(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111504
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】充電制御装置、電力変換システム及び制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20240809BHJP
H01H 9/54 20060101ALI20240809BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240809BHJP
H02H 9/02 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
H02J1/00 309R
H01H9/54 F
H02J7/00 S
H02H9/02 D
H02J1/00 301D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016053
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100135301
【弁理士】
【氏名又は名称】梶井 良訓
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100207192
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 健一
(72)【発明者】
【氏名】山口 俊行
【テーマコード(参考)】
5G013
5G034
5G165
5G503
【Fターム(参考)】
5G013AA02
5G013AA04
5G013BA01
5G013CA07
5G034AA20
5G034AC20
5G165BB05
5G165HA07
5G165LA01
5G165NA10
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB03
5G503CA01
5G503FA17
5G503GB06
(57)【要約】
【課題】コンデンサの初期充電回路を無効化する遮断器のレバー操作に応じて生じうるラッシュ電流の影響を軽減する。
【解決手段】充電制御装置は、直流電源が出力する直流電圧を平滑するコンデンサの充電を制御する。充電制御装置において、抵抗は、直流電源からコンデンサまでの第1接続経路に配置されている。遮断器は、第1接続経路に並列になる第2接続経路に設けられている。遮断器の主スイッチは、操作受付部が受け付けた操作と通電状態とにより閉状態と開状態との何れかに切り替わることで第2接続経路を通電状態と非通電状態との何れかに切り替える。補助スイッチは、コンデンサの初期充電中に所定の条件が満たされた場合に主スイッチと補助スイッチを開状態にするための遮断器のトリップ回路に設けられている。所定の条件には、第2接続経路を通電状態にする操作に応じて少なくとも補助スイッチが閉状態に切り替わることが含まれる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源が出力する直流電圧を平滑するコンデンサの充電を制御する充電制御装置であって、
前記直流電源から前記コンデンサまでの経路に含まれた第1接続経路に配置された抵抗であって、前記コンデンサを充電するように前記直流電源から前記第1接続経路を経て流れる電流を制限する抵抗と、
前記第1接続経路に並列になる第2接続経路に設けられている遮断器と、
を備え、
前記遮断器は、
前記第2接続経路の通電状態と非通電状態とを切り替える操作を受け付ける操作受付部と、
前記受け付けた操作と通電状態とにより閉状態と開状態との何れかに切り替わることで前記第2接続経路を通電状態と非通電状態との何れかに切り替える主スイッチと、
前記主スイッチに連動して閉状態と開状態との何れかに切り替わる補助スイッチと、
を備え、
前記補助スイッチは、
前記コンデンサの初期充電中に所定の条件が満たされた場合に前記主スイッチと前記補助スイッチを開状態にするための前記遮断器のトリップ回路に設けられ、
前記所定の条件には、前記第2接続経路を通電状態にする操作に応じて少なくとも前記補助スイッチが閉状態に切り替わることが含まれる、
充電制御装置。
【請求項2】
