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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111438
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】洗浄剤物品
(51)【国際特許分類】
   C11D 17/06 20060101AFI20240809BHJP
   C11D 17/04 20060101ALI20240809BHJP
   C11D 7/42 20060101ALI20240809BHJP
   C11D 7/10 20060101ALI20240809BHJP
   C11D 3/386 20060101ALI20240809BHJP
   C11D 3/04 20060101ALI20240809BHJP
   C11D 1/00 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
C11D17/06
C11D17/04
C11D7/42
C11D7/10
C11D3/386
C11D3/04
C11D1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015947
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(74)【代理人】
【識別番号】100203242
【弁理士】
【氏名又は名称】河戸 春樹
(72)【発明者】
【氏名】福田 雅弥
(72)【発明者】
【氏名】上野 渉
(72)【発明者】
【氏名】小島 宏紀
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AB19
4H003AB27
4H003AB31
4H003AC08
4H003BA01
4H003BA18
4H003DB01
4H003DC02
4H003EA12
4H003EA14
4H003EA16
4H003EA19
4H003EC02
4H003FA04
(57)【要約】
【課題】酵素を含有する洗浄剤組成物を水溶性フィルムに包装してなる洗浄剤物品として短時間(例えば3~10分)の洗浄に用いる場合でも、エリ袖汚れ、食べ物汚れ、化粧品汚れなどのタンパク質を含む複合汚れの洗浄性に優れる、洗浄剤物品を提供する。
【解決手段】下記(a)成分及び(b)成分を含有する洗浄剤組成物を、水溶性フィルムに包装してなる洗浄剤物品。
(a)成分:酵素
(b)成分:水溶性アルミニウム塩
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分及び(b)成分を含有する洗浄剤組成物を、水溶性フィルムに包装してなる洗浄剤物品。
(a)成分:酵素
(b)成分:水溶性アルミニウム塩
【請求項2】
前記洗浄剤組成物中、(a)成分の酵素タンパク質としての含有量と(b)成分の含有量との質量比(b)/(a)が0.01以上200以下である、請求項1に記載の洗浄剤物品。
【請求項3】
前記洗浄剤組成物が、更に、下記(c)成分を含有する、請求項1又は2に記載の洗浄剤物品。
(c)成分:10g/Lのイオン強度が0.05以上0.5未満である、アルカリ金属の中性無機塩(但し、(b)成分に該当するものは除く)
【請求項4】
(c)成分がナトリウム塩又はリチウム塩ある、請求項3に記載の洗浄剤物品。
【請求項5】
前記洗浄剤組成物中、(a)成分の酵素タンパク質としての含有量と(c)成分の含有量との質量比(c)/(a)が0.1以上3000以下である、請求項3又は4に記載の洗浄剤物品。
【請求項6】
前記洗浄剤組成物が、更に下記(d)成分を含有する、請求項1~5の何れか1項に記載の洗浄剤物品。
(d)成分:界面活性剤
【請求項7】
(a)成分がプロテアーゼである、請求項1~6の何れか1項に記載の洗浄剤物品。
【請求項8】
前記洗浄剤組成物が、固体洗浄剤組成物である、請求項1~7の何れかに記載の洗浄剤物品。
【請求項9】
前記水溶性フィルムの厚みが1μm以上200μm以下である、請求項1~8の何れか1項に記載の洗浄剤物品。
【請求項10】
繊維製品用である、請求項1~9の何れか1項に記載の洗浄剤物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄剤組成物を水溶性フィルムに包装してなる洗浄剤物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の簡便嗜好の高まりから、より使いやすい洗浄剤物品が求められている。洗浄剤組成物の使用性を高める観点から、洗浄剤組成物の容器の技術が開示されており、例えば、洗浄剤組成物を水溶性フィルムに包装した洗浄剤物品が挙げられる。
また近年、レスケミカル、環境負荷低減の観点から、洗浄剤組成物の使用量、特に界面活性剤の量を低減することが求められている。
【0003】
特許文献1には、液体組成物を収容する水溶性パウチであって、前記水溶性パウチが、ビニルアルコール及びカルボン酸のコポリマーを含むフィルムから作製されており、前記パウチ中に収容される該液体組成物が、カルボキシレート類、ホスホネート類及びこれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つの溶解したイオン性成分を含み、前記液体組成物が、前記液体組成物の5重量%~15重量%の水を含み、且つ前記パウチが真空成形・水平型・製袋-充填-密封プロセスを使用して加工されることを特徴とする、水溶性パウチが開示されている。
特許文献2には、改善された食卓用食器類の洗浄、消毒、及び/又は染み除去のための電気化学セルを具備する自動食器洗浄機器中で食卓用食器類を処理するための自動食器洗浄用組成物であって、前記組成物は、以下の:(a)式(M)x(XO2)y及び/又は(M)x(X)yを有するハロゲン化塩であって、式中XはCl、Br、又はIであり、及び式中Mは金属イオン又はカチオン性物質であり、及び式中x及びyは該塩の電荷が釣り合うように選択されるハロゲン化塩;(b)ビルダー、キレート剤、泡抑制剤、香料、酵素、漂白剤捕捉剤、金属保護剤、及びこれらの混合物から成る群から選択される構成成分;並びに(c)有効量の酵素;並びに(d)有効量の増粘剤;並びに(e)任意に、少なくとも一つの補助成分;を含むことを特徴とし、その際、前記組成物は漂白剤を含まない、自動食器洗浄用組成物が開示されている。
特許文献3には、(A)嵩密度が600g/L未満の粒子[以下、粒子(A)という]、及び(B)嵩密度が600g/L以上の粒子[以下、粒子(B)という]を含有する粒状洗浄剤組成物であって、粒子(A)を25℃の水に4g/Lの濃度で混合した混合物の25℃におけるpHが9.0以上であり、粒子(B)を25℃の水に4g/Lの濃度で混合した混合物の25℃におけるpHが5.0以下であり、粒状洗浄剤組成物を25℃の水に4g/Lの濃度で混合した混合物のpHが5.0以上9.0以下である、粒状洗浄剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-82014号公報
【特許文献2】特表2005-525457号公報
【特許文献3】特開2021-17590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
酵素を含有する洗浄剤組成物を水溶性フィルムに包装してなる洗浄剤物品として短時間(例えば3~10分)の洗浄に用いる場合、水溶性フィルムが溶解するのに時間がかかるため、エリ袖汚れ、食べ物汚れ、化粧品汚れなどのタンパク質を含む複合汚れの酵素による洗浄性が十分ではないことを、本発明者は発見した。
