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特開2024-111486金属-セラミックス接合基板およびその接合基板製造用の鋳型
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111486
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】金属-セラミックス接合基板およびその接合基板製造用の鋳型
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20240809BHJP
   H01L 23/15 20060101ALI20240809BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20240809BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240809BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
H01L23/12 J
H01L23/14 C
H01L23/36 C
H05K1/03 610D
H05K1/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016021
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】506365131
【氏名又は名称】DOWAメタルテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(72)【発明者】
【氏名】鍔本 朋子
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 和希
(72)【発明者】
【氏名】井手口 悟
【テーマコード(参考)】
5E338
5F136
【Fターム(参考)】
5E338AA01
5E338AA18
5E338BB80
5E338EE21
5E338EE33
5F136BB04
5F136BC03
5F136FA02
5F136FA14
5F136FA16
5F136FA18
5F136GA14
(57)【要約】
【課題】形状精度に優れた金属-セラミックス接合基板、および注湯時のセラミックス基板の浮きを抑制する鋳型を提供する。
【解決手段】セラミックス基板10と、ベース板20と、回路パターン用金属板30と、を備え、セラミックス基板10の第1面11を水平方向に延在させた仮想平面を基準面Pと定義し、基準面Pに対する回路パターン用金属板30の形成側をパターン形成側と定義したとき、セラミックス基板10の周縁における第1面11上に形成されたベース板20の厚さ(A)が、ベース板20の周縁部の高段面23の領域における基準面Pからパターン形成側の表面23までの厚さ(C)より薄くなるように金属-セラミックス接合基板を形成する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属-セラミックス接合基板であって、
セラミックス基板と、
前記セラミックス基板の一方の面である第1面の周縁部、前記セラミックス基板の他方の面である第2面の全面、および前記第1面と前記第2面の間にある前記セラミックス基板の側面に直接接合された金属材料からなるベース板と、
前記セラミックス基板の前記第1面に前記ベース板から離間して直接接合された金属材料からなる回路パターン用金属板と、を備え、
前記セラミックス基板の前記第1面を水平方向に延在させた仮想平面を基準面と定義し、前記基準面に対する前記回路パターン用金属板の形成側をパターン形成側と定義したとき、前記セラミックス基板の周縁における前記第1面上に形成された前記ベース板の厚さ(A)は、前記ベース板の周縁部の高段面の領域における前記基準面から前記パターン形成側の表面までの厚さ(C)より薄いことを特徴とする、金属-セラミックス接合基板。
【請求項2】
前記厚さ(A)は、前記厚さ(C)の10~60%であることを特徴とする、請求項1に記載の金属-セラミックス接合基板。
【請求項3】
前記セラミックス基板の前記側面から、当該側面に対して垂直な方向に沿って前記ベース板の周壁面側に0.25mm離れた位置において、前記基準面から前記パターン形成側の表面までの前記ベース板の厚さ(B)は、前記厚さ(C)の10~80%であることを特徴とする、請求項1または2に記載の金属-セラミックス接合基板。
【請求項4】
前記厚さ(A)は、0.20~0.50mmであることを特徴とする、請求項1または2に記載の金属-セラミックス接合基板。
【請求項5】
前記厚さ(B)は、0.20~0.60mmであることを特徴とする、請求項3に記載の金属-セラミックス接合基板。
【請求項6】
前記厚さ(C)は、0.50~2.00mmであることを特徴とする、請求項1または2に記載の金属-セラミックス接合基板。
【請求項7】
金属-セラミックス接合基板を製造する鋳型であって、
セラミックス基板の下面を支持するセラミックス基板支持部と、
前記セラミックス基板を収容するためのセラミックス基板収容部と、
前記セラミックス基板収容部の下面の周縁部、前記セラミックス基板収容部の上面の全面、および前記下面と前記上面の間にある前記セラミックス基板収容部の側面に金属材料からなるベース板を形成するための注湯領域であるベース板形成部と、
前記セラミックス基板収容部の前記下面に前記ベース板形成部から離間して金属材料からなる回路パターン用金属板を形成するための注湯領域である金属板形成部と、を有し、
前記セラミックス基板支持部の上面を水平方向に延在させた仮想平面を基準面と定義したとき、前記セラミックス基板収容部の周縁部の下方領域における前記基準面から前記鋳型内の底面まで間隔(A)は、前記ベース板形成部の周縁部の高段面形成面が形成された領域における前記基準面から前記鋳型内の底面までの間隔(C)より小さいことを特徴とする、鋳型。
【請求項8】
前記間隔(A)は、前記間隔(C)の10~60%であることを特徴とする、請求項7に記載の鋳型。
【請求項9】
前記間隔(A)は、0.20~0.50mmであることを特徴とする、請求項7または8に記載の鋳型。
【請求項10】
