(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111468
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】絶縁基板、電気配線基板及びサーマルプリントヘッド並びにそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 41/87 20060101AFI20240809BHJP
B41J 2/335 20060101ALI20240809BHJP
C04B 41/86 20060101ALI20240809BHJP
C04B 41/90 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
C04B41/87 B
B41J2/335 101C
B41J2/335 101H
C04B41/86 U
C04B41/90 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015988
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲谷 吾郎
【テーマコード(参考)】
2C065
【Fターム(参考)】
2C065GA01
2C065GB01
2C065JC06
2C065JC10
2C065JC12
2C065JC14
2C065JH05
2C065JH14
(57)【要約】
【課題】配線層の断線を防止し得る絶縁基板を提供する。
【解決手段】絶縁基板2は、主面3aを含むセラミック基板3と、主面3aを覆う平坦化層4とを備える。平坦化層4は、セラミック層である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面を含むセラミック基板と、
前記主面を覆う平坦化層とを備え、
前記平坦化層は、セラミック層である、絶縁基板。
【請求項2】
前記主面に陥没が形成されており、
前記陥没は前記平坦化層で埋め込まれている、請求項1に記載の絶縁基板。
【請求項3】
前記セラミック層は、前記陥没のサイズよりも小さな粒径を有するセラミック粉末を焼結することによって形成されたセラミック粉末焼成層である、請求項2に記載の絶縁基板。
【請求項4】
前記セラミック粉末の前記粒径は、前記陥没のサイズの三分の一以下である、請求項3に記載の絶縁基板。
【請求項5】
前記陥没のサイズは、10μm以上であり、
前記セラミック粉末の前記粒径は、2μm以下である、請求項3に記載の絶縁基板。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の前記絶縁基板と、
前記平坦化層上に配置されている配線層とを備える、電気配線基板。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の前記絶縁基板と、
前記セラミック基板上に配置されているグレーズと、
前記グレーズ及び前記平坦化層上に配置されている配線層と、
前記グレーズ上に配置されており、かつ、前記配線層に接続されている発熱抵抗体とを備える、サーマルプリントヘッド。
【請求項8】
主面を含むセラミック基板を準備することと、
前記主面上に第1ペーストを塗布して、前記第1ペーストを焼成することによって、平坦化層を形成することとを備え、
前記平坦化層は、セラミック層である、絶縁基板の製造方法。
【請求項9】
前記主面に陥没が形成されており、
前記陥没は前記平坦化層で埋め込まれる、請求項8に記載の絶縁基板の製造方法。
【請求項10】
前記第1ペーストは、前記陥没のサイズよりも小さな粒径を有するセラミック粉末を含み、
前記平坦化層は、前記セラミック粉末が焼結されたセラミック粉末焼成層である、請求項9に記載の絶縁基板の製造方法。
【請求項11】
前記セラミック粉末の前記粒径は、前記陥没のサイズの三分の一以下である、請求項10に記載の絶縁基板の製造方法。
【請求項12】
前記陥没のサイズは、10μm以上であり、
前記セラミック粉末の前記粒径は、2μm以下である、請求項10に記載の絶縁基板の製造方法。
【請求項13】
請求項8から請求項12のいずれか一項に記載された前記絶縁基板の製造方法によって絶縁基板を製造することと、
前記平坦化層上に第2ペーストを塗布して、前記第2ペーストを焼成することによって、配線層を形成することとを備える、電気配線基板の製造方法。
【請求項14】
請求項8から請求項12のいずれか一項に記載された前記絶縁基板の製造方法によって絶縁基板を製造することと、
前記セラミック基板上にガラスペーストを塗布して、前記ガラスペーストを焼成することによって、グレーズを形成することと、
前記グレーズ及び前記平坦化層上に導電材料を含む第2ペーストを塗布して、前記第2ペーストを焼成することによって、配線層を形成することと、
前記グレーズ及び前記配線層上に抵抗体ペーストを塗布して、前記抵抗体ペーストを焼成することによって、発熱抵抗体を形成することとを備え、
前記第1ペーストの焼成温度は、前記ガラスペーストの焼成温度よりも低い、サーマルプリントヘッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、絶縁基板、電気配線基板及びサーマルプリントヘッド並びにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2020-163654号公報(特許文献1)は、絶縁基板と、ヒーターグレーズと、ダイボンディンググレーズと、中間ガラス層と、発熱抵抗体と、電極層とを備えるサーマルプリントヘッドを開示している。絶縁基板は、主面を有している。中間ガラス層は、絶縁基板の主面のうちヒーターグレーズとダイボンディンググレーズとの間にある部分を覆っている。中間ガラス層は、ヒーターグレーズとダイボンディンググレーズとに接触している。中間ガラス層の軟化点は、ヒーターグレーズの軟化点及びダイボンディンググレーズの軟化点よりも低い。電極層は、ヒーターグレーズと中間ガラス層とダイボンディンググレーズとの上に配置されており、発熱抵抗体に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、配線層の断線を防止し得る絶縁基板、電気配線基板及びサーマルプリントヘッド並びにそれらの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の絶縁基板は、主面を含むセラミック基板と、主面を覆う平坦化層とを備える。平坦化層は、セラミック層である。
