(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111543
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】弾性クローラ及び弾性クローラの断線検出方法
(51)【国際特許分類】
B62D 55/253 20060101AFI20240809BHJP
【FI】
B62D55/253 Z
B62D55/253 C
B62D55/253 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016115
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田(林) 優希
(57)【要約】
【課題】スチールコードの断線を容易に検出し、かつ、断線位置を簡易に特定する。
【解決手段】弾性クローラ11は、ゴム状弾性体からなり無端状に形成されたクローラ本体11aと、クローラ本体11aに内蔵され当該クローラ本体11aの周方向について巻回される抗張体40と、クローラ本体11aに内蔵され当該クローラ本体11aの周方向について間隔をおいて配置される複数の芯金30と、を備えている。弾性クローラ11は、抗張体40がクローラ本体11aの周方向に沿って螺旋状に巻回されたスチールコード41により構成される。弾性クローラ11では、スチールコード41が、当該スチールコード41の長さ方向についての一端部41a及び他端部41bと、一端部41a及び他端部41bの間に位置する中間部41cとが、それぞれ異なる芯金30と電気的に接続される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム状弾性体からなり無端状に形成されたクローラ本体と、
前記クローラ本体に内蔵され当該クローラ本体の周方向について巻回される抗張体と、
前記クローラ本体に内蔵され当該クローラ本体の周方向について間隔をおいて配置される複数の芯金と、を備え、
前記抗張体が前記クローラ本体の周方向に沿って螺旋状に巻回されたスチールコードにより構成され、
前記スチールコードが、当該スチールコードの長さ方向についての一端部及び他端部と、前記一端部及び前記他端部の間に位置する中間部とが、それぞれ異なる前記芯金と電気的に接続される、弾性クローラ。
【請求項2】
前記クローラ本体の幅方向における前記抗張体の中央又は中央近傍に、前記中間部が配置される、請求項1に記載の弾性クローラ。
【請求項3】
前記抗張体が、複数本の前記スチールコードを一単位とするスチールコード群を含み、
前記スチールコード群に含まれる全ての前記スチールコードの前記一端部が同一の前記芯金に接続され、
前記スチールコード群に含まれる全ての前記スチールコードの前記他端部が同一の前記芯金に接続され、
前記スチールコード群に含まれる全ての前記スチールコードの前記中間部が同一の前記芯金に接続される、請求項1に記載の弾性クローラ。
【請求項4】
第一の前記抗張体及び第二の前記抗張体が前記クローラ本体の幅方向について並んで配置され、
前記第一の抗張体を構成する第一の前記スチールコードの前記一端部と、前記第二の抗張体を構成する第二の前記スチールコードの前記一端部とが、同一の前記芯金に接続され、かつ、前記第一のスチールコードの前記他端部と、前記第二のスチールコードの前記他端部とが、同一の前記芯金に接続され、かつ、前記第一のスチールコードの前記中間部と、前記第二のスチールコードの前記中間部とが、同一の前記芯金に接続される、請求項1又は請求項2に記載の弾性クローラ。
【請求項5】
第一の前記抗張体及び第二の前記抗張体が前記クローラ本体の幅方向について並んで配置され、
前記第一の抗張体を構成する第一の前記スチールコードの前記一端部と、前記第二の抗張体を構成する第二の前記スチールコードの前記一端部とが、異なる前記芯金に接続され、かつ、前記第一のスチールコードの前記他端部と、前記第二のスチールコードの前記他端部とが、異なる前記芯金に接続され、かつ、前記第一のスチールコードの前記中間部と、前記第二のスチールコードの前記中間部とが、異なる前記芯金に接続される、請求項1又は請求項2に記載の弾性クローラ。
【請求項6】
前記一端部、前記他端部、及び前記中間部が接続される前記芯金の一部が前記クローラ本体から露出される、請求項1又は請求項2に記載の弾性クローラ。
【請求項7】
前記一端部、前記他端部、及び前記中間部が接続される前記芯金が、導電性を有する接着剤によって前記クローラ本体に接着される、請求項1又は請求項2に記載の弾性クローラ。
【請求項8】
前記スチールコードの前記一端部、前記他端部、及び前記中間部の径方向寸法が、前記スチールコードの前記一端部、前記他端部、及び前記中間部以外の部分の径方向寸法に比べて大きい、請求項1又は請求項2に記載の弾性クローラ。
【請求項9】
前記スチールコードの前記一端部、前記他端部、及び前記中間部の径方向寸法が、前記スチールコードの前記一端部、前記他端部、及び前記中間部以外の部分の径方向寸法に比べて小さい、請求項1又は請求項2に記載の弾性クローラ。
【請求項10】
前記スチールコードの前記一端部、前記他端部、及び前記中間部と前記芯金とが直接接触される、請求項1又は請求項2に記載の弾性クローラ。
【請求項11】
前記スチールコードの前記一端部、前記他端部、及び前記中間部に導電性材料からなる被覆部が設けられ、前記被覆部を介して前記一端部、前記他端部、及び前記中間部と前記芯金とが電気的に接続される、請求項1又は請求項2に記載の弾性クローラ。
【請求項12】
前記スチールコードの前記一端部、前記他端部、及び前記中間部が、前記クローラ本体の内周側に向けて屈曲される、請求項1又は請求項2に記載の弾性クローラ。
【請求項13】
前記スチールコードが、長さ方向の途中に配置され導電性材料からなる継手を含む、請求項1又は請求項2に記載の弾性クローラ。
【請求項14】
前記クローラ本体が、前記スチールコードと前記芯金との間に配置されるキャンバスをさらに備え、
前記キャンバスが、前記一端部、前記他端部、及び前記中間部と前記芯金との接続位置に形成された開口部を備える、請求項1又は請求項2に記載の弾性クローラ。
【請求項15】
前記クローラ本体又は前記芯金が、前記中間部に接続された前記芯金を明示するマーカーを備える、請求項1又は請求項2に記載の弾性クローラ。
【請求項16】
ゴム状弾性体からなり無端状に形成されたクローラ本体と、
前記クローラ本体に内蔵され当該クローラ本体の周方向について巻回される抗張体と、
前記クローラ本体に内蔵され当該クローラ本体の周方向について間隔をおいて配置される複数の芯金と、を備え、
前記抗張体が前記クローラ本体の周方向に沿って螺旋状に巻回されたスチールコードからなり、
前記スチールコードが、当該スチールコードの長さ方向についての一端部及び他端部と、前記一端部及び前記他端部の間に位置する中間部と、がそれぞれ異なる前記芯金に接続される弾性クローラの断線検出方法であって、
