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特開2024-11144スラグの水浸膨張比推定方法、道路用鉄鋼スラグならびに強化路盤材およびその製造方法
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  • 特開-スラグの水浸膨張比推定方法、道路用鉄鋼スラグならびに強化路盤材およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011144
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】スラグの水浸膨張比推定方法、道路用鉄鋼スラグならびに強化路盤材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 3/00 20060101AFI20240118BHJP
   G01N 33/24 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
E01C3/00
G01N33/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112908
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星野 建
(72)【発明者】
【氏名】矢埜 泰武
(72)【発明者】
【氏名】市川 孝一
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AD07
2D051AF05
2D051CA10
(57)【要約】
【課題】簡便に精度よく推定する、スラグの水浸膨張比推定方法および逆断層型破壊を起こすことのない強化路盤材およびその製造方法を提案する。
【解決手段】道路用鉄鋼スラグの水浸膨張比の推定方法であって、前記スラグの水浸膨張試験を行って、所定の測定温度および測定時間における前記スラグの水浸膨張比を得て、所定の推定温度で前記スラグの水浸膨張試験を行った場合に所定の推定時間で前記水浸膨張比が得られるように推定する、スラグの水浸膨張比推定方法である。セメントとスラグとの混合物からなる強化路盤材を、推定したスラグの水浸膨張比(%)が、セメント養生後における強化路盤材の圧縮試験における強化路盤材の圧縮破壊に至る歪み率(%)よりも下回るもので構成する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路用鉄鋼スラグの水浸膨張比の推定方法であって、前記スラグの水浸膨張試験を行って、所定の測定温度および測定時間における前記スラグの水浸膨張比を得て、所定の推定温度で前記スラグの水浸膨張試験を行った場合に所定の推定時間で前記水浸膨張比が得られるように推定する、スラグの水浸膨張比推定方法。
【請求項2】
前記スラグの水浸膨張試験の推定時間tを、下記(1)式を用いて推定する、請求項1に記載のスラグの水浸膨張比推定方法。
【数1】
ここで、Vは水浸膨張比(%)、
νは推定膨張速度(%/日)、
tは推定時間(日)、
νは測定膨張速度(%/日)、
は測定時間(日)、
eはネイピア数(-)、
Tは推定温度(K)、
は測定温度(K)である。
【請求項3】
前記スラグの水浸膨張試験を0.1~0.3MPaの雰囲気圧力で、かつ、水が液体として存在する温度範囲から選んだ前記測定温度で実施する、請求項1または2に記載のスラグの水浸膨張比推定方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載のスラグの水浸膨張比推定方法を用いて、常温(293K)および前記推定時間tが3652日における水浸膨張比を推定したとき、前記水浸膨張比が3.5%以下である、道路用鉄鋼スラグ。
【請求項5】
セメントとスラグとの混合物からなる強化路盤材であって、
該強化路盤材は、請求項1または2に記載のスラグの水浸膨張比推定方法を用いて推定した、常温(293K)および前記推定時間tが3652日における前記スラグの水浸膨張比(%)が、セメント養生後における強化路盤材の圧縮試験における該強化路盤材の圧縮破壊に至る歪み率(%)よりも下回るものであることを特徴とする強化路盤材。
【請求項6】
