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特開2024-11151タービンロータ、及びこれを備えているガスタービン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011151
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】タービンロータ、及びこれを備えているガスタービン
(51)【国際特許分類】
   F01D 5/08 20060101AFI20240118BHJP
   F02C 7/18 20060101ALI20240118BHJP
   F01D 5/18 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
F01D5/08
F02C7/18 A
F01D5/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112921
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】近藤 隆博
(72)【発明者】
【氏名】国貞 安▲将▼
(72)【発明者】
【氏名】宮久 靖夫
【テーマコード(参考)】
3G202
【Fターム(参考)】
3G202AA06
3G202AB01
3G202CA02
3G202CB01
3G202JJ02
(57)【要約】
【課題】動翼中でロータディスクから力を受ける部分の軸線方向の長さを長くしつつも、動翼全体の軸線方向の長さを抑える。
【解決手段】タービンロータは、ロータディスクと、動翼と、前記ロータディスクに取り付けられる蓋部材と、を備える。前記動翼は、翼体と、前記翼体の径方向内側に端に設けられているプラットフォームと、前記プラットフォームの前記径方向内側に設けられているシャンクと、前記シャンクの前記径方向内側に設けられている翼根と、を有する。ロータディスクは、円柱状の小径部と、円柱状を成し前記小径部の外径よりも大きな外径の大径部と、を有する。前記小径部は、前記小径部の外周面から前記径方向内側に凹んでいる通路溝を有する。前記大径部は、前記翼根が挿入可能に前記径方向外側から前記径方向内側に凹む翼溝を有する。前記蓋部材は、前記通路溝の開口を塞ぐ。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線を中心とするロータディスクと、
前記軸線に対する周方向に並んで、前記ロータディスクに取り付けられる複数の動翼と、
前記複数の動翼毎に設けられ、前記ロータディスクに取り付けられる蓋部材と、
を備え、
前記複数の動翼は、いずれも、
前記軸線に対する径方向に垂直な断面が翼形を成し、前記径方向に延びる翼体と、
前記翼体の前記径方向における径方向外側と径方向内側とのうち前記径方向内側に端に設けられているプラットフォームと、
前記プラットフォームの前記径方向内側に設けられ、径方向視すると前記軸線に対して挟角を成す方向である傾斜方向に延びるシャンクと、
前記シャンクの前記径方向内側に設けられ、前記傾斜方向に延びる翼根と、
前記翼根、前記シャンク、前記プラットフォーム、及び前記翼体内に連なって形成されている翼冷却空気通路と、
を有し、
前記シャンクは、前記軸線が延びる軸線方向における軸線上流側と軸線下流側とのうち前記軸線下流側を向く後端面を有し、
前記翼根は、前記軸線下流側を向き且つ前記シャンクの前記後端面と連なる後端面と、前記径方向内側を向く根底面と、を有し、前記翼根の前記後端面の前記径方向内側の縁が前記根底面の前記軸線下流側の縁に接続され、
前記根底面の前記軸線下流側の縁は、前記軸線方向で、前記シャンクの前記後端面と同じ位置である、又は前記シャンクの前記後端面よりも前記軸線上流側に位置し、
前記翼冷却空気通路は、前記翼根の前記根底面及び前記翼体の翼面で開口し、
前記ロータディスクは、前記軸線を中心として円柱状の小径部と、前記軸線を中心として円柱状を成し前記小径部の外径よりも大きな外径の大径部と、を有し、
前記小径部は、前記大径部の前記軸線下流側に接続され、
前記小径部は、前記複数の動翼毎に通路溝を有し、
前記通路溝は、前記小径部の外周面から前記径方向内側に凹んで前記径方向外側の縁が開口を成し、前記大径部に向かって前記傾斜方向に延び、
前記大径部は、複数の動翼毎に、翼溝を有し、
前記翼溝は、前記翼根が挿入可能に前記径方向外側から前記径方向内側に凹み、前記傾斜方向に延びて前記大径部を貫通し、
前記翼溝は、前記径方向外側を向き且つ前記翼根の根底面と前記径方向で間隔をあけて対向する翼溝底面を有し、
前記翼溝底面は、前記通路溝の底面である通路溝底面と連なり、
前記蓋部材は、前記通路溝の前記開口を塞ぎ、
前記通路溝中で前記蓋部材よりも前記径方向内側の部分は、冷却空気が流通可能で前記大径部の前記翼溝内に連なる通路を成す、
タービンロータ。
【請求項2】
請求項1に記載のタービンロータにおいて、
前記小径部は、前記複数の動翼毎に径方向通路を有し、
前記径方向通路は、冷却空気が流通可能に前記小径部内を前記径方向に延び、
前記通路溝は、前記径方向通路の前記径方向外側の端から前記大径部に向かって前記傾斜方向に延びている、
タービンロータ。
【請求項3】
請求項1に記載のタービンロータにおいて、
前記複数の動翼における前記シャンクの前記後端面と対向し且つ前記周方向に延びて、前記複数の動翼毎の前記シャンク相互間の軸線下流側の部分を塞ぐ板本体を有する後シール板を備え、
前記後シール板の前記径方向外側の部分は前記プラットフォームに接し、前記後シール板の前記径方向内側の部分は前記蓋部材に接する、
タービンロータ。
【請求項4】
請求項3に記載のタービンロータにおいて、
前記後シール板は、前記板本体と、前記板本体の前記径方向内側の縁の一部から前記径方向内側に突出する突出部と、を有し、
前記プラットフォームは、前記径方向内側から前記径方向外側に凹んで、前記周方向に延び、前記板本体の前記径方向外側の部分が入り込む後シール板溝を有し、
前記蓋部材は、前記径方向外側から前記径方向内側に凹んで、前記後シール板の前記突出部が入り込んで、前記後シール板の前記周方向の移動を規制するシール板移動規制溝を有する、