【0006】
本開示の電気配線基板は、本開示の絶縁基板と、平坦化層上に配置されている配線層とを備える。
【0007】
本開示のサーマルプリントヘッドは、本開示の絶縁基板と、グレーズと、配線層と、発熱抵抗体とを備える。グレーズは、セラミック基板上に配置されている。配線層は、グレーズ及び平坦化層上に配置されている。発熱抵抗体は、グレーズ上に配置されており、かつ、配線層に接続されている。
【0008】
本開示の絶縁基板の製造方法は、主面を含むセラミック基板を準備することと、主面上に第1ペーストを塗布して、第1ペーストを焼成することによって、平坦化層を形成することとを備える。平坦化層は、セラミック層である。
【0009】
本開示の電気配線基板の製造方法は、本開示の絶縁基板の製造方法によって絶縁基板を製造することと、平坦化層上に第2ペーストを塗布して、第2ペーストを焼成することによって、配線層を形成することとを備える。
【0010】
本開示のサーマルプリントヘッドの製造方法は、本開示の絶縁基板の製造方法によって絶縁基板を製造することと、セラミック基板上にガラスペーストを塗布して、前記ガラスペーストを焼成することによって、グレーズを形成することと、グレーズ及び平坦化層上に導電材料を含む第2ペーストを塗布して、第2ペーストを焼成することによって、配線層を形成することと、グレーズ及び配線層上に抵抗体ペーストを塗布して、抵抗体ペーストを焼成することによって、発熱抵抗体を形成することとを備える。第1ペーストの焼成温度は、ガラスペーストの焼成温度よりも低い。
【発明の効果】
【0011】
本開示の絶縁基板、電気配線基板及びサーマルプリントヘッド並びにそれらの製造方法によれば、配線層の断線を防止し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施の形態1の電気配線基板の概略部分拡大平面図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1の電気配線基板の、
図1に示す断面線II-IIにおける概略部分拡大断面図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1の電気配線基板の製造方法のフローチャートを示す図である。
【
図4】
図4は、実施の形態2のサーマルプリントヘッドの概略平面図である。
【
図5】
図5は、実施の形態2のサーマルプリントヘッドの、
図4に示す断面線V-Vにおける概略断面図である。
【
図6】
図6は、実施の形態2のサーマルプリントヘッドの概略部分拡大平面図である。
【
図7】
図7は、実施の形態2のサーマルプリントヘッドの製造方法のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面に基づいて本開示の実施の形態の詳細について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。以下に記載する実施の形態の少なくとも一部の構成を任意に組み合わせてもよい。
【0014】
(実施の形態1)
【0015】
図1及び
図2を参照して、実施の形態1の電気配線基板1を説明する。電気配線基板1は、絶縁基板2と、配線層5とを備える。
【0016】
絶縁基板2は、セラミック基板3と、平坦化層4とを含む。
【0017】
セラミック基板3は、アルミナのようなセラミック材料で形成されている。セラミック基板3は、主面3aを含む。主面3aに陥没3bが形成されている。陥没3bは、例えば、セラミック基板3の製造時に、主面3aに形成される。陥没3bのサイズは、例えば、10μm以上である。陥没3bのサイズは、陥没3bの深さD及び陥没3bの幅Wのうち小さい方である。
【0018】
平坦化層4は、セラミック基板3の主面3aを覆う。平坦化層4は、セラミック基板3の主面3aの一部を覆ってもよいし、セラミック基板3の主面3aの全体を覆ってもよい。平坦化層4は、セラミック基板3とは反対側に主面4aを含む。セラミック基板3の陥没3bは、平坦化層4で埋め込まれている。そのため、平坦化層4の主面4aは、セラミック基板3の主面3aより平坦である。平坦化層4は、セラミック基板3の主面3aのうち陥没3bが形成されていない部分上にさらに設けられてもよい。
【0019】
平坦化層4は、セラミック層である。セラミック層は、アルミナのようなセラミックを主成分とする材料で形成されている。本明細書において、主成分は、セラミック層におけるセラミックの含有量が50質量%以上であることを意味する。セラミック層におけるセラミックの含有量は、70質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよい。
【0020】
セラミック層は、例えば、陥没3bのサイズよりも小さな粒径を有するセラミック粉末を焼結することによって形成されたセラミック粉末焼成層である。セラミック粉末の粒径は、例えば、陥没3bのサイズの三分の一以下である。セラミック粉末の粒径は、例えば、2μm以下である。セラミック粉末の粒径は、1.5μm以下であってもよく、1.0μm以下であってもよく、0.5μm以下であってもよい。セラミック粉末は、例えば、住友化学株式会社製の高純度アルミナ粉末AKP-30、AKP-53またはAKP-700である。本明細書において、粉末の粒径は、マイクロトラック社製の粒子径分布測定装置MT3000を用いて、レーザ回折法により測定された粒径分布の中心粒径である。
【0021】
配線層5は、平坦化層4の主面4a上に配置されている。配線層5は、金(Au)、銀(Ag)または銅(Cu)のような導電材料で形成されている。配線層5は、曲がり部5bを含んでもよい。
【0022】
図3を参照して、本実施の形態の電気配線基板1の製造方法の一例を説明する。
