(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111524
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】電力制御システム
(51)【国際特許分類】
H04L 43/0805 20220101AFI20240809BHJP
【FI】
H04L43/0805
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016080
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 瑞
(57)【要約】
【課題】サーバと需要家設備の通信装置とのネットワーク接続が切断された場合に適切な処理を行うこと。
【解決手段】電力制御システム10は、通信部11と監視部12と制御部13と記憶部14とを備える。通信部11は、外部機器20とデータの送受信を行う。監視部12は、通信部11の通信状態を監視する。制御部13は、監視部12が、通信部11の通信が切断された状態を確認した場合に、外部機器20から受信した制御値を初期設定値に段階的に近づける制御を行う。記憶部14は、外部機器20から受信した制御値及び制御の初期設定値を記憶する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部機器とデータの送受信を行う通信部と、
前記通信部の通信状態を監視する監視部と、
前記外部機器から受信した制御値及び制御の初期設定値を記憶する記憶部と、
を有し、
前記監視部が、前記通信部の通信が切断された状態を確認した場合に、前記外部機器から受信した制御値を前記初期設定値に段階的に近づける制御を行う制御部と、
を備えることを特徴とする電力制御システム。
【請求項2】
前記記憶部は、さらに制御の残り時間及び予め設定した制御時間の閾値を記憶し、
前記制御部は、前記制御の残り時間が前記制御時間の閾値より大きい場合、前記外部機器から受信した通信切断直前の制御値で制御し、前記外部機器から受信した通信切断直前の制御値を前記初期設定値に段階的に近づける制御を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の電力制御システム。
【請求項3】
前記通信切断直前の制御値を初期設定値に段階的に近づける制御において、
前記制御部は、前記外部機器から受信した通信切断直前の制御値と前記初期設定値との差分を計算し、前記差分を前記残り時間の出力回数で割ることで1出力当たりの制御量を決定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の電力制御システム。
【請求項4】
前記通信切断直前の制御値を初期設定値に段階的に近づける制御において、
前記記憶部は、さらに予め設定した制御値の閾値を記憶し、
前記制御部は、前記外部機器から受信した通信切断直前の制御値と前記初期設定値との差分を計算し、前記差分が前記閾値よりも小さい場合には、前記初期設定値で制御を行う、
ことを特徴とする請求項3に記載の電力制御システム。
【請求項5】
前記通信切断直前の制御値を初期設定値に段階的に近づける制御において、
前記記憶部は、さらに緊急停止に要する時間を記憶し、
前記制御部は、前記制御の残り時間が前記緊急停止に要する時間より短い場合には、前記初期設定値で制御を行う、
ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の電力制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力の需給バランスを保つための方法として、デマンドレスポンス(Demand Response)(以下DRと呼称)が行われている。DRは、電力の供給側である電力会社が需要家側に電力の節約をしてもらうことで余剰電力を生み出し、需要家側は、節約した分の対価を受け取るという仕組みである。そして、DRでの需要家設備の制御は、クラウドベースのサーバからネットワークを使用し遠隔で行っている場合がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】“デマンドレスポンス|用語集|新電力ネット”、[online]、[令和4年12月28日検索]、インターネット〈https://pps-net.org/glossary/27553〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の技術では、サーバと需要家設備の通信装置とのネットワーク接続が切断された場合に適切な処理を行うことができないという課題があった。