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特開2024-111544合成樹脂レザーの製造方法及び合成樹脂レザー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111544
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】合成樹脂レザーの製造方法及び合成樹脂レザー
(51)【国際特許分類】
   D06N 3/14 20060101AFI20240809BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
D06N3/14 102
B32B27/40
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016116
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000550
【氏名又は名称】オカモト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆司
(72)【発明者】
【氏名】中根 陽太
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】浅田 頼崇
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕己
【テーマコード(参考)】
4F055
4F100
【Fターム(参考)】
4F055AA01
4F055AA21
4F055BA12
4F055BA16
4F055CA05
4F055DA17
4F055EA22
4F055FA15
4F055GA01
4F055GA26
4F100AK51B
4F100AK51C
4F100AK51D
4F100AT00
4F100BA03
4F100BA04
4F100CA01B
4F100CA01H
4F100DD07D
4F100DG11A
4F100DJ01B
4F100DJ04B
4F100EC18
4F100EH462
4F100EH46B
4F100EH46C
4F100EH46D
4F100EJ022
4F100EJ02B
4F100EJ182
4F100EJ18D
4F100EJ392
4F100EJ39D
4F100EJ422
4F100GB08
4F100GB33
4F100GB71
4F100JK13
4F100JK17
4F100JL02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】天然皮革と同様な厚み方向の風合い、軟らかさ、地厚感を有し、かつ、谷折りした際のシワの入り具合や小ジワの再現が可能である合成樹脂レザーの製造方法を提供する。
【解決手段】基材2を用意するステップと、発泡剤を含む第1のポリウレタン系樹脂3をカレンダー加工することによりシートを形成するステップと、前記基材と、前記発泡剤を含むシート状の前記第1のポリウレタン系樹脂を接着するステップと、前記発泡剤を含む熱可塑性ポリウレタン系樹脂の、前記基材とは反対側の面に、第2のポリウレタン系樹脂4をコーティングするステップと、前記基材、前記基材に接着された前記発泡剤を含む前記第1のポリウレタン系樹脂、前記発泡剤を含む前記第1のポリウレタン系樹脂にコーティングされた前記第2のポリウレタン系樹脂のセットを加熱することにより前記発泡剤を発泡させるステップと、を含む、合成樹脂レザーの製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材を用意するステップと、
発泡剤を含む第1のポリウレタン系樹脂をカレンダー加工によりシートを形成するステップと、
前記基材と、前記発泡剤を含むシート状の前記第1のポリウレタン系樹脂を接着するステップと、
前記発泡剤を含む前記第1のポリウレタン系樹脂の、前記基材とは反対側の面に、第2のポリウレタン系樹脂をコーティングするステップと、
前記基材、前記基材に接着された前記発泡剤を含む前記第1のポリウレタン系樹脂、前記発泡剤を含む前記第1のポリウレタン系樹脂にコーティングされた前記第2のポリウレタン系樹脂のセットを、加熱により前記発泡剤を発泡させるステップと、
を含む、合成樹脂レザーの製造方法。
【請求項2】
