(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111481
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】音響特性算出装置、音響特性算出方法、プログラムおよび音響特性算出システム
(51)【国際特許分類】
G10K 15/04 20060101AFI20240809BHJP
【FI】
G10K15/04 302F
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016010
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(74)【代理人】
【氏名又は名称】阿形 直起
(72)【発明者】
【氏名】内村 洋文
(72)【発明者】
【氏名】谷口 穂鷹
(72)【発明者】
【氏名】山口 陽平
【テーマコード(参考)】
5D208
【Fターム(参考)】
5D208DA02
5D208DC01
5D208DC02
(57)【要約】
【課題】防音材を介した音の音響特性をユーザが把握しやすい態様で示すことを可能とする音響特性算出装置等を提供する。
【解決手段】音響特性算出装置は、防音材の防音特性を記憶する記憶部と、音源データを取得する取得部と、防音材の防音特性に基づいて、防音材を介した、音源データの音の音響特性を算出する算出部と、算出された音響特性を有する音を出力する出力部と、を有する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防音材の防音特性を記憶する記憶部と、
音源データを取得する取得部と、
前記防音材の防音特性に基づいて、前記防音材を介した、前記音源データの音の音響特性を算出する算出部と、
前記算出された音響特性を有する音を出力する出力部と、
を有することを特徴とする音響特性算出装置。
【請求項2】
前記出力部は、前記防音材を介する前後の音響特性のそれぞれを示す音響スペクトルをさらに出力する、
請求項1に記載の音響特性算出装置。
【請求項3】
前記記憶部は、複数の防音材の防音特性を記憶し、
ユーザの操作に基づいて、前記複数の防音材のうちのいずれかの防音材を選択する選択部をさらに有し、
前記算出部は、前記選択された防音材を介した、前記音源データの音の音響特性を算出する、
請求項1に記載の音響特性算出装置。
【請求項4】
前記記憶部は、防音材の複数の用途と各用途に適した防音特性とを相互に関連付けて記憶し、
前記選択部は、防音材の用途を指定するユーザの操作を受け付け、前記指定された用途に適した防音特性を有する防音材のうちのいずれかを選択する、
請求項3に記載の音響特性算出装置。
【請求項5】
前記算出された音響特性において防音すべき音域を設定する設定部と、
前記設定された音域に基づいて前記複数の防音材のうちのいずれかを選択する第2選択部と、
前記第2選択部によって選択された防音材を介した、前記音源データの音の音響特性を算出する第2算出部と、
前記第2算出部によって算出された音響特性を有する音を出力する第2出力部と、をさらに有する、
請求項3に記載の音響特性算出装置。
【請求項6】
前記設定部は、前記設定された音域において目標レベルを設定し、
前記第2選択部は、前記再選択された防音材を介した音源データの音の前記設定された音域におけるレベルが目標レベルを満たすように、前記複数の防音材のうちのいずれかを再選択する、
請求項5に記載の音響特性算出装置。
【請求項7】
前記選択部は、ユーザの操作に基づいて、前記選択された防音材の厚さを指定し、
前記算出部は、前記指定された厚さを有する前記選択された防音材の防音特性に基づいて、当該防音材を介した、音源データの音響特性を算出する、
請求項3に記載の音響特性算出装置。
【請求項8】
前記選択部は、前記複数の防音材のうちの二つ以上の防音材を選択し、
前記算出部は、前記二つ以上の防音材の防音特性に基づいて、前記二つ以上の防音材を介した音源データの音の音響特性を算出する、
請求項3に記載の音響特性算出装置。
【請求項9】
音響特性算出装置によって実行される音響特性算出方法であって、
防音材の防音特性を記憶し、
音源データを取得し、
前記防音材の防音特性に基づいて、前記防音材を介した音源データの音の音響特性を算出し、
前記算出された音響特性を有する音を出力する、
ことを含むことを特徴とする音響特性算出方法。
【請求項10】
防音材の防音特性を記憶する記憶部を備えるコンピュータのプログラムであって、
音源データを取得し、
前記防音材の防音特性に基づいて、前記防音材を介した音源データの音の音響特性を算出し、
前記算出された音響特性を有する音を出力する、
ことを前記コンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項11】
