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特開2024-111437冷却板およびその製造方法並びに冷却板を備えた電動機
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  • 特開-冷却板およびその製造方法並びに冷却板を備えた電動機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111437
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】冷却板およびその製造方法並びに冷却板を備えた電動機
(51)【国際特許分類】
   B21D 53/08 20060101AFI20240809BHJP
   H02K 5/20 20060101ALI20240809BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20240809BHJP
   F28F 1/22 20060101ALI20240809BHJP
   F28F 3/12 20060101ALI20240809BHJP
   B21D 39/06 20060101ALI20240809BHJP
   B21D 39/08 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
B21D53/08 B
H02K5/20
H02K15/02 Z
F28F1/22 Z
F28F3/12 B
B21D39/06 B
B21D39/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015945
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000195100
【氏名又は名称】株式会社 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100083404
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 拓也
(72)【発明者】
【氏名】大鷹 英雄
【テーマコード(参考)】
5H605
5H615
【Fターム(参考)】
5H605AA08
5H605BB05
5H605CC01
5H605DD13
5H605GG11
5H615AA01
5H615BB01
5H615PP28
5H615SS15
5H615SS24
(57)【要約】
【課題】より簡単な方法にて冷却効率の高い冷却板を得る。
【解決手段】板状の熱伝導体22に冷却液が流される金属パイプを備える冷却板21の製造方法において、熱伝導体22の少なくとも一方の面22aに金属パイプの配管経路に沿って金属パイプの外径よりも実質的に大径のパイプ収納溝23を形成し、上記パイプ収納溝23内に上記金属パイプを収納するとともに、上記金属パイプ内に水を封入して0℃以下の温度で凍結させることにより、上記金属パイプを内側から拡径して上記パイプ収納溝に密着させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の熱伝導体に冷却液が流される金属パイプを備える冷却板の製造方法において、
上記熱伝導体の少なくとも一方の面に上記金属パイプの配管経路に沿って上記金属パイプの外径よりも実質的に大径のパイプ収納溝を形成し、上記パイプ収納溝内に上記金属パイプを収納するとともに、上記金属パイプ内に水を封入して0℃以下の温度で凍結させることにより、上記金属パイプを内側から拡径して上記パイプ収納溝内に密着させることを特徴とする冷却板の製造方法。
【請求項2】
上記パイプ収納溝は上記金属パイプの一部分が上記熱伝導体の面から突出する深さであり、上記金属パイプ内の水を凍結させるにあたって、上記金属パイプの突出部分を所定の押圧手段にて上記熱伝導体と同一面となるように平坦にすることを特徴とする請求項1に記載の冷却板の製造方法。
【請求項3】
板状をなす複数枚の熱伝導体に、冷却液が流される1本の金属パイプが架け渡されている冷却板の製造方法において、
上記各熱伝導体の同一面にわたって、上記金属パイプの配管経路に沿って上記金属パイプの外径よりも実質的に大径であるパイプ収納溝を一連となるように形成し、上記パイプ収納溝内に上記金属パイプを収納するとともに、所定の拡径手段により上記金属パイプ内に内圧をかけて上記金属パイプを内側から拡径して上記パイプ収納溝内に密着させることにより、上記複数枚の熱伝導体を上記金属パイプを介して連結することを特徴とする冷却板の製造方法。
【請求項4】
