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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111457
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】車両用衝撃吸収部材
(51)【国際特許分類】
   F16F 7/12 20060101AFI20240809BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
F16F7/12
F16F7/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015976
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 稔也
(72)【発明者】
【氏名】若尾 優志
(72)【発明者】
【氏名】鈴森 理生
(72)【発明者】
【氏名】小田 恒明
【テーマコード(参考)】
3J066
【Fターム(参考)】
3J066AA02
3J066AA23
3J066BA03
3J066BC10
3J066BD05
3J066BE05
3J066BF01
(57)【要約】
【課題】質量当たりのエネルギ吸収効率を高めること。
【解決手段】車両用衝撃吸収部材(以下、衝撃吸収部材20)は、複数の繊維強化樹脂層が互いに積層されるとともに接合されて形成された吸収部材本体40を備える。吸収部材本体40は、前後方向Lにおいて衝突荷重を受けるものである。吸収部材本体40における前後方向Lに直交する断面は、開断面であり、車幅方向Wに互いに間隔をあけて配置され、上下方向Zに延在する一対の側部51と、一対の側部51の上下方向Zの一端同士を連結する連結部52と、一対の側部51の上下方向Zの他端から車幅方向Wにおいて互いに離れるように延在する一対の延在部53と、一対の延在部53の先端において折り返され、上下方向Zにおいて連結部52に近づく側に延在する一対の折り返し部54と、を有し、一対の折り返し部54の先端は、上下方向Zにおける側部51の中間位置よりも延在部53側に位置している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の繊維強化樹脂層が互いに積層されるとともに接合されて形成された吸収部材本体を備える車両用衝撃吸収部材であって、
前記吸収部材本体は、第1方向において衝突荷重を受けるものであり、
前記第1方向に直交する方向を第2方向とし、前記第1方向及び第2方向の双方に直交する方向を第3方向とするとき、
前記吸収部材本体における前記第1方向に直交する断面は、
開断面であり、
前記第2方向に互いに間隔をあけて配置され、前記第3方向に延在する一対の側部と、
一対の前記側部の前記第3方向の一端同士を連結する連結部と、
一対の前記側部の前記第3方向の他端から前記第2方向において互いに離れるように延在する一対の延在部と、
一対の前記延在部の先端において折り返され、前記第3方向において前記連結部に近づく側に延在する一対の折り返し部と、を有し、
一対の前記折り返し部の先端は、前記第3方向における前記側部の中間位置よりも前記延在部側に位置している、
車両用衝撃吸収部材。
【請求項2】
前記折り返し部が、前記第3方向において前記連結部に近づくほど前記第2方向において前記延在部から離れるように傾斜して延在しており、
前記第3方向に延在する仮想直線と前記折り返し部とのなす角度は、0度よりも大きく、且つ30度以下である、
請求項1に記載の車両用衝撃吸収部材。
【請求項3】
前記連結部及び一対の前記延在部が、前記第2方向に延在する仮想直線に沿って延在しており、
前記延在部の前記第2方向の長さは、前記連結部の前記第2方向の長さ以下である、
請求項1または請求項2に記載の車両用衝撃吸収部材。
【請求項4】
前記断面の形状及び大きさは、前記第1方向の全体にわたって同一である、
請求項1に記載の車両用衝撃吸収部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用衝撃吸収部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、繊維強化樹脂材で構成されたエネルギ吸収部材が開示されている。特許文献1に開示のエネルギ吸収部材は、W字状の断面形状を有する。