相互に通信可能に接続されたサーバおよび通信端末を有する音響特性算出システムであって、
防音材の防音特性を記憶する記憶手段と、
音源データを取得する取得手段と、
前記防音材の防音特性に基づいて、前記防音材を介した音源データの音の音響特性を算出する算出手段と、
前記算出された音響特性を有する音を出力する出力手段と、
を有することを特徴とする音響特性算出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響特性算出装置、音響特性算出方法、プログラムおよび音響特性算出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
家屋や自動車等に防音材を配置するときには、事前に音響シミュレーションが行われ、所望の音響特性が得られるような防音材が選択される。特許文献1には、所定の受音点における音圧レベルを演算によって算出する音響シミュレーション装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
防音材を適切に選択するためには、防音材を介した音の音圧レベルを提示するだけでなく、その音がどのように聞こえるかをユーザが把握しやすい態様で示すことが好ましい。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、防音材を介した音の音響特性をユーザが把握しやすい態様で示すことを可能とする音響特性算出装置、音響特性算出方法、プログラムおよび音響特性算出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る音響特性算出装置は、防音材の防音特性を記憶する記憶部と、音源データを取得する取得部と、防音材の防音特性に基づいて、防音材を介した、音源データの音の音響特性を算出する算出部と、算出された音響特性を有する音を出力する出力部と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、出力部は、防音材を介する前後の音響特性のそれぞれを示す音響スペクトルをさらに出力することが好ましい。
【0008】
また、記憶部は、複数の防音材の防音特性を記憶し、音響特性算出装置は、ユーザの操作に基づいて、複数の防音材のうちのいずれかの防音材を選択する選択部をさらに有し、算出部は、選択された防音材を介した、音源データの音の音響特性を算出することが好ましい。
【0009】
また、記憶部は、防音材の複数の用途と各用途に適した防音特性とを相互に関連付けて記憶し、選択部は、防音材の用途を指定するユーザの操作を受け付け、指定された用途に適した防音特性を有する防音材のうちのいずれかを選択することが好ましい。
【0010】
また、音響特性算出装置は、算出された音響特性において防音すべき音域を設定する設定部と、設定された音域に基づいて複数の防音材のうちのいずれかを選択する第2選択部と、第2選択部によって選択された防音材を介した、音源データの音の音響特性を算出する第2算出部と、第2算出部によって算出された音響特性を有する音を出力する第2出力部と、をさらに有することが好ましい。
【0011】
また、設定部は、設定された音域において目標レベルを設定し、第2選択部は、再選択された防音材を介した音源データの音の設定された音域におけるレベルが目標レベルを満たすように、複数の防音材のうちのいずれかを再選択することが好ましい。
【0012】
また、選択部は、ユーザの操作に基づいて、選択された防音材の厚さを指定し、算出部は、指定された厚さを有する選択された防音材の防音特性に基づいて、防音材を介した、音源データの音響特性を算出することが好ましい。
【0013】
また、選択部は、複数の防音材のうちの二つ以上の防音材を選択し、算出部は、二つ以上の防音材の防音特性に基づいて、二つ以上の防音材を介した音源データの音の音響特性を算出することが好ましい。
【0014】
本発明の実施形態に係る音響特性算出方法は、音響特性算出装置によって実行される音響特性算出方法であって、防音材の防音特性を記憶し、音源データを取得し、防音材の防音特性に基づいて、防音材を介した音源データの音の音響特性を算出し、算出された音響特性を有する音を出力する、ことを含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の実施形態に係るプログラムは、防音材の防音特性を記憶する記憶部を備えるコンピュータのプログラムであって、音源データを取得し、防音材の防音特性に基づいて、防音材を介した音源データの音の音響特性を算出し、算出された音響特性を有する音を出力する、ことをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0016】