例えば、従来技術では、サーバと需要家現場のゲートウェイ間において、ネットワーク接続が切断されると、サーバから指示を行えず、需要家設備側では、何も対処することができないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の電力制御システムは、外部機器とデータの送受信を行う通信部と、通信部の通信状態を監視する監視部と、外部機器から受信した制御値及び制御の初期設定値を記憶する記憶部とを有し、監視部が、通信部の通信が切断された状態を確認した場合に、外部機器から受信した制御値を初期設定値に段階的に近づける制御を行う制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、サーバと需要家設備の通信装置とのネットワーク接続が切断された場合に適切な処理を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電力制御システムを含む一連の制御処理の概要を示す説明図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る電力制御システムの構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る電力制御処理の具体例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る電力制御処理の具体例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る電力制御処理の具体例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る電力制御システムが行う処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施形態に係る制御部における処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本願に係る電力制御システムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により本願に係る電力制御システムが限定されるものではない。
【0009】
〔1.はじめに〕
図1は、実施形態に係る電力制御システムを含む一連の制御処理の概要を示す説明図である。
図1の例に示すシステムは、電力制御システム10の各構成要素を有するDR用ゲートウェイと、外部のサーバである外部機器20と、現場制御装置30とから構成される。
【0010】
図1において、外部機器20に実装された設備制御アプリ―ケーションは、ネットワークを介して、需要家現場の制御対象設備40の設備を制御する。具体的には、設備制御アプリケーションから送信される制御命令は、需要家現場に存在する電力制御システム10(DR用ゲートウェイ)に送信され、電力制御システム10は、制御命令の一部である制御値を現場制御装置30に伝送する。
【0011】
その後、現場制御装置30は、受信した制御値の内容に応じて、制御対象設備40の制御を行う。なお、制御命令とは、例えば、制御対象設備40の制御を行う際の制御値の他に、制御終了時間、処理タイプ、制御値差の閾値が含まれる。
【0012】
ここで、外部機器20と電力制御システム10との通信が正常に行われている場合には、現場制御装置30は、外部機器20から送信される制御値を随時取得し、制御対象設備40の制御を行うが、外部機器20と電力制御システム10との通信が切断された場合には、現場制御装置30は、制御値を取得することができなくなるため、制御対象設備40の制御を行うことができなくなる。
【0013】
本実施形態に係る電力制御システム10は、上述の場合であっても適切な処理を行うことを目的として発明されたものであり、サーバである外部機器20と電力制御システム10との通信が切断された場合であっても、適切な処理を行うことができるという効果を奏する。
【0014】
電力制御システム10は、外部機器20とデータの送受信を行い、通信状態を監視する。そして、電力制御システム10は、外部機器20から受信した制御値及び制御の初期設定値を記憶し、通信が切断された状態を確認された場合に、外部機器20から受信した制御値を初期設定値に段階的に近づける制御を行う。
【0015】
まず、電力制御システム10は、外部機器20とデータの送受信を行い、通信状態を監視する。例えば、電力制御システム10は、外部機器20から制御対象設備40の制御値、制御終了時間、処理タイプ、設定値差の閾値の情報を受信し、また、定周期で外部機器20との通信を行い、一定時間以上通信ができない状態が続いたか否かによって、通信が切断されたか否かを判断することにより、通信状態の監視を行う。
【0016】
次に、電力制御システム10は、外部機器20から受信した制御値及び制御の初期設定値を記憶する。例えば、電力制御システム10は、外部機器20から受信した制御対象設備40の制御値と、現場制御装置30から取得した、制御が行われる前に制御対象設備40に設定されていた初期設定値とを記憶する。
【0017】
その後、電力制御システム10は、通信が切断された状態を確認された場合に、外部機器20から受信した制御値を初期設定値に段階的に近づける制御を行う。例えば、電力制御システム10は、外部機器20と一定時間以上通信ができない状態が続いた場合に、制御対象設備40の処理タイプに応じて、後述する緊急復旧パターンまたは制御継続パターンにより、制御値を初期設定値に段階的に近づける制御を制御対象設備40に対して行う。
【0018】
