(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011154
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】超音波接合体
(51)【国際特許分類】
H01R 4/02 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
H01R4/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112926
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【弁理士】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】三浦 大知
【テーマコード(参考)】
5E085
【Fターム(参考)】
5E085BB01
5E085BB14
5E085CC03
5E085DD04
5E085EE03
5E085FF08
5E085JJ36
(57)【要約】
【課題】超音波接合装置の加圧面の摩耗を抑制することを目的とする。
【解決手段】超音波接合体10は、第1接合物12と、第1接合物に超音波接合された第2接合物22と、を備え、第1接合物の外向き表面が、算術平均粗さ0.3以上、25.0以下の粗面領域17aを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1接合物と、
前記第1接合物に超音波接合された第2接合物と、
を備え、
前記第1接合物の外向き表面が、算術平均粗さ0.3以上、25.0以下の粗面領域を含む、超音波接合体。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波接合体であって、
前記第1接合物の表面は、前記第2接合物の表面よりも硬い、超音波接合体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の超音波接合体であって、
前記第2接合物のうちの外向き表面が、前記粗面領域の算術平均粗さよりも大きい算術平均粗さである反対側粗面領域を含む、超音波接合体。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の超音波接合体であって、
前記第1接合物がニッケル表面を含み、
前記第2接合物がアルミニウム表面又はアルミニウム合金表面を含む、超音波接合体。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の超音波接合体であって、
前記第1接合物は端子であり、
前記第2接合物は前記端子に超音波接合された導電線である、超音波接合体。
【請求項6】
第1接合物と、
前記第1接合物に超音波接合された第2接合物と、
を備え、
前記第1接合物の外向き表面が粗面領域を含み、
前記第2接合物の外向き表面が反対側粗面領域を含み、
前記粗面領域の算術平均粗さが、前記反対側粗面領域の算術平均粗さよりも小さい、超音波接合体。
【請求項7】
請求項6に記載の超音波接合体であって、
前記第1接合物の表面は、前記第2接合物の表面よりも硬い、超音波接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、超音波振動するホーンと、このホーンに対向する表面に複数の凸部を有するアンビルとを備える超音波接合装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここにおいて、超音波接合装置の加圧面の摩耗を抑制することが望まれている。
【0005】
そこで、本開示は、超音波接合装置の加圧面の摩耗を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の超音波接合体は、第1接合物と、前記第1接合物に超音波接合された第2接合物と、を備え、前記第1接合物の外向き表面が、算術平均粗さ0.3以上、25.0以下の粗面領域を含む、超音波接合体である。
【0007】