前記所定の条件には、前記コンデンサの直流電圧が所定の電圧を超えたことが含まれる、
請求項1に記載の充電制御装置。
【請求項3】
直流電源が出力する直流電圧を平滑するコンデンサと、
前記直流電源の負荷になる電力変換装置であって、前記平滑された後の前記直流電圧を受けて機能する電力変換装置と、
請求項1に記載の充電制御装置と、
を備えた電力変換システム。
【請求項4】
前記直流電源から前記コンデンサまでの経路に、前記第1接続経路と前記第2接続経路に流れる電流の変化を軽減するリアクトル13が設けられている、
請求項3に記載の電力変換システム。
【請求項5】
前記リアクトル13の一端は、前記第1接続経路と前記第2接続経路との分岐点に接続され、
前記リアクトル13の他端は、前記コンデンサに接続されている、
請求項4に記載の電力変換システム。
【請求項6】
直流電源が出力する直流電圧を平滑するコンデンサの充電を制御する充電制御装置の制御方法であって、
前記充電制御装置は、
前記直流電源から前記コンデンサまでの経路に含まれた第1接続経路に配置された抵抗であって、前記コンデンサを充電するように前記直流電源から前記第1接続経路を経て流れる電流を制限する抵抗と、
前記第1接続経路に並列になる第2接続経路に設けられている遮断器と、
を備え、
前記遮断器は、
前記第2接続経路の通電状態と非通電状態とを切り替える操作を受け付ける操作受付部と、
前記受け付けた操作と通電状態とにより閉状態と開状態との何れかに切り替わることで前記第2接続経路を通電状態と非通電状態との何れかに切り替える主スイッチと、
前記主スイッチに連動して閉状態と開状態との何れかに切り替わる補助スイッチと、
を備え、
前記補助スイッチは、
前記遮断器のトリップ回路に設けられていて、
前記コンデンサの初期充電中に、前記第2接続経路を通電状態にする操作に応じて少なくとも前記補助スイッチが閉状態に切り替わる場合に、前記トリップ回路が前記遮断器の前記主スイッチと前記補助スイッチを開状態にすること、
を含む制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、充電制御装置、電力変換システム及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
直流電力と交流電力とを交換可能な電力変換システムには、電力変換装置の直流側に直流電圧を平滑化するためのコンデンサを備えるものがある。電力変換装置の起動時に直流電源からの通電を開始すると、そのコンデンサに直流電源からのラッシュ電流が流れることがある。電流制限用の抵抗を用いてコンデンサを事前に充電する初期充電回路を利用することで、このラッシュ電流を抑制できる。上記の抵抗を経由して負荷に電力を供給する場合、負荷に供給する電力が大きいほどより大きな損失がこの抵抗に生じることになる。これに対し、初期充電が完了したのちの損失を低減させるために、この抵抗に並列接続される遮断器(スイッチ)を設けて、初期充電が完了したのちに遮断器を導通状態にすることで、上記の抵抗に流れる電流をバイパスさせることができる。
この遮断器の導通状態と非導通状態とを手動で切り替えるためのレバーを、その遮断器が備えていて、コンデンサの初期充電中にこのレバーが操作されると、この操作に応じて遮断器が投入されて直流電源からのラッシュ電流が流れることがある。このようなコンデンサの初期充電中における遮断器のレバー操作に応じて生じうるラッシュ電流の影響を軽減できる充電制御装置が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、コンデンサの初期充電中に、コンデンサの初期充電回路を無効化する遮断器のレバー操作に応じて生じうるラッシュ電流の影響を軽減する充電制御装置、電力変換システム及び制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の充電制御装置は、直流電源が出力する直流電圧を平滑するコンデンサの充電を制御する。充電制御装置は、抵抗と、遮断器とを備える。抵抗は、前記直流電源から前記コンデンサまでの経路に含まれた第1接続経路に配置されていて、前記コンデンサを充電するように前記直流電源から前記第1接続経路を経て流れる電流を制限する。遮断器は、前記第1接続経路に並列になる第2接続経路に設けられている。