【0023】
図3を参照して、本実施の形態の電気配線基板1の製造方法は、セラミック基板3を準備すること(ステップS1)を備える。セラミック基板3は、公知の方法によって製造される。セラミック基板3は、主面3aを含む。主面3aに陥没3bが形成されている。陥没3bのサイズは、例えば、10μm以上である。
【0024】
本実施の形態の電気配線基板1の製造方法は、セラミック基板3の主面3a上に平坦化層4を形成すること(ステップS2)を備える。陥没3bは、平坦化層4で埋め込まれる。平坦化層4は、セラミック基板3の主面3aのうち陥没3bが形成されていない部分上にさらに設けられてもよい。平坦化層4は、セラミック粉末が焼結されたセラミック粉末焼成層のようなセラミック層である。
【0025】
具体的には、セラミック基板3の主面3a上に第1ペーストを塗布する。第1ペーストの塗布は、例えば、スクリーン印刷のような印刷またはディスペンサによる塗布である。セラミック基板3の陥没3bは、第1ペーストで埋め込まれる。第1ペーストは、セラミック基板3の主面3aのうち陥没3bが形成されていない部分上にさらに設けられてもよい。第1ペーストは、陥没3bのサイズよりも小さな粒径を有するセラミック粉末を含む。セラミック粉末の粒径は、例えば、陥没3bのサイズの三分の一以下である。セラミック粉末の粒径は、例えば、2μm以下である。それから、第1ペーストを焼成する。第1ペーストは、平坦化層4になる。
【0026】
本実施の形態の電気配線基板1の製造方法は、平坦化層4上に配線層5を形成すること(ステップS3)を備える。
【0027】
具体的には、平坦化層4上に第2ペーストを塗布する。第2ペーストは、金(Au)、銀(Ag)または銅(Cu)のような導電材料を含む。第2ペーストの塗布は、例えば、スクリーン印刷のような印刷またはディスペンサによる塗布である。
【0028】
必要があれば、第2ペーストをパターニングする。例えば、第2ペーストは、フォトリソグラフィ法によって、パターニングされる。具体的には、第2ペーストを乾燥させる。第2ペースト上にフォトレジストが塗布される。フォトレジストは、フォトマスクで覆われる。フォトレジストは、フォトマスクの開口を通して、紫外線で露光される。フォトレジストのうち紫外線に露光されて変質した部分は、現像液によって溶解される。フォトレジストがパターニングされる。第2ペーストは、パターニングされたフォトレジストを通して、エッチャントでエッチングされる。第2ペーストは、パターニングされる。レジストは、剥離液によって溶解されて、除去される。
【0029】
第2ペーストを焼成する。第2ペーストは、配線層5になる。
【0030】
本実施の形態の電気配線基板1の製造方法のうち、ステップS1及びステップS2は、本実施の形態の絶縁基板2の製造方法である。すなわち、本実施の形態の電気配線基板1の製造方法は、本実施の形態の絶縁基板2の製造方法を含む。
【0031】
本実施の形態の作用を説明する。
【0032】
セラミック基板3上に、平坦化層4が設けられている。配線層5は、セラミック基板3の主面3aよりも平坦な平坦化層4の主面4a上に形成され得る。そのため、セラミック基板3の陥没3bに起因する配線層5の断線が防止され得る。また、セラミック基板3の陥没3bに起因する第2ペーストのパターニング不良が防止され得る。第2ペーストのパターニング不良に起因する配線層5間の短絡が防止され得る。
【0033】
平坦化層4は、セラミック層である。そのため、ガラス層である比較例の平坦化層と比べて、第2ペーストの焼成時にセラミック層である本実施の形態の平坦化層4が軟化することが防止される。平坦化層4の軟化に起因して配線層5に印加される応力が減少する。配線層5(特に、配線層5の曲がり部5b)の断線が防止され得る。
【0034】
本実施の形態の絶縁基板2及び電気配線基板1並びにそれらの製造方法の効果を説明する。
【0035】
本実施の形態の絶縁基板2は、主面3aを含むセラミック基板3と、主面3aを覆う平坦化層4とを備える。平坦化層4は、セラミック層である。
【0036】
そのため、平坦化層4上に配線層5を形成する際に、平坦化層4が軟化することが防止される。平坦化層4の軟化に起因して配線層5に印加される応力が減少する。配線層5の断線が防止され得る。
【0037】
本実施の形態の絶縁基板2では、セラミック基板3の主面3aに陥没3bが形成されている。陥没3bは、平坦化層4で埋め込まれている。
【0038】
そのため、セラミック基板3の陥没3bに起因する配線層5の断線が防止され得る。また、平坦化層4上に配線層5を形成する際に、セラミック基板3の陥没3bに起因する配線層5のパターニング不良が防止され得る。配線層5間の短絡が防止され得る。
【0039】
本実施の形態の絶縁基板2では、セラミック層は、陥没3bのサイズよりも小さな粒径を有するセラミック粉末を焼結することによって形成されたセラミック粉末焼成層である。
【0040】
そのため、セラミック基板3の陥没3bは、セラミック粉末によって、より確実に埋め込まれる。セラミック基板3の陥没3bに起因する配線層5の断線が防止され得る。また、平坦化層4上に配線層5を形成する際に、セラミック基板3の陥没3bに起因する配線層5のパターニング不良が防止され得る。配線層5間の短絡が防止され得る。
【0041】
本実施の形態の絶縁基板2では、セラミック粉末の粒径は、陥没3bのサイズの三分の一以下である。
【0042】
そのため、セラミック基板3の陥没3bは、セラミック粉末によって、より確実に埋め込まれる。セラミック基板3の陥没3bに起因する配線層5の断線が防止され得る。また、平坦化層4上に配線層5を形成する際に、セラミック基板3の陥没3bに起因する配線層5のパターニング不良が防止され得る。配線層5間の短絡が防止され得る。
【0043】
本実施の形態の絶縁基板2では、陥没3bのサイズは、10μm以上である。セラミック粉末の粒径は、2μm以下である。
【0044】
そのため、セラミック基板3の陥没3bは、セラミック粉末によって、より確実に埋め込まれる。セラミック基板3の陥没3bに起因する配線層5の断線が防止され得る。また、平坦化層4上に配線層5を形成する際に、セラミック基板3の陥没3bに起因する配線層5のパターニング不良が防止され得る。配線層5間の短絡が防止され得る。