外部機器20は、例えば、DR用の設備制御アプリケーションが実装されているクラウド内サーバである。外部機器20は、複数の需要家現場のDR用ゲートウェイと接続され、設備制御アプリケーションにより、各需要家現場の制御対象設備40の制御を行う。
【0019】
現場制御装置30は、需要家現場に存在する複数の制御対象設備40の設定値の変更等を行う情報処理装置であり、例えば、コンピュータ等により構成される。現場制御装置30は、電力制御システム10と通信可能に接続され、制御値や初期設定値等の情報の送受信を行う。
【0020】
制御対象設備40は、需要家現場に設置されたDRの制御対象となる設備であり、例えば、熱源機器等の設備である。DR用の設備制御アプリケーションにより、制御対象設備40の設定値を変更し、稼働状況を調節することで、使用電力の節約が行われる。
【0021】
〔2.電力制御システム10の構成〕
次に、
図2を参照し、
図1に示した電力制御システム10の構成を説明する。
図2は、実施形態に係る電力制御システムの構成例を示す図である。
図2に示すように、実施形態に係る電力制御システム10は、通信部11と、監視部12と、制御部13と、記憶部14とを有する。また、電力制御システム10と外部機器20及び電力制御システム10と現場制御装置30は通信可能に接続される。
【0022】
記憶部14は、外部機器20から受信した制御値及び制御の初期設定値を記憶する。例えば、記憶部14は、外部機器20から受信した制御対象設備40についての制御値と、現場制御装置30から取得した、制御が行われる直前に制御対象設備40に設定されていた初期設定値とを記憶する。なお、記憶部14は、後述する監視部12及び制御部13による各種処理に必要なデータ及びプログラムを格納し、RAM(Random Access Memory)やハードディスク等の記憶装置によって実現される。
【0023】
また、記憶部14は、制御の残り時間及び予め設定した制御時間の閾値を記憶してもよい。例えば、記憶部14は、外部機器20から送信される制御終了時間と現在時刻とから算出された制御の残り時間を記憶する。さらに、記憶部14は、例えば、予め外部から設定された制御時間の閾値を記憶する。ここで、制御時間の閾値は、後述する制御部13の制御継続パターンにおいて、通信切断直前の制御値を維持する時間を判断する処理に使用される。
【0024】
さらに、記憶部14は、予め設定した制御値の閾値を記憶してもよい。例えば、記憶部14は、予め外部から設定された制御値の閾値を記憶する。ここで、制御値の閾値は、後述する制御部13による制御値を初期設定値に段階的に近づける処理において、段階的に近づけることを要しない程の制御値差であるか否かを判断する処理に使用される。
【0025】
また、記憶部14は、緊急停止に要する時間を記憶してもよい。例えば、記憶部14は、予め外部から設定された緊急停止に要する時間を記憶する。ここで、緊急停止に要する時間は、電力制御システム10に予め設定される値であり、後述する制御部13において、制御の残り時間との比較により、段階的に制御値を変更するか否かを判断する処理に使用される。
【0026】
通信部11は、外部機器20とデータの送受信を行う。例えば、通信部11は、NIC(Network Interface Card)等によって実現され、前述のクラウド内サーバ等の外部機器20とデータの送受信を行う。また、通信部11は、例えば、外部機器20の他に現場制御装置30とも接続され、データの送受信を行う。
【0027】
監視部12及び制御部13は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、電力制御システム10内部の記憶部14に記憶されている各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現され、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路により実現される。
【0028】
監視部12は、通信部11の通信状態を監視する。例えば、監視部12は、通信部11と外部機器20との通信が定周期で行われている際に、一定時間以上通信部11と外部機器20との通信が行われていない場合に、通信部11と外部機器20との通信が切断されたと判断する。そして、監視部12は、例えば、通信が切断されたと判断した場合に、後述する制御部13に、通信が切断されたことを通知する。
【0029】
制御部13は、監視部12が、通信部11の通信が切断された状態を確認した場合に、外部機器20から受信した制御値を初期設定値に段階的に近づける制御を行う。例えば、制御部13は、監視部12から、通信部11と外部機器20との通信が切断されたと通知された場合に、制御中の制御対象設備40の処理タイプを参照し、処理タイプに応じて外部機器20から受信した制御値を初期設定値に段階的に近づける制御を行う。なお、制御に使用される制御値は、外部機器20から受信した最新の制御値であってもよいし、過去に受信した制御値であってもよい。
【0030】