前記遮断器は、操作受付部と、主スイッチと、補助スイッチとを備える。操作受付部は、前記第2接続経路の通電状態と非通電状態とを切り替える操作を受け付ける。主スイッチは、前記受け付けた操作と通電状態とにより閉状態と開状態との何れかに切り替わることで前記第2接続経路を通電状態と非通電状態との何れかに切り替える。補助スイッチは、前記主スイッチに連動して閉状態と開状態との何れかに切り替わる。前記補助スイッチは、前記コンデンサの初期充電中に所定の条件が満たされた場合に前記主スイッチと前記補助スイッチを開状態にするための前記遮断器のトリップ回路に設けられている。前記所定の条件には、前記第2接続経路を通電状態にする操作に応じて少なくとも前記補助スイッチが閉状態に切り替わることが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態の実施形態の電力変換システム1の構成図。
【
図2】実施形態の初期充電の典型的な動作について説明するための図。
【
図3】実施形態の初期充電中に遮断器22が投入された場合の動作について説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の充電制御装置、電力変換システム及び制御方法を、図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、同一又は類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それらの構成の重複する説明は省略する場合がある。なお、電気的に接続されることを、単に「接続される」ということがある。
【0008】
図1は、実施形態の電力変換システム1の構成図である。
電力変換システム1は、コンデンサ11と、電力変換装置12と、リアクトル13と、充電制御装置20とを備える。
【0009】
直流電源2は、電力変換システム1に直流電力を供給する。例えば、直流電源2の正極は、電力変換システム1内の正極41P又は正極42Pを経て、電力変換装置12の正極に接続されている。直流電源2の負極は、電力変換システム1内の負極41N又は負極42Nを経て、電力変換装置12の負極に接続されている。
【0010】
電力変換システム1は、これに加えて制御装置30を備えていてもよい。
制御装置30は、コンピュータなどであって、ユーザの指示、又は予め定められたシーケンスによる運転操作を行うことで、充電制御装置20を稼働させる。その運転制御の中にコンデンサ11の初期充電が含まれる。制御装置30は、コンデンサ11の初期充電を許可する場合に、充電制御装置20を制御して初期準電実施の制限を解き、初期準電を開始させる。
【0011】
電力変換システム1のコンデンサ11は、例えば電解コンデンサ、電力用フィルムコンデンサなどであり、充電制御装置20の正極と負極との間に設けられている。コンデンサ11は、直流電源2が出力する直流電圧、つまり充電制御装置20の正極と負極の間に掛かる直流電圧を平滑する。
図1に示すコンデンサ11のシンボルは1つであるが、コンデンサ11を複数のブロックに分けて構成することができる。コンデンサ11の容量、個数、直列数及び並列数は、設計的に定めるとよい。なお、正極41Pと正極42Pは、充電制御装置20の正極の一例である。負極41Nと負極42Nは充電制御装置20の負極の一例である。
【0012】
電力変換装置12は、例えば複数のスイッチング素子を含むインバータである。電力変換装置12は、図示されないコントローラによって制御され、制御により定まる所望の電力量の電力を変換する。このような電力変換装置12は、直流電源2の負荷になる。電力変換装置12は、コンデンサ11によって平滑された直流電圧を受けて機能する。
【0013】
直流電源2からコンデンサ11までの経路には、互いに並列に接続される第1接続経路と第2接続経路が含まれる。第1接続経路には、正極41Pと負極41Nの組が含まれる。第2接続経路には、正極42Pと負極42Nの組が含まれる。正極41Pと負極41Nの組を第1接続経路41と呼び、正極42Pと負極42Nの組を第2接続経路42と呼ぶ。
【0014】