前記第2のポリウレタン系樹脂の、前記第1のポリウレタン系樹脂とは反対側の面に、第3のポリウレタン系樹脂をコーティングにより表面処理するステップを、さらに含む、請求項1に記載の合成樹脂レザーの製造方法。
【請求項3】
前記第3のポリウレタン系樹脂を、前記第2のポリウレタン系樹脂とは反対側の面から、シボ押しするステップを、さらに含む、請求項2に記載の合成樹脂レザーの製造方法。
【請求項4】
前記第1のポリウレタン系樹脂に含まれる前記発泡剤の発泡倍率は、2倍以上4倍以下である、請求項1~3いずれか一項に記載の合成樹脂レザーの製造方法。
【請求項5】
前記第2のポリウレタン系樹脂の厚み4dは、0μm<4d≦100μmである、請求項1~3いずれか一項に記載の合成樹脂レザーの製造方法。
【請求項6】
基材と、
第1のポリウレタン系樹脂と、
第2のポリウレタン系樹脂と、
を含み、
前記第1のポリウレタン系樹脂は前記基材に接着され、シート状であり、発泡剤により発泡層を形成し、前記発泡剤による発泡倍率は2倍以上4倍以下であり、
前記第2のポリウレタン系樹脂は、前記第1のポリウレタン系樹脂の、前記基材とは反対側の面にコーティング層を形成し、前記第2のポリウレタン系樹脂の厚み4dは、0μm<4d≦100μmである、合成樹脂レザー。
【請求項7】
第3のポリウレタン系樹脂をさらに備え、
前記第3のポリウレタン系樹脂は、前記第2のポリウレタン系樹脂の、前記第1のポリウレタン系樹脂とは反対側の面に、コーティング層を形成する、請求項6に記載の合成樹脂レザー。
【請求項8】
前記第3のポリウレタン系樹脂は、前記第2のポリウレタン系樹脂とは反対側の面に、シボ形成されている、請求項7に記載の合成樹脂レザー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両座席用内装材、航空機や船舶その他の椅子やソファー等の張地、靴の胛被材、手帳等の文具やスマートフォンケース等の表皮材として用いられる合成樹脂レザーの製造方法、及び、合成樹脂レザーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、本革の風合いを備えた合成樹脂レザーとして、基布等の基材表面上に各種樹脂を接着した表皮材が多用されてきている。特に、車両の座席を製造する工程の変化や乗り心地に関するニーズの変化に対応すべく、基材の工夫、各種樹脂の材料や物性、厚み、積層方法の工夫等がなされてきている。特に、高級感を付与させることが重要となってきている。また、電気自動車の市場拡大から材料の軽量化の要請もさらに高まってきている。
【0003】
たとえば、基材(基布層)の編糸の種類と太さを調整することにより、シワ耐久性や乗り心地を改良することが知られている(特許文献1等)。
また、繊維質基材上にポリウレタン樹脂層を積層し、天然皮革と同様のシワ入りやコシ感を有する合成皮革を提供することができることが開示されている(特許文献2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-196977号公報
【特許文献2】国際公開2019/004180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような特許文献1では、基材(基布層)の編糸の種類や太さの組み合わせにより、厚み方向の風合いや地厚感を出すことは可能であるが、基材の軽量化は難しく合成樹脂レザー全体が重たくなるという問題があった。
特許文献2では、合成樹脂に発泡性がなく、また、シボの高さと幅でシワの入り具合やコシ感を出しているため、より本革に近い風合いを有するシボに沿った小ジワが再現しにくいという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために本発明の合成樹脂レザーの製造方法は、基材を用意するステップと、発泡剤を含む第1のポリウレタン系樹脂をカレンダー加工によりシートを形成するステップと、前記基材と、前記発泡剤を含むシート状の前記第1のポリウレタン系樹脂を接着するステップと、前記発泡剤を含む前記第1のポリウレタン系樹脂の、前記基材とは反対側の面に、第2のポリウレタン系樹脂をコーティングするステップと、前記基材、前記基材に接着された前記発泡剤を含む前記第1のポリウレタン系樹脂、前記発泡剤を含む前記第1のポリウレタン系樹脂にコーティングされた前記第2のポリウレタン系樹脂のセットを、加熱により前記発泡剤を発泡させるステップと、を含むことