503と、背面壁504と、第1側壁505と、第2側壁506と、天井507と、を有している。天井507は、
図2に示されている。
【0026】
正面壁503は、コイル集合体4と複数の端子ピン露出部分601との間に配置されている。背面壁504は、複数の端子ピン露出部分601のコイル集合体4とは反対側に配置されている。コアバック201の径方向において、正面壁503は、背面壁504の内側に配置されている。正面壁503と背面壁504との間には、複数の端子ピン露出部分601の全体が配置されている。
【0027】
第1側壁505および第2側壁506は、コアバック201の周方向において互いに隣り合っている。第1側壁505および第2側壁506のそれぞれは、正面壁503と背面壁504とに渡って設けられている。第1側壁505と第2側壁506との間には、複数の端子ピン露出部分601の全体が配置されている。
【0028】
正面壁503には、開口部508が形成されている。開口部508は、正面壁503の板厚方向に正面壁503を貫通している。開口部508は、正面壁503におけるインシュレータ3側の端面からステータコア2の板厚方向に沿ってインシュレータ3から離れる向きに延びている。コイル集合体4から複数の端子ピン露出部分601のそれぞれまで延びた複数のマグネットワイヤ7のそれぞれは、開口部508を通っている。
【0029】
複数のマグネットワイヤ7のそれぞれにおける端子カバー501の開口部508を通る部分を開口内側ワイヤ部分701とする。
【0030】
レゾルバに振動が発生することによって、マグネットワイヤ7に振動が発生する。これにより、開口内側ワイヤ部分701が開口部508の内壁面に近づくようにマグネットワイヤ7に力が作用する場合がある。一対のマグネットワイヤ保護部材502は、開口内側ワイヤ部分701が開口部508における一対の内壁面に接触することを防止している。
【0031】
一対のマグネットワイヤ保護部材502のそれぞれは、互いに同一の形状に形成されている。一対のマグネットワイヤ保護部材502は、コアバック201の周方向において互いに隣り合っている。一対のマグネットワイヤ保護部材502は、開口部508における一対の内壁面のそれぞれに1つずつ対応している。以下、一対のマグネットワイヤ保護部材502のうちの一方のマグネットワイヤ保護部材502の構成について説明する。
【0032】
マグネットワイヤ保護部材502は、ワイヤ接触部509と、隙間異物進入抑制部510と、異物接近抑制部511と、を有している。
【0033】
ワイヤ接触部509は、開口内側ワイヤ部分701と開口部508の内壁面との間に設けられている。ワイヤ接触部509が開口内側ワイヤ部分701と開口部508の内壁面との間に設けられていることによって、開口内側ワイヤ部分701が開口部508の内壁面に接触することが防止されている。
【0034】
ワイヤ接触部509には、開口内側ワイヤ部分701が接触している。開口内側ワイヤ部分701がワイヤ接触部509に接触していることによって、マグネットワイヤ7の浮き線長さが短くなっている。
【0035】
部品公差および組立上の制約によって、ワイヤ接触部509と開口部508の内壁面との間には、隙間が形成されている。
【0036】
隙間異物進入抑制部510は、端子カバー501の外側に設けられている。隙間異物進入抑制部510は、ワイヤ接触部509に一体に形成されている。コアバック201の径方向に沿ってワイヤ接触部509と開口部508の内壁面との間の隙間を見た場合に、隙間異物進入抑制部510は、ワイヤ接触部509と開口部508の内壁面との間の隙間に重なっている。
【0037】
端子カバー501の外側からワイヤ接触部509と開口部508の内壁面との間の隙間に向かって飛散した異物は、隙間異物進入抑制部510に衝突する。したがって、隙間異物進入抑制部510は、ワイヤ接触部509と開口部508の内壁面との間の隙間を通って異物が端子カバー501の外側から内側に進入することを抑制している。
【0038】
隙間異物進入抑制部510は、ワイヤ接触部509から開口部508の間口方向における外側に向かって延びている。コアバック201の径方向に沿って隙間異物進入抑制部510を見た場合に、隙間異物進入抑制部510の先端部は、正面壁503に重なっている。したがって、隙間異物進入抑制部510および正面壁503は、ワイヤ接触部509と開口部508の内壁面との間の隙間に対するラビリンス構造の機能を有している。
【0039】