例えば、第1接続経路41の正極41Pと第2接続経路42の正極42Pは、分岐点BLP1と分岐点BLP2において接続される。分岐点BLP1と分岐点BLP2は、正極41Pと正極42Pとの分岐点である。第1接続経路41の負極41Nと第2接続経路42の負極42Nは、分岐点BLN1と分岐点BLN2において接続される。分岐点BLN1と分岐点BLN2は、負極41Nと負極42Nとの分岐点である。分岐点BLP1と分岐点BLN1は、第1接続経路41において、直流電源2から後述する遮断器22までの間に設けられている。分岐点BLP2と分岐点BLN2は、第1接続経路41において、遮断器22からコンデンサ11までの間、又は遮断器22からリアクトル13までの間に設けられている。
【0015】
リアクトル13は、第1接続経路と第2接続経路に流れる電流の変化を軽減するように設けられている。例えば、リアクトル13の一端は、第1接続経路41と第2接続経路42との分岐点BLP2に接続されている。リアクトル13の他端は、コンデンサ11に接続されている。このリアクトル13は、少なくとも直流電源2から前記コンデンサ11までの経路に流れる電流の変化を軽減するだけの容量を有している。つまり、コンデンサ11が設けられている位置は、リアクトル13と電力変換装置12との間になる。
【0016】
充電制御装置20は、直流電源2が出力する直流電圧を平滑するコンデンサ11の充電を制御する。充電制御装置20は、例えば抵抗21と、遮断器22と、スイッチ23と、スイッチ24と、制御装置25と、表示器26と、スイッチ27と、制御電源(不図示)を備える。
【0017】
抵抗21は、前記直流電源2から前記コンデンサ11までの経路に含まれた第1接続経路41に配置されていて、前記コンデンサ11を充電するように前記直流電源2から前記第1接続経路41を経て流れる電流を制限する。
【0018】
遮断器22は、前記第1接続経路41に並列になる第2接続経路42に設けられている。遮断器22は、操作受付部221と、主スイッチ222と、補助スイッチ223とを備える。
【0019】
操作受付部221は、前記第2接続経路42の通電状態と非通電状態とを切り替える操作を受け付ける。
【0020】
主スイッチ222は、例えば2極単投の両切り型である。主スイッチ222は、操作受付部221に対する操作又は通電状態により接触する接触子を有する。主スイッチ222は、操作受付部221によって受け付けられた操作と、その遮断器の通電状態とにより閉状態と開状態との何れかに切り替わることで前記第2接続経路42を通電状態と非通電状態との何れかに切り替える。このような接触子を有する主スイッチ222は、通電時のインピーダンスが、半導体スイッチを用いて構成する場合に比べて小さいことにより、通電時の損失を低減させる。
【0021】
補助スイッチ223は、前記主スイッチ222に連動して閉状態と開状態との何れかに切り替わる。前記補助スイッチ223は、前記コンデンサの初期充電中に所定の条件が満たされた場合に前記主スイッチ222と前記補助スイッチ223を開状態にするための前記遮断器22のトリップ回路29内に設けられている。この所定の条件には、前記第2接続経路42を通電状態にする操作に応じて少なくとも前記補助スイッチ223が閉状態に切り替わることが含まれる。なお、この所定の条件に、コンデンサ11の直流電圧が所定の電圧を超えたことが含まれていてもよい。
【0022】
スイッチ23は、例えば2極単投の両切り型である。スイッチ23は、制御装置30の制御により通電されるコイル231と、この通電状態に連動する接触子232とを有する。スイッチ23は、コイル231に電流が流れているときに、接触子232を閉状態にする。
接触子232は、第2接続経路42の正極42Pと負極42Nにそれぞれ設けられている。
【0023】
スイッチ24は、第2接続経路42の正極42Pと負極42Nとの間に設けた並列回路の通電状態を切り替えるスイッチである。このスイッチ24は、制御装置30の制御信号によって通電状態が切り替わる。
【0024】
このように構成されたスイッチ27とスイッチ24は、制御装置30の制御により、第2接続経路42の通電を制限し、また許可するように機能する。
【0025】
制御装置25は、コンデンサ11の充電状態を判定する。
例えば、制御装置25は、充電対象のコンデンサ11の両極に掛かる電圧を測定する。
制御装置25は、初期充電回路を遮断状態にしている場合に、表示器26を消灯状態にして、初期充電回路を経て通電する初期充電状態にすると、表示器26を点灯状態にする。