【0045】
本実施の形態の電気配線基板1は、本実施の形態の絶縁基板2と、平坦化層4上に配置されている配線層5とを備える。
【0046】
平坦化層4はセラミック層であるため、平坦化層4上に配線層5を形成する際に、平坦化層4が軟化することが防止される。平坦化層4の軟化に起因して配線層5に印加される応力が減少する。配線層5の断線が防止され得る。
【0047】
本実施の形態の絶縁基板2の製造方法は、主面3aを含むセラミック基板3を準備すること(ステップS1)と、主面3a上に第1ペーストを塗布して、第1ペーストを焼成することによって、平坦化層4を形成すること(ステップS2)とを備える。平坦化層4は、セラミック層である。
【0048】
そのため、平坦化層4上に配線層5を形成する際に、平坦化層4が軟化することが防止される。平坦化層4の軟化に起因して配線層5に印加される応力が減少する。配線層5の断線が防止され得る。
【0049】
本実施の形態の絶縁基板2の製造方法では、主面3aに陥没3bが形成されている。陥没3bは、平坦化層4で埋め込まれる。
【0050】
そのため、セラミック基板3の陥没3bに起因する配線層5の断線が防止され得る。また、平坦化層4上に配線層5を形成する際に、セラミック基板3の陥没3bに起因する配線層5のパターニング不良が防止され得る。配線層5間の短絡が防止され得る。
【0051】
本実施の形態の絶縁基板2の製造方法では、第1ペーストは、陥没3bのサイズよりも小さな粒径を有するセラミック粉末を含む。平坦化層4は、セラミック粉末が焼結されたセラミック粉末焼成層である。
【0052】
そのため、セラミック基板3の陥没3bは、セラミック粉末によって、より確実に埋め込まれる。セラミック基板3の陥没3bに起因する配線層5の断線が防止され得る。また、平坦化層4上に配線層5を形成する際に、セラミック基板3の陥没3bに起因する配線層5のパターニング不良が防止され得る。配線層5間の短絡が防止され得る。
【0053】
本実施の形態の絶縁基板2の製造方法では、セラミック粉末の粒径は、陥没3bのサイズの三分の一以下である。
【0054】
そのため、セラミック基板3の陥没3bは、セラミック粉末によって、より確実に埋め込まれる。セラミック基板3の陥没3bに起因する配線層5の断線が防止され得る。また、平坦化層4上に配線層5を形成する際に、セラミック基板3の陥没3bに起因する配線層5のパターニング不良が防止され得る。配線層5間の短絡が防止され得る。
【0055】
本実施の形態の絶縁基板2の製造方法では、陥没3bのサイズは、10μm以上である。セラミック粉末の粒径は、2μm以下である。
【0056】
そのため、セラミック基板3の陥没3bは、セラミック粉末によって、より確実に埋め込まれる。セラミック基板3の陥没3bに起因する配線層5の断線が防止され得る。また、平坦化層4上に配線層5を形成する際に、セラミック基板3の陥没3bに起因する配線層5のパターニング不良が防止され得る。配線層5間の短絡が防止され得る。
【0057】
本実施の形態の電気配線基板1の製造方法は、本実施の形態の絶縁基板2の製造方法によって絶縁基板2を製造すること(ステップS1及びステップS2)と、平坦化層4上に第2ペーストを塗布して、第2ペーストを焼成することによって、配線層5を形成すること(ステップS3)とを備える。
【0058】
平坦化層4はセラミック層であるため、平坦化層4上に配線層5を形成する際に、平坦化層4が軟化することが防止される。平坦化層4の軟化に起因して配線層5に印加される応力が減少する。配線層5の断線が防止され得る。
【0059】
(実施の形態2)
【0060】
図4から
図6を参照して、実施の形態2のサーマルプリントヘッド8を説明する。サーマルプリントヘッド8は、サーマルプリンタ(図示せず)に搭載される。
【0061】
図4を参照して、サーマルプリントヘッド8は、ヘッド本体8aと、コネクタ8b,8cとを備える。
【0062】
ヘッド本体8aは、例えば、矩形形状を有している。サーマルプリントヘッド8の平面視(以下、単に「平面視」という)において、ヘッド本体8aの長辺方向は主走査方向Xであり、ヘッド本体8aの短辺方向は副走査方向Yであり、セラミック基板3の厚さ方向は板厚方向Zである。板厚方向Zは、主走査方向X及び副走査方向Yに直交する方向である。平面視において、副走査方向Yは、印刷媒体(例えば、感熱記録紙)の搬送方向である。
【0063】
コネクタ8b,8cは、サーマルプリントヘッド8をサーマルプリンタ(図示せず)に組み込む際、サーマルプリンタ側のコネクタ(図示せず)に接続される。コネクタ8b,8cは、ヘッド本体8aの副走査方向Yの上流側の端部に接続されている。
【0064】
図4から
図6を参照して、ヘッド本体8aは、絶縁基板2と、グレーズ13と、配線層20と、パッド28,29と、発熱抵抗体30と、保護層35と、支持ガラス層38と、駆動IC41と、導電ワイヤ43,44と、封止部材50とを含む。
【0065】
本実施の形態の絶縁基板2は、実施の形態1の絶縁基板2と同様である。具体的には、絶縁基板2は、セラミック基板3と、平坦化層10とを含む。本実施の形態のセラミック基板3は、実施の形態1のセラミック基板3と同様である。
【0066】
図5を参照して、グレーズ13は、セラミック基板3の主面3a上に配置されている。グレーズ13は、例えば、非晶質ガラスのようなガラス材料で形成されている。グレーズ13は、ヒーターグレーズ14と、ダイボンディンググレーズ15とを含む。
【0067】
ヒーターグレーズ14は、蓄熱層である。ヒーターグレーズ14は、セラミック基板3の主面3aの平面視において、主走査方向Xに延在しており、帯形状を有している。本実施形態のヒーターグレーズ14は、いわゆる部分グレーズである。すなわち、副走査方向Y及び板厚方向Zを含む断面において、ヒーターグレーズ14は、セラミック基板3の主面3aの一部分から突出している。ヒーターグレーズ14は、発熱抵抗体30を印刷媒体(例えば、感熱記録紙)に押し当てるために設けられている。ヒーターグレーズ14の厚さは、例えば、18μm以上50μm以下である。
