(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111553
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】単板試験器
(51)【国際特許分類】
G01R 33/02 20060101AFI20240809BHJP
G01R 33/12 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
G01R33/02 B
G01R33/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016129
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】507076126
【氏名又は名称】株式会社IFG
(72)【発明者】
【氏名】森 仁
(72)【発明者】
【氏名】八島 建樹
【テーマコード(参考)】
2G017
【Fターム(参考)】
2G017AA07
2G017AD03
2G017AD04
2G017AD05
2G017CB02
2G017CB15
2G017CB23
(57)【要約】 (修正有)
【課題】試料表面からの漏れ磁束による空隙部の磁束変化の影響を反映し正確な磁気特性の測定結果を得る。
【解決手段】励磁コイル1a、磁束密度検出コイル2a、空隙補償コイル3a、二つのリターンヨーク6a,6bで構成され、励磁コイル1aに内包される磁束密度検出コイル2aは、その磁束密度検出方向が励磁コイル1aの発生磁界方向と平行、且つ上記中心面5にて、面対称となる形状および位置に構成され、空隙補償コイル3aは、その磁束密度検出方向が磁束密度検出コイル2aの磁束密度検出方向と平行であり、且つ磁束密度検出コイル2aの内包空間を中心面5で二分割した際の分割された空間のいずれか一方とほぼ同一の内包空間を持った形状および位置に構成され、測定時においては、測定される試料4は上記中心面5上またはその近傍面上に配置され、励磁コイル1aの外側に突出した試料4の両端が二つのリターンヨーク6a,6bの間に挟まれている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状軟磁性材料の磁気特性を測定する単板試験機であって、
磁界を発生する励磁コイル1a、試料4内部および空隙部の磁束変化を検出する磁束密度検出コイル2a、空隙部の磁束変化を検出する空隙補償コイル3a、二つのリターンヨーク6a,6bで構成され、
励磁コイル1aは、励磁コイル1aの形状を面対称に分かち、励磁コイル1の発生磁界方向に平行な中心面5を持ち、
励磁コイル1aに内包される磁束密度検出コイル2aは、その磁束密度検出方向が励磁コイル1aの発生磁界方向と平行であり、且つ上記中心面5にて、磁束密度検出コイル2aの形状が面対称となる形状および位置に構成され、
空隙補償コイル3aは、その磁束密度検出方向が磁束密度検出コイル2aの磁束密度検出方向と平行であり、且つ磁束密度検出コイル2aの内包空間を中心面5で二分割した際の分割された空間のいずれか一方とほぼ同一の内包空間を持った形状および位置に構成され、
測定時においては、測定される試料4は上記中心面5上またはその近傍面上に配置され、励磁コイル1aの外側に突出した試料4の両端が二つのリターンヨーク6a,6bの間に挟まれていることを特徴とする単板試験機。
【請求項2】
空隙補償コイル3aの表面と試料4が密着していることを特徴とする請求項1に記載の単板試験機。
【請求項3】
空隙補償コイル3aの巻き数が、磁束密度検出コイル2aの巻き数の略2倍であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の単板試験機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁鋼板等の板状軟磁性材料の交流磁化特性、鉄損を測定する単板試験器の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁鋼板やアモルファス材料、ナノ結晶材料など、軟磁性材料の磁気特性を測定する方法として単板試験器が用いられている(非特許文献1)。単板試験器では、板状の軟磁性材料である試料を、磁性体を材料とするリターンコアで挟んで、この試料を経路とする閉磁路を構成し、この閉磁路を励磁コイルで励磁しながら、試料のまわりにまいたピックアップコイル(以降「磁束密度検出コイル」と呼称する)にて、試料内部の磁束を検出し、試料の磁気特性を測定する。