本発明は、酵素を含有する洗浄剤組成物を水溶性フィルムに包装してなる洗浄剤物品として短時間(例えば3~10分)の洗浄に用いる場合でも、エリ袖汚れ、食べ物汚れ、化粧品汚れなどのタンパク質を含む複合汚れの洗浄性に優れる、洗浄剤物品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記(a)成分及び(b)成分を含有する洗浄剤組成物を、水溶性フィルムに包装してなる洗浄剤物品に関する。
(a)成分:酵素
(b)成分:水溶性アルミニウム塩
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、酵素を含有する洗浄剤組成物を水溶性フィルムに包装してなる洗浄剤物品として短時間(例えば3~10分)の洗浄に用いる場合でも、エリ袖汚れ、食べ物汚れ、化粧品汚れなどのタンパク質を含む複合汚れの洗浄性に優れる、洗浄剤物品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[洗浄剤物品]
本発明の洗浄剤物品が、短時間(例えば3~10分)の洗浄に用いる場合でも、エリ袖汚れ、食べ物汚れ、化粧品汚れなどのタンパク質を含む複合汚れの洗浄性に優れる理由は必ずしも定かではないが以下のように推定される。
酵素を含有する洗浄剤組成物を水溶性フィルムで包装してなる洗浄剤物品として短時間(例えば3~10分)の洗浄に用いる場合、水溶性フィルムが溶解するのに時間がかかるため、酵素によるタンパク質を含む複合汚れの洗浄性が十分ではない。これは、洗浄剤物品が水に溶解した洗浄液中で、酵素とタンパク質を含む複合汚れとの間には、酵素反応を阻害する水分子が存在することにより、短時間の洗浄では酵素反応が洗浄性に十分に寄与しなかったためであると予想される。しかしながら、本発明の洗浄物品では、洗浄剤物品が水に溶解した洗浄液中で、酵素とタンパク質を含む複合汚れとの間に存在する阻害水を(b)成分である水溶性アルミニウム塩が収れん作用によって取り除くことができるため、酵素の反応速度を増大でき、短時間の洗浄でも優れた洗浄性が発現できたものと推定される。さらに、本発明の洗浄剤物品では、(c)成分である特定の1価の無機塩を用いることによって、前記複合汚れに含まれるタンパク質の二次構造を塩溶効果により緩和できるため、酵素の作用確率を向上できる。加えて、酵素の反応速度増大効果を有する(b)成分とタンパク質の二次構造の緩和効果を有する(c)成分を併用することで相乗効果が得られ、より高い洗浄性を達成できたものと推定される。
【0009】
本発明の洗浄剤物品は、(a)成分及び(b)成分を含有する洗浄剤組成物(以下、本発明の洗浄剤組成物という)を、水溶性フィルムに包装してなる。
【0010】
<洗浄剤組成物>
本発明の洗浄剤組成物は、固体洗浄剤組成物、又は液体洗浄剤組成物であり、洗浄液のpHをアルカリ性にすること、及び酵素の安定性の観点から、固体洗浄剤組成物が好ましい。
【0011】
<(a)成分>
本発明の洗浄剤組成物は、(a)成分として、酵素を含有する。
(a)成分としては、代表的汚れであるエリ袖汚れや食べ物汚れの洗浄の観点から、プロテアーゼ、リパーゼ、及びアミラーゼから選ばれる1種以上の酵素が好ましく、エリ袖汚れ等の主成分であるタンパク質を含む汚れに有効なプロテアーゼがより好ましい。
【0012】
プロテアーゼの至適pHは、汚れの分散に有利なpH環境の観点から、好ましくは4以上、より好ましくは7以上、更に好ましくは8以上、より更に好ましくは9以上、より更に好ましくは10以上、そして、好ましくは12以下、より好ましくは11以下である。
本発明に用いられる好適なプロテアーゼとしてはセリンプロテアーゼ(EC 3.4.21)やメタロプロテアーゼ(EC3.4.17又はEC3.4.24)などが挙げられる。好適なプロテアーゼの例としては、サブチリシン(EC 3.4.21.62)などの中性又はアルカリ性セリンプロテアーゼがある。
プロテアーゼの由来は限定されないが、動物、植物又は微生物起源のものが挙げられ、細菌や真菌など微生物起源のものが好ましい。更に好適なプロテアーゼとしては、前述の好適なプロテアーゼの化学的又は遺伝的に改変された突然変異体が挙げられる。一態様では、好適なプロテアーゼは、アルカリ性微生物プロテアーゼ又は/及びトリプシン型プロテアーゼなどのセリンプロテアーゼであってよい。
好適な市販のプロテアーゼとしては、Novozymes A/Sより:Alcalase、Duralase、Durazyme、Relase、Relase Ultra、Savinase、Savinase Ultra、Savinase Evity、Primase、Polarzyme、Kannase、Liquanase、Liquanase Ultra、Liquanase Evity、Ovozyme、Coronase、Coronase Ultra、Coronase Evity、Neutrase、Everlase、ProgressUno、Progress Key、Progress Excel、Blaze、Blaze Evity、Blaze ExceedおよびEsperaseとして販売されている酵素、
Danisco/DuPontより:Preferenz P、Effectenz P、Excellenz P、Maxatase、Maxacal、Maxapem、Purafect、Purafect Prime、Purafect MA、Purafect Ox、Purafect OxP、Puramax、Properase、Purafast、FN2、FN3、FN4、Excellase、OpticleanおよびOptimaseとして販売されている酵素、
Gist-Brocases N.V.より:Axapemとして販売されている酵素、
Henkel AGより:BLAP(米国特許第5352604号明細書の図29に示される配列)およびその変異体(Henkel AG)、
BASFより:Lavergy Proとして販売されている酵素、
などが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、特許第3479509号記載のアルカリプロテアーゼ及び、その変異体も好適である。
【0013】
リパーゼの至適pHは、汚れの分散に有利なpH環境の観点から、好ましくは4以上、より好ましくは7以上、更に好ましくは8以上、より更に好ましくは9以上、より更に好ましくは10以上、そして、好ましくは12以下、より好ましくは11以下である。
本発明に用いられる好適なリパーゼとしては、例えばトリアシルグリセロールリパーゼ(EC3.1.1.3)、ホスホリパーゼA2(EC3.1.1.4)、リゾホスホリパーゼ(EC3.1.1.5)、モノグリセリドリパーゼ(EC3.1.1.23)、ガラクトリパーゼ(EC3.1.1.26)、ホスホリパーゼA1(EC3.1.1.32)、リポタンパク質リパーゼ(EC3.1.1.34)などが挙げられる。
本発明に用いられる好適なリパーゼ、クチナーゼは細菌や真菌などの微生物を起源とするものである。例えばバチルス(Bacillus)、サーモマイセス(Thermomyces)、シュードモナス(Pseudomonas)、フミコラ(Humicola)、ストレプトマイセス(Streptomyces)属などのリパーゼ、クチナーゼが挙げられ、更にこれらの酵素の化学的又は遺伝的に改変された突然変異体であっても良い。
好適な市販リパーゼとしては、Novozymes A/Sより:Lipolase、Lipex、Lipex Evity、Lipolex、Lipocleanとして販売されている酵素、