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の合成樹脂レザーは、基材と、第1のポリウレタン系樹脂と、第2のポリウレタン系樹脂と、を含み、前記第1のポリウレタン系樹脂は前記基材に接着され、シート状であり、発泡剤により発泡層を形成し、前記発泡剤による発泡倍率は2倍以上4倍以下であり、前記第2のポリウレタン系樹脂は、前記第1のポリウレタン系樹脂の、前記基材とは反対側の面にコーティング層を形成し、前記第2のポリウレタン系樹脂の厚み4dは、0μm<4d≦100μmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、天然皮革と同様な厚み方向の風合い、軟らかさ、地厚感を有し、かつ、谷折りした際のシワの入り具合や小ジワの再現が可能である合成樹脂レザーを提供することができる。また、かかる合成樹脂レザーの製造方法を提供することができる。さらに、合成樹脂レザーを軽量化することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の合成樹脂レザーの表皮層の一例の概要を示す図である。
図2】本発明の合成樹脂レザーの一例の、断面写真である。図2(a)は断面写真であり、図2(b)は断面顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について、以下に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0011】
本発明の合成樹脂レザー1の製造方法は、基材2を用意するステップと、発泡剤を含む第1のポリウレタン系樹脂3をカレンダー加工によりシートを形成するステップと、基材2と発泡剤を含むシート上の第1のポリウレタン系樹脂3を接着するステップと、発泡剤を含む第1のポリウレタン系樹脂3の、基材2とは反対側の面に、第2のポリウレタン系樹脂をコーティングするステップと、基材2、基材2に接着された発泡剤を含む第1のポリウレタン系樹脂3、発泡剤を含む第1のポリウレタン系樹脂3にコーティングされた第2のポリウレタン系樹脂4のセットを、加熱により発泡剤を発泡させるステップと、を含むものである。
【0012】
(基材)
基材2は、合成樹脂レザー1に要求される物理特性、風合いに合わせて適宜選択される。基材2(基布等)の素材は、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、綿、レーヨン、これらの混紡糸が例示される。また、捲縮加工されていてもよい。
基材2の編物としては、緯編みの両面織物、天竺編物、経編みのトリコット等が挙げられる。基材2の織物としては、平織物、綾織物、朱子織物等が挙げられる。
【0013】
基材2の厚みは、合成樹脂レザー1に要求される物理特性や風合いの範囲に調整されるが、0.5mm~1.3mm、好ましくは0.7mm~1.0mmである。厚み方向の風合いや地厚感を表現するためには、基材2の厚みを大きくするとよいが、1.0mmより厚くなると合成樹脂レザー1の重量が大きくなり、軽量化しづらくなる。
【0014】
(第1のポリウレタン系樹脂)
第1のポリウレタン系樹脂3は、発泡剤を含む熱可塑性ポリウレタン系樹脂である。すなわち、熱可塑性ポリウレタン系樹脂にポリイソシアネート及び発泡剤を配合し、加熱混練して動的架橋させた熱可塑性ポリウレタン系樹脂をカレンダー加工によりシートを形成し、その後、発泡炉等に導入して加熱により発泡させたものである。
【0015】
第1のポリウレタン系樹脂3は、架橋されているにもかかわらず熱可塑性を有しているので、カレンダー加工によってシート状に成型できる。このため、合成樹脂レザー1を容易にかつ安価に製造できる。カレンダー加工ができない性質を有するポリウレタン系樹脂の場合は、基材2にコーティング加工を施すことになるが、発泡層である第1のポリウレタン系樹脂3の厚みが十分に得られず、深さ方向の風合いや地厚感を十分に表現しにくくなる。
【0016】
第1のポリウレタン系樹脂3は、ジイソシアネート化合物と、ヒドロキシル基を2以上有する化合物とを反応させて得たポリウレタンであり、なかでも、末端活性水素を有する長鎖グリコールと短鎖グリコール(鎖伸長剤)とジイソシアネートを重付加反応させた、いわゆるソフトセグメントとハードセグメントからなるポリウレタン系樹脂(熱可塑性ポリウレタン系樹脂:TPU)が好ましく使用できる。
【0017】