タービンロータ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のタービンロータにおいて、
前記蓋部材における前記軸線下流側を向く後端面に接して、前記ロータディスクに対する前記蓋部材の前記軸線下流側への移動を規制する蓋止め部材を備え、
前記ロータディスクの前記小径部は、前記径方向外側から前記径方向内側に向かって凹み前記蓋止め部材が入り込む蓋止め溝を有する、
タービンロータ。
【請求項6】
請求項5に記載のタービンロータにおいて、
前記蓋止め部材は、前記蓋部材の前記後端面に接触可能な第一止め部材と、前記第一止め部材の前記軸線下流側に配置される第二止め部材と、前記第一止め部材と前記第二止め部材との前記軸線方向の間隔を変更可能な間隔変更部材と、を有する、
タービンロータ。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか一項に記載のタービンロータと、
前記タービンロータの外周側を覆うタービンケーシングと、
を備えるガスタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンロータ、及びこれを備えているガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、空気を圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機と、圧縮空気中で燃料を燃焼させて燃料ガスを生成する燃焼器と、燃焼ガスで駆動するタービンと、を備える。タービンは、軸線を中心として回転するタービンロータと、このロータを覆うタービンケーシングと、複数の静翼列と、を備える。
【0003】
例えば、以下の特許文献1には、ガスタービンのタービンロータが開示されている。このタービンロータは、軸線が延びる軸線方向に並ぶ複数のディスクユニットと、軸線方向に延びて複数のディスクユニットを互いに結合するスピンドルボルトと、を有する。一のディスクユニットは、一のロータディスクと、このロータディスクの外周部に取り付けられている一の動翼列と、を有する。一の動翼列は、軸線に対する周方向に並んでいる複数の動翼を有する。
【0004】
動翼は、翼体と、プラットフォームと、シャンクと、翼根と、を有する。翼体は、軸線に対する径方向に垂直な断面が翼形を成し、径方向に延びている。プラットフォームは、翼体の径方向内側に端に設けられている。シャンクは、プラットフォームの径方向内側に設けられ、傾斜方向に延びている。なお、傾斜方向とは、軸線に対して挟角を成す方向である。翼根は、シャンクの径方向内側に設けられ、傾斜方向に延びている。翼根の傾斜方向に対して垂直な断面形状は、周方向に凹凸を繰り返す形状である、言い換えると、クリスマスツリー形状である。複数の静翼列は、軸線方向に並んで、タービンケーシングの内周側に取り付けられている。複数の静翼列のそれぞれは、複数のディスクユニット毎の動翼列のうちのいずれか一の動翼列の軸線上流側に配置されている。各静翼列は、いずれも、軸線に対する周方向に並ぶ複数の静翼を有する。
【0005】
複数のディスクユニットのうち、最も軸線下流側のディスクユニットである最終段ディスクユニットのロータディスクは、軸線を中心として円柱状の後軸部と、軸線を中心として円柱状を成し後軸部の外径よりも大きな外径の第一小径部と、軸線を中心として円柱状を成し第一小径部の外径よりも大きな外径の第二小径部と、軸線を中心として円柱状を成し第二小径部の外径よりも大きな外径の大径部と、を有する。後軸部の軸線上流側には第一小径部が接続されている。この第一小径部の軸線上流側には第二小径部が接続されている。この第二小径部の軸線上流側には大径部が接続されている。
【0006】
後軸部は、冷却空気が流通可能な主冷却空気通路を有する。主冷却空気通路は、後軸部の後端面から軸線上流側に向かって第二小径部内まで延びている。
【0007】
第一小径部は、複数の第一径方向通路と、複数の軸方向通路と、を有する。第一径方向通路は、第一小径部内を径方向に延びている。この第一径方向通路の径方向内側の端は、主冷却空気通路の軸線上流側の端に接続されている。軸方向通路は、第二径方向通路の径方向外側の端から軸線上流側に向かって、第一小径部内まで延びている。
【0008】
第二小径部は、第二径方向通路及び通路溝を有する。第二径方向通路は、第二小径部内を径方向に延びている。この第二径方向通路の径方向内側の端は、軸方向通路の軸線上流側の端に接続されている。通路溝は、第二小径部の外周面から径方向内側に凹んで径方向外側の縁が開口を成し、第二径方向通路の径方向外側の端から軸線上流側に向かって傾斜方向に延びている。
【0009】
大径部は、複数の動翼毎の翼溝を有する。翼溝は、大径部の外周面から径方向内側に凹んで傾斜方向に延びている。翼溝は、ここに動翼の翼根が嵌り込めるよう、翼根と同様、傾斜方向に対して垂直な断面形状がクリスマスツリー形状である。この翼溝の底面は、通路溝の底面と連なっている。
【0010】
動翼は、前述した、翼体、プラットフォーム、シャンク、翼根の他、顎部と、翼冷却空気通路と、を有する。顎部は、翼根から軸線下流側に向かって傾斜方向に突出している。この顎部は、第二小径部の通路溝における開口を塞いている。通路溝中で顎部よりも径方向内側の部分は、冷却空気が流通可能な通路を成す。翼冷却空気通路は、翼根、シャンク、プラットフォーム、及び翼体内で延びている。この翼冷却空気通路の一方の端は、翼根の底面で開口し、他方の端は、翼体の翼面で開口している。
【0011】
この最終段ディスクユニットでは、冷却空気が後軸部の主冷却空気通路内に供給される。冷却空気は、主冷却空気通路から第一小径部の第一径方向通路及び第一小径部の軸方向通路を経て、第二小径部の第二径方向通路に流入する。冷却空気は、この第二径方向通路から、第二小径部の通路溝と動翼の顎部とで形成される通路を経て、翼溝内に流入する。翼溝内に流入した冷却空気は、動翼の翼冷却空気通路に流入し、この動翼を冷却する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009-243312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