上記パイプ収納溝は上記金属パイプの一部分が上記熱伝導体の面から突出する深さであり、上記金属パイプを拡径するにあたって、上記金属パイプの突出部分を所定の押圧手段にて上記熱伝導体と同一面となるように平坦にすることを特徴とする請求項3に記載の冷却板の製造方法。
【請求項5】
上記拡径手段として、上記金属パイプ内に水を封入して0℃以下の温度で凍結させて上記金属パイプを内側から拡径する手法が採用されることを特徴とする請求項3または4に記載の冷却板の製造方法。
【請求項6】
上記拡径手段として、上記金属パイプ内に加圧流体を供給して上記金属パイプを内側から拡径する手法が採用されることを特徴とする請求項3または4に記載の冷却板の製造方法。
【請求項7】
請求項1または2によって製造された冷却板。
【請求項8】
請求項3によって製造された冷却板。
【請求項9】
請求項8に記載の複数枚の上記熱伝導体を1本の金属パイプにて連結した冷却板を冷却ジャケットとして備えた電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却板およびその製造方法並びに冷却板を備えた電動機に関し、さらに詳しく言えば、板状の熱伝導体に冷却液が流される金属パイプを備えた冷却板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動機を冷却する冷却手段として、例えばインナーロータ型電動機においては、電動機の外周(外形面)に水等の冷却液が流される冷却管を設けて電動機を冷却する方法が種々提案されている。
【0003】
その一つとして、特許文献1には、図6を参照して、銅管等の冷却管10を板11と蓋12で挟み、その間を熱伝導性の高い樹脂で固める。板11間は連結部材13で連結して冷却ジャケット1を構成する。板11は電動機2の外形面に沿う形状として、冷却ジャケット1を電動機2の外側に装着することが提案されている。
【0004】
これによれば、冷却ジャケット1は電動機2が製造された後に装着すればよく、容易に冷却構造を有する電動機を得ることができる。また、冷却管10は汎用のものを使用できるから、安価に冷却ジャケットおよび該冷却ジャケットを装着した電動機を得ることができる。また、電動機自体に冷却構造を加工する必要がないことから加工工数が少なくてすむ、等の利点がある。
【0005】
しかしながら、なおも改善する余地がある。冷却管10を板11に固定するため蓋12を必要とするとともに、熱伝導性を高めるため板11と蓋12の間を熱伝導性の高い樹脂で固めている。また、冷却ジャケット1を構成するうえで、板11間を連結部材13で連結するようにしている、等々部品点数が多く、組立にも多くの工数を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3759097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の課題は、より簡単な方法にて冷却効率の高い冷却板を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、第1の発明は、板状の熱伝導体に冷却液が流される金属パイプを備える冷却板の製造方法において、
上記熱伝導体の少なくとも一方の面に上記金属パイプの配管経路に沿って上記金属パイプの外径よりも実質的に大径のパイプ収納溝を形成し、上記パイプ収納溝内に上記金属パイプを収納するとともに、上記金属パイプ内に水を封入して0℃以下の温度で凍結させることにより、上記金属パイプを内側から拡径して上記パイプ収納溝内に密着させることを特徴としている。
【0009】
上記第1の発明において、上記パイプ収納溝は上記金属パイプの一部分が上記熱伝導体の面から突出する深さであり、上記金属パイプ内の水を凍結させるにあたって、上記金属パイプの突出部分を所定の押圧手段にて上記熱伝導体と同一面となるように平坦にすることが好ましい。
【0010】
また、第2の発明は、板状をなす複数枚の熱伝導体に、冷却液が流される1本の金属パイプが架け渡されている冷却板の製造方法において、
上記各熱伝導体の同一面にわたって、上記金属パイプの配管経路に沿って上記金属パイプの外径よりも実質的に大径であるパイプ収納溝を一連となるように形成し、上記パイプ収納溝内に上記金属パイプを収納するとともに、所定の拡径手段により上記金属パイプ内に内圧をかけて上記金属パイプを内側から拡径して上記パイプ収納溝内に密着させることにより、上記複数枚の熱伝導体を上記金属パイプを介して連結することを特徴としている。
【0011】
上記第2の発明においても、上記パイプ収納溝は上記金属パイプの一部分が上記熱伝導体の面から突出する深さであり、上記金属パイプを拡径するにあたって、上記金属パイプの突出部分を所定の押圧手段にて上記熱伝導体と同一面となるように平坦にすることが好ましい。