前記一端部が接続される第1の前記芯金と前記他端部が接続される第2の前記芯金との間の第1の抵抗値、前記第1の芯金と前記中間部が接続される第3の前記芯金との間の第2の抵抗値、及び前記第2の芯金と前記第3の芯金との間の第3の抵抗値、を測定し、前記第1の抵抗値、前記第2の抵抗値、及び前記第3の抵抗値に基づいて前記スチールコードの断線を検出する、弾性クローラの断線検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性クローラを構成するスチールコードの断線を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クローラ式走行装置には、無端状の弾性クローラが用いられる。弾性クローラは、ゴム状弾性体からなり無端状に形成されたクローラ本体と、クローラ本体に内蔵され周方向に巻回される抗張体と、クローラ本体に内蔵され周方向について間隔をおいて配置される複数の芯金と、を備えている。抗張体としては、例えば、クローラ本体の周方向について螺旋状に巻回されたスチールコードが用いられる。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、スチールコードの断線を容易に検出し、かつ、断線位置を簡易に特定することが可能な弾性クローラ及びその断線検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明に係る弾性クローラは、ゴム状弾性体からなり無端状に形成されたクローラ本体と、前記クローラ本体に内蔵され当該クローラ本体の周方向について巻回される抗張体と、前記クローラ本体に内蔵され当該クローラ本体の周方向について間隔をおいて配置される複数の芯金と、を備え、前記抗張体が前記クローラ本体の周方向に沿って螺旋状に巻回されたスチールコードにより構成され、前記スチールコードが、当該スチールコードの長さ方向についての一端部及び他端部と、前記一端部及び前記他端部の間に位置する中間部とが、それぞれ異なる前記芯金と電気的に接続される。
【0006】
上記構成の弾性クローラによれば、スチールコードの一端部が接続された芯金と、他端部が接続された芯金と、中間部が接続された芯金と、の各間の抵抗値を測定することによって、スチールコードの断線を容易に検出することができ、かつ、スチールコードの断線位置を簡易に特定することができる。
【0007】
(2)本発明に係る弾性クローラは、前記クローラ本体の幅方向における前記抗張体の中央又は中央近傍に、前記中間部が配置されると好ましい。
上記構成の弾性クローラによれば、スチールコードの断線位置が、抗張体の幅方向における中央を基準として、幅方向の一方側及び他方側のいずれに位置するかを簡易に特定することができる。
【0008】
(3)本発明に係る弾性クローラは、前記抗張体が、複数本の前記スチールコードを一単位とするスチールコード群を含み、前記スチールコード群に含まれる全ての前記スチールコードの前記一端部が同一の前記芯金に接続され、前記スチールコード群に含まれる全ての前記スチールコードの前記他端部が同一の前記芯金に接続され、前記スチールコード群に含まれる全ての前記スチールコードの前記中間部が同一の前記芯金に接続されると好ましい。
上記構成の弾性クローラによれば、抗張体が、複数本のスチールコードを一単位とするスチールコード群を含む場合に、スチールコードの断線を容易に検出し、かつ、断線位置を簡易に特定することができる。
【0009】
(4)本発明に係る弾性クローラは、第一の前記抗張体及び第二の前記抗張体が前記クローラ本体の幅方向について並んで配置され、前記第一の抗張体を構成する第一の前記スチールコードの前記一端部と、前記第二の抗張体を構成する第二の前記スチールコードの前記一端部とが、同一の前記芯金に接続され、かつ、前記第一のスチールコードの前記他端部と、前記第二のスチールコードの前記他端部とが、同一の前記芯金に接続され、かつ、前記第一のスチールコードの前記中間部と、前記第二のスチールコードの前記中間部とが、同一の前記芯金に接続されると好ましい。
上記構成の弾性クローラによれば、弾性クローラに2つのスチールコードが含まれる場合に、いずれかのスチールコードに断線が生じていることを容易に検出し、かつ、断線位置を簡易に特定することができる。
【0010】
(5)本発明に係る弾性クローラは、第一の前記抗張体及び第二の前記抗張体が前記クローラ本体の幅方向について並んで配置され、前記第一の抗張体を構成する第一の前記スチールコードの前記一端部と、前記第二の抗張体を構成する第二の前記スチールコードの前記一端部とが、異なる前記芯金に接続され、かつ、前記第一のスチールコードの前記他端部と、前記第二のスチールコードの前記他端部とが、異なる前記芯金に接続され、かつ、前記第一のスチールコードの前記中間部と、前記第二のスチールコードの前記中間部とが、異なる前記芯金に接続されると好ましい。
上記構成の弾性クローラによれば、弾性クローラに2つのスチールコードが含まれる場合に、断線が生じているスチールコードがどちらであるかを判別しつつ、スチールコードに断線が生じていることを容易に検出し、かつ、断線位置を簡易に特定することができる。
【0011】
(6)本発明に係る弾性クローラは、前記一端部、前記他端部、及び前記中間部が接続される前記芯金の一部が前記クローラ本体から露出されると好ましい。
上記構成の弾性クローラによれば、芯金がクローラ本体から露出している部位を測定用の器具を接触させる部位として利用することができ、これにより、スチールコードの抵抗値を容易に測定することができる。
【0012】
(7)本発明に係る弾性クローラは、前記一端部、前記他端部、及び前記中間部が接続される前記芯金が、導電性を有する接着剤によって前記クローラ本体に接着されると好ましい。
上記構成の弾性クローラによれば、芯金及びスチールコード間の導電性を確実に確保することができる。これにより、スチールコードの抵抗値を確実に測定することが可能となり、スチールコードの断線を精度よく検出することができる。
【0013】
(8)本発明に係る弾性クローラは、前記スチールコードの前記一端部、前記他端部、及び前記中間部の径方向寸法が、前記スチールコードの前記一端部、前記他端部、及び前記中間部以外の部分の径方向寸法に比べて大きいと好ましい。
上記構成の弾性クローラによれば、芯金に対するスチールコードの接続面積を拡大させることができ、これにより、スチールコードと芯金との間の導電性を確実に確保することができる。
【0014】
(9)本発明に係る弾性クローラは、前記スチールコードの前記一端部、前記他端部、及び前記中間部の径方向寸法が、前記スチールコードの前記一端部、前記他端部、及び前記中間部以外の部分の径方向寸法に比べて小さいと好ましい。
上記構成の弾性クローラによれば、芯金に生じた錆がスチールコードへ進展されにくくなる。
【0015】
(10)本発明に係る弾性クローラは、前記スチールコードの前記一端部、前記他端部、及び前記中間部と前記芯金とが直接接触されると好ましい。
上記構成の弾性クローラによれば、スチールコードと芯金との間の導電性を確実に確保することができる。
【0016】
(11)本発明に係る弾性クローラは、前記スチールコードの前記一端部、前記他端部、及び前記中間部に導電性材料からなる被覆部が設けられ、前記被覆部を介して前記一端部、前記他端部、及び前記中間部と前記芯金とが電気的に接続されると好ましい。
上記構成の弾性クローラによれば、芯金に生じた錆がスチールコードへ進展されにくくなる。
【0017】
(12)本発明に係る弾性クローラは、前記スチールコードの前記一端部、前記他端部、及び前記中間部が、前記クローラ本体の内周側に向けて屈曲されると好ましい。
上記構成の弾性クローラによれば、スチールコードと芯金の間の導電性を確実に確保することができる。
【0018】
(13)本発明に係る弾性クローラは、前記スチールコードが、長さ方向の途中に配置され導電性材料からなる継手を含むと好ましい。
上記構成の弾性クローラによれば、複数のスチールコードを継ぎ足した場合であっても、スチールコードの断線を検出することが可能となる。
【0019】
(14)本発明に係る弾性クローラは、前記クローラ本体が、前記スチールコードと前記芯金との間に配置されるキャンバスをさらに備え、前記キャンバスが、前記一端部、前記他端部、及び前記中間部と前記芯金との接続位置に形成された開口部を備えると好ましい。
