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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111510
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】電動車椅子
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/04 20130101AFI20240809BHJP
   B62B 3/00 20060101ALI20240809BHJP
   B62B 5/06 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
A61G5/04 707
A61G5/04 710
B62B3/00 G
B62B3/00 D
B62B5/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016061
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富樫 信之
(72)【発明者】
【氏名】北本 弘
(72)【発明者】
【氏名】池原 伸明
(72)【発明者】
【氏名】長山 陸
(72)【発明者】
【氏名】饒平名 知真
【テーマコード(参考)】
3D050
【Fターム(参考)】
3D050AA04
3D050BB01
3D050DD01
3D050EE08
3D050EE15
3D050GG04
3D050GG06
3D050KK14
(57)【要約】
【課題】操作性に優れた電動車椅子を提供する。
【解決手段】電動車椅子1は、車両本体2aと、第1駆動輪14cL及び第2駆動輪14cRと、第1駆動輪14cL及び第2駆動輪14cRを駆動する第1モータ15L及び第2モータ15Rと、第1グリップ20L及び第2グリップ20Rと、第1グリップ20L及び第2グリップ20Rの前後方向の位置を検出する第1操作検出部21L及び第2操作検出部21Rと、第1駆動輪14cL及び第2駆動輪14cRの回転速度を検出する第1回転速度検出部17L及び第2回転速度検出部17Rと、制御装置18と、を備え、制御装置18は、第1グリップ20L及び第2グリップ20Rの変位量の差、及び、第1駆動輪14cL及び第2駆動輪14cRの回転速度の差に基づいて、車両本体2aを旋回させるように第1モータ15L及び第2モータ15Rを制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体と、
前記車両本体の左右に配置され前記車両本体を走行させる第1駆動輪及び第2駆動輪と、
前記第1駆動輪及び前記第2駆動輪のそれぞれをそれぞれが駆動する第1モータ及び第2モータと、
前記車両本体の左右に操作者により把持可能に配置されており前記操作者の操作により前記車両本体の前後方向に変位可能な第1グリップ及び第2グリップと、
前記第1グリップ及び前記第2グリップの前後方向のそれぞれの位置をそれぞれが検出する第1操作検出部及び第2操作検出部と、
前記第1駆動輪及び前記第2駆動輪のそれぞれの回転速度をそれぞれが検出する第1回転速度検出部及び第2回転速度検出部と、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記第1グリップ及び前記第2グリップのそれぞれの変位量の差、及び、前記第1駆動輪及び前記第2駆動輪のそれぞれの回転速度の差に基づいて、前記車両本体を旋回させるように前記第1モータ及び前記第2モータを制御する、電動車椅子。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記第1グリップ及び前記第2グリップのそれぞれの変位量の差に基づいて、前記車両本体の旋回速度指令値を生成し、
前記第1駆動輪及び前記第2駆動輪のそれぞれの回転速度の差に基づいて、前記車両本体のヨーレートを演算し、
前記旋回速度指令値から前記ヨーレートを減算した値に基づいて、前記車両本体の旋回トルクを演算し、
前記旋回トルクに基づいて、前記車両本体を旋回させるための前記第1モータ及び前記第2モータのそれぞれの速度指令値を生成し、
前記第1モータ及び前記第2モータのそれぞれの前記速度指令値に基づいて、前記第1モータ及び前記第2モータのそれぞれを制御する、請求項1に記載の電動車椅子。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第1グリップ及び前記第2グリップのそれぞれの変位量の和に基づいて、前記車両本体の推進力を演算し、前記推進力及び前記旋回トルクに基づいて、前記第1モータ及び前記第2モータのそれぞれの前記速度指令値を生成する、請求項2に記載の電動車椅子。
【請求項4】