本発明の実施形態に係る音響特性算出システムは、相互に通信可能に接続されたサーバおよび通信端末を有する音響特性算出システムであって、防音材の防音特性を記憶する記憶手段と、音源データを取得する取得手段と、防音材の防音特性に基づいて、防音材を介した音源データの音の音響特性を算出する算出手段と、算出された音響特性を有する音を出力する出力手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る音響特性算出装置、音響特性算出方法、プログラムおよび音響特性算出システムは、防音材を介した音の音響特性をユーザが把握しやすい態様で示すことを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】音響特性算出装置1の機能ブロック図である。
【
図2】防音材テーブルT1のデータ構造の例を示す図である。
【
図3】用途テーブルT2のデータ構造の例を示す図である。
【
図9】音響特性算出処理の流れの例を示す図である。
【
図10】音響特性算出システム2の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の様々な実施形態について説明する。本発明の技術的範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明及びその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る音響特性算出装置1の機能ブロック図である。音響特性算出装置1は、防音材を介した音を出力する。音響特性算出装置1は、PC(Personal Computer)、携帯電話機、スマートフォン、タブレット端末、携帯ゲーム機等の情報処理端末である。音響特性算出装置1は、記憶部11、通信部12、表示部13、操作部14、音声入力部15、音声出力部16および処理部17を有する。
【0021】
記憶部11は、プログラムおよびデータを記憶するための構成であり、例えば半導体メモリを備える。記憶部11は、プログラムとして、処理部17による処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム等を記憶する。プログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)等のコンピュータ読取可能かつ非一時的な可搬型記憶媒体から記憶部11にインストールされる。
【0022】
通信部12は、音響特性算出装置1を他の装置と通信可能にする構成であり、通信インタフェース回路を備える。通信部12が備える通信インタフェース回路は、有線LAN(Local Area Network)又は無線LAN等の通信インタフェース回路である。通信部12は、データを他の装置から受信して処理部17に供給するとともに、処理部17から供給されたデータを他の装置に送信する。
【0023】
表示部13は、画像を表示するための構成であり、例えば液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等のディスプレイを備える。表示部13は、処理部17から供給された画像データに基づいて画像を表示する。
【0024】
操作部14は、音響特性算出装置1に対する操作を受け付けるための構成であり、例えばキーボード、キーパッド、マウス等を備える。操作部14は、表示部13と一体化されたタッチパネルを備えてもよい。操作部14は、受け付けた操作に応じた信号を生成し、処理部17に供給する。
【0025】
音声入力部15は、音声の入力を受け付けるための構成であり、マイクを備える。音声入力部15は、入力された音声に応じた電気信号を生成し、処理部17に供給する。
【0026】
音声出力部16は、音声を出力するための構成であり、スピーカを備える。音声出力部16は、処理部17から供給された信号に応じた音声を出力する。
【0027】
処理部17は、音響特性算出装置1の動作を統括的に制御する構成であり、一つまたは複数のプロセッサおよびその周辺回路を備える。処理部17は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を備える。処理部17は、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等を備えてもよい。処理部17は、記憶部11に記憶されているプログラムに基づいて音響特性算出装置1の各種処理が適切な手順で実行されるように、各構成の動作を制御するとともに、各種の処理を実行する。
【0028】
処理部17は、取得部171、選択部172、算出部173、出力部174、設定部175、第2選択部176、第2算出部177、第2出力部178を有する。これらの各部は、処理部17によって実行されるプログラムによって実現される機能モジュールである。これらの各部は、専用の処理回路として音響特性算出装置1に実装されてもよい。