また、本開示の他の超音波接合体は、第1接合物と、前記第1接合物に超音波接合された第2接合物と、を備え、前記第1接合物の外向き表面が粗面領域を含み、前記第2接合物の外向き表面が反対側粗面領域を含み、前記粗面領域の算術平均粗さが、前記反対側粗面領域の算術平均粗さよりも小さい、超音波接合体である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、超音波接合装置の加圧面の摩耗を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は実施形態に係る端子付電線を示す側面図である。
【
図5】
図5は超音波接合作業例を示す説明図である。
【
図6】
図6は他の例に係る超音波接合作業例を示す説明図である。
【
図7】
図7は他の例に係る超音波接合作業例を示す説明図である。
【
図8】
図8は超音波接合後における端子の外向き表面を示すイメージ図である。
【
図9】
図9は超音波接合後における端子の外向き表面を示すイメージ図である。
【
図10】
図10は条件1及び条件2のそれぞれで複数祭超音波接合を行った場合の接合強度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0011】
本開示の超音波接合体は、次の通りである。
【0012】
(1)第1接合物と、前記第1接合物に超音波接合された第2接合物と、を備え、前記第1接合物の外向き表面が、算術平均粗さ0.3以上、25.0以下の粗面領域を含む、超音波接合体である。
【0013】
この超音波接合体によると、粗面領域は算術平均粗さ0.3以上、25.0以下であるため、粗面領域を加圧するための第1加圧面も算術平均粗さ0.3以上、25.0以下の粗面であることが考えられる。第1加圧面が、算術平均粗さ0.3以上、25.0以下の粗面であれば、当該第1加圧面と第1接合物との間での滑りを抑制しつつ、当該第1加圧面の摩耗を抑制できる。これにより、超音波接合するための超音波接合装置の加圧面の摩耗を抑制することができる。
【0014】
(2)(1)の超音波接合体であって、前記第1接合物の表面は、前記第2接合物の表面よりも硬くてもよい。
【0015】
第1接合物の表面が、第2接合物の表面よりも硬ければ、当該第1接合物を加圧する第1加圧面が摩耗し易い可能性がある。硬い第1接合物を加圧するための第1加圧面を、算術平均粗さ0.3以上、25.0以下の粗面とすることで、当該第1加圧面の摩耗抑制と滑り抑制とを両立し易い。
【0016】
(3)(1)又は(2)の超音波接合体であって、前記第2接合物のうちの外向き表面が、前記粗面領域の算術平均粗さよりも大きい算術平均粗さである反対側粗面領域を含んでもよい。
【0017】
この場合、第2接合物と、当該第2接合物を加圧する第2加圧面との間で、より滑り難くすることができる。
【0018】
(4)(1)から(3)のいずれか1つの態様に係る超音波接合体であって、前記第1接合物がニッケル表面を含み、前記第2接合物がアルミニウム表面又はアルミニウム合金表面を含んでもよい。
【0019】
ニッケル表面はアルミニウム表面又はアルミニウム合金表面よりも硬い。このような場合において、ニッケル表面を加圧するための第1加圧面を、算術平均粗さ0.3以上、25.0以下の粗面とすることで、当該第1加圧面の摩耗抑制と滑り抑制とを両立し易い。
【0020】
(5)(1)から(4)のいずれか1つの態様に係る超音波接合体であって、前記第1接合物は端子であり、前記第2接合物は前記端子に超音波接合された導電線であってもよい。
【0021】
この場合、端子に導電線を超音波接合する際に、第1加圧面と端子との間での滑りを抑制しつつ、当該第1加圧面の摩耗を抑制できる。
【0022】
また、本開示の超音波接合体は、次の通りである。
【0023】
(6)第1接合物と、前記第1接合物に超音波接合された第2接合物と、を備え、前記第1接合物の外向き表面が粗面領域を含み、前記第2接合物の外向き表面が反対側粗面領域を含み、前記粗面領域の算術平均粗さが、前記反対側粗面領域の算術平均粗さよりも小さい、超音波接合体である。
【0024】
この超音波接合体によると、粗面領域の算術平均粗さが反対側粗面領域の算術平均粗さよりも小さいため、第1接合物を加圧するための第1加圧面の摩耗を抑制できる。また、反対側粗面領域の算術平均粗さは粗面領域の算術平均粗さよりも大きいため、第2接合物と当該第2接合物を加圧するための第2加圧面との間で滑り難くすることができる。