【0003】
この単板試験器の磁束密度検出コイルには、その内側の磁束変化に比例した起電力が生じ、これを積分することにより、磁束密度検出コイル内側を貫通する磁束を求めることができる。測定したい磁束は、試料内部の磁束だけであるが、磁束密度検出コイルで拾われる磁束には、試料のない部分すなわち空隙に生じている磁束も含まれてしまっている。そのため、この空隙に生じている磁束を差し引くために空隙補償コイルというものが使用される。非特許文献1には空隙補償コイルとして、一次側を励磁コイルに、二次側を磁束密度検出コイルに直列接続した外部相互誘導器を使用する方法、または励磁コイル内部に配置したピックアップコイルを使用する方法が、記載されている。
【0004】
励磁コイル内部に配置する空隙補償コイルの1例として、特許文献1には、磁束密度検出コイルと空隙補償コイルの構成例の一つが記載されている。特許文献1では、お互いの領域が重ならないように配置した磁束密度検出コイル2aと空隙補償コイル3aの組を複数利用した発明の形態が記載されている。この構成で用いられる磁束密度検出コイル2aと空隙補償コイル3aの組を
図4、
図5に示す。以降、この構成例を従来技術例1とする。
【0005】
また、試料4近傍の磁界を測定するHコイルというコイルを磁束密度検出コイル2aの内側に配置し、このコイルを空隙補償コイル3aとしても活用する構成例が、非特許文献1に記載されている。この構成を
図6、
図7に示す。以降、この構成例を従来技術例2とする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】JIS C 2556(1996)、「電磁鋼板単板磁気特性試験方法」
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般に、空隙補償コイルの出力は、磁束密度検出コイルの出力に含まれる空隙部分の磁束由来の信号と同じ大きさかつ逆符号になるように調整される。その調整方法としては、空隙補償コイルの断面積を調整する方法、空隙補償コイルのターン数を調整する方法、空隙補償コイルの出力につなげたプリアンプの増幅度を調整する方法、AD変換により計算機に取り込まれたデジタル信号に係数をかける方法などがある。この調整は、試料がない状態でおこなわれ、空隙補償コイルの出力と磁束密度検出コイルの出力の和が略ゼロになるように調整される。この調整状態を得ることで、空隙部分の磁束が磁束密度検出コイルから差し引かれ、試料をセットした場合には試料内部の磁束のみが検出されるとされている。
【0009】
一方、実際に試験機に試料をセットした場合、試料の表面からは漏れ磁束が発生し、試料周辺の空隙部分の磁束密度分布を大きく変化させてしまう問題がある。外部相互誘導器を空隙補償コイルとして用いた場合には、試料の漏れ磁束による空隙部分の磁束密度分布の変化は空隙補償コイルの検出信号には一切含まれない状態となってしまう。また
図4乃至
図7に示したように励磁コイル1a内部に空隙補償コイル3aを設置している場合でも、試料4周辺の磁束密度分布変化すべてを空隙補償コイル3aの検出信号に取り込むことはできず、あくまで空隙補償コイル3aの設置位置における漏れ磁束のみが測定結果に反映されることになり、実際の試料内部の磁束変化とは異なる結果が観測されてしまう課題がある。
【0010】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、試料表面からの漏れ磁束による空隙部の磁束変化の影響を反映したより正確な磁気特性の測定結果を得ることを可能とする単板試験器の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の単板試験機は、板状軟磁性材料の磁気特性を測定する単板試験機であって、