【0026】
その後、そのコンデンサ11の両極に掛かる電圧の測定結果の電圧(測定電圧という。)が、直流電源2が出力する定格電圧を基準にして定めた所定の閾値電圧に満たない場合には、表示器26の点灯状態を継続して、初期充電を継続させる。これに対し、測定電圧が所定の閾値電圧以上になった場合には、表示器26を消灯状態にして、初期充電を中断するように、トリップ回路29を制御する。
【0027】
トリップ回路29には、制御電源の正極と負極の間に並列回路が設けられている。この並列回路には、スイッチ27と、補助スイッチ223と、コイルとが設けられ、互いに直列に接続されている。つまり、このトリップ回路29は、この並列回路に通電させて遮断器22の各スイッチを開状態にする。
【0028】
以下、
図2と
図3を参照して、実施形態の初期充電について説明する。
図2は、実施形態の初期充電の典型的な動作について説明するための図である。
この
図2に示すシーケンスは、初期充電が完了してから遮断器22が操作された事例であり、適したタイミングに遮断器22が操作された場合について説明するためのものである。
【0029】
図2(a)は、スイッチ24の状態を示す。「0」が開状態であり、「1」が閉状態である。
図2(b)は、コンデンサ11の測定電圧を示す。例えば放電によって、0V(ボルト)の状態から、初期充電回路の抵抗21のインピーダンスなどによって充電電流が制限されることで、徐々に上昇する過渡応答電圧が生じる。
【0030】
図2(c)は、表示器26(ING)の状態を示す。「0」が消灯状態であり、「1」が点灯状態である。
図2(d)は、遮断器22の状態を示す。「0」が開状態であり、「1」が閉状態である。
図2(e)は、スイッチ27の状態を示す。「0」が開状態であり、「1」が閉状態である。
【0031】
例えば、時刻t0に至るまでの初期段階にあるときに、コンデンサ11と電力変換装置12への通電がない状態になっている。つまり、遮断器22とスイッチ23とによって、通電が遮断されていて、表示器26は消灯されている。この状態のコンデンサ11の測定電圧は、例えば0V(ボルト)である。
【0032】
時刻t0になって、制御装置30は、その制御によりスイッチ23を閉状態にして、初期充電状態の充電を開始させる。制御装置25は、この充電開始後にコンデンサ11の測定電圧を取得して、この測定電圧と閾値電圧とを対比して、その対比の結果に応じて、表示器26と、トリップ回路29とを制御する。
制御装置30は、初期充電状態の充電を継続させる。
【0033】
時刻t10になると、コンデンサ11の測定電圧が所定の閾値電圧に達する。
制御装置25は、コンデンサ11の測定電圧が所定の閾値電圧以上になったことを識別して、表示器26を消灯させて、合わせてスイッチ27を開く。これによりトリップ回路29が無効化する。
【0034】
時刻t10から所定時間が経過したタイミングに、ユーザが操作受付部221を操作して、遮断器22を閉状態にする。これにより抵抗21を介した通電ではなく、遮断器22を介しての通電に切り替わる。
【0035】
図3は、実施形態の初期充電中に遮断器22が投入された場合の動作について説明するための図である。
この
図3に示すシーケンスは、初期充電が完了する前に遮断器22が操作された事例であり、適さないタイミングに遮断器22が操作された場合について説明するためのものである。
図2との相違点を中心に説明する。
【0036】
時刻t0から時刻t11までが初期充電期間である。
この事例では、時刻t0から時刻t11に至るまでの時刻t31に遮断器22を投入する操作がなされた場合を示す。
【0037】
時刻t31に遮断器22が投入されると、抵抗21を経由していた電流が遮断器22の主スイッチ222を経由する状態になる。このとき、遮断器22の補助スイッチ223は、主スイッチ222と連動して閉状態になる。これにより遮断器22を経た比較的大きな電流が流れて、コンデンサ11の充電電圧の変化が急になる。
【0038】
すでに、時刻t0の初期充電が開始された段階で、スイッチ27が閉状態になっていて、トリップ回路29の機能が有効化されている。この状態で、時刻t31に補助スイッチ223が閉状態になることにより、トリップ回路29に電流が流れて、遮断器22をトリップさせることになる。
【0039】
