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特開2024-111514作業機械、作業機械のシステムおよび作業機械の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111514
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】作業機械、作業機械のシステムおよび作業機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20240809BHJP
   E02F 9/24 20060101ALI20240809BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
E02F9/22 H
E02F9/24 C
B60T7/12 B
B60T7/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016066
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内海 将広
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
3D246
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB01
2D003AC01
2D003BA07
2D003CA02
2D003CA10
2D003DA02
2D003DA04
2D003DB02
2D003FA02
2D015GA02
2D015GB02
3D246AA15
3D246BA02
3D246DA01
3D246GA21
3D246GB30
3D246GC16
3D246HA38A
3D246HA42A
3D246HB12A
3D246HC05
3D246JA12
3D246JB02
3D246JB11
3D246JB35
3D246JB39
3D246JB43
3D246LA12Z
3D246LA33Z
3D246LA52Z
(57)【要約】
【課題】ディスク構造のブレーキの制動特性の変化に対応可能な作業機械、作業機械のシステムおよび作業機械の制御方法を提供する。
【解決手段】走行体2は、エンジン31の動力で走行する。作業機3は、エンジン31の動力で駆動する。ブレーキ回路42a、42bは、複数のディスク89を油圧で駆動し、走行体2を制動する。EPC弁46a、46bは、ディスク89を駆動するための油圧を制御する。油圧センサ75a、75bは、ディスク89を駆動するための油圧を検出する。コントローラ26は、油圧センサ75a、75bにより検出された油圧に基づいてEPC弁46a、46bに与える制動指令のパラメータを調整する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と、
前記駆動源の動力で走行する走行体と、
前記駆動源の動力で駆動する作業機と、
複数のディスクを有し、複数の前記ディスクを油圧で駆動することにより前記走行体を制動する制動装置と、
前記制動装置の前記ディスクを駆動するための油圧を制御する制動制御弁と、
前記制動装置の前記ディスクを駆動するための前記油圧を検出する油圧センサと、
前記油圧センサにより検出された前記油圧に基づいて前記制動制御弁に与える制動指令のパラメータを調整するコントローラと、を備えた、作業機械。
【請求項2】
前記コントローラは、記憶された前記制動指令の前記パラメータを、前記油圧センサにより検出された前記油圧に基づいて較正する、請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
記憶された前記制動指令は、前記制動指令の開始直後のトリガ時間内には第1電流を前記制動制御弁に与え、前記トリガ時間の経過後には前記第1電流の電流値より低い電流値の第2電流を前記制動制御弁に与えるよう設定されており、
前記制動指令の前記パラメータは、前記トリガ時間と、前記制動指令の開始のタイミングと、前記ディスクを駆動するために供給される作動油の油量とからなる群より選ばれる1つ以上のパラメータを含む、請求項2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記コントローラは、前記作業機械が停止した状態で前記パラメータを較正する、請求項2または請求項3に記載の作業機械。
【請求項5】
前記コントローラは、前記油圧センサにより検出された前記油圧に基づいて前記制動制御弁に与える電流を第1電流から前記第1電流の電流値よりも低い電流値の第2電流に切り替えて前記制動制御弁に与える、請求項1に記載の作業機械。
【請求項6】
前記コントローラは、前記制動装置の記憶された基準制動状態と前記油圧センサにより検出された前記油圧に基づく前記制動装置の実際の実制動状態とを比較した結果に基づいて前記制動指令の前記パラメータの調整が必要か否かを判定する、請求項1に記載の作業機械。
【請求項7】
前記コントローラは、前記基準制動状態における基準ブレーキ応答時間と前記実制動状態における実ブレーキ応答時間との差分が所定値よりも大きくなった時点で前記パラメータを調整する、請求項6に記載の作業機械。
【請求項8】
駆動源と、
前記駆動源の動力で走行する走行体と、
前記駆動源の動力で駆動する作業機と、
複数のディスクを有し、複数の前記ディスクを油圧で駆動することにより前記走行体を制動する制動装置と、
前記制動装置の前記ディスクを駆動するための油圧を制御する制動制御弁と、
前記制動装置の前記ディスクを駆動するための前記油圧を検出する油圧センサと、
前記油圧センサにより検出された前記油圧に基づいて前記制動制御弁に与える制動指令のパラメータを調整するコントローラと、を備えた、作業機械のシステム。
【請求項9】
駆動源と、前記駆動源の動力で走行する走行体と、前記駆動源の動力で駆動する作業機と、複数のディスクを油圧で駆動することにより前記走行体を制動する制動装置と、前記制動装置の前記ディスクを駆動するための油圧を制御する制動制御弁と、前記制動装置の前記ディスクを駆動するための前記油圧を検出する油圧センサと、を有する作業機械の制御方法であって、
前記油圧センサにより検出された前記油圧を取得するステップと、
取得された前記油圧に基づいて前記制動制御弁に与える制動指令のパラメータを調整するステップと、を備えた、作業機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械、作業機械のシステムおよび作業機械の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホイールローダなどの作業機械において物体を検出して自動で停止する自動停止システムがたとえば特開2022-150638号公報(特許文献1)に開示されている。特許文献1では、車両本体が停止できる横方向における安定範囲と重心位置との関係に基づいて、物体を検出した際の自動ブレーキに用いる制御減速度が設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-150638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホイールローダなどの作業機械に広く用いられているディスク構造のブレーキにおいては、経時的劣化でディスクなどが摩耗することによりブレーキによる制動が効き始めるまでの時間が変化する。
【0005】
本開示の目的は、ディスク構造のブレーキの制動特性の変化に対応可能な作業機械、作業機械のシステムおよび作業機械の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の作業機械および作業機械のシステムの各々は、駆動源と、走行体と、作業機と、制動装置と、制動制御弁と、油圧センサと、コントローラと、を備える。走行体は、駆動源の動力で走行する。作業機は、駆動源の動力で駆動する。制動装置は、複数のディスクを有し、複数のディスクを油圧で駆動することにより走行体を制動する。制動制御弁は、制動装置のディスクを駆動するための油圧を制御する。油圧センサは、制動装置のディスクを駆動するための油圧を検出する。コントローラは、油圧センサにより検出された油圧に基づいて制動制御弁に与える制動指令のパラメータを調整する。
【0007】
本開示の一の作業機械の制御方法は、駆動源と、駆動源の動力で走行する走行体と、駆動源の動力で駆動する作業機と、複数のディスクを油圧で駆動することにより走行体を制動する制動装置と、制動装置のディスクを駆動するための油圧を制御する制動制御弁と、制動装置のディスクを駆動するための油圧を検出する油圧センサと、を有する作業機械の制御方法であって、以下のステップを有する。