セメントとスラグとの混合物からなり、セメント養生後の強化路盤材に対して圧縮試験を行って該強化路盤材の圧縮破壊に至る歪み率(%)を求めるとともに、
請求項1または2に記載のスラグの水浸膨張比推定方法を用いて、常温(293K)および前記推定時間tが3652日における前記スラグの水浸膨張比(%)を推定し、該スラグの水浸膨張比と該強化路盤材の圧縮破壊に至る歪み率とを比較し、該水浸膨張比が、該歪み率よりも下回る条件下でセメントを添加してスラグと混合する、強化路盤材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄所の副産物の一つであり、道路用路盤材に用いられる製鋼スラグなどの鉄鋼スラグの水浸膨張比を推定する方法および道路用鉄鋼スラグ、さらには鉄鋼スラグを使用した強化路盤材およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アスファルト舗装の路盤は、路盤の安定性や耐久性を考慮したうえで使用する材料等が選定される。路盤材として用いられる材料は、各都道府県の土木共通仕様書や舗装再生便覧等において定められており、修正CBR等の各種特性を満たすことが求められている。
【0003】
製鉄所の副産物として生成される製鋼スラグなどの鉄鋼スラグは、道路用路盤材の材料の一つであることは周知である。製鋼スラグ中には、精錬時の石灰分が未反応で一部残存している場合がある。その石灰分は水と水和することで体積膨張する。そのため、製鋼スラグを用いた路盤材はエージング処理を実施し、膨張安定化することがJIS A 5015:2018で規定されている。また、製鋼スラグの水浸膨張比(膨張特性)はJIS A 5015:2018付属書Bに記載の道路用鉄鋼スラグの水浸膨張試験方法によって測定される。水浸膨張試験は、製鋼スラグをモールドに突固めて行う。そして、80℃の温水に6時間保持した後、放冷する。この操作を1日1回で、10日間くり返し、ダイヤルゲージによる膨張量測定値から水浸膨張比(%)を算定する。
【0004】
特許文献1に開示された技術は、異なる温度で膨張させた複数の製鋼スラグの水浸膨張曲線から単位温度あたりに上昇する水浸膨張速度の倍率、測定温度、推定温度を基に推定時間を算出し、推定時間および対数変換した水浸膨張比から成る勾配で膨張特性を判定するものである。
【0005】
また、路盤材の材料として用いるにあたっては、予め、エージング等の前処理を施し、その前処理が施された製鋼スラグにセメントを添加して安定処理混合物としているのが一般的であった。ところで、製鋼スラグを含む強化路盤材は、所望の強度や充填性、締固め性等の他に、製鋼スラグの膨張に起因した逆断層型の破壊を起こさないことが求められる。そのため従来は、一律に大きな安全率を設定して過剰な前処理を行っていた。製鋼スラグの膨張をどの程度まで抑制すれば逆断層型の破壊を回避できるかについては未だ解明されていないのが現状であった。なお、ここでいう、逆断層型の破壊とは、路盤材の固結後における製鋼スラグの膨張等によって路盤に水平方向の圧縮力が働いて路盤に断層が生じ、断層の一方側の路盤が他方側の路盤の上にのし上がることにより断層近傍において路盤が隆起する現象をいう。
【0006】
路盤材に関連した先行技術として、たとえば、特許文献2、3には、未固結のソイルセメントから将来の発現強度を推定する方法が提案されている。また、特許文献4には、ソイルセメントの造成現場の施工条件かに応じた所定材令の圧縮強度を推定する方法が提案されている。さらに、特許文献5には、施工現場の管理および合理化の観点からコンクリートの充填性、締固め性等を評価する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-025461号公報
【特許文献2】特開2018-135696号公報
【特許文献3】特開2014-111879号公報
【特許文献4】特開2015-059325号公報
【特許文献5】特開2017-223490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のように、単位温度当たりに上昇する水浸膨張速度の倍率を求めるために製鋼スラグ各種でそれぞれ様々な温度で水浸膨張試験を事前に実施する必要があり、非常に負荷が大きいものであった。
【0009】
特許文献2~5では、路盤材の固結後の膨張による逆断層破壊を回避することまでは言及されていない。
【0010】
