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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011146
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】揚げたて感付与組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/20 20160101AFI20240118BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20240118BHJP
   A23L 29/00 20160101ALI20240118BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20240118BHJP
   A23L 35/00 20160101ALN20240118BHJP
【FI】
A23L27/20 Z
A23L27/00 C
A23L29/00
A23L5/10 D
A23L35/00
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112911
(22)【出願日】2022-07-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年8月26日に日本食品科学工学会第68回大会講演集にて公開 〔刊行物等〕 令和3年8月28日に日本食品科学工学会第68回大会にて発表 〔刊行物等〕 令和4年3月5日に日本農芸化学会2022年度大会講演要旨集にて公開 〔刊行物等〕 令和4年3月17日に日本農芸化学会2022年度大会にて発表
(71)【出願人】
【識別番号】000214537
【氏名又は名称】長谷川香料株式会社
(72)【発明者】
【氏名】細貝 知弘
(72)【発明者】
【氏名】勝見 優子
(72)【発明者】
【氏名】飯泉 佳奈
(72)【発明者】
【氏名】森永 遼太
【テーマコード(参考)】
4B035
4B036
4B047
【Fターム(参考)】
4B035LC01
4B035LE17
4B035LG04
4B035LG12
4B035LG42
4B035LK01
4B035LP07
4B036LC01
4B036LE04
4B036LF13
4B036LH05
4B036LH13
4B036LH38
4B036LK01
4B036LP03
4B036LP12
4B047LB08
4B047LB09
4B047LF04
4B047LG05
4B047LG11
4B047LP02
(57)【要約】
【課題】揚げたて感を付与できる組成物を提供する。
【解決手段】分岐鎖飽和アルデヒド(ただし炭素数が4または5のものに限る。)のアセタール体を有効成分として含有する揚げたて感付与組成物。当該揚げたて感付与組成物において、さらに分岐鎖飽和アルデヒド(ただし炭素数が4または5のものに限る。)を含有する揚げたて感付与組成物。当該揚げたて感付与組成物を香味付与組成物に添加する工程を含む、香味付与組成物の揚げたて感効果付与方法。当該揚げたて感付与組成物を揚げ物またはその原材料に添加する工程を含む、揚げ物の揚げたて感付与方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐鎖飽和アルデヒド(ただし炭素数が4または5のものに限る。)のアセタール体を有効成分として含有する揚げたて感付与組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の揚げたて感付与組成物において、
さらに分岐鎖飽和アルデヒド(ただし炭素数が4または5のものに限る。)を含有する揚げたて感付与組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の揚げたて感付与組成物を香味付与組成物に添加する工程を含む、香味付与組成物の揚げたて感効果付与方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の揚げたて感付与組成物を揚げ物またはその原材料に添加する工程を含む、揚げ物の揚げたて感付与方法。
【請求項5】
請求項4に記載の揚げ物の揚げたて感付与方法において、
添加対象が揚げ物である場合には前記揚げ物の全質量を基準として、
添加対象が揚げ物の原材料である場合には前記原材料を用いて製造された揚げ物の全質量を基準として、
前記分岐鎖飽和アルデヒド(ただし炭素数が4または5のものに限る。)のアセタール体の濃度が0.01~1ppmとなるように前記揚げたて感付与組成物を添加する、
揚げ物の揚げたて感付与方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揚げ物の揚げたて感を付与乃至増強する揚げたて感付与組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フライドポテト、鶏のから揚げ、とんかつおよびエビフライ等の揚げ物は、家庭において、素揚げまたは衣付けおよび油揚げ(油調理、油ちょう)等のフライ調理により作られることが一般的であったが、近年、揚げ物は、調理済み惣菜または冷凍食品(以下「揚げ物製品」という。)として、コンビニエンスストアやスーパーなどで広く販売されている。揚げ物製品は、家庭で作られる揚げ物に比べ、フライ調理の手間がかからないため、一定のニーズがある。
【0003】
揚げ物製品においては、揚げ物に適した香味を付与するための組成物(以下「香味付与組成物」という。)を揚げ物製品に添加し、消費者への訴求効果を得るということが行われるようになった。
【0004】
揚げ物に使用可能な香味付与組成物として、例えば、特許文献1には、加熱調理香(例えば、焼成感、油ちょう感)を付与し、油脂感を増強する組成物として、(A1)4-メチルフェノール及び(A2)4-エチルフェノールからなる群より選択される少なくとも一つと、(B1)(E)-2-デセナール及び(B2)(E,E)-2,4-デカジエナールからなる群より選択される少なくとも一つと、(C1)1-ペンテン-3-オン、(C2)フルフラール及び(C3)4-ビニルグアヤコールからなる群より選択される少なくとも一つとを含有する組成物、および、(D1)(E)-2-オクテナール、(D2)2-アセチル-2-チアゾリン、(D3)1-オクテン-3-オン、(D4)2-フルフリルチオール及び(D5)フラネオールからなる群より選択される少なくとも一つをさらに含有する組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2018/181630号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
揚げ物製品は、以下の点において家庭で作られる揚げ物と相違する。具体的には、フライ調理された状態で販売される揚げ物は、調理後に20~30℃の常温でそのまま長時間保管されること、または60~80℃の保温ケース内で長時間保管されることが多く、フライ調理後、特に油揚げ後に短時間で喫食されるものではない。また、冷凍食品の場合は、フライ調理の手間を省くため、電子レンジ調理で喫食可能な製品が多く、この場合、フライ調理した揚げ物とは状態が大きく異なる。
【0007】
本発明者らの検討によれば、揚げ物において重要な要素として、フライ調理直後のサクっとした食感、カリっとした食感またはパリっとした食感等の食感だけではなく、「揚げたて感」という香気・香味があることがわかった。そのため本発明者らは、この揚げたて感に着目し、揚げ物製品に揚げたて感を付与できる組成物を探索した。
【0008】
発明者らの検討によれば、特許文献1に記載されている組成物は、揚げ物に香ばしさ、ロースト感、油脂様の調理感等を付与することができるものの、揚げたて感を付与することができないことが判明した。
【0009】
以上より、本発明の課題は、揚げたて感を付与できる組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、特定の分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体が揚げたて感を付与することを見出し、本願に係る発明を完成するに至った。
【0011】
かくして、本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。
【0012】
[1] 分岐鎖飽和アルデヒド(ただし炭素数が4または5のものに限る。)のアセタール体を有効成分として含有する揚げたて感付与組成物。
[2] [1]に記載の揚げたて感付与組成物において、さらに分岐鎖飽和アルデヒド(ただし炭素数が4または5のものに限る。)を含有する揚げたて感付与組成物。
