(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111498
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】パウチ
(51)【国際特許分類】
B65D 75/62 20060101AFI20240809BHJP
B65D 81/34 20060101ALI20240809BHJP
B65D 33/00 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
B65D75/62
B65D81/34 U
B65D33/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016043
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中澤 直希
(72)【発明者】
【氏名】澤口 玲実
(72)【発明者】
【氏名】中山 雄介
【テーマコード(参考)】
3E013
3E064
3E067
【Fターム(参考)】
3E013BA15
3E013BB13
3E013BC04
3E013BC14
3E013BD11
3E013BE01
3E013BF26
3E013BF36
3E064AB23
3E064BA30
3E064BA55
3E064BB03
3E064BC01
3E064BC08
3E064BC18
3E064EA12
3E064FA03
3E064GA01
3E064HD01
3E064HM01
3E064HN05
3E064HP01
3E064HP02
3E067AA11
3E067AB01
3E067BA12A
3E067BB16A
3E067BB18A
3E067BB25A
3E067BB26A
3E067CA04
3E067CA07
3E067CA17
3E067CA24
3E067EA06
3E067EB02
3E067EB03
3E067EB07
3E067EB10
3E067EE48
3E067EE59
3E067FA01
3E067FB07
3E067FC01
3E067GD07
(57)【要約】
【課題】内容物およびパウチが高温の状態でも、常温のときと同程度の開封性を有したパウチを提供する。
【解決手段】胴部材シート1,2と底部材シート3とを有し、側端部7,8と下端部6を密封し、内容物の充填後に上端部5を密封シールして内容物を収容し、底面とほぼ平行な開封部13を備えるパウチ100であって、胴部材シートと底部材シートは最外層およびシーラント層を少なくとも含み、胴部材シートは、パウチの左右方向となる方向の引き裂き強度がJIS K-7128の測定方法での測定において、試験片を100℃の環境下で1分間保持したのち100℃の環境下で測定した場合の引き裂き強度が23℃の環境下で測定した場合に対して1.5倍未満であり、100℃の環境下で1分間保持したのち100℃の環境下で測定した場合の試験片の泣き別れ距離が23℃の環境下で測定した場合の2.5倍以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する胴部材シートと、前記胴部材シートの下端側に折り込まれ、展開されて底面を形成する底部材シートとを有し、
前記胴部材シートと前記底部材シートの周縁部をシールして左右の側端部と下端部を密封し、内容物を充填した後に前記胴部材シートの上端部を密封シールすることにより内容物を収容する収容空間を形成し、
前記通蒸部の底面側または上端側に底面と略平行に設けられた開封部を有するパウチであって、
前記胴部材シートおよび前記底部材シートは、それぞれ最外層およびシーラント層を少なくとも含み、
前記胴部材シートは、パウチの左右方向となる方向の引き裂き強度が、JIS K-7128に規定される測定方法での測定において、試験片を100℃の環境下で1分間保持したのち100℃の環境下で測定した場合の引き裂き強度が、23℃の環境下で測定した場合の引き裂き強度に対して1.5倍未満であり、試験片を100℃の環境下で1分間保持したのち100℃の環境下で測定した場合の、試験片のスリットの延長方向からの引き裂きのズレの最大値である泣き別れ距離が、23℃の環境下で測定した場合の試験片の泣き別れ距離の2.5倍以下である、パウチ。
【請求項2】
前記胴部材シートは、パウチの左右方向となる方向の引き裂き強度が、JIS K-7128に規定される測定方法での測定において、試験片を100℃の環境下で1分間保持したのち100℃の環境下で測定した場合の引き裂き強度が1.0N以下、前記泣別れ距離が2.5mm以下であることを特徴とする請求項1に記載のパウチ。
【請求項3】
前記胴部材シートと前記底部材シートの両方、または少なくとも一方が、前記最外層と前記シーラント層との間に積層される中間層をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のパウチ。
