(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111566
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】送受信装置
(51)【国際特許分類】
H04B 1/40 20150101AFI20240809BHJP
【FI】
H04B1/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016150
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】照元 幸次
【テーマコード(参考)】
5K011
【Fターム(参考)】
5K011BA04
5K011DA02
5K011DA12
5K011DA27
5K011KA04
(57)【要約】
【課題】回路規模を抑制しつつ、受信側でSN比の高い信号を得ることができる送受信装置を提供する。
【解決手段】送受信装置(101)は、変調信号(Tx)を生成するように構成される変調信号生成部(9A)と、前記変調信号によって駆動されるように構成される送信部(1)と、前記送信部から送信される送信信号(Wt)を受信するように構成される受信部(2)と、前記受信部から出力される受信信号(Rx)が入力されるように構成され、水晶振動子を有する水晶フィルタ(5)と、を備え、前記変調信号は、前記水晶フィルタの共振周波数(fr)よりも高い所定の第1周波数(f1)と前記共振周波数よりも低い所定の第2周波数(f2)との間を変化するスイープ信号である。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調信号を生成するように構成される変調信号生成部と、
前記変調信号によって駆動されるように構成される送信部と、
前記送信部から送信される送信信号を受信するように構成される受信部と、
前記受信部から出力される受信信号が入力されるように構成され、水晶振動子を有する水晶フィルタと、
を備え、
前記変調信号は、前記水晶フィルタの共振周波数よりも高い所定の第1周波数と前記共振周波数よりも低い所定の第2周波数との間を変化するスイープ信号である、送受信装置。
【請求項2】
前記第1周波数と前記第2周波数との間の中心周波数は、前記共振周波数である、請求項1に記載の送受信装置。
【請求項3】
前記変調信号は、サイン波の信号、または矩形波の信号である、請求項1に記載の送受信装置。
【請求項4】
前記水晶フィルタの出力に基づく信号を周波数解析するように構成される周波数解析部をさらに備え、
前記周波数解析部により得られる前記変調信号の周波数のパワースペクトル値を信号強度として扱う、請求項1に記載の送受信装置。
【請求項5】
所定のスイープ範囲の前記変調信号を用いて送受信を行った場合に前記周波数解析部により得られたパワースペクトル値がピークとなる周波数に基づき、前記スイープ範囲における中心周波数からのずれを検出し、検出された前記ずれに基づいて前記中心周波数を調整するように構成される周波数調整部をさらに備え、
前記変調信号生成部は、調整された前記中心周波数で前記スイープ範囲よりも狭めた範囲での前記変調信号を生成する、請求項4に記載の送受信装置。
【請求項6】
前記スイープ範囲よりも狭めた範囲での前記変調信号は、固定周波数の信号である、請求項5に記載の送受信装置。
【請求項7】
前記変調信号生成部は、前記変調信号をオンオフさせるように構成される、請求項1に記載の送受信装置。
【請求項8】
前記水晶フィルタの出力に基づく信号を周波数解析するように構成される周波数解析部と、差分取得部と、をさらに備え、
前記変調信号のオン部に相当する前記受信信号の部分について前記周波数解析部により周波数解析して第1周波数解析結果が得られ、
前記変調信号のオフ部に相当する前記受信信号の部分について前記周波数解析部により周波数解析して第2周波数解析結果が得られ、
前記差分取得部は、前記第1周波数解析結果による前記変調信号の周波数のパワースペクトル値と、前記第2周波数解析結果による前記変調信号の周波数のパワースペクトル値と、の差分を信号強度として取得する、請求項7に記載の送受信装置。
【請求項9】
前記水晶フィルタの出力に基づく信号に基づいて包絡線を検波するように構成される包絡線検波回路をさらに備え、前記包絡線に基づいて信号強度が得られる、請求項1に記載の送受信装置。
【請求項10】
差分取得部をさらに備え、
記変調信号生成部は、前記変調信号をオンオフさせるように構成され、
前記差分取得部は、前記変調信号のオン部に対応する前記受信信号の部分について前記包絡線検波回路により得られる第1包絡線と、前記変調信号のオフ部に対応する前記受信信号の部分について前記包絡線検波回路により得られる第2包絡線との差分を取得する、請求項9に記載の送受信装置。