【0008】
油圧センサにより検出された上記油圧が取得される。取得された油圧に基づいて制動制御弁に与える制動指令のパラメータが調整される。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、ディスク構造のブレーキの制動特性の変化に対応可能な作業機械、作業機械のシステムおよび作業機械の制御方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態におけるホイールローダ100(作業機械の一例)の構成を示す側面図である。
図2図1のホイールローダの制動システムを示すブロック図である。
図3図2の制動ユニットの構成を示す油圧回路図である。
図4図2のブレーキ回路(制動装置)の構造を説明する図である。
図5図2のブレーキ回路(制動装置)の作動について説明する図である。
図6図2のコントローラの構成を示すブロック図である。
図7】指令電流(A)とブレーキシリンダ圧(B)の経時変化を示す図である。
図8】ブレーキシリンダ圧の初期の特性と劣化後の特性とを示す図である。
図9】本開示の一実施形態におけるホイールローダ100の自動制動制御を示すフロー図である。
図10】本開示の一実施形態におけるホイールローダ100の較正モードを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0012】
明細書および図面において、同一の構成要素または対応する構成要素には、同一の符号を付し、重複する説明を繰り返さない。また、図面では、説明の便宜上、構成を省略または簡略化している場合もある。また、実施の形態と変形例との少なくとも一部は、互いに任意に組み合わされてもよい。
【0013】
<ホイールローダの構成>
【0014】
本実施形態におけるホイールローダ100の構成について図1を用いて説明する。
【0015】
図1は、本開示の一実施形態におけるホイールローダ100(作業機械の一例)の構成を示す側面図である。図1に示されるように、本実施形態におけるホイールローダ100は、車両本体1と、物体センサ25とを有している。車両本体1は、走行体2と、作業機3とを有している。作業機3は、走行体2に配置されている。走行体2は、車体フレーム10と、一対のフロントタイヤ4と、キャブ5と、エンジンルーム6と、一対のリアタイヤ7と、ステアリングシリンダ9とを有している。ホイールローダ100は、作業機3を用いて土砂積み込み作業などを行なう。
【0016】
なお、以下の説明において、「前」、「後」、「右」、「左」、「上」、および「下」とはキャブ5内の運転席5sに着座したオペレータから前方を見た状態を基準とする方向を示す。図1では、前後方向をZで示し、前方向を示すときはZf、後方向を示すときはZbで示す。
【0017】
車体フレーム10は、いわゆるアーティキュレート(揺動)式であり、フロントフレーム11と、リアフレーム12と、連結軸部13とを有している。フロントフレーム11は、リアフレーム12の前方向Zfに配置されている。連結軸部13は、車体フレーム10における左右方向(車幅方向)の中央に設けられており、フロントフレーム11と、リアフレーム12とを互いに揺動可能に連結している。一対のフロントタイヤ4は、フロントフレーム11の左右に取り付けられている。また、一対のリアタイヤ7は、リアフレーム12の左右に取り付けられている。
【0018】
作業機3は、図示しない作業機ポンプからの作動油によって駆動される。作業機3は、ブーム14と、バケット15と、リフトシリンダ16と、バケットシリンダ17と、ベルクランク18とを有している。ブーム14は、フロントフレーム11に装着されている。バケット15は、ブーム14の先端に取り付けられている。
【0019】
リフトシリンダ16およびバケットシリンダ17は、油圧シリンダである。リフトシリンダ16の一端はフロントフレーム11に取り付けられており、リフトシリンダ16の他端はブーム14に取り付けられている。リフトシリンダ16の伸縮により、ブーム14が上下に揺動する。バケットシリンダ17の一端はフロントフレーム11に取り付けられており、バケットシリンダ17の他端はベルクランク18を介してバケット15に取り付けられている。バケットシリンダ17が伸縮することによって、バケット15が上下に揺動する。
【0020】
キャブ5は、リアフレーム12上に載置されている。キャブ5の内部には、オペレータが着座するための運転席5s、ステアリング操作のためのハンドル、作業機3を操作するためのレバー、各種のスイッチ、表示装置などが配置されている。エンジンルーム6は、キャブ5の後方向Zbであってリアフレーム12上に配置されており、エンジン31(駆動源:図2)を収納している。
【0021】
<ホイールローダ100の制動システム>
【0022】
次に、本実施形態におけるホイールローダ100の制動システムについて図2図6を用いて説明する。
【0023】
図2は、図1のホイールローダの制動システムを示すブロック図である。図3は、図2の制動ユニットの構成を示す油圧回路図である。図4は、図2のブレーキ回路の構造を説明する図である。図5は、図2のブレーキ回路の作動について説明する図である。図6は、図2のコントローラの構成を示すブロック図である。
【0024】
図2に示されるように、ホイールローダ100の制動システムは、駆動装置21と、制動ユニット22と、操作装置23と、動作部24と、物体センサ25と、コントローラ26とを有している。
【0025】
駆動装置21は、ホイールローダ100の駆動を行なう。制動ユニット22は、ホイールローダ100の制動を行なう。操作装置23は、オペレータによって操作される。動作部24は、作業機3およびステアリングの各々の動作を行なう。物体センサ25は、車両本体1の周囲の物体(障害物)、状況(崖などの地形を含む)などの制動が必要となる要因(制動要因)を検出する。コントローラ26は、操作装置23に対するオペレータの操作、物体センサ25および油圧センサ75a、75bによる検出に基づいて、駆動装置21、制動ユニット22および動作部24の操作を行なう。
【0026】
(駆動装置21)
【0027】
図2に示されるように、駆動装置21は、エンジン31と、HST32と、トランスファ33と、アクスル34と、フロントタイヤ4と、リアタイヤ7とを有している。
【0028】
エンジン31は、たとえばディーゼル式のエンジンであり、エンジン31で発生した駆動力がHST(Hydro Static Transmission)32のポンプ32aを駆動する。
【0029】
HST32は、ポンプ32aと、モータ32bと、油圧回路32cとを有している。ポンプ32aは、たとえば斜板式可変容量型のポンプであって斜板の角度をソレノイド32dによって変更することができる。ポンプ32aがエンジン31によって駆動されることにより作動油を吐出する。吐出された作動油は、油圧回路32cを通ってモータ32bに送られる。モータ32bは、たとえば斜板式ポンプであって、斜板の角度をソレノイド32eによって変更することができる。
【0030】
油圧回路32cは、ポンプ32aとモータ32bとを接続している。油圧回路32cは、第1駆動回路32c1と、第2駆動回路32c2とを有している。作動油が、ポンプ32aから第1駆動回路32c1を通じてモータ32bに供給されることにより、モータ32bが一方向(たとえば、前進方向)に駆動される。作動油が、ポンプ32aから第2駆動回路32c2を通じてモータ32bに供給されることにより、モータ32bが他方向(たとえば、後進方向)に駆動される。なお、作動油の第1駆動回路32c1または第2駆動回路32c2への吐出方向はソレノイド32dによって変更することができる。
【0031】
トランスファ33は、エンジン31からの出力を前後のアクスル34に分配する。
【0032】
前側のアクスル34には一対のフロントタイヤ4が接続されており、分配されたエンジン31からの出力で回転する。また、後側のアクスル34には一対のリアタイヤ7が接続されており、分配されたエンジン31からの出力で回転する。
【0033】
(制動ユニット22)
【0034】
制動ユニット22は、制動部40と、シャットオフ弁45a、45bとを有している。制動部40は、ブレーキペダル54の操作に基づくホイールローダ100の制動の実施と、コントローラ26からの指令に基づくホイールローダ100の自動制動制御の実施とを行なう。シャットオフ弁45a、45bは、制動部40を、自動制動制御による制動力を発揮可能または発揮不可能な状態にする。
【0035】