第1のポリウレタン系樹脂3(熱可塑性ポリウレタン系樹脂)の原料となるジイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が用いられる。
【0018】
長鎖グリコールとしては、アジピン酸、フタル酸等の二塩基酸とエチレングリコール、1、4-ブタンジオール等のグリコールとの縮合反応物であるポリエステル系ポリオール、エチレンカーボネート等のカーボネートとグリコールとの反応物であるポリカーボネート系ポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール等のポリエーテル系ポリオール等が用いられる。なかでも、ポリエーテル系ポリオールを原料とする熱可塑性ポリウレタン系樹脂は、カレンダー加工性がよいので、特に好ましい。
【0019】
鎖伸長剤としては、エチレングリコール、1、2-プロピレングリコール、1、3-プロピレングリコール、ブタン-1、2-ジオール、ブタン-1、3-ジオール、ブタン-1、4-ジオール、ブタン-2、3-ジオール、ヘキサンジオール等の低分子多価アルコール、ジアミン、水等が用いられる。
【0020】
上記原料の熱可塑性ポリウレタン系樹脂を作製するためには、ポリイソシアネートを配合し、ブレンダーで均一に混合して、動的架橋させることが一例として挙げられる。ポリイソシアネートとして、芳香族ポリイソシアネート、特に、メチレンビス(4、1-フェニレン)ジイソシアネート等が好ましい。
【0021】
発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、p、p‘-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、パラトルエンスルホニルヒドラジド、ジニトロペンタメチレンテトラミン等が挙げられる。
【0022】
発泡剤を含む第1のポリウレタン系樹脂3(熱可塑性ポリウレタン系樹脂)は、カレンダー加工により発泡剤の分解温度以下でシート状に形成される。シート状の第1のポリウレタン系樹脂3は、基材2に積層され、その後、発泡炉等に導入されて加熱により発泡処理が行われる。なお、シート状の第1のポリウレタン系樹脂3は、一旦冷却されることなく基材2に積層することにより、基材2への接着性や加工容易性が高まる。もしくは、基材2と第1のポリウレタン系樹脂3との間に基材及び第1のポリウレタン系樹脂間接着層2aを設けてもよい。
【0023】
製造された合成樹脂レザー1における、第1のポリウレタン系樹脂3の厚みは、0.3mm以上2.0mm以下が好ましく、0.4mm以上1.6mm以下、0.5mm以上1.2mm以下がより好ましい。ただし、上記の厚みはシボ押し前の厚みとなる。
【0024】
第1のポリウレタン系樹脂3の発泡倍率は、2倍以上4倍以下が好ましく、2倍以上3.5倍以下がより好ましい。ここで、形成されたシート厚みが0.2mmで発泡倍率が3倍であれば、発泡後(シボ押し前)の第1のポリウレタン系樹脂3の厚みは0.6mmとなる。
発泡倍率が大きいと厚み方向の風合いは良くなるものの、座屈ジワを抑制しにくくなること等に留意して、発泡倍率を選択することが望ましい。
【0025】
(第2のポリウレタン系樹脂)
第1のポリウレタン系樹脂3の、基材2とは反対側の面に、第2のポリウレタン系樹脂4はコーティングされる。
第2のポリウレタン系樹脂4は、座屈ジワ、厚み方向の風合い改善等を目的として、第1のポリウレタン系樹脂3の上にコーティングされ、また、着色剤を配合することにより合成樹脂レザー1を着色することもできる。
【0026】
第2のポリウレタン系樹脂4は、水系のポリウレタン系樹脂であることが好ましい。ここで、水系のポリウレタン系樹脂とは、ポリウレタン系樹脂を有機系溶剤ではなく、水系溶剤に分散させたものであり、加工時に温湿度の影響を受けやすいが、環境負荷が小さい。たとえば、脂肪族イソシアネート・ポリカーボネート系水性ポリウレタン等が挙げられる。
【0027】
第2のポリウレタン系樹脂4の厚み4dは、0μm<4d≦100μmが好ましく、0μm<4d≦50μm、0μm<4d≦25μmがより好ましい。なお、下限値は0.1μm、1.0μm、5.0μm、8μm、10μm等が例示される。
第2のポリウレタン系樹脂4の厚み4dが大きすぎると、座屈ジワ、すなわち、シボパターンを無視した不自然なシワが入りやすくなる。
【0028】