【0029】
図2は、記憶部11に記憶される防音材テーブルT1のデータ構造の例を示す図である。防音材テーブルT1は、複数の防音材の名称および防音特性を相互に関連付けて記憶する。
【0030】
名称は、複数の防音材のそれぞれを一意に識別するための文字列である。防音材は、遮音パネル等の、音を反射させることにより音の透過を防止する遮音材と、繊維等により形成され、音を吸収することにより音の透過を防止する吸音材とを含む。防音特性は、防音材に入力する音と防音材を透過した音との関係を示す値であり、例えば、各周波数における防音材の透過損失である。防音特性は、各周波数における吸音率でもよい。防音特性は防音材の厚さに応じて異なるため、防音材の複数の厚さのそれぞれについて異なる防音特性が記憶される。防音材テーブルT1の各データは、あらかじめ設定される。
【0031】
図3は、記憶部11に記憶される用途テーブルT2のデータ構造の例を示す図である。用途テーブルT2は、複数の用途および各用途に適した防音特性を相互に関連付けて記憶する。用途テーブルT2の各データは、あらかじめ設定される。
【0032】
図4は、音響特性算出装置1の表示部13に表示される音源選択画面G1の例を示す図である。音源選択画面G1は、防音材によって防音される音の音源データを選択するための画面である。音源選択画面G1は、操作部14に対するユーザの操作によって音響特性算出アプリケーションプログラムが実行されたことに応じて表示される。音源選択画面G1は、選択オブジェクトG11および決定オブジェクトG12を含む。
【0033】
選択オブジェクトG11は、あらかじめ記憶部11に記憶された複数の音源データのうちのいずれかを選択するためのオブジェクトであり、例えばドロップダウンリストである。決定オブジェクトG12は、選択オブジェクトG11によって選択された音源データの音を防音材に入力される音として決定するためのオブジェクトである。
【0034】
図5は、表示部13に表示される用途指定画面G2の例を示す図である。用途指定画面G2は、防音材の用途を指定するための画面である。用途指定画面G2は、音源選択画面G1において決定オブジェクトG12が選択されたことに応じて表示される。用途指定画面G2は、指定オブジェクトG21および決定オブジェクトG22を含む。
【0035】
指定オブジェクトG21は、あらかじめ設定された複数の用途のうちのいずれかを指定するためのオブジェクトであり、例えばドロップダウンリストである。決定オブジェクトG22は、指定オブジェクトG21によって指定された用途を防音材の用途として決定するためのオブジェクトである。
【0036】
図6は、表示部13に表示される防音材選択画面G3の例を示す図である。防音材選択画面G3は、音響特性を算出する対象となる一つ以上の防音材を選択するための画面である。防音材選択画面G3は、用途指定画面G2において決定オブジェクトG22が選択されたことに応じて表示される。防音材選択画面G3は、防音材選択オブジェクトG31、厚さ指定オブジェクトG32、追加オブジェクトG33、表示オブジェクトG34および計算オブジェクトG35を含む。
【0037】
防音材選択オブジェクトG31は、音響特性を算出する対象となる防音材の種類を防音材テーブルT1に記憶された複数の防音材のうちから選択するためのオブジェクトであり、例えばドロップダウンリストである。厚さ指定オブジェクトG32は、音響特性を算出する対象となる防音材の厚さを選択するためのオブジェクトであり、例えばドロップダウンリストである。用途指定画面において選択された用途に適した防音特性を有する種類および厚さの防音材のみが防音材選択オブジェクトG31および厚さ指定オブジェクトG32によって選択可能である。追加オブジェクトG33は、防音材選択オブジェクトG31によって選択された種類および厚さ指定オブジェクトG32によって指定された厚さの防音材を、音響特性を算出する対象となる防音材として追加するためのオブジェクトである。表示オブジェクトG34は、追加オブジェクトG33によって追加された防音材を一覧表示する。ユーザが防音材選択オブジェクトG31、厚さ指定オブジェクトG32および追加オブジェクトG33を用いて防音材を追加するたびに、防音材が表示オブジェクトG34に追加される。したがって、ユーザは、音響特性を算出する対象となる防音材として、二つ以上の防音材を選択することができる。計算オブジェクトG35は、表示オブジェクトG34に表示されている防音材を介した音の音響特性を算出するためのオブジェクトである。
【0038】