異物接近抑制部511は、端子カバー501の内側に設けられている。異物接近抑制部511は、ワイヤ接触部509に一体に形成されている。コアバック201の径方向に沿ってワイヤ接触部509と開口部508の内壁面との間の隙間を見た場合に、異物接近抑制部511は、ワイヤ接触部509と開口部508の内壁面との間の隙間に重なっている。
【0040】
ワイヤ接触部509と開口部508の内壁面との間の隙間を通って端子カバー501の外側から内側に進入した異物は、異物接近抑制部511に衝突する。したがって、異物接近抑制部511は、ワイヤ接触部509と開口部508の内壁面との間の隙間を通って端子カバー501の外側から内側に進入した異物が端子ピン露出部分601に近づくことを抑制している。
【0041】
異物接近抑制部511は、ワイヤ接触部509から開口部508の間口方向における外側に向かって延びている。コアバック201の径方向に沿って異物接近抑制部511を見た場合に、異物接近抑制部511の先端部は、正面壁503に重なっている。したがって、異物接近抑制部511および正面壁503は、ワイヤ接触部509と開口部508の内壁面との間の隙間に対するラビリンス構造の機能を有している。
【0042】
ステータコア2の板厚方向に見た場合に、マグネットワイヤ保護部材502は、U字形状に形成されている。開口部508の間口方向において、隙間異物進入抑制部510および異物接近抑制部511のそれぞれの寸法は、互いに同一になっている。
【0043】
端子ピン保護装置5は、複数の短絡抑制部材512を備えている。複数の短絡抑制部材512のそれぞれは、端子カバー501に設けられている。具体的には、複数の短絡抑制部材512のそれぞれは、背面壁504に一体に形成されている。複数の端子ピン露出部分601は、等間隔に一列に並んでいる。複数の短絡抑制部材512は、一列に並んだ複数の端子ピン露出部分601の間に1つずつ配置されている。したがって、複数の短絡抑制部材512は、複数の端子ピン露出部分601のうちの互いに隣り合う一対の端子ピン露出部分601の間に設けられている。
【0044】
互いに隣り合う一対の端子ピン露出部分601の間に設けられている短絡抑制部材512は、一対の端子ピン露出部分601の間に異物が進入することを抑制している。したがって、互いに隣り合う一対の端子ピン露出部分601の間に設けられている短絡抑制部材512は、一対の端子ピン露出部分601が互いに短絡することを抑制している。
【0045】
図5は、
図2のレゾルバの要部を示す断面図である。
図5では、コアバック201の径方向に垂直な面で切ったインシュレータ3および端子カバー501のそれぞれの断面が示されている。インシュレータ3における端子カバー501に対向する面には、端子カバー501が挿入される溝301が形成されている。端子カバー501が溝301に挿入されることによって、端子カバー501がインシュレータ3に取り付けられる。部品公差および組立上の制約によって、溝301の底面と端子カバー501との間には、隙間が形成されている。端子カバー501が溝301に挿入されることによって、インシュレータ3と端子カバー501との間の隙間を通って端子カバー501の外側から内側に異物が進入することが抑制されている。したがって、溝301に端子カバー501が挿入されている構造は、インシュレータ3と端子カバー501との間の隙間に対するラビリンス構造の機能を有している。
【0046】
図6は、
図5のA部を示す拡大図である。インシュレータ3における端子カバー501に対向する面には、短絡抑制部材512が挿入される溝302が形成されている。部品公差および組立上の制約によって、溝302の底面と短絡抑制部材512との間には、隙間が形成されている。短絡抑制部材512が溝302に挿入されることによって、インシュレータ3と短絡抑制部材512との間の隙間を通って一対の端子ピン露出部分601の間に異物が進入することが抑制されている。したがって、溝302に短絡抑制部材512が挿入されている構造は、インシュレータ3と短絡抑制部材512との間の隙間に対するラビリンス構造の機能を有している。
【0047】
次に、レゾルバの組立手順について説明する。まず、複数の端子ピン6のそれぞれが一体に形成されているインシュレータ3をステータコア2に取り付ける。
【0048】
その後、複数のコイル401のそれぞれを対応するティース202に取り付け、複数のマグネットワイヤ7のそれぞれを対応する端子ピン露出部分601に接続する。この時、複数のマグネットワイヤ7のそれぞれを一対のマグネットワイヤ保護部材502の間を通し、さらに、複数のマグネットワイヤ7のそれぞれを対応するマグネットワイヤ保護部材502のワイヤ接触部509に接触させる。