【請求項4】
前記左右の側端部のシール部の少なくとも一方に、加熱時に前記収容空間内の蒸気を逃がすための通蒸部を有することを特徴とする請求項1に記載のパウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジ等での加熱調理に対応したパウチに関し、特に高温加熱時の開封性に優れるパウチに関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、多くの電子レンジでの加熱調理に適用されるパウチが作られてきている。しかし、加熱されたパウチから蒸気を放出する際に、蒸気抜きの機構以外の箇所で破袋することがあるなどの課題があった。それに加え、パウチを開封する際に、開封性が悪く中身がこぼれてしまうなどの問題もあった。
【0003】
これらの課題を解決するため、形状や構成を変更することで、高温下でのシール強度や破断強度を規定して、蒸気抜き機構のみから蒸気が抜けるパウチは存在している(例えば特許文献1)。また、開封性を向上させるために、直線カット性シーラントなどを用いて、開封性を向上させている例もある(特許文献2)。
【0004】
しかし、レンジアップ後の、パウチが高温の状態での開封性については、なお課題が残されており、高温の内容物を内包しているため、開封性が損なわれることで火傷することがある、また開封時に内容物をこぼすことがある、などの問題点が指摘されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-062916号公報
【特許文献2】特開2020-200047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電子レンジ加熱後の、内容物およびパウチが高温の状態でも、常温のときと同程度の開封性を有したパウチを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、
対向する胴部材シートと、前記胴部材シートの下端側に折り込まれ、展開されて底面を形成する底部材シートとを有し、
前記胴部材シートと前記底部材シートの周縁部をシールして左右の側端部と下端部を密封し、内容物を充填した後に前記胴部材シートの上端部を密封シールすることにより内容物を収容する収容空間を形成し、
前記通蒸部の底面側または上端側に底面と略平行に設けられた開封部を有するパウチであって、
前記胴部材シートおよび前記底部材シートは、それぞれ最外層およびシーラント層を少なくとも含み、
前記胴部材シートは、パウチの左右方向となる方向の引き裂き強度が、JIS K-7128に規定される測定方法での測定において、試験片を100℃の環境下で1分間保持したのち100℃の環境下で測定した場合の引き裂き強度が、23℃の環境下で測定した場合の引き裂き強度に対して1.5倍未満であり、試験片を100℃の環境下で1分間保持したのち100℃の環境下で測定した場合の、試験片のスリットの延長方向からの引き裂きのズレの最大値である泣き別れ距離が、23℃の環境下で測定した場合の試験片の泣き別れ距離の2.5倍以下である、パウチである。
【0008】
上記パウチにおいて、
前記胴部材シートは、パウチの左右方向となる方向の引き裂き強度が、JIS K-7128に規定される測定方法での測定において、試験片を100℃の環境下で1分間保持したのち100℃の環境下で測定した場合の引き裂き強度が1.0N以下、前記泣別れ距離が2.5mm以下であって良い。
【0009】
上記パウチにおいて、
前記胴部材シートと前記底部材シートの両方、または少なくとも一方が、前記最外層と前記シーラント層との間に積層される中間層をさらに含んでいて良い。
【0010】
上記パウチにおいて、
前記左右の側端部のシール部の少なくとも一方に、加熱時に前記収容空間内の蒸気を逃がすための通蒸部を有するものであって良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明のパウチによれば、電子レンジ加熱対応のパウチであって、常温と高温での引き裂き強度ならびに泣き別れ距離の差が小さく、レンジアップ後でもレンジアップ前と同様の開封性を有するパウチが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のパウチの一実施形態の外観模式図である。
【
図3】部材シートを引き裂いたときの泣き別れの態様の説明図である。
【
図4】本発明のパウチの部材シートとなる積層体の一構成例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また以下に示す実施形態では、発明を実施するために技術的に好ましい限定がなされているが、この限定は本発明の必須要件ではない。
【0014】
図1は、本発明のパウチの一実施形態の外観模式図である。また