動翼の翼体は、高温高圧の燃焼ガスが衝突して、この燃焼ガスから力を受ける。また、動翼の翼根は、ロータディスクに対して動翼が相対移動しないよう、ロータディスクから翼体が受ける力とは反対向きの力を受ける。さらに、翼根は、ロータディスクから動翼にかかる遠心力に抗する力も受ける。
【0014】
ガスタービンの性能を向上させるため、翼体の径方向の長さを長くする、言い換えると、翼体の翼高さを高くする方法が検討されている。翼体の翼高さを高くすると、翼体が燃焼ガスから受ける力が増加すると共に、動翼にかかる遠心力も増加する。このため、翼体の翼高さを高くすると、翼根がロータディスクから受ける力も増加する。翼根がロータディスクからの力に耐え得るためには、翼根の軸線方向の長さを長くする方法がある。一方で、製造上の都合等から動翼の軸線方向の長さを抑えることが望まれる。
【0015】
そこで、本開示は、動翼中でロータディスクから力を受ける部分の軸線方向の長さを長くしつつも、動翼全体の軸線方向の長さを抑えることができる、タービンロータ、及びこれを備えているガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するための発明に係る一態様のタービンロータは、
軸線を中心とするロータディスクと、前記軸線に対する周方向に並んで、前記ロータディスクに取り付けられる複数の動翼と、前記複数の動翼毎に設けられ、前記ロータディスクに取り付けられる蓋部材と、を備える。前記複数の動翼は、いずれも、前記軸線に対する径方向に垂直な断面が翼形を成し、前記径方向に延びる翼体と、前記翼体の前記径方向における径方向外側と径方向内側とのうち前記径方向内側に端に設けられているプラットフォームと、前記プラットフォームの前記径方向内側に設けられ、径方向視すると前記軸線に対して挟角を成す方向である傾斜方向に延びるシャンクと、前記シャンクの前記径方向内側に設けられ、前記傾斜方向に延びる翼根と、前記翼根、前記シャンク、前記プラットフォーム、及び前記翼体内に連なって形成されている翼冷却空気通路と、を有する。前記シャンクは、前記軸線が延びる軸線方向における軸線上流側と軸線下流側とのうち前記軸線下流側を向く後端面を有する。前記翼根は、前記軸線下流側を向き且つ前記シャンクの前記後端面と連なる後端面と、前記径方向内側を向く根底面と、を有し、前記翼根の前記後端面の前記径方向内側の縁が前記根底面の前記軸線下流側の縁に接続されている。前記根底面の前記軸線下流側の縁は、前記軸線方向で、前記シャンクの前記後端面と同じ位置である、又は前記シャンクの前記後端面よりも前記軸線上流側に位置する。前記翼冷却空気通路は、前記翼根の前記根底面及び前記翼体の翼面で開口する。前記ロータディスクは、前記軸線を中心として円柱状の小径部と、前記軸線を中心として円柱状を成し前記小径部の外径よりも大きな外径の大径部と、を有する。前記小径部は、前記大径部の前記軸線下流側に接続されている。
前記小径部は、前記複数の動翼毎に通路溝を有する。前記通路溝は、前記小径部の外周面から前記径方向内側に凹んで前記径方向外側の縁が開口を成し、前記大径部に向かって前記傾斜方向に延びている。前記大径部は、複数の動翼毎に、翼溝を有する。前記翼溝は、前記翼根が挿入可能に前記径方向外側から前記径方向内側に凹み、前記傾斜方向に延びて前記大径部を貫通している。前記翼溝は、前記径方向外側を向き且つ前記翼根の根底面と前記径方向で間隔をあけて対向する翼溝底面を有する。前記翼溝底面は、前記通路溝の底面である通路溝底面と連なる。前記蓋部材は、前記通路溝の前記開口を塞ぐ。前記通路溝中で前記蓋部材よりも前記径方向内側の部分は、冷却空気が流通可能で前記大径部の前記翼溝内に連なる通路を成す。
【0017】
本態様では、冷却空気が、小径部の通路溝と蓋部材とで形成されている通路、及び、前記翼根の根底面と前記翼溝の翼溝底面との間に形成されている通路を経て、動翼の翼冷却空気通路内に流入する。この冷却空気は、翼冷却空気通路内を流れる過程で、動翼を冷却した後、動翼の翼面に形成されている開口から動翼外に流出する。よって、本態様では、動翼を冷却空気で冷却することができる。
【0018】
本態様では、小径部の通路溝の開口を、動翼とは独立した部品である蓋部材で塞いでいる。このため、本態様では、前述の特許文献1に記載の動翼のように、翼根から軸線下流側に向かって突出している顎部が不要になる。従って、本態様の動翼は、顎部がなく、翼根の後端面がシャンクの後端面と連なり、且つ、翼根の後端面の径方向内側の縁が翼根の根底面の軸線下流側の縁に接続されている。
【0019】
このため、本態様では、動翼中でロータディスクから力を受ける翼根の軸線方向の長さを長くしても、動翼の軸線方向の長さを抑えることができる。
【0020】
前記目的を達成するための発明に係る一態様のガスタービンは、
前記一態様におけるタービンロータと、前記タービンロータの外周側を覆うタービンケーシングと、を備える。
【発明の効果】
【0021】
本開示の一態様によれば、動翼中でロータディスクから力を受ける部分である翼根の軸線方向の長さを長くしつつも、動翼全体の軸線方向の長さを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本開示に係る一実施形態におけるガスタービンの模式的な断面図である。
図2】本開示に係る一実施形態における最終段ディスクユニットの要部断面図である。
図3図2中のIII部の詳細断面図である。
図4】本開示に係る一実施形態における最終段ディスクユニットの要部を周方向に展開して、これを径方向外側から見た際の分解図である。
図5】蓋部材を省略した図3におけるV-V線断面図である。
図6】蓋部材を省略していない図3におけるV-V線断面図である。
図7】本開示に係る一実施形態における最終段ディスクユニットの要部の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示のタービンロータ、及びこのタービンロータを備えるガスタービンの実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
図1に示すように、本実施形態のガスタービンは、空気Aを圧縮する圧縮機10と、圧縮機10で圧縮された空気A中で燃料Fを燃焼させて燃焼ガスGを生成する燃焼器15と、燃焼ガスGにより駆動するタービン20と、を備えている。