【0068】
ダイボンディンググレーズ15は、ヒーターグレーズ14から、副走査方向Yの上流側に離間して配置されている。セラミック基板3の主面3aの平面視において、ダイボンディンググレーズ15は、主走査方向Xに延在しており、帯形状を有している。ダイボンディンググレーズ15は、配線層20の一部及び駆動IC41を支持している。ダイボンディンググレーズ15の厚さは、例えば、30μm以上50μm以下である。なお、ダイボンディンググレーズ15は、省略されてもよい。
【0069】
図5を参照して、本実施の形態の平坦化層10は、実施の形態1の平坦化層4と同様である。具体的には、平坦化層10は、セラミック層である。平坦化層10の厚さは、グレーズ13の厚さより小さい。平坦化層10の厚さは、例えば、約2μmである。
【0070】
平坦化層10は、中央部11と、周辺部12とを含む。中央部11は、セラミック基板3の主面3aのうちヒーターグレーズ14とダイボンディンググレーズ15との間にある部分を覆っている。周辺部12は、セラミック基板3の主面3aのうちヒーターグレーズ14に対して副走査方向Yの下流側にある部分を覆っている。平坦化層10は、グレーズ13に接触している。具体的には、中央部11は、ヒーターグレーズ14とダイボンディンググレーズ15とに接触している。周辺部12は、ヒーターグレーズ14に接触している。
【0071】
図4から
図6を参照して、配線層20は、グレーズ13及び平坦化層10上に配置されている。配線層20は、発熱抵抗体30に通電するための導電経路を構成している。本実施の形態の配線層20は、実施の形態1の配線層5と同じ材料及び同じ方法で形成されている。配線層20の厚さは、特に限定されないが、例えば0.6μm以上1.2μm以下である。配線層20は、共通配線21と、複数の個別配線25とを含む。
【0072】
共通配線21は、ヒーターグレーズ14及び平坦化層10の周辺部12上に配置されている。共通配線21は、複数の第1帯状部22と、連結部23と、迂回部24とを含む。
【0073】
複数の第1帯状部22は、ヒーターグレーズ14及び平坦化層10の周辺部12上に配置されている。複数の第1帯状部22は、各々、副走査方向Yに延在している。複数の第1帯状部22は、主走査方向Xにおいて等ピッチで配列されている。連結部23は、平坦化層10の周辺部12上に配置されている。連結部23は、主走査方向Xに延在している。連結部23は、複数の第1帯状部22に接続されている。迂回部24は、複数の個別配線25を迂回するように、連結部23の主走査方向Xの一方の端部から副走査方向Yの上流側に延在している。
【0074】
複数の個別配線25は、各々、発熱抵抗体30に対して部分的に通電する。複数の個別配線25は、各々、副走査方向Yにおいて、ヒーターグレーズ14からダイボンディンググレーズ15まで延在している。複数の個別配線25は、各々、第2帯状部26と、ボンディング部27とを含む。
【0075】
第2帯状部26は、副走査方向Yにおいて、ヒーターグレーズ14からダイボンディンググレーズ15まで延在している。第2帯状部26は、曲がり部26a,26bを含む。複数の第2帯状部26は、主走査方向Xにおいて等ピッチで配列されている。第2帯状部26は、ヒーターグレーズ14上において主走査方向Xに互いに隣り合う一対の第1帯状部22の間に配置されている。第1帯状部22及び第2帯状部26は、主走査方向Xにおいて交互に配置されている。複数の個別配線25の各々の副走査方向Yの上流側の端部に、ボンディング部27が接続されている。ボンディング部27の幅は、第2帯状部26の幅よりも大きい。
【0076】
図5を参照して、パッド28,29は、配線層20と同じ材料で形成されている。パッド28,29は、ダイボンディンググレーズ15上に配置されている。副走査方向Yにおいて、パッド28は、複数の個別配線25とパッド29との間に配置されている。パッド28は、副走査方向Yにおいて、複数の個別配線25から副走査方向Yの上流側に離間されて配置されている。パッド29は、パッド28から副走査方向Yの上流側に離間されて配置されている。
【0077】
図4から
図6を参照して、発熱抵抗体30は、ヒーターグレーズ14上に配置されている。より具体的には、発熱抵抗体30は、ヒーターグレーズ14の頂部上に配置されている。ヒーターグレーズ14の頂部は、板厚方向Zにおいてセラミック基板3の主面3aからヒーターグレーズ14の表面までの高さが最も大きくなる箇所である。ヒーターグレーズ14の頂部は、例えば、副走査方向Yにおけるヒーターグレーズ14の中央にある。発熱抵抗体30は、主走査方向Xに延在しており、平面視において、帯形状を有している。副走査方向Y及び板厚方向Zを含む断面において、発熱抵抗体30は、ヒーターグレーズ14に対してセラミック基板3とは反対側に突出している。発熱抵抗体30の厚さは、例えば、6μm以上10μm以下である。
【0078】
発熱抵抗体30は、配線層20に接続されている。具体的には、発熱抵抗体30は、共通配線21の複数の第1帯状部22と複数の個別配線25の複数の第2帯状部26とに接続されている。平面視において、発熱抵抗体30は、複数の第1帯状部22及び複数の第2帯状部26に交差するように配置されている。発熱抵抗体30は、複数の第1帯状部22及び複数の第2帯状部26を跨ぐように形成されている。発熱抵抗体30のうち、主走査方向Xにおいて各第1帯状部22と各第2帯状部26とに挟まれた部分は、発熱部31である。発熱部31は、発熱抵抗体30が部分的に通電されることによって発熱する部分である。発熱部31の発熱によって印刷媒体(例えば、感熱記録紙)に印字される。
【0079】
図5を参照して、保護層35は、少なくとも発熱抵抗体30を保護する。保護層35は、共通配線21及び複数の個別配線25をさらに保護してもよい。保護層35は、第1保護層36と、第2保護層37とを含む。
【0080】