上記構成の弾性クローラによれば、スチールコードと芯金の間の導電性を確実に確保することができる。
【0020】
(15)本発明に係る弾性クローラは、前記クローラ本体又は前記芯金が、前記中間部に接続された前記芯金を明示するマーカーを備えると好ましい。
上記構成の弾性クローラによれば、スチールコードの断線の検出に利用する芯金の位置を、ユーザが容易に特定することが可能になる。その結果、断線の検出作業の作業効率を上げることができる。
【0021】
(16)本発明に係る弾性クローラの断線検出方法は、ゴム状弾性体からなり無端状に形成されたクローラ本体と、前記クローラ本体に内蔵され当該クローラ本体の周方向について巻回される抗張体と、前記クローラ本体に内蔵され当該クローラ本体の周方向について間隔をおいて配置される複数の芯金と、を備え、前記抗張体が前記クローラ本体の周方向に沿って螺旋状に巻回されたスチールコードからなり、前記スチールコードが、当該スチールコードの長さ方向についての一端部及び他端部と、前記一端部及び前記他端部の間に位置する中間部と、がそれぞれ異なる前記芯金に接続される弾性クローラの断線検出方法であって、前記一端部が接続される第1の前記芯金と前記他端部が接続される第2の前記芯金との間の第1の抵抗値、前記第1の芯金と前記中間部が接続される第3の前記芯金との間の第2の抵抗値、及び前記第2の芯金と前記第3の芯金との間の第3の抵抗値、を測定し、前記第1の抵抗値、前記第2の抵抗値、及び前記第3の抵抗値に基づいて前記スチールコードの断線を検出する。
【0022】
上記構成の弾性クローラの断線検出方法によれば、スチールコードの断線を容易に検出することができ、かつ、スチールコードの断線位置を簡易に特定することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、スチールコードを含む弾性クローラにおいて、スチールコードの断線を容易に検出し、かつ、断線位置を簡易に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係る弾性クローラが装着された走行装置の一部が示された側面図である。
【
図2】
図1中のII-II線における断面図である。
【
図3】抗張体を構成するスチールコードが示された斜視図である。
【
図4】抗張体の第一構成例を説明する平面図である。
【
図5】抗張体の第二構成例を説明する平面図である。
【
図6】抗張体の第三構成例を説明する平面図である。
【
図7A】スチールコードの一端部と芯金との接続部位の第一構成例が示された断面図である。
【
図7B】スチールコードの一端部と芯金との接続部位の第二構成例が示された断面図である。
【
図7C】スチールコードの一端部と芯金との接続部位の第三構成例が示された断面図である。
【
図8A】スチールコードの中間部と芯金との接続部位の第一構成例が示された断面図である。
【
図8B】スチールコードの中間部と芯金との接続部位の第二構成例が示された断面図である。
【
図8C】スチールコードの中間部と芯金との接続部位の第三構成例が示された断面図である。
【
図9】一対のスチールコードと芯金との第一接続例が示された断面図である。
【
図10】一対のスチールコードと芯金との第二接続例が示された断面図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係るスチールコードの断線検出方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[本発明の基礎となった知見]
従来のクローラ走行装置を用いた車両では、弾性クローラを構成するスチールコードが断線すると走行不能に陥る恐れがあった。特に、弾性クローラの幅方向における外側でスチールコードが断線すると、弾性クローラがスプロケットから脱輪しやすくなる。つまり、弾性クローラは、スチールコードの断線位置(幅方向における内側か外側か)によって、異常の深刻度合に差がある。しかしながら、従来のクローラ走行装置を用いた車両では、スチールコードの断線を検出することが困難であったため、車両の走行に影響が出てからスチールコードの断線に気づくことが多かった。さらに、従来のクローラ走行装置を用いた車両では、スチールコードの断線位置を特定することも困難であったため、ユーザは弾性クローラに生じた異常の深刻度合を把握することができなかった。そこで、スチールコードを含む弾性クローラにおいて、スチールコードの断線を容易に検出すると共に、断線位置を簡易に特定することができる構成について、本発明者らは鋭意検討した。
【0026】
[走行装置]
図1は、クローラ式の走行装置10の一部を示す。走行装置10としては、例えば、コンバイン、トラクター等の農業機械、及び、バックホー等の建設機械が挙げられる。走行装置10は、弾性クローラ11、スプロケット12、アイドラ13及び転輪14を備える。なお、以下の説明では、走行装置10の走行方向を基準として、
図1に示すように走行装置10の前後方向及び左右方向を規定し、走行装置10の前後方向及び左右方向に直交する方向を上下方向と規定する。以下の説明では、弾性クローラ11の説明において、走行装置10について規定した前後、左右、及び上下方向を同様に用いる。走行装置10の左右方向は、弾性クローラ11の幅方向に対応する。弾性クローラ11の周方向は、左右方向に延びる軸回りの方向である。以下の説明では、弾性クローラ11の幅方向に直交する方向を、弾性クローラ11の径方向と称する場合がある。
【0027】
弾性クローラ11は、無端帯状である。弾性クローラ11は、その幅方向中央部分に穴15を備える。弾性クローラ11では、多数の穴15が周方向に間隔をあけて配置される。スプロケット12及びアイドラ13は、円盤状であり、走行装置10の本体に回転可能に支持される。スプロケット12は、その外周に多数の歯16を備える。
【0028】
走行装置10では、弾性クローラ11はスプロケット12とアイドラ13とに巻き掛けられる。これにより、弾性クローラ11には所定の張力がかけられる。
【0029】
走行装置10では、スプロケット12は図示されない駆動手段により回転される。これにより、スプロケット12の歯16が順に弾性クローラ11の穴15に入り込む。穴15に入り込んだ歯16がスプロケット12の回転方向に動くことにより、弾性クローラ11が周方向に動かされる。これにより、走行装置10は走行する。そして弾性クローラ11が周方向に動くことにより、アイドラ13が回転する。
【0030】
走行装置10では、路面と接する側に複数の転輪14が配置される。転輪14は、スプロケット12とアイドラ13との間に位置する。転輪14は、走行装置10の本体に回転可能に支持される。走行装置10では、周方向に動く弾性クローラ11の内周面上を、転輪14は転動する。
【0031】
[弾性クローラ]
図2は、
図1のII-II線に沿った弾性クローラ11の断面矢視を示す。
図2には、弾性クローラ11の周方向に対して垂直な面に沿った当該弾性クローラ11の断面が示される。
【0032】
図2において、左右方向は弾性クローラ11の幅方向である。
図2において、上下方向はこの弾性クローラ11の厚さ方向である。
図1に示されるように、弾性クローラ11はループを構成する。
図2における下側がこのループの内側であり、
図2における上側がこのループの外側である。
図2において、紙面に対して垂直な方向はこの弾性クローラ11の周方向である。弾性クローラ11の周方向は、弾性クローラ11の長さ方向でもある。弾性クローラ11の周方向は、弾性クローラ11の幅方向と直交する。
【0033】
弾性クローラ11は、形状的な要素として、前述の穴15以外に、ラグ17と、ガイド18とを備える。
【0034】
