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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111567
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】マルチフェーズ型コンバータ
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20240809BHJP
【FI】
H02M7/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016151
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 竜也
(72)【発明者】
【氏名】川上 太知
【テーマコード(参考)】
5H006
【Fターム(参考)】
5H006AA02
5H006CA02
5H006CA07
5H006CB02
5H006CB08
5H006DA03
5H006DB01
5H006DB07
5H006DC02
5H006DC03
(57)【要約】
【課題】大容量のコンデンサを用いなくても出力電圧の変動を抑制することができる技術を提供する。
【解決手段】複数のコンバータ回路は、それぞれ、スイッチング素子を備え、スイッチング素子が動作することにより入力側から出力側へ電流が流れる動作状態と、スイッチング素子が動作しないことにより入力側から出力側へ電流が流れない非動作状態と、を切り替え可能であってもよい。制御部は、複数のコンバータ回路のうちの少なくとも1つのコンバータ回路の動作状態と非動作状態を切り替える場合に、切り替え前に動作状態であるコンバータ回路の数(N)と、切り替え後に動作状態であるコンバータ回路の数(N)と、切り替え前の出力電流値(Iob)と、切り替え後の出力電流値(Ioa)とに基づいて算出される補正値に基づいて、切り替え後に動作状態であるコンバータ回路のスイッチング素子に入力する入力信号を生成してもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流の入力電流を直流の出力電流に変換するマルチフェーズ型コンバータであって、
入力と出力との間で並列に配置された複数のコンバータ回路と、
制御部と、を備え、
複数の前記コンバータ回路は、それぞれ、スイッチング素子を備え、前記スイッチング素子が動作することにより入力側から出力側へ電流が流れる動作状態と、前記スイッチング素子が動作しないことにより入力側から出力側へ電流が流れない非動作状態と、を切り替え可能であり、
前記制御部は、複数の前記コンバータ回路のうちの少なくとも1つの前記コンバータ回路の動作状態と非動作状態を切り替える場合に、切り替え前に動作状態である前記コンバータ回路の数(N)と、切り替え後に動作状態である前記コンバータ回路の数(N)と、切り替え前の出力電流値(Iob)と、切り替え後の出力電流値(Ioa)とに基づいて算出される補正値に基づいて、切り替え後に動作状態である前記コンバータ回路の前記スイッチング素子に入力する入力信号を生成する、マルチフェーズ型コンバータ。
【請求項2】
請求項1に記載のマルチフェーズ型コンバータであって、
前記制御部は、Iob/NとIoa/Nとの差分に基づいて算出される前記補正値に基づいて、切り替え後に動作状態である前記コンバータ回路の前記スイッチング素子に入力する前記入力信号を生成する、マルチフェーズ型コンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、マルチフェーズ型コンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の動作フェーズを有するマルチフェーズ型DC/DCコンバータ回路が開示されている。特許文献1のマルチフェーズ型DC/DCコンバータ回路は、出力負荷の大きさで動作フェーズの動作数を切り替え可能なフェーズ切替回路を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-116834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マルチフェーズ型コンバータでは、動作フェーズ数を切り替えたときに出力電圧が大きく変動することがある。出力電圧の変動を抑制するために大容量のコンデンサを用いることも考えられるが、そうすると装置が大型化してしまう。本明細書は、大容量のコンデンサを用いずに出力電圧の変動を抑制することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本技術の第1の態様は、交流の入力電流を直流の出力電流に変換するマルチフェーズ型コンバータである。マルチフェーズ型コンバータは、入力と出力との間で並列に配置された複数のコンバータ回路と、制御部と、を備える。複数の前記コンバータ回路は、それぞれ、スイッチング素子を備え、前記スイッチング素子が動作することにより入力側から出力側へ電流が流れる動作状態と、前記スイッチング素子が動作しないことにより入力側から出力側へ電流が流れない非動作状態と、を切り替え可能であってもよい。前記制御部は、複数の前記コンバータ回路のうちの少なくとも1つの前記コンバータ回路の動作状態と非動作状態を切り替える場合に、切り替え前に動作状態である前記コンバータ回路の数(N)と、切り替え後に動作状態である前記コンバータ回路の数(N)と、切り替え前の出力電流値(Iob)と、切り替え後の出力電流値(Ioa)とに基づいて算出される補正値に基づいて、切り替え後に動作状態である前記コンバータ回路の前記スイッチング素子に入力する入力信号を生成してもよい。