図2はその縦断面図である。本実施形態のパウチは、プラスチックフィルムを用いた積層体からなるスタンディングパウチであって、積層体は、パウチの最外層となるプラスチックフィルム層のほか、中間層、およびパウチ最内層側のシーラント層を有するものとすることができる。各層の詳細については後述する。
【0015】
<パウチ>
図1に示すように、パウチ100は、前側胴部材シート1、後側胴部材シート2、およびそれらの間の下端側に折り込まれて配置された底部材シート3によって、内容物を収容可能に製袋されている。
【0016】
すなわち、前側胴部材シート1と後側胴部材シート2とは、四辺を有して、シーラント層同士を対向させて配置されており、この四辺のうち、胴部の左側端部7、右側端部8はシールされて、パウチの左右両側端部は密封されている。
【0017】
また、胴部下部において、前側胴部材シート1および後側胴部材シート2との間に、底部材シート3が折り線4で折りたたまれて挟み込まれて配置され、シールされて密封されている。パウチの下端部6は、底部材シート3を展開することで底面を形成可能となって
いる。
【0018】
この底面の形成によって、内容物を内部に収容したパウチ100は、いわゆるスタンディングパウチとなり、自立が可能になる。自立によって、たとえば商品としての展示、陳列や、また電子レンジによる加熱調理において、より利便性が高いものとなる。
【0019】
また、胴部上部において、前側胴部材シート1および後側胴部材シート2とは、内容物を収容後、パウチの上端部5でシールされて、パウチ100全体の密封が可能である。
【0020】
また、本実施形態のパウチ100は、電子レンジによる内容物の加熱調理において、内容物から発生する水蒸気をパウチ外部に排出することのできる、自動蒸気抜き機構である通蒸部10を備えている。
【0021】
この通蒸部10は、電子レンジによる加熱調理において、パウチ内部に発生する水蒸気による内圧の上昇によって、パウチ本体が一気に破袋することを防止することに有効であり、また加熱調理後のパウチの開封においても、内部からの水蒸気の噴出、それによる手指のやけどなどの危険を防止することにも効果的である。
【0022】
図1に示す例において、通蒸部10は、向かって右側端部8の上端部5に近いところに設けてある例である。通蒸部10は、右側端部8から屈曲してパウチ内側に張り出したシール部11と、該シール部11に囲まれた貫通部12からなり、貫通部12は前側胴部材シート1と後側胴部材シート2の両方を貫通した貫通孔となっている。
【0023】
通蒸部10を設ける位置については、限定を設けるものではないが、電子レンジ加熱調理において内容物から発生する水蒸気をパウチ外部に導出することを目的とすることから、加熱調理時に内容物の表面より上方で、直接内容物に触れていない部分の、パウチ内側の空間に面している箇所が適当である。
【0024】
すなわち、
図1に示す例において、電子レンジによる加熱調理時に、加熱によってパウチ100のパウチ内側の空間に内容物から発生する水蒸気が充満することで体積膨張し、パウチ100全体が膨らみ、同時に内圧が上昇する。
【0025】
このとき体積膨張は、パウチ100のパウチ内側の空間の体積中心から、3次元の放射状に起こるのであって、この体積膨張によって、
図1に示す例において、通蒸部10の場合には、シール部11に圧力が加わり、この部分の表裏の積層体に対しては、シール部11に対する剥離の力として作用する。このとき、通蒸部10は、3次元の放射状の体積膨張によって、剥離させようとする圧力を周縁部のシール部に比べてより強く受けるために、この部分に応力集中がより激しくなり、シール部11が剥離を起こすことになる。
【0026】
この剥離によって、パウチの内部空間と外部が貫通部12を通じてつながり、内部の水蒸気は外部に自動的に導出される。したがって、この部分が自動蒸気抜き機構となることによって、パウチ100の内圧は急激に減少するために、その他の周縁部のシール部においては、このような剥離が発生することはない。
【0027】
また、自動蒸気抜き機構は、その手段方法についてはここに示す例に限定するものではなく、水蒸気の発生によって上昇したパウチの内圧によって、自動的にパウチ内外がシール部の部分的破壊によって連結するなどして、水蒸気を外部に導出する機能において、これを満たすものであれば、他の方法であってもかまわない。
【0028】
他の方法の例を挙げれば、たとえば、周縁部のシール部分に比べて、自動蒸気抜き機構
の部分で、シール強度が脆弱、もしくはシール幅が細く、またはその両方となる様にシールされている構造も可能である。
【0029】
たとえば、他のシール部分に比べてシール強度が脆弱にシールされた状態は、シーラントの種類の選択、シール条件の調整、あるいはシール時にこの部分に、脆弱化に有効な層を挿入するなどの方法によって実現することが可能である。
【0030】