[3] [1]または[2]に記載の揚げたて感付与組成物を香味付与組成物に添加する工程を含む、香味付与組成物の揚げたて感効果付与方法。
[4] [1]または[2]に記載の揚げたて感付与組成物を揚げ物またはその原材料に添加する工程を含む、揚げ物の揚げたて感付与方法。
[5] [4]に記載の揚げ物の揚げたて感付与方法において、添加対象が揚げ物である場合には前記揚げ物の全質量を基準として、添加対象が揚げ物の原材料である場合には前記原材料を用いて製造された揚げ物の全質量を基準として、前記分岐鎖飽和アルデヒド(ただし炭素数が4または5のものに限る。)のアセタール体の濃度が0.01~1ppmとなるように前記揚げたて感付与組成物を添加する、揚げ物の揚げたて感付与方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、揚げたて感を付与できる組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態について、詳細に説明する。本明細書において、「~」は下限値および上限値を含む範囲を意味し、「濃度(ppm,ppb)」、「%」は特に断りのない限りそれぞれ「質量濃度」、「質量パーセント濃度」を表すものとする。また、本明細書において、「揚げたて感」とは、揚げ物をフライ調理した直後のサクッとした食感、カリッとした食感またはパリッとした食感を想起させる香味、軽い香ばしさ、甘さ、ジューシー感等の香味を意味する。「揚げたて感付与(揚げたて感を付与する)」とは、揚げたて感を新たに加える、および/または、揚げたて感を増強することを含み、例えば、揚げたて感を付与乃至増強した結果、揚げたて感が改善されるものを含んでいる。本明細書において、「香味」とは、香気(香り)によって変化し得る1種または複数種の感覚、代表的には嗅覚および/または味覚を含む感覚を意味する。さらには、揚げたて感付与の結果、嗅覚および/または味覚以外の感覚、例えば、冷感、温感、質感(のど越し、固さ、粘度など、テクスチャともいう)、しびれや辛さなどの刺激感などを増強、抑制、または改善するものであってもよい。また、本明細書において、飲食品の香味を風味と呼ぶこともある。また、本明細書において、「添加」とは、ある対象に噴霧、滴下などによって単に加えること、およびある対象と混ぜ合わせることの、少なくとも1つを含む。また、本明細書において、例えば「本件化合物または本件揚げたて感付与組成物を含有する」という場合は、特に断りがない限り、本件化合物または本件揚げたて感付与組成物のいずれか1つを含有する場合だけでなく、本件化合物および本件揚げたて感付与組成物の両方を含有する場合も含むものとする。
【0015】
(揚げたて感付与組成物)
本発明の一実施の形態に係る揚げたて感付与組成物(以下「本件揚げたて感付与組成物」という。)は、分岐鎖飽和アルデヒド(ただし炭素数が4または5のものに限る。)のアセタール体を有効成分として含有する。以下、単に「分岐鎖飽和アルデヒド」、「分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体」という場合は、それぞれ「炭素数が4または5の分岐鎖飽和アルデヒド」、「炭素数が4または5の分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体」を意味する。
【0016】
本発明者らは、炭素数が4または5の分岐鎖飽和アルデヒドが各種揚げ物に揚げたて感、すなわち、揚げ物をフライ調理した直後のサクッとした食感、カリッとした食感またはパリッとした食感を想起させる香味、軽い香ばしさ、甘さ、ジューシー感等の香味を付与することができることを見出している。しかしながら、前述したように、長時間保管される揚げ物製品に対して分岐鎖飽和アルデヒドを使用すると、長時間保管されている間に分岐鎖飽和アルデヒドが蒸発してしまうため、揚げたて感付与の効果は低減してしまう。
【0017】
以上の課題を解決するために、本発明者らは炭素数が4または5の分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体を有効成分とする揚げたて感付与組成物に思い至った。アセタール体は、アルデヒドとアルコールとを脱水縮合することで得られる化合物である。分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体は、それ自体の香味が揚げ物に影響を与えることなく、分岐鎖飽和アルデヒドを徐放するという特徴がある。そのため、後述の実施例に示すように、分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体を有効成分とする本件揚げたて感付与組成物を各種揚げ物に使用することで、分岐鎖飽和アルデヒドが徐放され、その揚げ物に揚げたて感、すなわち、揚げ物をフライ調理した直後のサクッとした食感、カリッとした食感またはパリッとした食感を想起させる香味、軽い香ばしさ、甘さ、ジューシー感等の香味を長時間に亘って付与することができる。特に、本件揚げたて感付与組成物は、前述した揚げ物製品に好適に使用でき、例えば本件揚げたて感付与組成物を使用した揚げ物であれば、フライ調理後に保温ケースで長時間保管された場合でも揚げたて感が保持されるという効果を奏する。
【0018】
分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体の原料となる分岐鎖飽和アルデヒドは、炭素数が4または5の分岐鎖飽和アルデヒドであり、具体的に書き下すと、炭素数が4のものではイソブチルアルデヒド(別名:2-メチルプロパナール)、炭素数が5のものでは2-メチルブチルアルデヒド(別名:2-メチルブタナール)、イソバレルアルデヒド(別名:3-メチルブタナール、3-メチルブチルアルデヒド)、ピバルアルデヒド(別名:2,2-ジメチルプロパナール)となる。
【0019】
なお、本発明者らは、炭素数が4~6の直鎖飽和アルデヒドおよび炭素数が6の分岐鎖飽和アルデヒドはグリーン感が強く、炭素数が7以上の直鎖および分岐鎖飽和アルデヒドは重たい油脂感が強く、炭素数が3以下の飽和アルデヒドは発酵感が強く、それぞれ揚げたて感付与効果を奏さないことを確認している。したがって、炭素数が4~6の直鎖飽和アルデヒドのアセタール体、炭素数が6の分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体、炭素数が7以上の直鎖もしくは分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体、または炭素数が3以下の飽和アルデヒドのアセタール体は、本件揚げたて感付与組成物の有効成分としては不適である。
【0020】
また、分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体において、分岐鎖飽和アルデヒドを徐放して揚げたて感付与効果を奏するという観点からは、その原料となるアルコールの種類は特に限定されるものではないが、当該アセタール体の加水分解で生じるアルコールが与える揚げ物の香味への影響ができるだけ小さいものが好ましい。分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体の原料となるアルコールの好適な例としては、1価アルコールでは、エタノール、3-メチル-1-ブタノール(別名:イソアミルアルコール、イソペンチルアルコール)、ベンジルアルコール、2価以上の多価アルコールでは、1,2-プロパンジオール(別名:プロピレングリコール)、1,2,3-プロパントリオール(別名:グリセリン)が挙げられる。
【0021】
以上より、本件揚げたて感付与組成物の有効成分として好ましい分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体の具体例としては、イソバレルアルデヒド=ジエチル=アセタール(別名:1,1-ジエトキシ-3-メチルブタン)、イソバレルアルデヒド=プロピレングリコール=アセタール(別名:4-メチル-2-(2-メチルプロピル)-1,3-ジオキソラン)、イソバレルアルデヒド=ジベンジル=アセタール(別名:1,1-ビス(ベンジルオキシ)-3-メチルブタン)、イソバレルアルデヒド=グリセリン=アセタール(別名:[2-(2-メチルプロピル)-1,3-ジオキソラン-4-イル]メタノール)、イソバレルアルデヒド=ジイソアミル=アセタール(別名:1,1-ビス(3-メチルブトキシ)-3-メチルブタン)、イソバレルアルデヒド=エチル=イソアミル=アセタール(別名:1-エトキシ-3-メチル-1-(3-メチルブトキシ)ブタン)、イソバレルアルデヒド=ベンジル=イソアミル=アセタール(別名:1-ベンジルオキシ-3-メチル-1-(3-メチルブトキシ)ブタン)、イソバレルアルデヒド=エチル=ベンジル=アセタール(別名:1-ベンジルオキシ-1-エトキシ-3-メチルブタン)、イソブチルアルデヒド=ジエチル=アセタール(別名:1,1-ジエトキシ-2-メチルプロパン)、2-メチルブチルアルデヒド=ジエチル=アセタール(別名:1,1-ジエトキシ-2-メチルブタン)、イソブチルアルデヒド=エチル=イソアミル=アセタール(別名:1-エトキシ-2-メチル-1-(3-メチルブトキシ)プロパン)、イソブチルアルデヒド=ジイソアミル=アセタール(別名:1,1-ビス(3-メチルブトキシ)-2-メチルプロパン)が挙げられる。