前記間隔(C)は、0.50~2.00mmであることを特徴とする、請求項7または8に記載の鋳型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属-セラミックス接合基板およびその接合基板製造用の鋳型である。
【背景技術】
【0002】
電気自動車、電車、工作機械等の大電流を制御するためのパワーモジュールには、金属-セラミックス接合基板が使用されることがある。金属-セラミックス接合基板は、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金等の金属からなるベース板に絶縁性のセラミックス基板が接合されたものであって、セラミックス基板の一方の面には所定のパターンを形成するための回路パターン用金属板が接合され、その回路パターン用金属板の表面には半導体チップが搭載される。半導体チップで生じた熱は、ベース板のセラミックス基板の接合側とは反対側の面から放熱される。
【0003】
そのような金属-セラミックス接合基板として、特許文献1には、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるベース板をセラミックス基板の一方の面の周縁部と側面および他方の面の全面に直接接合した金属-セラミックス接合基板が開示されている。特許文献1には、このような構造の金属-セラミックス接合基板によれば、半導体チップなどを半田付けする際などの加熱によるベース板の反りのばらつきを抑制することができると記載されている。また、この金属-セラミックス接合基板は、鋳型内にセラミックス基板を配置し、アルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯をセラミックス基板の両面の所定の部分に接触するように注湯した後に溶湯を冷却して固化させる方法(いわゆる溶湯法)で製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-228551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
溶湯法で金属-セラミックス接合基板を製造する場合、例えば特許文献1で用いられるような従来の鋳型においては、鋳型内にセラミックス基板を配置して溶湯を注入した際に、セラミックス基板に浮力が作用し浮き上がることがあった。また、その浮き上がりに伴い、セラミックス基板の配置位置が所定位置から水平方向にずれることがあった。これらの現象は、金属-セラミックス基板の小型化や軽量化が進むにつれて更に生じ易くなる。
【0006】
セラミックス基板の浮きが発生した状態で製造された金属-セラミックス接合基板は、所望の製品寸法に対する寸法のバラつきが大きく、形状精度が低下する。例えばベース板の放熱面(ベース板のセラミックス基板の接合側とは反対側の面)にセラミックス基板の一部が露出したり、ベース板や回路パターン用金属板などの金属部分において、本来は同一の厚みとなるべき部位の厚みのバラつきが大きくなり、所望の製品形状通りに金属-セラミックス接合基板を製造できない等の不具合・不良品が発生する場合もある。また、金属-セラミックス接合基板の放熱面に放熱フィンが形成されたベース板を作製する場合には、例えば浮きが生じたセラミックス基板が上型内の天井面に接触することによって放熱フィンを形成するための注湯空間が閉塞し、放熱フィンが形成されないことも生じ得る。
【0007】
このため、従来の鋳型を用いて製造された金属-セラミックス接合基板は、注湯時におけるセラミックス基板の浮きが原因となって、形状精度の観点では改善の余地があった。
【0008】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、形状精度に優れた金属-セラミックス接合基板、および注湯時のセラミックス基板の浮きを抑制する鋳型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明は、金属-セラミックス接合基板であって、セラミックス基板と、前記セラミックス基板の一方の面である第1面の周縁部、前記セラミックス基板の他方の面である第2面の全面、および前記第1面と前記第2面の間にある前記セラミックス基板の側面に直接接合された金属材料からなるベース板と、前記セラミックス基板の前記第1面に前記ベース板から離間して直接接合された金属材料からなる回路パターン用金属板と、を備え、前記セラミックス基板の前記第1面を水平方向に延在させた仮想平面を基準面と定義し、前記基準面に対する前記回路パターン用金属板の形成側をパターン形成側と定義したとき、前記セラミックス基板の周縁における前記第1面上に形成された前記ベース板の厚さ(A)は、前記ベース板の周縁部の高段面の領域における前記基準面から前記パターン形成側の表面までの厚さ(C)より薄いことを特徴としている。
【0010】
前記厚さ(A)は、前記厚さ(C)の10~60%であってもよい。
【0011】
前記セラミックス基板の前記側面から、当該側面に対して垂直な方向に沿って前記ベース板の周壁面側に0.25mm離れた位置において、前記基準面から前記パターン形成側の表面までの前記ベース板の厚さ(B)は、前記厚さ(C)の10~80%であってもよい。
【0012】
前記厚さ(A)は、0.20~0.50mmであってもよい。
【0013】
前記厚さ(B)は、0.20~0.60mmであってもよい。
【0014】
前記厚さ(C)は、0.50~2.00mmであってもよい。
【0015】
また、別の観点による本発明は、金属-セラミックス接合基板を製造する鋳型であって、セラミックス基板の下面を支持するセラミックス基板支持部と、前記セラミックス基板を収容するためのセラミックス基板収容部と、前記セラミックス基板収容部の下面の周縁部、前記セラミックス基板収容部の上面の全面、および前記下面と前記上面の間にある前記セラミックス基板収容部の側面に金属材料からなるベース板を形成するための注湯領域であるベース板形成部と、前記セラミックス基板収容部の前記下面に前記ベース板形成部から離間して金属材料からなる回路パターン用金属板を形成するための注湯領域である金属板形成部と、を有し、前記セラミックス基板支持部の上面を水平方向に延在させた仮想平面を基準面と定義したとき、前記セラミックス基板収容部の周縁部の下方領域における前記基準面から前記鋳型内の底面まで間隔(A)は、前記ベース板形成部の周縁部の高段面形成面が形成された領域における前記基準面から前記鋳型内の底面までの間隔(C)より小さいことを特徴としている。