【0012】
上記第2の発明において、好ましくは、上記拡径手段として、上記金属パイプ内に水を封入して0℃以下の温度で凍結させて上記金属パイプを内側から拡径する凍結拡管方式が採用されるが、上記拡径(拡管)手段として、上記金属パイプ内に加圧流体を供給して上記金属パイプを内側から拡径する加圧流体拡管方式が採用されてもよい。
【0013】
本発明には、上記第1の発明および上記第2の発明により製造された冷却板も含まれる。
【0014】
また、本発明には、第2の発明による金属パイプにより連結された冷却板よりなる冷却ジャケットを備えた電動機も含まれる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、金属パイプ内に水を封入し0℃以下にして凍結させて拡管する凍結拡管方式を採用したことにより、加圧流体拡管方式のように高圧ポンプ等が不要で、しかも配管の長さや太さ等に関係なく配管全体を一様に拡管することができる。冷却管としての金属パイプがパイプ収納溝内に密着していることから、より高い冷却効率を有する冷却板が得られる。
【0016】
また、多くの場合、冷却液には水が使用される。そのため、主に油を使用する加圧流体拡管方式の場合、拡管後は配管内を十分に洗浄する必要があるが、水を使用する凍結拡管方式では配管内を洗浄する必要がなく、環境にも優しいというメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明による冷却ジャケットを備えた電動機を示す斜視図。
図2】熱伝導体単体を示す斜視図。
図3】複数枚の熱伝導体を金属パイプ(冷却管)にて連結した冷却板を示す斜視図。
図4図3の冷却板を電動機用の冷却ジャケットとして丸めた状態を示す斜視図。
図5】(a)~(c)凍結拡管方式を説明するための模式的な工程図。
図6】冷却ジャケットを備えた電動機の従来例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、図1ないし図5を参照して、本発明の実施形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0019】
まず、図1を参照して、本実施形態に係る電動機10はインナーロータ型で、ステータの外形面に冷却ジャケット20が装着されている。本実施形態において、電動機10の外形面は8角形であり、冷却ジャケット20は、8角形の各面に割り当てられる8枚の冷却板21a~21hを備えている。
【0020】
冷却板21a~21hはほぼ同一構成であるため、区別する必要がない場合には総称として冷却板21と言う。電動機10の外形面は4角形、5角形もしくは6角形等であってよく、さらには円筒形が採用されてもよい。
【0021】
図2に示すように、冷却板21は、板状(本実施形態では四角い帯板状)に形成された例えばアルミニウム合金や銅合金からなる熱伝導体22を有し、その一方の面22a側に冷却管としての金属パイプ30(図3参照)が収納されるパイプ収納溝23が形成されている。
【0022】
本実施形態において、熱伝導体22はアルミニウム合金製パネルからなるが、これ以外に、熱伝導率が高い材料、例えば銅やタングステン、ダイヤモンド、高熱伝導セラミック等が用いられてもよく、熱伝導体22の材質は、冷却板21の仕様に応じて適宜選択されてよい。
【0023】
パイプ収納溝23は、熱伝導体22の一方の面22aに形成された凹溝で、金属パイプ30を凹溝内において拡径し得るように金属パイプ30の径(外径)よりも実質的に大径である。パイプ収納溝23は他方の面22bにも形成されてよい。
【0024】
本実施形態において、パイプ収納溝23は平面視U字状で、金属パイプ30が引き出される両端のうちの一方の端部(図2において左側の端部)23Lは熱伝導体22の一方の辺(図2において左辺側)22cに向けて形成され、他方の端部(図2において右側の端部)23Rは熱伝導体22の他方の辺(図2において右辺側)22dに向けて形成されている。熱伝導体22の大きさ(幅)にもよるが、パイプ収納溝23は複数の山部と谷部とを含む例えばW字状等のジグザグ状に形成されてもよい。
【0025】
図3を参照して、パイプ収納溝23は、複数枚(本実施形態では8枚)の熱伝導体22を横並びに並べた際に一連の溝となる、すなわち隣接する熱伝導体22,22において一方の端部23Lと他方の端部23Rとが対向するように形成される。
【0026】
なお、冷却ジャケット20の一方の端部(図3において左端側)に配置される冷却板21aの熱伝導板22と、他方の端部(図3において右端側)に配置される冷却板21hの熱伝導板22については、金属パイプ30の冷却液のINポート30aとOUTポート30bとが熱伝導板22の下辺22eから引き出されるようになっている。