図7は、表示部13に表示される音響特性表示画面G4の例を示す図である。音響特性表示画面G4は、防音材を介した音の音響特性を表示するための画面である。音響特性表示画面G4は、防音材選択画面G3において計算オブジェクトG35が選択されたことに応じて表示される。音響特性表示画面G4は、表示オブジェクトG41、再生オブジェクトG42、入力オブジェクトG43、終了オブジェクトG44および設定オブジェクトG45を含む。
【0039】
表示オブジェクトG41は、音源データの音の音響特性と防音材を介した音の音響特性を表示する。
図7に示す例では、音源データの音の音響特性が破線の音響スペクトルにより、防音材を介した音の音響特性が実線の音響スペクトルによりそれぞれ表示されている。再生オブジェクトG42は、防音材を介した音を再生するためのオブジェクトである。入力オブジェクトG43は、防音材を介した音の音響特性においてさらに防音すべき音域と、その音域における目標レベルとの入力を受け付けるためのオブジェクトである。終了オブジェクトG44は、音響特性算出アプリケーションプログラムの実行を終了するためのオブジェクトである。設定オブジェクトG45は、防音すべき音域および目標レベルを入力オブジェクトG43に入力された値に設定するためのオブジェクトである。
【0040】
図8は、表示部13に表示される防音材提示画面G5の例を示す図である。防音材提示画面G5は、音響特性表示画面G4において設定された音域において目標レベルを満たすことが可能な防音材を提示するための画面である。防音材提示画面G5は、音響特性表示画面G4において設定オブジェクトG45が選択されたことに応じて表示される。防音材提示画面G5は、表示オブジェクトG51および計算オブジェクトG52を含む。
【0041】
表示オブジェクトG51は、設定された音域において目標レベルを満たすことが可能な防音材を表示する。表示オブジェクトG51に表示される防音材は、目標レベルを満たすように音響特性算出装置1によって選択された防音材である。計算オブジェクトG52は、表示オブジェクトG51に表示されている防音材を介した音の音響特性を算出するためのオブジェクトである。計算オブジェクトG52が選択されると、音響特性表示画面G4が表示される。
【0042】
図9は、音響特性算出装置1によって実行される音響特性算出処理の流れの例を示す図である。音響特性算出処理は、ユーザが操作部14を操作して、音響特性算出アプリケーションプログラムが実行されたことに応じて表示される。音響特性算出処理は、記憶部11に記憶されたプログラムに基づいて、処理部17が音響特性算出装置1の他の構成と協働することにより実現される。
【0043】
最初に、取得部171は、音源データを取得する(ステップS101)。取得部171は、記憶部11に記憶された表示データに基づいて、音源選択画面G1を表示部13に表示する。取得部171は、音源選択画面G1の決定オブジェクトG12を選択するユーザの操作を受け付ける。取得部171は、決定オブジェクトG12が選択されたことに応じて、あらかじめ記憶部11に記憶された複数の音源データのうち、選択オブジェクトG11によって選択された音源データを記憶部11から取得する。
【0044】
次に、選択部172は、防音材の用途を指定するユーザの操作を受け付ける(ステップS102)。選択部172は、記憶部11に記憶された表示データに基づいて、用途指定画面G2を表示部13に表示する。選択部172は、用途指定画面G2の決定オブジェクトG22を選択するユーザの操作を、防音材の用途を指定する操作として受け付ける。選択部172は、決定オブジェクトG22が選択されたことに応じて、あらかじめ用途テーブルT2に記憶された複数の用途のうち、指定オブジェクトG21によって指定された用途を防音材の用途として取得する。
【0045】
次に、選択部172は、防音材テーブルT1に記憶された複数の防音材のうちのいずれかを選択する(ステップS103)。選択部172は、防音材テーブルT1に記憶された複数の防音材のうちから、ユーザによって指定された用途に適した防音特性を有する防音材を抽出する。例えば、選択部172は、用途テーブルT2において、ユーザによって指定された用途に関連付けられた防音特性を取得する。選択部172は、防音材テーブルT1に記憶された防音材のうちから、全ての周波数において指定された用途に関連付けられた防音特性よりも防音の程度が大きい防音特性を有する種類および厚さの防音材を抽出する。
【0046】
選択部172は、抽出された種類および厚さの防音材のみが選択可能となるような防音材選択オブジェクトG31および厚さ指定オブジェクトG32を含む防音材選択画面G3の表示データを生成する。選択部172は、生成した表示データに基づいて防音材選択画面G3を表示部13に表示する。
【0047】
選択部172は、防音材選択画面G3の計算オブジェクトG35を選択するユーザの操作を受け付ける。選択部172は、計算オブジェクトG35が選択されたことに応じて、表示オブジェクトG34に表示されている種類および厚さの防音材を選択する。