磁界を発生する励磁コイル1a、試料4内部および空隙部の磁束変化を検出する磁束密度検出コイル2a、空隙部の磁束変化を検出する空隙補償コイル3a、二つのリターンヨーク6a,6bで構成され、
励磁コイル1aは、励磁コイル1aの形状を面対称に分かち、励磁コイル1の発生磁界方向に平行な中心面5を持ち、
励磁コイル1aに内包される磁束密度検出コイル2aは、その磁束密度検出方向が励磁コイル1aの発生磁界方向と平行であり、且つ上記中心面5にて、磁束密度検出コイル2aの形状が面対称となる形状および位置に構成され、
空隙補償コイル3aは、その磁束密度検出方向が磁束密度検出コイル2aの磁束密度検出方向と平行であり、且つ磁束密度検出コイル2aの内包空間を中心面5で二分割した際の分割された空間のいずれか一方とほぼ同一の内包空間を持った形状および位置に構成され、
測定時においては、測定される試料4は上記中心面5上またはその近傍面上に配置され、励磁コイル1aの外側に突出した試料4の両端が二つのリターンヨーク6a,6bの間に挟まれていることを特徴とする。
【0012】
請求項2の本発明は、請求項1に記載の単板試験機において、
空隙補償コイル3aの表面と試料4が密着していることを特徴とする。
【0013】
請求項3は、請求項1または請求項2に記載の単板試験機において、
空隙補償コイル3aの巻き数が、磁束密度検出コイル2aの巻き数の略2倍であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、試料表面からの漏れ磁束による空隙部の磁束変化の影響を反映した正確な磁気特性測定を行うことが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】本発明の単板試験機において発生する空隙部の磁束を模式的に示した図である。
【
図4】従来技術例1による単板試験機のYZ断面図である。
【
図5】従来技術例1による単板試験機のXZ断面図である。
【
図6】従来技術例2による単板試験機のYZ断面図である。
【
図7】従来技術例2による単板試験機のXZ断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の詳細を実施形態に基づいて説明する。なお、この実施形態は本発明に付いて、当業者の理解を容易にするためのものである。すなわち、本発明の明細書の全体に記載されている技術思想によってのみ限定されるものであり、本実施例のみに限定されるものでないことは理解されるべきである。
【0017】
本発明を図示した
図1、
図2を用いて、本発明の実施形態について説明する。本実施形態の単板試験機は、通常の単板試験機と同様に、複数のコイルとその巻き枠、磁性体を材料とするリターンコア6aおよび6bにより構成される。コイルは表面が樹脂等で絶縁された銅線を非金属(樹脂やセラミック)の巻き枠に巻き付けて製作される。コイルは、励磁コイル1a、磁束密度検出コイル2a、空隙補償コイル3aの3種類が構成に含まれる。
【0018】
励磁コイル1aは、励磁コイル用の巻き枠1bの外周に巻き付けて製作される。製作が容易であるという観点からは、巻き枠1bは巻き線部分に溝を切った中空の直方体であることが望ましいが、必ずしも直方体である必要はない。この励磁コイル1aの発生する主要磁界方向をX方向とする。励磁コイル1aは、その形状が面対称となるX方向に平行な面を持つ。以降、この面を励磁コイルの中心面5と定義する。言い換えれば、励磁コイル1aを磁界方向を法線とした平面で切断した場合、その断面は線対称な形状となっている必要があり、そのすべての断面の対称線は同一の平面上に存在している必要がある。この条件を満たす励磁コイル1aの巻き枠形状の例としては、直方体や円柱、磁界方向にテーパーのついた角錐台、円錐台などの形状が想定される。この中心面5の法線方向をZ方向(上下方向)とする。また、XZ面に垂直な方向をY方向とする。
【0019】