【請求項11】
前記送信部および前記受信部は、それぞれ共鳴トンネルダイオードを有し、
前記変調信号において、下限電圧はテラヘルツ波が発信しない電圧、上限電圧はテラヘルツ波が発信する電圧に設定される、請求項1に記載の送受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、周波数が0.1THz~10THzであるテラヘルツ帯と呼ばれる周波数領域の電磁波を利用して大容量通信、情報処理、あるいはイメージング、計測などを行う試みが行われている。この周波数領域は、光と電波との両方の特性を兼ね備えており、この周波数帯で動作するデバイスが実現されれば、上述したイメージング、大容量通信・情報処理のほか、物性、天文、生物などのさまざまな分野における計測など、多くの用途に利用されうる。
【0003】
テラヘルツ帯の周波数の電磁波を発生または受信する素子としては、例えばRTD(共鳴トンネルダイオード)と微細スロットアンテナを集積する構造のものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、上記のRTDなどを利用した送受信装置において、回路規模を抑制しつつ、受信側でSN比の高い信号を得ることが要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
例えば、本開示に係る送受信装置は、
変調信号を生成するように構成される変調信号生成部と、
前記変調信号によって駆動されるように構成される送信部と、
前記送信部から送信される送信信号を受信するように構成される受信部と、
前記受信部から出力される受信信号が入力されるように構成され、水晶振動子を有する水晶フィルタと、
を備え、
前記変調信号は、前記水晶フィルタの共振周波数よりも高い所定の第1周波数と前記共振周波数よりも低い所定の第2周波数との間を変化するスイープ信号である構成としている。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る送受信装置によれば、回路規模を抑制しつつ、受信側でSN比の高い信号を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、比較例に係る送受信装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、1/fノイズを説明するための図である。
【
図4】
図4は、バイアスティー回路の構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、バンドパスフィルタの特例の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の第1実施形態に係る送受信装置の構成を示す図である。
【
図7】
図7は、水晶フィルタの特性の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、変調信号の周波数変動の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、比較例と本開示の実施形態における受信側の信号の波形例を示す図である。
【
図10】
図10は、本開示の実施形態における効果を説明するための図である。
【
図11】
図11は、本開示の第2実施形態に係る送受信装置の構成例を示す図である。
【
図12】
図12は、本開示の第3実施形態に係る送受信装置の構成例を示す図である。
【
図13】
図13は、本開示の第3実施形態における変調信号および受信信号の概略的な波形例を示す図である。
【
図14】
図14は、本開示の第4実施形態に係る送受信装置の構成例を示す図である。
【
図17】
図17は、本開示の第4実施形態に係る送受信装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
<1.比較例>
ここでは、本開示の実施形態について説明する前に、比較例について説明する。比較例を説明することで、課題がより明らかになる。
【0011】
図1は、比較例に係る送受信装置30の構成を示す図である。
図1に示す送受信装置30は、送信側において送信部21を備え、受信側において受信部22、バイアスティー回路23、BPF(バンドパスフィルタ)24、アンプ25、およびMPU(マイクロプロセッサ)26を備える。なお、送受信装置30は、例えば、送信部21から出力された送信信号Wtが対象物で反射して受信部22により受信される反射型の構成としてもよいし、送信部21から出力された送信信号Wtが対象物を透過して受信部22により受信される透過型の構成としてもよい。