Danisco/DuPontより:Preferenz L、Lumafast、Lipomaxとして販売されている酵素、
などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0014】
アミラーゼの至適pHは、汚れの分散に有利なpH環境の観点から、好ましくは4以上、より好ましくは7以上、更に好ましくは8以上、より更に好ましくは9以上、より更に好ましくは10以上、そして、好ましくは12以下、より好ましくは11以下である。
本発明に用いられる好適なアミラーゼとしてはα-アミラーゼ(EC3.2.1.1)、β-アミラーゼ(EC3.2.1.2)及び/又はグルコアミラーゼ(EC3.2.1.3)などが挙げられる。好適なアミラーゼの例としては中性又はアルカリ性α-アミラーゼがあり、細菌や真菌などの微生物起源のものが好ましい。
中性又はアルカリ性アミラーゼとしては例えば、バチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・ステロサーモフィリス(Bacillus stearothermo)、バチルス・ズブチシス(Bacillus subutilis)、または他のバチルス属の種に由来し、更にその化学的又は遺伝的に改変された突然変異体が挙げられる。
好適な市販のアミラーゼとしては、Novozymes A/Sより:Duramyl、Termamyl、Termamyl Ultra、Fungamyl、Stainzyme、Stainzyme Plus、Amplify、Amplify Prime、Natalase、Supramyl、Liquozyme XおよびBANとして販売されている酵素、
Danisco/DuPontより:Preferenz S、Effectenz S、Rapidase、Purastar、Poweraseとして販売されている酵素、
花王株式会社より:KAMとして販売されている酵素、
などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0015】
<(b)成分>
本発明の洗浄剤組成物は、(b)成分として、水溶性アルミニウム塩を含有する。
(b)成分について、「水溶性」とは、20℃の水100gに1g以上溶解することをいう。
【0016】
水溶性アルミニウム塩としては、カリウムミョウバン(硫酸カリウムアルミニウム)、アンモニウムミョウバン(硫酸アンモニウムアルミニウム)、ナトリウムミョウバン(硫酸ナトリウムアルミニウム)、硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、及び硝酸アルミニウムから選ばれる1種以上が挙げられる。
水溶性アルミニウム塩は水和物であってよい。水溶性アルミニウム塩の水和物としては、硫酸カリウムアルミニウム12水和物、硫酸ナトリウムアルミニウム12水和物、硫酸アンモニウムアルミニウム12水和物、塩化アルミニウム6水和物及び硫酸アルミニウム14~18水和物から選ばれる1種以上の水溶性アルミニウム塩が挙げられる。
本発明において、(b)成分は水に溶解して、洗浄液中にアルミニウムイオンを放出することにより本発明の課題を解決できるものであればよく、(b)成分においてアルミニウムイオンの対塩となる陰イオンは、(b)成分が前記水溶性の性質を有するものであれば、当業者において適宜選択することができる。
【0017】
(b)成分としては、タンパク質を含む複合汚れの洗浄性、及び原料安定性の観点から、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、及びこれらの水和物から選ばれる1種以上の水溶性アルミニウム塩が好ましく、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、及びこれらの水和物から選ばれる1種以上の水溶性アルミニウム塩がより好ましい。
【0018】
<組成等>
本発明の洗浄剤組成物は、(a)成分を、タンパク質を含む複合汚れの洗浄性の観点から、洗浄剤組成物中、酵素タンパク質として、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、そして、安全性の観点から好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下含有する。
【0019】
本発明の洗浄剤組成物は、(b)成分を、酵素活性化の観点から、洗浄剤組成物中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、そして、洗浄液中のpHの観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下含有する。本発明において、(b)成分の質量に関する規定は、無水物に換算した値を用いるものとする。
【0020】
本発明の洗浄剤組成物中において、(a)成分の酵素たんぱく質としての含有量と(b)成分の含有量との質量比(b)/(a)は、タンパク質を含む複合汚れの洗浄性の観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは1以上、更に好ましくは3以上、より更に好ましくは5以上、より更に好ましくは6以上、そして、好ましくは200以下、より好ましくは150以下、更に好ましくは100以下、より更に好ましくは50以下、より更に好ましくは25以下、より更に好ましくは10以下である。
【0021】
本発明の洗浄剤組成物は、複合汚れ中のタンパク質の改質の観点から、(c)成分として10g/Lのイオン強度が0.05以上0.5未満である、アルカリ金属の中性無機塩を含有することができる。但し、(c)成分は、(b)成分、及び後述する(e)成分に該当するものは除かれる。
(c)成分について、「中性無機塩」とは1質量%水溶液pHが6~8の中性を呈するものである。
本発明の洗浄剤組成物は、複合汚れ中のタンパク質の改質の観点から、(e)成分よりも(c)成分を含有することが好ましい。
【0022】
(c)成分の10g/Lのイオン強度は、タンパク質を含む複合汚れ洗浄性の観点から、0.05以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.15以上、更に好ましくは0.2以上、そして、0.5未満、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下である。
【0023】
(c)成分は、硫酸ナトリウム(0.21)、塩化ナトリウム(0.17)、硝酸ナトリウム(0.12)、硫酸リチウム(0.27)、塩化リチウム(0.24)、硝酸リチウム(0.15)、硫酸カリウム(0.17)、塩化カリウム(0.13)、及び硝酸カリウム(0.10)から選ばれる1種以上が挙げられる。カッコ内は、10g/Lのイオン強度を示す。
(c)成分は、複合汚れ中のタンパク質の改質、及び原料安定性の観点から、好ましくはナトリウム塩又はリチウム塩であり、より好ましくは硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸リチウム、及び塩化リチウムから選ばれる1種以上であり、更に好ましくは硫酸ナトリウム、及び硫酸リチウムから選ばれる1種以上である。
【0024】