本発明は、上記課題を解決し、簡便に推定温度、推定時間における水浸膨張比を精度よく推定する、スラグの水浸膨張比推定方法を提案し、道路用に好適な鉄鋼スラグを提供し、スラグの膨張に起因した逆断層型破壊を起こすことのない強化路盤材およびその製造方法を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための手段は以下のとおりである。
[1]道路用鉄鋼スラグの水浸膨張比の推定方法であって、前記スラグの水浸膨張試験を行って、所定の測定温度および測定時間における前記スラグの水浸膨張比を得て、所定の推定温度で前記スラグの水浸膨張試験を行った場合に所定の推定時間で前記水浸膨張比が得られるように推定する、スラグの水浸膨張比推定方法。
[2]前記スラグの水浸膨張試験の推定時間tを、下記(1)式を用いて推定する、請求項1に記載のスラグの水浸膨張比推定方法。
【数1】
ここで、Vは水浸膨張比(%)、
νは推定膨張速度(%/日)、
tは推定時間(日)、
νは測定膨張速度(%/日)、
は測定時間(日)、
eはネイピア数(-)、
Tは推定温度(K)、
は測定温度(K)である。
[3]前記スラグの水浸膨張試験を0.1~0.3MPaの雰囲気圧力で、かつ、水が液体として存在する温度範囲から選んだ前記測定温度で実施する、[1]または[2]に記載のスラグの水浸膨張比推定方法。
[4]
[1]または[2]に記載のスラグの水浸膨張比推定方法を用いて、常温(293K)における前記推定時間tが3652日における水浸膨張比を推定したとき、前記水浸膨張比が3.5%以下である、道路用鉄鋼スラグ。
[5]セメントとスラグとの混合物からなる強化路盤材であって、
該強化路盤材は、[1]または[2]に記載のスラグの水浸膨張比推定方法を用いて推定した前記スラグの水浸膨張比(%)が、セメント養生後における強化路盤材の圧縮試験における該強化路盤材の圧縮破壊に至る歪み率(%)よりも下回るものであることを特徴とする強化路盤材。
[6]
セメントとスラグとの混合物からなり、セメント養生後の強化路盤材に対して圧縮試験を行って該強化路盤材の圧縮破壊に至る歪み率(%)を求めるとともに、
[1]または[2]に記載のスラグの水浸膨張比推定方法を用いて前記スラグの水浸膨張比(%)を推定し、該スラグの水浸膨張比と該強化路盤材の圧縮破壊に至る歪み率とを比較し、該水浸膨張比が、該歪み率よりも下回る条件下でセメントを添加してスラグと混合する、強化路盤材の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のスラグの水浸膨張比推定方法によれば、水浸膨張比推定式を、水浸膨張試験の測定膨張速度、測定時間、測定温度、推定温度、を変数として含んだ関数で表し、この関数を満たす水浸膨張比を算出する。これにより、推定温度、推定時間での水浸膨張比を精度よく推定することができる。そして、推定時間を短縮および延長した場合での水浸膨張比の推定が可能となる。この水浸膨張比推定方法を用いて、所定の水浸膨張性能を有する鉄鋼スラグを道路用に選択できる。
【0013】
本発明の強化路盤材およびその製造方法によれば、セメント養生後における強化路盤材の圧縮破壊に至る歪み率(%)を、スラグの膨張によるものとみなし、この歪み率(%)を、製鋼スラグの推定水浸膨張比(%)と比較し、該推定水浸膨張比(%)が歪み率(%)よりも下回るものすることにより、スラグの膨張を抑制でき、それによる強化路盤材の逆断層破壊を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】セメント添加量と圧縮破壊時の歪み率との関係を示したグラフである。
図2】圧下速度と圧縮破壊時の歪み率の関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[スラグの水浸膨張比推定方法]
本発明の第1実施形態にかかるスラグの水浸膨張比推定方法は、水浸膨張比推定式を、水浸膨張試験の測定膨張速度、測定時間、測定温度、推定温度、推定時間を変数として含んだ関数で表し、この関数を満たす時間を算出するものである。
【0016】
本実施形態において、道路用のスラグ路盤材を構成する鉄鋼スラグは、製鉄所内で発生するスラグであれば特に制限されるものではない。例えば、溶銑予備処理工程(脱珪、脱りん、脱硫)で発生する予備処理スラグ、転炉での脱炭工程で発生する転炉スラグ(脱炭スラグ)、電気炉での工程で発生する電気炉スラグ、二次精錬工程で発生する二次精錬スラグ、鋳造工程で発生する造塊スラグ等の各種のスラグを例示することができる。これらはその1種のみを単独で処理でき、2種以上を混合して処理することもできる。