【0049】
その後、複数のマグネットワイヤ7のそれぞれおよび一対のマグネットワイヤ保護部材502のそれぞれのワイヤ接触部509が開口部508を通るように端子カバー501をインシュレータ3に取り付ける。これにより、複数の短絡抑制部材512のそれぞれが、対応する一対の端子ピン露出部分601の間に設けられる。以上により、レゾルバの組立手順が終了する。
【0050】
以上説明したように、実施の形態1に係るレゾルバの端子ピン保護装置5では、インシュレータ3には、複数の端子ピン6のそれぞれが一体に形成されている。複数の端子ピン6のそれぞれは、インシュレータ3から露出している端子ピン露出部分601を有している。実施の形態1に係るレゾルバの端子ピン保護装置5は、複数の端子ピン露出部分601のうちの互いに隣り合う一対の端子ピン露出部分601の間に設けられた短絡抑制部材512を備えている。短絡抑制部材512は、互いに隣り合う一対の端子ピン露出部分601が互いに短絡することを抑制する。この構成によれば、互いに隣り合う一対の端子ピン露出部分601の間に異物が進入した場合に、短絡抑制部材512は、互いに隣り合う一対の端子ピン露出部分601の両方に異物が接触することを抑制する。これにより、互いに隣り合う一対の端子ピン6が互いに短絡することを抑制することができる。
【0051】
また、実施の形態1に係るレゾルバの端子ピン保護装置5は、インシュレータ3に設けられた端子カバー501を備えている。端子カバー501は、複数の端子ピン露出部分601を覆っている。端子カバー501は、異物が端子カバー501の外側から内側に進入することを抑制している。端子カバー501には、ステータコア2に設けられているコイル401から端子ピン露出部分601まで延びたマグネットワイヤ7が通る開口部508が形成されている。この構成によれば、複数の端子ピン露出部分601が端子カバー501によって覆われている。これにより、異物が端子ピン露出部分601に付着することを抑制することができる。
【0052】
また、実施の形態1に係るレゾルバの端子ピン保護装置5は、インシュレータ3に設けられたマグネットワイヤ保護部材502を備えている。マグネットワイヤ保護部材502は、開口内側ワイヤ部分701が開口部508の内壁面に接触することを防止する。この構成によれば、開口内側ワイヤ部分701が開口部508の内壁面に接触することが防止されている。これにより、開口内側ワイヤ部分701が開口部508の内壁面に接触することによって発生するマグネットワイヤ7の断線を防止することができる。
【0053】
また、実施の形態1に係るレゾルバの端子ピン保護装置5では、マグネットワイヤ保護部材502は、開口内側ワイヤ部分701と開口部508の内壁面との間に設けられたワイヤ接触部509を有している。ワイヤ接触部509には、開口内側ワイヤ部分701が接触している。この構成によれば、マグネットワイヤ7の浮き線長さを短くすることができる。これにより、マグネットワイヤ7の共振周波数を上げることができる。
【0054】
また、実施の形態1に係るレゾルバの端子ピン保護装置5では、マグネットワイヤ保護部材502は、端子カバー501の外側に設けられた隙間異物進入抑制部510を有している。隙間異物進入抑制部510は、ワイヤ接触部509と開口部508の内壁面との間の隙間を通って異物が端子カバー501の外側から内側に進入することを抑制する。この構成によれば、ワイヤ接触部509と開口部508の内壁面との間の隙間を通って異物が端子カバー501の外側から内側に進入することが抑制されている。これにより、異物が端子ピン露出部分601に付着することを抑制することができる。
【0055】
また、実施の形態1に係るレゾルバの端子ピン保護装置5では、マグネットワイヤ保護部材502は、端子カバー501の内側に設けられた異物接近抑制部511を有している。異物接近抑制部511は、ワイヤ接触部509と開口部508の内壁面との間の隙間を通って端子カバー501の外側から内側に進入した異物が端子ピン露出部分601に近づくことを抑制する。この構成によれば、ワイヤ接触部509と開口部508の内壁面との間の隙間を通って端子カバー501の外側から内側に進入した異物が端子ピン露出部分601に近づくことが抑制されている。これにより、異物が端子ピン露出部分601に付着することを抑制することができる。
【0056】
実施の形態2.