本発明の洗浄剤組成物は、(c)成分を含有する場合、(c)成分を、タンパク質を含む複合汚れ洗浄性の観点から、洗浄剤組成物中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、そして、好ましくは92質量%以下、より好ましくは78質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは26質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下、より更に好ましくは15質量%以下、より更に好ましくは10質量%以下含有する。
【0025】
本発明の洗浄剤組成物中において、(c)成分を含有する場合、(a)成分の酵素タンパク質としての含有量と(c)成分の含有量との質量比(c)/(a)は、タンパク質を含む複合汚れ洗浄性の観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは1以上、更に好ましくは5以上、より更に好ましくは6以上、そして、好ましくは3000以下、より好ましくは2500以下、更に好ましくは2000以下、より更に好ましくは1500以下、より更に好ましくは1000以下、より更に好ましくは500以下、より更に好ましくは100以下、より更に好ましくは50以下、より更に好ましくは25以下、より更に好ましくは10以下である。
【0026】
本発明の洗浄剤組成物は、タンパク質を含む複合汚れの洗浄性の観点から、(d)成分として、界面活性剤を含有することができる。
(d)成分の界面活性剤としては、(d1)ノニオン界面活性剤(以下、(d1)成分という)、(d2)アニオン界面活性剤(以下、(d2)成分という)、(d3)カチオン界面活性剤(以下、(d3)成分という)、(d4)両性界面活性剤(以下、(d4)成分という)から選ばれる1種以上が挙げられ、タンパク質を含む複合汚れの洗浄性の観点から、(d1)成分、及び(d2)成分から選ばれる1種以上が好ましい。
【0027】
(d1)成分のノニオン界面活性剤としては、(d11)アルキレンオキシ基を含み、アルキレンオキシ基の平均付加モル数が1以上30以下である、ノニオン界面活性剤(以下、(d11)成分という)が好ましい。
(d11)成分のアルキレンオキシ基は、炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基から選ばれる1種以上の基が好ましい。炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基は、エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基から選ばれる1種以上の基が好ましい。
(d11)成分のアルキレンオキシ基の平均付加モル数は、タンパク質を含む複合汚れの洗浄性の観点から、1以上、好ましくは6以上、より好ましくは10以上、そして、30以下、好ましくは25以下、より好ましくは20以下である。
【0028】
(d11)成分は、下記一般式(d11)で表されるノニオン界面活性剤が好ましい。
11d(CO)O-(A11dO)-R12d (d11)
〔式中、R11dは炭素数8以上18以下の脂肪族炭化水素基であり、R12dは水素原子又はメチル基である。COはカルボニル基であり、mは0又は1の数である。A11dO基はエチレンオキシ基を含む炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基である。nは平均付加モル数であって、1以上30以下の数である。〕
【0029】
一般式(d11)中、R11dの炭素数は、タンパク質を含む複合汚れの洗浄性の観点から、8以上、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、そして、18以下、好ましくは16以下、より好ましくは14以下である。
11dは、脂肪族炭化水素基であり、好ましくはアルキル基及びアルケニル基から選ばれる基である。
【0030】
一般式(d11)中、A11dO基は、エチレンオキシ基を含む炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基であり、好ましくはエチレンオキシ基を含む炭素数2以上3以下のアルキレンオキシ基であり、より好ましくはエチレンオキシ基である。A11dO基は、エチレンオキシ基と他のアルキレンオキシ基、例えばプロピレンオキシ基とを含むアルキレンオキシ基でもよい。他のアルキレンオキシ基は、プロピレンオキシ基が好ましい。A11dO基が、エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基を含む場合は、エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基は、ブロック型結合でもランダム型結合であってもよい。
【0031】
一般式(d11)中、nは、A11dO基の平均付加モル数であって、1以上30以下の数である。一般式(d11)中、nは、タンパク質を含む複合汚れの洗浄性の観点から、1以上、好ましくは6以上、より好ましくは10以上、そして、30以下、好ましくは25以下、より好ましくは20以下である。
【0032】
(d11)成分以外のアルキレンオキシ基を有さないノニオン界面活性剤の具体例としては、蔗糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルグリコシド、及びグリセリルモノエーテルから選ばれる1種以上が挙げられる。
【0033】
(d2)成分のアニオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル又はアルケニルエーテル硫酸塩、アルキル又はアルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホ脂肪酸塩、N-アシルアミノ酸、リン酸モノ又はジエステル、スルホコハク酸エステル等が挙げられる。アルキルエーテル硫酸塩としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩が挙げられる。
アニオン界面活性剤のアルキル基又はアルケニル基は、例えば、炭素数8以上22以下である。アニオン界面活性剤のオキシエチレン基の平均付加モル数は、例えば、0以上10以下である。
これらアニオン界面活性剤のアニオン性基の対イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン;カルシウムイオン、マグネシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;アンモニウムイオン;炭素数2又は3のアルカノール基を1~3個有するアルカノールアミン(例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等)が挙げられる。
これら界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
(d2)成分は、タンパク質を含む複合汚れの洗浄性の観点から、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、及びこれらの塩から選ばれる1種以上が好ましく、アルキルベンゼンスルホン酸又はその塩がより好ましい。
これらのアニオン界面活性剤のアルキル基の炭素数は、好ましくは8以上、より好ましくは12以上、そして、好ましくは18以下、より好ましくは14以下である。ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸のオキシエチレン基の平均付加モル数は、例えば、0以上10以下である。
【0035】