ラグ17は、弾性クローラ11のクローラ本体11aから外向きに突出する。ラグ17は、弾性クローラ11の概ね幅方向に延在する。
図1に示されるように、弾性クローラ11では、多数のラグ17が周方向に間隔をあけて配置される。ラグ17は、走行装置10のトラクションに寄与する。
【0035】
ガイド18は、弾性クローラ11のクローラ本体11aから内向きに突出する。
図1に示されるように、弾性クローラ11では、多数のガイド18が周方向に間隔をあけて配置される。
図2に示されるように、幅方向においては、2つのガイド18が弾性クローラ11の中央部分に間隔をあけて配置される。2つのガイド18は、弾性クローラ11の走行状態においてスプロケット12等を挟み込む。これにより、弾性クローラ11の幅方向の変位が抑えられる。ガイド18は、走行装置10の走行安定性に寄与する。
【0036】
弾性クローラ11は、構成的な要素として、弾性部材20と、芯金30と、抗張体40と、キャンバス42とを備える。
【0037】
弾性部材20は、架橋ゴムからなる。弾性部材20は、芯金30、抗張体40及びキャンバス42を覆う。弾性クローラ11では、芯金30、抗張体40及びキャンバス42は弾性部材20に埋設される。
【0038】
芯金30はプレート状である。芯金30は、基部31と、一対の翼部32と、一対の突起部33とを備える。一対の翼部32は、プレート状である。翼部32はそれぞれ、基部31から幅方向外側に延びる。弾性クローラ11では、芯金30の外側に前述のラグ17が構成される。一対の突起部33は、幅方向において、芯金30の中央部分に配置される。
【0039】
図2に示されるように、それぞれの突起部33は芯金30の基部31から内向きに突出する。弾性クローラ11では、芯金30の突起部33は前述のガイド18の一部をなす。芯金30の基部31の一部及び突起部33の一部はクローラ本体11a(弾性部材20)によって被覆されておらず、外部に露出している。
【0040】
弾性クローラ11では、芯金30は金属製であり、導電性を有する。芯金30の材質としては、導電性を有する普通鋼及び合金鋼が例示される。
図2に示すように、芯金30は、クローラ本体11aに埋設されている。芯金30は、クローラ本体11aに埋設される際に、接着剤によってクローラ本体11aに接着されて一体化される。弾性クローラ11では、クローラ本体11aと芯金30とを接着する接着剤として、導電性を有する接着剤を用いると好ましい。この場合、芯金30とスチールコード41とを電気的に接続したときに、芯金30に塗布された接着剤が芯金30とスチールコード41との間の導電性を阻害することがない。
【0041】
弾性クローラ11は、複数の芯金30を備える。芯金30は、周方向に間隔をあけて配置される。
【0042】
抗張体40は、周方向に延びる。この抗張体40は、無端帯状である。幅方向において、抗張体40の外端は芯金30の外端よりも内側に位置するように配置される。なお、本説明では、弾性クローラ11の幅方向において抗張体40が存在する領域の幅を打ち込み幅Wと称する。
【0043】
図3に示すように、抗張体40は、スチールコード41により構成される。スチールコード41は実質的に周方向に延びると共に螺旋状に巻回される。ここでいう「実質的に周方向」とは、スチールコード41が周方向に対してなす角度が5°以下であることを意味する。弾性クローラ11では、抗張体40の剛性確保の観点から、スチールコード41が周方向に対してなす角度は3°以下が好ましく、2°以下がより好ましい。スチールコード41は、一端部41a、他端部41b、及び中間部41cを備える。スチールコード41は、一端部41aから他端部41bまで連続する導電体である。中間部41cは、スチールコード41の長さ方向における一端部41a及び他端部41bの間の位置で、芯金30と電気的に接続される部位である。
【0044】
図3に示すように、中間部41cは、弾性クローラ11の幅方向における打ち込み幅Wの範囲の中央又は中央近傍に配置される。弾性クローラ11は、中間部41cを打ち込み幅Wの範囲の中央又は中央近傍に配置することで、中間部41cの位置を基準として、一端部41a及び中間部41cの間のスチールコード41を、弾性クローラ11の幅方向の一方側(
図3では右側)とし、他端部41b及び中間部41cの間のスチールコード41を、弾性クローラ11の幅方向の他方側(
図3では左側)として、位置を特定することが可能となる。換言すると、弾性クローラ11は、中間部41cの位置を基準として、スチールコード41の部位を、幅方向の一方側と他方側とに簡易に分けることができる。
【0045】
弾性クローラ11では、一般的な弾性クローラにおいて用いられるスチールコードがスチールコード41として用いられる。図示されないが、スチールコード41は、複数本のフィラメントを撚り合わせて構成された複数本のストランドをさらに撚り合わせて構成される。
【0046】
キャンバス42は、織物である。図示されないが、キャンバス42は有機繊維からなるキャンバスコードを含む。この有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維及びアラミド繊維が挙げられる。
【0047】
キャンバス42は、芯金30と抗張体40との間に介在し、周方向に延びる。キャンバス42は、無端帯状である。図示されないが、弾性クローラ11では、拡張体40の外側において周方向に延びる無端帯状のキャンバスがさらに設けられていてもよい。なお、弾性クローラ11は、芯金30と抗張体40とが電気的に接続される部位では、キャンバス42を切り欠いて開口部43を設けている。換言すると、キャンバス42は、芯金30と、一端部41a、他端部41b、及び中間部41cとが電気的に接続される部位において、開口部43が形成される(
図7A~
図7C、
図8A~
図8C参照)。
【0048】
弾性クローラ11では、径方向において、抗張体40は芯金30の外側に位置する。
図2に示されるように、弾性クローラ11では、一対の抗張体40が幅方向に並んで配置される。それぞれの抗張体40は、芯金30の左右に設けられるそれぞれの翼部32の径方向の外側において、周方向に延びる。
【0049】
弾性クローラ11は、一対のキャンバス42を備える。それぞれのキャンバス42は、芯金30の左右に設けられるそれぞれの翼部32の径方向の外側において、抗張体40に沿って周方向に延びる。
【0050】
なお、測定用の端子として利用する芯金30を容易に判別することができるように、例えば、該当する芯金30の基部31及び突起部33の露出部、当該芯金30に対応したラグ17、ガイド18等にマーカー35(
図4参照)を設けると好ましい。マーカー35は、目印となる形態であればよく、塗料の塗布、刻印、貫通孔等種々の形態により設けることができる。マーカー35は、弾性クローラ11を有する車両の幅方向外側から視認できる位置に設けられるとより好ましい。マーカー35は、一端部41aが接続された芯金30と、他端部41bが接続された芯金30と、中間部41cが接続された芯金30と、において、それぞれ形態が異なるマーカー35を設けて、マーカー35を手掛かりとして、芯金30に接続されているスチールコード41の部位(一端部41a、他端部41b、及び中間部41c)を識別できるようにするとより好ましい。
【0051】
[一単位の抗張体の構成について]
図4~
図6には、
図1における矢印Aの方向から見た場合の一単位(一対の抗張体40,40のうちの一方)の抗張体40の一部が芯金30とともに示される。
図4~
図6では、弾性部材20及びキャンバス42の図示を省略している。
図4~
図6において、左右方向は弾性クローラ11の幅方向であり、上下方向はこの弾性クローラ11の周方向である。紙面に対して垂直な方向は、この弾性クローラ11の厚さ方向である。この紙面の表側は、この弾性クローラ11が構成するループの外側である。なお、