【0025】
(7)(6)の超音波接合体であって、前記第1接合物の表面は、前記第2接合物の表面よりも硬くてもよい。
【0026】
このように第1接合物の表面が、第2接合物の表面よりも硬ければ、第1加圧面が摩耗し易い可能性がある。そこで、粗面領域の算術平均粗さが反対側粗面領域の算術平均粗さよりも小さければ、第1接合物を加圧するための第1加圧面の摩耗が抑制される。これに対して、柔らかい第2接合物に関しては、反対側粗面領域の算術平均粗さを粗面領域の算術平均粗さよりも大きくすることで、第2接合物と当該第2接合物を加圧するための第2加圧面との間で滑りを有効に抑制できる。これにより、第1加圧面及び第2加圧面のそれぞれで、滑りの抑制と摩耗の抑制とを両立し易い。
【0027】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の超音波接合体の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0028】
[実施形態1]
以下、実施形態に係る超音波接合体について説明する。本実施形態では、超音波接合体が端子付電線である場合が説明される。
図1は端子付電線10を示す側面図である。
図2は端子付電線10を示す平面図である。
図3は端子付電線10を示す底面図である。
図4は
図2のIV-IV線断面図である。説明の便宜上、各図において、表面の凹凸が誇張して描かれている場合がある。
【0029】
端子付電線10は、端子12と電線20とが超音波接合された接合体である。
【0030】
端子12は、相手側接続部14と、芯線接続部16とを備える。本実施形態において、端子12は、第1接合物の一例である。
【0031】
相手側接続部14は、電線20の接続対象に接続される部分である。本実施形態では、相手側接続部14は、孔14hを有する板状に形成されている。相手側接続部14は、接続対象に対してねじ止等によって接続されることが考えられる。相手側接続部は、接続対象に対して挿入接続又は外嵌め接続される場合も考えられる。
【0032】
芯線接続部16は、電線20の芯線22が超音波接合される部分である。本実施形態では、芯線接続部16は、板状に形成されている。相手側接続部14と芯線接続部16とは、細長い板状をなすように連続している。芯線接続部16に、芯線22又は絶縁被覆24に圧着されるかしめ片が形成されていてもよい。
【0033】
端子12は、金属板により形成されている。端子12の表面はニッケル表面であってもよい。例えば、端子12は、例えば、銅又は銅合金等によって形成された母材にニッケルめっきを施した部材であってもよい。また、例えば、端子12の全体がニッケル材によって形成されていてもよい。なお、端子12がニッケル表面を有していることは必須ではない。
【0034】
電線20は、芯線22と、芯線22を覆う絶縁被覆24とを備える。本実施形態では、芯線22は、複数の素線22aの集合線である。芯線22は、単芯線であってもよい。本実施形態において、芯線22は、導電線の一例であり、第2接合物の一例でもある。絶縁被覆24は、例えば、芯線22の周りに押出被覆された絶縁樹脂である。電線20の端部において、芯線22の端部が露出している。
【0035】
芯線22の表面は、アルミニウム表面又はアルミニウム合金表面であってもよい。例えば、芯線22がアルミニウム線又はアルミニウム合金線によって形成されていることが想定される。
【0036】
端子12の表面は、芯線22の表面よりも硬くてもよい。ここでの硬さは、例えば、JIS Z 2244-1:2020によって定義されるビッカース硬さによって評価されてもよい。上記のように、端子12の表面がニッケル表面であり、かつ、芯線22の表面がアルミニウム表面又はアルミニウム合金表面である例は、端子12の表面が芯線22の表面よりも硬い場合の一例である。
【0037】
芯線22の端部が端子12の芯線接続部16の一方主面に重ね合わされた状態で、芯線接続部16と芯線22とが超音波接合されている。
図5は超音波接合装置50によって芯線接続部16と芯線22とを超音波接合する作業例を示す説明図である。