【0012】
送信部21は、RTDおよび微細スロットアンテナを基板上に形成したチップをパッケージ化したものである。上記RTDに変調信号Txが印加される。変調信号Txは、サイン波の信号または矩形波の信号であり、
図2に示すような1/fノイズを考慮して変調信号Txの周波数(変調周波数)は、例えば1MHzと比較的高めに設定される。
【0013】
また、
図3に示すように、変調信号Txでは、バイアス電圧V0を中心として下限電圧V1はテラヘルツ波が発信しない電圧、上限電圧V2はテラヘルツ波が発信する電圧に設定される。変調信号Txの印加によって送信部21はオンオフ駆動され、送信部21からテラヘルツ帯の送信信号(送信波)Wtが出力される。
【0014】
受信部22は、送信部21と同様、RTDおよび微細スロットアンテナを基板上に形成したチップをパッケージ化したものである。送信信号Wtは、上記微細スロットアンテナにより受波される。受信部22とBPF24の間には、バイアスティー回路23が接続される。バイアスティー回路23は、
図4に示すように、インダクタLとコンデンサCとを有する。直流電圧VccがインダクタLを介して受信部22におけるRTDに供給される。受信部22から出力される交流信号は、コンデンサCを通過して受信信号RxとしてBPF24へ出力される。コンデンサCは、直流電圧Vccをカットする。
【0015】
BPF24は、例えば
図5に示す周波数fとゲインGの関係であるフィルタ特性を有し、特定の周波数帯域の信号を通過させるフィルタであり、変調信号Txの周波数の信号を通過させ、ノイズを除去する。BPF24は、LCRあるいはオペアンプなどで構成されたアナログ回路である。
【0016】
BPF24を通過した信号はアンプ25で増幅され、MPU26に出力される。MPU26は、アンプ25からの出力をAD変換するADC(ADコンバータ)26Aと、AD変換後の信号に対してFFTなどの周波数解析を行う周波数解析部26Bと、を有する。周波数解析部26により得られる変調信号Txの周波数でのパワースペクトル値が受信側での信号強度(センサ感度信号の強度)として扱われる。
【0017】
しかしながら、このような比較例の構成では、次のような課題が生じる。まず、受信側での信号のSN比を向上させるために、BPF24において信号を通過させる周波数帯域を狭めた急峻な特性を得るには、BPF24を高次数のフィルタとして構成する必要があり、部品点数が増加して回路規模が増加してしまう。また、先述したように1/fノイズの影響を抑えるために変調信号Txの周波数を例えば1MHzと比較的高く設定するため、MPU26における信号処理の負荷(消費電流、メモリ容量)が大きくなる。
【0018】
<2.第1実施形態>
図6は、本開示の第1実施形態に係る送受信装置101の構成を示す図である。送受信装置101は、送信側において送信部1と、受信側において受信部2、バイアスティー回路3、アンプ4、水晶フィルタ(クリスタルフィルタ)5、アンプ6、BPF7、およびアンプ8を備える。また、送受信装置101は、MPU9を備える。MPU9は、変調信号生成部9Aと、ADC9Bと、周波数解析部9と、を有する。送受信装置101は、先述した比較例と同様に、例えば反射型または透過型に構成される。
【0019】
変調信号生成部9Aは、変調信号Txを生成する。生成された変調信号Txは、送信部1に印加される。送信部1、受信部2、およびバイアスティー回路3については、先述した比較例と同様に構成される。変調信号Txは、サイン波の信号または矩形波の信号である。また、先述した比較例と同様、
図3に示すように、変調信号Txでは、バイアス電圧V0を中心として下限電圧V1はテラヘルツ波が発信しない電圧、上限電圧V2はテラヘルツ波が発信する電圧に設定される。変調信号Txの印加によって送信部1はオンオフ駆動され、送信部1からテラヘルツ帯の送信信号(送信波)Wtが出力される。
【0020】
先述した比較例と同様、送信信号Wtが受信部2により受信され、受信部2から出力された受信信号Rxがバイアスティー回路3を介してアンプ4に入力される。受信信号Rxは、アンプ4で増幅されて水晶フィルタ5に入力される。
【0021】
水晶フィルタ5は、例えば単一の水晶振動子のみで構成される。水晶フィルタ5は、例えば
図7に示すような周波数fとゲインGとの関係であるフィルタ特性を有する。
図7に示すように、水晶フィルタ5は、共振周波数frを有し、Q値が高く、通過する信号の周波数帯域が狭い。これにより、水晶フィルタ5は、構成する部品点数を少なくしつつも、不要な周波数成分を除去する特性に優れる。