制動部40は、ブレーキ弁ユニット41と、ブレーキ回路42a、42b(サービスブレーキの一例)と、パーキングブレーキ43と、作動油供給路44a、44bと、EPC(Electric Proportional Valve)弁46a、46b(制動制御弁)と、シャトル弁ユニット47と、タンク48と、油圧センサ75a、75bとを有している。ブレーキ回路42a、42bは、制動装置に対応する。
【0036】
作動油供給路44a、44bには、アキュームレータ、ポンプなどが接続されており、作動油が供給される。
【0037】
図3に示されるように、ブレーキ弁ユニット41は、後述するブレーキペダル54によって操作される。ブレーキ弁ユニット41は、リア用ブレーキ弁41aと、フロント用ブレーキ弁41bとを有している。リア用ブレーキ弁41aおよびフロント用ブレーキ弁41bの各々は、3つのポートを有する3位置切替弁である。
【0038】
リア用ブレーキ弁41aの第1ポートは、アキュームレータ49aを介して作動油供給路44aに接続されている。また、リア用ブレーキ弁41aの第2ポートは、タンク48に接続されている。リア用ブレーキ弁41aの第3ポートは、シャトル弁ユニット47のリア用シャトル弁47aに接続されている。
【0039】
リア用ブレーキ弁41aは、第1状態において第1ポートと第3ポートを繋ぎ、作動油供給路44aとリア用シャトル弁47aとを接続し、リア用シャトル弁47aに作動油を供給する。リア用ブレーキ弁41aは、第2状態において、全てのポートを閉じる。リア用ブレーキ弁41aは、第3状態において第2ポートと第3ポートとを接続し、リア用シャトル弁47aとリア用ブレーキ弁41aとの間の作動油をタンク48に排出する。リア用ブレーキ弁41aは、第2状態および第3状態において、リア用シャトル弁47aへの作動油の供給を停止する。
【0040】
フロント用ブレーキ弁41bの第1ポートは、アキュームレータ49bを介して作動油供給路44bに接続されている。また、フロント用ブレーキ弁41bの第2ポートは、タンク48に接続されている。フロント用ブレーキ弁41bの第3ポートは、シャトル弁ユニット47のフロント用シャトル弁47bに接続されている。
【0041】
フロント用ブレーキ弁41bは、第1状態において第1ポートと第3ポートとを繋ぎ、作動油供給路44bとフロント用シャトル弁47bとを接続し、フロント用シャトル弁47bに作動油を供給する。フロント用ブレーキ弁41bは、第2状態において、全てのポートを閉じる。フロント用ブレーキ弁41bは、第3状態において第2ポートと第3ポートとを接続し、フロント用シャトル弁47bとフロント用ブレーキ弁41bとの間の作動油をタンク48に排出する。フロント用ブレーキ弁41bは、第2状態および第3状態において、フロント用シャトル弁47bへの作動油の供給を停止する。
【0042】
ブレーキペダル54の操作量に応じてリア用ブレーキ弁41aおよびフロント用ブレーキ弁41bの開度が調整され、シャトル弁ユニット47に供給される作動油の量が変更される。たとえばブレーキペダル54の操作量が大きい場合には、リア用ブレーキ弁41aおよびフロント用ブレーキ弁41bからシャトル弁ユニット47に供給される作動油の量が多くなる。
【0043】
ブレーキ回路42aは、リアのアクスル34(図2)に設けられている。ブレーキ回路42aは、リア用シャトル弁47aに接続されている。ブレーキ回路42bは、フロントのアクスル34(図2)に設けられている。ブレーキ回路42bは、フロント用シャトル弁47bに接続されている。
【0044】
ブレーキ回路42a、42bは、油圧式のブレーキである。ブレーキ回路42aは、リア用シャトル弁47aから供給される作動油の量が多いまたは圧が大きいほど制動力が強くなる。ブレーキ回路42bは、フロント用シャトル弁47bから供給される作動油の量が多いまたは圧が大きいほど制動力が強くなる。
【0045】
シャットオフ弁45aは、作動油供給路44aに接続されている。シャットオフ弁45aは、4つのポートを有しており、開状態および閉状態の2状態をとるソレノイド弁である。シャットオフ弁45aの第1ポートは、作動油供給路44aに接続されている。シャットオフ弁45aの第2ポートはタンク48に接続されている。シャットオフ弁45aの第3ポートは、EPC弁46aに接続されている。シャットオフ弁45aの第4ポートは、開状態においてエアーが通り、閉状態において遮蔽される。
【0046】
シャットオフ弁45aは、コントローラ26からの指示に基づいて開閉される。具体的には、シャットオフ弁45aは、コントローラ26からの開指令によって通電がされたときに開状態となり、コントローラ26からの閉指令によって通電が停止されたときに閉状態となる。
【0047】
シャットオフ弁45aは、開状態において、第1ポートと第3ポートを接続し、作動油供給路44aからEPC弁46aに作動油を供給する。また、シャットオフ弁45aは、開状態において、エアーが通る状態の第4ポートとタンク48に接続された第2ポートを接続する。
【0048】
シャットオフ弁45aは、閉状態において、第2ポートと第3ポートを接続し、シャットオフ弁45aとEPC弁46aの間の作動油をタンク48へ排出する。また、シャットオフ弁45aは、閉状態において、第1ポートおよび第4ポートを閉じる。これにより、シャットオフ弁45aは、閉状態において、作動油供給路44aからEPC弁46aへの作動油の供給を停止する。
【0049】
シャットオフ弁45bは、作動油供給路44bに接続されている。シャットオフ弁45bは、4つのポートを有しており、開状態および閉状態の2状態をとるソレノイド弁である。シャットオフ弁45bの第1ポートは、作動油供給路44bに接続されている。シャットオフ弁45bの第2ポートはタンク48に接続されている。シャットオフ弁45bの第3ポートは、EPC弁46bに接続されている。シャットオフ弁45bの第4ポートは、開状態においてエアーが通り、閉状態において遮蔽される。
【0050】
シャットオフ弁45bは、コントローラ26からの指示に基づいて開閉される。具体的には、シャットオフ弁45bは、コントローラ26からの開指令によって通電がされたときに開状態となり、コントローラ26からの閉指令によって通電が停止されたときに閉状態となる。
【0051】
シャットオフ弁45bは、開状態において、第1ポートと第3ポートを接続し、作動油供給路44bからEPC弁46bに作動油を供給する。また、シャットオフ弁45bは、開状態において、エアーが通る状態の第4ポートとタンク48に接続された第2ポートを接続する。
【0052】
シャットオフ弁45bは、閉状態において、第2ポートと第3ポートを接続し、シャットオフ弁45bとEPC弁46bの間の作動油をタンク48へ排出する。また、シャットオフ弁45bは、閉状態において、第1ポートおよび第4ポートを閉じる。これにより、シャットオフ弁45bは、閉状態において、作動油供給路44bからEPC弁46bへの作動油の供給を停止する。
【0053】
本実施の形態では、コントローラ26は、たとえば、ホイールローダ100がたとえば後方向に走行しているときにのみシャットオフ弁45a、45bを開状態にする。ホイールローダ100の後方向への移動は、走行方向切替装置52におけるレバー位置を示す信号とアクセル55のアクセル操作量を示す開度信号とに基づいてコントローラ26が判断を行う。
【0054】
EPC弁46aは、シャットオフ弁45aとシャトル弁ユニット47を接続する流路に配置されている。EPC弁46aは、3つのポートを有するソレノイド弁である。EPC弁46aの第1ポートは、シャットオフ弁45aに接続されている。EPC弁46aの第2ポートは、タンク48に接続されている。EPC弁46aの第3ポートは、シャトル弁ユニット47に接続されている。
【0055】
EPC弁46aは、開状態において、第1ポートと第3ポートとを接続し、シャットオフ弁45aから供給される作動油をシャトル弁ユニット47に供給する。EPC弁46aの開度は、コントローラ26からの指示に基づいて調整される。EPC弁46aの開度が調整されることにより、シャトル弁ユニット47に供給される作動油の量が変更される。
【0056】
EPC弁46aは、閉状態において、第1ポートが閉じられ、第2ポートと第3ポートとを接続し、EPC弁46aからシャトル弁ユニット47までの流路の作動油をタンク48に排出する。これにより、EPC弁46aは、閉状態において、シャットオフ弁45aからシャトル弁ユニット47への作動油の供給を停止する。
【0057】
EPC弁46bは、シャットオフ弁45bとシャトル弁ユニット47を接続する流路に配置されている。EPC弁46bは、3つのポートを有するソレノイド弁である。EPC弁46bの第1ポートは、シャットオフ弁45bに接続されている。EPC弁46bの第2ポートは、タンク48に接続されている。EPC弁46bの第3ポートは、シャトル弁ユニット47に接続されている。