【0038】
すなわち、超音波接合装置50は、アンビル52と、ホーン54とを備える。アンビル52は、第1加圧面53を有している。ホーン54は、第1加圧面53に対向する第2加圧面55を有している。
【0039】
第1加圧面53は、上向き面であり、この上に芯線接続部16が載置される。この芯線接続部16上に芯線22の端部が重ね合わされる。第2加圧面55は、第1加圧面53の上側で当該第1加圧面53に対向する下向き面である。重ね合わされた芯線接続部16と芯線22の端部とが、第1加圧面53と第2加圧面55との間に挟込まれて加圧される。
【0040】
芯線接続部16のうち外向き表面の少なくとも一部、つまり、芯線22とは反対側の面の少なくとも一部は、第1加圧面53による加圧力を受ける第1加圧受面17である。第1加圧受面17は、ニッケル表面であってもよい。また、芯線22のうち外向き表面の少なくとも一部、つまり、芯線接続部16とは反対側の面の少なくとも一部は、第1加圧受面17とは反対側で、第2加圧面55による加圧力を受ける第2加圧受面23である。第2加圧受面23はアルミニウム表面又はアルミニウム合金表面であってもよい。
【0041】
例えば、平面視における芯線接続部16と芯線22とが重なる領域において、芯線接続部16の外向き部分が第1加圧受面17であり、芯線22の外向き部分が第2加圧受面23である。
【0042】
上記加圧状態で、超音波振動子による振動がホーン54に印加される。ホーン54の振動方向は、第2加圧面55に沿った方向である。超音波振動は、第2加圧面55と第2加圧受面23との接触箇所を介して芯線22に伝わり、芯線22が超音波振動する。芯線接続部16は、第1加圧面53と第1加圧受面17との接触箇所を介してアンビル52に対して振動しないように支持されている。このため、静止している芯線接続部16に対して芯線22が超音波振動し、芯線接続部16と芯線22とが超音波接合される。
【0043】
超音波接合時において、芯線接続部16が静止状態に保たれるように、第1加圧面53が第1加圧受面17に押付けられることから、第1加圧受面17には、第1加圧面53による加圧の痕跡が残っている面であることが考えられる。具体的には、第1加圧受面17には、当該第1加圧面53の表面形状が転写されていることが考えられる。
【0044】
超音波接合時において、芯線22がホーン54と共に超音波振動するように、第2加圧面55が第2加圧受面23に押付けられることから、第2加圧受面23には、第2加圧面55による加圧の痕跡が残っている面であることが考えられる。具体的には、第2加圧受面23には、当該第2加圧面55の表面形状が転写されていることが考えられる。
【0045】
超音波接合時においては、加圧面と加圧受面との間おいて、滑りを抑制することが要請される。滑りを抑制するためには、大きく尖った複数の突起を加圧面に設けることが考えられる。しかしながら、大きく尖った複数の突起を有する加圧面では、各突起が摩耗し易く、滑り止め効果を維持し難い場合が生じ得る。
【0046】
例えば、
図6に示すように、第1加圧面53に対応する第1加圧面153に、大きく尖った複数の突起153aを形成するとする。複数の突起153aは、例えば、ローレット加工により形成される。突起153aが尖っている初期段階においては、突起153aが芯線接続部16に大きく食込むことができる。このため、突起153aが尖っている初期段階では、第1加圧面153と芯線接続部16との間で滑りが十分に抑制される。しかしながら、この場合、第1加圧面153のごく一部が突起153aの先端のみで芯線接続部16に接触することになる。このため、超音波接合を繰返して行うと、
図7に示すように、第1加圧面153には、先端が摩耗した突起153bが形成される。超音波振動によって摩耗した突起153bの先端は、芯線接続部16を滑り止めし難い程に平滑となった面となっていることが考えられるため、第1加圧面153と芯線接続部16との間で滑り止め効果が不十分となる。この場合、芯線22の超音波振動と一緒に芯線接続部16が振動することとなり、十分な接合強度が得られない可能性がある。
【0047】
所望の滑り止め抑制効果を長期に亘って維持し易くするための構成が、以下に説明される。
【0048】