【0048】
次に、算出部173は、選択された防音材を介した音源データの音の音響特性を算出する(ステップS104)。算出部173は、音源データに周波数解析を行い、音源データの音の音響スペクトルを算出する。また、算出部173は、指定された厚さを有する、選択された種類の防音材の防音特性を防音材テーブルT1から取得する。二つ以上の防音材が選択された場合、算出部173は、各防音材の透過損失である防音特性を各周波数において加算したものを選択された防音材の防音特性として取得する。算出部173は、各周波数において、算出した音響スペクトルの強度値から取得した透過損失である防音特性の値を減ずることにより、防音材を介した音の音響特性を算出する。なお、防音特性が吸音率である場合、算出部173は、音響スペクトルの強度値に吸音率を乗ずることにより防音材を介した音の音響特性を算出する。
【0049】
次に、出力部174は、防音材を介する前後の音の音響特性を示す音響スペクトルを出力するとともに、算出された音響特性を有する音を出力する(ステップS105)。出力部174は、防音材を介する前の音源データの音の音響特性と算出された音響特性とを表示する表示オブジェクトG41を含む音響特性表示画面G4の表示データを生成する。出力部174は、表示データに基づいて音響特性表示画面G4を表示部13に表示することにより、音響スペクトルを出力する。また、出力部174は、算出された音響特性を有する音の音声データを生成する。出力部174は、音響特性表示画面G4の再生オブジェクトG42を選択する操作に応じて、音声データに基づいて算出された音響特性を有する音を音声出力部16から出力する。
【0050】
次に、設定部175は、設定操作がされたか否かを判定する(ステップS106)。設定操作は、算出された音響特性においてさらに防音すべき音域およびその音域の目標レベルを設定するための操作であり、音響特性表示画面G4の設定オブジェクトG45を選択する操作である。
【0051】
設定操作がされなかった場合(ステップS106-No)、すなわち音響特性表示画面G4の終了オブジェクトG44を選択する操作がされた場合、音響特性算出処理は終了する。
【0052】
設定操作がされた場合(ステップS106-Yes)、設定部175は、算出された音響特性において防音すべき音域およびその音域における目標レベルを設定する(ステップS107)。設定部175は、音響特性表示画面G4の入力オブジェクトG43に入力された音域およびレベルを、防音すべき音域および目標レベルとして設定する。
【0053】
次に、第2選択部176は、設定された音域におけるレベルが目標レベルを満たすように、複数の防音材のうちのいずれかを選択する(ステップS108)。例えば、第2選択部176は、直前に音響特性を算出したときに選択されていた防音材を選択するとともに、目標レベルを満たすように他の防音材を追加選択する。
【0054】
この場合、第2選択部176は、設定された音域における防音材を介した音の音響特性のレベルと目標レベルとの差分を算出する。また、第2選択部176は、防音材テーブルT1に記憶された複数の防音材の、設定された音域における防音特性を取得する。第2選択部176は、設定された音域において、算出された差分を超え、かつ差分に最も近い防音特性を有する種類および厚さの防音材を選択する。第2選択部176は、直前に実行されていたステップS103またはS108で選択された防音材と、今回選択された防音材とを表示する表示オブジェクトG51を含む防音材提示画面G5の表示データを生成する。第2選択部176は、表示データに基づいて、防音材提示画面G5を表示部13に表示する。
【0055】
第2選択部176は、直前に音響特性を算出したときに選択されていた防音材を選択することなく、防音材テーブルT1に記憶された複数の防音材のうちから一つまたは二つ以上の防音材を選択してもよい。この場合、第2選択部176は、設定された音域におけるレベルが目標レベルに等しく、かつ他の音域におけるレベルが直前に算出された音響特性に等しい音響特性を目標特性として算出する。第2選択部176は、防音材テーブルT1から、目標特性に近い防音特性を有する種類および厚さの防音材を、透過損失の合計値が目標特性を満たすまで順に選択する。目標特性に近い防音特性とは、例えば、目標特性との間のRMSE(Root Mean Squared Error)が最小となる防音特性である。
【0056】
次に、第2算出部177は、第2選択部176によって選択された防音材を介した音の音響特性を算出する(ステップS109)。第2算出部177は、ステップS104と同様にして音響特性を算出する。
【0057】