前記制御装置は、前記第1モータ及び前記第2モータのそれぞれのモータ電流に基づいて前記車両本体が外部から受ける外力を演算し、前記推進力から前記旋回トルク及び前記外力を減算することにより前記速度指令値を生成する、請求項3に記載の電動車椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、操作者の操作に応じた推進力を付与するように構成された電動車椅子が記載されている。当該電動車椅子においては、操作者が把持するグリップが前後方向に移動可能に設けられており、グリップの変位に応じて推進力を付与する。また、左右の操作力の差がある場合には、電動車椅子を旋回させるように、左右のモータが駆動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-336803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、平坦路においては意図的に操作者が旋回操作を行う場合に、車両本体が旋回する。一方、カント路のように左右方向の傾斜がある路面においては、操作者が操作をしていない状態であっても、車両本体が自重によって旋回するように動作し、その結果、車両本体がふらつき易くなる。そこで、カント路のような路面の走行を想定した場合、操作者による操作性を向上させることが求められる。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、操作性に優れた電動車椅子を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
車両本体と、
前記車両本体の左右に配置され前記車両本体を走行させる第1駆動輪及び第2駆動輪と、
前記第1駆動輪及び前記第2駆動輪のそれぞれをそれぞれが駆動する第1モータ及び第2モータと、
前記車両本体の左右に操作者により把持可能に配置されており前記操作者の操作により前記車両本体の前後方向に変位可能な第1グリップ及び第2グリップと、
前記第1グリップ及び前記第2グリップの前後方向のそれぞれの位置をそれぞれが検出する第1操作検出部及び第2操作検出部と、
前記第1駆動輪及び前記第2駆動輪のそれぞれの回転速度をそれぞれが検出する第1回転速度検出部及び第2回転速度検出部と、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記第1グリップ及び前記第2グリップのそれぞれの変位量の差、及び、前記第1駆動輪及び前記第2駆動輪のそれぞれの回転速度の差に基づいて、前記車両本体を旋回させるように前記第1モータ及び前記第2モータを制御する、電動車椅子、
にある。
【発明の効果】
【0007】
上述の態様の電動車椅子によれば、制御装置は、第1グリップの変位量と第2グリップの変位量との差、及び、第1駆動輪の回転速度と第2駆動輪の回転速度との差に基づいて、車両本体を旋回させるように第1モータ及び第2モータを制御する。
【0008】
例えば、平坦路において車両本体の旋回を開始する場合には、旋回前は第1駆動輪の回転速度と第2駆動輪の回転速度との差はゼロであるため、制御装置は、第1グリップの変位量と第2グリップの変位量との差に基づいて、第1モータ及び第2モータを制御することになる。これにより、操作者によるグリップ操作に応じて車両本体が旋回する。この場合、安定した旋回操作が可能となる。
【0009】
また、平坦路において車両本体を旋回させ続ける場合には、第1駆動輪の回転速度と第2駆動輪の回転速度との差が既に生じている。従って、制御装置は、第1駆動輪の回転速度と第2駆動輪の回転速度との差を考慮しながら、第1グリップの変位量と第2グリップの変位量との差に基づいて、第1モータ及び第2モータを制御することになる。これにより、操作者によるグリップ操作に応じて車両本体が旋回し続ける。この場合も、安定した旋回操作が可能となる。
【0010】
また、左右方向の傾斜があるカント路においては、傾斜の影響により車両本体が自重で旋回しようとする。これにより、第1駆動輪の回転速度と第2駆動輪の回転速度との差が生じる状態になる。この場合、制御装置は、カント路の影響による第1駆動輪の回転速度と第2駆動輪の回転速度との差を考慮しながら、第1グリップの変位量と第2グリップの変位量との差に基づいて、第1モータ及び第2モータを制御することになる。従って、路面がカント路であっても、操作者による操作を良好にすることができる。
【0011】
以上のごとく、操作性に優れた電動車椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る電動車椅子の斜視図である。
図2】車両本体の右側に配置される駆動ユニットを車両本体の左右方向中央からみたときの図である。
図3】第1操作部の断面図である。
図4】電動車椅子における、モータの動作制御を行うための構成例を示すブロック図である。
図5】制御装置による駆動機構の制御ロジックを説明するための図である。
図6】操作者が電動車椅子を操作するときの様子を模式的に示す図である。
図7】グリップの非把持判定領域を説明するための図である。
図8】非把持判定処理を示すフローチャートである。
図9】電動車椅子が旋回するときの様子を車両上方から見た図である。
図10】電動車椅子がカント路を走行するときの様子を車両後方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、上述の態様の一実施形態である電動車椅子について、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