【0016】
前記間隔(A)は、前記間隔(C)の10~60%であってもよい。
【0017】
前記間隔(A)は、0.20~0.50mmであってもよい。
【0018】
前記間隔(C)は、0.50~2.00mmであってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、形状精度に優れた金属-セラミックス接合基板、および注湯時のセラミックス基板の浮きを抑制する鋳型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る鋳型で製造された金属-セラミックス接合基板の概略構成を示す断面図である。
図2】実施形態に係る金属-セラミックス接合基板の上面図である。
図3】実施形態に係る金属-セラミックス接合基板の下面図である。
図4】実施形態に係る鋳型の概略構成を説明するための下型の上面図である。
図5】実施形態に係る鋳型の概略構成を説明するための上型の下面図である。
図6】(a)下型に上型を配置した状態で、図4のB-B位置で切断した鋳型の断面を模式的に示した図である。(b)下型に上型を配置した状態で、図4のC-C位置で切断した鋳型の断面を模式的に示した図である。
図7図6の鋳型に注入された溶湯が固化した状態を示す図である。
図8】セラミックス基板の浮きが生じる従来技術の鋳型における溶湯の注入状態を説明するための説明図である。
図9】実施形態に係る鋳型内の各部位の寸法について説明するための鋳型の断面図である。
図10】実施形態に係る金属-セラミックス接合基板の各部位の寸法について説明するための接合基板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。図中のX方向、Y方向およびZ方向は、互いに垂直な方向である。
【0022】
(金属-セラミックス接合基板)
図1は、本実施形態に係る鋳型で製造された金属-セラミックス接合基板1(以下、「接合基板」という)の概略構成を示す断面図である。図2は、図1に示した接合基板1の上面図(接合基板1を上方から見た平面図)であり、図3は、図1に示した接合基板1の下面図(接合基板1を下方から見た平面図)である。図1図2のA-A断面に相当する断面図である。
【0023】
接合基板1は、絶縁材料からなるセラミックス基板10と、金属材料からなるベース板20と、金属材料からなる回路パターン用金属板30を有する。
【0024】
セラミックス基板10は、平板状であって、一方の面である第1面11と、他方の面である第2面12と、第1面11および第2面12の間にある側面13を有する。第1面11は、回路パターン用金属板30が接合される側の表面であり、第2面12は、放熱側の表面である。
【0025】
セラミックス基板10に使用される絶縁材料としては、例えば窒化アルミニウム、窒化珪素、酸化アルミニウム等を主成分とするものが適用される。セラミックス基板10の厚さは、例えば0.25~1mmである。また、セラミックス基板10の形状が矩形である場合には、セラミックス基板10の一辺の長さは例えば20~150mmである。
【0026】
ベース板20は、セラミックス基板10の第1面11の周縁部と、第2面12の全面と、側面13とに直接接合されている。ベース板20に使用される金属材料としては、例えばアルミニウム又はアルミニウムを主原料とするアルミニウム合金等が適用される。
【0027】
第2面12に接するベース板20は、主に放熱部として機能し、回路パターン用金属板30の表面に搭載される半導体チップ等で生じた熱は、ベース板20の放熱面21から放熱される。放熱面21には、例えば、ボルトやねじなどの締結具を用いて金属製の放熱フィンまたは冷却ジャケット等の放熱促進部品(図示せず)が機械的に取り付けられる。ボルトやねじなどを用いて放熱促進部品を締結するためには、ベース板20の周縁部において放熱面21から後述する高段面23まで貫通する貫通孔を設けることが好ましい。なお、ベース板20の放熱面21は、放熱フィン状或いは放熱ピン状の突起部が形成されていてもよい。
【0028】
放熱面21とは反対側、すなわち回路パターンの形成側に位置するベース板20の表面は、段状に形成されている。詳述すると、ベース板20の周壁面22の近傍には、高段面23が形成され、セラミックス基板10の第1面11に接するベース板20の表面には、低段面24が形成されている。なお、高段面23の周壁面22側には、例えばコーナー部のRや面取り等、ベース板20の厚さが周壁面に向かって徐々に薄くなる領域を形成することができる。
【0029】
高段面23と低段面24との間には曲面25が形成されることが好ましく、この曲面25は高段面23の端部と低段面24の端部とを繋いでいる。曲面25は、ベース板20の母材側に向かって凸状に形成され、ベース板20の断面における曲面25の曲率半径の中心はベース板20の外側に位置している。
【0030】
回路パターン用金属板30は、セラミックス基板10の第1面11の周縁部に形成されたベース板20から離間してセラミックス基板10の第1面11に直接接合され、回路パターン用金属板30とベース板20との間の絶縁を確保している。回路パターン用金属板30に使用される金属材料としては、例えばアルミニウム又はアルミニウムを主原料とするアルミニウム合金等が適用される。回路パターン用金属板30の厚さは、例えば0.2~2mmである。なお、回路パターン用金属板30の表面における半導体チップの搭載予定領域には、必要に応じてニッケル系めっき層等が形成される。また、回路パターン用金属板30は、ベース板20の前記高段面23と同じ高さであることが好ましい。
【0031】
本実施形態に係る接合基板1は、以上の構成を有している。この接合基板1は、以下で説明する鋳型を用いた溶湯接合法によって製造することができる。本実施形態に係る鋳型は、注湯時にセラミックス基板10の浮きを抑制できるため、その鋳型を用いて製造された接合基板1は形状精度に優れたものとなる。
【0032】
(接合基板製造用の鋳型)