次に、第2出力部178は、防音材を介する前の音源データの音の音響特性および第2算出部177によって音響特性を示す音響スペクトルを出力するとともに、第2算出部177によって算出された音響特性を有する音を出力する(ステップS105)。出力部174は、ステップS105と同様に、音響特性表示画面G4を表示部13に表示することにより音響スペクトル出力する。また、出力部174は、ステップS105と同様に、音声出力部16から音を出力する。
【0058】
次に、設定部175は、再設定操作がされたか否かを判定する(ステップS111)。再設定操作は、ステップS110において表示された音響特性表示画面G4において設定オブジェクトG45を選択する操作である。
【0059】
再設定操作がされなかった場合(ステップS111-No)、すなわち音響特性表示画面G4の終了オブジェクトG44を選択する操作がされた場合、音響特性算出処理は終了する。
【0060】
再設定操作がされた場合(ステップS111-Yes)、音響特性算出処理はステップS107に戻り、設定部175は防音すべき音域および目標レベルを再設定する。
【0061】
以上説明したように、音響特性算出装置1は、防音材の防音特性に基づいて、防音材を介した音源データの音響特性を算出し、算出された音響特性を有する音を出力する。これにより、音響特性算出装置1は、防音材を介した音の音響特性をユーザが把握しやすい態様で示すことを可能とする。
【0062】
また、防音材を介した音の音響特性がユーザにとって把握しやすい態様で示されることにより、ユーザは少ない回数の音響特性算出処理で最適な防音材を選択することができ、音響特性算出処理による処理負荷が低減される。
【0063】
また、音響特性算出装置1は、ユーザの操作に基づいて複数の防音材のうちのいずれかの防音材を選択し、選択された防音材を介した音の音響特性を有する音を出力する。これにより、音響特性算出装置1は、複数の防音材を介した音の音響特性をユーザが把握しやすい態様で示し、ユーザが複数の防音材から最適な防音材を容易に選択することを可能とする。
【0064】
また、音響特性算出装置1は、防音材の用途を指定するユーザの操作を受け付け、指定された用途に適した防音特性を有する防音材のうちのいずれかを選択する。これにより、音響特性算出装置1は、用途に適した防音材を介した音の音響特性をユーザが把握しやすい態様で示すことを可能とする。
【0065】
また、音響特性算出装置1は、算出された音響特性において防音すべき音域に基づいて複数の防音材のうちのいずれかを再選択し、再選択された防音材を介した音源データの音響特性を再算出し、再算出された音響特性を有する音を再出力する。これにより、音響特性算出装置1は、ユーザの希望に沿った適切な防音材を提示することを可能とする。
【0066】
また、音響特性算出装置1は、ユーザの操作に基づいて二つ以上の防音材を選択し、選択された二つ以上の防音材を介した音の音響特性を算出し、算出された音響特性を有する音を出力する。これにより、音響特性算出装置1は、複数の防音材を介した音の音響特性をユーザが把握しやすい態様で示すことを可能とする。
【0067】
音響特性算出装置1には、次に述べるような変形例が適用されてもよい。
【0068】
上述した説明では、防音材テーブルT1は複数の防音材を記憶するものとしたが、防音材テーブルT1は一つの防音材のみを記憶してもよい。このようにしても、音響特性算出装置1は、防音材を介した音の音響特性をユーザが把握しやすい態様で示すことができる。
【0069】
上述した説明では、防音材テーブルT1は防音材の用途を記憶するものとしたが、防音材テーブルT1は防音材の用途を記憶しなくてもよい。この場合、音響特性算出処理のステップS102は省略される。また、この場合、選択部172は、防音材テーブルT1に記憶された全ての防音材が選択可能となるような防音材選択オブジェクトG31および厚さ指定オブジェクトG32を含む防音材選択画面G3の表示データを生成する。
【0070】
上述した音響特性算出処理において、ステップS106-S111は省略されてもよい。すなわち、音響特性算出処理は、音響特性表示画面G4が表示された時点で終了してもよい。
【0071】
上述した説明では、音響特性算出処理のステップS101において、取得部171が記憶部11から音源データを取得するものとしたが、このような例に限られない。取得部171は、通信部12を介して他の装置から音源データを受信することにより取得してもよい。また、取得部171は、音声入力部15に入力された音声から音源データを生成することにより音源データを取得してもよい。
【0072】
上述した説明では、音響特性算出処理のステップS103において選択部172が防音材の厚さを指定するものとしたが、このような例に限られない。選択部172は防音材の厚さを指定しなくてもよい。
【0073】