【0022】
水晶フィルタ5を通過した信号は、アンプ6で増幅され、BPF7に入力される。BPF7は、アンチエイリアスのために設けられるローパスフィルタである。BPF7を通過した信号は、アンプ8で増幅されてADC9Bに入力される。ADC9Bに入力された信号は、ADC9BでAD変換され、周波数解析部9Cで周波数解析される。
【0023】
ここで、水晶フィルタ5は先述したような急峻なフィルタ特定を有するため、仮に変調信号Txの周波数を固定周波数とした場合、送信部1の周波数特性がばらついたり、温度特性による周波数シフトが発生すると、水晶フィルタ5を通過させたい信号が減衰してしまい、SN比の低下につながる。そこで、本実施形態では、変調信号生成部9Aは、変調信号Txを周波数が変化するスイープ信号として生成する。
【0024】
図8は、変調信号Txの周波数の変化の一例を示す図である。
図8の例では、1周期Tfにおいて、変調信号Txの周波数は、中心周波数f0から中心周波数f0より高い第1周波数f1に向けてリニアに変化し、その後、中心周波数f0を介して中心周波数f0より低い第2周波数f2に向けてリニアに変化し、その後、中心周波数f0に向けてリニアに変化する。中心周波数f0=水晶フィルタ5の共振周波数frとする。共振周波数frは、例えば60kHzである。変調信号Txが例えばf0=60kHzとしてスイープ範囲60kHz±1%で変動する場合は、f1=60.6kHz、f2=59.4kHzとなる。f0=60kHzとして、Tfは、おおよそf0の1/100、例えば1kHzに相当する周期に設定される。MPU9においては、周波数解析部9Cにより得られる変調信号Txの周波数のパワースペクトル値を受信側での信号強度として扱う。具体的には、例えば、f0でのパワースペクトル値を信号強度として扱ってもよいし、パワースペクトル値のピークを信号強度として扱ってもよい。
【0025】
このようにすることで、本実施形態では、受信側において水晶フィルタ5を用いることで部品点数を少なくしつつも急峻なフィルタ特性を実現でき、かつ送信側での特性ばらつきが発生しても受信側でのSN比を向上させることができる。また、変調信号Txの周波数を比較的に低く設定することが可能であり、MPU9における処理負荷を抑えることができる。
【0026】
なお、中心周波数f0は必ずしも共振周波数frでなくてもよく、スイープ範囲内に共振周波数frが含まれていればよい。
【0027】
ここで、
図9の左方は、比較例(
図1)におけるアンプ25の出力波形の例を示しており、サイン波形が歪んでおり、変調信号Txの周波数以外の周波数成分が含まれている。一方、
図9の右方は、本実施形態におけるアンプ8の出力波形の例を示しており、サイン波形のひずみが少なく、変調信号Txの周波数の成分が主体の波形が得られている。これにより、SN比が本実施形態では比較例と比べて向上している。
【0028】
また、
図10の上方には、本実施形態の構成において、変調信号Txの周波数を固定周波数とした場合の信号強度SV1およびノイズ強度NV1の所定周波数(=水晶フィルタ5の共振周波数fr、ここでは例として60kHz)からの誤差との関係の一例を示している。また、
図10の上方には、本実施形態の構成において、変調信号Txをスイープ信号とした場合の信号強度SV2およびノイズ強度NV2のスイープ範囲との関係の一例を示している。なお、スイープ範囲をf0±α%(f0=fr、ここでは60kHz)とした場合、
図10の横軸は、±α%を示す。また、
図10において、信号強度は、反射型の構成において金属の対象物を配置した場合であり、ノイズ強度は、反射型の構成において対象物を配置しない、すなわち反射波がない場合である。
【0029】
さらに、
図10の下方においては、変調信号Txの周波数を固定周波数とした場合のSN比SN1、変調信号Txをスイープ信号とした場合のSN比SN2を示す。
図10の下方は、
図10の上方に対応する結果である。
【0030】
このように、変調信号Txの周波数を固定周波数とした場合は、水晶フィルタ5の共振周波数frから少しでもずれると信号強度が大きく減衰し、SN比が大きく低下する。これに対し、変調信号Txをスイープ信号とした場合は、スイープ範囲を広くするほど信号強度が減衰し、SN比は低下するが、SN比の低下の程度は大幅に抑えられている。
【0031】
<3.第2実施形態>
図11は、本開示の第2実施形態に係る送受信装置102の構成を示す図である。本実施形態に係る送受信装置102の第1実施形態(
図6)との相違点は、MPU9の構成である。具体的には、MPU9において、周波数調整部9Dを設けている。
【0032】