ここで、処理タイプとは、制御対象設備40の種類等に応じて予め設定されるものであり、制御が開始される前に、外部機器20から受信し、記憶部14に格納されているものとする。また、例えば、処理タイプには緊急復旧パターンと制御継続パターンの2種類があり、緊急復旧パターンは、通信が切断されたことを確認した直後、制御値を初期設定値に段階的に近づける制御を行う。一方、制御継続パターンは、通信が切断されたことを確認してから、制御の残り時間に応じて、一定時間制御値での制御を継続した後、制御値を初期設定値に段階的に近づける制御を行う。
【0031】
また、制御部13は、制御の残り時間が制御時間の閾値より大きい場合、外部機器20から受信した通信切断直前の制御値で制御し、外部機器20から受信した通信切断直前の制御値を初期設定値に段階的に近づける制御を行ってもよい。
【0032】
例えば、制御部13は、前述の制御継続パターンの処理内容として、前述の制御の残り時間が、前述の制御時間の閾値より大きい場合に、外部機器20から受信した通信切断直前の制御値を維持して制御を行う。その後、制御部13は、一定周期で、制御の残り時間と制御時間の閾値を比較し、制御の残り時間が制御時間の閾値よりも小さくなった場合に、制御値を初期設定値に段階的に近づける制御を行う。
【0033】
さらに、制御部13は、通信切断直前の制御値を初期設定値に段階的に近づける制御において、外部機器20から受信した通信切断直前の制御値と初期設定値との差分を計算し、差分を制御の残り時間の出力回数で割ることで1出力当たりの制御量を決定してもよい。
【0034】
例えば、制御部13は、通信切断直前の制御値を初期設定値に段階的に近づける制御において、外部機器20から受信した通信切断直前の制御値から初期設定値の差分を計算し、計算された差分を制御の残り時間の出力回数で割ることで、1出力当たりで変更する制御量を決定する。ここで、出力回数は、制御の残り時間を出力周期で割った値であり、出力周期は、制御が行われる前に予め設定され、記憶部14に記憶されているものとする。
【0035】
ここで、前述の処理について、以下の具体例により説明する。例えば、通信切断直前の制御値が「50%」、初期設定値が「70%」、制御の残り時間が「4分」、出力周期が「1分」であるものとする。この場合は、通信切断直前の制御値と初期設定値の差分は「20%」と計算され、出力回数は「4回」となるため、1出力当たりの制御量は「5%」となる。
【0036】
また、制御部13は、通信切断直前の制御値を初期設定値に段階的に近づける制御において、外部機器20から受信した通信切断直前の制御値と初期設定値との差分を計算し、差分が予め設定した制御値の閾値よりも小さい場合には、初期設定値で制御を行ってもよい。
【0037】
例えば、制御部13は、通信切断直前の制御値を初期設定値に段階的に近づける制御において、外部機器20から受信した通信切断直前の制御値から初期設定値の差分を計算し、計算された差分が前述の予め設定された制御値の閾値よりも小さい場合には、初期設定値で制御を行う。
【0038】
ここで、前述の処理について、以下の具体例により説明する。例えば、通信切断直前の制御値が「65%」、初期設定値が「70%」、予め設定された制御値の閾値が「10%」であるものとする。この場合は、通信切断直前の制御値と初期設定値の差分は「5%」と計算され、予め設定された制御値の閾値である「10%」よりも小さいため、制御部13は、初期設定値である「70%」により制御を行う。
【0039】
さらに、制御部13は、通信切断直前の制御値を初期設定値に段階的に近づける制御において、制御の残り時間が緊急停止に要する時間より短い場合には、初期設定値で制御を行ってもよい。
【0040】
例えば、制御部13は、通信切断直前の制御値を初期設定値に段階的に近づける制御において、制御の残り時間が前述の緊急停止に要する時間よりも短い場合には、初期設定値により制御を行う。一方、制御部13は、例えば、制御の残り時間が前述の緊急停止に要する時間よりも長い場合には、残り時間に応じて、段階的に初期設定値に近付ける処理を行うものとする。
【0041】
〔3.電力制御処理の具体例〕
ここで、
図3から
図5を参照し、電力制御システム10による、DRの制御開始時の処理から、電力制御システム10を有するDR用ゲートウェイと外部機器であるクラウド内サーバとの接続が切断された場合の処理の具体例について説明する。
図3から
図5は、実施形態に係る電力制御処理の具体例を示す図である。
【0042】
まず、
図3を参照し、制御開始時から制御中までの処理について説明する。まず、クラウド内サーバアプリケーションは、制御の対象となった需要家現場(ビルNo.1)の制御対象熱源についてのポイントアドレス「000.20001.38」と、制御値「30%」と、制御終了時間「2022-02-02 12:00」とをDR用ゲートウェイに送信し、DR用ゲートウェイは、当該情報を記憶部14に格納する。
【0043】
そして、DR用ゲートウェイは、現場制御装置30から制御対象熱源の制御の開始時に設定されている初期設定値「70%」を取得し記憶部14に格納する。その後、クラウド内サーバアプリケーションは、DR用ゲートウェイを介して、現場制御装置30により制御対象熱源の初期設定値「70%」を制御値「30%」に変更する制御を行う。
【0044】