【0058】
EPC弁46bは、開状態において、第1ポートと第3ポートとを接続し、シャットオフ弁45bから供給される作動油をシャトル弁ユニット47に供給する。EPC弁46bの開度は、コントローラ26からの指示に基づいて調整される。EPC弁46bの開度が調整されることにより、シャトル弁ユニット47に供給される作動油の量が変更される。
【0059】
EPC弁46bは、閉状態において、第1ポートが閉じられ、第2ポートと第3ポートとを接続し、EPC弁46bからシャトル弁ユニット47までの流路の作動油をタンク48に排出する。これにより、EPC弁46bは、閉状態において、シャットオフ弁45bからシャトル弁ユニット47への作動油の供給を停止する。
【0060】
本実施形態では、コントローラ26は、ホイールローダ100が所定方向(たとえば後方向Zb)に走行し、かつ走行方向の制動要因に達するリスクが高いと判定したときにEPC弁46a、46bを開状態に制御する。
【0061】
シャトル弁ユニット47は、リア用シャトル弁47aと、フロント用シャトル弁47bとを有している。リア用シャトル弁47aは、リア用ブレーキ弁41aを介して供給される作動油と、EPC弁46aを介して供給される作動油のうち圧力が大きい方の作動油をブレーキ回路42aに供給する。フロント用シャトル弁47bは、フロント用ブレーキ弁41bを介して供給される作動油と、EPC弁46bを介して供給される作動油とのうち圧力が大きい方の作動油をブレーキ回路42bに供給する。
【0062】
このような構成により、ブレーキペダル54が操作されずブレーキ弁ユニット41から作動油が供給されない場合でも、コントローラ26からの指示によってシャットオフ弁45a、45bおよびEPC弁46a、46bが開状態にされると、リア用シャトル弁47aおよびフロント用シャトル弁47bからブレーキ回路42a、42bに作動油が供給され、自動制動制御が実施される。ブレーキ回路42a、42bにより制動状態と非制動状態とを切り替えられるブレーキは、たとえば湿式多板ディスクブレーキである。
【0063】
図4に示されるように、本例においてはリアに設けられたブレーキ回路42aの構造が示されている。
【0064】
湿式多板ディスクブレーキは、複数のディスク89と、プレート85と、ピストン83)と、エンドプレート88と、スプリング84とを主に有している。ブレーキシリンダは、ディファレンシャルハウジング81とベアリングキャリア82とからなり、ピストン83が組み込まれている。プレート85およびエンドプレート88とはアスクルハウジング87のスプライン部に結合されている。
【0065】
複数のディスク89の各々は、スプライン部によりリアタイヤ7への出力軸に固定されている。プレート85は、ディスク89と交互に配置され、スプライン部によりアスクルハウジング87に固定され回転しない。ピストン83は、ブレーキ回路42aに供給される作動油の油圧により作動する。なお、リアに設けられたブレーキ回路42aの構造について説明したが湿式多板ディスクブレーキの構造についてはフロントタイヤ4に設けられたブレーキ回路42bについても同様である。
【0066】
図5(A)に示されるように、作動油がブレーキ回路42a、42bへ供給されてブレーキシリンダ内の油路を入ると、ブレーキシリンダ内における作動油の油圧Pによりピストン83がディスク89側へ作動する。これによりプレート85が複数のディスク89の間で挟み込まれて押圧される。これにより湿式多板ディスクブレーキは作動し、制動状態となる。
【0067】
図5(B)に示されるように、ブレーキ回路42a、42bへの作動油の供給が停止されると、スプリング84の反発力(復元力)によりピストン83は元の位置に復帰し、プレート85とディスク89との押圧状態が解除される。これにより湿式多板ディスクブレーキは非制動状態となる。
【0068】
図2に示されるように、パーキングブレーキ43は、トランスファ33に設けられている。パーキングブレーキ43としては、たとえば、制動状態と非制動状態とを切り替え可能な湿式多段式のブレーキ、ディスクブレーキなどを用いることができる。
【0069】
図3に示されるように、油圧センサ75aは、シャトル弁ユニット47のリア用シャトル弁47aとブレーキ回路42aとの間の油圧回路における油圧を検出する。本例においては油圧センサ75aは、ブレーキ回路42aのブレーキシリンダに供給され、ディスク89を駆動するための作動油の圧力(油圧)を検出する。
【0070】
油圧センサ75bは、シャトル弁ユニット47のフロント用シャトル弁47bとブレーキ回路42bとの間の油圧回路における油圧を検出する。本例においては油圧センサ75bは、ブレーキ回路42bのブレーキシリンダに供給され、ディスク89を駆動するための作動油の圧力(油圧)を検出する。
【0071】
図2に示されるように、油圧センサ75a、75bの各々によって検出された情報がコントローラ26に送信される。コントローラ26は、較正モードにおいて、油圧センサ75a、75bの各々によって検出された油圧の情報に基づいて較正処理を実行する。
【0072】
(操作装置23)
【0073】
操作装置23は、キャブ5(図1)内に搭乗したオペレータにより操作される。操作装置23は、作業機操作部51と、走行方向切替装置52と、パーキングスイッチ53と、ブレーキペダル54と、アクセル55と、較正モードスイッチ56とを有している。
【0074】
作業機操作部51は、キャブ5内に設けられている。作業機操作部51は、作業機3の動作を操作するものであり、たとえばオペレータにより操作される操作レバーである。作業機操作部51の操作量は、たとえばポテンショメータ、ホールIC(Integrated Circuit)などによって検出される。作業機操作部51が操作されると、作業機操作部51の操作量を示す操作信号がコントローラ26に送信される。コントローラ26は、操作信号を、リフトシリンダ16およびバケットシリンダ17用のEPC弁63に操作指令として送信する。
【0075】
走行方向切替装置52は、キャブ5内に設けられている。オペレータは、走行方向切替装置52を操作してホイールローダ100の走行方向を設定する。走行方向切替装置52はたとえばFNRレバーである。FNRレバーは、前進(F)、中立(N)、または後進(R)のレバー位置をとることができる。FNRレバーのレバー位置を示す操作信号がコントローラ26に送信され、コントローラ26は、ソレノイド32dを制御することにより走行方向を前進、中立、または後進に切り替える。
【0076】
FNRレバーのレバー位置を検出する位置検出センサとして、ポテンショメータが用いられてもよいし、前進位置、後進位置および中立位置ごとにスイッチが設けられていてもよい。また、ポテンショメータとスイッチのうち一方が誤操作しても検出可能なように双方が設けられていてもよい。
【0077】
ブレーキペダル54は、キャブ5内に設けられている。ブレーキペダル54は、ブレーキ弁ユニット41のリア用ブレーキ弁41aおよびフロント用ブレーキ弁41bの開度を調整する。
【0078】
アクセル55は、キャブ5内に設けられている。オペレータは、アクセル55を操作してスロットル開度を設定する。アクセル55は、アクセル操作量を示す開度信号を生成してコントローラ26へ送信する。コントローラ26は、送信される信号に基づいてエンジン31の回転速度を制御する。
【0079】
パーキングスイッチ53は、キャブ5内に設けられており、オン・オフに状態を切り替え可能なスイッチであり、その状態を示す信号をコントローラ26に送信する。コントローラ26は、送信される信号に基づいてパーキングブレーキ43を制動状態または非制動状態にする。
【0080】
較正モードスイッチ56は、キャブ5内に設けられており、オン・オフに状態を切り替え可能なスイッチであり、その状態を示す信号をコントローラ26に送信する。コントローラ26は、送信される信号に基づいて後述する手動による較正モードの実行を開始する。
【0081】
(物体センサ25)
【0082】
物体センサ25は、車両本体1の周囲に位置する物体、状況(崖などの地形を含む)などの制動が必要となる制動要因を検出する。物体センサ25は、ホイールローダ100の走行方向に位置する物体、状況(崖などの地形を含む)などの制動が必要となる制動要因を検出する。物体センサ25は、ホイールローダ100が後方向Zbに走行する場合にはホイールローダ100の後方向Zbに位置する制動要因を検出する後方検出部である。また物体センサ25は、ホイールローダ100が前方向Zfに走行する場合にはホイールローダ100の前方向Zfに位置する制動要因を検出する前方検出部である。