図4は、本実施形態に係る鋳型の概略構成を説明するための下型の上面図(下型を上方から見た平面図)であり、図5は、上型の下面図(上型を下方から見た平面図)である。図6(a)は、下型に上型を配置した状態で、図4のB-B位置で切断した鋳型の断面を模式的に示した図であり、図6(b)は、下型に上型を配置した状態で、図4のC-C位置で切断した鋳型の断面を模式的に示した図である。
【0033】
鋳型100は、下型110と、その下型110に対向して配置された上型120を備えている。下型110および上型120の内面には、溶湯の凝固物の離型が容易となるようにスプレー等で離型剤を塗布することが好ましい。
【0034】
下型110は、セラミックス基板の下面を支持するセラミックス基板支持部111を有している。セラミックス基板支持部111は、下型110内の底面から上方に突出して形成されており、セラミックス基板を載置できるように上面111aを有している。
【0035】
セラミックス基板支持部111の上には、セラミックス基板を鋳型内に配置したときのセラミックス基板が占有する領域(空間)として、図6(a)及び図6(b)に示すセラミックス基板収容部112が存在する。
【0036】
図4に示すように、セラミックス基板支持部111で囲まれる凹部113は、回路パターン用金属板30の形成部(以下、金属板形成部113という)であり、回路パターン用金属板30を形成するための注湯領域に相当する。なお、この金属板形成部113の形状は、製品仕様に応じた所望のパターン形状に基づいて適宜変更される。
【0037】
図6(a)に示すように、下型110内におけるセラミックス基板支持部111と周壁部114との間の底面は段状に形成されている。詳述すると、下型110の周壁部114の近傍には、ベース板20の高段面23を形成するための高段面形成面115が形成され、セラミックス基板支持部111と高段面形成面115の間には、ベース板20の低段面を形成するための低段面形成面116が形成されている。ここで高段面形成面115とは、下型110内における周壁部114近傍の後述する基準面Pに対して水平な底面の領域を指す。高段面形成面115は、低段面形成面116よりも低い高さに形成されている。
【0038】
高段面形成面115と低段面形成面116との間には曲面117が形成され、この曲面117は、高段面形成面115の端部と低段面形成面116の端部とを繋いでいる。曲面117は、上型120側に向かって凸状であり、下型110の断面における曲面117の曲率半径の中心は下型110の母材側に位置している。
【0039】
上記の曲面117は、それぞれ図1に示したベース板20の曲面25を形成するための部位である。なお、曲面117を設けることは必須ではないが、鋳型内にセラミックス基板10を配置したときに、高段面形成面115から低段面形成面116に流入する溶湯をセラミックス基板10と低段面形成面116との間に充填し易くする観点では、曲面117を設けることが好ましい。
【0040】
図6(b)に示すように、下型110には、セラミックス基板の位置決め用の突起部118が設けられている。この突起部118は、下型110内の底面から上方に向かって延びており、図4に示すように突起部118は、平面視において略矩形状のセラミックス基板支持部111の各辺(セラミックス基板収容部112の各辺)に対応する位置に形成されている。セラミックス基板支持部111にセラミックス基板を載置する際には、セラミックス基板を各突起部118の内方に位置するように載置することによって、セラミックス基板が、溶湯接合に適した所定の位置(図6に示すセラミックス基板収容部112)に配置された状態とすることができる。
【0041】
下型110に上型120を被せて互いを密接させた際には、鋳型100内にベース板20を形成するための注湯領域であるベース板形成部101が形成される。このベース板形成部101と前述した金属板形成部113に対しては、図4に示した注湯孔102から例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金等の溶湯が注入される。なお、図4においては、複数の注湯孔102の一部についてのみ符号を付しているが、図中の丸印は全て注湯孔102を示している。
【0042】
以上で説明した鋳型100で接合基板を製造する際には、セラミックス基板支持部111にセラミックス基板10を載置した後に鋳型100内に溶湯を注入する。そして、図7に示すように、鋳型100内に溶湯が充填された後、溶湯が冷却されて凝固することによって接合基板1が製造される。製造された接合基板1は、鋳型から取り出された後、必要に応じて湯道が切除される。また、回路パターン用金属板30の表面には、半導体チップなどをはんだ付け等により実装するためにNi等のめっきを施すことが好ましい。
【0043】
なお、上型120内の天井面121に放熱フィン或いは放熱ピンを形成するための注湯領域(図示せず)が設けられている場合には、その注湯領域にも溶湯が充填されることによって、ベース板20と放熱フィン或いは放熱ピン(図示せず)とが一体となった接合基板1を製造できる。
【0044】
本実施形態に係る鋳型100によれば、注湯時に生じ得るセラミックス基板10の浮きを抑制した状態で接合基板1を製造することができる。その理由を説明するにあたって、まずは従来の鋳型においてセラミックス基板10の浮きが生じる場合の溶湯の注入状態について図8を参照しながら説明する。
【0045】
従来の鋳型150においては、セラミックス基板支持部111と周壁部との間の底面が段状に形成されていない。このような鋳型150の底部からアルミニウムの溶湯Mを注入した際には、例えば図8(a)に示すように、ベース板形成部101の底面から天井面に向けて溶湯Mが充填されていく。
【0046】
このとき、溶湯Mは重力の影響も受けるため、セラミックス基板10の周縁部においては、セラミックス基板10の上面よりも先に下面に溶湯Mが充填される。これにより、セラミックス基板10の周縁部に浮力が作用し、セラミックス基板10の浮きが生じることがある。また、溶湯Mの流速が大きい場合には、特にセラミックス基板10の浮きが生じ易い。
【0047】
その後、図8(b1)に示すように、回路パターン用の金属板形成部113に溶湯Mが充填された場合、セラミックス基板10の上面側にある溶湯Mの未充填部には窒素が残存する。このとき、セラミックス基板10の上面側に溶湯Mが給湯されていない状況下で、セラミックス基板の下面側から溶湯Mが給湯されるので、溶湯Mの注湯による圧力などによりセラミックス基板10が下から押し上げられる力が発生し、特にセラミックス基板の自重が小さい場合には、セラミックス基板10の浮きが生じ易い。