磁束密度検出コイル2aは、磁束密度検出コイル用の巻き枠2bに巻き付けて製作される。製作が容易であるという観点からは、巻き枠2bは巻き線部分に溝を切った中空の直方体であることが望ましいが、必ずしも直方体である必要はない。磁束密度検出コイル2aは、励磁コイル1aに内包され、その磁束密度の検出方向は、励磁コイル1aの発生磁界方向と平行であり、励磁コイル1aの中心面5を対称面として、磁束密度検出コイル2aが面対称な形状となるようにその形状および位置が構成される。この条件を満たす磁束密度検出コイル2aの巻き枠形状の例としては、励磁コイル1aと同様に、直方体や円柱、磁界方向にテーパーのついた角錐台、円錐台などの形状が想定される。
【0020】
空隙補償コイル3aは、空隙補償コイル用の巻き枠3bに巻き付けて製作される。製作が容易であるという観点からは、巻き枠3bは巻き線部分に溝を切った中空の直方体であることが望ましいが、必ずしも直方体である必要はない。空隙補償コイル3aの磁束密度検出方向は、磁束密度検出コイル2aの磁束密度検出方向と平行であり、空隙補償コイル3aにて内包される空間の形状は、磁束密度検出コイル2aにて内包される空間を中心面5で二分割した形状とほぼ同一にし、空隙補償コイル3aの外周のうちこの分割面にあたる面が中心面5に平行かつ近接するように空隙補償コイル3aは配置される。すなわち、磁束密度検出コイル2aの内包空間を中心面5で二分割した空間のいずれか一方の空間(
図1、
図2では下半分の空間)と空隙補償コイル3aの内包空間がほぼ同一となる構造となる。磁束密度検出コイル2aの出力と空隙補償コイル3aの出力を同じ大きさにするためには、空隙補償コイル3aの巻き数は、磁束密度検出コイル2aの略2倍の巻き数とすることが望ましいが、それぞれの出力を個別で収録し、調整する場合はその限りではない。空隙補償コイル用の巻き枠3bは内部を中空とすることで、磁界を検出するHコイル(図示しない)を配置することが可能であり、Hコイルを含む構成とすれば、非特許文献1に記載されたHコイル法による磁気特性測定も実施可能である。
【0021】
測定対象である軟磁性体を材料とする試料4は板状の形状であって、中心面5上またはその近傍面上に配置される。試料4の漏れ磁束をもれなく拾うため、試料4は空隙補償コイル3aの表面に密着させることが望ましい。試料4は、その両端を励磁コイル1aの外側まで突出できる長さを持ち、その突出した部分をリターンヨーク6aおよび6bの間に挟み込む。
図2に示すリターンヨーク6aおよび6bは、U字型の形状をしており、一般には、ケイ素鋼板や鉄系アモルファス材料の薄体を枠状に巻いて成形したものをカットして製作される。この形状のリターンヨークを用いる構造は、いわゆる縦型ヨーク構造である。非特許文献1に示されるように、他のヨーク構造として、積層したケイ素鋼板を用いた横型ヨーク構造がある。横型ヨーク構造でも、同様に試料4をその間に挟み込む構造とすることで同様の発明の効果が得られるが、本願明細書では図示しない。
【0022】
励磁コイル1aに図示しない外部交流電源から電流が供給されることで、励磁コイル1aの内部に磁界10が発生し、試料4とリターンヨーク6a,6bにより構成される閉磁路に起磁力が与えられる。この起磁力により試料4内部および空隙部の磁束が変化し、その変化が磁束密度検出コイル2aに誘導起電力として出力される。また空隙部の磁束変化が空隙補償コイル3aに、誘導起電力として出力される。磁束密度検出コイル2aの出力から空隙補償コイル3aの出力を差し引くことで、空隙部の磁束変化が含まれない、試料4内部の磁束変化のみを検出することができる。この磁束変化に基づく検出信号を積分し、試料4の断面積の大きさで割ることで、試料4内部の磁束密度が得られる。
【0023】
ここで、
図3を用いて、本発明によって空隙部の磁束変化を磁束密度検出コイル2aの出力から正確に取り除くことが可能となる原理について説明する。
図3は、
図2のリターンヨーク6a,6bを簡略表示するとともに、重要ではない引出線を省略して、本発明の構造をより簡易的に示した図である。
【0024】
本発明の構成によれば、励磁コイル1aと磁束密度コイル2aが中心面5にて対称な形状となっているため、励磁コイル1aにて磁界を発生した際、励磁コイル1aの発生する磁界10の分布は中心面5に面対称な分布となり、磁束密度コイル2aの内包空間においても、中心面5に面対称な分布となる。加えてこの中心面5の下側に位置する空隙補償コイル3aの内包空間における分布は、磁束密度コイル2aの内包空間の中心面5下側の分布と略同一となる。ここで、各コイルの内包空間に存在する空気やコイル巻き枠は非磁性体であり、その内部の磁束密度は、磁界に真空の透磁率μ0をかけあわせた値で近似できることを考慮すると、磁束密度コイル2aの内包空間を貫く励磁コイル1a由来の磁束は、空隙補償コイル3aの内包空間を貫く磁束の略2倍となる。