図4~
図6に示す弾性クローラ11では、左右一対である抗張体40のうちの一方のみを図示しているが、他方の抗張体40も同等の構成を有する。
図4~
図6では、弾性クローラ11を構成する複数の芯金30のうちの一部である4個の芯金30を示している。これら4個の芯金30は、前方から順に第一芯金30a、第二芯金30b、第三芯金30c、及び第四芯金30dと称して区別する。
【0052】
図4に示す一単位の抗張体40は、一端部41aから他端部41bまでつなぎ目のないスチールコード41で構成される。
図4に示された抗張体40では、スチールコード41の一端部41aが第一芯金30aの翼部32の直上に配置されると共に、スチールコード41の他端部41bが第四芯金30dの翼部32の直上に配置される。弾性クローラ11では、スチールコード41の一端部41aが第一芯金30aと電気的に接続されると共に、他端部41bが第四芯金30dと電気的に接続される。
【0053】
一端部41a及び他端部41bと芯金30とは、例えば、溶接、はんだ付け等の手法で電気的に接続される。なお、一端部41a及び他端部41bと芯金30とは、単純に接触されることで電気的に接続されていてもよい。なお、一端部41a及び他端部41bと芯金30との接続部位では、キャンバス42は介在されない。
【0054】
図4には、一端部41aが第一芯金30aに接続され、他端部41bが第四芯金30dに接続される場合を例示しているが、一端部41a及び他端部41bは、それぞれ異なる芯金30に接続されていればよく、例えば、一端部41aが第二芯金30bに接続され、他端部41bが第三芯金30cに接続されるような構成であってもよい。
【0055】
図4に示すように、弾性クローラ11では、スチールコード41の一端部41a及び他端部41b以外の部位である中間部41cが、さらに芯金30と電気的に接続されている。換言すると、弾性クローラ11では、スチールコード41の一端部41a、他端部41b、及び中間部41cが、それぞれ異なる芯金30に接続されている。このような構成の弾性クローラ11では、第一芯金30a、第三芯金30c、及び第四芯金30dを測定用の端子として利用することができる。この弾性クローラ11では、第一芯金30a、第三芯金30c、及び第四芯金30dを利用して、スチールコード41の一端部41aから他端部41bまでの間の第一の抵抗値、一端部41aから中間部41cまでの間の第二の抵抗値、及び他端部41bから中間部41cまでの間の第三の抵抗値を測定することができる。
【0056】
弾性クローラ11では、
図5に示すようなスチールコード41を用いてもよい。
図5に示すスチールコード41は、長さ方向の途中に互いに対向する中間端部41d,41dを有すると共に、中間端部41d,41d同士の間を継手41eで繋いでいる。継手41eは、例えば、電気配線に使用される圧着スリーブである。
図5に示すスチールコード41は、複数のスチールコード41を長さ方向に隣接させて配置すると共に継手41eで繋いで、連続した1本のスチールコード41として構成される。つまり、
図5に示す一単位の抗張体40は、一端部41aから他端部41bまでの間に繋ぎ目を有するスチールコード41によって構成される点で、
図4に示す一単位の抗張体40と異なっている。このような構成の弾性クローラ11では、長さが短いスチールコード41を有効に活用することが可能となる。
【0057】
図5に示す弾性クローラ11では、
図4に示す弾性クローラ11と同様に、スチールコード41の一端部41aが第一芯金30aと電気的に接続されると共に、他端部41bが第四芯金30dと電気的に接続され、さらに、中間部41cが第三芯金30cと電気的に接続される。つまり、
図5に示す弾性クローラ11では、一端部41a、他端部41b、及び中間部41cが、それぞれ異なる芯金30に接続されている。
【0058】
弾性クローラ11では、
図6に示すようなスチールコード41を用いてもよい。
図6に示すスチールコード41は、幅方向に隣接する2本のスチールコード41,41によって、一単位の抗張体40を構成している。本説明では、幅方向において隣接する2本のスチールコード41,41を、それぞれ第一スチールコード41α及び第二スチールコード41βと称して区別する。
図6に示す弾性クローラ11は、幅方向において隣接する2本のスチールコード41α,41βによって、一単位の抗張体40が構成される点で、
図4及び
図5に示す一単位の抗張体40と異なっている。なお、幅方向において隣接する複数のスチールコード41によって一単位の抗張体40を構成する場合、スチールコード41の本数は、3本以上であってもよい。
【0059】
図6に示す一単位の抗張体40は、第一スチールコード41αの一端部41a1及び第二スチールコード41βの一端部41a2が第一芯金30aと電気的に接続されると共に、第一スチールコード41αの他端部41b1及び第二スチールコード41βの他端部41b2が第四芯金30dと電気的に接続され、さらに、第一スチールコード41αの中間部41c1及び第二スチールコード41βの中間部41c2が第三芯金30cと電気的に接続される。つまり、
図6に示す弾性クローラ11では、一端部41a1,41a2、他端部41b1,41b2、及び中間部41c1,41c2が、それぞれ異なる芯金30に接続されている。
図6に示す弾性クローラ11では、第一スチールコード41α及び第二スチールコード41βが並列接続された状態の抵抗値を測定することが可能となる。
【0060】
なお、本説明でいう「打ち込み幅Wの範囲の中央又は中央近傍」とは、
図4及び
図5に示す場合のように、打ち込み幅Wの範囲のちょうど中央に中間部41cが位置していてもよいし、
図6に示す場合のように、打ち込み幅Wの範囲の中央から若干ずれた位置に中間部41cが位置していてもよいことを意味している。弾性クローラ11は、中間部41cを打ち込み幅Wの範囲の中央又は中央近傍に配置することによって、スチールコード41に生じた断線位置を、打ち込み幅Wの範囲の中央を基準として、一方側又は他方側として特定することが可能になる。
【0061】
[一端部及び他端部と芯金との接続部位について]
図7Aに示すように、スチールコード41は、一端部41aに導電性を有する素材からなる被覆部45を設けて、被覆部45を介してスチールコード41と芯金30とを電気的に接続してもよい。この場合、被覆部45の径方向寸法D1が、スチールコード41の径方向寸法D0に比べて大きいと好ましい。被覆部45は、例えば、スチールコード41よりも外径寸法が大きい導電材(圧着スリーブ)である。この構成では、スチールコード41を直接芯金30に接続した場合に比べて、芯金30に対するスチールコード41(被覆部45)の接続面積を拡大させることができ、これにより、スチールコード41と芯金30との間の導電性を確実に確保することができる。なお、
図7Aでは、スチールコード41の一端部41aに被覆部45を設けた場合を例示しているが、スチールコード41の他端部41bにも同様に被覆部45を設けて、他端部41bと芯金30とを被覆部45を介して電気的に接続してもよい。
【0062】
図7Bに示すように、スチールコード41は、一端部41aに導電性を有する素材からなる接続部材46を設けて、接続部材46を介してスチールコード41と芯金30とを電気的に接続してもよい。この場合、接続部材46の径方向寸法D2が、スチールコード41の径方向寸法D0に比べて小さいと好ましい。接続部材46は、例えば、スチールコード41よりも線径が小さい導電材(電線)である。この構成では、スチールコード41を直接芯金30に接続した場合に比べて、芯金30に生じた錆がスチールコード41へ進展しにくくなり、これにより、スチールコード41と芯金30との間の導電性をより長期にわたって確保することができる。なお、