【0048】
また例えば図8(b2)に示すように、鋳型150に注入される溶湯Mは、金属板形成部113に充填される前にセラミックス基板10の上面側に流入する場合もある。この場合においても、セラミックス基板10の上面側に溶湯Mが未給湯の隙間(空間)がある状況下で、セラミックス基板の下面側から溶湯Mの給湯が続くので、溶湯Mの注湯による圧力などによりセラミックス基板が下から押し上げられる力が発生し、特にセラミックス基板の自重が小さい場合に、セラミックス基板10の浮きが生じ易い。
【0049】
一方、本実施形態に係る鋳型100においては、以下で説明する間隔(A)が間隔(C)よりも小さいことによって、注湯時におけるセラミックス基板10の浮きを抑制することができる。図9は、図6(a)に対応する本実施形態に係る鋳型100内の各部位の寸法について説明するための鋳型100の断面図である。
【0050】
間隔(A)は、領域101aにおける基準面Pから鋳型100内の底面(低段面形成面116)までの間隔である。領域101aとは、セラミックス基板支持部111に隣接し、かつ、セラミックス基板収容部112(セラミックス基板支持部111に載置されるセラミックス基板10の占める領域)の周縁部の下方に位置する領域である。また、基準面Pとは、セラミックス基板支持部111の上面111aを水平方向に延在させた仮想平面である。換言すると、基準面Pは、セラミックス基板支持部111の上面111aに平行かつ上面111aを含む仮想平面である。
【0051】
間隔(C)は、ベース板形成部101の周縁部の高段面形成面115が形成された領域における基準面Pから鋳型100内の底面(高段面形成面115)までの間隔である。
【0052】
上記の間隔(A)が間隔(C)よりも小さい場合、セラミックス基板支持部111にセラミックス基板10を載置したときに、セラミックス基板10の下面と下型110の低段面形成面116との隙間が従来の鋳型に対して狭くなる。これによって、注湯時におけるセラミックス基板10の周縁部に作用する浮力等を小さくすることができ、セラミックス基板10の浮きと位置ずれを抑制できる。
【0053】
後述の実施例でも示すように、セラミックス基板10の浮きを抑制する効果を高めるためには、間隔(A)は、間隔(C)の10~60%であることが好ましい。また、間隔(A)は、0.20~0.50mmであることが好ましく、間隔(C)は、0.50~2.00mmであることが好ましい。
【0054】
高段面形成面115と低段面形成面116との間に曲面117が形成されている場合、測定位置P1における基準面Pから鋳型100内の底面(例えば曲面117)までの間隔(B)は、間隔(C)の10~80%であることが好ましい。測定位置P1とは、セラミックス基板収容部112の側面112cから、その側面112cに垂直な方向に沿って周壁部114側に0.25mm離れた位置である。また、セラミックス基板10の浮きの抑制効果を高める観点では、間隔(B)は、間隔(C)の70%以下であることが好ましく、より好ましくは60%以下である。なお、間隔(B)は、0.20~0.60mmであることが好ましい。
【0055】
なお、当業者が鋳型100の構造を確認すれば、セラミックス基板収容部112の位置を特定でき、セラミックス基板収容部112の側面112cの位置についても特定することができる。また、図4および図6(b)で例示したセラミックス基板収容部112の端部に突起部118が設けられる場合には、突起部118の形成箇所からセラミックス基板収容部112の位置を特定することが可能である。
【0056】
下型110が曲面117を有する場合、曲面117のR止まりの端部(以下、曲面端部117a)は、セラミックス基板収容部112の側面112cよりも周壁部114側に位置していることが好ましい。なお、曲面端部117aとは、鋳型100の断面において2つ存在する曲面117のR止まりの端部のうちの低段面形成面116に隣接する側の端部である。
【0057】
曲面端部117aがセラミックス基板収容部112の側面112cよりも周壁部114側に位置している場合、セラミックス基板収容部112の周縁部の下方領域101aに向かう溶湯の流入方向(図9中の白抜き矢印方向)が水平となり易いと推測される。すなわち、領域101aへの溶湯の流入方向が、セラミックス基板支持部111に載置されたセラミックス基板10の下面と平行になり易く、セラミックス基板10の下面に対して斜めに溶湯が流入する場合と比較して、セラミックス基板10の周縁部の浮きを抑制できると考えられる。
【0058】
その効果を高める観点では、セラミックス基板収容部112の側面112cから曲面端部117aまでの間隔(D)は、0.25mm以上であることが好ましい。なお、間隔(D)は、曲面端部117aがセラミックス基板収容部112の側面112cに対して周壁部114側に位置する場合にはプラスの値として表し、周壁部114側とは反対側に位置する場合にはマイナスの値として表わす。
【0059】
セラミックス基板収容部112の上面112a(セラミックス基板支持部111に載置されたセラミックス基板10の第2面12)と、上型120内の天井面121との間隔(E)は、0.3mm以上であることが好ましい。これにより、注湯時に仮にセラミックス基板10の浮きが生じたとしても、上型120内の天井面121にセラミックス基板10が接触し難くなり、接合基板1の形成不良を抑制できる。間隔(E)は、より好ましくは0.4mm以上である。
【0060】
なお、当業者が鋳型100の構造およびセラミックス基板10の厚さ等を確認すれば、セラミックス基板収容部112の位置を特定できるため、セラミックス基板収容部112の上面112aの位置を特定することは可能である。また、図4および図6(b)で例示したセラミックス基板収容部112の端部に突起部118が設けられる場合には、突起部118の形成箇所からセラミックス基板収容部112の位置を特定できるため、セラミックス基板収容部112の上面112aの位置を特定することは可能である。
【0061】