【0083】
物体センサ25が後方検出部である場合、後方検出部は、たとえば図1に示すように車両本体1の後端に取り付けられるが、後端以外に取り付けられてもよい。物体センサ25が前方検出部である場合、前方検出部は、たとえばキャブ5に取り付けられてもよく、フロントフレーム11に取り付けられてもよく、またこれら以外に取り付けられてもよい。
【0084】
物体センサ25は、たとえばレーザ光を射出して対象物の情報を取得するLiDAR(Light Detection and Ranging)である。物体センサ25は、電波を射出することにより対象物の情報を取得するRadar(Radio Detection and Ranging)であってもよい。Radarは、たとえば送信アンテナから発したミリ波帯の電波が物体の表面で反射して戻ってくる様子を受信アンテナで検出するミリ波レーダであってもよい。物体センサ25は、カメラを含む視覚センサであってもよい。物体センサ25は、赤外線センサであってもよい。
【0085】
物体センサ25によって検出された情報がコントローラ26に送信され、コントローラ26は、ホイールローダ100の走行方向に制動要因が存在するか否かを判定する。またコントローラ26は、検出した制動要因までの距離を算出する。コントローラ26は、検出した制動要因までの距離などに基づいて、ホイールローダ100がその制動要因に達するリスクが高いか否かを判定してもよい。
【0086】
(動作部24)
【0087】
動作部24は、リフトシリンダ16およびバケットシリンダ17と、油圧ポンプ61と、油圧バルブ62と、EPC弁63とを有している。エンジン31の駆動力の一部が、油圧ポンプ61に伝達される。油圧ポンプ61はエンジンにより駆動され、作動油を吐出する。油圧ポンプ61は、吐出した作動油によってリフトシリンダ16およびバケットシリンダ17を作動させる。油圧ポンプ61から吐出された作動油は、油圧バルブ62を介して、リフトシリンダ16およびバケットシリンダ17に供給される。EPC弁63は、油圧バルブ62の開閉および開度を制御する。
【0088】
EPC弁63は、コントローラ26からの指示に基づいて開閉される。具体的には、EPC弁63は、コントローラ26からの開指令によって通電がされたときに開状態となり、コントローラ26からの閉指令によって通電が停止されたときに閉状態となる。
【0089】
EPC弁63は、開状態において、油圧ポンプ61と作業機シリンダ16、17とを接続するように油圧バルブ62を制御し、油圧ポンプ61から作業機シリンダ16、17に作動油を供給する。EPC弁63は、閉状態において、油圧ポンプ61からリフトシリンダ16およびバケットシリンダ17への作動油の供給を停止する。
【0090】
(コントローラ26)
【0091】
コントローラ26は、プロセッサと、メインメモリと、ストレージとを含む。プロセッサはたとえばCPU(Central Processing Unit)などである。メインメモリは、たとえばROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリおよびRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含む。
【0092】
コントローラ26および操作装置23の各々は、ホイールローダ100に搭載されていてもよく、ホイールローダ100の外部に離れて配置されていてもよい。コントローラ26および操作装置23の各々がホイールローダ100の外部に離れて配置されている場合、コントローラ26および操作装置23の各々は、駆動装置21、制動ユニット22、操作装置23、物体センサ25などと無線により接続されていてもよい。コントローラ26は、ホイールローダ100から離れたサーバに格納されていてもよい。また操作装置23がホイールローダ100から離れていることにより、オペレータはホイールローダ100のキャブ5内に搭乗せずに、遠隔でホイールローダ100を操作してもよい。
【0093】
コントローラ26は、ストレージに記憶されているプログラムを読み出してメインメモリに展開し、プログラムに従って所定の処理を実行する。コントローラ26は、全体で1つのCPUを有していてもよい。またコントローラ26は、自動制動制御用コントローラと較正用コントローラとに分かれていてもよい。自動制動制御用コントローラと較正用コントローラとは別々のCPUを有していてもよい。またプログラムは、ネットワークを介してコントローラ26に配信されてもよい。
【0094】
図6に示されるように、コントローラ26は、制動要因情報取得部181と、制動要因判定部182と、EPC弁制御部94と、圧力取得部91と、圧力判定部92と、較正処理部93と、記憶部95とを有している。
【0095】
制動要因情報取得部181は、物体センサ25で検出されたホイールローダ100の進行方向における制動要因に関する情報を物体センサ25から取得する。制動要因情報取得部181は、取得した情報を制動要因判定部182へ出力する。
【0096】
制動要因判定部182は、取得した制動要因に関する情報に基づいて、ホイールローダ100の進行方向に制動要因が存在するか否かを判定する。制動要因判定部182による判定結果はEPC弁制御部94に送信される。
【0097】
EPC弁制御部94は、ホイールローダ100の進行方向に制動要因が存在するとの判定結果を取得すると、EPC弁46a、46bに開指令となる指令電流を出力する。EPC弁46a、46bの開度は、指令電流により調整される。EPC弁46a、46bには、たとえば図7(A)に示されるような指令電流が与えられる。
【0098】
図7(A)に示されるように、制動指令の指令電流は、トリガ電流(第1電流)と実行電流(第2電流)とを有している。トリガ電流は、制動指令の開始直後にEPC弁46a、46bに与えられる。トリガ電流がEPC弁46a、46bに与えられる時間はトリガ時間と称する。トリガ時間は、制動指令の開始直後からトリガ電流値に達するまでの時間を含んでいてもよい。
【0099】
実行電流は、制動指令の開始後であってトリガ時間の経過後にEPC弁46a、46bに与えられる。実行電流の電流値は、トリガ電流の電流値よりも低く設定されている。
【0100】
トリガ時間は、図7(B)におけるブレーキ応答時間よりも短くなるように設定されている。ブレーキ応答時間とは、ブレーキシリンダ内における作動油の油圧(フロントシリンダ圧、リアシリンダ圧)が、制動指令の開始直後からフィル圧に達するまでの時間である。フィル圧とは、ブレーキ回路42a、42bにおいてブレーキ作動が開始する圧力(制動が効き始める圧力)である。
【0101】
上記のように制動指令の開始直後に高い電流値のトリガ電流がEPC弁46a、46bに与えられることにより、ブレーキ回路42a、42bにおける制動の応答性が高められる。また、トリガ時間の経過後であってブレーキ作動の開始前に低い電流値の実行電流がEPC弁46a、46bに与えられることにより制動による減速ショックが抑制される。
【0102】
なおトリガ電流および実行電流の各々の電流値は、検出された制動要因までの距離に基づいて調整されてもよい。たとえば検出された制動要因までの距離から、制動要因の手前で停止する減速度を算出し、その減速度を発揮する開度になるようにEPC弁制御部94がEPC弁46a、46bに開指令(指令電流)を送信してもよい。
【0103】
図7に示されるような指令電流と時間との関係を示すテーブルが図6に示す記憶部95に記憶されている。EPC弁制御部94は、EPC弁46a、46bに出力する指令電流を決定する際に記憶部95に記憶された上記テーブルを参照する。
【0104】
図3に示されるように、開指令(指令電流)に基づいてEPC弁46a、46bのソレノイドが操作されることにより、EPC弁46a、46bが開状態となる。これによりEPC弁46a、46bからリア用シャトル弁47aとフロント用シャトル弁47bに作動油が供給される。
【0105】
リア用シャトル弁47aにおいて、リア用ブレーキ弁41aからの作動油とEPC弁46aからの作動油とのうち圧力が高い方がブレーキ回路42aに供給され、制動力が発揮される。また、フロント用シャトル弁47bにおいて、フロント用ブレーキ弁41bからの作動油とEPC弁46bからの作動油とのうち圧力が高い方がブレーキ回路42aに供給され、制動力が発揮される。
【0106】
これにより、オペレータによってブレーキペダル54の操作が行われない場合であっても自動ブレーキが実施されて制動力が発揮され、制動要因の手前でホイールローダ100を停止させることができる。このようにコントローラ26は、検知コントローラ180の検出結果に基づいて自動制動制御を実施する。