(d3)成分のカチオン界面活性剤としては、アルキル基の炭素数が8以上22以下であるアルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキル基の炭素数が8以上22以下であるジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキル基の炭素数が8以上22以下であるアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ベンゼトニウム塩等が挙げられる。塩としては、ハロゲン塩、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸塩が挙げられる。
これら界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
(d4)成分の両性界面活性剤としてはN-アルカノイルアミノプロピル-N,N-ジメチルアミンオキシド、N-アルキル-N,N-ジメチルアミンオキシド、N-アルカノイルアミノプロピル-N,N-ジメチル-N-カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N-アルキル-N,N-ジメチル-N-カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N-アルキル-N,N-ジメチル-N-スルホプロピルアンモニウムスルホベタイン、N-アルキル-N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシスルホプロピル)アンモニウムスルホベタイン、N-アルカノイルアミノプロピル-N,N-ジメチル-N-スルホプロピルアンモニウムスルホベタイン、N-アルカノイルアミノプロピル-N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシスルホプロピル)アンモニウムスルホベタインを挙げることができる。これらにおいて、アルカノイル基は例えばラウロイル又はミリスチロイルである。また、これらにおいて、アルキル基は例えばラウリル基又はミリスチル基)である。
【0037】
本発明の洗浄剤組成物は、(d)成分を含有する場合、(d)成分を、タンパク質を含む複合汚れの洗浄性の観点から、洗浄剤組成物中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、より更に好ましくは10質量%以上、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下含有する。
なお本発明の洗浄剤組成物において、(d)成分として、(d2)成分を含有する場合、(d2)成分の質量に関する規定は、ナトリウム塩に換算した値を用いるものとする。
また本発明の洗浄剤組成物において、(d)成分として、(d3)成分を含有する場合、(d3)成分の質量に関する規定は、塩化物に換算した値を用いるものとする。
【0038】
本発明の洗浄剤組成物において、(d)成分を含有する場合、(a)成分の酵素タンパク質としての含有量と(d)成分の含有量との質量比(d)/(a)は、タンパク質を含む複合汚れの洗浄性の観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは1以上、更に好ましくは10以上、より更に好ましくは15以上、そして、好ましくは500以下、より好ましくは100以下、更に好ましくは50以下、より更に好ましくは35以下である。
【0039】
本発明の洗浄剤組成物は、タンパク質を含む複合汚れの洗浄性の観点から、(e)成分として、アルカリ剤を含有することができる。(e)成分としては、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属ケイ酸塩及びトリポリリン酸塩から選ばれる1種以上のアルカリ剤が挙げられる。
【0040】
アルカリ金属炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムが挙げられ、炭酸ナトリウムが好ましい。
アルカリ金属炭酸水素塩としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムが挙げられる。
アルカリ金属ケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムが挙げられる。
トリポリリン酸塩としては、トリポリ燐酸のアルカリ金属塩が挙げられる。
【0041】
(e)成分は、タンパク質を含む複合汚れの洗浄性の観点から、好ましくはアルカリ金属炭酸塩、及びアルカリ金属炭酸水素塩から選ばれる1種以上のアルカリ剤であり、より好ましくはアルカリ金属炭酸塩であり、更に好ましくは炭酸ナトリウム、及び炭酸カリウムから選ばれる1種以上であり、より更に好ましくは炭酸ナトリウムである。
【0042】
本発明の洗浄剤組成物は、(e)成分を含有する場合、(e)成分を、タンパク質を含む複合汚れの洗浄性の観点から、洗浄剤組成物中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、より更に好ましくは40質量%以上、より更に好ましくは50質量%以上、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下含有する。
【0043】
本発明の洗浄剤組成物が固体洗浄剤組成物である場合、固体洗浄剤組成物は、粉末状、粒状、顆粒状であってよい。溶解性の観点から、本発明の洗浄剤組成物は、粉末状、粒状及び顆粒状から選ばれる1種以上の固体洗浄剤組成物であることが好ましい。
固体洗浄剤組成物は、公知の方法で製造することができる。例えば、噴霧乾燥法、ドライ中和法、乾燥造粒法、ドライブレンド法、流動層乾燥法、薄膜乾燥法、押出し造粒法、転動造粒法、攪拌造粒法、圧密造粒法、界面活性剤担持法又はこれらから選択して組み合わせた方法を適用して、製造することができる。
粉末洗浄剤組成物である場合、嵩密度は、製造方法によっても異なるが、好ましくは0.2g/cm以上、より好ましくは0.3g/cm以上、より好ましくは0.35g/cm以上であり、そして、好ましくは1g/cm以下、より好ましくは0.95g/cm以下、より好ましくは0.9g/cm以下である。
粉末洗浄剤組成物である場合、平均粒径は、好ましくは100μm以上、より好ましくは150μm以上、更に好ましくは200μm以上、そして、好ましくは800μm以下、より好ましくは750μm以下、更に好ましくは700μm以下である。
【0044】
本発明の洗浄剤組成物が液体洗浄剤組成物である場合、水を含有することができる。水は脱イオン水(イオン交換水とも言う場合もある)や、次亜塩素酸ソーダをイオン交換水に対して1mg/kg以上5mg/kg以下添加した水を使用することが出来る。また、水道水も使用できる。
【0045】
本発明の洗浄剤組成物は、水を含有する場合、水を、洗浄剤組成物中、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは10質量%以下含有する。
【0046】
本発明の洗浄剤組成物は、その他の成分として、衣料用洗剤の分野で公知の他の成分、例えば漂白剤(過ホウ酸塩、漂白活性化剤等)、再汚染防止剤、還元剤(亜硫酸塩等)、蛍光増白剤、抑泡剤(シリコーン等)、有機溶剤、香料、着色剤、抗菌剤等(但し、(a)成分~(e)成分に該当するものは除く)を含有することができる。
【0047】
<洗浄剤物品>
本発明の洗浄剤物品は、本発明の洗浄剤組成物を、水溶性フィルムに包装してなる。