また従来、U字状の断面形状を有するエネルギ吸収部材がある。
【0003】
図7に示すように、U字状の断面は、一対の側部81及び連結部82を有する。連結部82は、一対の側部81の一端同士を連結している。
図8に示すように、W字状の断面は、一対の内側部91、連結部92、一対の延在部93、及び一対の外側部94を有する。連結部92は、内側部91の一端同士を連結している。一対の延在部93は、一対の内側部91の他端から互いに離れるように延在している。一対の外側部94は、一対の延在部93の先端において折り返されて延在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-221986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
U字状の断面形状を有するエネルギ吸収部材においては、衝突荷重を受けた際に、一対の側部81が、側部81同士の並び方向(図7の左右方向)に倒れやすい。W字状の断面形状を有するエネルギ吸収部材においては、衝突荷重を受けた際に、一対の外側部94が、外側部94同士の並び方向(図8の左右方向)に倒れやすい。こうした側部81や、外側部94の倒れこみは、エネルギ吸収に寄与しないため、エネルギ吸収効率を高める上で改善の余地がある。また、W字状の断面形状を有するエネルギ吸収部材においては、一対の外側部94の長さが長いために質量が増大するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための車両用衝撃吸収部材は、複数の繊維強化樹脂層が互いに積層されるとともに接合されて形成された吸収部材本体を備える車両用衝撃吸収部材であって、前記吸収部材本体は、第1方向において衝突荷重を受けるものであり、前記第1方向に直交する方向を第2方向とし、前記第1方向及び第2方向の双方に直交する方向を第3方向とするとき、前記吸収部材本体における前記第1方向に直交する断面は、開断面であり、前記第2方向に互いに間隔をあけて配置され、前記第3方向に延在する一対の側部と、一対の前記側部の前記第3方向の一端同士を連結する連結部と、一対の前記側部の前記第3方向の他端から前記第2方向において互いに離れるように延在する一対の延在部と、一対の前記延在部の先端において折り返され、前記第3方向において前記連結部に近づく側に延在する一対の折り返し部と、を有し、一対の前記折り返し部の先端は、前記第3方向における前記側部の中間位置よりも前記延在部側に位置している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態の車両用衝撃吸収部材の斜視図である。
図2図2は、図1の車両用衝撃吸収部材の断面図である。
図3図3は、図1の吸収部材本体の斜視図である。
図4図4は、図1の吸収部材本体の層構成を示す斜視断面図である。
図5図5は、図1の吸収部材の断面図である。
図6図6は、図1の吸収部材の断面図である。
図7図7は、U字状の断面形状を有するエネルギ吸収部材の断面図である。
図8図8は、W字状の断面形状を有するエネルギ吸収部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図1図6を参照して、車両用衝撃吸収部材(以下、衝撃吸収部材20という)の一実施形態について説明する。
以降において、車両の前後方向を前後方向Lとし、車両の幅方向を車幅方向Wとし、車両が水平面上に位置しているときの車両の上下方向を上下方向Zとして説明する。また、前後方向Lにおける前側及び後側を、それぞれ単に「前側」及び「後側」とし、上下方向Zにおける上側及び下側を、それぞれ単に「上側」及び「下側」として説明する。
【0009】
図2に示すように、車両の前部には、前側から順に、バンパリインフォースメント10、衝撃吸収部材20、及びフロントサイドメンバ11が設けられている。衝撃吸収部材20は、前後方向Lにおいてバンパリインフォースメント10とフロントサイドメンバ11とにより挟まれている。図2は、図1の2-2線に沿った断面図である。
【0010】
図1及び図2に示すように、衝撃吸収部材20は、台座部30と、吸収部材本体40とを有する。
次に、衝撃吸収部材20の各構成について詳細に説明する。
【0011】
<吸収部材本体40>
図1図3に示すように、吸収部材本体40は、前後方向Lにおいて衝突荷重を受けるものであり、前後方向Lに延在している。
【0012】