図11の構成では、まず変調信号生成部9Aがf0±α%のスイープ信号として変調信号Txを生成して送信部1を駆動し、受信側においてアンプ8の出力がADC9BによりAD変換され、周波数解析部9Cにより周波数解析される。ここで、周波数調整部9Dは、周波数解析により得られたパワースペクトル値がピークとなる周波数のf0からのずれを検出し、このずれに基づいてf0を調整する。次に、変調信号生成部9Aは、調整されたf0に基づいてf0±β%のスイープ信号として変調信号Txを生成して送信部1を駆動する。ただし、β<αとして、スイープ範囲を狭める。これにより、受信側において周波数解析部9Cにより得られた変調信号Txの周波数におけるパワースペクトル値が信号強度として扱われる。
【0033】
例えば、1回目の測定(送受信)においてf0=60kHz(水晶フィルタ5の共振周波数fr)である場合に、周波数解析により得られたパワースペクトル値がピークとなる周波数が61kHzであった場合、ずれが1kHzであるので、2回目の測定においてf0=59kHzとする。
【0034】
これにより、本測定である2回目の測定において、SN比を向上させた測定を行うことができる。なお、β=0とすれば、変調信号Txの周波数を固定周波数とした場合に相当し、SN比をより向上させることができる。
【0035】
<4.第3実施形態>
図12は、本開示の第3実施形態に係る送受信装置103の構成を示す図である。本実施形態に係る送受信装置103の第1実施形態(
図6)との相違点は、MPU9の構成である。具体的には、MPU9において、差分取得部9Eを設けている。
【0036】
本実施形態では、
図13に概略的な波形例を示すように、変調信号生成部9Aは、変調信号Txをオンオフさせる。そして、変調信号Txのオン部に対応する受信信号Rxの部分について周波数解析部9Cにより周波数解析を行い、第1周波数解析結果を得る。一方、変調信号Txのオフ部に対応する受信信号Rxの部分について周波数解析部9Cにより周波数解析を行い、第2周波数解析結果を得る。そして、差分取得部9Eは、第1周波数解析結果による変調信号Txの周波数のパワースペクトル値と、第2周波数解析結果による変調信号Txの周波数のパワースペクトル値と、の差分を信号強度として取得する。
【0037】
これにより、ノイズを除去した状態での信号強度を得ることができる。
【0038】
<5.第4実施形態>
図14は、本開示の第4実施形態に係る送受信装置104の構成を示す図である。本実施形態に係る送受信装置104の第1実施形態(
図6)との相違点は、包絡線検波回路10を設けていることと、MPU9において周波数解析部を設けていないことである。
【0039】
包絡線検波回路10は、例えば
図15に示す構成である。
図15に示す構成例では、包絡線検波回路10は、ダイオード10A、コンデンサ10B、および抵抗10Cを有する。ダイオード10Aのカソードに対して、コンデンサ10Bと抵抗10Cの並列回路が接続される。ダイオード10Aのアノードが入力側となり、ダイオード10Aのカソードが出力側となる。
【0040】
このような包絡線検波回路10により、
図16に波形例を示すように、アンプ8の出力波形Asにおける包絡線Evが検波されてADC9Bへ出力される。すなわち、包絡線Evは、アンプ8の出力信号をDC信号に変換したものであり、このDC信号レベルが信号強度として扱われる。これにより、MPU9において周波数解析部が不要となる。
【0041】
なお、本実施形態において第3実施形態のように変調信号Txをオンオフさせる場合は、
図17に示すようにMPU9において差分取得部9Fを設ければよい。この場合、変調信号Txのオン部に対応する受信信号Rxの部分について包絡線検波回路10により包絡線Evを検波して第1包絡線を取得し、変調信号Txのオフ部に対応する受信信号Rxの部分について包絡線検波回路10により包絡線Evを検波して第2包絡線を取得し、差分取得部9Fにより第1包絡線と第2包絡線との差分を取得する。この差分が信号強度として扱われる。
【0042】
<6.その他>
本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0043】
<7.付記>
以上のように、例えば、本開示に係る送受信装置(101)は、
変調信号(Tx)を生成するように構成される変調信号生成部(9A)と、
前記変調信号によって駆動されるように構成される送信部(1)と、
前記送信部から送信される送信信号(Wt)を受信するように構成される受信部(2)と、
前記受信部から出力される受信信号(Rx)が入力されるように構成され、水晶振動子を有する水晶フィルタ(5)と、
を備え、