第1保護層36は、少なくとも発熱抵抗体30の発熱部31を覆っている。第1保護層36は、発熱抵抗体30の全体を覆ってもよい。第1保護層36は、複数の第1帯状部22と、複数の第2帯状部26とをさらに覆ってもよい。第1保護層36は、平坦化層10の中央部11及び周辺部12と、ダイボンディンググレーズ15の一部とをさらに覆ってもよい。第1保護層36は、例えば、非晶質ガラスで形成されている。第1保護層36の厚さは、特に限定されないが、例えば、6μm以上8μm以下である。
【0081】
第2保護層37は、第1保護層36上に形成されている。第2保護層37は、印刷媒体(例えば、感熱記録紙)の搬送時に印刷媒体がサーマルプリントヘッド8に接触する可能性のある領域に形成されている。平面視において、副走査方向Yにおける第2保護層37の長さは、副走査方向Yにおける第1保護層36の長さよりも短い。第2保護層37は、例えば、炭化ケイ素(SiC)またはチタン(Ti)を含むコーティング膜である。第2保護層37の厚さは、第1保護層36の厚さよりも薄い。第2保護層37の厚さは、特に限定されないが、例えば、2μm以上4μm以下である。
【0082】
図5を参照して、支持ガラス層38は、パッド28上に配置されている。支持ガラス層38は、例えば、非晶質ガラスで形成されている。
【0083】
図4及び
図5を参照して、駆動IC41は、複数の個別配線25を選択的に通電させる。本実施形態では、複数の駆動IC41が主走査方向Xに離間して配置されている。駆動IC41は、ダイボンディンググレーズ15上に配置されている。より具体的には、駆動IC41は、支持ガラス層38上に配置されている。
【0084】
図5を参照して、導電ワイヤ43は、複数の個別配線25のボンディング部27と駆動IC41とにボンディングされる。導電ワイヤ43は、複数の個別配線25と駆動IC41とを電気的に接続する。導電ワイヤ44は、パッド29と駆動IC41とにボンディングされる。導電ワイヤ44は、パッド29と駆動IC41とを電気的に接続する。
【0085】
図4及び
図5を参照して、封止部材50は、駆動IC41を封止している。封止部材50は、電気的絶縁性を有している。封止部材50は、例えば、エポキシ樹脂のような絶縁樹脂材料で形成されている。
【0086】
図5に示されるように、サーマルプリントヘッド8は、セラミック基板3の主面3a上に形成されている突出部16を含む。突出部16は、グレーズ13(ヒーターグレーズ14)と、配線層20と、発熱抵抗体30と、保護層35とを含む。突出部16では、グレーズ13(ヒーターグレーズ14)、配線層20、発熱抵抗体30及び保護層35が、主面3aの法線方向(Z方向)においてこの順に主面3a上に積層されている。
【0087】
図7を参照して、本実施の形態のサーマルプリントヘッド8の製造方法を説明する。
【0088】
本実施の形態のサーマルプリントヘッド8の製造方法は、セラミック基板3を準備すること(ステップS11)を備える。本実施の形態のステップS11は、実施の形態1のステップS1と同じである。具体的には、セラミック基板3の主面3aに陥没3b(
図1及び
図2を参照)が形成されている。
【0089】
本実施の形態のサーマルプリントヘッド8の製造方法は、セラミック基板3の主面3a上にグレーズ13を形成すること(ステップS12)を備える。具体的には、セラミック基板3の主面3a上に第1ガラスペーストを塗布する。第1ガラスペーストの塗布は、例えば、スクリーン印刷のような印刷またはディスペンサによる塗布である。それから、第1ガラスペーストを焼成する。第1ガラスペーストは、グレーズ13になる。
【0090】
本実施の形態のサーマルプリントヘッド8の製造方法は、セラミック基板3の主面3aのうちグレーズ13から露出した部分に、平坦化層10を形成すること(ステップS13)を備える。本実施の形態のステップS13は、実施の形態1のステップS2と同様である。
【0091】
具体的には、セラミック基板3の主面3aのうちグレーズ13から露出した部分上に、第1ペーストを塗布する。第1ペーストの塗布は、例えば、スクリーン印刷のような印刷またはディスペンサによる塗布である。本実施の形態の第1ペーストは、実施の形態1の第1ペーストと同じである。具体的には、第1ペーストは、陥没3b(
図1及び
図2を参照)のサイズよりも小さな粒径を有するセラミック粉末を含む。セラミック基板3の陥没3bは、第1ペーストで埋め込まれる。第1ペーストは、グレーズ13に接触している。具体的には、第1ペーストは、ヒーターグレーズ14とダイボンディンググレーズ15とに接触している。それから、第1ペーストを焼成する。第1ペーストは、平坦化層10になる。第1ペーストの焼成温度は、第1ガラスペーストの焼成温度よりも低い。
【0092】
本実施の形態のサーマルプリントヘッド8の製造方法は、配線層20及びパッド28,29を形成すること(ステップS14)を備える。本実施の形態のステップS14は、実施の形態1のステップS3と同様である。
【0093】
具体的には、グレーズ13及び平坦化層10上に、第2ペーストを塗布する。本実施の形態における第2ペーストの塗布工程は、実施の形態1における第2ペーストの塗布工程と同様である。例えば、第2ペーストは、金(Au)、銀(Ag)または銅(Cu)のような導電材料を含む。第2ペーストの塗布は、例えば、スクリーン印刷のような印刷またはディスペンサによる塗布である。
【0094】
必要があれば、第2ペーストをパターニングする。本実施の形態における第2ペーストのパターニング工程は、実施の形態1における第2ペーストのパターニング工程と同様である。それから、第2ペーストを焼成する。第2ペーストは、配線層20及びパッド28,29になる。本実施の形態における第2ペーストの焼成工程は、実施の形態1における第2ペーストの焼成工程と同様である。第2ペーストの焼成温度は、第1ガラスペーストの焼成温度よりも低い。
【0095】
本実施の形態のサーマルプリントヘッド8の製造方法は、発熱抵抗体30を形成すること(ステップS15)を備える。具体的には、ヒーターグレーズ14及び配線層20上に、抵抗体ペーストを塗布する。抵抗体ペーストは、例えば、酸化ルテニウム、窒化タンタル、タンタルまたは銀バナジウムのような導電材料と、ガラスとを含む。それから、抵抗体ペーストを焼成する。抵抗体ペーストは、発熱抵抗体30になる。抵抗体ペーストの焼成温度は、第1ガラスペーストの焼成温度よりも低い。