本発明において水溶性フィルムとは、1リットルのガラスビーカーに500gの30℃のイオン交換水を入れ、直径が8cmのテフロン(登録商標)製の撹拌子を入れ、その中に評価対象のフィルム1gを投入し、100rpmで30分間撹拌した後に、見かけ上、不溶物が見られないフィルムをいう。
また水溶性フィルムの厚さは、誤飲防止、洗浄性がより向上する観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは50μm以上、そして、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、更に好ましくは100μm以下である。
【0048】
水溶性フィルムは、好ましくはポリマーを含んで構成される。水溶性フィルムは、当該技術分野において既知の方法、例えば、ポリマーの注型成形、吹込み成形、押出成形、射出成形などによって得ることができる。水溶性フィルムを製造するためのポリマーの非限定例として、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルアルコールコポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレンオキシド、(変性)セルロース、(変性)セルロース-エーテル又は-エステル又は-アミド、ポリアクリレートなどのポリカルボン酸及び塩マレイン酸/アクリル酸のコポリマー、ポリアミノ酸つまりペプチド、ポリアクリルアミドなどのポリアミド、デンプン及びゼラチンなどの多糖、キサンタン及びカラゴム(carragum)などの天然ゴムが挙げられる。ビニルアルコールコポリマーは、ビニルアルコールと他のモノマー、例えばエチレン、アクリル酸とのコポリマーである。好ましくは、水溶性フィルムは、ポリアクリレート及び水溶性アクリレート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストリン、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、マルトデキストリン、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、ビニルアルコールコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーを含む。より好ましくは、水溶性フィルムは、ポリビニルアルコール、ビニルアルコールコポリマー及びヒドロキシプロピルメチルセルロースから選ばれるポリマーを含む。更に好ましくは、水溶性フィルムは、ポリビニルアルコール、例えば、株式会社アイセロから入手可能なソルブロンを含む。パウチの水溶性フィルムを製造するのに好適なポリマーは、例えば、米国特許第6995126号に記載されている。
【0049】
本発明の洗浄剤物品において、本発明の洗浄剤組成物と接触する水溶性フィルムの総面積は、製品安定性をより高める観点から、好ましくは2cm以上、より好ましくは5cm以上、更に好ましくは7cm以上、より更に好ましくは15cm以上、そして、同じ観点から、好ましくは100cm以下、より好ましくは70cm以下、更に好ましくは60cm以下、より更に好ましくは45cm以下である。
【0050】
本発明の洗浄剤物品は、当該技術分野において既知の任意の好適なプロセス、例えば既知の洗剤パウチの作製プロセスによって作製できる。パウチの作製プロセス例は、米国特許第6,995,126号、同第7,127,874号、同第8,156,713号、同第7,386,971号、同第7,439,215号、米国特許出願公開第2009/199877号、日本国特許第6915017号、及び同第4514858号に記載されている。
【0051】
本発明の洗浄剤物品は、1個あたりの内容物の量が、好ましくは0.1g以上、より好ましくは0.2g以上、より好ましくは5g以上、更に好ましくは8g以上、より更に好ましくは10g以上、そして、好ましくは50g以下、より好ましくは30g以下、更に好ましくは25g以下である。また、1個あたりの好ましい形状、大きさは、例えば四辺形の形状であり、1辺の長さが、好ましくは1cm以上5cm以下、そして、厚みが好ましくは1cm以上5cm以下、より好ましくは1cm以上4cm以下である。また、1個あたりの質量は、好ましくは0.1g以上、より好ましくは0.2g以上、更に好ましくは1g以上、より更に好ましくは5g以上、より更に好ましくは10g以上、そして、好ましくは50g以下、より好ましくは40g以下、更に好ましくは30g以下である。
また、1個あたりの別の好ましい形状、大きさは、例えば直方体の形状であり、縦の長さが、好ましくは2cm以上20cm以下、横の長さが、好ましくは1cm以上4cm以下、そして、厚みが好ましくは0.5cm以上5cm以下、より好ましくは1cm以上4cm以下である。また、1個あたりの質量は、好ましくは0.1g以上、より好ましくは0.2g以上、更に好ましくは1g以上、より更に好ましくは5g以上、よりさらに好ましくは10g以上、そして、好ましくは50g以下、より好ましくは40g以下、更に好ましくは30g以下、更に好ましくは20g以下である。
【0052】
本発明の洗浄剤物品は、繊維製品用、食器などの硬質表面用、自動食器洗浄機用として好適に用いることができ、繊維製品用として用いるのが好ましい。
【0053】
本発明の洗浄剤物品で繊維製品を洗浄する場合、洗浄する繊維は、疎水性繊維、親水性繊維のいずれでも良い。疎水性繊維としては、例えば、タンパク質系繊維(牛乳タンパクガゼイン繊維、プロミックスなど)、ポリアミド系繊維(ナイロンなど)、ポリエステル系繊維(ポリエステルなど)、ポリアクリロニトリル系繊維(アクリルなど)、ポリビニルアルコール系繊維(ビニロンなど)、ポリ塩化ビニル系繊維(ポリ塩化ビニルなど)、ポリ塩化ビニリデン系繊維(ビニリデンなど)、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリウレタン系繊維(ポリウレタンなど)、ポリ塩化ビニル/ポリビニルアルコール共重合系繊維(ポリクレラールなど)、ポリアルキレンパラオキシベンゾエート系繊維(ベンゾエートなど)、ポリフルオロエチレン系繊維(ポリテトラフルオロエチレンなど)、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、シリコーンカーバイト繊維、岩石繊維(ロックファイバー)、鉱滓繊維(スラッグファイバー)、金属繊維(金糸、銀糸、スチール繊維)等が例示される。親水性繊維としては、例えば、種子毛繊維(綿、もめん、カポックなど)、靭皮繊維(麻、亜麻、苧麻、大麻、黄麻など)、葉脈繊維(マニラ麻、サイザル麻など)、やし繊維、いぐさ、わら、獣毛繊維(羊毛、モヘア、カシミヤ、らくだ毛、アルパカ、ビキュナ、アンゴラなど)、絹繊維(家蚕絹、野蚕絹)、羽毛、セルロース系繊維(レーヨン、ポリノジック、キュプラ、アセテートなど)等が例示される。
繊維は、仕上がり性の観点から、繊維は木綿繊維を含む繊維であることが好ましい。繊維中の木綿繊維の含有量は、繊維の仕上がり性の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、より更に好ましくは20質量%以上、より更に好ましくは40質量%以上、より更に好ましくは60質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下であり、100質量%であってよい。
【0054】
本発明において繊維製品とは、前記の疎水性繊維や親水性繊維を用いた織物、編物、不織布等の布帛及びそれを用いて得られたアンダーシャツ、Tシャツ、Yシャツ、ブラウス、スラックス、帽子、ハンカチ、タオル、ニット、靴下、下着、タイツ等の製品を意味する。