前記変調信号は、前記水晶フィルタの共振周波数(fr)よりも高い所定の第1周波数(f1)と前記共振周波数よりも低い所定の第2周波数(f2)との間を変化するスイープ信号である構成としている(第1の構成、
図6)。
【0044】
また、上記第1の構成において、前記第1周波数(f1)と前記第2周波数(f2)との間の中心周波数(f0)は、前記共振周波数(fr)である構成としてもよい(第2の構成)。
【0045】
また、上記第1または第2の構成において、前記変調信号(Tx)は、サイン波の信号、または矩形波の信号である構成としてもよい(第3の構成)。
【0046】
また、上記第1から第3のいずれかの構成において、前記水晶フィルタ(5)の出力に基づく信号を周波数解析するように構成される周波数解析部(9C)をさらに備え、
前記周波数解析部により得られる前記変調信号の周波数のパワースペクトル値を信号強度として扱う構成としてもよい(第4の構成)。
【0047】
また、上記第4の構成において、所定のスイープ範囲の前記変調信号を用いて送受信を行った場合に前記周波数解析部により得られたパワースペクトル値がピークとなる周波数に基づき、前記スイープ範囲における中心周波数からのずれを検出し、検出された前記ずれに基づいて前記中心周波数を調整するように構成される周波数調整部(9D)をさらに備え、
前記変調信号生成部は、調整された前記中心周波数で前記スイープ範囲よりも狭めた範囲での前記変調信号を生成する構成としてもよい(第5の構成、
図11)。
【0048】
また、上記第5の構成において、前記スイープ範囲よりも狭めた範囲での前記変調信号は、固定周波数の信号である構成としてもよい(第6の構成)。
【0049】
また、上記第1から第3のいずれかの構成において、前記変調信号生成部(9A)は、前記変調信号をオンオフさせるように構成されることとしてもよい(第7の構成、
図12)。
【0050】
また、上記第7の構成において、前記水晶フィルタ(5)の出力に基づく信号を周波数解析するように構成される周波数解析部(9C)と、差分取得部(9E)と、をさらに備え、
前記変調信号のオン部に相当する前記受信信号の部分について前記周波数解析部により周波数解析して第1周波数解析結果が得られ、
前記変調信号のオフ部に相当する前記受信信号の部分について前記周波数解析部により周波数解析して第2周波数解析結果が得られ、
前記差分取得部は、前記第1周波数解析結果による前記変調信号の周波数のパワースペクトル値と、前記第2周波数解析結果による前記変調信号の周波数のパワースペクトル値と、の差分を信号強度として取得する構成としてもよい(第8の構成)。
【0051】
また、上記第1から第3のいずれかの構成において、前記水晶フィルタ(5)の出力に基づく信号に基づいて包絡線を検波するように構成される包絡線検波回路(10)をさらに備え、前記包絡線に基づいて信号強度が得られる構成としてもよい(第9の構成、
図14)。
【0052】
また、上記第9の構成において、差分取得部(9F)をさらに備え、
記変調信号生成部(9A)は、前記変調信号をオンオフさせるように構成され、
前記差分取得部は、前記変調信号のオン部に対応する前記受信信号の部分について前記包絡線検波回路(10)により得られる第1包絡線と、前記変調信号のオフ部に対応する前記受信信号の部分について前記包絡線検波回路により得られる第2包絡線との差分を取得する構成としてもよい(第10の構成、
図17)。
【0053】
また、上記第1から第10のいずれかの構成において、前記送信部(1)および前記受信部(2)は、それぞれ共鳴トンネルダイオードを有し、
前記変調信号(Tx)において、下限電圧(V1)はテラヘルツ波が発信しない電圧、上限電圧(V2)はテラヘルツ波が発信する電圧に設定されることとしてもよい(第11の構成、
図3)。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本開示は、例えば、各種用途のセンサに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 送信部
2 受信部
3 バイアスティー回路
4 アンプ
5 水晶フィルタ
6 アンプ
7 バンドパスフィルタ
8 アンプ
9 MPU
9A 変調信号生成部
9B ADコンバータ
9C 周波数解析部
9D 周波数調整部
9E 差分取得部
9F 差分取得部
10 包絡線検波回路
10A ダイオード
10B コンデンサ
10C 抵抗
21 送信部
22 受信部
23 バイアスティー回路
24 バンドパスフィルタ
25 アンプ
26 MPU
26A ADコンバータ
26B 周波数解析部
30 送受信装置
101~104 送受信装置
C コンデンサ
L インダクタ