【0022】
なお、本件揚げたて感付与組成物は、揚げ種(具材)、衣、衣液、バッターミックス等の揚げ物の原材料のいずれかに添加して使用することが好ましいが、冷凍食品のような揚げ物製品の場合には、フライ調理後の揚げ物に添加して使用してもよい。
【0023】
また、本件揚げたて感付与組成物は、各種揚げ物に使用することでその食品の蒸れ臭、油の劣化臭、焦げ臭、ベタツキ感、肉臭さなどをマスキングすることができる。したがって、本件揚げたて感付与組成物は、揚げ物の不快臭マスキング組成物としても使用することができる。
【0024】
分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体は、当業者によってなし得る任意の方法、例えば、試薬として購入するか、分岐鎖飽和アルデヒドとアルコールとを酸性条件下で反応させるなど定法に従い合成することにより入手できる。入手した分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体は、さらに必要に応じてカラムクロマトグラフィまたは減圧蒸留などの手段を用いて精製してもよい。
【0025】
本件揚げたて感付与組成物は、分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体のみで構成してもよいし、分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体を所定量含んでいれば溶剤等その他の成分を含んでいてもよい。そして、分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体は、前述した化合物のうち1種類のみで構成してもよいし、前述した化合物のうち2種類以上を組み合わせて構成してもよい。本件揚げたて感付与組成物中の分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体の濃度は、揚げたて感付与組成物の添加対象に応じて任意に決定できる。特に、分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体から徐放される分岐鎖飽和アルデヒドの量は、例えば揚げ物の保管条件によって異なるため、最適な条件となるよう、分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体の濃度を適宜調整するとよい。分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体の濃度の例として、揚げたて感付与組成物の全質量に対して、0.1ppm~100%、好ましくは10ppm~1%の範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を0.1ppm、1ppm、10ppm、100ppm、0.1%、1%のいずれかとし、上限値を100%、10%、1%、0.1%、100ppm、10ppm、1ppmのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせによる範囲内とすることができるが、これらに限定されない。
【0026】
本件揚げたて感付与組成物の添加対象としては、香味付与組成物または食品(揚げ物またはその原材料)が挙げられる。各添加対象の詳細については後述する。
【0027】
本件揚げたて感付与組成物は、それ自体を食品(揚げ物またはその原材料)に添加してもよいし、1種または2種以上の水溶性・油溶性香料、乳化香料組成物、任意の香料化合物、天然精油(例えば、前掲の「特許庁公報、周知・慣用技術集(香料)第II部食品香料」、「日本における食品香料化合物の使用実態調査」、および「合成香料 化学と商品知識」に記載される香料化合物)から選択される1種以上と併せて食品(揚げ物またはその原材料)に添加してもよい。
【0028】
本発明の他の実施の形態に係る揚げたて感付与組成物は、本件揚げたて感付与組成物において、炭素数が4または5の分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体に加え、炭素数が4または5の分岐鎖飽和アルデヒドを含むことが好ましい。分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体と分岐鎖飽和アルデヒドとを併用した本件揚げたて感付与組成物を各種揚げ物に使用することで、その揚げ物の調理直後から比較的短時間(30分~1時間程度)経過するまでに喫食される場合における揚げたて感付与効果を分岐鎖飽和アルデヒドが、その揚げ物の調理から比較的長時間(1時間~6時間程度)経過した後に喫食される場合における揚げたて感付与効果を分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体(いいかえれば当該アセタール体から徐放された分岐鎖飽和アルデヒド)がそれぞれ奏する。その結果、揚げ物が喫食されるタイミングによらず、その揚げ物に揚げたて感を付与することができる。
【0029】
本件揚げたて感付与組成物において、分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体と併用する分岐鎖飽和アルデヒドは、炭素数が4または5の分岐鎖飽和アルデヒドであり、具体的に書き下すと、炭素数が4のものではイソブチルアルデヒド(別名:2-メチルプロパナール)、炭素数が5のものでは2-メチルブチルアルデヒド(別名:2-メチルブタナール)、イソバレルアルデヒド(別名:3-メチルブタナール、3-メチルブチルアルデヒド)、ピバルアルデヒド(別名:2,2-ジメチルプロパナール)となる。
【0030】
分岐鎖飽和アルデヒドは、当業者によってなし得る任意の方法、例えば、試薬として購入するか、アルコールの酸化またはカルボン酸の還元など定法に従い合成することにより入手できる。入手した分岐鎖飽和アルデヒドは、さらに必要に応じてカラムクロマトグラフィまたは減圧蒸留などの手段を用いて精製してもよい。
【0031】
本件揚げたて感付与組成物は、分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体および分岐鎖飽和アルデヒドのみで構成してもよいし、分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体および分岐鎖飽和アルデヒドを所定量含んでいれば溶剤等その他の成分を含んでいてもよい。そして、分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体と併用する分岐鎖飽和アルデヒドは、前述した化合物のうち1種類のみで構成してもよいし、前述した化合物のうち2種類以上を組み合わせて構成してもよい。さらには、添加する分岐鎖飽和アルデヒドと、アセタール体から徐放される分岐鎖飽和アルデヒドとは、同じ種類でもよいし、異なる種類でもよい。これらを同じ種類にすれば、揚げたての状態から時間を経過した状態まで一定の揚げたて感を維持でき、一方、これらを異なる種類とすれば時間を経過した状態における揚げ物製品の香味に適した揚げたて感を適宜付与することができる。
【0032】
本件揚げたて感付与組成物中の分岐鎖飽和アルデヒドの濃度は、揚げたて感付与組成物の添加対象に応じて任意に決定できる。分岐鎖飽和アルデヒドの濃度の例として、揚げたて感付与組成物の全質量に対して、0.01ppm~90%、好ましくは1ppm~1%の範囲内が挙げられる。より具体的には、下限値を0.01ppm、0.1ppm、1ppm、10ppm、100ppm、0.1%、1%、10%、50%のいずれかとし、上限値を90%、50%、10%、1%、0.1%、100ppm、10ppm、1ppm、0.1ppmのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせによる範囲内とすることができるが、これらに限定されない。
【0033】