【0025】
圧縮機10は、軸線Arを中心として回転する圧縮機ロータ13と、圧縮機ロータ13を覆う圧縮機ケーシング11と、複数の静翼列12と、を有する。タービン20は、軸線Arを中心として回転するタービンロータ23と、タービンロータ23を覆うタービンケーシング21と、複数の静翼列22と、を有する。なお、以下では、軸線Arが延びる方向を軸線方向Da、この軸線Arを中心とした周方向を単に周方向Dcとし、軸線Arに対して垂直な方向を径方向Drとする。また、軸線方向Daの一方側を軸線上流側Dau、その反対側を軸線下流側Dadとする。また、径方向Drで軸線Arに近づく側を径方向内側Dri、その反対側を径方向外側Droとする。
【0026】
圧縮機10は、タービン20に対して軸線上流側Dauに配置されている。
【0027】
圧縮機ロータ13とタービンロータ23とは、同一軸線Ar上に位置し、互いに接続されてガスタービンロータ3を成す。このガスタービンロータ3には、例えば、発電機GENのロータが接続されている。ガスタービンは、さらに、中間ケーシング2を備える。この中間ケーシング2は、軸線方向Daで、圧縮機ケーシング11とタービンケーシング21との間に配置されている。この中間ケーシング2には、燃焼器15が取り付けられている。圧縮機ケーシング11と中間ケーシング2とタービンケーシング21とは、互いに接続されてガスタービンケーシング1を成す。
【0028】
圧縮機ロータ13は、軸線Arを中心として軸線方向Daに延びるロータ軸13rと、このロータ軸13rに取り付けられている複数の動翼列13bと、を有する。複数の動翼列13bは、軸線方向Daに並んでいる。各動翼列13bは、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の動翼で構成されている。複数の動翼列13bの各軸線下流側Dadには、複数の静翼列12のうちのいずれか一の静翼列12が配置されている。各静翼列12は、圧縮機ケーシング11の内側に設けられている。各静翼列12は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の静翼で構成されている。
【0029】
タービンロータ23は、軸線方向Daに並ぶ複数のディスクユニット25と、軸線方向Daに延びて複数のディスクユニット25を互いに結合するスピンドルボルト26と、を有する。一のディスクユニット25は、一のロータディスク27と、このロータディスク27の外周部に取り付けられている一の動翼列23bと、を有する。一の動翼列23bは、軸線Arに対する周方向Dcに並んでいる複数の動翼を有する。複数のディスクユニット25毎のロータディスク27は、前述のスピンドルボルト26で互いに連結されて、タービンロータ23のロータ軸23rが構成される。複数の静翼列22は、軸線方向Daに並んで、タービンケーシング21の内周側に取り付けられている。複数の静翼列22のそれぞれは、複数のディスクユニット25毎の動翼列23bのうちのいずれか一の動翼列23bの軸線上流側Dauに配置されている。各静翼列22は、いずれも、軸線Arに対する周方向Dcに並ぶ複数の静翼を有する。
【0030】
複数のディスクユニット25のうち、最も軸線下流側Dadのディスクユニット25である最終段ディスクユニット25fは、図2及び図3に示すように、ロータディスク27f、このロータディスク27fに取り付けられている一の動翼列23bの他、複数の前シール板70と、前シール板止め部材71と、複数の後シール板72と、複数の動翼毎の蓋部材80と、複数の動翼毎の蓋止め部材85と、を有する。なお、図3は、図2中のIII部拡大図である。
【0031】
動翼列23bを構成する複数の動翼50は、図4図7に示すように、翼体51と、プラットフォーム52と、シャンク61と、翼根65と、を有する。なお、図4は、最終段ディスクユニット25fの要部を周方向Dcに展開して、これを径方向外側Droから見た際の分解図である。図5は、蓋部材80を省略した図3におけるV-V線断面図である。図6は、蓋部材80を省略していない図3におけるV-V線断面図である。図7は、最終段ディスクユニット25fの要部の分解斜視図である。
【0032】
翼体51は、軸線Arに対する径方向Drに垂直な断面が翼形を成し、径方向Drに延びている。
【0033】
プラットフォーム52は、翼体51の径方向内側Driに端に設けられている。このプラットフォーム52は、図3図4及び図7に示すように、ガスパス面53と、反ガスパス面54と、前端面55(図4及び図7参照)と、後端面56と、一対の側面57と、を有する。ガスパス面53は、径方向外側Droを向く。翼体51は、このガスパス面53から径方向外側Droに延びている。反ガスパス面54は、ガスパス面53と背合わせの関係にあり、径方向内側Driを向く。前端面55は、径方向Dr及び周方向Dcに広がり、軸線上流側Dauを向く。後端面56は、前端面55と背合わせの関係にある。この後端面56は、径方向Dr及び周方向Dcに広がり、軸線下流側Dadを向く。後端面56は、前端面55に対して平行である。一対の側面57は、いずれも、径方向Dr及び傾斜方向Diに広がり、周方向Dcを向く。なお、傾斜方向Diとは、図4に示すように、軸線Arに対して挟角を成す方向である。一対の側面57は、互に平行である。よって、プラットフォーム52は、径方向Drから見た場合、平行四辺形状を成している。プラットフォーム52は、さらに、前シール板溝58及び後シール板溝59を有する。前シール板溝58は、プラットフォーム52中で前端面55寄りの部分に形成されている。後シール板溝59は、プラットフォーム52中で後端面56寄りの部分に形成されている。前シール板溝58及び後シール板溝59は、いずれも、反ガスパス面54から径方向外側Droに向かって凹み、周方向Dcに延びている。
【0034】
シャンク61は、プラットフォーム52の径方向内側Driに設けられ、傾斜方向Diに延びている。このシャンク61は、前端面62(図7参照)と、後端面63と、一対の側面64と、を有する。前端面62は、径方向Dr及び周方向Dcに広がり、軸線上流側Dauを向く。後端面63は、前端面62と背合わせの関係にある。この後端面63は、径方向Dr及び周方向Dcに広がり、軸線下流側Dadを向く。後端面63は、前端面62に対して平行である。一対の側面64は、いずれも、径方向Dr及び傾斜方向Diに広がり、周方向Dcを向く。一対の側面64の周方向Dcにおける相互間隔は、図5に示すように、径方向内側Driに向かうに連れて次第に狭くなっている。