【0017】
下記数式2の(1)式で示す関数の変数には、対象とするスラグ路盤材の水浸膨張試験の測定膨張速度(ν)、測定温度(T)、測定時間(t)、推定温度(T)、推定時間(t)を含む。JIS A 5015:2018付属書Bに記載の道路用鉄鋼スラグの水浸膨張試験方法では、10日間の試験を行うが、本実施形態では任意に短縮、延長できる。また、試験温度も80℃を用いるが、任意に変更して試験してもよい。上記JISの試験では、80℃の温水に6時間保持したのち、放冷する。この操作を1日1回で10日間繰り返すが、連続して温度保持してもよい。
【0018】
【数2】
【0019】
上記(1)式中のνは水浸膨張試験の推定膨張速度であるが、測定膨張速度(ν)の値を使用してもよく、単位は%/日である。推定温度(T)および測定温度(T)は、水浸膨張試験の試験温度であり、水が液体として存在する大気圧下で273K≦T≦373Kの範囲とする。ただし、加圧下においては水が液体として存在する温度範囲とする。Vは水浸膨張比(%)である。
【0020】
ここで、水浸膨張試験の推定膨張速度(ν)を、測定膨張速度(ν)の値と等しいものと置いて、測定した水浸膨張比(V)と等しくなる、推定温度(T)における推定時間(t)を推定する。(1)式を変形して、下記数式3の(1’)式が得られる。
【0021】
【数3】
【0022】
なお、水浸膨張試験の測定温度(T)は試験中に変動する場合があるので、水浸膨張試験の試験温度を連続測定して、積算温度を試験時間で除して、平均し、測定温度(T)の実績値としてもよい。このようにして、所望の推定温度(T)および推定時間(t)の水浸膨張比を推定するために、所定の測定温度および所定の測定時間でスラグの水浸膨張試験を行い水浸膨張比を測定するものである。
【0023】
各種測定温度および測定時間で上記スラグの水浸膨張試験を実施した。表1に測定温度(T)[K]、測定時間(t)[日]で記載した。また、測定圧力(P)[MPa]を併記した。上記関係式を用い、各試験ごとに推定温度(T)[K]における測定水浸膨張比(V)[%]と同じ推定水浸膨張比(Ve)[%]となるスラグの水浸膨張試験の推定時間(t)[日]を上記(1’)式で推定し、それぞれ記載した。推定温度(T)および推定時間(t)を用いて、同じスラグの水浸膨張試験を行った結果得られた実績水浸膨張比(Va)を併せて記載した。得られた結果を統計処理し、推定水浸膨張比(Ve)と実績水浸膨張比(Va)との誤差が3σ(標準偏差)以内の条件を記号○で、それ以外を記号×で判定した。
【0024】
【表1】
【0025】
測定温度(T)として、水が液体として存在する温度範囲とした試験No.1~24は、推定水浸膨張比(Ve)と実績水浸膨張比(Va)とがよく一致している。測定温度(T)として、大気圧化で水が液体として存在しない温度域とした試験No.25~33は推定水浸膨張比(Ve)と実績水浸膨張比(Va)との誤差が大きい。
【0026】
[道路用鉄鋼スラグ]
本発明の第2実施形態としての道路用鉄鋼スラグは、第1の実施形態のスラグの水浸膨張比推定方法を用いて、常温(293K)における前記推定時間tが10年(3652日)における水浸膨張比Vを推定したとき、前記水浸膨張比Vが3.5%以下であることが必要である。この条件を満足することで路盤材に隆起が発生しない効果が得られる。水浸膨張比Vが3.5%を超えた場合には路盤材に隆起が発生するおそれがある。たとえば、上記表1の試験No.22~24から選ばれた1の測定温度(T)および測定時間(t)でスラグの水浸膨張試験を行い水浸膨張比Vを測定することで、常温(293K)における前記推定時間tが3652日における水浸膨張比Vを推定できる。
【0027】
[強化路盤材]
本発明の第3実施形態は、強化路盤材において、第1実施形態のスラグの水浸膨張比推定方法を用いて推定した前記スラグの水浸膨張比(%)と、セメント養生後における強化路盤材の圧縮試験における該強化路盤材の圧縮破壊に至る歪み率(%)とを比較して評価するものである。常温(293K)および推定時間tが10年(3652日)における推定水浸膨張比(%)が圧縮破壊に至る歪み率(%)よりも下回る場合、固結後の材料の膨張に起因した逆断層型破壊を起こすのを回避することが可能と判断できる。これにより、将来的に逆断層型破壊を起こさないセメント添加量を設定できるという新規知見に基づいてなされたものである。