図7Bでは、スチールコード41の一端部41aに接続部材46を設けた場合を例示しているが、スチールコード41の他端部41bにも接続部材46を設けて、他端部41bと芯金30とを接続部材46を介して電気的に接続してもよい。
【0063】
図7Cに示すように、スチールコード41は、一端部41aと芯金30とを直接接続してもよい。この場合、スチールコード41に屈曲部47を設けると好ましい。この構成では、一端部41aを芯金30に対して確実に沿わせることができ、これにより、スチールコード41と芯金30との間の導電性を確実に確保することができる。なお、
図7Cでは、スチールコード41の一端部41aの近傍に屈曲部47を設けた場合を例示しているが、スチールコード41の他端部41bの近傍にも屈曲部47を設けて、他端部41bと芯金30とを電気的に接続してもよい。
【0064】
[中間部と芯金との接続部位について]
図8Aに示すように、スチールコード41は、中間部41cに導電性を有する素材からなる被覆部45を設けて、被覆部45を介してスチールコード41と芯金30とを電気的に接続してもよい。この場合、被覆部45の径方向寸法D1が、スチールコード41の径方向寸法D0に比べて大きいと好ましい。なお、スチールコード41の中間部41cに設ける被覆部45には、先に説明した継手41eを用いてもよい。なお、本実施形態では、中間部41cの被覆部45の径方向寸法と、一端部41a及び他端部41bの被覆部45の径方向寸法とを同じ寸法D1として説明しているが、これらは異なっていてもよい。
【0065】
図8Bに示すように、スチールコード41は、中間部41cに導電性を有する素材からなる接続部材46を設けて、接続部材46を介して中間部41cと芯金30とを電気的に接続してもよい。この場合、接続部材46の径方向寸法D2が、スチールコード41の径方向寸法D0に比べて小さいと好ましい。なお、本実施形態では、中間部41cの接続部材46の径方向寸法と、一端部41a及び他端部41bの接続部材46の径方向寸法とを同じ寸法D2として説明しているが、これらは異なっていてもよい。
【0066】
図8Cに示すように、スチールコード41は、中間部41cと芯金30とを直接接続してもよい。この場合、スチールコード41に屈曲部47を設けると好ましい。この構成では、中間部41cを芯金30に対して確実に沿わせることができ、これにより、スチールコード41と芯金30との間の導電性を確実に確保することができる。
【0067】
[一対の抗張体における一端部、他端部、及び中間部の接続位置について]
図9及び
図10には、幅方向において、左右一対の抗張体40を備えた弾性クローラ11が示されている。
図9及び
図10に示す弾性クローラ11では、左右一対の抗張体40のうち、一側(右側)の抗張体40を第一抗張体40Xと称し、他側(左側)の抗張体40を第二抗張体40Yと称する。第一抗張体40Xは、第一スチールコード41Xにより構成され、第二抗張体40Yは、第二スチールコード41Yにより構成される。なお、
図10では、弾性クローラ11を構成する複数の芯金30のうちの一部である6個の芯金30を示している。これら6個の芯金30は、前方から順に第一芯金30a、第二芯金30b、第三芯金30c、第四芯金30d、第五芯金30e、及び第六芯金30fと称されて区別される。
【0068】
図9には、芯金30に対する一端部41a及び他端部41bの接続形態を第一接続例とした弾性クローラ11である第一弾性クローラ11Xを示している。
【0069】
第一弾性クローラ11Xにおいて、第一スチールコード41Xは、一端部41aが第一芯金30aに接続されると共に、他端部41bが第四芯金30dに接続され、中間部41cが第三芯金30cに接続される。第一弾性クローラ11Xにおいて、第二スチールコード41Yは、一端部41aが第一芯金30aに接続されると共に、他端部41bが第四芯金30dに接続され、中間部41cが第三芯金30cに接続される。つまり、第一弾性クローラ11Xでは、第一スチールコード41X及び第二スチールコード41Yの各一端部41aが同一の芯金30(ここでは第一芯金30a)と電気的に接続され、第一スチールコード41X及び第二スチールコード41Yの各他端部41bが同一の芯金30(ここでは第四芯金30d)と電気的に接続され、さらに、第一スチールコード41X及び第二スチールコード41Yの各中間部41cが同一の芯金30(ここでは第三芯金30c)と電気的に接続される。なお、第一弾性クローラ11Xにおいて、第一スチールコード41X及び第二スチールコード41Yの各一端部41aが接続される芯金30は、第一芯金30a以外であってもよく、第一スチールコード41X及び第二スチールコード41Yの各他端部41bが接続される芯金30は、第四芯金30d以外であってもよく、第一スチールコード41X及び第二スチールコード41Yの各中間部41cが接続される芯金30は、第三芯金30c以外であってもよい。
【0070】
このような構成の第一弾性クローラ11Xでは、第一芯金30a、第三芯金30c、及び第四芯金30dを測定用の端子として使用し、各芯金30a・30c・30d間の抵抗値を測定することによって、2つのスチールコード41X,41Yを電気的に並列接続した状態の抵抗値を測定することが可能となる。このため、第一弾性クローラ11Xでは、2つのスチールコード41X,41Yのうちの少なくともどちらか一方に断線が生じていることを簡易に検出することが可能となる。
【0071】
図10には、芯金30に対する一端部41a、他端部41b、及び中間部41cの接続形態を第二接続例とした弾性クローラ11である第二弾性クローラ11Yを示している。
【0072】
第二弾性クローラ11Yでは、第一スチールコード41Xの一端部41aが第一芯金30aに接続されると共に、第一スチールコード41Xの他端部41bが第六芯金30fに接続され、さらに、第一スチールコード41Xの中間部41cが第四芯金30dに接続される。さらに、第二弾性クローラ11Yでは、第二スチールコード41Yの一端部41aが第二芯金30bに接続されると共に、第二スチールコード41Yの他端部41bが第五芯金30eに接続され、さらに、第二スチールコード41Yの中間部41cが第三芯金30cに接続される。つまり、第二弾性クローラ11Yでは、第一スチールコード41Xの一端部41a、他端部41b、及び中間部41c、第二スチールコード41Yの一端部41a、他端部41b、及び中間部41cが、全て異なる芯金30と電気的に接続される。
【0073】
このような構成の第二弾性クローラ11Yでは、第一芯金30a及び第六芯金30fを測定用の端子として使用し、両芯金30a・30f間の抵抗値を測定することによって、第一スチールコード41Xの抵抗値を測定することができる。第二弾性クローラ11Yでは、第二芯金30b及び第五芯金30eを測定用の端子として使用し、両芯金30b・30e間の抵抗値を測定することによって、第二スチールコード41Yの抵抗値を測定することができる。このため、第二弾性クローラ11Yでは、2つのスチールコード41X,41Yのうちどちらに断線が生じているかを検出することができ、スチールコード41に断線が生じているか否かについて、より詳細な情報が取得できる。
【0074】