【0096】
本実施の形態のサーマルプリントヘッド8の製造方法は、第1保護層36及び支持ガラス層38を形成すること(ステップS16)を備える。具体的には、グレーズ13、平坦化層10、配線層20、パッド28及び発熱抵抗体30上に、第2ガラスペーストを塗布する。第2ガラスペーストの塗布は、例えば、スクリーン印刷のような印刷またはディスペンサによる塗布である。それから、第2ガラスペーストを焼成する。第2ガラスペーストは、第1保護層36及び支持ガラス層38になる。第2ガラスペーストの焼成温度は、第1ガラスペーストの焼成温度よりも低い。
【0097】
本実施の形態のサーマルプリントヘッド8の製造方法は、第1保護層36上に第2保護層37を形成すること(ステップS17)を備える。第2保護層37は、例えば、スパッタリングによって形成される。
【0098】
本実施の形態のサーマルプリントヘッド8の製造方法は、支持ガラス層38上に駆動IC41をマウントすること(ステップS18)を備える。駆動IC41は、樹脂接着剤またははんだのような接合部材(図示せず)を用いて、支持ガラス層38に固定される。
【0099】
本実施の形態のサーマルプリントヘッド8の製造方法は、導電ワイヤ43,44をボンディングすること(ステップS19)を備える。導電ワイヤ43は、駆動IC41と個別配線25のボンディング部27とにボンディングされる。導電ワイヤ44は、駆動IC41とパッド29とにボンディングされる。
【0100】
本実施の形態のサーマルプリントヘッド8の製造方法は、駆動IC41を封止すること(ステップS20)を備える。具体的には、駆動IC41上に封止樹脂材料をポッティングする。封止樹脂材料は硬化されて、封止部材50になる。
【0101】
本実施の形態のサーマルプリントヘッド8の製造方法は、セラミック基板3にコネクタ8b,8cを取り付けること(ステップS21)を備える。コネクタ8b,8cは、セラミック基板3の副走査方向Yの上流側の端部に取り付けられる。こうして、サーマルプリントヘッド8が得られる。
【0102】
本実施の形態のステップS11、ステップS13及びステップS14は、それぞれ、実施の形態1のステップS1、ステップS2及びステップS3に対応している。すなわち、本実施の形態のサーマルプリントヘッド8の製造方法は、実施の形態1の電気配線基板1の製造方法及び絶縁基板2の製造方法を含む。
【0103】
本実施の形態のサーマルプリントヘッド8は、実施の形態1の作用に加えて、以下の追加的作用を有する。比較例のサーマルプリントヘッドと対比しながら、本実施の形態のサーマルプリントヘッド8の追加的作用を説明する。比較例のサーマルプリントヘッドは、本実施の形態のサーマルプリントヘッド8と同様に構成されているが、比較例のサーマルプリントヘッドでは、平坦化層10は、グレーズ13よりも低い軟化点を有するガラス層である。
【0104】
比較例のサーマルプリントヘッドにおいて、ガラス層である平坦化層10の軟化点がグレーズ13の軟化点よりも低い理由は、以下のとおりである。
【0105】
もし、ガラス層である平坦化層10の軟化点がグレーズ13の軟化点よりも高ければ、平坦化層10用のガラスペーストの焼成時に、グレーズ13が軟化して、グレーズ13の形が崩れる。特に、平坦化層10(または平坦化層10用のガラスペースト)がグレーズ13に接触している場合には、平坦化層10用のガラスペーストの焼成時に、グレーズ13が平坦化層10と一体化して、グレーズ13の形が大きく崩れる。その結果、ヒーターグレーズ14の高さが減少する。グレーズ13(ヒーターグレーズ14)と配線層20と発熱抵抗体30と保護層35とを含むサーマルプリントヘッドの突出部16が印刷媒体(例えば、感熱記録紙)に十分に接触できず、サーマルプリントヘッドの印字品質が低下する。これに対し、比較例のサーマルプリントヘッドでは、ガラス層である平坦化層10の軟化点がグレーズ13の軟化点よりも低くなっている。そのため、平坦化層10用のガラスペーストの焼成時に、グレーズ13の形が崩れることが防止される。比較例のサーマルプリントヘッドの印字品質の低下が防止され得る。
【0106】
しかし、比較例のサーマルプリントヘッドのように、ガラス層である平坦化層10の軟化点をグレーズ13の軟化点よりも低くすると、第2ペースト(配線層20用のペースト)の焼成時に平坦化層10が軟化する。平坦化層10の軟化に起因して配線層20のうち平坦化層10上にある部分に応力が印加されて、配線層20の当該部分が断線することがある。
【0107】
本実施の形態のサーマルプリントヘッド8では、平坦化層10はセラミック層である。そのため、第2ペースト(配線層20用のペースト)の焼成時に平坦化層10が軟化することが防止され得る。平坦化層10上に配線層20を形成する際に、配線層20に印加される応力が減少する。配線層20(特に、配線層20の曲がり部26a,26b)の断線が防止され得る。
【0108】
加えて、第1ペースト(平坦化層10用のペースト)の焼成温度を、第1ガラスペースト(グレーズ13用のペースト)の焼成温度よりも低くすることができる。そのため、たとえ、平坦化層10(または第1ペースト)がグレーズ13に接触していても、第1ペーストの焼成時に、グレーズ13の形が保たれ得る。そのため、グレーズ13(ヒーターグレーズ14)と配線層20と発熱抵抗体30と保護層35とを含むサーマルプリントヘッド8の突出部16が印刷媒体(例えば、感熱記録紙)に十分に接触することができる。サーマルプリントヘッド8の印字品質が向上し得る。
【0109】
本実施の形態のサーマルプリントヘッド8及びその製造方法の効果は、実施の形態1の電気配線基板1及びその製造方法の効果に加えて、以下の効果を奏する。
【0110】
本実施の形態のサーマルプリントヘッド8は、絶縁基板2と、グレーズ13と、配線層20と、発熱抵抗体30とを備える。グレーズ13は、セラミック基板3上に配置されている。配線層20は、グレーズ13及び平坦化層10上に配置されている。発熱抵抗体30は、グレーズ13上に配置されており、かつ、配線層20に接続されている。
【0111】