【0035】
翼根65は、シャンク61の径方向内側Driに設けられ、傾斜方向Diに延びている。この翼根65は、前端面66(図7参照)と、後端面67と、根底面65bと、一対の側面68と、を有する。前端面66は、径方向Dr及び周方向Dcに広がり、軸線上流側Dauを向く。後端面67は、前端面66と背合わせの関係にある。この後端面67は、径方向Dr及び周方向Dcに広がり、軸線下流側Dadを向く。後端面67は、前端面66に対して平行である。この後端面67は、シャンク61の後端面63と連なっている。根底面65bは、翼根65中で最も径方向内側Driに位置し、径方向内側Driを向く。この根底面65bの軸線上流側Dauの縁には、翼根65における前端面66の径方向内側Driの縁が接続されている。また、この根底面65bの軸線下流側Dadの縁には、翼根65における後端面67の径方向内側Driの縁が接続されている。また、この根底面65bの軸線下流側Dadの縁は、軸線方向Daで、シャンク61の後端面63と同じ位置である、又はシャンク61の後端面63よりも軸線上流側Dauに位置する。一対の側面68は、いずれも、径方向Dr及び傾斜方向Diに広がっている。この翼根65は、図5に示すように、一対の側面68相互間の幅が大きい部分と小さい部分とが繰り返されるよう形成されている。言い換えると、翼根65の傾斜方向Diに対して垂直な断面形状は、クリスマスツリー形状である。ここで、以下の説明の都合上、一対の側面68相互間の幅が大きい部分のうちで、最も径方向内側Driの部分を第一大幅部65fとする。
【0036】
動翼50は、さらに、翼冷却空気通路69を有する。翼冷却空気通路69は、翼根65、シャンク61、プラットフォーム52、及び翼体51内で延びている。この翼冷却空気通路69の一方の端は、翼根65の根底面65bで開口し、他方の端は、翼体51の翼面で開口している
【0037】
最終段ディスクユニット25fのロータディスク27fは、図2に示すように、軸線Arを中心として円柱状の後軸部28と、軸線Arを中心として円柱状を成し後軸部28の外径よりも大きな外径の第一小径部31と、軸線Arを中心として円柱状を成し第一小径部31の外径よりも大きな外径の第二小径部34と、軸線Arを中心として円柱状を成し第二小径部34の外径よりも大きな外径の大径部41と、を有する。後軸部28の軸線上流側Dauには第一小径部31が接続されている。この第一小径部31の軸線上流側Dauには第二小径部34が接続されている。この第二小径部34の軸線上流側Dauには大径部41が接続されている。
【0038】
後軸部28は、冷却空気Acが流通可能な主冷却空気通路29を有する。主冷却空気通路29は、後軸部28の図示されていない後端面から軸線上流側Dauに向かって第二小径部34内まで延びている。
【0039】
第一小径部31は、複数の第一径方向通路32と、複数の軸方向通路33と、を有する。第一径方向通路32は、第一小径部31内を径方向Drに延びている。この第一径方向通路32の径方向内側Driの端は、主冷却空気通路29の軸線上流側Dauの端に接続されている。軸方向通路33は、第一径方向通路32の径方向外側Droの端から軸線上流側Dauに向かって、第一小径部31内まで延びている。
【0040】
第二小径部34(以下、単に小径部という場合がある。)は、図3図7に示すように、複数の第二径方向通路35と、複数の通路溝36と、シール板溝37と、蓋止め溝38と、を有する。複数の第二径方向通路35及び複数の通路溝36は、いずれも、複数の動翼50毎に存在する。第二径方向通路35(以下、単に径方向通路という場合がある)は、第二小径部34内を径方向Drに延びている。この第二径方向通路35の径方向内側Driの端は、第一小径部31における軸方向通路33の軸線上流側Dauの端に接続されている。通路溝36は、第二小径部34の外周面から径方向内側Driに凹んで径方向外側Droの縁が開口を成し、第二径方向通路35の径方向外側Droの端から軸線上流側Dauに向かって傾斜方向Diに延びている。シール板溝37は、第二小径部34中で大径部41との境目の位置に形成されている。このシール板溝37は、径方向外側Droから径方向内側Driに凹んで周方向Dcに延びている。このシール板溝37の溝深さは、通路溝36の溝深さよりも浅い。蓋止め溝38は、第二小径部34中で、複数の第二径方向通路35よりも軸線下流側Dadの位置に形成されている。この蓋止め溝38は、径方向外側Droから径方向内側Driに凹んで周方向Dcに延びている。このシール板溝37の溝深さも、通路溝36の溝深さよりも浅い。
【0041】
大径部41は、複数の動翼50毎の翼溝42を有する。翼溝42は、大径部41の外周面41oから径方向内側Driに凹み、傾斜方向Diに延びて大径部41を貫通している。翼溝42は、ここに動翼50の翼根65が嵌り込めるよう、翼根65と同様、傾斜方向Diに対して垂直な断面形状がクリスマスツリー形状である。ここで、以下の説明の都合上、一対の溝側面相互間の幅が大きい部分のうちで、最も径方向内側Driの部分を第一大幅部42fとする。この第一大幅部42f中で最も径方向内側Driに位置し、径方向内側Driを向く面が、この翼溝42の翼溝底面42bを成す。翼溝42の第一大幅部42fの径方向Drの寸法は、翼根65の第一大幅部65fの径方向Drの寸法よりも大きい。このため、翼根65が翼溝42に嵌まり込んだ際、根底面65bと翼溝底面42bとの間に、冷却空気が流通可能な通路である傾斜方向通路43が形成される。第二小径部34における通路溝36の傾斜方向Diに垂直な断面形状は、翼溝42における第一大幅部42fの傾斜方向Diに垂直な断面形状と一致し、且つ通路溝36の底面である通路溝底面36bは、翼溝底面42bに連なっている。
【0042】