本件揚げたて感付与組成物中の分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体と分岐鎖飽和アルデヒドとの濃度比についても、揚げたて感付与組成物の添加対象に応じて任意に決定できる。分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体と分岐鎖飽和アルデヒドとの濃度比の例として、分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体を1として分岐鎖飽和アルデヒドを0.01~1の割合とすることが好ましい。これにより、長時間に亘って揚げたて感を持続させることができる。特に、揚げ物の調理から比較的長時間(1時間~6時間程度)経過した後に喫食される揚げ物に使用する場合には、分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体を1として分岐鎖飽和アルデヒドを0.01~0.1の割合とすることがより好ましく、揚げ物の調理直後から比較的短時間(30分~1時間程度)経過するまでに喫食される揚げ物に使用する場合には、分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体を1として分岐鎖飽和アルデヒドを0.1~1の割合とすることがより好ましい。
【0034】
(香味付与組成物の揚げたて感効果付与方法)
本発明の一実施の形態に係る香味付与組成物の揚げたて感効果付与方法は、本件揚げたて感付与組成物を香味付与組成物に添加する工程を含む。本件揚げたて感付与組成物を香味付与組成物に有効量添加することで、添加対象の香味付与組成物の揚げたて感効果を付与することができる。
【0035】
当該方法において、添加対象の香味付与組成物に対する本件揚げたて感付与組成物の添加量は、有効成分として含まれる分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体(および必要に応じて併用される分岐鎖飽和アルデヒド)によって揚げたて感効果が付与される有効量であればよく、添加対象の香味付与組成物の種類や形態に応じて任意に設定することができる。濃度の具体例は、前掲「揚げたて感付与組成物」の項目で説明した通りである。
【0036】
当該方法において、本件揚げたて感付与組成物を香味付与組成物に添加する方法は特に限定されない。また、本件揚げたて感付与組成物を香味付与組成物に添加する時期(タイミング)についても特に限定されない。
【0037】
(香味付与組成物)
以下、本件揚げたて感付与組成物の添加対象である香味付与組成物について説明する。香味付与組成物は、各種物品に添加することで優れた香味付与効果を奏するものである。香味付与組成物の添加対象の物品としては特に限定されないが、他の香味付与組成物または食品(揚げ物またはその原材料)を例示できる。香味付与組成物としては、香料組成物、香味改善剤、香味変調剤、呈味付与剤、呈味改善剤および呈味変調剤を例示できる。
【0038】
本件揚げたて感付与組成物は、香味付与組成物に添加し、揚げたて感効果を付与することができる。すなわち、本件揚げたて感付与組成物を添加した香味付与組成物は、揚げたて感付与効果を有する香味付与組成物として使用することができる。
【0039】
また、本件揚げたて感付与組成物を、本件化合物と香味付与可能な化合物(例えば香料化合物)とで構成することにより、本件揚げたて感付与組成物を、揚げたて感付与効果を有する香味付与組成物として使用することもできる。
【0040】
香味付与組成物の一態様である香料組成物の具体例としては、飲食品用香料組成物(フレーバー組成物ともいう)が挙げられる。添加対象となる物品の例としては、前述のように、食品(揚げ物またはその原材料)が挙げられる。香料組成物の形態は特に限定されず、水溶性香料組成物、油溶性香料組成物、乳化香料組成物、粉末香料組成物が例示できる。
【0041】
香料組成物は、以下に例示する化合物または成分を含有し得る。その例として、各種類の香料化合物または香料組成物、油溶性色素類、ビタミン類、機能性物質、魚肉エキス類、畜肉エキス類、植物エキス類、酵母エキス類、動植物タンパク質類、動植物蛋白分解物類、澱粉、デキストリン、糖類、アミノ酸類、核酸類、有機酸類、溶剤などを例示することができる。例えば、「特許庁公報、周知・慣用技術集(香料)第II部食品用香料、平成12年1月14日発行」、「日本における食品香料化合物の使用実態調査」(平成12年度厚生科学研究報告書、日本香料工業会、平成13年3月発行)、および「合成香料 化学と商品知識」(2016年12月20日増補新版発行、合成香料編集委員会編集、化学工業日報社)に記載されている天然精油、天然香料、合成香料などを挙げることができる。
【0042】
合成香料化合物の具体例として、炭化水素化合物としては、α-ピネン、β-ピネン、γ-テルピネン、ミルセン、カンフェン、リモネンなどのモノテルペン、バレンセン、セドレン、カリオフィレン、ロンギフォレンなどのセスキテルペン、1,3,5-ウンデカトリエンなどが挙げられる。
【0043】
アルコール化合物としては、ブタノール、ペンタノール、3-オクタノール、ヘキサノールなどの飽和アルコール、(Z)-3-ヘキセン-1-オール、プレノール、2,6-ノナジエノールなどの不飽和アルコール、リナロール、ゲラニオール、シトロネロール、テトラヒドロミルセノール、ファルネソール、ネロリドール、セドロール、α-ターピネオール、テルピネン-4-オール、ボルネオールなどのテルペンアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、シンナミルアルコールなどの芳香族アルコールが挙げられる。
【0044】
アルデヒド化合物としては、アセトアルデヒド、ヘキサナール、オクタナール、デカナールなどの飽和アルデヒド、(E)-2-ヘキセナール、2,4-オクタジエナールなどの不飽和アルデヒド、シトロネラール、ヒドロキシシトロネラール、シトラール、ミルテナール、ペリルアルデヒドなどのテルペンアルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナミルアルデヒド、バニリン、エチルバニリン、ヘリオトロピン、p-トリルアルデヒドなどの芳香族アルデヒドが挙げられる。
【0045】
ケトン化合物としては、2-ヘプタノン、2-ウンデカノン、1-オクテン-3-オン、アセトイン、6-メチル-5-ヘプテン-2-オン(メチルヘプテノン)などの飽和および不飽和ケトン、ジアセチル、2,3-ペンタンジオン、マルトール、エチルマルトール、シクロテン、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンなどのジケトンおよびヒドロキシケトン、カルボン、メントン、ヌートカトンなどのテルペンケトン、α-イオノン、β-イオノン、β-ダマセノンなどのテルペン分解物に由来するケトン、ラズベリーケトンなどの芳香族ケトンが挙げられる。
【0046】
フランまたはエーテル化合物としては、フルフリルアルコール、フルフラール、ローズオキシド、リナロールオキシド、メントフラン、テアスピラン、エストラゴール、オイゲノール、1,8-シネオールなどが挙げられる。
【0047】
エステル化合物としては、酢酸エチル、酢酸イソアミル、酢酸オクチル、酪酸エチル、イソ酪酸エチル、酪酸イソアミル、2-メチル酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、イソ酪酸2-メチルブチル、ヘキサン酸エチル、ヘキサン酸アリル、ヘプタン酸エチル、オクタン酸エチル、イソ吉草酸イソアミル、ノナン酸エチルなどの脂肪族エステル、酢酸リナリル、酢酸ゲラニル、酢酸ラバンジュリル、酢酸テルピニル、酢酸ネリルなどのテルペンアルコールエステル、酢酸ベンジル、サリチル酸メチル、ケイ皮酸メチル、プロピオン酸シンナミル、安息香酸エチル、イソ吉草酸シンナミル、3-メチル-2-フェニルグリシド酸エチルなどの芳香族エステルが挙げられる。
【0048】
ラクトン化合物としては、γ-デカラクトン、γ-ドデカラクトン、δ-デカラクトン、δ-ドデカラクトンなどの飽和ラクトン、7-デセン-4-オリド、2-デセン-5-オリドなどの不飽和ラクトンが挙げられる。
【0049】
酸化合物としては、酢酸、酪酸、イソ吉草酸、ヘキサン酸、オクタン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの飽和・不飽和脂肪酸が挙げられる。
【0050】
含窒素化合物としては、インドール、スカトール、ピリジン、アルキル置換ピラジン、アントラニル酸メチル、トリメチルピラジンなどが挙げられる。
【0051】