また他のシール部分に比べて、シール幅が細くシールされた状態も脆弱な部分となりうるが、この場合においては、シールバーの形状や幅の調整によって実現することが可能である。
【0031】
また、本発明においては、胴部材シートの左右両側端部のシール部の、少なくとも一方には切込み9が設けられている。切込み9は、左側端部7、右側端部8の両方に設けても良い。この切込み9の形状は、
図1に示す例のようにV字形の切込み9とすることができ、あるいは単に線状に切り込んだだけのものであってもよい。
【0032】
切込み9の先端から、開封部13が、底面とほぼ平行な直線状に対向する側端部に向かって延びている。開封部13は、開封部13に沿ってパウチを切り裂いて開封する部分であり、直線的なカットが可能となる様にされている線状の部分である。開封部13は例えばミシン目加工、レーザー加工などによる易開封加工線であって良い。
【0033】
上述のように構成したパウチ100を、内容物を摂取するために開封する際には、切込み9の部位から前側胴部材シート1と後側胴部材シート2とを底面と平行にまっすぐに切り裂いて開封することができれば、内容物を摂取し易く、また内容物が零れてしまうことがなく好ましい。しかし実際には、ミシン目加工、レーザー加工などによる易開封加工がされている場合であっても、
図3(a)に示す例で説明すれば、シート30の切り裂きが進行するに連れて、切り裂き線31が切り裂きが進行すべき線32からずれ、実際の切り裂き線33の様に進行してしまうことがある。
【0034】
この現象は「泣き別れ」とも称される。そしてその度合いの評価の指標として、実際の切り裂き線33の、進行すべき線32からの最大のズレ量を「泣き別れ距離」と称することとする。
図3(a)の例では、端部におけるズレ量Aが泣き別れ距離となる。なお、
図3(b)に示す様に、実際の切り裂き線34が端部に達する途中で最大のズレ量となる場合は、その最大のズレ量Bを泣き別れ距離とする。
【0035】
パウチ100においてこの泣き別れが発生すると、切り裂きが意図しない方向に進行して、例えば上端側に進んでしまうと、胴部を完全に切り裂くことができなくなってしまったり、逆に底面側に進んでしまって内容物が収納されている部分に達して内容物が零れてしまったり、あるいは前側胴部材シート1と後側胴部材シート2の切り裂き位置が大きくずれてしまって、内容物の摂取がし難くなってしまう、などといった結果を生じるため、好ましくない。
【0036】
発明者らは、この様な泣き別れの発生を抑制するために鋭意検討を進め、本発明を完成させたものであり、泣き別れの発生を抑えるため、特に実際にパウチが開封される状況である加熱調理後でパウチが高温となっている状態での発生を抑えるため、以下のような構成とすれば良いことを見出した。
【0037】
すなわち、パウチの胴部材シートの、パウチを切り裂く方向、すなわち左右方向における引き裂き強度を、JIS規格のK-7128に規定される測定方法で測定したとき、試験片を100℃の環境下で1分間保持したのち100℃の環境下で測定した場合の引き裂
き強度が、23℃で同じ測定方法で測定した場合の引き裂き強度の1.5倍未満であり、100℃の環境下で1分間保持したのち100℃の環境下で測定した場合の試験片の泣き別れ距離が、23℃で同じ測定方法で測定した場合の泣き別れ距離の2.5倍以下となるものとしたものである。
【0038】
上記のような構成とすることで、電子レンジ等で加熱調理後、使用者がパウチを切り裂いて開封する際に、切り裂きが底面にほぼ平行な方向に進んで大きくずれてしまうことがなく、内容物の摂取に支障が生じないパウチが得られる。
【0039】
なお上記の100℃の環境下で測定した場合の引き裂き強度は、1.0N以下であるとさらに好ましく、また同じ100℃の環境下での試験片の泣き別れ距離は、2.5mm以下であるとさらに好ましい。
【0040】
なおJIS規格のK-7128に規定される測定方法に照らしたとき、前述のシート30が同規格に定められた試験片に相当し、切り裂き線31が試験片に予め形成されているスリット、切り裂きが進行すべき線32がスリットをそのまま延長した方向に相当するものとして、泣き別れ距離を測定することとなるのは言うまでもない。
【0041】
<積層体>
続いて、パウチ100を構成する前側胴部材シート1、後側胴部材シート2、および底部材シート3となる積層体の一構成例について説明する。積層体20は、
図4の断面図に示す様に、基材層21、中間層23、シーラント層25が、第一接着層22および第二接着層24を間に挟んでそれぞれ接着されて積層されている。積層方法の一例はドライラミネートである。
【0042】
(基材層)
基材層21は、パウチ100においては最外層となるシートであり、耐熱性、印刷適正に優れるものが好ましく、さらにガス遮断性を有するプラスチック樹脂フィルムであるとさらに好ましい。基材層21を構成する材料の例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、無機薄膜が蒸着されたPET(蒸着PET)が挙げられる。