(実施形態)
1.電動車椅子1の全体構造
図1に示されるように、実施形態の電動車椅子1は、操作者による操作によって走行する電動車両である。この電動車椅子1の走行は、電動駆動式の駆動輪14cによって補助される。
【0015】
電動車椅子1は、車椅子部2と、駆動機構4と、コントロールボックス6と、第1操作部10と、第2操作部12と、を備える。車椅子部2は、一般的な車椅子であり、主に金属製のパイプ等のフレームで構成された車両本体2aと、一対の主輪2bと、一対のキャスタ2cと、を備える。一対のキャスタ2cは、車両本体2aの左右両側に設けられている。一対の主輪2bも、車両本体2aの左右両側に設けられている。一対の主輪2bは、一対のキャスタ2cの後方に設けられている。よって、一対の主輪2bは後輪である。また、一対のキャスタ2cは前輪である。
【0016】
車両本体2aは、搭乗者が着座する座部2a1と、背もたれ部2a2と、を有する。車両本体2aは、左右一対の支持パイプ2a3を有する。一対の支持パイプ2a3は、背もたれ部2a2を支持する。一対の支持パイプ2a3の上端には、一対の突出部2a4が設けられている。一対の突出部2a4は、背もたれ部2a2から後方に突出している。一対の突出部2a4は、後端に開口を有するパイプである。一対の第1操作部10は、一対の突出部2a4に設けられている。よって、一対の第1操作部10は、背もたれ部2a2の左右上方に配置されている。一対の第1操作部10は、それぞれ、グリップ20を有する。左側のグリップ20は、車両本体2aの左側に操作者により把持可能に配置された第1グリップ20Lである。右側のグリップ20は、車両本体2aの右側に操作者により把持可能に配置された第2グリップ20Rである。
【0017】
第2操作部12は、右側の突出部2a4に設けられている。第2操作部12には、操作者の操作を受け付けるための複数の操作スイッチ12aが設けられている。複数の操作スイッチ12aには、電源をオンオフするための操作スイッチと、駆動機構4の状態を、電動車椅子1の動作のアシストを開始した状態と、当該アシストを終了した状態と、の間で切り替えるための操作スイッチと、が含まれている。
【0018】
以下の説明では、搭乗者が電動車椅子1に乗車したときに当該搭乗者の正面が向く方向(背もたれ部2a2が正面を向く方向)を前方向、その反対方向を後方向とする。よって、搭乗者は、電動車椅子1の前方を向いて乗車する。また、搭乗者から見て左側へ向く方向を左方向、搭乗者から見て右側へ向く方向を右方向とする。
【0019】
駆動機構4は、一対の駆動ユニット14を含む。一対の駆動ユニット14は、車両本体2aの左右に固定されている。一対の駆動ユニット14は、一対の主輪2bの車両内方側に配置されている。左右一対の駆動ユニット14は、それぞれ、ベースプレート14aと、アーム14bと、駆動輪14cと、モータ15と、ティッピングバー13と、を有する。
【0020】
2.駆動ユニット14の構造
図1及び図2に示されるように、ベースプレート14aは、車両本体2aのフレームに固定される。これにより、駆動ユニット14は、車椅子部2に装着される。ティッピングバー13は、ベースプレート14aの後端に設けられている。ティッピングバー13は、電動車椅子1を後方から操作する操作者による段差乗り越え操作のときに操作者の脚によって踏み込まれる部材である。操作者がティッピングバー13を踏み込むことで、主輪2bを支点としてキャスタ2cが上方へ持ち上げられる。
【0021】
アーム14bは、ベースプレート14aの車両内方側に設けられている。アーム14bは、上下方向に揺動可能にベースプレート14aに固定されている。アーム14bは、所定の角度範囲で揺動可能である。アーム14bの先端部には、モータ15と、駆動輪14cとが設けられている。アーム14bは、駆動輪14cを回転自在に支持する。アーム14bは、駆動輪14cを下方向へ向けて弾性的に付勢している。これにより、アーム14bは、駆動輪14cを路面に押圧して接地させる。
【0022】
モータ15は、インホイールモータであり、駆動輪14cの内部に設けられている。モータ15が有するロータ(図示省略)は、駆動輪14cと一体回転可能である。また、モータ15が有するステータ(図示省略)は、アーム14b側に固定される。これにより、モータ15は、駆動輪14cを回転駆動する。モータ15は、ケーブル(図示省略)を介してコントロールボックス6内のバッテリや制御装置等に接続されている。前記ケーブルは、アーム14b内に挿通され、モータ15とコントロールボックス6を繋ぐ。コントロールボックス6は、座部2a1の下方右側のフレーム部分に固定されている。コントロールボックス6には、バッテリや各部を制御する制御装置等が収容されている。左側の駆動輪14cを駆動するモータ15は第1モータ15Lであり、右側の駆動輪14cを駆動するモータ15は第2モータ15Rである。
【0023】