【0055】
[繊維製品の洗浄方法]
本発明は、本発明の洗浄剤物品と水とを混合した洗浄液(以下、本発明の洗浄液という)で、繊維製品を洗浄する、繊維製品の洗浄方法を提供する。
本発明の繊維製品の洗浄方法は、本発明の洗浄剤物品で記載した態様を適宜適用することができる。
本発明の繊維製品の洗浄方法では、予め洗浄槽に本発明の洗浄剤物品と水を投入、混合して本発明の洗浄液を調製してから、被洗浄物である繊維製品を投入して、繊維製品を洗浄する方法でもよいが、本発明の効果を享受する観点から、洗浄槽に本発明の洗浄剤物品と水と繊維製品を投入し、本発明の洗浄剤物品を水に溶かしながら本発明の洗浄液を調製するのと同時に繊維製品を洗浄する方法が好ましい。
【0056】
本発明の洗浄液において、本発明の洗浄剤物品と水とを混合する際の水の量は、水1Lに対して、本発明の洗浄剤物品に含まれる本発明の洗浄剤組成物の総量が、環境配慮、及びタンパク質を含む複合汚れの洗浄性の観点から、好ましくは0.01g以上、より好ましくは0.1g以上、更に好ましくは0.3g以上、そして、好ましくは10g以下、より好ましくは1g以下、更に好ましくは0.5g以下の濃度となるように調製する。
【0057】
本発明の洗浄液において、本発明の洗浄剤物品と混合する水の硬度は、界面活性剤、及び酵素の安定性の観点から、ドイツ硬度で、好ましくは0.01°dH以上、より好ましくは0.1°dH以上、更に好ましくは1°dH以上、そして、好ましくは20°dH以下、より好ましくは10°dH以下、更に好ましくは5°dH以下である。
また、前記洗浄液は、硬度が前記範囲であってよい。
【0058】
ここで、本明細書におけるドイツ硬度(°dH)とは、水中におけるカルシウム及びマグネシウムの濃度を、CaCO換算濃度で1mg/L(ppm)=約0.056°dH(1°dH=17.8ppm)で表したものを指す。
このドイツ硬度のためのカルシウム及びマグネシウムの濃度は、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩を使用したキレート滴定法で求められる。
本明細書における水のドイツ硬度の具体的な測定方法を下記に示す。
<水のドイツ硬度の測定方法>
〔試薬〕
・0.01mol/l EDTA・2Na溶液:エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムの0.01mol/l水溶液(滴定用溶液、0.01 M EDTA-Na2、シグマアルドリッチ(SIGMA-ALDRICH)社製)
・Universal BT指示薬(製品名:Universal BT、(株)同仁化学研究所製)
・硬度測定用アンモニア緩衝液(塩化アンモニウム67.5gを28w/v%アンモニア水570mlに溶解し、イオン交換水で全量を1000mlとした溶液)
〔硬度の測定〕
(1)試料となる水20mlをホールピペットでコニカルビーカーに採取する。
(2)硬度測定用アンモニア緩衝液2ml添加する。
(3)Universal BT指示薬を0.5ml添加する。添加後の溶液が赤紫色であることを確認する。
(4)コニカルビーカーをよく振り混ぜながら、ビュレットから0.01mol/l EDTA・2Na溶液を滴下し、試料となる水が青色に変色した時点を滴定の終点とする。(5)全硬度は下記の算出式で求める。
硬度(°dH)=T×0.01×F×56.0774×100/A
T:0.01mol/l EDTA・2Na溶液の滴定量(mL)
A:サンプル容量(20mL、試料となる水の容量)
F:0.01mol/l EDTA・2Na溶液のファクター
【0059】
また、洗浄方法に用いる水、例えば洗浄液の調製に用いる水、すすぎに用いる水などの水の硬度も、本発明の繊維製品の洗浄方法で説明した硬度成分を含む水の硬度の好ましい範囲から選択できる。水の硬度の測定法も前記水の硬度と同様に測定できる。
【0060】
本発明の洗浄液は、(a)成分を、タンパク質を含む複合汚れの洗浄性、及び安全性の観点から、酵素タンパク質として、洗浄液中、好ましくは0.001ppm以上、より好ましくは0.01ppm以上、更に好ましくは0.1ppm以上、そして、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、更に好ましくは10ppm以下含有する。
【0061】
本発明の洗浄液は、(b)成分を、酵素活性化の観点から、洗浄液中、好ましくは0.1ppm以上、より好ましくは1ppm以上、更に好ましくは10ppm以上、そして、洗浄液中のpHの観点から、好ましくは300ppm以下、より好ましくは200ppm以下、更に好ましくは100ppm以下、より更に好ましくは50ppm以下含有する。
【0062】
本発明の洗浄液は、(c)成分を含有する場合、(c)成分を、複合汚れ中に含まれるタンパク質の改質の観点から、洗浄液中、好ましくは0.1ppm以上、より好ましくは1ppm以上、更に好ましくは10ppm以上、そして、好ましくは100000ppm以下、より好ましくは10000ppm以下、更に好ましくは5000ppm以下、より更に好ましくは1000ppm以下、より更に好ましくは100ppm以下、より更に好ましくは50ppm以下含有する。
【0063】
本発明の洗浄液は、(d)成分を含有する場合、(d)成分を、タンパク質を含む複合汚れの洗浄性、及び環境配慮の観点から、洗浄液中、好ましくは0.1ppm以上、より好ましくは1ppm以上、更に好ましくは10ppm以上、そして、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下、更に好ましくは100ppm以下、より更に好ましくは70ppm以下含有する。
【0064】
本発明の洗浄液は、(e)成分を含有する場合、(e)成分を、タンパク質を含む複合汚れの洗浄性、及び安全性の観点から、洗浄液中、好ましくは1ppm以上、より好ましくは10ppm以上、更に好ましくは50ppm以上、より更に好ましくは100ppm以上、そして、好ましくは10000ppm以下、より好ましくは1000ppm以下、更に好ましくは500ppm以下、より更に好ましくは300ppm以下含有する。
【0065】
本発明の洗浄液において、(a)成分の酵素タンパク質としての含有量と(b)成分の含有量との質量比(b)/(a)、(a)成分の酵素タンパク質としての含有量と(c)成分の含有量との質量比(c)/(a)、(a)成分の酵素タンパク質としての含有量と(d)成分の含有量との質量比(d)/(a)は、それぞれ、本発明の洗浄剤組成物で記載した同様の範囲であることが好ましい。
【0066】
本発明の洗浄液の温度は、酵素至適温度の観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、更に好ましくは30℃以上、そして、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは60℃以下である。
【0067】
本発明の洗浄液の25℃におけるpHは、酵素至適pHの観点から、8.0以上、好ましくは9.0以上、より好ましくは10.0以上、そして、安全性の観点から、13.0以下、好ましくは12.0以下、より好ましくは11.0以下である。
pHは、下記に記載のpHの測定法に従って測定する。
<pHの測定法>