時刻t31よりも微小時間が過ぎた時刻t32までに、上記の一連の動作が進み、トリップ回路29が遮断器22を開状態にする。これにより遮断器22を経たコンデンサ11の充電が止まり、当初の初期充電並みの電流に戻る。
【0040】
上記のように、時刻t31から時刻t32までの期間は、時刻t0から時刻t31までの電流よりも大きな電流が流れる可能性がある。ただし、リアクトル13があることによってその電流の変化が抑制される。リアクトル13は、電流の大きさの急変時に、その電流の変化を少なくするように作用する。この実施形態の場合、リアクトル13がない比較例に比べて、電流の変化を少なくすること、遮断器22の投入操作を打ち消して、遮断器22を開状態に戻すことなどの効果を得る。
【0041】
上記の実施形態によれば、充電制御装置20は、直流電源2が出力する直流電圧を平滑するコンデンサ11の充電を制御する。この充電制御装置20は、少なくとも抵抗21と、遮断器22とを備える。抵抗21は、直流電源2からコンデンサ11までの経路に含まれた第1接続経路41に配置されている。抵抗21は、コンデンサ11を充電するように直流電源2から第1接続経路41を経て流れる電流を制限する。遮断器22は、第1接続経路41に並列になる第2接続経路42に設けられている。遮断器22は、操作受付部221と、主スイッチ222と、補助スイッチ223とを備える。操作受付部221は、第2接続経路42の通電状態と非通電状態とを切り替える操作を受け付ける。主スイッチ222は、受け付けた操作と通電状態とにより閉状態と開状態との何れかに切り替わることで第2接続経路42を通電状態と非通電状態との何れかに切り替える。補助スイッチ223は、主スイッチ222に連動して閉状態と開状態との何れかに切り替わる。補助スイッチ223は、コンデンサ11の初期充電中に所定の条件が満たされた場合に主スイッチ222と補助スイッチ223を開状態にするための遮断器22のトリップ回路に設けられている。上記の所定の条件には、第2接続経路42を通電状態にする操作に応じて少なくとも補助スイッチ223が閉状態に切り替わることが含まれる。
これにより、コンデンサ11の初期充電中における遮断器22の操作受付部221のレバー操作に応じて生じうるラッシュ電流の影響を軽減することができる。
【0042】
上記の電力変換システム1の場合、電力変換装置12の起動前に、コンデンサ11を事前に充電することで起動時のラッシュ電流を抑制する初期充電が行われる。初期充電完了後に遮断器22の主スイッチ222を導通することで運転を開始すれば、半導体スイッチを用いた場合のような比較的大きな導通損失が発生しない。
【0043】
この遮断器22を手動で投入する構成にすることで、電力変換システム1の構成を簡素化できる。例えば、初期充電が完了したことを、表示器26を消灯させることで示す。作業者は、これを確認して手動で遮断器22を投入する構成とした。
【0044】
ただし、この場合、表示器26の消灯を確認せずにいつでも遮断器22の投入が可能である。コンデンサ11の初期充電が未了であると表示器26が消灯していない。
【0045】
例えば、充電制御装置20の遮断器22を下記のように構成してもよい。
遮断器22の主スイッチ222は、通電状態にするための指定を受け付けた場合に、操作を受け付けてから第1所定時間よりも遅れて応答する。補助スイッチ223は、第2所定時間が前記第1所定時間よりも短く規定されていて、その操作を受け付けてから第2所定時間よりも遅れて応答する。補助スイッチ223は、主スイッチ222に連動して閉状態と開状態との何れかに切り替わることで主スイッチ222が導通状態になる前にトリップ回路を導通状態にする。
【0046】
このような遮断器22を備える充電制御装置20は、コンデンサ11の初期充電中に遮断器22が投入された際に、初期充電が未了であることにより生じうるラッシュ電流が継続的に流れることを抑制する。これにより、ラッシュ電流が回路に流れて回路の信頼性に影響することを抑制する。
【0047】
遮断器22の主スイッチ222(主接点)と補助スイッチ223(補助接点)の応答時間が同じ又は比較的近い場合に、上記のように、遮断器22のトリップ回路が作動するまでの時間にラッシュ電流が流れることがある。これについては、主スイッチ222よりも早く補助スイッチ223が応答する機構を持つ遮断器22を使用するとよい。これによれば、ラッシュ電流をより少なくできることから、コンデンサ11の初期充電中に、コンデンサ11の初期充電回路を無効化する遮断器22のレバー操作に応じて生じうるラッシュ電流の影響を軽減することができる。