含硫化合物としては、メタンチオール、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、アリルイソチオシアネート、3-メチル-2-ブテン-1-チオール、3-メチル-2-ブタンチオール、3-メチル-1-ブタンチオール、2-メチル-1-ブタンチオール、3-メルカプトヘキサノール、4-メルカプト-4-メチル-2-ペンタノン、酢酸3-メルカプトヘキシル、p-メンタ-8-チオール-3-オンおよびフルフリルメルカプタンなどが挙げられる。
【0052】
天然精油としては、スイートオレンジ、ビターオレンジ、プチグレン、レモン、ベルガモット、マンダリン、ネロリ、ペパーミント、スペアミント、ラベンダー、カモミール、ローズマリー、ユーカリ、セージ、バジル、ローズ、ヒヤシンス、ライラック、ゼラニウム、ジャスミン、イランイラン、アニス、クローブ、ジンジャー、ナツメグ、カルダモン、スギ、ヒノキ、ベチバー、パチョリ、ラブダナムなどが挙げられる。
【0053】
各種動植物エキスとしては、ハーブまたはスパイスの抽出物、コーヒー、緑茶、紅茶、またはウーロン茶の抽出物や、乳または乳加工品およびこれらのリパーゼまたはプロテアーゼなどの各種酵素分解物などが挙げられる。
【0054】
香料組成物は、香味付与組成物を公知の方法によって適切な溶媒や分散媒に添加して調製することができる。
【0055】
香料組成物の形態としては、香味付与組成物またはその他成分を水溶性または油溶性の溶媒に溶解した溶液、乳化製剤、粉末製剤、またはその他固体製剤(固形脂など)などが好ましい。
【0056】
水溶性溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、2-プロパノール、メチルエチルケトン、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどを例示することができる。これらのうち、飲食品への使用の観点から、エタノールまたはグリセリンが特に好ましい。油溶性溶媒としては、植物性油脂、動物性油脂、精製油脂類(例えば、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)などの加工油脂や、トリアセチン、トリプロピオニンなどの短鎖脂肪酸トリグリセリドが挙げられる。)、各種精油、トリエチルシトレートなどを例示することができる。これらのうち、飲食品の香味への影響をできるだけ少なくするという観点から、MCTが特に好ましい。
【0057】
また、乳化製剤とするためには、香味付与組成物を水溶性溶媒および乳化剤と共に乳化して得ることができる。香味付与組成物の乳化方法としては特に制限されるものではなく、従来から飲食品などに用いられている各種類の乳化剤、例えば、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸トリグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、加工でん粉、ソルビタン脂肪酸エステル、キラヤ抽出物、アラビアガム、トラガントガム、グアーガム、カラヤガム、キサンタンガム、ペクチン、アルギン酸およびその塩類、カラギーナン、ゼラチン、カゼインキラヤサポニン、またはカゼインナトリウムなどの乳化剤を使用してホモミキサー、コロイドミル、回転円盤型ホモジナイザー、高圧ホモジナイザーなどを用いて乳化処理することにより安定性の優れた乳化液を得ることができる。これら乳化剤の使用量は厳密に制限されるものではなく、使用する乳化剤の種類などに応じて広い範囲にわたり変えることができる。また、乳化状態を安定させるため、係る乳化液には水の他に、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マルチトール、ショ糖、グルコース、トレハロース、糖液、還元水飴などの多価アルコール類の1種類または2種類以上の混合物を添加することができる。
【0058】
また、かくして得られた乳化液は、所望ならば乾燥することにより粉末製剤とすることができる。粉末化に際して、さらに必要に応じて、アラビアガム、トレハロース、デキストリン、砂糖、乳糖、ブドウ糖、水飴、還元水飴などの糖類を適宜添加することもできる。これらの使用量は粉末製剤に望まれる特性などに応じて適宜に選択することができる。
【0059】
香料組成物は、上記以外に、必要に応じて、香料組成物において通常使用されている成分を含有していてもよい。例えば、水、エタノールなどの溶剤や、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ヘキシルグリコール、ベンジルベンゾエート、トリエチルシトレート、ジエチルフタレート、ハーコリン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、中鎖脂肪酸ジグリセライドなどの香料保留剤を含有することができる。
【0060】
(揚げ物の揚げたて感付与方法)
本発明の一実施の形態に係る揚げ物の揚げたて感効果付与方法(以下「本件揚げたて感効果付与方法」という。)は、本件揚げたて感付与組成物を食品(揚げ物またはその原材料)に添加する工程を含む。
【0061】
本件揚げたて感付与組成物を食品(揚げ物またはその原材料)に有効量添加することで、添加対象の揚げ物またはその原材料を用いて製造された揚げ物に揚げたて感を付与することができる。
【0062】
当該方法において、添加対象の食品(揚げ物またはその原材料)に対する本件揚げたて感付与組成物の添加量は、有効成分として含まれる分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体(および必要に応じて併用される分岐鎖飽和アルデヒド)によって揚げたて感が付与される有効量であればよく、添加対象の食品の種類や形態に応じて任意に設定することができる。
【0063】
好ましい分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体の濃度として、添加対象が揚げ物である場合にはその揚げ物の全質量を基準として、添加対象が揚げ物の原材料である場合にはその原材料を用いて製造された揚げ物の全質量を基準として、少なくとも0.001ppm(1ppb、1000ppt)~100ppmの範囲内で揚げたて感を付与でき、0.01ppm(10ppb)~1ppm(1000ppb)の範囲内で揚げたて感をより効果的に付与できる。より具体的には、下限値を1ppb、10ppb、100ppb、1ppm、10ppmのいずれかとし、上限値を100ppm、10ppm、1ppm、100ppb、10ppbのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせによる範囲内とすることができるが、これらに限定されない。
【0064】
また、分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体と分岐鎖飽和アルデヒドとを併用する場合において、好ましい分岐鎖飽和アルデヒドの濃度として、添加対象が揚げ物である場合にはその揚げ物の全質量を基準として、添加対象が揚げ物の原材料である場合にはその原材料を用いて製造された揚げ物の全質量を基準として、少なくとも0.0001ppm(0.1ppb、100ppt)~10ppmの範囲内で揚げたて感を付与でき、0.001ppm(1ppb)~0.1ppm(100ppb)の範囲内で揚げたて感をより効果的に付与できる。より具体的には、下限値を100ppt、1ppb、10ppb、100ppb、1ppmのいずれかとし、上限値を10ppm、1ppm、100ppb、10ppb、1ppbのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせによる範囲内とすることができるが、これらに限定されない。
【0065】
当該方法において、本件揚げたて感付与組成物を食品(揚げ物またはその原材料)に添加する方法は特に限定されない。また、本件揚げたて感付与組成物を食品(揚げ物またはその原材料)に添加する時期(タイミング)についても特に限定されない。
【0066】
なお、本件揚げたて感付与組成物を揚げ物の原材料に添加して使用する場合には、フライ調理による分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体(および必要に応じて併用される分岐鎖飽和アルデヒド)の損失を考慮して、前述した好ましい濃度よりも多く添加してもよい。同様に、本件揚げたて感付与組成物を冷凍食品のような揚げ物製品に添加して使用する場合にも、レンジ調理による分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体(および必要に応じて併用される分岐鎖飽和アルデヒド)の損失を考慮して、前述した好ましい濃度よりも多く添加してもよい。本発明者らの検討によれば、油揚げ後の分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体(および必要に応じて併用される分岐鎖飽和アルデヒド)の残存量は、肉の調味液(鶏のから揚げの場合)または中種(牛肉コロッケの場合)に本件揚げたて感付与組成物を添加する方が、鶏のから揚げ粉を含む衣液(バッター液、鶏のから揚げの場合)またはバッター粉を含む衣液(バッター液、牛肉コロッケの場合)に本件揚げたて感付与組成物を添加する場合に比べて多いことが確認できた。したがって、本件揚げたて感付与組成物は、揚げ物の衣よりも内部に添加して使用すると少量で効果的に使用できる。