加圧面の摩耗を抑制するため、第1加圧受面17は、算術平均粗さが0.3以上、25.0以下である粗面領域17aを含む。なお、算術平均粗さRaは、例えば、ISO 25178によって定義される面粗さである。
【0049】
つまり、上記したように、第1加圧受面17には、当該第1加圧受面17を加圧するための第1加圧面53の表面形状が転写されていることが考えられる。このため、第1加圧面53の算術平均粗さは、0.3以上、25.0以下であることが考えられる。
【0050】
かかる第1加圧面53は、例えば、アンビル52の第2加圧面55を形成する際に、所望の粗さが残るように研磨したり、ブラスト加工したりすることによって形成され得る。第1加圧面53が押付けられた第1加圧受面17には、細かい凹み17gが形成されることが想定される(
図4参照)。
【0051】
第1加圧面53の算術平均粗さが25.0以下であれば、第1加圧面53において部分的に大きく突出する部分が少なくなり、第1加圧面53が比較的大きな接触面積で第1加圧受面17に接すると考えられる。このため、超音波接合時において、第1加圧面53の摩耗が生じ難く、超音波接合装置50の摩耗が抑制される。また、第1加圧面53の算術平均粗さが0.3以上であれば、第1加圧面53と第1加圧受面17との間で適度な摩擦力が得られる。このため、超音波接合時において、第1加圧面53に対して第1加圧受面17が滑り難く、芯線接続部16を静止状態に保ちやすい。これにより、静止状態の芯線接続部16と、超音波振動する芯線22との間で超音波振動による接合が良好に実施される。
【0052】
上記したように、芯線22の表面よりも端子12の表面が硬ければ、第2加圧面55よりも第1加圧面53が摩耗し易い可能性がある。例えば、端子12がニッケル表面を含み、芯線22がアルミニウム表面又はアルミニウム合金表面を含む場合である。
【0053】
上記のように、硬い第1加圧受面17が、算術平均粗さ0.3以上、25.0以下である粗面領域17aを含む構成とすることは、当該硬い第1加圧受面17を加圧するための第1加圧面53を、算術平均粗さ0.3以上、25.0以下の粗面とすることと考えることができる。これにより、当該第1加圧受面17を加圧する第1加圧面53の摩耗抑制と滑り抑制とを両立し易い。
【0054】
本実施形態では、主に第1加圧受面17と第1加圧面53との関係に着目し、当該第1加圧面53の摩耗を抑制するための構成が説明なされた。
【0055】
本第2加圧受面23の粗さについては、例えば第2加圧面55の摩耗し易さに応じて適宜設定され得る。例えば、第2加圧受面23の算術平均粗さは、粗面領域17aの算術平均粗さと同じであってもよいし、小さくてもよいし、大きくてもよい。
【0056】
芯線22のうちの外向き表面に位置する第2加圧受面23が、粗面領域17aの算術平均粗さよりも大きい算術平均粗さである反対側粗面領域23aを含んでいてもよい。
【0057】
例えば、ホーン54の第2加圧面55に四角錐状の複数の突起55aが縦横に並ぶように形成されていることが想定される。複数の突起55aは、例えば、ローレット加工によって形成されてもよい。この場合、当該突起55aの頂部が第2加圧受面23に食込むことが想定される。この場合、縦横に並ぶ突起55aの頂部の形状が反対側粗面領域23aに転写され、従って、当該反対側粗面領域23aには、凹み23gが縦横に並んで形成されることが想定される(
図2、
図4参照)。凹み23gは、突起55aが第2加圧受面に食込んで形成されるため、反対側粗面領域23aの算術平均粗さは、粗面領域17aの算術平均粗さよりも大きくなると考えられる。
【0058】
この場合、芯線22と第2加圧面55との間で、より滑り難くすることができる。これにより、芯線22側の滑りやすさに応じて、第2加圧面55の粗さを適切に調整できる。
【0059】
例えば、芯線22の表面が端子12の表面よりも柔らかければ、同じ形状の凹凸表面に対して芯線22は端子12よりも滑りやすいことが想定される。このため、仮に第1加圧面と第2加圧面とが同じ凹凸形状であれば、超音波接合時に、端子12側では滑りが生じないのに、芯線22側では滑りが生じてしまうことが考えられる。
【0060】