【0048】
少なくとも1つの実施形態によれば、充電制御装置は、直流電源が出力する直流電圧を平滑するコンデンサの充電を制御する。充電制御装置は、抵抗と、遮断器とを備える。抵抗は、前記直流電源から前記コンデンサまでの経路に含まれた第1接続経路に配置されていて、前記コンデンサを充電するように前記直流電源から前記第1接続経路を経て流れる電流を制限する。遮断器は、前記第1接続経路に並列になる第2接続経路に設けられている。前記遮断器は、操作受付部と、主スイッチと、補助スイッチとを備える。操作受付部は、前記第2接続経路の通電状態と非通電状態とを切り替える操作を受け付ける。主スイッチは、前記受け付けた操作と通電状態とにより閉状態と開状態との何れかに切り替わることで前記第2接続経路を通電状態と非通電状態との何れかに切り替える。補助スイッチは、前記主スイッチに連動して閉状態と開状態との何れかに切り替わる。前記補助スイッチは、前記コンデンサの初期充電中に所定の条件が満たされた場合に前記主スイッチと前記補助スイッチを開状態にするための前記遮断器のトリップ回路に設けられている。前記所定の条件には、前記第2接続経路を通電状態にする操作に応じて少なくとも前記補助スイッチが閉状態に切り替わることが含まれる。これにより、コンデンサの初期充電中に、コンデンサの初期充電回路を無効化する遮断器のレバー操作に応じて生じうるラッシュ電流の影響を軽減することができる。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0050】
[1]上記の実施形態の充電制御装置は、直流電源が出力する直流電圧を平滑するコンデンサの充電を制御する。
この充電制御装置は、
前記直流電源から前記コンデンサまでの経路に含まれた第1接続経路に配置された抵抗であって、前記コンデンサを充電するように前記直流電源から前記第1接続経路を経て流れる電流を制限する抵抗と、
前記第1接続経路に並列になる第2接続経路に設けられている遮断器と、
を備える。
前記遮断器は、
前記第2接続経路の通電状態と非通電状態とを切り替える操作を受け付ける操作受付部と、
前記受け付けた操作と通電状態とにより閉状態と開状態との何れかに切り替わることで前記第2接続経路を通電状態と非通電状態との何れかに切り替える主スイッチと、
前記主スイッチに連動して閉状態と開状態との何れかに切り替わる補助スイッチと、
を備える。
前記補助スイッチは、
前記コンデンサの初期充電中に所定の条件が満たされた場合に前記主スイッチと前記補助スイッチを開状態にするための前記遮断器のトリップ回路に設けられている。
前記所定の条件には、前記第2接続経路を通電状態にする操作に応じて少なくとも前記補助スイッチが閉状態に切り替わることが含まれる。
【0051】
[2]上記の[1]に記載の充電制御装置は、前記所定の条件には、前記コンデンサの直流電圧が所定の電圧を超えたことが含まれるとよい。
【0052】
[3]上記の実施形態の電力変換システムは、直流電源が出力する直流電圧を平滑するコンデンサと、
前記直流電源の負荷になる電力変換装置であって、前記平滑された後の前記直流電圧を受けて機能する電力変換装置と、
上記の[1]又は[2]に記載の充電制御装置と、
を備える。
【0053】
[4]上記の[3]に記載の電力変換システムは、前記直流電源から前記コンデンサまでの経路に、前記第1接続経路と前記第2接続経路に流れる電流の変化を軽減するリアクトル13が設けられているとよい。
【0054】
[5]上記の[3]又は[4]に記載の電力変換システムは、
前記リアクトル13の一端は、前記第1接続経路と前記第2接続経路との分岐点に接続され、
前記リアクトル13の他端は、前記コンデンサに接続されているとよい。
【符号の説明】
【0055】
1…電力変換システム、
11…コンデンサ、
12…電力変換装置、
13…リアクトル、
20…充電制御装置、
21…抵抗、
22…遮断器、
23…スイッチ、
24…スイッチ、
25…制御装置、
26…表示器、
27…スイッチ、
221…操作受付部、
222…主スイッチ、
223…補助スイッチ。