駆動輪14cは、左右方向に平行な回転軸C1(図2を参照)回りに回転自在にアーム14bに支持されている。駆動輪14cは、路面に接地した状態で、モータ15によって回転駆動される。左右一対のモータ15が左右一対の駆動輪14cを駆動することで、車椅子部2(車両本体2a)が走行する。左側の駆動輪14cは、車両本体2aを走行させるために車両本体2aの左側に配置された第1駆動輪14cLである。右側の駆動輪14cは、車両本体2aを走行させるために車両本体2aの右側に配置された第2駆動輪14cRである。
【0024】
図2に示されるように、駆動輪14cは、キャスタ2cと主輪2bとの間に配置されている。より具体的には、前後方向における回転軸C1の位置は、キャスタ2cの回転軸C2と、主輪2bの回転軸C3との間である。よって、路面Fにおける駆動輪14cの接地位置t1は、キャスタ2cの接地位置t2と、主輪2bの接地位置t3との間に位置している。駆動輪14cの接地位置t1は、接地位置t2から接地位置t3までの範囲に位置していればよい。言い換えると、前後方向における回転軸C1の位置は、回転軸C2の位置から回転軸C3の位置までの範囲に位置していればよい。
【0025】
3.第1操作部10の構造
図3中の(a)に示されるように、第1操作部10は、グリップ20の他、操作検出部21を有する。グリップ20は、車両左側の突出部2a4の先端部に装着されている。グリップ20は、筒部20aと、底部20bと、を有する。底部20bは、筒部20aの後方側の開口を塞いでいる。筒部20aは、突出部2a4の外周側に装着される。筒部20aは、突出部2a4の外周面をスライドしつつ移動可能である。よって、グリップ20は、突出部2a4の軸方向に沿って移動可能である。突出部2a4は、前後方向に沿って延びている。よって、グリップ20は、操作者により把持可能であり操作者の操作により車両本体2aに対して前後方向に変位可能である。
【0026】
操作検出部21は、グリップ20の前後方向の変位情報として、グリップ20の前後方向の位置及び変位量を検出する機能を有する。また、操作検出部21は、グリップ20の前後方向の変位情報から、操作者によるグリップ20の把持情報をも検出する機能を有する。このため、操作検出部21は、操作者のグリップ20に対する操作状態または把持状態を検出する状態センサとされる。左側の第1グリップ20Lの変位情報は第1操作検出部21Lによって検出され、右側の第2グリップ20Rの変位情報は第2操作検出部21Rによって検出される(図1を参照)。
【0027】
本形態において、操作検出部21はポテンショメータである。操作検出部21は、突出部2a4の内部に設けられている。操作検出部21は、本体部21aと、ロッド21bと、を備える。本体部21aは、突出部2a4に固定されている。ロッド21bは、本体部21aから後方向に延びている。ロッド21bは、筒部20a及び突出部2a4の内部を通過する。ロッド21bは、本体部21aに対して軸方向に相対移動可能である。操作検出部21は、ロッド21bの軸方向の変位量を検出し出力する。ロッド21bの先端部21b1は、底部20bに固定されている。よって、ロッド21bはグリップ20と一体に前後方向に移動する。これにより、操作検出部21は、車両本体2aに対するグリップ20の前後方向の変位量を検出することができる。操作検出部21は、コントロールボックス6内の後述する制御装置に接続されている。操作検出部21の出力は、制御装置へ与えられる。
【0028】
突出部2a4の内部には、上述の操作検出部21の他、スリーブ22と、前ブッシュ23と、後ブッシュ24と、スプリング25と、が設けられている。スリーブ22は、円筒状の部材であり、突出部2a4の内周面に挿入され、固定されている。前ブッシュ23、後ブッシュ24、及びスプリング25は、スリーブ22の内周側に配置されている。
【0029】
前ブッシュ23は、円筒部23aと、底部23bと、を有する。円筒部23aは、スリーブ22の内周面22aに挿入され、固定されている。底部23bは、円筒部23aの前側の開口に設けられている。底部23bは、中心孔23b1を有する。中心孔23b1には、ロッド21bが挿通される。後ブッシュ24は、円筒部24aと、底部24bと、を有する。円筒部24aは、スリーブ22の内周面22aに挿入され、固定されている。底部24bは、円筒部24aの後側の開口に設けられている。底部24bは、中心孔24b1を有する。中心孔24b1には、ロッド21bが挿通される。
【0030】
スプリング25は、前ブッシュ23と、後ブッシュ24との間に配置されている。よって、ロッド21bは、前ブッシュ23、後ブッシュ24、及びスプリング25を貫通している。ロッド21bには、前リテーナ26aと、前止め輪27aと、後リテーナ26bと、後止め輪27bと、が設けられている。前止め輪27aは、スプリング25の前側に設けられている。前止め輪27aは、ロッド21bに固定されている。前止め輪27aは、ロッド21bに設けられた周溝に嵌め込まれている。よって、前止め輪27aは、ロッド21bと軸方向に一体に移動可能である。後止め輪27bは、スプリング25の後側に設けられている。後止め輪27bも、ロッド21bに固定されている。後止め輪27bは、ロッド21bに設けられた周溝に嵌め込まれている。よって、後止め輪27bは、ロッド21bと軸方向に一体に移動可能である。つまり、前止め輪27aと、後止め輪27bとは、軸方向に一定の間隔を置いてロッド21bに固定されている。