図7は、実施の形態2に係るレゾルバの端子ピン保護装置の要部を示す断面図である。実施の形態2に係るレゾルバの端子ピン保護装置5は、端子カバー501の表面に設けられた異物吸着部材513を備えている。
【0057】
異物吸着部材513は、端子カバー501における外側を向く表面の全域に渡って設けられている。異物吸着部材513は、粘着シートから構成されている。端子カバー501に向かって飛散した異物が異物吸着部材513に接触することによって、端子カバー501に向かって飛散した異物が異物吸着部材513に吸着される。
【0058】
実施の形態2に係るレゾルバの端子ピン保護装置5におけるその他の構成は、実施の形態1に係るレゾルバの端子ピン保護装置5の構成と同様である。
【0059】
以上説明したように、実施の形態2に係るレゾルバの端子ピン保護装置5は、端子カバー501の表面に設けられた異物吸着部材513を備えている。異物吸着部材513は、異物を吸着する。この構成によれば、端子カバー501に向かって飛散した異物が異物吸着部材513に接触することによって、異物が異物吸着部材513に吸着される。これにより、異物が端子ピン露出部分601に付着することを抑制することができる。
【0060】
なお、実施の形態2に係るレゾルバの端子ピン保護装置5では、異物吸着部材513が粘着シートから構成されている構成について説明した。しかしながら、異物吸着部材513は、粘着シートに限らず、接触された異物を吸着する部材であればよい。
【0061】
また、実施の形態2に係るレゾルバの端子ピン保護装置5では、異物吸着部材513が端子カバー501における外側を向く表面の全域に渡って設けられている構成について説明した。しかしながら、異物吸着部材513が端子カバー501における外側を向く表面の一部に設けられている構成であってもよい。また、異物吸着部材513が端子カバー501における内側を向く表面に設けられている構成であってもよい。この場合に、異物吸着部材513が端子カバー501における内側を向く表面の全域に渡って設けられている構成であってもよい。
【0062】
実施の形態3.
図8は、実施の形態3に係るレゾルバの端子ピン保護装置の要部を示す断面図である。実施の形態3に係るレゾルバの端子ピン保護装置5は、開口部508に設けられた開口部異物進入抑制部材514を備えている。
【0063】
開口部異物進入抑制部材514は、端子カバー501に固定されている。開口部異物進入抑制部材514は、開口部508を通って異物が端子カバー501の外側から内側に進入することを抑制する。
【0064】
実施の形態3に係るレゾルバの端子ピン保護装置5におけるその他の構成は、実施の形態1に係るレゾルバの端子ピン保護装置5の構成と同様である。なお、実施の形態2に係るレゾルバの端子ピン保護装置5の構成と同様に、端子カバー501の表面に設けられた異物吸着部材513を備えている構成であってもよい。
【0065】
以上説明したように、実施の形態3に係るレゾルバの端子ピン保護装置5は、開口部異物進入抑制部材514を備えている。開口部異物進入抑制部材514は、開口部508を通って異物が端子カバー501の外側から内側に進入することを抑制する。この構成によれば、開口部508を通って異物が端子カバー501の外側から内側に進入することが抑制される。これにより、異物が端子ピン露出部分601に付着することを抑制することができる。
【0066】
なお、実施の形態3に係るレゾルバの端子ピン保護装置5では、開口部異物進入抑制部材514が端子カバー501に設けられている構成について説明した。しかしながら、開口部異物進入抑制部材514がインシュレータ3に設けられている構成であってもよく、また、開口部異物進入抑制部材514が端子カバー501とインシュレータ3とに渡って設けられている構成であってもよい。
【0067】
また、実施の形態3に係るレゾルバの端子ピン保護装置5では、開口部異物進入抑制部材514が開口部508に設けられている構成について説明した。しかしながら、開口部異物進入抑制部材514が設けられる位置は、開口部508に限らず、コアバック201の径方向において開口部508から端子カバー501の外側にずれた位置であってもよい。
【0068】
実施の形態4.