【0067】
(揚げ物の製造方法)
本発明の一実施の形態に係る揚げ物の製造方法は、本件揚げたて感付与組成物を揚げ物またはその原材料に添加する工程を含むものである。
【0068】
本件揚げたて感付与組成物を揚げ物またはその原材料に有効量添加して、(製品としての)揚げ物を製造することで、製造された揚げ物に揚げたて感を付与することができる。
【0069】
当該製造方法の例としては、本件揚げたて感付与組成物を公知の衣液成分、すなわち小麦粉、澱粉、タンパク質、鶏卵、水等に添加して均質化し、これを衣液として揚げ種(具材)に付着させ油揚げする方法や、本件揚げたて感付与組成物を公知の調味液成分、すなわち塩、醤油、砂糖、料理酒、水等に添加して均質化し、これを調味液として揚げ種(具材)に付着させた後に公知の衣液をさらに付着させ油揚げする方法などが挙げられる。
【0070】
当該製造方法において、製造される揚げ物に対する本件揚げたて感付与組成物の添加量は、有効成分として含まれる分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体(および必要に応じて併用される分岐鎖飽和アルデヒド)によって揚げたて感が付与される有効量であればよく、製造される揚げ物の種類や形態に応じて任意に設定することができる。濃度の具体例は、前掲「揚げ物の揚げたて感付与方法」の項目で説明した通りである。
【0071】
当該製造方法において、本件揚げたて感付与組成物を揚げ物またはその原材料に添加する方法は特に限定されない。また、本件揚げたて感付与組成物を揚げ物またはその原材料に添加する時期(タイミング)についても特に限定されない。添加方法の具体例は、前掲「揚げ物の揚げたて感付与方法」の項目で説明した通りである。
【0072】
(食品)
以下、本件揚げたて感付与組成物の添加対象である食品(揚げ物またはその原材料)について説明する。
【0073】
揚げ物の例として、鶏のから揚げ、フライドチキン、とんかつ、フライドポテト、牛肉コロッケ、天ぷら、揚げたこ焼き、揚げ餃子、アメリカンドッグ、チーズハットグ、ポテトチップス、揚げ餅、ドーナツ、ゴマ団子などが挙げられる。前述したように、本件揚げたて感付与組成物の好ましい添加対象の揚げ物として、揚げ物製品、すなわち、フライ調理後に保温ケースで長時間保管される揚げ物や電子レンジ調理される冷凍食品などが挙げられる。
【0074】
揚げ物の原材料としては、揚げ種(具材)、調味液、衣、衣液、揚げ油等が挙げられる。揚げ種(具材)としては、特に限定されないが畜肉類、魚介類、野菜類が挙げられる。調味液としては、酒、砂糖、塩、酢、醤油、味噌等の各種調味料・香辛料、水および油脂類の混合物が挙げられる。衣としては、小麦粉、片栗粉、パン粉、道明寺粉、春雨、ごま、ナッツ類が挙げられる。衣液の例としては、衣液用粉(バッター粉、バッターミックス等ともいう。)および水を混合させたもの、必要に応じて卵、その他の調味料・香辛料を均質に混合し、溶解、乳化ないしは分散させたものが挙げられる。衣液用粉は、衣液に用いられる原材料のうちの粉体成分すなわち小麦粉、澱粉、タンパク質等により構成される混合粉体物である。
【0075】
揚げ種(具材)のより具体的な例として、鶏肉、鴨肉、豚肉、牛肉、羊肉、馬肉などの各種畜肉風味;マグロなどの赤身魚、サバ、タイ、サケ、アジなどの白身魚、アユ、マス、コイなどの淡水魚、サザエ、ハマグリ、アサリ、シジミなどの貝類、エビ、カニなどの各種甲殻類、ワカメ、昆布などの各種海藻類、などの各種魚介や海藻風味;米、大麦、小麦、麦芽などの麦類などの各種穀物風味;牛脂、鶏油、ラードなどの畜肉の油脂や各種魚類の油などの各種油脂風味;シナモン、カモミール、カルダモン、キャラウェイ、クミン、クローブ、コショウ、コリアンダー、サンショウ、シソ、ショウガ、スターアニス、タイム、トウガラシ、ナツメグ、バジル、マジョラム、ローズマリー、ローレル、ガーリック、ワサビなどの各種スパイスまたはハーブ風味;アーモンド、カシューナッツ、クルミなどの各種ナッツ風味;ワイン、ブランデー、ウイスキー、ラム、ジン、リキュール、日本酒、焼酎、ビールなどの各種酒類風味;タマネギ、セロリ、ニンジン、トマト、キュウリなどの野菜風味;レモン、オレンジ、グレープフルーツ、ライム、マンダリン、みかん、カボス、スダチ、ハッサク、イヨカン、ユズ、シークワーサー、金柑などの各種柑橘風味;ストロベリー、ブルーベリー、ラズベリー、アップル、チェリー、プラム、アプリコット、ピーチ、パイナップル、バナナ、メロン、マンゴー、パパイヤ、キウイ、ペアー、グレープ、マスカット、巨峰などの各種フルーツ風味;ミルク、ヨーグルト、バターなどの乳風味;バニラ風味;緑茶、紅茶、ウーロン茶、ハーブティーなどの各種茶風味;コーヒー風味;コーラ風味;カカオ風味;ココア風味;スペアミント、ペパーミントなどの各種ミント風味;などの風味の1以上を有する食品が挙げられる。すなわち、上記風味の1種類のみを感じさせる食品でもよく、2種類以上の風味を感じさせる食品でもよく、その複数種類の風味が同類であっても異類であってもよい。
【0076】
より具体的な食品例としては、せんべい、あられ、おこし、餅類、饅頭、あん類、ビスケット、クラッカー、ポテトチップス、クッキー、パイ、プリン、ワッフル、スポンジケーキ、ドーナツ、チョコレート、キャラメル、ピーナッツペーストまたはその他のペースト類、などの菓子類;パン、うどん、ラーメン、中華麺、五目飯、チャーハン、ピラフ、餃子の皮、シューマイの皮、お好み焼き、たこ焼き、などのパン類、麺類、ご飯類、その他穀類;サバ、イワシ、サンマ、サケ、マグロ、カツオ、クジラ、カレイ、イカナゴ、アユなどの魚類、スルメイカ、ヤリイカ、紋甲イカ、ホタルイカなどのイカ類、マダコ、イイダコなどのタコ類、クルマエビ、ボタンエビ、イセエビ、ブラックタイガーなどのエビ類、タラバガニ、ズワイガニ、ワタリガニ、ケガニなどのカニ類、アサリ、ハマグリ、ホタテ、カキ、ムール貝などの貝類、などの魚介類;缶詰、煮魚、佃煮、すり身、水産練り製品(ちくわ、蒲鉾、あげ蒲鉾、カニ足蒲鉾など)などの魚介類の加工飲食物類;鶏肉、豚肉、牛肉、羊肉、馬肉などの畜肉類;ハンバーグ、餃子、肉団子、角煮などの畜肉を用いた加工飲食物類;卓上塩、調味塩、醤油、粉末醤油、味噌、粉末味噌、もろみ、ひしお、ふりかけ、お茶漬けの素、マーガリン、マヨネーズ、ドレッシング、食酢、三杯酢、粉末すし酢、中華の素、天つゆ、めんつゆ(昆布だしまたは鰹だしなど)、ソース(中濃ソース、トマトソースなど)、ケチャップ、焼肉のタレ、カレールー、シチューの素、スープの素、だしの素(昆布だしまたは鰹だしなど)、複合調味料、新みりん、唐揚げ粉・たこ焼き粉などのミックス粉、などの調味料類、これらの調味料類が添加された動物性または植物性だし風味飲食品;チーズ、ヨーグルト、バターなどの乳製品;ビール酵母、パン酵母などの各種酵母、乳酸菌など各種微生物発酵品;野菜の煮物、筑前煮、おでん、鍋物などの煮物類;持ち帰り弁当の具や惣菜類;リンゴ、ぶどう、柑橘類(グレープフルーツ、オレンジ、レモンなど)などの果物類;トマト、ピーマン、セロリ、ウリ、ニガウリ、ニンジン、ジャガイモ、アスパラガス、ワラビ、ゼンマイなどの野菜類や、これら野菜類を含む野菜スープなどの野菜含有食品;生薬やハーブを含む食品;ワイン、焼酎、泡盛、清酒、ビール、チューハイ、カクテルドリンク、発泡酒、果実酒、薬味酒その他醸造酒(発泡性)またはリキュール(発泡性)など、またはこれらを含む調味料としてのアルコール飲料類;などを挙げることができる。
【実施例0077】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0078】
[実施例1]鶏のから揚げ(保温ケース保管)
本件揚げたて感付与組成物を添加した鶏のから揚げ(保温ケース保管)の揚げたて感付与効果の評価を以下の手順で行った。
【0079】
<実施例1-1>分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体の効果確認
鶏肉(皮なし)1000gを25~30g程度のぶつ切りにした。表1の処方に従って調製した鶏のから揚げ用香料2gと、食塩8g、水140gとを混合および溶解して調味液を調製した。なお、表1中「MCT」とは炭素数8~12の脂肪酸とグリセリンとから構成される中性脂肪を意味する(以下同じ。)。