【0025】
同様に、試料4の表面から発生する漏れ磁束9について考える。試料4は中心面5上またはその近傍面上に配置されており、さらに励磁コイル1aにて加えられている磁界10の分布も中心面5を対称面として対称であるため、試料4表面から発生する漏れ磁束9の密度分布も中心面5を対称面としたほぼ面対称な分布となる。よって、磁束密度検出コイル2aの内包空間においても、漏れ磁束の密度分布は中心面5を対称面として面対称な分布となる。加えてこの中心面5の下側に位置する空隙補償コイル3aの内包空間における漏れ磁束の密度分布は、磁束密度検出コイル2aの内包空間の中心面5下側の分布と略同一となる。よって、磁束密度検出コイル2aの内包空間を貫く試料4の漏れ磁束由来の磁束は、空隙補償コイル3aの内包空間を貫く磁束の略2倍となる。
【0026】
すなわち、本願の実施形態によれば、中心面5を対称面とした面対称な構造が生む磁界分布および漏れ磁束分布の対称性の効果により、試料4の有無にかかわらず、磁束密度検出コイル2aの内部の空隙部磁束は、空隙補償コイル3a内部の空隙部磁束の略2倍となる。よって、空隙補償コイル3aの巻き線数を磁束密度検出コイル2aの巻き数の略2倍として、空隙部の磁束変化による起電力が打ち消されるように直列接続することにより、試料4の内部の磁束変化のみを取り出すことが可能となる。または、巻き数による調整ではなく、各コイルの出力を個別で収録し、信号の増幅度調整や数値計算で同様の処理を行うことも可能である。
【0027】
この実施形態は、
図1、
図2に示した構造の上下を反転しても、横倒しにした構成でも同様の効果を得ることが可能であるが、より精度の高い測定のためには、試料4と空隙補償コイル3aの外部表面が近接している必要があるため、重力方向を考えると試料4と空隙補償コイル3aが密着しやすい
図1、
図2に示した構造が最も望ましいと考えられる。
【0028】
ここで、
図4乃至
図7を用いて、従来技術の構成のデメリットを記載する。先に従来技術例1として記載した
図4、
図5に示す構造では、励磁コイル1aの発生する磁界由来の磁束は、コイル形状に対称性を付与することにより、磁束密度検出コイル2aおよび空隙補償コイル3a内部に中心面5aを対称面として対称に発生させることが可能であり、励磁コイル由来の空隙磁束は補償することが可能である。一方、巻き枠2bおよび磁束密度コイル2aの厚みにより、試料4は中心面5から離れた面に配置されるため、試料4に加わる磁界は試料4の上下面にて非対称な状態となってしまう。加えて、試料4の表面からの漏れ磁束は主として磁束密度検出コイル2a内部を貫通することとなり、それに比して空隙補償コイル3a内部を貫通する磁束は少なくなるため、各コイルの誘導起電力に占める励磁コイル1a由来の磁束と試料4の漏れ磁束の比が異なった状態となってしまう。さらに、試料4の磁化状態によって、励磁コイル1aの磁界と試料4の漏れ磁束の関係は大きく変動するため、空隙補償コイル3aの出力を用いて、磁束密度検出コイル2aの出力から、漏れ磁束による誘導起電力を正確に差し引くことは困難を伴う。
【0029】
また、先に従来技術例2として記載した
図6、
図7に示す構造では、空隙補償コイル3aでは、磁束密度検出コイル2a内部を貫通する試料4からの漏れ磁束の一部しか拾うことができない。漏れ磁束の分布は、試料4の磁化状態により、大きく変動するため、この一部の漏れ磁束の情報のみで、磁束密度検出コイル2a内部の漏れ磁束を補償することは難しい。
【符号の説明】
【0030】
1a:励磁コイル
1b:励磁コイルの巻き枠
2a:磁束密度検出コイル
2b:磁束密度検出コイルの巻き枠
3a:空隙補償コイル
3b:空隙補償コイルの巻き枠
4:試料
5:励磁コイルの中心面
6a:上部リターンヨーク
6b:下部リターンヨーク
7:ZX断面線
8:YZ断面線
9:試料表面からの漏れ磁束
10:励磁コイルが発生する磁界および磁束