前シール板70は、図2に示すように、複数の動翼50におけるシャンク61の前端面62と対向し且つ周方向Dcに延びて、複数の動翼50毎のシャンク61相互間の軸線上流側Dauの部分を塞ぐことができる。この前シール板70の径方向外側Droの部分は、プラットフォーム52の前シール板溝58に嵌まり込む。また、この前シール板70の径方向内側Driの部分は、前シール板止め部材71により、ロータディスク27fに対して相対移動不能に拘束される。
【0043】
後シール板72は、板本体73と、突出部74と、を有する。板本体73は、シャンク61の後端面63と対向し且つ周方向Dcに延びて、複数の動翼50毎のシャンク61相互間の軸線下流側Dadの部分を塞ぐことができる。突出部74は、板本体73の径方向内側Driの縁の一部から径方向内側Driに突出している。板本体73の径方向外側Droの部分は、プラットフォーム52の後シール板溝59に嵌まり込む。また、板本体73の径方向外側Droの部分は、第二小径部34のシール板溝37に嵌まり込む。
【0044】
蓋部材80は、動翼50とは独立した部品であり、第二小径部34の通路溝36に嵌まり込んで、この通路溝36の開口36oを塞ぐことができる部品である。通路溝36は、前述したように、傾斜方向Diに延びている溝である。このため、蓋部材80も、傾斜方向Diに延びている部品である。蓋部材80は、軸線上流側Dauを向く前端面81と、軸線下流側Dadを向く後端面82と、径方向内側Driを向く蓋底面80bと、シール板移動規制溝83と、を有する。蓋部材80が通路溝36に嵌り込んで通路溝36の開口36oを塞いでいる状態では、蓋部材80の前端面81は、翼根65の後端面67中で第一大幅部65fの部分と傾斜方向Diで対向する。さらに、この状態では、蓋底面80bが根底面65bと実質的に面一になる。また、この蓋部材80の傾斜方向Diに対して垂直な断面形状は、翼根65の第一大幅部65fの傾斜方向Diに対して垂直な断面形状に対応した形状である。通路溝36の傾斜方向Diに対して垂直な断面形状は、前述したように、翼溝42における第一大幅部42fの傾斜方向Diに垂直な断面形状と一致している。このため、蓋部材80が通路溝36に嵌り込んだ状態では、蓋底面80bと通路溝底面36bとの間には、冷却空気が流通可能で、且つ根底面65bと翼溝底面42bとの間の傾斜方向通路43と連通した傾斜方向通路39が形成される。さらに、蓋部材80が第二小径部34の通路溝36に嵌り込むと、蓋部材80は、第二小径部34に対して径方向外側Droに相対移動できなくなる。
【0045】
蓋部材80のシール板移動規制溝83は、この蓋部材80中の軸線上流側Dauの位置に形成されている。このシール板移動規制溝83は、後シール板72の突出部74が入り込めるよう、径方向外側Droから径方向内側Driに向かって凹んでいる。蓋部材80が通路溝36に嵌り込んで通路溝36の開口36oを塞いでいる状態では、このシール板移動規制溝83は、軸線方向Daで、第二小径部34の後シール板溝59と同じ位置に形成されている。蓋部材80が通路溝36に嵌り込んで通路溝36の開口36oを塞いでいる状態では、このシール板移動規制溝83の底面は、第二小径部34のシール板溝37の底面よりも径方向内側Driに位置している。
【0046】
蓋止め部材85は、複数の動翼50毎に存在する第一止め部材86と、複数の第二止め部材87と、複数の動翼50毎に存在する間隔変更部材88と、を有する。第一止め部材86は、蓋部材80の後端面82に接触可能な板状の部材である。第二止め部材87は、周方向Dcに延び、第一止め部材86の軸線下流側Dadに配置される板状の部材である。間隔変更部材88は、雄ネジである。第一止め部材86及び第二止め部材87には、それぞれ、軸線方向Daに貫通し、雄ネジである間隔変更部材88が捩込み可能な雌ネジ86s,87sが形成されている。但し、第二止め部材87の雌ネジ87sは、第一止め部材86の雌ネジ86sに対する逆ネジである。このため、第一止め部材86の雌ネジ86s及び第二止め部材87の雌ネジ87sに、雄ネジである間隔変更部材88を捩じ込んだ後、この雄ネジである間隔変更部材88を回すと、第一止め部材86と第二止め部材87との軸線方向Daの間隔が変わる。
【0047】
次に、以上で説明した最終段ディスクユニット25fの組立順序について説明する。
まず、ロータディスク27fの翼溝42と動翼50の翼根65とを軸線方向Daで対向させる。そして、この動翼50を傾斜方向Diに移動させて、動翼50の翼根65をロータディスク27fの翼溝42に嵌め込む。
【0048】
次に、前シール板70及び後シール板72をロータディスク27fに取り付ける。後シール板72を取り付ける際には、後シール板72を周方向Dcに移動させて、後シール板72における板本体73の径方向外側Dro部分を動翼50の後シール板溝59に嵌め込み、この後シール板72における板本体73の径方向内側Driの部分を第二小径部34のシール板溝37に嵌め込む。このとき、後シール板72の突出部74が、周方向Dcで第二小径部34の通路溝36と同じ位置になるよう、後シール板72を周方向Dcに移動させる。
【0049】
次に、蓋部材80の前端面81と第二小径部34の通路溝36とを軸線方向Daで対向させる。そして、この蓋部材80を傾斜方向Diに移動させて、蓋部材80を通路溝36に嵌め込むと共に、蓋部材80の前端面81を翼根65の後端面63,67と軸線方向Daで対向させる。蓋部材80が通路溝36に嵌り込むと、この蓋部材80は、第二小径部34に対して相対的に径方向Drに移動不能になる。また、蓋部材80が通路溝36に嵌り込むと、後シール板72の突出部74が蓋部材80のシール板移動規制溝83内に収まり、後シール板72は周方向Dcに移動不能になる。以上のように、本実施形態では、簡単な構成で且つ簡単な組み立て順で、後シール板72を周方向Dcに移動不能にすることができる。
【0050】
次に、第一止め部材86と第二止め部材87との間隔が最小になるように、第一止め部材86の雌ネジ86s及び第二止め部材87の雌ネジ87sに、雄ネジである間隔変更部材88を捩じ込み、第一止め部材86と第二止め部材87とを間隔変更部材88で連結する。次に、間隔変更部材88で連結された第一止め部材86と第二止め部材87とを、第二小径部34の蓋止め溝38に入れる。そして、雄ネジである間隔変更部材88を回転させて、第一止め部材86と第二止め部材87との間隔を広げ、第一止め部材86を蓋部材80の後端面82に接触させ、この蓋部材80の前端面81を翼根65の後端面67に接触させる。この結果、蓋部材80は、傾斜方向Diに移動不能になる。