以上で説明したように本実施形態に係る鋳型100によれば、注湯時におけるセラミックス基板10の浮きを抑制した状態で接合基板1を製造できる。これにより、形状精度に優れた接合基板1を得ることができる。換言すると、本実施形態に係る鋳型100で製造された接合基板1は、以下で説明する特徴を有しており、形状精度に優れたものである。
【0062】
図10は、本実施形態に係る接合基板1の各部位の寸法について説明するための接合基板1の断面図(図2のA-A断面の一部)である。本実施形態に係る接合基板1においては、厚さ(A)が厚さ(C)よりも薄い。
【0063】
厚さ(A)は、セラミックス基板10の周縁における基準面Pから、第1面11上に形成されたベース板20の表面(低段面24)までの厚さである。ここで述べる基準面Pとは、セラミックス基板10の第1面11を水平方向に延在させた仮想平面である。換言すると、基準面Pは、第1面11に平行かつ第1面11を含む仮想平面である。
【0064】
厚さ(C)は、ベース板20の周壁面22の近傍における基準面Pから、パターン形成側に位置するベース板20の表面(高段面23)までの厚さである。なお、高段面23とは、ベース板20の周壁部近傍の基準面Pに対して水平な領域を指す。
【0065】
セラミックス基板10の浮きが抑制された状態で接合基板1を製造し、より形状精度に優れた接合基板1を得るためには、厚さ(A)は、厚さ(C)の10~60%であることが好ましい。厚さ(A)は、0.20~0.50mmであることが好ましく、厚さ(C)は、0.50~2.00mmであることが好ましい。
【0066】
ベース板20の高段面23と低段面24との間に曲面25が形成されている場合、測定位置P1における基準面Pからパターン形成側に位置するベース板20の表面(曲面25)までの厚さ(B)は、厚さ(C)の10~80%であることが好ましい。ここで述べる測定位置P1は、セラミックス基板10の側面13から、その側面13に垂直な方向に沿って周壁面22側に0.25mm離れた位置である。また、厚さ(B)は、厚さ(C)の70%以下であることが好ましく、より好ましくは60%以下である。なお、厚さ(B)は、0.20~0.60mmであることが好ましい。
【0067】
曲面25が形成されている場合、曲面25のR止まりの端部(以下、曲面端部25a)は、セラミックス基板10の側面13よりも周壁面22側に位置していることが好ましい。曲面端部25aとは、接合基板1の断面において2つ存在する曲面25のR止まりの端部のうちの低段面24に隣接する側の端部である。
【0068】
セラミックス基板10の側面13から曲面端部25aまでの間隔(D)は、0.25mm以上であることが好ましい。間隔(D)は、セラミックス基板10の側面13に対して垂直な方向における長さである。
【0069】
セラミックス基板10の第2面12からベース板20の放熱面21までの厚さ(E)は、0.3mm以上であることが好ましい。厚さ(E)は、より好ましくは0.4mm以上である。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0071】
例えば、上記実施形態の構成要件は任意に組み合わせることができる。当該任意の組み合せからは、組み合わせにかかるそれぞれの構成要件についての作用及び効果が当然に得られるとともに、本明細書の記載から当業者には明らかな他の作用及び他の効果が得られる。
【0072】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、又は、上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【実施例0073】
(実施例1)
まず、図4に示す下型110と図5に示す上型120からなる鋳型と同様の形状の鋳型を用い、縦42mm、横41mm、厚さ0.32mmの窒化ケイ素からなるセラミックス基板を下型110内のセラミックス基板支持部111に載置してセラミックス基板収容部112に配置した後、下型110に上型120をかぶせた。
【0074】
この鋳型内の間隔(A)は0.373mm、間隔(B)は0.550mm、間隔(C)は0.697mm、間隔(D)は-0.147mm、間隔(E)は0.446mmである。間隔(A)/間隔(C)は54%、間隔(B)/間隔(C)は79%である。
【0075】
なお、上記の間隔(A)~(E)とは、図9を参照して説明した前述の間隔のことを意味する。すなわち、間隔(A)は、領域101aにおける基準面Pから鋳型100内の底面(低段面形成面116)までの間隔である。間隔(B)は、測定位置P1における基準面Pから鋳型100内の底面(曲面117)までの間隔である。間隔(C)は、ベース板形成部101の周縁部の高段面形成面115が形成された領域における基準面Pから鋳型100内の底面(高段面形成面115)までの間隔である。間隔(D)は、セラミックス基板収容部112の側面112cから曲面端部117aまでの間隔である。間隔(E)は、セラミックス基板収容部112の上面112aと上型120内の天井面121との間隔である。
【0076】
次いで、鋳型100内を窒素雰囲気にした状態で加熱し、アルミニウム溶湯をその表面の酸化膜を取り除きながら注湯孔102から鋳型100内のベース板形成部101および金属板形成部113に注湯した。その後、鋳型100を冷却して溶湯を凝固させてベース板一体型の金属-セラミックス接合体を得た。その後、鋳型100を解体して金属-セラミックス接合体を取り出し、不要な湯道を切除し、金属-セラミックス接合基板を作製した。
【0077】
得られた金属-セラミックス接合基板は、セラミックス基板の一方の面である第1面の周縁部(周縁から幅0.8mmのアルミニウムで覆われている部分)と、側面および他方の面である第2面の全面にベース板が一体に形成されていた。このベース板は、ベース板を放熱面から見たときに縦46mm、横45mmの矩形状であって、ベース板の周縁部の厚さが1.3mm、セラミックス基板の第2面と放熱面の間の厚さ(裏面厚さ)が0.4mm、ベース板の周縁部の幅(セラミックス基板の側面からベース板の周壁面までの距離)が2mmであった。
【0078】
また、セラミックス基板の第1面には、縦36m、横35mm、厚さ0.6mmの回路パターン用アルミニウム板が形成されていた。この回路パターン用アルミニウム板と、セラミックス基板の第1面の周縁部に形成されたベース板とは2mm離間していた。