【0107】
以上のように本実施形態では、ホイールローダ100の進行方向に制動要因を検出した場合に自動制動制御を実施する。たとえばフロントタイヤ4およびリアタイヤ7が回転していない停止状態であっても、走行方向切替装置52が後進の位置をとっている場合、ホイールローダ100が後進状態であると判定してもよい。また同様に、たとえばフロントタイヤ4およびリアタイヤ7が回転していない停止状態であっても、走行方向切替装置52が前進の位置をとっている場合、ホイールローダ100が前進状態であると判定してもよい。
【0108】
なお、自動制動制御による制動力が発揮されない場合であっても、オペレータがブレーキペダル54を操作し、ブレーキ弁ユニット41から作動油がシャトル弁ユニット47に供給されるとブレーキ回路42a、42bが作動する。
【0109】
またコントローラ26は、必要に応じて較正モードを実行する。この較正モードにおいて、コントローラ26は、ディスク構造のブレーキの劣化状態に応じて、記憶部95に記憶されている指令電流と時間との関係を表わすテーブルを較正する。
【0110】
図6に示されるように、上記較正は、圧力取得部91、圧力判定部92および較正処理部93により行われる。圧力取得部91は、油圧センサ75a、75bにより検出された油圧を示す信号を取得する。圧力取得部91は、取得した油圧を示す信号を圧力判定部92へ出力する。
【0111】
圧力判定部92は、取得した油圧を示す信号に基づいて、油圧センサ75a、75bにより検出された実際の油圧状態(実制動状態)と、記憶部95に記憶された基準となる油圧状態(基準制動状態)とを比較する。
【0112】
図4図6に示されるディスク構造のブレーキにおいては、経時的劣化によりディスク89などが摩耗して、プレート85とディスク89との間の隙間が大きくなる。このため図8に示されるように、ブレーキの劣化後には初期状態と比較して、ブレーキシリンダ内における作動油の油圧がフィル圧に達するまでの時間がΔT(=Tm-Ts)だけ長くなる。なおTsは、ブレーキの初期状態において、ブレーキシリンダ内における作動油の油圧がフィル圧に達するまでの時間である。Tmは、ブレーキの劣化後において、ブレーキシリンダ内における作動油の油圧がフィル圧に達するまでの時間である。
【0113】
圧力判定部92は、油圧センサ75a、75bにより検出された実際の油圧状態(実制動状態)から、ブレーキシリンダ内における作動油の油圧が所定圧力(たとえばフィル圧)に達するまでの実際の時間Tm(実ブレーキ応答時間)を算出する。一方、圧力判定部92は、記憶部95に記憶された基準制動状態から、ブレーキシリンダ内における作動油の油圧が所定圧力(たとえばフィル圧)に達するまでの基準の時間Ts(基準ブレーキ応答時間)を取得する。なお基準制動状態とは、図8に示されるようなたとえば初期状態のブレーキにおけるブレーキシリンダ圧の経時変化である。また実制動状態とは、図8に示されるようなたとえば劣化後のブレーキにおけるブレーキシリンダ圧の経時変化である。
【0114】
圧力判定部92は、上記の実ブレーキ応答時間Tmと基準ブレーキ応答時間Tsとの差分(ΔT)を算出する。圧力判定部92は、算出した差分(ΔT)が所定時間(所定値)よりも大きいか否かを判定する。この所定時間は記憶部95に記憶されている。圧力判定部92は、差分(ΔT)が所定時間より大きいか否かを判定するに際して、記憶部95に記憶された所定時間を参照する。
【0115】
圧力判定部92の判定結果を示す信号は、較正処理部93へ出力される。較正処理部93は、取得した判定結果を示す信号に基づいて、記憶部95に記憶されている図7に示されるような指令電流と時間との関係を表わすテーブルを較正する。
【0116】
上記テーブルの較正は、上記テーブルにおける制動指令のパラメータを較正することにより行われる。上記制動指令のパラメータは、トリガ時間と、制動指令の開始のタイミングと、ディスク89を駆動するために供給される作動油の油量とからなる群より選ばれる1つ以上のパラメータである。トリガ時間と制動指令の開始のタイミングとの各々は、制動指令を規定するパラメータである。ディスク89を駆動するために供給される作動油の油量は、制動指令を決定する際に用いられるパラメータである。
【0117】
トリガ時間は、たとえば差分(ΔT)に基づいて初期状態よりも長くなるように較正される。この場合、制動指令の開始のタイミング(図7(A)における「指令ON」のタイミング)を初期状態のまま維持しつつ、トリガ電流をEPC弁46a、46bに与える時間を長くすることによりトリガ時間が長くされる。
【0118】
また制動指令の開始のタイミング(図7(A)における「指令ON」のタイミング)は、たとえば差分(ΔT)に基づいて初期状態よりも早めるように較正される。この場合、トリガ電流値を実行電流値に切り替えるタイミングを初期状態のまま維持しつつ、制動指令の開始タイミングが初期状態よりも早められる。この場合においても結果的にトリガ時間は長くなり、ブレーキ作動開始のタイミングを早めることができる。
【0119】
ディスク89を駆動するために供給される作動油の油量は、たとえば差分(ΔT)に基づいて初期状態よりも多くなるように較正される。この場合、劣化後の状態よりもブレーキ作動開始のタイミングを早めることができる。
【0120】
制動指令のパラメータの較正が行われた後は、EPC弁制御部94は、較正後の制動指令のパラメータ(指令電流と時間との関係を表わすテーブル)に基づいてEPC弁46a、46bに制動指令を出力する。
【0121】
上記よりコントローラ26は、作業機3の駆動を制御し、油圧センサ75a、75bにより検出された油圧に基づいてEPC弁46a、46bに与える制動指令のパラメータを調整する。またコントローラ26は、記憶部95に記憶された制動指令のパラメータを、油圧センサ75a、75bにより検出された油圧に基づいて較正する。またコントローラ26は、ホイールローダ100が停止した状態で制動指令のパラメータを較正する。
【0122】
またコントローラ26は、油圧センサ75a、75bにより検出された油圧に基づいてEPC弁46a、46bに与える電流をトリガ電流の電流値よりも低い電流値の実行電流に切り替えてEPC弁46a、46bに与える。
【0123】
またコントローラ26は、ブレーキ回路42a、42bの記憶された基準制動状態と油圧センサ75a、75bにより検出された油圧に基づく実際の実制動状態とを比較した結果に基づいて制動指令のパラメータの調整が必要か否かを判定する。またコントローラ26は、基準制動状態における基準ブレーキ応答時間Tsと実制動状態における実ブレーキ応答時間Tmとの差分ΔTが所定値よりも大きくなった時点で制動指令のパラメータを調整する。
【0124】
<自動制動制御>
【0125】
次に、本実施形態におけるホイールローダ100の自動制動制御について図6および図9を用いて説明する。
【0126】
図9は、本開示の一実施形態におけるホイールローダ100の自動制動制御を示すフロー図である。図6に示されるように、制動要因判定部182がホイールローダ100の進行方向に制動要因が存在するか否かを判定する(ステップS1:図9)。
【0127】
ステップS1において、ホイールローダ100の進行方向に制動要因が存在しないと制動要因判定部182が判定した場合(ステップS1においてNO)、上記ステップS1の状態が維持される。
【0128】
またステップS1において、ホイールローダ100の進行方向に制動要因が存在すると制動要因判定部182が判定した場合(ステップS1においてYES)、EPC弁制御部94がEPC弁46a、46bに開指令(指令電流)を送信する(ステップS2:図9)。
【0129】
これにより、EPC弁46a、46bのソレノイドが操作され、EPC弁46a、46bが開状態となる。これによりEPC弁46a、46bからリア用シャトル弁47aとフロント用シャトル弁47bとを介してブレーキ回路42a、42bに作動油が供給され、自動制動による制動力が発揮される。
【0130】
そして、処理が終了される(エンド:図9)。
【0131】
上記の図9に示された自動制動制御により、ホイールローダ100の進行方向に制動要因が検出された場合には、自動制動によってホイールローダ100は制動要因の手前で停止することができる。
【0132】
<較正モード>
【0133】
次に、本実施形態におけるホイールローダ100の較正モードについて説明する。
【0134】
図10は、本開示の一実施形態におけるホイールローダ100の較正モードを示すフロー図である。上記したように経時的劣化などによってディスク構造のブレーキの制動特性は変化する。つまりディスク構造の経時的劣化などにより指令電流値に対する作動油の圧力が変動する。これによりブレーキにおける制動指令の開始から制動が掛かり始めるまでの時間(つまりブレーキ応答時間)がディスク89の摩耗状態により異なる。このため以下の問題(1)、(2)が考えられる。