【0051】
以上で、最終段ディスクユニット25fの組立が完了する。
【0052】
複数の動翼列23b毎の動翼50におけるプラットフォーム52の径方向外側Droで、タービンケーシング21の径方向内側Driの環状の燃焼ガス流路中には、燃焼器15からの燃焼ガスGが流入する。この燃焼ガス流路中には、動翼50の翼体51が存在する。
【0053】
この最終段ディスクユニット25fでは、冷却空気Acが後軸部28の主冷却空気通路29内に供給される。冷却空気Acは、主冷却空気通路29から第一小径部31の第一径方向通路32及び第一小径部31の軸方向通路33を経て、第二小径部34の第二径方向通路35に流入する。冷却空気Acは、この第二径方向通路35から、第二小径部34の通路溝36と蓋部材80とで形成される傾斜方向通路39を経て、翼溝42内の傾斜方向通路43に流入する。翼溝42内の傾斜方向通路43に流入した冷却空気Acは、動翼50の翼冷却空気通路69に流入し、この動翼50の翼体51を冷却する。
【0054】
本実施形態では、小径部34の通路溝36の開口36oを、動翼50とは独立した部品である蓋部材80で塞いでいる。このため、本実施形態では、前述の特許文献1に記載の動翼のように、翼根から軸線下流側Dadに向かって突出している顎部が不要になる。従って、本態様の動翼50は、顎部がなく、翼根65の後端面67がシャンク61の後端面63と連なり、且つ、翼根65の後端面67の径方向内側Driの縁が翼根65の根底面65bの軸線下流側Dadの縁に接続されている。
【0055】
このため、本実施形態では、動翼50中でロータディスク27fから力を受ける翼根65の軸線方向Daの長さを長くしても、動翼50の軸線方向Daの長さを抑えることができる。
【0056】
本開示は、以上で説明した実施形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲において、種々の追加、変更、置き換え、部分的削除等が可能である。
【0057】
「付記」
以上の実施形態におけるタービンロータは、例えば、以下のように把握される。
【0058】
(1)第一態様におけるタービンロータは、
軸線Arを中心とするロータディスク27fと、前記軸線Arに対する周方向Dcに並んで、前記ロータディスク27fに取り付けられる複数の動翼50と、前記複数の動翼50毎に設けられ、前記ロータディスク27fに取り付けられる蓋部材80と、を備える。前記複数の動翼50は、いずれも、前記軸線Arに対する径方向Drに垂直な断面が翼形を成し、前記径方向Drに延びる翼体51と、前記翼体51の前記径方向Drにおける径方向外側Droと径方向内側Driとのうち前記径方向内側Driに端に設けられているプラットフォーム52と、前記プラットフォーム52の前記径方向内側Driに設けられ、径方向視すると前記軸線Arに対して挟角を成す方向である傾斜方向Diに延びるシャンク61と、前記シャンク61の前記径方向内側Driに設けられ、前記傾斜方向Diに延びる翼根65と、前記翼根65、前記シャンク61、前記プラットフォーム52、及び前記翼体51内に連なって形成されている翼冷却空気通路69と、を有する。
前記シャンク61は、前記軸線Arが延びる軸線方向Daにおける軸線上流側Dauと軸線下流側Dadとのうち前記軸線下流側Dadを向く後端面63を有する。
前記翼根65は、前記軸線下流側Dadを向き且つ前記シャンク61の前記後端面63と連なる後端面67と、前記径方向内側Driを向く根底面65bと、を有する。前記翼根65の前記後端面67の前記径方向内側Driの縁が前記根底面65bの前記軸線下流側Dadの縁に接続されている。前記根底面65bの前記軸線下流側Dadの縁は、前記軸線方向Daで、前記シャンク61の前記後端面63と同じ位置である、又は前記シャンク61の前記後端面63よりも前記軸線上流側Dauに位置する。前記翼冷却空気通路69は、前記翼根65の前記根底面65b及び前記翼体51の翼面で開口する。前記ロータディスク27fは、前記軸線Arを中心として円柱状の小径部34と、前記軸線Arを中心として円柱状を成し前記小径部34の外径よりも大きな外径の大径部41と、を有する。前記小径部34は、前記大径部41の前記軸線下流側Dadに接続されている。前記小径部34は、前記複数の動翼50毎に通路溝36を有する。前記通路溝36は、前記小径部34の外周面から前記径方向内側Driに凹んで前記径方向外側Droの縁が開口36oを成し、前記大径部41に向かって前記傾斜方向Diに延びている。前記大径部41は、複数の動翼50毎に、翼溝42を有する。前記翼溝42は、前記翼根65が挿入可能に前記径方向外側Droから前記径方向内側Driに凹み、前記傾斜方向Diに延びて前記大径部41を貫通している。前記翼溝42は、前記径方向外側Droを向き且つ前記翼根65の根底面65bと前記径方向Drで間隔をあけて対向する翼溝底面42bを有する。前記翼溝底面42bは、前記通路溝36の底面である通路溝底面36bと連なる。前記蓋部材80は、前記通路溝36の前記開口36oを塞ぐ。前記通路溝36中で前記蓋部材80よりも前記径方向内側Driの部分は、冷却空気Acが流通可能で前記大径部41の前記翼溝42内に連なる通路39を成す。
【0059】
本態様では、冷却空気Acが、小径部34の通路溝36と蓋部材80とで形成されている通路39、及び、翼根65の根底面65bと翼溝42の翼溝底面42bとの間に形成されている通路43を経て、動翼50の翼冷却空気通路69内に流入する。この冷却空気Acは、翼冷却空気通路69内を流れる過程で、動翼50を冷却した後、動翼50の翼面に形成されている開口から動翼50外に流出する。よって、本態様では、動翼50を冷却空気Acで冷却することができる。
【0060】
本態様では、小径部34の通路溝36の開口36oを、動翼50とは独立した部品である蓋部材80で塞いでいる。このため、本態様では、前述の特許文献1に記載の動翼のように、翼根から軸線下流側Dadに向かって突出している顎部が不要になる。従って、本態様の動翼50は、顎部がなく、翼根65の後端面67がシャンク61の後端面63と連なり、且つ、翼根65の後端面67の径方向内側Driの縁が翼根65の根底面65bの軸線下流側Dadの縁に接続されている。