【0079】
実施例1の金属-セラミックス接合基板において、厚さ(A)は0.3mm、厚さ(B)は0.5mm、厚さ(C)は0.6mmであった。また、厚さ(A)/厚さ(C)は50%、厚さ(B)/厚さ(C)は83%であった。すなわち、金属-セラミックス基板の寸法は、対応する前記鋳型内の各寸法と同等の寸法であった。
【0080】
なお、上記の厚さ(A)~(C)とは、図10を参照して説明した厚さのことを意味する。すなわち、厚さ(A)は、セラミックス基板10の周縁における基準面Pから、第1面11上に形成されたベース板20の厚さである。厚さ(B)は、測定位置P1における基準面Pからパターン形成側に位置するベース板20の表面(曲面25)までの厚さである。厚さ(C)は、ベース板20の周壁部近傍における基準面Pから、パターン形成側に位置するベース板20の表面(高段面23)までの厚さである。なお、ベース板20の高段面23とは、ベース板20の周壁部近傍の基準面Pに対して水平な領域を指す。
【0081】
上記製造方法により作製した10個の金属-セラミックス接合基板について、セラミックス基板の浮き発生率(%)の評価を行った。セラミックス基板の浮き発生率は、作製した10個の接合基板のうち何個の接合基板でセラミックス基板の浮きが発生したかを示す指標であり、(浮きが発生した接合基板の数/10)×100で算出される。
【0082】
なお、接合基板の作製時にセラミックス基板の浮きが発生すると、接合基板の放熱面からセラミックス基板の一部が露出することから、セラミックス基板の浮きが発生したか否かの判断を行うに際しては、作製された各接合基板の放熱面を目視で確認することで行った。そして、放熱面からセラミックス基板の一部の露出が確認された場合には、セラミックス基板の浮きが発生したと判断した。
【0083】
実施例1の条件で作製した接合基板について、上記の方法で算出したセラミックス基板の浮き発生率を評価したところ、浮き発生率は50%であり、後述の比較例に比べて著しく改善していることがわかった。
【0084】
(実施例2)
鋳型内の間隔(A)を0.349mm、間隔(B)を0.349mm、間隔(D)を+0.252mm、間隔(E)を0.561mmとしたこと以外は、実施例1と同様の条件で金属-セラミックス接合基板を作製した。なお、実施例2の鋳型において、間隔(A)/間隔(C)は50%、間隔(B)/間隔(C)も50%である。
【0085】
作製された金属-セラミックス接合基板は、セラミックス基板の一方の面である第1面の周縁部(周縁から幅0.5mmのアルミニウムで覆われている部分)と、側面および他方の面である第2面の全面にベース板が一体に形成されていた。このベース板は、ベース板を放熱面から見たときに縦46mm、横45mmの矩形状であって、ベース板の周縁部の厚さが1.4mm、セラミックス基板の第2面と放熱面の間の厚さ(裏面厚さ)が0.5mm、ベース板の周縁部の幅(セラミックス基板の側面からベース板の周壁面までの距離が2mmであった。
【0086】
また、セラミックス基板の第1面には、縦36mm、横35mm、厚さ0.6mmの回路パターン用アルミニウム板が形成されていた。この回路パターン用アルミニウム板と、セラミックス基板の第1面の周縁部に形成されたベース板とは2mm離間していた。
【0087】
実施例2の金属-セラミックス接合基板において、厚さ(A)は0.3mm、厚さ(B)は0.3mm、厚さ(C)は0.6mmであった。また、厚さ(A)/厚さ(C)は50%、厚さ(B)/厚さ(C)も50%であった。すなわち、金属-セラミックス基板の寸法は、対応する前記鋳型内の各寸法と同等の寸法であった。
【0088】
作製された10個の接合基板について、実施例1と同様にセラミックス基板の浮き発生率を評価した結果、セラミックス基板の浮きの発生率は0%であり、セラミックス基板の浮きの発生がなく、形状精度に優れた接合基板を得ることができた。
【0089】
(実施例3)
縦29mm、横28mm、厚さ0.32mmの窒化ケイ素からなるセラミックス基板を使用し、鋳型内の間隔(A)を0.349mm、間隔(B)を0.349mm、間隔(D)を+0.261mm、間隔(E)を0.561mmとしたこと以外は、実施例1と同様の条件で金属-セラミックス接合基板を作製した。なお、実施例3の鋳型において、間隔(A)/間隔(C)は50%、間隔(B)/間隔(C)も50%である。
【0090】
作製された金属-セラミックス接合基板は、セラミックス基板の一方の面である第1面の周縁部(周縁から幅0.5mmのアルミニウムで覆われている部分)と、側面および他方の面である第2面の全面にベース板が一体に形成されていた。このベース板は、ベース板を放熱面から見たときに縦33mm、横32mmの矩形状であって、ベース板の周縁部の厚さが1.4mm、セラミックス基板の第2面と放熱面の間の厚さ(裏面厚さ)が0.5mm、ベース板の周縁部の幅(セラミックス基板の側面からベース板の周壁面までの距離が2mmであった。
【0091】
また、セラミックス基板の第1面には、縦24mm、横23mm、厚さ0.6mmの回路パターン用アルミニウム板が形成されていた。この回路パターン用アルミニウム板と、セラミックス基板の第1面の周縁部に形成されたベース板とは2mm離間していた。
【0092】
実施例3の金属-セラミックス接合基板において、厚さ(A)は0.3mm、厚さ(B)は0.3mm、厚さ(C)は0.6mmであった。また、厚さ(A)/厚さ(C)は50%、厚さ(B)/厚さ(C)も50%であった。すなわち、金属-セラミックス基板の寸法は、対応する前記鋳型内の各寸法と同等の寸法であった。
【0093】
作製された10個の接合基板について、実施例1と同様にセラミックス基板の浮き発生率を評価した結果、セラミックス基板の浮きの発生率は0%であり、セラミックス基板の浮きの発生がなく、形状精度に優れた接合基板を得ることができた。
【0094】
(比較例1)
鋳型内の間隔(A)を0.700mm、間隔(B)を0.700mm、間隔(C)を0.700mm、間隔(E)を0.561mmとしたこと以外は、実施例1と同様の条件で金属-セラミックス接合基板を作製した。なお、間隔(A)/間隔(C)は100%、間隔(B)/間隔(C)も100%である。比較例1では、間隔(A)~(C)が全て同一寸法であるため、セラミックス基板支持部111と周壁部114との間の底面は段状に形成されていない。そのため、間隔(D)は存在しない。