【0135】
(1)ディスク89などの摩耗が少ない場合、高い指令電流を出力しているトリガ時間中にブレーキ作動が開始してしまい急激な減速ショックが生じる。
【0136】
(2)ディスク89などの摩耗が多い場合、ブレーキの作動開始が遅れるため、ホイールローダ100が停止できずに制動要因に達してしまう(たとえば障害物に干渉してしまう)。
【0137】
上記問題(1)、(2)を解決するために、本実施形態においてはEPC弁46a、46bに与える指令電流が較正される。
【0138】
図10に示されるように、本実施形態の較正モードにおいては、まず較正モードの実行指示があったか否かがコントローラ26により判定される(ステップS11)。較正モードの実行指示は、ホイールローダ100に搭乗するオペレータ、およびホイールローダ100を遠隔操作するオペレータのいずれによって行われてもよい。オペレータは、スイッチ、ボタンなどの操作部を操作することにより、較正モードの実行指示を行ってもよい。較正モードの実行指示をするためのスイッチ、ボタンなどの操作部はホイールローダ100に設置されていてもよく、また遠隔操作装置(リモートコントローラ)に設置されていてもよい。較正モードの実行指示をするための操作部は、物理的なスイッチ、ボタンなどであってもよく、またタッチパネルのような表示装置に表示されるスイッチ、ボタンなどの表示画像であってもよい。
【0139】
また較正モードの実行指示は、コントローラ26により行われてもよい。コントローラ26は、たとえばホイールローダ100の累積稼働時間、累積走行時間、または累積制動時間を演算し、ホイールローダ100が所定時間稼働、走行または制動したとの判定結果に基づいて較正モードを実行してもよい。またコントローラ26は、油圧センサ75a、75bにより検出された油圧に基づいて較正モードを実行してもよい。
【0140】
較正モードの実行指示がない場合(ステップS11においてNO)には、引き続き較正モードの実行指示があるか否かの判定が繰り返される。一方、較正モードの実行指示があった場合(ステップS11においてYES)には、ブレーキシリンダ内における作動油の油圧(ブレーキ圧)が油圧センサ75a、75bにより検出される(ステップS12)。
【0141】
油圧センサ75a、75bにより検出された油圧を示す信号は、圧力取得部91により取得される。圧力取得部91は、取得した油圧を示す信号を圧力判定部92へ出力する。圧力判定部92は、取得した油圧を示す信号(実制動状態を示す信号)に基づいて、実ブレーキ応答時間Tmを算出する(ステップS13)。また圧力判定部92は、記憶部95に記憶された基準制動状態から、基準ブレーキ応答時間Tsを取得する。
【0142】
圧力判定部92は、上記の実ブレーキ応答時間Tmと基準ブレーキ応答時間Tsとの差分(ΔT)を算出する(ステップS14)。圧力判定部92は、算出した差分(ΔT)が所定時間(所定値)よりも大きいか否かを判定する(ステップS15)。
【0143】
算出した差分(ΔT)が所定時間(所定値)以下である場合(ステップS13においてNO)、上記ステップS12~S15が繰り返される。一方、算出した差分(ΔT)が所定時間(所定値)よりも大きい場合(ステップS13においてYES)、その判定結果を取得した較正処理部93は、制動指令のパラメータを較正する(ステップS16)。
【0144】
較正される制動指令のパラメータは、トリガ時間と、制動指令の開始のタイミングと、ディスク89を駆動するために供給される作動油の油量とからなる群より選ばれる1つ以上のパラメータを含む。
【0145】
上記制動指令のパラメータの較正は、較正処理部93が記憶部95に記憶された制動指令のパラメータ(指令電流と時間との関係を表わすテーブル)を書き換えることにより行われる。そして、較正モードの処理が終了される(エンド)
【0146】
以上により本実施形態における較正モードは実行される。
【0147】
上記較正モードにより制動指令のパラメータの較正が行われた後は、図6に示されるEPC弁制御部94が、記憶部95に記憶された較正後の制動指令のパラメータ(指令電流と時間との関係を表わすテーブル)に基づいてEPC弁46a、46bに制動指令を出力する。
【0148】
上記の較正モードは、ホイールローダ100が停止した状態で行われることが好ましい。ホイールローダ100が停止した状態か否かは、コントローラ26により判定される。コントローラ26は、たとえばエンジン31の稼働状態、パーキングスイッチ53の状態、走行方向切替装置52の状態、アクセル55の状態などに基づいてホイールローダ100が停止した状態か否かを判定する。
【0149】
<他の実施形態>
【0150】
上記実施形態においてはコントローラ26が、油圧センサ75a、75bにより検出された油圧に基づいてEPC弁46a、46bに与える制動指令のパラメータを調整する方法として、制動指令のパラメータを較正することにより調整する方法について説明したが、制動指令のパラメータを調整する方法はこれに限定されない。
【0151】
コントローラ26が制動指令のパラメータを調整する方法として、油圧センサ75a、75bにより検出された油圧に基づいてEPC弁46a、46bをフィードバック制御することにより、EPC弁46a、46bに与える制動指令のパラメータが調整されてもよい。この場合、油圧センサ75a、75bにより検出された油圧が所定圧力(たとえばフィル圧)に達したことを検出したら、EPC弁46a、46bに与える制動指令をトリガ電流値から実行電流値に切り替えることで制動指令のパラメータが調整される。
【0152】
このフィードバック制御においては、図6に示されるように、油圧センサ75a、75bにより検出された油圧を示す信号が圧力取得部91により取得される。圧力取得部91は、取得した油圧を示す信号を圧力判定部92へ出力する。
【0153】
圧力判定部92は、取得した油圧を示す信号に基づいて当該油圧が所定圧力(たとえばフィル圧)に達したか否かを判定する。この判定において、圧力判定部92は、記憶部95に記憶されている所定圧力を参照する。圧力判定部92は、その判定結果を示す信号をEPC弁制御部94へ出力する。
【0154】
EPC弁制御部94は、当該油圧が所定圧力に達しているとの判定結果を取得した場合、EPC弁46a、46bに与える制動指令をトリガ電流値から実行電流値に切り替える。電流値の切り替えに際して、EPC弁制御部94は、記憶部95に記憶された実行電流値を参照する。EPC弁制御部94は、実行電流値をEPC弁46a、46bへ出力する。
【0155】
このように油圧センサ75a、75bにより検出された油圧に基づいてEPC弁46a、46bがフィードバック制御されてもよい。
【0156】
油圧センサ75a、75bによる油圧の検出は随時実施されてもよい。またオペレータまたはコントローラ26が較正モードの実行指示(ステップS11:図10)を出すタイミングで油圧センサ75a、75bによる油圧の検出が実施されてもよい。
【0157】
またコントローラ26がEPC弁46a、46bへ制動指令の出力を開始してからブレーキ制動が効き出すまでの時間(フィル圧に達するまでの時間:ブレーキ応答時間)に基づいて、自動で油圧センサ75a、75bによる油圧の検出が実施されてもよい。
【0158】
またコントローラ26が油圧センサ75a、75bによる油圧の検出結果(たとえばブレーキ応答時間:図7)に基づいて制動指令のパラメータを較正した方がよいと判定した場合には、ホイールローダ100または遠隔操作装置の表示装置にて較正のリコメンドを出してもよい。
【0159】
上記実施形態では、駆動装置21にHST32を用いているが、HSTに限らなくても良く、トルクコンバータであってもよい。また、HSTに限らず、HMT(Hydro Mechanical Transmission)が用いられてもよい。
【0160】
記憶部95はコントローラ26に含まれていてもよく、コントローラ26とは別個に設けられていてもよい。
【0161】
上記実施形態のホイールローダはオペレータが搭乗して操作してもよいし、無人で操作されてもよい。
【0162】
上記実施形態では、作業機械の一例としてホイールローダを用いて説明したが、ホイールローダに限らなくてもよく、油圧ショベルなどであってもよい。
【0163】
実施形態においては、後進時において検知コントローラ180によって後方に制動要因が存在することが検出された場合に、自動ブレーキが実行される場合について説明したが、後進時に限られず前進時に対して自動ブレーキが実行される構成においても本願発明を適用することが可能である。