本実施形態では、前後方向Lが、[課題を解決するための手段]における第1方向に相当し、車幅方向Wが、[課題を解決するための手段]における第2方向に相当し、上下方向Zが、[課題を解決するための手段]における第3方向に相当する。すなわち、車幅方向Wは、前後方向Lに直交する方向であり、上下方向Zは、前後方向L及び車幅方向Wの双方に直交する方向である。
【0013】
図4に示すように、吸収部材本体40は、複数の繊維強化樹脂層41が互いに積層されるとともに接合された積層体をプレスすることにより形成されている。
繊維強化樹脂層41は、シート状に配置された複数の強化繊維42に熱可塑性の樹脂43を含浸させて形成されている。繊維強化樹脂層41を構成する複数の強化繊維42は、長繊維であり、単一方向に延在していることが好ましい。
【0014】
強化繊維42は、ガラス繊維であることが好ましい。樹脂43は、ポリプロピレンまたはナイロンであることが好ましい。
複数の繊維強化樹脂層41は、互いに溶着されることで接合されている。互いに隣り合う繊維強化樹脂層41の強化繊維42同士は、互いに直交して延在していることが好ましい。
【0015】
図1図3図5及び図6に示すように、吸収部材本体40における前後方向Lに直交する断面は、開断面である。
本実施形態の断面は、車幅方向Wにおいて対称な形状を有している。
【0016】
図5及び図6に示すように、断面は、一対の側部51、連結部52、一対の延在部53、及び一対の折り返し部54を有する。
一対の側部51は、車幅方向Wに互いに間隔をあけて配置され、上下方向Zに延在している。本実施形態の一対の側部51は、上側ほど車幅方向Wにおいて互いに近づくように上下方向Zに延在する仮想直線VL3に対して傾斜している。仮想直線VL3と側部51とのなす角度βは、0度よりも大きく、且つ30度以下であることが好ましい。上記角度βは、3度以上、15度以下であることがより好ましい。
【0017】
連結部52は、一対の側部51の上端同士を連結している。本実施形態の連結部52は、車幅方向Wに延在する仮想直線VL2に沿って延在している。一対の側部51の上端が、[課題を解決するための手段]における一端に相当する。
【0018】
一対の延在部53は、一対の側部51の下端から車幅方向Wにおいて互いに離れるように延在している。一対の側部51の下端が、[課題を解決するための手段]における他端に相当する。本実施形態の延在部53は、仮想直線VL2に沿って延在している。
【0019】
一対の折り返し部54は、一対の延在部53の先端において折り返され、上下方向Zにおいて連結部52に近づく側に延在している。
一対の折り返し部54の先端は、上下方向Zにおける側部51の中間位置よりも延在部53側に位置している。
【0020】
本実施形態の折り返し部54は、上下方向Zにおいて連結部52に近づくほど、すなわち上側ほど車幅方向Wにおいて延在部53から離れるように傾斜して延在している。仮想直線VL3と折り返し部54とのなす角度αは、0度よりも大きく、且つ30度以下であることが好ましい。上記角度αは、3度以上、15度以下であることがより好ましい。
【0021】
延在部53の車幅方向Wの長さL3は、連結部52の車幅方向Wの長さL2以下であることが好ましい。
断面の形状及び大きさは、前後方向Lの全体にわたって同一であることが好ましい。
【0022】
<台座部30>
図1及び図2に示すように、台座部30は、吸収部材本体40の後端部に固定されている。
【0023】
台座部30は、ベース部31、支持突部32、及びカラー34を有している。
ベース部31は、略長方形板状である。
支持突部32は、ベース部31の前面から前方に突出している。支持突部32は、吸収部材本体40の後端部を収容して固定する溝部33を有する(図1参照)。
【0024】
ベース部31の4つの角部には、筒状のカラー34が一体に設けられている。カラー34には、台座部30をフロントサイドメンバ11の前端に固定するためのボルト(図示略)が挿通される。
【0025】
台座部30は、成形型にカラー34をインサートした状態でキャビティに溶融樹脂を射出してベース部31及び支持突部32を成形することにより形成されている。
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0026】