次に、
図4を参照して、クラウド内サーバアプリケーションとDR用ゲートウェイの通信が切断された場合における緊急復旧パターンの処理について説明する。なお、
図4の例では、制御対象熱源の処理タイプが「緊急復旧」と予め設定されているものとする。DR用ゲートウェイは、クラウド内サーバアプリケーションと一定時間通信ができない状態が続いた場合に、制御対象熱源の処理タイプを参照し、緊急復旧パターンの処理を行う。
【0045】
具体的には、DR用ゲートウェイは、通信切断が確認された場合に、制御対象熱源の初期設定値「70%」と制御値「30%」との差分「40%」を算出し、制御終了までの残り時間と出力周期とにより、「30%→40%→50%→60%→70%」といった流れで複数回に分けて段階的に制御値を変更する制御を行う。
【0046】
次に、
図5を参照し、クラウド内サーバアプリケーションとDR用ゲートウェイの通信が切断された場合における制御継続パターンの処理について説明する。制御継続パターンにおいて、制御値を複数回に分けて段階的に変更する制御を行う処理は、前述の緊急復旧パターンと同様であるが、通信切断が確認された場合に制御終了時間を参照し、一定時間制御値を維持する処理を行う点が異なる。
【0047】
具体的には、DR用ゲートウェイは、クラウド内サーバアプリケーションとの通信の切断が確認された場合に、制御終了時間「2022-02-02 12:00」と、通信切断確認時刻「2022-02-02 11:50」とを参照し、制御の残り時間「0:10」を計算する。そして、DR用ゲートウェイは、予め設定された制御時間の閾値「0:05」と制御の残り時間「0:10」とを比較する。
【0048】
その結果、制御の残り時間の方が大きいため、制御時間の閾値「0:05」までの5分間は制御値「30%」で制御を行う。その後、DR用ゲートウェイは、制御の残り時間が「0:05」となったときに、前述の緊急復旧パターンと同様に、制御値「30%」を複数回に分けて段階的に初期設定値「70%」まで変更する制御を行う。
【0049】
〔4.電力制御システムによる処理の一例〕
次に、
図6及び
図7を用いて、電力制御システム10よる処理について説明する。
図6は、実施形態に係る処理の一例を示すフローチャートである。
図7は、実施形態に係る制御部13における処理の一例を示すフローチャートである。
【0050】
まず、
図6を参照し、電力制御システム10の処理の一例について説明する。電力制御システム10が、外部機器20と通信が可能である場合には(ステップS101;Yes)、通信部11は、外部機器20とデータを送受信する(ステップS102)。一方、電力制御システム10が、外部機器20と通信が可能でない場合には(ステップS101;No)、電力制御システム10は、外部機器20と通信が可能となるまで待機する。
【0051】
その後、監視部12は、通信部11の通信状態を監視する(ステップS103)。そして、記憶部14は、外部機器20から受信した制御値及び制御の初期設定値を記憶する(ステップS104)。その後、監視部12が通信部11の通信が切断された状態を確認した場合には(ステップS105;Yes)、制御部13は、外部機器20から受信した制御値から初期設定値に段階的に近づける制御を行い(ステップS106)、工程を終了する。
【0052】
一方、監視部12が通信部11の通信が切断された状態を確認していない場合には、電力制御システム10は、外部機器20との通信が終了したか否かを判断する(ステップS107)。外部機器20との通信が終了した場合には(ステップS107;Yes)、電力制御システム10は、工程を終了する。一方、外部機器20との通信が終了していない場合には(ステップS107;No)、電力制御システム10は、ステップS105に戻り処理を続ける。
【0053】
次に、
図7を参照し、電力制御システム10の制御部13における外部機器20から受信した制御値から初期設定値に段階的に近づける制御(ステップS106)の処理の一例について詳細に説明する。制御部13は、まず、制御値の閾値を取得する(ステップS106-1)。そして、制御部13は、初期設定値と制御値との差である制御値差を計算する(ステップS106-2)。
【0054】
その後、制御部13は、制御値差が予め設定された制御値の閾値以上か否かを判断する(ステップS106-3)。制御値差が予め設定された制御値の閾値以上である場合には(ステップS106-3;Yes)、制御部13は、制御終了時間と現在時刻との差である、制御の残り時間を計算する(ステップS106-4)。その後、制御部13は、制御の残り時間が緊急停止時間以上か否かを判断する(ステップS106-5)。
【0055】
制御の残り時間が緊急停止時間(緊急停止に要する時間)以上である場合には(ステップS106-5;Yes)、制御部13は、制御の残り時間を出力回数で割った値である出力回数を計算する(ステップS106-6)。その後、制御部13は、制御値差を残りの出力回数で割った値である1回の出力値差を計算する(ステップS106-7)。そして、制御部13は、1回の出力値差を使用して、出力回数分の制御値変更を行い(ステップS106-8)、工程を終了する。