【0164】
<効果>
【0165】
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0166】
本実施形態においては図6に示されるように、コントローラ26は、油圧センサ75a、75bにより検出されたブレーキシリンダ内の作動油の油圧に基づいてEPC弁46a、46bに与える制動指令のパラメータを調整する。これによりディスク構造のブレーキの制動特性の変化に対応することが可能となる。このためディスク89などの摩耗が少ない場合に急激な減速ショックの発生が抑制される。またディスク89などの摩耗が多い場合にホイールローダ100が停止できずに制動要因に達することも抑制される。
【0167】
また本実施形態においては図6に示されるように、コントローラ26は、記憶部95に記憶された制動指令のパラメータを、油圧センサ75a、75bにより検出された油圧に基づいて変更する。これにより制動指令のパラメートを較正することができる。
【0168】
また本実施形態においては図6に示されるように、制動指令のパラメータは、トリガ時間と、制動指令の開始のタイミングと、ディスク89を駆動するために供給される作動油の油量とからなる群より選ばれる1つ以上のパラメータである。これらのパラメータの少なくとも1つを較正することにより、ディスク構造のブレーキの制動特性の変化に対応することが可能となる。
【0169】
また本実施形態においては図6に示されるように、コントローラ26は、ホイールローダ100が停止した状態で制動指令のパラメータを変更する。これによりホイールローダ100が走行することによるブレーキシリンダ内における作動油の変化の影響を受けないため、ディスク構造のブレーキの制動特性の変化に対応する処置を容易に講ずることが可能となる。
【0170】
また本実施形態においては図6に示されるように、コントローラ26は、油圧センサ75a、75bにより検出された油圧に基づいて、EPC弁46a、46bに与える電流をトリガ電流からトリガ電流の電流値よりも低い電流値の実行電流に切り替えてEPC弁46a、46bに与える。これにより油圧センサ75a、75bの検出結果に基づくフィードバック制御によりEPC弁46a、46bを制御することができる。
【0171】
また本実施形態においては図に示されるように、コントローラ26は、ブレーキ回路42a、42bの基準制動状態と実際制動状態とを比較した結果に基づいて制動指令のパラメータの調整が必要か否かを判定する。これにより基準制動状態に基づいて実際制動状態における制動指令のパラメータを調整することが可能となる。
【0172】
また本実施形態においては図6に示されるように、コントローラ26は、基準ブレーキ応答時間と実ブレーキ応答時間との差分が所定値よりも大きくなった時点で制動指令のパラメータを調整する。これにより基準ブレーキ応答時間に基づいて実ブレーキ応答時間における制動指令のパラメータを調整することが可能となる。
【0173】
<付記>
【0174】
上述したような実施形態は、以下のような技術思想を含む。
【0175】
(付記1)
駆動源と、
前記駆動源の動力で走行する走行体と、
前記駆動源の動力で駆動する作業機と、
複数のディスクを有し、複数の前記ディスクを油圧で駆動することにより前記走行体を制動する制動装置と、
前記制動装置の前記ディスクを駆動するための油圧を制御する制動制御弁と、
前記制動装置の前記ディスクを駆動するための前記油圧を検出する油圧センサと、
前記油圧センサにより検出された前記油圧に基づいて前記制動制御弁に与える制動指令のパラメータを調整するコントローラと、を備えた、作業機械。
【0176】
(付記2)
前記コントローラは、記憶された前記制動指令の前記パラメータを、前記油圧センサにより検出された前記油圧に基づいて較正する、付記1に記載の作業機械。
【0177】
(付記3)
記憶された前記制動指令は、前記制動指令の開始直後のトリガ時間内には第1電流を前記制動制御弁に与え、前記トリガ時間の経過後には前記第1電流の電流値より低い電流値の第2電流を前記制動制御弁に与えるよう設定されており、
前記制動指令の前記パラメータは、前記トリガ時間と、前記制動指令の開始のタイミングと、前記ディスクを駆動するために供給される作動油の油量とからなる群より選ばれる1つ以上のパラメータを含む、付記2に記載の作業機械。
【0178】
(付記4)
前記コントローラは、前記作業機械が停止した状態で前記パラメータを較正する、付記2または付記3に記載の作業機械。
【0179】
(付記5)
前記コントローラは、前記油圧センサにより検出された前記油圧に基づいて前記制動制御弁に与える電流を第1電流から前記第1電流の電流値よりも低い電流値の第2電流に切り替えて前記制動制御弁に与える、付記1に記載の作業機械。
【0180】
(付記6)
前記コントローラは、前記制動装置の記憶された基準制動状態と前記油圧センサにより検出された前記油圧に基づく前記制動装置の実際の実制動状態とを比較した結果に基づいて前記制動指令の前記パラメータの調整が必要か否かを判定する、付記1から付記5のいずれか1つに記載の作業機械。
【0181】
(付記7)
前記コントローラは、前記基準制動状態における基準ブレーキ応答時間と前記実制動状態における実ブレーキ応答時間との差分が所定値よりも大きくなった時点で前記パラメータを調整する、付記6に記載の作業機械。
【0182】
(付記8)
駆動源と、
前記駆動源の動力で走行する走行体と、
前記駆動源の動力で駆動する作業機と、
複数のディスクを有し、複数の前記ディスクを油圧で駆動することにより前記走行体を制動する制動装置と、
前記制動装置の前記ディスクを駆動するための油圧を制御する制動制御弁と、
前記制動装置の前記ディスクを駆動するための前記油圧を検出する油圧センサと、
前記油圧センサにより検出された前記油圧に基づいて前記制動制御弁に与える制動指令のパラメータを調整するコントローラと、を備えた、作業機械のシステム。
【0183】
(付記9)
駆動源と、前記駆動源の動力で走行する走行体と、前記駆動源の動力で駆動する作業機と、複数のディスクを油圧で駆動することにより前記走行体を制動する制動装置と、前記制動装置の前記ディスクを駆動するための油圧を制御する制動制御弁と、前記制動装置の前記ディスクを駆動するための前記油圧を検出する油圧センサと、を有する作業機械の制御方法であって、
前記油圧センサにより検出された前記油圧を取得するステップと、
取得された前記油圧に基づいて前記制動制御弁に与える制動指令のパラメータを調整するステップと、を備えた、作業機械の制御方法。
【0184】
以上、本開示の実施形態について説明したが、今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0185】
1 車両本体、2 走行体、3 作業機、4 フロントタイヤ、5 キャブ、5s 運転席、6 エンジンルーム、7 リアタイヤ、9 ステアリングシリンダ、10 車体フレーム、11 フロントフレーム、12 リアフレーム、13 連結軸部、14 ブーム、15 バケット、16 リフトシリンダ、17 バケットシリンダ、18 ベルクランク、21 駆動装置、22 制動ユニット、23 操作装置、24 動作部、25 物体センサ、26 コントローラ、31 エンジン、32 HST、32a ポンプ、32b モータ、32c1 第1駆動回路、32c2 第2駆動回路、32c 油圧回路、32d,32e ソレノイド、33 トランスファ、34 アクスル、40 制動部、41 ブレーキ弁ユニット、41a リア用ブレーキ弁、41b フロント用ブレーキ弁、42a,42b ブレーキ回路、43 パーキングブレーキ、44a,44b 作動油供給路、45a,45b シャットオフ弁、46a,46b,63 EPC弁、47 シャトル弁ユニット、47a リア用シャトル弁、47b フロント用シャトル弁、48 タンク、49a,49b アキュームレータ、51 作業機操作部、52 走行方向切替装置、53 パーキングスイッチ、54 ブレーキペダル、55 アクセル、56 較正モードスイッチ、61 油圧ポンプ、62 油圧バルブ、75a,75b 油圧センサ、81 ディファレンシャルハウジング、82 ベアリングキャリア、83 ピストン、84 スプリング、85 プレート、87 アスクルハウジング、88 エンドプレート、89 ディスク、91 圧力取得部、92 圧力判定部、93 較正処理部、94 弁制御部、95 記憶部、100 ホイールローダ、180 検知コントローラ、181 制動要因情報取得部、182 制動要因判定部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10