【0080】
【表1】
【0081】
この調味液に、炭素数が4または5の分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体(イソブチルアルデヒド=ジエチル=アセタール、2-メチルブチルアルデヒド=ジエチル=アセタール、イソバレルアルデヒド=ジエチル=アセタール、イソバレルアルデヒド=プロピレングリコール=アセタール、イソバレルアルデヒド=ベンジル=イソアミル=アセタール;以下実施例の表中では化合物(a)と表記する。)の市販品を必要に応じてMCTで希釈したものを本件揚げたて感付与組成物として添加した。
【0082】
ここで、後述する実施例も含め、実施例1-1~1-3の鶏のから揚げ(保温ケース保管)では、油揚げによる損失を考慮した上で、油揚げ後の鶏のから揚げの質量を基準として表2(実施例1-2では表3、実施例1-3では表4)に示す濃度となるように、肉の調味液に分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体(および一部の実施例で併用した分岐鎖飽和アルデヒド)を添加した。
【0083】
その後、ぶつ切りにした鶏肉を、分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体添加後の調味液に45分間浸漬した。次に、市販の鶏のから揚げ粉を水に溶かし(以下「衣液」という。)、これに調味液に浸漬した鶏肉を5分間浸漬した。次に、衣液に浸漬した鶏肉を180℃に熱した米サラダ油で4分間揚げ、本発明品1-1~1-30の鶏のから揚げを得た。この状態を「調理直後」とし、下記の通り官能評価を行った。その後、本発明品1-1~1-30の鶏のから揚げを80℃の保温ケースに2時間置いた。この状態を「2時間後」とし、下記の通り官能評価を行った。その後、本発明品1-1~1-30の鶏のから揚げを80℃の保温ケースにさらに2時間置いた。この状態を「4時間後」とし、下記の通り官能評価を行った。その後、本発明品1-1~1-30の鶏のから揚げを80℃の保温ケースにさらに2時間置いた。この状態を「6時間後」とし、下記の通り官能評価を行った。
【0084】
一方、本発明品1-1~1-30の鶏のから揚げ作製手順において、分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体に代え、表2に示す直鎖飽和アルデヒドのアセタール体(プロピオンアルデヒド=ジエチル=アセタール、ブチルアルデヒド=ジエチル=アセタール、ペンチルアルデヒド=ジエチル=アセタール、ヘキシルアルデヒド=ジエチル=アセタール、ヘプチルアルデヒド=ジエチル=アセタール)、炭素数が6以上の分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体(2-エチルブチルアルデヒド=ジエチル=アセタール、2-メチルヘキシルアルデヒド=ジエチル=アセタール)、従来揚げ物に使用されてきた2,4-ドデカジエナールのアセタール体をそれぞれ添加して作製したものを、比較品1-1~1-8の鶏のから揚げとした(比較品1-1~1-8で添加した各化合物も、便宜上表2中では化合物(a)の欄に記載している。)。なお、比較品1-1~1-8においても、本発明品1-1~1-30と同様に、表2に示す濃度は油揚げ後の鶏のから揚げの質量を基準とした。
【0085】
本発明品1-1~1-30および比較品1-1~1-8の鶏のから揚げの官能評価は、本発明品1-1~1-30の鶏のから揚げ作製手順において、分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体を添加せずに作製した鶏のから揚げを対照品1(以下の実施例1-2~1-3でも使用。)として、10名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)に、本発明品1-1~1-30および比較品1-1~1-8を対照品1と比べた際の香味についてコメントさせるとともに、対照品1と比べた揚げたて感について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
【0086】
<揚げたて感に関する評価基準>
対照品1に比べて著しく増加した:5点
対照品1に比べて大きく増加した:4点
対照品1に比べてある程度増加した:3点
対照品1に比べてわずかに増加した:2点
対照品1と同等であるまたは対照品1に比べて減少した:1点
【0087】
本発明品1-1~1-30および比較品1-1~1-8の鶏のから揚げに対する官能評価の結果を表2に示す。
【0088】
【表2】
【0089】
表2に示すように、炭素数が4または5の分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体を添加して製造した鶏のから揚げは、油揚げ後に保温ケースで長時間保管された場合であっても、無添加のものに比べて揚げたて感が付与されていることが確認できた。評価したパネリストによれば、本発明品1-1~1-30の鶏のから揚げは、表2のコメントのほかにも、から揚げのサクッとした食感のほか、カリッとした食感およびパリッとした食感も感じられ、鶏肉のジューシー感も感じられたとのことであった。
【0090】
なお、油揚げ調理直後においても、油揚げ調理によって分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体の一部が分解して分岐鎖飽和アルデヒドが生じ、揚げたて感を付与していると考えられる。また、パネリストによれば、「6時間後」の状態においては、鶏のから揚げが保温ケースでの長時間保管により乾燥し、対照品1との揚げたて感の差が感じられにくいとのことであった(以下実施例1-2~1-3においても同様。)。
【0091】
一方、表2に示すように、炭素数が4または5の分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体に当てはまらない化合物、すなわち直鎖飽和アルデヒドのアセタール体、炭素数が6または7の分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体や従来揚げ物に使用されてきた2,4-ドデカジエナールのアセタール体では、揚げたて感が付与されないことが確認できた。以上の結果より、炭素数が4または5の分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体を有効成分とする揚げたて感付与組成物の有用性が示された。
【0092】
<実施例1-2>分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体2種類併用
実施例1-1の本発明品1-1~1-30の鶏のから揚げ作製手順において、分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体を1種類ではなく2種類添加(併用)して作製したものを、本発明品2-1~2-2の鶏のから揚げとした(以下、実施例の表中、分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体を併用する場合、その一つを化合物(a-1)と、他の一つを化合物(a-2)と、これらをまとめて化合物(a)と、それぞれ表記する。以下全ての実施例において同じ。)。なお、表3に示す本発明品2-1~2-2においても、濃度は本発明品1-1~1-30と同様に、油揚げ後の鶏のから揚げの質量を基準とした。
【0093】
そして、得られた本発明品2-1~2-2の鶏のから揚げについて、実施例1-1と同様に「調理直後」、「2時間後」、「4時間後」、「6時間後」の状態のものを、10名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本発明品2-1~2-2を対照品1(実施例1-1参照)と比べた際の香味についてコメントさせるとともに、対照品1と比べた揚げたて感について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
【0094】
本発明品2-1~2-2の鶏のから揚げに対する官能評価の結果を表3に示す。
【0095】
【表3】
【0096】
表3に示すように、炭素数が4または5の分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体を2種類添加して製造した鶏のから揚げは、油揚げ後に保温ケースで長時間保管された場合であっても、無添加のものに比べて揚げたて感が付与されていることが確認できた。評価したパネリストによれば、本発明品2-1~2-2の鶏のから揚げは、表3のコメントのほかにも、から揚げのサクッとした食感のほか、カリッとした食感およびパリッとした食感も感じられ、鶏肉のジューシー感も感じられたとのことであった。