【0028】
図1は、粒度が0~40mmに調整された、製鋼スラグを用い、その製鋼スラグに1.0~5.0mass%のセメントを添加、混合して突き固め(含水比は、セメントの28日間の固化に必要十分な含水比に調整)封かん養生を行った、直径100mm、高さ/直径比が1.27の供試体を複数作成し、得られた供試体の圧縮破壊時の歪み率(%)とセメント添加量(mass%)の関係を示した図であり、また、表2は、各供試体のセメント添加量(mass%)、各供試体の圧縮破壊時の歪み率(%)、製鋼スラグの推定水浸膨張比(%)、適用の可否の調査結果を示したものである。ここで、推定水浸膨張比は常温(293K)、常圧(大気圧)および推定時間tが10年(3652日)において推定したものである。
【0029】
なお、この調査においては、製鋼スラグの粒度分布を、JIS A 1102:2014に従い測定し、測定された粒度を用いて相対粒度を作成し、各供試体で粒度差がでないように調整(スラグの最大粒径が供試体の直径の1/4以下となる相対粒度に調整)した。また、混合物の突き固めは、試験便覧のE011、F007に従って行い、圧縮試験での圧下速度は、0.2mm/minに設定した。また、圧縮破壊時の歪み率(%)は、圧縮試験結果より荷重・歪み曲線を作成し、荷重・歪み曲線における最大荷重の歪みを歪み率に換算して求めた。製鋼スラグの推定水浸膨張比(%)は、第1実施形態に示す所定の測定温度および所定の測定時間の水浸膨張試験から推定した。適用可否は、圧縮破壊時の歪み率(%)よりも製鋼スラグの推定水浸膨張比(%)が下回るものを〇で、とくに歪み率(%)と推定水浸膨張比(%)の差が0.2%以上のものは◎で表記し、圧縮破壊時の歪み率(%)よりも推定水浸膨張比(%)が上回るものを×で表記した。
【0030】
【表2】
【0031】
表2において試験No.1~3はセメント添加量を1.5mass%とした場合である。試験No.4~6はセメント添加量を3.5mass%とした場合である。試験No.7はセメント添加量を5.0mass%とした場合である。表2から明らかなように、発明例は推定水浸膨張比(%)が、いずれのものも圧縮破壊時の歪み率(%)よりも下回っている。したがって、適用可能であるという結果が得られた。これに対して、試験No.8~11は、推定水浸膨張比(%)が全て圧縮破壊時の歪み率(%)を上回るものであり、適用不可となった。
【0032】
本実施形態において圧縮試験における圧下速度は、0.1~1%/minの圧下速度で行うのが好ましいとしたが、その理由は、製鋼スラグが拘束状態で膨張する時の応力を意図的に起こすことができると考えられたからであり、そのためには、できるだけ圧下速度を小さくし、かつ圧縮破壊に至る歪み率(%)に影響を与えることがようにしなければないことが肝要であって、予備試験から図2に示すような結果が得られたからである。
【0033】
本実施形態においては、強化路盤材を、セメント養生後の強化路盤材に対して圧縮試験を行って該強化路盤材の圧縮破壊に至る歪み率を求めるとともに、該スラグの推定水浸膨比を求め、該スラグの推定水浸膨比と該路盤材の圧縮破壊に至る歪み率とを比較し、該推定水浸膨比が、該歪み率よりも下回る条件下でセメントを添加してスラグと混合することにより製造するが、そのためには、スラグの粒度は、0~40mmの範囲に調整されたものを用いるのが好ましく、添加するセメント量は、必要な路盤支持力に合わせて1~5mass%の範囲で決定するのが好ましく、スラグとセメントとの混合は、スラグを突き固め前日に調湿し、突き固め直前にセメントと混合することが、また、封かん養生は温度20℃、湿度98%という条件とするのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のスラグの水浸膨張比推定方法によれば、簡便に推定温度、推定時間における水浸膨張比を精度よく推定できる。その方法で推定することにより道路用に適した水浸膨張比の鉄鋼スラグを提供できる。
本発明の強化路盤材およびその製造方法によれば、逆断層型破壊を起こすことのない強化路盤材およびその製造方法が提供できる。

図1
図2