pHメーター(HORIBA製 pH/イオンメーターF-23)にpH測定用複合電極(HORIBA製 ガラス摺り合わせスリーブ型)を接続し、電源を投入する。pH電極内部液としては、飽和塩化カリウム水溶液(3.33モル/L)を使用する。次に、pH4.01標準液(フタル酸塩標準液)、pH6.86(中性リン酸塩標準液)、pH9.18標準液(ホウ酸塩標準液)をそれぞれ100mLビーカーに充填し、25℃の恒温槽に30分間浸漬する。恒温に調整された標準液にpH測定用電極を3分間浸し、pH9.18→pH4.01→pH6.86の順に校正操作を行う。測定対象となるサンプルを25℃に調整し、前記のpHメーターの電極をサンプルに浸漬し、1分後のpHを測定する。
【0068】
近年、洗濯機が大型化し、繊維製品の質量(kg)と洗浄液の水量(リットル)の比で表される浴比の値、すなわち洗浄液の水量(リットル)/繊維製品の質量(kg)(以下、この比を浴比とする場合もある)の値が小さくなる傾向にある。家庭用洗濯機を用いた場合に浴比が小さくなると、洗浄時の攪拌により繊維製品同士の擦れが大きくなり、繊維製品の仕上がり性が損なわれる場合がある。浴比は、タンパク質を含む複合汚れの洗浄性の観点から、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは20以上、そして、洗濯効率の観点から好ましくは100以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは30以下である。
【0069】
本発明の繊維製品の洗浄方法において、洗浄時間は、酵素作用時間の観点から、好ましくは1分以上、より好ましくは3分以上、更に好ましくは5分以上、そして、作業負荷低減の観点から、好ましくは1時間以下、より好ましくは45分以下、更に好ましくは30分以下、より更に好ましくは10分以下である。
【0070】
本発明の繊維製品の洗浄方法は、ローラー等で繊維を送りながら、精錬に使用する液に浸漬する方法、回転式洗浄方法に適している。回転式洗浄方法とは、回転機器に固定されていない繊維製品が洗浄液と共に、回転軸の周りに回転する洗浄方法を意味する。回転式洗浄方法は回転式洗濯機により実施できる。従って、本発明では、繊維製品がよりきれいに仕上げる点で、繊維製品の洗浄を、回転式洗濯機を用いて行うことが好ましい。回転式の洗濯機としては、具体的には、ドラム式洗濯機、パルセータ式洗濯機又はアジテータ式洗濯機が挙げられる。これらの回転式洗濯機は、それぞれ、家庭用として市販されているものを使用することができる。
【実施例0071】
<配合成分>
実施例及び比較例では、以下の成分を用いた。
〔(a)成分〕
・プロテアーゼ:Progress Key 150T、Novozymes社製、有効分10%
〔(b)成分〕
・硫酸Al:硫酸アルミニウム14-18水和物、富士フイルム和光純薬(株)製
・塩化Al:塩化アルミニウム、富士フイルム和光純薬(株)製
〔(c)成分〕
・硫酸Na:硫酸ナトリウム、10g/Lのイオン強度0.21、富士フイルム和光純薬(株)製
・塩化Na:塩化ナトリウム、10g/Lのイオン強度0.17、富士フイルム和光純薬(株)製
・硝酸Na:硝酸ナトリウム、10g/Lのイオン強度0.12、富士フイルム和光純薬(株)製
・硫酸Li:硫酸リチウム、10g/Lのイオン強度0.27、富士フイルム和光純薬(株)製
・硫酸K:硫酸カリウム、10g/Lのイオン強度0.17、富士フイルム和光純薬(株)製
〔(d)成分〕
・ポリオキシエチレンアルキルエーテル:(d1)成分、エマルゲン110L、花王(株)製
・LAS:ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、(d2)成分、ネオペレックスG-65、花王(株)製
・AS:ラウリル硫酸エステルナトウム、(d2)成分、エマール10G、花王(株)製
・AES:ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、(d2)成分、エマール270J、花王(株)製
〔(e)成分〕
・炭酸Na:炭酸ナトリウム、富士フイルム和光純薬(株)製
【0072】
<洗浄剤組成物の調製>
上記の配合成分を用いて下記の方法で表1、2に示す洗浄剤組成物を調製した。(d)成分がノニオン界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)の場合、(d)成分を(e)成分に混合、吸着させた後、(a)成分、(b)成分、(c)成分を加え、攪拌することにより粉末状の各種固体洗浄剤組成物を調製した。(d)成分がアニオン界面活性剤(LAS、AS、AES)の場合、(d)成分65%水溶液を調製し、(e)成分に混合、乾燥し吸着させ、さらに(a)成分、(b)成分、(c)成分を加え、攪拌することにより粉末状の各種固体洗浄剤組成物を調製した。
【0073】
<洗浄剤物品の作製>
表1に記載の厚さの水溶性フィルム(横3cm、縦1cm、M8685、Monosol(株)製)を2枚重ね、ヒートシーラー(富士インパルス(株)製)を用い、三辺をシーラーで融着させ、一辺だけ開口した袋を作製し、この袋に表1、2に記載の各洗浄剤組成物を0.3g入れた。その後、ヒートシールで、袋の開口した一辺を融着して閉じて、各洗浄剤組成物を水溶性フィルムに包装された洗浄剤物品を得た。洗浄剤組成物と接触している水溶性フィルムの総面積は、3cmであった。なお本発明の洗浄剤物品は、上記した製造方法に限定されるものではない。
【0074】
[エリ袖タンパク汚れ洗浄性評価]
1.人工汚染布の作製
エリ袖タンパクモデル汚れの人工汚染布は、C-10汚染布(6cm×6cm、Center For Testmaterials BV、CFT社製)を用いた。
人工汚染布に含まれるエリ袖タンパクモデル汚れの組成は以下の通りである。
エリ袖タンパクモデル汚れの組成:落花生油、顔料、高濃度ミルク
【0075】
2.洗浄性評価
上記で作製したエリ袖タンパクモデル汚れの人工汚染布4枚を、ターゴトメーター(Ueshima製, MS-8212)にて、100rpmで10分間洗浄した。具体的な洗浄条件は、いずれも、人工汚染布4枚と、表1、2に記載の各洗浄剤物品をターゴトメーターに投入し、洗浄液中の各成分の濃度が表1、2の値になるように水(水は、イオン交換水、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムを用いて、Ca/Mg=6/4(質量比)の比率で、ドイツ硬度が2°dHに調製し、水の温度は30℃に調整した。)を注入し、洗浄剤物品を水に溶かしながら洗浄液を調製するのと同時に人工汚染布の洗浄を100rpmで10分間行った。また各洗浄液の水温は30℃、pHは10.5であり、アルカリ度は37であった。
洗浄後、市水(25℃)で1分間すすいだ。その後二層式洗濯機を用いてすすぎ後の汚染布の脱水処理を3分間行った後、20℃、50%RHの条件下で3時間放置し乾燥させた。洗浄性は洗浄率により評価した。洗浄率(%)を下記の方法にて測定し、4枚の平均値を求めた。なお、人工汚染布の原布、及び洗浄前後の人工汚染布の波長460nmにおける反射率は、測色色差計(日本電色株式会社製、SE2000)にて測定した。結果を表1、2に示す。
洗浄率(%)=100×[(洗浄後の人工汚染布の反射率-洗浄前の人工汚染布の反射率)/(原布の反射率-洗浄前の人工汚染布の反射率)]
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
表1、2中、(a)成分の含有量のカッコ内の数値は、(a)成分の酵素タンパク質としての含有量であり、(b)成分の含有量は、無水物に換算した数値である。また表1、2中の質量比(b)/(a)は、(a)成分の酵素タンパク質としての含有量と(b)成分の含有量との質量比であり、質量比(c)/(a)は、(a)成分の酵素タンパク質としての含有量と(c)成分の含有量との質量比である。