【0097】
また特に、分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体を2種類(具体的にはアセタール体の原料であるアルコール違いおよび分岐鎖飽和アルデヒド違い)併用した場合には、1種類のもの(表2参照)に比べて揚げたて感がより効果的に付与されていることが確認できた。
【0098】
<実施例1-3>分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体・分岐鎖飽和アルデヒド併用
実施例1-1の本発明品1-1~1-30の鶏のから揚げ作製手順において、分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体に加え、分岐鎖飽和アルデヒド(イソブチルアルデヒド、2-メチルブチルアルデヒド、イソバレルアルデヒド;以下実施例の表中では化合物(b)と表記する。)の市販品を必要に応じてMCTで希釈したものを添加(併用)して作製した鶏のから揚げを、本発明品3-1~3-4の鶏のから揚げとした(以下実施例の表中、分岐鎖飽和アルデヒドを化合物(b)と表記する。)。なお、表4に示す本発明品3-1~3-4においても、濃度は本発明品1-1~1-30と同様に、油揚げ後の鶏のから揚げの質量を基準とした。
【0099】
そして、得られた本発明品3-1~3-4の鶏のから揚げについて、実施例1-1と同様に「調理直後」、「2時間後」、「4時間後」、「6時間後」の状態のものを、10名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)による官能評価を行った。官能評価は、本発明品3-1~3-4を対照品1(実施例1-1参照)と比べた際の香味についてコメントさせるとともに、対照品1と比べた揚げたて感について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
【0100】
本発明品3-1~3-4の鶏のから揚げに対する官能評価の結果を表4に示す。
【0101】
【表4】
【0102】
表4に示すように、分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体と分岐鎖飽和アルデヒドとを添加して製造した鶏のから揚げは、油揚げ後に保温ケースで長時間保管された場合であっても、無添加のものに比べて揚げたて感が付与されていることが確認できた。評価したパネリストによれば、本発明品3-1~3-4の鶏のから揚げは、表4のコメントのほかにも、から揚げのサクッとした食感のほか、カリッとした食感およびパリッとした食感も感じられ、鶏肉のジューシー感も感じられたとのことであった。
【0103】
また特に、分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体と分岐鎖飽和アルデヒドとを併用した場合には、分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体のみを添加したもの(表2参照)に比べて、油揚げ調理直後においても揚げたて感が効果的に付与されていることが確認できた。
【0104】
以上の結果より、分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体と分岐鎖飽和アルデヒドとを含む揚げたて感付与組成物の有用性が示された。
【0105】
[実施例2]牛肉コロッケ(保温ケース保管)
以下、本件揚げたて感付与組成物を添加した牛肉コロッケ(保温ケース保管)の揚げたて感付与効果の評価を以下の手順で行った。
【0106】
牛ひき肉80gおよびみじん切りした玉ねぎ80gをサラダ油10gで炒め、醤油10gを加えたものを、茹でて裏ごししたジャガイモ724.7gに混ぜ、さらに砂糖8g、食塩7g、ブラックペッパー0.3gを加え、十分に混ぜ合わせた(以下「中種」という。)。この中種を1個あたり50gとなるように小分け成形した。
【0107】
市販のバッター粉を水に溶かし(以下「バッター液」という。)、ここに、表5の処方に従って調製したコロッケ用香料2gを添加するとともに、分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体(1種類または2種類)の市販品と、一部併用する分岐鎖飽和アルデヒド(1種類または2種類)の市販品とを、必要に応じてMCTで希釈したものを本件揚げたて感付与組成物として添加した。
【0108】
【表5】
【0109】
ここで、実施例2の牛肉コロッケ(保温ケース保管)では、実施例1と同様に、油揚げによる損失を考慮した上で、油揚げ後の牛肉コロッケの質量を基準として表6に示す濃度となるように、バッター液に分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体(および一部の実施例で併用した分岐鎖飽和アルデヒド)を添加した。
【0110】
その後、小分け成形した中種に、分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体(および一部併用する分岐鎖飽和アルデヒド)添加後のバッター液をまんべんなく付け、続けてパン粉をまんべんなく付けた。バッター液及びパン粉を付けた中種を180℃に熱した米サラダ油で3分30秒間揚げ、本発明品4-1~4-8の牛肉コロッケを得た。この状態を「調理直後」とし、下記の通り官能評価を行った。その後、本発明品4-1~4-8の牛肉コロッケを80℃の保温ケースに2時間置いた。この状態を「2時間後」とし、下記の通り官能評価を行った。その後、本発明品4-1~4-8の牛肉コロッケを80℃の保温ケースにさらに2時間置いた。この状態を「4時間後」とし、下記の通り官能評価を行った。その後、本発明品4-1~4-8の牛肉コロッケを80℃の保温ケースにさらに2時間置いた。この状態を「6時間後」とし、下記の通り官能評価を行った。
【0111】
本発明品4-1~4-8の牛肉コロッケの官能評価は、本発明品4-1~4-8の牛肉コロッケ作製手順において、分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体および分岐鎖飽和アルデヒドを添加せずに作製した牛肉コロッケを対照品2として、10名のよく訓練されたパネリスト(経験年数10年以上)に、本発明品4-1~4-8を対照品2と比べた際の香味についてコメントさせるとともに、対照品2と比べた揚げたて感について下記評価基準にしたがいパネリストが点数付けしたものを平均することにより行った。
【0112】
<揚げたて感に関する評価基準>
対照品2に比べて著しく増加した:5点
対照品2に比べて大きく増加した:4点
対照品2に比べてある程度増加した:3点
対照品2に比べてわずかに増加した:2点
対照品2と同等であるまたは対照品3に比べて減少した:1点
【0113】
本発明品4-1~4-8の牛肉コロッケに対する官能評価の結果を表6に示す。
【0114】
【表6】
【0115】
表6に示すように、分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体を添加して製造した牛肉コロッケ、および、分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体と分岐鎖飽和アルデヒドとを添加して製造した牛肉コロッケは、油揚げ後に保温ケースで長時間保管された場合であっても、無添加のものに比べて揚げたて感が付与されていることが確認できた。評価したパネリストによれば、本発明品4-1~4-8の牛肉コロッケは、表6のコメントのほかにも、コロッケのサクッとした食感のほか、パン粉のカリッとした食感も感じられ、コロッケに含まれる牛ひき肉のジューシー感も感じられたとのことであった。
【0116】
また特に、分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体を2種類併用した場合には、1種類のものに比べて揚げたて感がより効果的に付与されていることが確認できた。さらに、分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体と分岐鎖飽和アルデヒドとを併用した場合には、分岐鎖飽和アルデヒドのアセタール体のみを添加したものに比べて、油揚げ調理直後においても揚げたて感が効果的に付与されていることが確認できた。なお、パネリストによれば、「6時間後」の状態においては、鶏のから揚げ同様、牛肉コロッケが保温ケースでの長時間保管により乾燥し、対照品2との揚げたて感の差が感じられにくいとのことであった。
【0117】
<実施例のまとめ>
本件揚げたて感付与組成物は、揚げ物の種類や賦香方法によらず、揚げたて感を付与できることが確認できた。