さらに、第二弾性クローラ11Yでは、第一芯金30a及び第四芯金30dを測定用の端子として使用し、両芯金30a・30d間の抵抗値を測定することによって、第一スチールコード41Xの幅方向における中央より右側の部分の抵抗値を測定することができる。第二弾性クローラ11Yでは、第四芯金30d及び第六芯金30fを測定用の端子として使用し、両芯金30d・30f間の抵抗値を測定することによって、第一スチールコード41Xの幅方向における中央より左側の部分の抵抗値を測定することができる。第二弾性クローラ11Yでは、第二芯金30b及び第三芯金30cを測定用の端子として使用し、両芯金30b・30c間の抵抗値を測定することによって、第二スチールコード41Yの幅方向における中央より右側の部分の抵抗値を測定することができる。第二弾性クローラ11Yでは、第三芯金30c及び第五芯金30eを測定用の端子として使用し、両芯金30c・30e間の抵抗値を測定することによって、第二スチールコード41Yの幅方向における中央より左側の部分の抵抗値を測定することができる。このため、第二弾性クローラ11Yでは、2つのスチールコード41X,41Yのうちどちらに断線が生じているかを検出するだけでなく、断線が生じている部位を、より具体的に(幅方向の右側か左側かを)特定することができる。
【0075】
[弾性クローラにおけるスチールコードの断線検知方法]
ここでは、一端部41aが第一芯金30aと電気的に接続されると共に、他端部41bが第四芯金30dと電気的に接続され、さらに、中間部41cが第三芯金30cと電気的に接続されたスチールコード41を有する弾性クローラ11において、スチールコード41の断線を検出する方法について説明する。
【0076】
図11に示すように、弾性クローラ11を構成するスチールコード41の断線は、テスター50によって検出することができる。テスター50は、第一リード棒51と第二リード棒52を備えている。テスター50は、第一リード棒51と第二リード棒52の間に接続された導電体の抵抗値を測定することができる。
【0077】
ユーザは、下記手法で測定した抵抗値を、弾性クローラ11が新品であったときの抵抗値と比較する。そして、測定した抵抗値が新品時の抵抗値に比べて増大している場合、ユーザは、スチールコード41に断線があると判断することができる。なお、断線があるか否かの判断においては、所定の閾値を設定してもよい。この場合、測定した抵抗値と新品時の抵抗値との差異が所定の閾値を超えている場合に、ユーザはスチールコード41に断線があると判断する。
【0078】
図11に示す弾性クローラ11の場合、以下に示す3つのパターンで、スチールコード41の断線の有無を検出することができる。
【0079】
[第1パターン]
第1パターンでは、第一リード棒51を第一芯金30aに接触させると共に、第二リード棒52を第四芯金30dに接触させ、テスター50によりスチールコード41の抵抗値を測定する。
【0080】
このとき測定される抵抗値は、第一芯金30a、スチールコード41の全体、及び第四芯金30dを含む導電体の抵抗値(第1抵抗値とも称する)である。スチールコード41に断線が生じていた場合、一端部41a及び他端部41bの間の抵抗値が増大する。第一芯金30a及び第四芯金30dの抵抗値は通常ほとんど変化しないため、検出された抵抗値の変化は、スチールコード41の断線に起因するものと推定できる。このため、弾性クローラ11は、テスター50により測定した第1抵抗値に基づいて、スチールコード41の断線の有無を検出することができる。
【0081】
[第2パターン]
第2パターンでは、第一リード棒51を第一芯金30aに接触させると共に、第二リード棒52を第三芯金30cに接触させ、テスター50によりスチールコード41の抵抗値を測定する。
【0082】
このとき測定される抵抗値は、第一芯金30a、スチールコード41の右側半分、及び第三芯金30cを含む導電体の抵抗値(第2抵抗値とも称する)である。スチールコード41の一端部41aと中間部41cとの間で断線が生じていた場合、第2抵抗値が変化する。このため、弾性クローラ11は、テスター50により測定した第2抵抗値に基づいて、スチールコード41の断線の有無を検出することができる。さらに、第2パターンでは、テスター50により測定した第2抵抗値に基づいて断線があることを検出した場合、スチールコード41の断線位置が、打ち込み幅Wの中央より右側の部分であると特定することができる。
【0083】
[第3パターン]
第3パターンでは、第一リード棒51を第四芯金30dに接触させると共に、第二リード棒52を第三芯金30cに接触させ、テスター50によりスチールコード41の抵抗値を測定する。
【0084】
このとき測定される抵抗値は、第四芯金30d、スチールコード41の左側半分、及び第三芯金30cを含む導電体の抵抗値(第3抵抗値とも称する)である。スチールコード41の他端部41bと中間部41cとの間で断線が生じていた場合、第3抵抗値が変化する。このため、弾性クローラ11は、テスター50により測定した第3抵抗値に基づいて、スチールコード41の断線の有無を検出することができる。さらに、第3パターンでは、テスター50により測定した第3抵抗値に基づいて断線があることを検出した場合、スチールコード41の断線位置が、打ち込み幅Wの中央より左側の部分であると特定することができる。
【0085】
以上説明したように、本発明の断線検知方法によれば、弾性クローラ11について、スチールコード41の断線の有無を検出し、かつ、スチールコード41の断線位置を簡易に特定することができる。
【0086】
(実施形態の作用効果)
本実施形態の弾性クローラ11は、ゴム状弾性体からなり無端状に形成されたクローラ本体11aと、クローラ本体11aに内蔵され当該クローラ本体11aの周方向について巻回される抗張体40と、クローラ本体11aに内蔵され当該クローラ本体11aの周方向について間隔をおいて配置される複数の芯金30と、を備えている。弾性クローラ11は、抗張体40がクローラ本体11aの周方向に沿って螺旋状に巻回されたスチールコード41により構成される。弾性クローラ11では、スチールコード41が、当該スチールコード41の長さ方向についての一端部41a及び他端部41bと、一端部41a及び他端部41bの間に位置する中間部41cとが、それぞれ異なる芯金30と電気的に接続される。
このような構成の弾性クローラ11によれば、スチールコード41の一端部41aが接続された芯金30と、他端部41bが接続された芯金30と、中間部41cが接続された芯金30と、の各間の抵抗値を測定することによって、スチールコード41の断線を容易に検出することができ、かつ、スチールコード41の断線位置を簡易に特定することができる。
【0087】
本実施形態の弾性クローラ11は、クローラ本体11aの幅方向における抗張体40の中央又は中央近傍に、中間部41cが配置される。
このような構成の弾性クローラ11によれば、スチールコード41の断線位置が、抗張体40の幅方向における中央を基準として、幅方向の一方側及び他方側のいずれに位置するかを簡易に特定することができる。
【0088】
本実施形態の弾性クローラ11(
図6参照)は、抗張体40が、複数本(
図6では2本)のスチールコード41α,41βを一単位とするスチールコード群を含み、前記スチールコード群に含まれる全てのスチールコード41α,41βの一端部41a1,41a2が同一の芯金30(第一芯金30a)に接続されると共に、前記スチールコード群に含まれる全てのスチールコード41α,41βの他端部41b1,41b2が同一の芯金30(第四芯金30d)に接続され、スチールコード群に含まれる全てのスチールコード41の中間部41cが同一の芯金30(第三芯金30c)に接続される。
上記構成の弾性クローラ11によれば、抗張体40が、複数本のスチールコード41を一単位とするスチールコード群を含む場合に、スチールコード41の断線を容易に検出し、かつ、断線位置を簡易に特定することができる。
【0089】
第一弾性クローラ11X(