【0031】
前リテーナ26a、後リテーナ26b、及びスプリング25は、前止め輪27aと、後止め輪27bとの間に配置されている。前リテーナ26a及び後リテーナ26bは、ロッド21bに貫通された円環状の部材である。前リテーナ26a及び後リテーナ26bは、スプリング25の前端面及び後端面を保持する。前リテーナ26aは、前ブッシュ23とスプリング25の前端面との間に介在している。後リテーナ26bは、後ブッシュ24とスプリング25の後端面との間に介在している。
【0032】
4.グリップ20の中立位置
図3中の(a)は、グリップ20が中立位置の場合を示している。グリップ20は、操作者に把持されていない状態のときや、操作者による操作力の入力がないときに、中立位置となる。グリップ20が中立位置の場合、スプリング25は、前リテーナ26aを前ブッシュ23へ向けて付勢する。また、スプリング25は、後リテーナ26bを後ブッシュ24へ向けて付勢する。このとき、前リテーナ26aは、前ブッシュ23の円筒部23aに当接する。また、後リテーナ26bは、後ブッシュ24の円筒部24aに当接する。
つまり、グリップ20が中立位置の場合、前リテーナ26aと後リテーナ26bとの間の間隔は、スプリング25の自由長よりも短い。
【0033】
5.グリップ20の前側位置
図3中の(b)は、グリップ20が中立位置よりも前方の前側位置へ移動した場合を示している。グリップ20が中立位置から前方へ移動すると、ロッド21bも前方へ移動する。これにより、操作検出部21の出力は変化する。グリップ20及びロッド21bが中立位置よりも前方へ移動すると、スプリング25は後リテーナ26b及び後止め輪27bによって前方へ押圧される。よって、後リテーナ26bは、後ブッシュ24から離間する。グリップ20がさらに前方に移動すると、図3中の(b)に示されるように、前止め輪27aが前ブッシュ23の底部23bに当接する。これにより、前止め輪27a及び前ブッシュ23は、ロッド21bの前方への移動を制限する。
【0034】
6.グリップ20の後側位置
図3中の(c)は、グリップ20が中立位置よりも後方の後側位置へ移動した場合を示している。グリップ20が中立位置から後方へ移動すると、ロッド21bも後方へ移動する。これにより、操作検出部21の出力は変化する。グリップ20及びロッド21bが中立位置よりも後方へ移動すると、スプリング25は前リテーナ26a及び前止め輪27aによって後方へ押圧される。よって、前リテーナ26aは、前ブッシュ23から離間する。グリップ20がさらに後方へ移動すると、図3中の(c)に示されるように、後止め輪27bが後ブッシュ24の底部24bに当接する。これにより、後止め輪27b及び後ブッシュ24は、ロッド21bの後方への移動を制限する。
【0035】
上記構成により、グリップ20は、スプリング25によって、中立位置を中心に弾性的に前後方向に弾性的に移動可能である。また、グリップ20及びロッド21bの前後方向の移動範囲は、前ブッシュ23、後ブッシュ24、前止め輪27a、及び、後止め輪27bによって制限される。
【0036】
7.電動車椅子1の構成
図4に示されるように、電動車椅子1は、左右の駆動速度センサ17と、慣性センサ8と、バッテリ16と、制御装置18と、をさらに備える。慣性センサ8、バッテリ16、及び制御装置18は、ともにコントロールボックス6(図1を参照)に収容される。
【0037】
駆動速度センサ17は、駆動輪14cの駆動速度を検出するためのものである。駆動速度センサ17は、駆動輪14cに取り付けられている。駆動速度センサ17は、制御装置18に電気的に接続されている。このため、駆動速度センサ17の出力は、制御装置18へ与えられる。駆動輪14cの駆動速度から、電動車椅子1の車両本体2aの走行速度を演算することができる。このため、駆動速度センサ17を、電動車椅子1の車両本体2aの走行速度を検出する走行速度検出部ということができる。左側の駆動輪14cに取り付けられた駆動速度センサ17が第1回転速度検出部17Lであり、右側の駆動輪14cに取り付けられた駆動速度センサ17が第2回転速度検出部17Rである(図1を参照)。
【0038】
慣性センサ8は、車両本体2aに作用する慣性に関する情報を検出するためのものである。本形態において、慣性センサ8は、例えば、IMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測ユニット)であり、少なくとも、3軸加速度センサを含む。慣性センサ8は、制御装置18に電気的に接続されている。このため、慣性センサ8の出力は、制御装置18へ与えられる。制御装置18は、慣性センサ8の出力に基づいて車両本体2aの前後方向の傾斜角度を求める。つまり、慣性センサ8は、車両本体2aの前後方向の傾斜角度を検出するためのセンサとして機能する。
【0039】
バッテリ16は、一対のモータ15や、動作電力を必要とする各部に電力を供給する。制御装置18は、指令値を駆動機構4へ与えることで駆動機構4(一対のモータ15)を制御し、車両本体2aの速度を制御する機能を有する。