図9は、実施の形態4に係るレゾルバの端子ピン保護装置の要部を示す断面図である。実施の形態4に係るレゾルバの端子ピン保護装置5では、インシュレータ3における端子カバー501の内側を向く面には、異物収容溝515が形成されている。ステータコア2の板厚方向に見た場合に、異物収容溝515は、開口部508と複数の端子ピン露出部分601のそれぞれとの間にある。異物収容溝515には、開口部508を通って端子カバー501の外側から内側に進入した異物が収容される。
【0069】
実施の形態4に係るレゾルバの端子ピン保護装置5におけるその他の構成は、実施の形態1に係るレゾルバの端子ピン保護装置5の構成と同様である。なお、実施の形態2に係るレゾルバの端子ピン保護装置5の構成と同様に、端子カバー501の表面に設けられた異物吸着部材513を備えている構成であってもよい。また、実施の形態3に係るレゾルバの端子ピン保護装置5の構成と同様に、開口部異物進入抑制部材514を備えている構成であってもよい。
【0070】
以上説明したように、実施の形態4に係るレゾルバの端子ピン保護装置5では、インシュレータ3における端子カバー501の内側を向く面には、異物収容溝515が形成されている。異物収容溝515には、開口部508を通って端子カバー501の外側から内側に進入した異物が入る。この構成によれば、端子カバー501の外側から内側に進入した異物は、異物収容溝515に収容される。これにより、異物が端子ピン露出部分601に付着することを抑制することができる。
【0071】
なお、各実施の形態に係るレゾルバの端子ピン保護装置5では、マグネットワイヤ保護部材502が、ステータコア2の板厚方向に見た場合に、U字形状に形成されている構成について説明した。しかしながら、マグネットワイヤ保護部材502は、ステータコア2の板厚方向に見た場合に、U字形状に限らず、例えば、J字形状、L字形状に形成されている構成であってもよい。マグネットワイヤ保護部材502がJ字形状に形成されている構成である場合には、開口部508の間口方向において、隙間異物進入抑制部510および異物接近抑制部511のそれぞれの寸法は、互いに異なる。マグネットワイヤ保護部材502がL字形状に形成されている構成である場合には、マグネットワイヤ保護部材502は、隙間異物進入抑制部510および異物接近抑制部511の何れか一方を有している構成になる。
【0072】
また、各実施の形態に係るレゾルバの端子ピン保護装置5では、短絡抑制部材512が背面壁504に一体に形成されている構成について説明した。しかしながら、短絡抑制部材512は、天井507に一体に形成されている構成であってもよい。また、短絡抑制部材512が端子カバー501に設けられている構成に限らず、例えば、短絡抑制部材512がインシュレータ3に設けられている構成であってもよい。
【0073】
以上、好ましい各実施の形態に係るレゾルバの端子ピン保護装置5について説明したが、上述した各実施の形態に係るレゾルバの端子ピン保護装置5に制限されることはない。特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した各実施の形態に係るレゾルバの端子ピン保護装置5に種々の変形および変換を加えることができる。
【符号の説明】
【0074】
1 レゾルバステータ、2 ステータコア、3 インシュレータ、4 コイル集合体、5 端子ピン保護装置、6 端子ピン、7 マグネットワイヤ、201 コアバック、202 ティース、301 溝、302 溝、401 コイル、501 端子カバー、502 マグネットワイヤ保護部材、503 正面壁、504 背面壁、505 第1側壁、506 第2側壁、507 天井、508 開口部、509 ワイヤ接触部、510 隙間異物進入抑制部、511 異物接近抑制部、512 短絡抑制部材、513 異物吸着部材、514 開口部異物進入抑制部材、515 異物収容溝、601 端子ピン露出部分、701 開口内側ワイヤ部分。