【0027】
金属パイプ30には、熱伝導性および曲げ加工性を考慮して好ましくは銅合金製の管状パイプが用いられるが、これ以外の材質であってもよい。
【0028】
次に、図5を併せて参照して、冷却ジャケット20(冷却板21)の製造方法について説明する。本実施形態では好ましい態様として凍結拡管方式が採用される。
【0029】
まず、図2に示すパイプ収納溝23が形成された複数枚、本実施形態では冷却板21a~21hとなる8枚の熱伝導体22を図示しない平坦な作業台に各パイプ収納溝23が一連となるように並べる。その際、各熱伝導体22を隙間なく密接して並べるとよい。
【0030】
図5(a)にパイプ収納溝23の断面を示す。パイプ収納溝23は、金属パイプ30の径(外径)よりも実質的に大径であるが、金属パイプ30を拡径してパイプ収納溝23内に密着させるうえで、金属パイプ30の一部分が熱伝導体22の面22aから突出する深さであることが好ましい。
【0031】
次に、図5(b)に示すように、金属パイプ30を折り曲げながらパイプ収納溝23内に収納し、金属パイプ30内に水を封入する。
【0032】
そして、図5(c)に示すように、金属パイプ30のパイプ収納溝23から突出している部分を図示しないプレス機もしくは平坦な板をネジで押しつけて平坦にした状態で、封入した水を0℃以下の温度で凍結させる。水が凍結すると体積が約9%程度膨張する。これにより、金属パイプ30が拡径しパイプ収納溝23内に密着するため、より高い冷却効率を有する冷却板が得られる。
【0033】
この凍結拡管方式によれば、金属パイプ30内に水を封入し0℃以下にして凍結させるだけでよく、加圧流体拡管方式のように高圧ポンプ等が不要で、しかも配管の長さや太さ等に関係なく配管全体を一様に拡管することができる。
【0034】
多くの場合、冷却液には水が使用される。そのため、主に油を使用する加圧流体拡管方式の場合、拡管後は配管内を十分に洗浄する必要があるが、水を使用する凍結拡管方式では配管内を洗浄する必要がなく、環境にも優しいというメリットがある。
【0035】
また、金属パイプ30がパイプ収納溝23内に密着するため、各熱伝導体22が図3に示すように金属パイプ30を介して屈曲自在に繋げられる。これは本発明の特徴の一つであるが、拡管による密着状態は、金属パイプ内に加圧流体(主に油)を封入し、高圧油圧ポンプで所定の圧力をかけて拡管する加圧流体拡管方式によっても得られるため、本発明は、拡管手法として加圧流体拡管方式を排除するものではない。
【0036】
なお、加圧流体拡管方式においても、上記凍結拡管方式と同じく、金属パイプ30を拡径してパイプ収納溝23内に密着させるうえで、パイプ収納溝23を金属パイプ30の一部分が熱伝導体22の面22aから突出する深さとし、圧力をかけての拡管時に金属パイプ30のパイプ収納溝23から突出している部分をプレス機もしくは平坦な板をネジで押しつけて平坦にすることが好ましい。
【0037】
本発明によれば、各熱伝導体22が図3に示すように金属パイプ30を介して屈曲自在に繋げられるため、一方の端部側の冷却板21aの熱伝導体22と他方の端部側の冷却板22hの熱伝導体22とにかけて例えばパチン錠等の連結部材40を設ければよく、これらの中間に配置される冷却板22b~22gについては特に連結部材を設ける必要はない。また、熱伝導体22との間で金属パイプ(冷却管)を挟持する蓋部材も不要である。
【0038】
本発明によれば、隣接する熱伝導体22の間で、金属パイプ30を折り曲げることにより、冷却板21a~21hを図4に示すように環状として電動機10に対する冷却ジャケット20とすることができる。
【0039】
本発明による冷却ジャケット20によれば、各冷却板21(熱伝導体22)の間にはほとんど隙間がないため、その分、冷却効率が高められる。また、金属パイプ30が沿わされている側の面を内面として電動機10に装着できるため、さらに高い冷却効率が得られる。なお、電動機10の外形面が円筒状である場合には、熱伝導体22をその曲率に合わせて円弧状とすることが好ましい。
【0040】
以上、本発明について実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の記載に限定されるものではない。当業者であるならば上記実施形態に加えられる変更もしくは改良も本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
10 電動機
20 冷却ジャケット
21(21a~21h) 冷却板
22 熱伝導体
23 パイプ収納溝
30 金属パイプ(冷却管)
40 連結部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6