第2のポリウレタン系樹脂4は、上記厚みの他、ポリウレタン系樹脂の種類による硬さによっても座屈ジワ、厚み方向の風合いの改善が可能である。さらに、コーティングによって積層するため、第2のポリウレタン系樹脂4は、熱可塑性のポリウレタン系樹脂、熱硬化性のポリウレタン系樹脂であってもよい。
【0029】
(発泡させるステップ)
基材2、基材2に接着された発泡剤を含む第1のポリウレタン系樹脂3、発泡剤を含む第1のポリウレタン系樹脂3にコーティングされた第2のポリウレタン系樹脂4のセットを、発泡炉に導入する等により加熱し、第1のポリウレタン系樹脂3に含まれる発泡剤を発泡させる。
【0030】
(第3のポリウレタン系樹脂)
第2のポリウレタン系樹脂4の、第1のポリウレタン系樹脂3とは反対側の面に、第3のポリウレタン系樹脂5がコーティングされてもよい。
第3のポリウレタン系樹脂5は、耐久性の付加、タッチ感の改善等を目的として、第2のポリウレタン系樹脂4の上にコーティングされ、表面処理が行われる。
【0031】
第3のポリウレタン系樹脂5は、水系のポリウレタン系樹脂であり、また、ベース層とトップ層に分けてコーティングされてもよい。第2のポリウレタン系樹脂4に接触するベース層は、耐久性改善のためイソシアネート架橋剤の配合が例示される。また、ベース層の上にコーティングされるトップ層は、タッチ感改善のためシリコンやフッ素化合物の配合が例示される。
【0032】
第3のポリウレタン系樹脂5のうち、ベース層の厚みは、10μm以上30μm以下程度が例示され、トップ層の厚みは、5μm以上15μm以下程度が例示される。
【0033】
(シボ押しするステップ)
第3のポリウレタン系樹脂5を、第2のポリウレタン系樹脂4とは反対側の面から、シボ押しするステップを、さらに含んでもよい。
シボ押しは、加温加圧により行う。温度としては140℃~160℃、加圧としては3MPa~7MPa程度が例示される。シボ押しの幅は10μm以上、シボ押しの深さは50μm~600μm程度が例示される。なお、シボ押しを行った部分の第1のポリウレタン系樹脂3の層と基材2の層は圧縮され、厚みが小さくなる。
【0034】
(合成樹脂レザー)
本発明の合成樹脂レザー1は、基材2と、第1のポリウレタン系樹脂3と、第2のポリウレタン系樹脂4と、を含み、第1のポリウレタン系樹脂3は基材2に接着され、シート状であり、発泡剤により発泡層を形成し、発泡剤による発泡倍率は2倍以上4倍以下であり、第2のポリウレタン系樹脂4は、第1のポリウレタン系樹脂3の、基材2とは反対側の面にコーティング層を形成し、第2のポリウレタン系樹脂4の厚み4dは、0μm<4d≦100以下である。
各部材の特徴は、上述したとおりである。
【0035】
合成樹脂レザー1は、第3のポリウレタン系樹脂5をさらに備え、第3のポリウレタン系樹脂5は、第2のポリウレタン系樹脂4の、第1のポリウレタン系樹脂3とは反対側の面に、コーティング層を形成してもよい。
また、第3のポリウレタン系樹脂5は、第2のポリウレタン系樹脂4とは反対側の面に、シボ形成されていてもよい。
【0036】
(評価試験1)
第1のポリウレタン系樹脂3の発泡倍率について、評価試験を行った。
第1のポリウレタン系樹脂3の厚み(発泡倍率)のみを1.5倍~4.0倍に変更し、第2のポリウレタン系樹脂4(着色樹脂)の厚みを25μmに一定とした試料6つを作製した。なお、第1のポリウレタン系樹脂の厚みは、発泡後、シボ押し前の数値である。
作製した試料1~6について、座屈ジワの官能試験、ソフトネステスターによる軟らかさ試験、厚み方向の風合いの官能試験を行った。
【0037】
座屈ジワの官能試験は、(1)直径15mm、長さ6cm程度の筒を半円状にカットした型を用意し、(2)型の内側に沿って、表皮を谷折り状にセットし、シボが入っている側に谷折りし、(3)その状態を保持し、シワの入り具合を観察することによって行った。
ソフトネステスターによる軟らかさ試験は、皮革ソフトネス計測装置「ST300」にて、リングサイズは25mmを使用して行った。なお、本革の値は、様々であるが概ね2.7mm~5.0mm程度である。
厚み方向の風合いの官能試験は、表皮の表面を指で押した際のストローク感について、官能評価を行った。
各試料の構成及び評価結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
表1の結果から、第1のポリウレタン系樹脂3の適切な発泡倍率は、2倍以上4倍以下が好ましく、2倍以上3.5倍以下がより好ましいことが分かった。
【0040】
(評価試験2)