【0040】
一対のモータ15を含む駆動機構4は、一対の駆動回路34を有する。また、一対のモータ15は、それぞれ、モータ本体15aと、回転検出器15bとを備える。モータ本体15aは、ロータやステータ等モータとしての主要構成を含む。回転検出器15bは、例えば、モータ本体15aに設けられたホールセンサである。回転検出器15bは、モータ本体15aのロータの回転角度を検出する。回転検出器15bは、駆動回路34及び制御装置18に接続されている。このため、回転検出器15bの出力は、駆動回路34及び制御装置18へ与えられる。このとき、モータ本体15aのロータの回転角度からモータ15の回転速度が導出される。このため、回転検出器15bは、モータ15の回転速度に関するモータ情報を検出するモータ情報検出部としての機能を有する。また、回転検出器15bが検出するモータ情報は、駆動輪14cの回転に関する情報でもある。このため、回転検出器15bを、駆動輪14cの回転に関する情報を検出する回転情報検出部ということもできる。
【0041】
一対の駆動回路34は、例えば、インバータである。一対の駆動回路34は、コントロールボックス6内に収容されていてもよいし、ベースプレート14aや、アーム14bに設けられていてもよい。一対の駆動回路34は、制御装置18、バッテリ16、及び一対のモータ15に接続されている。一対の駆動回路34は、バッテリ16の電力を一対のモータ15へ与える。一対の駆動回路34は、制御装置18から与えられる速度指令値及び回転検出器15bの出力に基づいて、一対のモータ15へ駆動電力を与え、速度指令値が示す回転速度となるようにモータ15を制御する機能を有する。
【0042】
一対の駆動回路34、及び、一対のモータ15(モータ本体15a)は、一対の電力線34aによって接続されている。一対の電力線34aには、一対の電流検出部36が設けられている。一対の電流検出部36は、一対の電力線34aを流れる電流を検出する電流センサである。つまり、一対の電流検出部36は、一対のモータ15に流れるモータ電流を検出する。一対の電流検出部36は、制御装置18に接続されている。このため、一対の電流検出部36の出力は、制御装置18へ与えられる。
【0043】
一対の第1操作部10及び第2操作部12も制御装置18に接続されている。上述のように、第1操作部10の出力(すなわち、操作検出部21の出力)、及び第2操作部12の出力は、制御装置18へ与えられる。本形態では、一対の操作検出部21の出力は、制御装置18に対する、一対のグリップ20の操作入力と定義される。
【0044】
制御装置18は、プロセッサ等からなる処理部38と、メモリやハードディスク等からなる記憶部40と、を備えるコンピュータ等により構成される。記憶部40には、処理部38に実行させるためのコンピュータプログラムや、必要な情報が記憶されている。処理部38は、記憶部40のようなコンピュータ読み取り可能な非一過性の記録媒体に記憶されたコンピュータプログラムを実行することで、制御装置18が有する各種処理機能を実現する。
【0045】
8.制御装置18の構成
制御装置18は、図5に示される制御ロジックにしたがって駆動機構4の制御を実行する。
【0046】
一対のグリップ20の操作入力(変位量)に基づいて、インピーダンス制御及び旋回速度指令値生成が実行される。インピーダンス制御では、後述のバネ・ダンパモデルを使用する。インピーダンス制御によれば、一対のグリップ20の操作入力の和(変位量の和)に基づいて基本推進力が演算される。これに対して、一対のグリップ20の操作入力の差(変位量の差)に基づいて、旋回速度指令値が生成される。基本推進力から、外力とブレーキ力を減算することによって総合推進力が演算される。外力は、車両本体2aが外部から受ける力であり、電流検出部36(図4を参照)で検出されるモータ電流に基づいて演算される。ブレーキ力は、走行速度を用いて演算される。走行速度は、駆動速度センサ17(図4を参照)で検出される駆動速度(回転速度)から演算される。
【0047】
上記総合推進力と、旋回速トルクと、に基づいて、モータ15に対する速度指令値が生成される。車両本体2aを旋回させるための一対のモータ15のそれぞれの速度指令値を旋回速トルクに基づいて生成する。旋回トルクは、旋回速度指令値からヨーレートを減算した値に基づいて演算される。ヨーレートは、旋回速度であり、駆動輪14cの駆動速度と、一対の駆動輪14cの車輪間隔と、に基づいて演算される。すなわち、一対の駆動輪14cの駆動速度の差を車輪間隔で除することによってヨーレートが導出される。なお、旋回トルクの演算処理では、現在の出力値と目標値との偏差に比例した調節を行う比例制御(P制御)を使用するのが好ましい。これにより、旋回トルクの演算処理を簡素化できる。また、本形態では、総合推進力を演算するときに使用する外力を、旋回トルクを演算するときには使用しない。外力を旋回トルクの演算に使用しないようにすれば、旋回制御が外部の影響を受けにくくなる。
【0048】