平坦化層10はセラミック層であるため、平坦化層10上に配線層20を形成する際に、平坦化層10が軟化することが防止される。平坦化層10の軟化に起因して配線層20に印加される応力が減少する。配線層20の断線が防止され得る。また、平坦化層10の形成時に、グレーズ13の形が保たれ得る。そのため、グレーズ13と配線層20と発熱抵抗体30とを含むサーマルプリントヘッド8の突出部16が印刷媒体(例えば、感熱記録紙)に十分に接触することができる。サーマルプリントヘッド8の印字品質が向上し得る。
【0112】
本実施の形態のサーマルプリントヘッド8の製造方法は、本実施の形態の絶縁基板2の製造方法によって絶縁基板2を準備すること(ステップS11及びステップS13)と、セラミック基板3上にガラスペースト(第1ガラスペースト)を塗布して、ガラスペーストを焼成することによって、グレーズ13を形成すること(ステップS12)と、グレーズ13及び平坦化層10上に、導電材料を含む第2ペーストを塗布して、第2ペーストを焼成することによって、配線層20を形成すること(ステップS14)と、グレーズ13及び配線層20上に抵抗体ペーストを塗布して、抵抗体ペーストを焼成することによって、発熱抵抗体30を形成すること(ステップS15)とを備える。第1ペーストの焼成温度は、ガラスペースト(第1ガラスペースト)の焼成温度よりも低い。
【0113】
平坦化層10はセラミック層であるため、平坦化層10上に配線層20を形成する際に、平坦化層10が軟化することが防止される。平坦化層10の軟化に起因して配線層20に印加される応力が減少する。配線層20の断線が防止され得る。また、平坦化層10の形成時に、グレーズ13の形が保たれ得る。そのため、グレーズ13と配線層20と発熱抵抗体30とを含むサーマルプリントヘッド8の突出部16が印刷媒体(例えば、感熱記録紙)に十分に接触することができる。サーマルプリントヘッド8の印字品質が向上し得る。
【0114】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
主面を含むセラミック基板と、
前記主面を覆う平坦化層とを備え、
前記平坦化層は、セラミック層である、絶縁基板。
(付記2)
前記主面に陥没が形成されており、
前記陥没は前記平坦化層で埋め込まれている、付記1に記載の絶縁基板。
(付記3)
前記セラミック層は、前記陥没のサイズよりも小さな粒径を有するセラミック粉末を焼結することによって形成されたセラミック粉末焼成層である、付記2に記載の絶縁基板。
(付記4)
前記セラミック粉末の前記粒径は、前記陥没のサイズの三分の一以下である、付記3に記載の絶縁基板。
(付記5)
前記陥没のサイズは、10μm以上であり、
前記セラミック粉末の前記粒径は、2μm以下である、付記3または付記4に記載の絶縁基板。
(付記6)
付記1から付記5のいずれかに記載の前記絶縁基板と、
前記平坦化層上に配置されている配線層とを備える、電気配線基板。
(付記7)
付記1から付記5のいずれかに記載の前記絶縁基板と、
前記セラミック基板上に配置されているグレーズと、
前記グレーズ及び前記平坦化層上に配置されている配線層と、
前記グレーズ上に配置されており、かつ、前記配線層に接続されている発熱抵抗体とを備える、サーマルプリントヘッド。
(付記8)
主面を含むセラミック基板を準備することと、
前記主面上に第1ペーストを塗布して、前記第1ペーストを焼成することによって、平坦化層を形成することとを備え、
前記平坦化層は、セラミック層である、絶縁基板の製造方法。
(付記9)
前記主面に陥没が形成されており、
前記陥没は前記第1ペーストで埋め込まれる、付記8に記載の絶縁基板の製造方法。
(付記10)
前記第1ペーストは、前記陥没のサイズよりも小さな粒径を有するセラミック粉末を含み、
前記平坦化層は、前記セラミック粉末が焼結されたセラミック粉末焼成層である、付記9に記載の絶縁基板の製造方法。
(付記11)
前記セラミック粉末の前記粒径は、前記陥没のサイズの三分の一以下である、付記10に記載の絶縁基板の製造方法。
(付記12)
前記陥没のサイズは、10μm以上であり、
前記セラミック粉末の前記粒径は、2μm以下である、付記10または付記11に記載の絶縁基板の製造方法。
(付記13)
付記8から付記12のいずれかに記載された前記絶縁基板の製造方法によって絶縁基板を製造することと、
前記平坦化層上に第2ペーストを塗布して、前記第2ペーストを焼成することによって、配線層を形成することとを備える、電気配線基板の製造方法。
(付記14)
付記8から付記12のいずれかに記載された前記絶縁基板の製造方法によって絶縁基板を製造することと、
前記セラミック基板上にガラスペーストを塗布して、前記ガラスペーストを焼成することによって、グレーズを形成することと、
前記グレーズ及び前記平坦化層上に導電材料を含む第2ペーストを塗布して、前記第2ペーストを焼成することによって、配線層を形成することと、
前記グレーズ及び前記配線層上に、抵抗体ペーストを塗布して、前記抵抗体ペーストを焼成することによって、発熱抵抗体を形成することとを備え、
前記第1ペーストの焼成温度は、前記ガラスペーストの焼成温度よりも低い、サーマルプリントヘッドの製造方法。
【0115】
今回開示された実施の形態1及び実施の形態2はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【符号の説明】
【0116】
1 電気配線基板、2 絶縁基板、3 セラミック基板、3a,4a 主面、3b 陥没、4 平坦化層、5 配線層、5b 曲がり部、8 サーマルプリントヘッド、8a ヘッド本体、8b,8c コネクタ、10 平坦化層、11 中央部、12 周辺部、13 グレーズ、14 ヒーターグレーズ、15 ダイボンディンググレーズ、16 突出部、20 配線層、21 共通配線、22 第1帯状部、23 連結部、24 迂回部、25 個別配線、26 第2帯状部、26a,26b 曲がり部、27 ボンディング部、28,29 パッド、30 発熱抵抗体、31 発熱部、35 保護層、36 第1保護層、37 第2保護層、38 支持ガラス層、41 駆動IC、43,44 導電ワイヤ、50 封止部材。