第2のポリウレタン系樹脂4(着色樹脂)の厚み4dについて、評価試験を行った。
第2のポリウレタン系樹脂4の厚み4dのみを25μm~200μmに変更し、第1のポリウレタン系樹脂3(発泡層)の発泡倍率を3.0倍に一定とした試料5つを作製した。
作製した試料7~11について、座屈ジワの官能試験、ソフトネステスターによる軟らかさ試験、厚み方向の風合いの官能試験を行った。
【0041】
座屈ジワの官能試験は、(1)直径15mm、長さ6cm程度の筒を半円状にカットした型を用意し、(2)型の内側に沿って、表皮を谷折り状にセットし、シボが入っている側に谷折りし、(3)その状態を保持し、シワの入り具合を観察することによって行った。
ソフトネステスターによる軟らかさ試験は、皮革ソフトネス計測装置「ST300」にて、リングサイズは25mmを使用して行った。なお、本革の値は、2.7mm~5.0mm程度である。
厚み方向の風合いの官能試験は、表皮の表面を指で押した際のストローク感について、官能評価を行った。
各試料の構成及び評価結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
表2の結果から、第2のポリウレタン系樹脂4(着色樹脂)の適切な厚み4dは、100μm以下が好ましく、50μm以下、25μm以下がより好ましいことが分かった。
【0044】
(評価試験3)
本革、本発明の合成樹脂レザー、従来の合成樹脂レザーについて、断面顕微鏡写真、谷折り時の小ジワの写真、厚み、重量を比較し、表3に示した。
【0045】
【表3】
【0046】
表3より、本発明の合成樹脂レザーの谷折り時の小ジワが本革の小ジワに一番近く、かつ、本革より軽量化可能であることが分かった。
【0047】
本発明は以下に示した項目の構成を有し得る。
[項1]
基材を用意するステップと、
発泡剤を含む第1のポリウレタン系樹脂をカレンダー加工によりシートを形成するステップと、
前記基材と、前記発泡剤を含むシート状の前記第1のポリウレタン系樹脂を接着するステップと、
前記発泡剤を含む前記第1のポリウレタン系樹脂の、前記基材とは反対側の面に、第2のポリウレタン系樹脂をコーティングするステップと、
前記基材、前記基材に接着された前記発泡剤を含む前記第1のポリウレタン系樹脂、前記発泡剤を含む前記第1のポリウレタン系樹脂にコーティングされた前記第2のポリウレタン系樹脂のセットを、加熱により前記発泡剤を発泡させるステップと、
を含む、合成樹脂レザーの製造方法。
[項2]
前記第2のポリウレタン系樹脂の、前記第1のポリウレタン系樹脂とは反対側の面に、第3のポリウレタン系樹脂をコーティングにより表面処理するステップを、さらに含む、上記項1に記載の合成樹脂レザーの製造方法。
[項3]
前記第3のポリウレタン系樹脂を、前記第2のポリウレタン系樹脂とは反対側の面から、シボ押しするステップを、さらに含む、上記項2に記載の合成樹脂レザーの製造方法。
[項4]
前記第1のポリウレタン系樹脂に含まれる前記発泡剤の発泡倍率は、2倍以上4倍以下である、上記項1~3いずれか一項に記載の合成樹脂レザーの製造方法。
[項5]
前記第2のポリウレタン系樹脂の厚み4dは、0μm<4d≦100μmである、上記項1~4いずれか一項に記載の合成樹脂レザーの製造方法。
[項6]
基材と、
第1のポリウレタン系樹脂と、
第2のポリウレタン系樹脂と、
を含み、
前記第1のポリウレタン系樹脂は前記基材に接着され、シート状であり、発泡剤により発泡層を形成し、前記発泡剤による発泡倍率は2倍以上4倍以下であり、
前記第2のポリウレタン系樹脂は、前記第1のポリウレタン系樹脂の、前記基材とは反対側の面にコーティング層を形成し、前記第2のポリウレタン系樹脂の厚み4dは、0μm<4d≦100μmである、合成樹脂レザー。
[項7]
第3のポリウレタン系樹脂をさらに備え、
前記第3のポリウレタン系樹脂は、前記第2のポリウレタン系樹脂の、前記第1のポリウレタン系樹脂とは反対側の面に、コーティング層を形成する、上記項6に記載の合成樹脂レザー。
[項8]
前記第3のポリウレタン系樹脂は、前記第2のポリウレタン系樹脂とは反対側の面に、シボ形成されている、上記項7に記載の合成樹脂レザー。
【符号の説明】
【0048】
1 合成樹脂レザー
2 基材
2a 基材及び第1のポリウレタン系樹脂間接着層
3 第1のポリウレタン系樹脂
4 第2のポリウレタン系樹脂
4d 第2のポリウレタン系樹脂の厚み
5 第3のポリウレタン系樹脂
図1
図2