本実施形態の衝撃吸収部材20によれば、吸収部材本体40が車幅方向Wにおける一対の側部51の外側に一対の延在部53及び折り返し部54を有しているので、吸収部材本体40が衝突荷重を受けた際に側部51が車幅方向Wの外側に倒れにくくなる。また、一対の折り返し部54の先端が、上下方向Zにおける側部51の中間位置よりも連結部52側に位置している場合に比べて、破壊時に折り返し部54が車幅方向Wの外側に倒れにくくなる。このため、衝突荷重を受けて吸収部材本体40が圧縮される際に、吸収部材本体40の変位に対して荷重が早いタイミングで立ち上がるようになるので、吸収部材本体40の圧縮破壊が円滑に進行するようになる。これにより、吸収部材本体40によるエネルギ吸収効率を高めることができる。さらに、上下方向Zにおける折り返し部54の長さが短くされることによって吸収部材本体40の質量を低減することができる。
【0027】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)衝撃吸収部材20は、複数の繊維強化樹脂層41が互いに積層されるとともに接合されて形成された吸収部材本体40を備える。吸収部材本体40における前後方向Lに直交する断面は、開断面であり、一対の側部51と、連結部52と、一対の延在部53と、一対の折り返し部54とを有する。一対の折り返し部54の先端は、上下方向Zにおける側部51の中間位置よりも延在部53側に位置している。
【0028】
こうした構成によれば、上記作用を奏するため、質量当たりのエネルギ吸収効率を高めることができる。
(2)折り返し部54が、上下方向Zにおいて連結部52に近づくほど車幅方向Wにおいて延在部53から離れるように傾斜して延在している。仮想直線VL3と折り返し部54とのなす角度αは、0度よりも大きく、且つ30度以下である。
【0029】
こうした構成によれば、吸収部材本体40をプレス金型から容易に取り出すことができる。したがって、吸収部材本体40を容易に製造することができる。
(3)連結部52及び一対の延在部53が、車幅方向Wに延在する仮想直線VL2に沿って延在している。延在部53の車幅方向Wの長さL3は、連結部52の車幅方向Wの長さL2以下である。
【0030】
こうした構成によれば、上記断面に占める一対の側部51及び連結部52の割合が大きくなる。ここで、一対の側部51及び連結部52は、他の部位に比べてエネルギ吸収効率の向上に対する寄与率が大きい。したがって、エネルギ効率を効果的に高めることができる。
【0031】
(4)断面の形状及び大きさは、前後方向Lの全体にわたって同一である。
こうした構成によれば、例えば断面の大きさが前後方向Lの後側ほど大きくなるような構成に比べて、吸収部材本体40の変位に対して衝突荷重が一層早いタイミングで立ち上がるようになる。これにより、吸収部材本体40の圧縮破壊が進行しやすくなるため、エネルギ吸収効率を一層高めることができる。
【0032】
<変更例>
上記実施形態は、例えば以下のように変更して実施することもできる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0033】
・例えば断面の大きさを、後側ほど僅かに大きくしてもよい。また、断面の形状を前後方向Lの位置によって僅かに異ならせてもよい。
・延在部53の車幅方向Wの長さL3は、連結部52の車幅方向Wの長さL2よりも長くてもよい。
【0034】
・連結部52及び一対の延在部53は、仮想直線VL2に沿って延在するものに限定されず、湾曲しているものであってもよい。
・仮想直線VL3と折り返し部54とのなす角度αを0度に設定することもできる。また、仮想直線VL3と側部51とのなす角度βを0度に設定することもできる。
【0035】
・上記実施形態において例示した吸収部材本体40を、例えば前後方向Lに延びる軸線を中心に90度回転させた状態で配置することもできる。この場合、車幅方向Wが、[課題を解決するための手段]における第3方向に相当し、上下方向Zが、[課題を解決するための手段]における第2方向に相当することになる。
【符号の説明】
【0036】
10…バンパリインフォースメント
11…フロントサイドメンバ
20…衝撃吸収部材
30…台座部
31…ベース部
32…支持突部
33…溝部
34…カラー
40…吸収部材本体
41…繊維強化樹脂層
42…強化繊維
43…樹脂
51…側部
52…連結部
53…延在部
54…折り返し部
81…側部
82…連結部
91…内側部
92…連結部
93…延在部
94…外側部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8