【0095】
作製された金属-セラミックス接合基板は、セラミックス基板の一方の面である第1面の周縁部(周縁から幅0.8mmのアルミニウムで覆われている部分)と、側面および他方の面である第2面の全面にベース板が一体に形成されていた。このベース板は、ベース板を放熱面から見たときに縦46mm、横45mmの矩形状であって、ベース板の周縁部の厚さが1.3mm、セラミックス基板の第2面と放熱面の間の厚さが0.4mm、ベース板の周縁部の幅(セラミックス基板の側面からベース板の周壁面までの距離が2mmであった。
【0096】
また、セラミックス基板の第1面には、縦36m、横35mm、厚さ0.6mmの回路パターン用アルミニウム板が形成されていた。この回路パターン用アルミニウム板と、セラミックス基板の第1面の周縁部に形成されたベース板とは2mm離間していた。
【0097】
比較例1の金属-セラミックス接合基板において、厚さ(A)は0.6mm、厚さ(B)は0.6mm、厚さ(C)は0.6mmであった。また、厚さ(A)/厚さ(C)は100%、厚さ(B)/厚さ(C)も100%であった。すなわち、金属-セラミックス基板の寸法は、前記鋳型内の各寸法と同等の寸法であった。
【0098】
作製された10個の接合基板について、実施例1と同様にセラミックス基板の浮き発生率を評価した結果、セラミックス基板の浮きの発生率は100%であり、作製された接合基板のすべてがセラミックス基板の浮きが発生した不良品であった。すなわち、比較例1の条件では形状精度に優れた接合基板を得ることができなかった。
【0099】
以下の表1にセラミックス基板、鋳型及び接合基板の各寸法、並びにセラミックス基板の浮き発生率の結果を示す。
【0100】
【表1】
【0101】
以上、本発明に係る実施例について説明した。
【0102】
なお、以下のような構成例も本開示の技術的範囲に属する。
(1)金属-セラミックス接合基板であって、
セラミックス基板と、
前記セラミックス基板の一方の面である第1面の周縁部、前記セラミックス基板の他方の面である第2面の全面、および前記第1面と前記第2面の間にある前記セラミックス基板の側面に直接接合された金属材料からなるベース板と、
前記セラミックス基板の前記第1面に前記ベース板から離間して直接接合された金属材料からなる回路パターン用金属板と、を備え、
前記セラミックス基板の前記第1面を水平方向に延在させた仮想平面を基準面と定義し、前記基準面に対する前記回路パターン用金属板の形成側をパターン形成側と定義したとき、前記セラミックス基板の周縁における前記第1面上に形成された前記ベース板の厚さ(A)は、前記ベース板の周縁部の高段面の領域における前記基準面から前記パターン形成側の表面までの厚さ(C)より薄いことを特徴とする、金属-セラミックス接合基板。
(2)前記厚さ(A)は、前記厚さ(C)の10~60%であることを特徴とする、(1)に記載の金属-セラミックス接合基板。
(3)前記セラミックス基板の前記側面から、当該側面に対して垂直な方向に沿って前記ベース板の周壁面側に0.25mm離れた位置において、前記基準面から前記パターン形成側の表面までの前記ベース板の厚さ(B)は、前記厚さ(C)の10~80%であることを特徴とする、(1)または(2)に記載の金属-セラミックス接合基板。
(4)前記厚さ(A)は、0.20~0.50mmであることを特徴とする、(1)~(3)のいずれかに記載の金属-セラミックス接合基板。
(5)前記厚さ(B)は、0.20~0.60mmであることを特徴とする、(1)~(4)のいずれかに記載の金属-セラミックス接合基板。
(6)前記厚さ(C)は、0.50~2.00mmであることを特徴とする、(1)~(5)のいずれかに記載の金属-セラミックス接合基板。
(7)金属-セラミックス接合基板を製造する鋳型であって、セラミックス基板の下面を支持するセラミックス基板支持部と、前記セラミックス基板を収容するためのセラミックス基板収容部と、前記セラミックス基板収容部の下面の周縁部、前記セラミックス基板収容部の上面の全面、および前記下面と前記上面の間にある前記セラミックス基板収容部の側面に金属材料からなるベース板を形成するための注湯領域であるベース板形成部と、前記セラミックス基板収容部の前記下面に前記ベース板形成部から離間して金属材料からなる回路パターン用金属板を形成するための注湯領域である金属板形成部と、を有し、前記セラミックス基板支持部の上面を水平方向に延在させた仮想平面を基準面と定義したとき、前記セラミックス基板収容部の周縁部の下方領域における前記基準面から前記鋳型内の底面まで間隔(A)は、前記ベース板形成部の周縁部の高段面形成面が形成された領域における前記基準面から前記鋳型内の底面までの間隔(C)より小さいことを特徴とする、鋳型。
(8)前記間隔(A)は、前記間隔(C)の10~60%であることを特徴とする、(7)に記載の鋳型。
(9)前記間隔(A)は、0.20~0.50mmであることを特徴とする、(7)または(8)に記載の鋳型。
(10)前記間隔(C)は、0.50~2.00mmであることを特徴とする、(7)~(9)のいずれかに記載の鋳型。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、金属-セラミックス接合基板の製造に適用することができる。
【符号の説明】
【0104】
1 接合基板
10 セラミックス基板
11 第1面
12 第2面
13 側面
20 ベース板
21 放熱面
22 周壁面
23 高段面
24 低段面
25 曲面
25a 曲面端部
30 回路パターン用金属板
100 鋳型
101 ベース板形成部
101a セラミックス基板周縁部の下方領域
102 注湯孔
110 下型
111 セラミックス基板支持部
111a 上面
112 セラミックス基板収容部
112a 上面
112b 下面
112c 側面
113 金属板形成部
114 周壁部
115 高段面形成面
116 低段面形成面
117 曲面
117a 曲面端部
118 突起部
120 上型
121 天井面
150 従来の鋳型
M 溶湯
P 基準面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10