【0061】
このため、本態様では、動翼50中でロータディスク27fから力を受ける翼根65の軸線方向Daの長さを長くしても、動翼50の軸線方向Daの長さを抑えることができる。
【0062】
(2)第二態様におけるタービンロータは、
前記第一態様におけるタービンロータ23において、前記小径部34は、前記複数の動翼50毎に径方向通路35を有する。前記径方向通路35は、冷却空気Acが流通可能に前記小径部34内を前記径方向Drに延びている。前記通路溝36は、前記径方向通路35の前記径方向外側Droの端から前記大径部41に向かって前記傾斜方向Diに延びている。
【0063】
(3)第三態様におけるタービンロータは、
前記第一態様又は前記第二態様におけるタービンロータ23において、前記複数の動翼50における前記シャンク61の前記後端面63と対向し且つ前記周方向Dcに延びて、前記複数の動翼50毎の前記シャンク61相互間の軸線下流側Dadの部分を塞ぐ板本体73を有する後シール板72を備える。前記後シール板72の前記径方向外側Droの部分は前記プラットフォーム52に接し、前記後シール板72の前記径方向内側Driの部分は前記蓋部材80に接する。
【0064】
本態様では、周方向Dcで隣り合う動翼50のシャンク61相互間に流入した燃焼ガスGが、ここから軸線下流側Dadに流れるのを抑えることができる。
【0065】
(4)第四態様におけるタービンロータは、
前記第三態様におけるタービンロータ23において、前記後シール板72は、前記板本体73と、前記板本体73の前記径方向内側Driの縁の一部から前記径方向内側Driに突出する突出部74と、を有する。前記プラットフォーム52は、前記径方向内側Driから前記径方向外側Droに凹んで、前記周方向Dcに延び、前記板本体73の前記径方向外側Droの部分が入り込む後シール板溝59を有する。前記蓋部材80は、前記径方向外側Droから前記径方向内側Driに凹んで、前記後シール板72の前記突出部74が入り込んで、前記後シール板72の前記周方向Dcの移動を規制するシール板移動規制溝83を有する。
【0066】
タービンロータ23を組み立てる際、本態様では、まず、大径部41の翼溝42に動翼50の翼根65を入れる。次に、後シール板72における板本体73の径方向外側Droの部分を動翼50の後シール板溝59に入れる。次に、この後シール板72を周方向Dcに移動させて、後シール板72の突出部74を通路溝36中に位置させる。その後、通路溝36の開口36oを蓋部材80で塞ぐ。後シール板72の突出部74は、通路溝36の開口36oを塞いだ蓋部材80のシール板移動規制溝83に嵌まり込み、後シール板72の周方向Dcへの移動が抑制される。以上のように、本態様では、簡単な構成で、且つ簡単な組み立て順で、後シール板72の周方向Dcへの移動を抑制することができる。
【0067】
(5)第五態様におけるタービンロータは、
前記第一態様から前記第四態様のうちのいずれか一態様におけるタービンロータ23において、前記蓋部材80における前記軸線下流側Dadを向く後端面82に接して、前記ロータディスク27fに対する前記蓋部材80の前記軸線下流側Dadへの移動を規制する蓋止め部材85を備える。前記ロータディスク27fの前記小径部34は、前記径方向外側Droから前記径方向内側Driに向かって凹み前記蓋止め部材85が入り込む蓋止め溝38を有する。
【0068】
本態様は、蓋部材80の軸線下流側Dadへの移動を抑制することができる。
【0069】
(6)第六態様におけるタービンロータは、
前記第五態様におけるタービンロータ23において、前記蓋止め部材85は、前記蓋部材80の前記後端面82に接触可能な第一止め部材86と、前記第一止め部材86の前記軸線下流側Dadに配置される第二止め部材87と、前記第一止め部材86と前記第二止め部材87との前記軸線方向Daの間隔を変更可能な間隔変更部材88と、を有する。
【0070】
以上の実施形態におけるガスタービンは、例えば、以下のように把握される。
(7)第七態様におけるガスタービンは、
前記第一態様から前記第六態様のうちのいずれか一態様におけるタービンロータ23と、前記タービンロータ23の外周側を覆うタービンケーシング21と、を備える。
【符号の説明】
【0071】
1:ガスタービンケーシング
2:中間ケーシング
3:ガスタービンロータ
10:圧縮機
11:圧縮機ケーシング
12:静翼列
13:圧縮機ロータ
13b:動翼列
13r:ロータ軸
15:燃焼器
20:タービン
21:タービンケーシング
22:静翼列
23:タービンロータ
23b:動翼列
23r:ロータ軸
25:ディスクユニット
25f:最終段ディスクユニット
26:スピンドルボルト
27:ロータディスク
27f:(最終段の)ロータディスク
28:後軸部
29:主冷却空気通路
31:第一小径部
32:第一径方向通路
33:軸方向通路
34:第二小径部(又は、単に小径部)
35:第二径方向通路(又は、単に径方向通路)
36:通路溝
36b:通路溝底面
36o:開口
37:シール板溝
38:蓋止め溝
39:傾斜方向通路
41:大径部
41o:外周面
42:翼溝
42b:翼溝底面
42f:第一大幅部
43:傾斜方向通路
50:動翼
51:翼体
52:プラットフォーム
53:ガスパス面
54:反ガスパス面
55:前端面
56:後端面
57:側面
58:前シール板溝
59:後シール板溝
61:シャンク
62:前端面
63:後端面
64:側面
65:翼根
65b:根底面
65f:第一大幅部
66:前端面
67:後端面
68:側面
69:翼冷却空気通路
70:前シール板
71:前シール板止め部材
72:後シール板
73:板本体
74:突出部
80:蓋部材
80b:蓋底面
81:前端面
82:後端面
83:シール板移動規制溝
85:蓋止め部材
86:第一止め部材
86s:雌ネジ
87:第二止め部材
87s:雌ネジ
88:間隔変更部材
A:空気
Ac:冷却空気
F:燃料
G:燃焼ガス
Ar:軸線
Da:軸線方向
Dau:軸線上流側
Dad:軸線下流側
Dc:周方向
Dr:径方向
Dri:径方向内側
Dro:径方向外側
Di:傾斜方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7