上述した説明では、音響特性算出処理のステップS103において選択部172が二つ以上の防音材を選択するものとしたが、選択部172は一つの防音材のみを選択するものとしてもよい。このようにしても、音響特性算出装置1は、防音材を介した音の音響特性をユーザが把握しやすい態様で示すことができる。
【0074】
上述した説明では、音響特性算出処理のステップS105において出力部174が音響スペクトルを出力するものとしたが、出力部174は音響スペクトルを出力しなくてもよい。すなわち、音響特性表示画面G4は表示オブジェクトG41を含まなくてもよい。同様に、ステップS110において第2出力部178は音響スペクトルを出力しなくてもよい。
【0075】
上述した説明では、音響特性算出処理のステップS105において出力部174が防音材を介した音を出力するものとしたが、出力部174はさらに防音材を介する前の音を出力してもよい。これにより、ユーザは防音材の効果を把握しやすくなる。同様に、ステップS110において第2出力部178は防音材を介する前の音を出力してもよい。
【0076】
上述した説明では、音響特性算出処理のステップS107において設定部175が防音すべき音域と目標レベルとを設定するものとしたが、このような例に限られない。設定部175は、目標レベルを設定しなくてもよい。この場合、第2選択部176は、ステップS108において、防音すべき音域におけるレベルが直前に算出された音響特性よりも所定量だけ小さくなるように防音材を選択する。
【0077】
上述した説明では、音響特性算出処理のステップS108において、第2選択部176が設定された音域における防音材を介した音の音響特性のレベルと目標レベルとの差分に基づいて防音材を選択するものとしたが、このような例に限られない。第2選択部176は、音響特性、音域および目標レベルが入力された場合に防音材を出力するように学習された学習済みモデルを用いて防音材を選択してもよい。
【0078】
学習済みモデルは、例えばニューラルネットワークである。この場合、学習済みモデルは、算出された音響特性、防音すべき音域および目標レベルに基づく情報が入力された場合の出力と教師データとの間の誤差が小さくなるように、勾配降下法を用いてパラメータを更新することにより学習される。誤差は、例えば選択された防音材の種類および厚さに関するクロスエントロピー誤差、選択された防音材の防音特性と目標レベルとの差分値またはそれらの組合せである。
【0079】
図10は、他の実施形態に係る音響特性算出システム2の概略構成を示す図である。音響特性算出システム2は、複数の通信端末21およびサーバ22を有する。通信端末21は、ユーザが携帯するPC、携帯電話機、スマートフォン、タブレット端末、携帯ゲーム機等の情報処理装置である。複数の通信端末21およびサーバ22は、ネットワークNを介して相互に通信可能に接続される。
【0080】
サーバ22は、音響特性算出装置1と同様の構成を有し、音響特性算出処理を実行する。サーバ22は、表示データに基づいて各種の画面を表示部に表示することに代えて、表示データを通信端末21に送信して通信端末21に各種画面を表示させる点で音響特性算出装置1と相違する。また、サーバ22は、音声データに基づいて音声出力部から音声を出力することに代えて、音声データを通信端末21に送信して通信端末21に音声を出力させる点で音響特性算出装置1と相違する。また、サーバ22は、各種の操作を受け付けることに代えて、通信端末21が受け付けた操作に応じて生成する信号を通信端末21から受信する点で音響特性算出装置1と相違する。音響特性算出システム2は、音響特性算出装置1と同様に、防音材を介した音の音響特性をユーザが把握しやすい態様で示すことを可能とする。また、音響特性算出システム2は、ユーザがサーバ22から離れた場所にいる場合であっても、防音材を介した音の音響特性をユーザが把握しやすい態様で示すことを可能とする。また、音響特性算出システム2のサーバ22は、複数の通信端末21のユーザに対して音響特性算出処理を提供することができるため、システム全体としての記憶容量や処理負荷を低減することを可能とする。
【0081】
音響特性算出システム2において、サーバ22の機能の一部は通信端末21によって実現されてもよい。
【0082】
当業者は、本発明の範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。例えば、上述した実施形態及び変形例は、本発明の範囲において、適宜に組み合わせて実施されてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 音響特性算出装置
171 取得部
172 選択部
173 算出部
174 出力部
175 設定部
176 第2選択部
177 第2算出部
178 第2出力部