そこで、反対側粗面領域23aの算術平均粗さを、粗面領域17aの算術平均粗さよりも大きくする、つまり、第2加圧面55の算術平均粗さを、第1加圧面53の算術平均粗さよりも大きくしておくと、柔らかい芯線22側でも滑り難くすることができる。また、芯線22が柔らかければ、反対側粗面領域23aは摩耗し難い。
【0061】
よって、柔らかい反対側粗面領域23a側では、算術平均粗さを大きくしておくことで、滑り難くしつつ、第2加圧面55の摩耗を抑制できる。
【0062】
本実施形態において、第1接合物は端子12であり、第2接合物は芯線22である。このため、端子12に芯線22を超音波接合する際に、第1加圧面53と端子12との間での滑りを抑制しつつ、当該第1加圧面53の摩耗を抑制できる。これにより、端子12と芯線22とが安定した接合強度で接合された端子付電線10を安定的に得ることができる。
【0063】
<変形例>
第1加圧受面17が、算術平均粗さ0.3以上、25.0以下である粗面領域17aを含むことは必須ではない。
【0064】
上記したように、粗面領域17aの算術平均粗さが、反対側粗面領域23aの算術平均粗さよりも小さければ、端子12を加圧するための第1加圧面53の摩耗を抑制でき、かつ、芯線22と第2加圧面55との間で滑り難くすることができる。
【0065】
特に、端子12の表面が、芯線22の表面よりも硬ければ、第1加圧面53が摩耗し易い可能性がある。そこで、粗面領域17aの算術平均粗さが反対側粗面領域23aの算術平均粗さよりも小さければ、端子12を加圧するための第1加圧面53の摩耗が抑制される。これに対して、柔らかい芯線22に関しては、反対側粗面領域23aの算術平均粗さを粗面領域の算術平均粗さよりも大きくすることで、摩耗が生じ難い反対側粗面領域23a側で、芯線22と第2加圧面55との間で滑りを有効に抑制できる。
【0066】
本実施形態及び変形例では、第1接合物が端子12であり、第2接合物が導電線の一例である芯線22である場合が説明された。
【0067】
第1接合物が端子であり、第2接合物が導電線であることは必須ではない。例えば、第1接合物及び第2接合物の両方が端子であってもよいし、第1接合物及び第2接合物の両方が導電線であってもよい。導電線は、電線の芯線でなくてもよく、例えば、シールド線のシールド層、編組線等であってもよい。その他、第1接合物及び第2接合物は、端子、導電線の他、金属ケース、金属ブラケット等であってもよい。
【0068】
[変形例]
条件1として、算術平均粗さ0.3未満に加工された第1加圧面53を利用して超音波接合を行った。
図8は超音波接合後における端子12の外向き表面を示すイメージ図である。この場合、端子12の外向き表面には細い線状の跡160が残り、超音波接合時おいて第1加圧面53に対して端子12が超音波振動方向に滑っていることが推察される。
【0069】
条件2として、算術平均粗さ0.3以上に加工された第1加圧面53を利用して超音波接合を行った。
図9は超音波接合後における端子12の外向き表面を示すイメージ図である。この場合、端子12の外向き表面には細い点状の凹み161跡が残り、超音波接合時おいて第1加圧面53に対して端子12の滑りが抑制されていることが推察される。
【0070】
図10は条件1及び条件2のそれぞれで複数回の超音波接合を行った場合の接合強度の上限、下限及び平均を示す図である。同図に示すように、条件2の接合強度の分布範囲は、条件1の接合強度の分布範囲と比較して、大きくかつ狭い範囲に存在している。このため、条件2の場合において、超音波接合が良好になされることがわかる。
【0071】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【符号の説明】
【0072】
10 端子付電線
12 端子(第1接合物)
14 相手側接続部
14h 孔
16 芯線接続部
17 第1加圧受面(ニッケル表面)
17a 粗面領域
17g 凹み
20 電線
22 芯線(第2接合物、導電線)
22a 素線
23 第2加圧受面(アルミニウム表面、アルミニウム合金表面)
23a 反対側粗面領域
23g 凹み
24 絶縁被覆
50 超音波接合装置
52 アンビル
53 第1加圧面
54 ホーン
55 第2加圧面
55a、153a、153b 突起
153 第1加圧面