【0043】
(中間層)
中間層23を設ける場合は、耐熱性に優れるプラスチック樹脂フィルムであることが好ましい。さらに、基材層21がガス遮断性を有していない場合、ガス遮断性を有するものが好ましく、さらに、耐ピンホール性、防湿性、高いコシ強度などを有することが好ましい。中間層23を構成する材料の例として、ナイロン(NY)、PETが挙げられる。基材層21がガス遮断性を有していない場合には、蒸着PET、蒸着NYが好ましいものとして挙げられる。
【0044】
(シーラント層)
シーラント層25は、2枚の積層体をシーラント層同士が対向するように重ねて、シールすることによって互いを接着させ、パウチ100として製袋することを可能にする。シールには、たとえば、加熱、加圧によるヒートシールを用いることができる。そのためシーラント層25は、耐熱性、ヒートシール性、耐衝撃性に優れる材料であると好ましく、例としてはポリプロピレン(PP)が挙げられる。そして引き裂き性に優れた直線カット性を有するPPとするとより好ましい。ここで引き裂き性に優れるとは、JIS K-7128規格に従った測定において、引き裂き強度が1.2N以下であることを指す。
【0045】
直線カット性を有するものとして、例えば、薄膜多層のポリプロピレン(PP)を一軸延伸して作られたものなどが挙げられる。このフィルムは直線カット性と耐熱性を持って
いる。薄膜多層でのフィルム作成により、通常のフィルム作成よりも急冷されて結晶化が遅く、延伸しても結晶化している部分が少なく配向が揃うことで、直線カット性が付与される。
【0046】
(第一・第二接着層)
第一接着層22、第二接着層24を構成する材料の一例としては、ポリエステル系接着剤が挙げられる。
【実施例0047】
以下に実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。
【0048】
<実施例1>
・積層体フィルム構成
(基材層)透明無機化合物蒸着被膜付きPETフィルム(厚さ12μm)
(中間層)耐水易接着性を有する二軸延伸NYフィルム(厚さ15μm)
(シーラント層)直線カット性を有する耐熱無延伸PP樹脂層(厚さ60μm):DC061(東洋紡製 パイレンフィルム ハイレトルト対応 MD方向直進カット性を有する)
・ドライラミネート
(第一、第二接着層)2液硬化型エステル系ウレタン硬化剤 塗布量:9.8g/m2(wet)
【0049】
<比較例1>
・積層体フィルム構成
(基材層)透明無機化合物蒸着被膜付きPETフィルム(厚さ12μm)
(中間層)耐水易接着性を有する二軸延伸NYフィルム(厚さ15μm)
(シーラント層)耐熱無延伸PP樹脂層(厚さ60μm):ZK207(東レ製 トレファン ハイレトルト対応 無延伸ポリポロピレン 易カット性なし)
・ドライラミネート
(第一、第二接着層)2液硬化型エステル系ウレタン硬化剤 塗布量:9.8g/m2(wet)
【0050】
<測定内容>
(引き裂き強度)
JIS K-7128に従い各積層体の試験片を作成し、トラウザー引き裂き法で引き裂き強度を測定した。
常温(23℃)環境下と、100℃の環境下で測定を行った。100℃での測定においては、100℃の環境に試験片を1分間保持した後に測定を行った。
(加熱後の開封性)
実施例1、比較例1それぞれの積層体をパウチ形状としたものに水を100g入れて、2袋同時に1000Wの電子レンジで3分間温め、実際に切り裂き開封を行い、開封の状況を確認した。
【0051】
<結果>
(引き裂き強度)
結果を表1、表2にまとめた。
実施例1では、常温(23℃)環境下と100℃環境下との比較において、引き裂き強度、泣別れ距離ともに大きな変化はなかった。100℃環境下においても、引き裂き強度は常温時の1.5倍未満、かつ1.0N以下となり、良好な引裂き性を示した。また泣き別れ距離も常温時の2.5倍以下となった。
これに対し、比較例1では、常温環境下では引き裂き強度、泣別れ距離とも実施例1と大きな差はなかったが、100℃環境下では引き裂き強度、泣き別れ距離とも大きく増大してしまった。
【0052】
なお、表2に示した倍率は、表1に下線を付して示した、常温(23℃)環境下において引き裂き強度および泣別れ距離が最も小さい値となる例(実施例1の引き裂き強度はn4における0.3、泣別れ距離はn2における0.7。比較例1も同様。)を基準として、100℃環境下におけるそれぞれの値がその何倍となるかを示している。
【0053】
【0054】
【0055】
(加熱後の開封性)
加熱後の開封性の評価結果を表3にまとめる。実施例1においては支障なく開封できたが、比較例1では引き裂き強度が大きく引き裂きが困難であったり(×)、引き裂いた箇所に毛羽立ちが生じてしまう(△)といった結果であった。
【0056】