そして、生成した速度指令値と、駆動輪14cの駆動速度と、に基づいて、モータ15の速度制御を実行する。すなわち、速度指令値は一対の駆動輪14cのそれぞれについて生成され、生成した2つの速度指令値のそれぞれが一対のモータ15のそれぞれに適用される。この速度制御では、応答性の向上を図るために、例えば、既知のPID制御を利用することができる。PID制御は、上記P制御に、積分動作のフィードバック制御(I制御)と、微分動作のフィードバック制御(D制御)と、を加えたものである。
【0049】
図6に示されるように、操作者Aは、電動車椅子1を路面Fに沿って移動させたい場合、電動車椅子1の操作者Aは、一対の第1操作部10それぞれのグリップ20を左右の手で把持して操作する。このとき、一対のグリップ20が車両本体2aに対して前後方向に相対移動する。一対の第1操作部10は、一対のグリップ20の移動に応じた出力を制御装置18へ与える。制御装置18は、一対の第1操作部10から与えられる出力に基づいて、モータ15に対する速度指令値を生成し、一対の駆動回路34へ与える。このようにして、制御装置18はモータ15を制御する。
【0050】
操作者Aがグリップ20を把持して前方へ押すように操作することで、電動車椅子1の前進動作を駆動輪14cがアシストするようにモータ15が制御される。また、操作者Aがグリップ20を把持して後方へ引くように操作することで、電動車椅子1の後退動作を駆動輪14cがアシストするようにモータ15が制御される。これに対して、操作者Aがグリップ20を把持しない非把持状態である場合、又は操作者Aがグリップ20を中立位置から前後方向に操作しない場合には、駆動輪14cを駆動しないようにモータ15が制御される。このように、制御装置18は、操作者Aがグリップ20に対して操作状態と非操作状態のいずれの状態であるか、又は、操作者Aがグリップ20に対して把持状態と非把持状態のいずれの状態であるかを判定し、操作状態と非操作状態に応じて、又は、把持状態と非把持状態に応じて、モータ15を制御する。
【0051】
一対の第1操作部10からの出力は、車両本体2aに対する一対のグリップ20の前後方向の変位量を示す。制御装置18は、一対の第1操作部10の出力に基づいて、一対のグリップ20それぞれの前後方向の変位量を求める。なお、この変位量とは、グリップ20の可動範囲内に予め設定された基準位置(例えば、中立位置)と、グリップ20の現在位置との間の距離である。前記基準位置と現在位置とが前後方向で一致する場合、変位量は0(ゼロ)となる。制御装置18は、グリップ20の変位量を経過時間に沿って離散的に取得し記憶部40に記憶する。
【0052】
操作者Aが第1操作部10及び第2操作部12を把持して操作する場合において、制御装置18は、変位量に対する車両本体2aの動きが、機械的なインピーダンス特性を模擬するような動きとなるように、駆動機構4を制御する。すなわち、制御装置18は、図6に示されるように、グリップ20と車両本体2aとが、仮想的なバネ42、及び仮想的なダンパ44で接続されているような動きを再現しつつ、グリップ20と、車両本体2aとの間の距離Hが一定となるように、駆動機構4を制御する。本形態では、インピーダンス制御(図5を参照)に、仮想的なバネ42及びダンパ44によるバネ・ダンパモデルを使用している。
【0053】
グリップ20と、車両本体2aとの間の距離Hが一定となるような駆動機構4の制御には、変位量を0(ゼロ)、又は所定の設定値に維持するような制御が含まれる。これにより、制御装置18は、グリップ20の変位量に応じて車両本体2aを進行させるように駆動機構4を制御する。例えば、操作者Aが前進しグリップ20が前方へ押圧されると、制御装置18は、車両本体2aを前進させるように駆動機構4を制御する。逆に、操作者Aが後退しグリップ20が後方へ引かれると、制御装置18は、車両本体2aを後退させるように駆動機構4を制御する。また、グリップ20の位置が基準位置(中立位置)の場合、制御装置18は、車両本体2aを停止させるように駆動機構4を制御する。
【0054】
9.非把持判定処理
制御装置18の処理部38は、グリップ20の非把持判定処理を行う。なお、グリップ20が把持状態または非把持状態であることは、グリップ20が操作状態または非操作状態であることと実質的に同じである。すなわち、操作者はグリップ20を把持した状態でグリップ20を操作する一方で、操作者はグリップ20の操作を解除するときにグリップ20の把持を解除する。このため、本明細書では、「非把持判定」及び「把持判定」のそれぞれを「非操作判定」及び「操作判定」ともいい、「非把持状態」及び「把持状態」のそれぞれを「非操作状態」及び「操作状態」ともいう。
【0055】
本形態では、図8に示されるように、グリップ20に対して非把持判定領域を設定している。非把持判定領域には、グリップ20の初期位置である中立位置(図3中の(a)を参照)が含まれる。この非把持判定領域は、非操作判定領域である。
【0056】
図8に示されるように、非把持判定処理には、ステップS1a及びステップS1bが含まれる。
【0057】
ステップS1aは、グリップ20が非把持判定領域内にあるか否かを判定するステップである。グリップ20が非把持判定領域内にある場合(ステップS1aの「Yes」の場合)には、ステップステップS1bにすすむ。一方で、グリップ20が非把持判定領域内ない場合(ステップS1aの「No」の場合)には、グリップ20が把持状態であるという「把持判定」を行う。この把持判定は、グリップ20が操作状態であるという「操作判定」でもある。