図9参照)は、第一抗張体40X及び第二抗張体40Yがクローラ本体11aの幅方向について並んで配置され、第一抗張体40Xを構成する第一スチールコード41Xの一端部41aと、第二抗張体Yを構成する第二スチールコード41Yの一端部41aとが、同一の芯金30(第一芯金30a)に接続され、かつ、第一スチールコード41Xの他端部41bと、第二スチールコード41Yの他端部41bとが、同一の芯金30(第四芯金30d)に接続され、かつ、第一スチールコード41Xの中間部41cと、第二スチールコード41Yの中間部41cとが、同一の芯金30(第三芯金30c)に接続される。
上記構成の第一弾性クローラ11Xによれば、弾性クローラ11に2つのスチールコード41X,41Yが含まれる場合に、スチールコード41の断線を容易に検出し、かつ、断線位置を簡易に特定することができる。
【0090】
第二弾性クローラ11Y(
図10参照)は、第一抗張体40X及び第二抗張体40Yがクローラ本体11aの幅方向について並んで配置され、第一抗張体40Xを構成する第一スチールコード41Xの一端部41aと、第二抗張体Yを構成する第二スチールコード41Yの一端部41aとが、異なる芯金30(第一芯金30aと第二芯金30b)に接続され、かつ、第一スチールコード41Xの他端部41bと、第二スチールコード41Yの他端部41bとが、異なる芯金30(第六芯金30fと第五芯金30e)に接続され、かつ、第一スチールコード41Xの中間部41cと、第二スチールコード41Yの中間部41cとが、異なる芯金30(第四芯金30dと第三芯金30c)に接続される。
上記構成の第二弾性クローラ11Yによれば、弾性クローラ11に2つのスチールコード41X,41Yが含まれる場合において、断線が生じているスチールコード41がどちらであるかを判別しつつ、スチールコード41に断線が生じていることを容易に検出し、かつ、断線位置を簡易に特定することができる。
【0091】
本実施形態の弾性クローラ11は、一端部41a、他端部41b、及び中間部41cが接続される芯金30の一部がクローラ本体11aから露出される。
上記構成の弾性クローラ11によれば、芯金30がクローラ本体11aから露出している部位を、測定器具(リード棒51、52)を接触させる部位として利用することができ、これにより、スチールコード41の抵抗値を容易に測定することができる。
【0092】
本実施形態の弾性クローラ11は、一端部41a、他端部41b、及び中間部41cが接続される芯金30が、導電性を有する接着剤によってクローラ本体11aに接着される。
上記構成の弾性クローラ11によれば、芯金30及びスチールコード41間の導電性を確実に確保することができる。これにより、スチールコード41の抵抗値を確実に測定することが可能となり、スチールコード41の断線を精度よく検出することができる。
【0093】
本実施形態の弾性クローラ11(
図7A、
図8A参照)は、スチールコード41の一端部41a、他端部41b、及び中間部41cの径方向寸法D1が、スチールコード41の一端部41a、他端部41b、及び中間部41c以外の部分の径方向寸法D0に比べて大きい。
上記構成の弾性クローラ11によれば、芯金30に対するスチールコード41の接続面積を拡大させることができ、これにより、スチールコード41と芯金30との間の導電性を確実に確保することができる。
【0094】
本実施形態の弾性クローラ11(
図7B、
図8B参照)は、スチールコード41の一端部41a、他端部41b、及び中間部41cの径方向寸法D2が、スチールコード41の一端部41a、他端部41b、及び中間部41c以外の部分の径方向寸法D0に比べて小さい。
上記構成の弾性クローラによれば、芯金30に生じた錆をスチールコード41へ進展されにくくすることができ、これにより、スチールコード41と芯金30との間の導電性を長期にわたって確保することができる。
【0095】
本実施形態の弾性クローラ11(
図7C、
図8C参照)は、スチールコード41の一端部41a、他端部41b、及び中間部41cと芯金30とが直接接触される。
上記構成の弾性クローラ11によれば、スチールコード41と芯金30との間の導電性を確実に確保することができる。
【0096】
本実施形態の弾性クローラ11(
図7A、
図8A参照)は、スチールコード41の一端部41a、他端部41b、及び中間部41cに導電性材料からなる被覆部45が設けられ、被覆部45を介して一端部41a、他端部41b、及び中間部41cと芯金30とが電気的に接続される。
上記構成の弾性クローラ11によれば、芯金30に生じた錆をスチールコード41へ進展されにくくすることができる。
【0097】
本実施形態の弾性クローラ11(
図7C、
図8C参照)は、スチールコード41の一端部41a、他端部41b、及び中間部41cが、クローラ本体11aの内周側に向けて屈曲される屈曲部47を備える。
上記構成の弾性クローラ11によれば、スチールコード41と芯金30との間の導電性を確実に確保することができる。
【0098】
本実施形態の弾性クローラ11(
図5参照)は、スチールコード41が、長さ方向の途中に配置され導電性材料からなる継手41eを含む。
上記構成の弾性クローラ11によれば、複数のスチールコード41を継ぎ足した場合であっても、スチールコード41の断線を検出することが可能となる。弾性クローラ11では、長さ方向の寸法が短い複数のスチールコードを用いて、スチールコード41を構成することができる。
【0099】
本実施形態の弾性クローラ11は、クローラ本体11aが、スチールコード41と芯金30との間に配置されるキャンバス42をさらに備える。キャンバス42が、一端部41a、他端部41b、及び中間部41cと芯金30との接続位置に形成された開口部を備える。
上記構成の弾性クローラ11によれば、スチールコード41と芯金30の間の導電性を確実に確保することができる。
【0100】
本実施形態の弾性クローラ11は、クローラ本体11a又は芯金30が、中間部41cに接続された芯金30を明示するマーカー35を備える。
上記構成の弾性クローラ11によれば、スチールコード41の断線の検出に利用する芯金30の位置を、ユーザが容易に特定することが可能になる。その結果、断線の検出作業の作業効率を上げることができる。
【0101】
本実施形態の弾性クローラ11の断線検出方法(
図11参照)は、抗張体40がクローラ本体11aの周方向に沿って螺旋状に巻回されたスチールコード41により構成され、スチールコード41が、当該スチールコード41の長さ方向についての一端部41a及び他端部41bと、一端部41a及び他端部41bの間に位置する中間部41cと、がそれぞれ異なる芯金30に接続された弾性クローラ11の断線検出方法であり、一端部41aが接続される芯金30(第一芯金30a)と他端部41bが接続される芯金30(第四芯金30d)との間の第1の抵抗値、第一芯金30aと中間部41cが接続される芯金30(第三芯金30c)との間の第二の抵抗値、及び第四芯金30dと第三芯金30cとの間の第三の抵抗値を測定し、第一の抵抗値、第二の抵抗値、及び第三の抵抗値に基づいてスチールコード41の断線を検出する。
このような構成の弾性クローラ11の断線検出方法によれば、スチールコード41の断線を容易に検出することができ、かつ、スチールコード41の断線位置を簡易に特定することができる。
【0102】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0103】
11 :弾性クローラ
11a :クローラ本体
18 :突起部
30 :芯金
40 :抗張体
40X :第一抗張体
40Y :第二抗張体
41 :スチールコード
41X :第一スチールコード
41Y :第二スチールコード
41a :一端部
41b :他端部
41c :中間部
41e :継手
45 :被覆部