【0056】
一方、制御値差が制御値の閾値よりも小さい場合(ステップS106-3;No)、または、制御の残り時間が緊急停止時間よりも小さい場合には(ステップS106-5;No)、制御部13は、初期設定値に制御値変更を行い(ステップS106-9)、工程を終了する。
【0057】
〔5.実施形態の効果〕
前述してきたように、本実施形態に係る電力制御システム10は、外部機器20とデータの送受信を行う通信部11と、通信部11の通信状態を監視する監視部12と、外部機器20から受信した制御値及び制御の初期設定値を記憶する記憶部14とを有し、監視部12が、通信部11の通信が切断された状態を確認した場合に、外部機器20から受信した制御値を初期設定値に段階的に近づける制御を行う制御部13を備える。
【0058】
これにより、電力制御システム10は、外部機器20と通信部11との通信が切断された場合であっても、本来外部機器20から取得する制御値を模擬的に設定し制御を行うことにより、電力制御システム10を有する需要家装置単独で適切な処理を行うことができるという効果を奏する。
【0059】
また、電力制御システム10の記憶部14は、さらに制御の残り時間及び予め設定した制御時間の閾値を記憶し、制御部13は、制御の残り時間が制御時間の閾値より大きい場合、外部機器20から受信した通信切断直前の制御値で制御し、外部機器20から受信した通信切断直前の制御値を初期設定値に段階的に近づける制御を行う。
【0060】
これにより、電力制御システム10は、外部機器20と通信部11との通信が切断された場合であっても、制御の残り時間が制御時間の閾値以下となるまでは、電力制御システム10を有する需要家装置単独で電力制御を継続できる。
【0061】
さらに、電力制御システム10の制御部13は、通信切断直前の制御値を初期設定値に段階的に近づける制御において、外部機器20から受信した通信切断直前の制御値と初期設定値との差分を計算し、差分を制御の残り時間の出力回数で割ることで1出力当たりの制御量を決定する。
【0062】
これにより、電力制御システム10は、外部機器20と通信部11との通信が切断された場合であっても、制御の残り時間に応じて、1出力当たりの適切な制御量を算出し、通信切断直前の制御値から初期設定値まで徐々に変更する制御を適切に行うことができるという効果を奏する。
【0063】
また、電力制御システム10の記憶部14は、通信切断直前の制御値を初期設定値に段階的に近づける制御において、さらに予め設定した制御値の閾値を記憶し、制御部13は、外部機器20から受信した通信切断直前の制御値と初期設定値との差分を計算し、差分が閾値よりも小さい場合には、初期設定値で制御を行う。
【0064】
これにより、電力制御システム10は、外部機器20と通信部11との通信が切断された場合であっても、予め設定した制御値の閾値よりも通信切断直前の制御値と初期設定値との差分が小さい場合には、段階的に制御値を変更しなくてもよいと判断し、制御処理の一部の手順を省いて、適切に制御を行うことができるという効果を奏する。
【0065】
さらに、電力制御システム10の記憶部14は、通信切断直前の制御値を初期設定値に段階的に近づける制御において、さらに緊急停止に要する時間を記憶し、制御部13は、制御の残り時間が緊急停止に要する時間より短い場合には、初期設定値で制御を行う。
【0066】
これにより、電力制御システム10は、外部機器20と通信部11との通信が切断された場合であっても、制御の残り時間が緊急停止に要する時間よりも短い場合には、制御の残り時間で段階的に制御値を変更する処理をすることができないと判断し、制御処理の一部の手順を省いて、適切に制御を行うことができるという効果を奏する。
【0067】
[6.その他]
前述の実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部又は一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。例えば、各図に示した各種情報は、図示した情報に限られない。
【0068】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の通り構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【0069】
前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述してきた実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0070】
また、前述してきた「部(section、module、unit)」は、「手段」や「回路」等に読み替えることができる。例えば、制御部は、制御手段や制御回路に読み替えることができる。
【0071】
以上、本発明の実施形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【符号の説明】
【0072】
10 電力制御システム
11 通信部
12 監視部
13 制御部
14 記憶部
20 外部機器
30 現場制御装置
40 制御対象設備