【0058】
ステップS1bは、グリップ20の変位速度が閾値以下であるか否かを判定するステップである。グリップ20の変位速度が閾値以下である場合(ステップS1bの「Yes」の場合)には、グリップ20が非把持状態であるという「非把持判定」を行う。この非把持判定は、グリップ20が非操作状態であるという「非操作判定」でもある。一方で、グリップ20の変位速度が閾値を上回る場合(ステップS1bの「No」の場合)には、グリップ20が把持状態であるという「把持判定」を行う。ステップS1bで使用する閾値は、記憶部40に予め格納されている。
【0059】
10.作用効果
次に、上述の実施形態の作用効果について説明する。
【0060】
上述の態様の電動車椅子1によれば、制御装置18は、第1グリップ20Lの変位量と第2グリップ20Rの変位量との差、及び、第1駆動輪14cLの回転速度と第2駆動輪14cRの回転速度との差に基づいて、車両本体2aを旋回させるように第1モータ15L及び第2モータ15Rを制御する。
【0061】
図9に示されるように、平坦路において電動車椅子1(車両本体2a)を、例えば右旋回させる場合には、操作者Aは、第1グリップ20Lを前方へ押し、且つ、第2グリップ20Rを後方へ引くように操作する。旋回前は第1駆動輪14cLの回転速度と第2駆動輪14cRの回転速度との差はゼロであるため、制御装置18は、第1グリップ20Lの変位量と第2グリップ20Rの変位量との差に基づいて、第1モータ15L及び第2モータ15Rを制御することになる。これにより、操作者Aによるグリップ操作に応じて電動車椅子1が右旋回する。この場合、安定した旋回操作が可能となる。
【0062】
また、平坦路において電動車椅子1(車両本体2a)を旋回させ続ける場合には、第1駆動輪14cLの回転速度と第2駆動輪14cRの回転速度との差が既に生じている。従って、制御装置18は、第1駆動輪14cLの回転速度と第2駆動輪14cRの回転速度との差を考慮しながら、第1グリップ10Lの変位量と第2グリップ20Rの変位量との差に基づいて、第1モータ15L及び第2モータ15Rを制御することになる。これにより、操作者Aによるグリップ操作に応じて電動車椅子1が右旋回し続ける。この場合も、安定した旋回操作が可能となる。
【0063】
図10に示されるように、例えば、右側が高所で左側が低所となる傾斜があるカント路においては、傾斜の影響により車両本体2aが自重で左旋回しようとする。これにより、第1駆動輪14cLの回転速度と第2駆動輪14cRの回転速度との差が生じる状態になる。図10の場合、第1駆動輪14cLの回転速度が第2駆動輪14cRの回転速度を下回る状態になり得る。この場合、制御装置18は、カント路の影響による第1駆動輪14cLの回転速度と第2駆動輪14cRの回転速度との差を考慮しながら、第1グリップ20Lの変位量と第2グリップ20Rの変位量との差に基づいて、第1モータ15L及び第2モータ15Rを制御することになる。従って、路面がカント路であっても、操作者Aによる操作を良好にすることができる。
【0064】
なお、本形態では、前述のように、旋回制御が外部の影響を受けるのを抑制するために、外力を旋回トルクの演算に使用しないようにしている。これにより、カント路のような傾斜面を走行するときでも、傾斜角の影響を抑えた制御が可能になる。これにより、カント路の場合に操作者Aによる操作性が低下するのを抑制できる。
【0065】
したがって、上述の実施形態によれば、操作性に優れた電動車椅子1を提供することができる。
【0066】
本開示は、上述の実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0067】
上述の実施形態では、操作検出部21を利用して非把持判定を行う場合について例示したが、操作検出部21とは別手段を使用しても良い。別手段として、例えば、グリップ20に設けられた圧力センサなどが挙げられる。例えば、圧力センサが検知する圧力が閾値を下回るときに非把持状態であり、当該圧力が閾値以上であるときに把持状態であると判定することができる。
【0068】
上述の実施形態では、総合推進力を演算するときに使用する外力を旋回トルクの演算に使用しない場合について例示したが、必要に応じて、外力を旋回トルクの演算に使用するようにしても良い。
【符号の説明】
【0069】
1…電動車椅子、 2a…車両本体、 駆動輪…14c、 第1駆動輪…14cL、 第2駆動輪…14cR、 モータ15、 第1モータ15L、 第2モータ15R、 17…駆動速度センサ、 17L…駆動速度センサ(第1回転速度検出部)、 17R…駆動速度センサ(第2回転速度検出部)、18…制御装置、 20…グリップ、 20L…第1グリップ、 20R…第2グリップ、 21…操作検出部、 21L…第1操作検出部、 21R…第2操作検出部、 A…操作者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10