【0006】
マルチフェーズ型コンバータでは、動作フェーズ数が切り替わる場合に、切り替え前後における動作状態のコンバータ回路の数が出力電圧の変動に影響する。そこで、上記の構成を備えることにより、大容量のコンデンサを用いなくても出力電圧の変動を抑制することができる。
【0007】
第2の態様では、上記第1の態様において、前記制御部は、Iob/NとIoa/Nとの差分に基づいて算出される前記補正値に基づいて、切り替え後に動作状態である前記コンバータ回路の前記スイッチング素子に入力する前記入力信号を生成してもよい。
【0008】
この構成によれば、切り替え後に動作状態であるコンバータ回路のスイッチング素子に適切な入力信号を入力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例のマルチフェーズ型コンバータの回路図。
図2】実施例の第1処理のフローチャート。
図3】実施例の第2処理のフローチャート。
図4】試験例の結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施例のマルチフェーズ型コンバータ2(以下「コンバータ」という)について図面を参照して説明する。コンバータ2は、交流の入力電流を直流の出力電流に変換するAC-DCコンバータである。コンバータ2は、複数のフェーズ(即ち、マルチフェーズ)で入力電流を出力電流に変換することができる。実施例のコンバータ2は、PFC(Power Factor Correction)コンバータと呼ばれることもある。また、コンバータ2は、ブリッジレスPFCコンバータと呼ばれることもある。また、コンバータ2は、トーテムポールPFCコンバータと呼ばれることもある。
【0011】
図1に示すように、実施例のコンバータ2は、交流電源4と負荷40に接続されている。コンバータ2の入力端子が交流電源4(例えば、商用電源)に接続されており、コンバータ2の出力端子が負荷40(例えば、抵抗)に接続されている。
【0012】
コンバータ2は、第1コンバータ回路10と、第2コンバータ回路20と、制御部50とを備えている。また、コンバータ2は、コンバータ2の入力電圧値を検出する入力電圧センサ60と、コンバータ2の入力電流値を検出する入力電流センサ62(62a、62b)と、コンバータ2の出力電圧値を検出する出力電圧センサ64と、コンバータ2の出力電流値を検出する出力電流センサ66とを備えている。
【0013】
第1コンバータ回路10と第2コンバータ回路20は、並列接続されている。第1コンバータ回路10と第2コンバータ回路20は、コンバータ2の入力端子と出力端子の間に並列で配置されている。第1コンバータ回路10と第2コンバータ回路20は、交流電源4と負荷40に並列で接続されている。第1コンバータ回路10が、マルチフェーズのコンバータ2における第1フェーズを構成し、第2コンバータ回路20が、マルチフェーズのコンバータ2における第2フェーズを構成する。
【0014】
第1コンバータ回路10は、第1インダクタ14と、複数の第1スイッチング素子12(12a、12b)と、複数のダイオード32(32a、32b)と、コンデンサ30とを備えている。また、第2コンバータ回路20は、第2インダクタ24と、複数の第2スイッチング素子22(22a、22b)と、複数のダイオード32(32a、32b)と、コンデンサ30とを備えている。第1コンバータ回路10と第2コンバータ回路20は、共に、複数のダイオード32(32a、32b)と、コンデンサ30とを備えており、これらを共用している。
【0015】
第1コンバータ回路10の一対の第1スイッチング素子12a、12bは、直列接続されている。一方の第1スイッチング素子12aが負荷40の一端に接続されており、他方の第1スイッチング素子12bが負荷40の他端に接続されている。また、第2コンバータ回路20の一対の第2スイッチング素子22a、22bも、直列接続されている。一方の第2スイッチング素子22aが負荷40の一端に接続されており、他方の第2スイッチング素子22bが負荷40の他端に接続されている。第1コンバータ回路10の第1スイッチング素子12(12a、12b)と、第2コンバータ回路20の第2スイッチング素子22(22a、22b)とは、並列接続されている。
【0016】
第1コンバータ回路10の第1スイッチング素子12と、第2コンバータ回路20の第2スイッチング素子22とは、それぞれ、ゲートを備えるトランジスタ(例えば、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)やGaNHEMT(Gallium Nitride High Electron Mobility Transistor))から構成されている。第1スイッチング素子12及び第2スイッチング素子22は、ゲートを駆動するためのゲート駆動信号により動作する。ゲート駆動信号は、例えば、PWM信号により各スイッチング素子12、22に入力される。
【0017】
一対のダイオード32a、32bは、直列接続されている。一方のダイオード32aが負荷40の一端に接続されており、他方のダイオード32bが負荷40の他端に接続されている。コンデンサ30は、一端が負荷40の一端に接続されており、他端が負荷40の他端に接続されている。コンデンサ30の一端は、一方の第1スイッチング素子12a、一方の第2スイッチング素子22a、及び一方のダイオード32aに接続されている。コンデンサ30の他端は、他方の第1スイッチング素子12b、他方の第2スイッチング素子22b、及び他方のダイオード32bに接続されている。
【0018】
交流電源4は、一端が第1インダクタ14を介して一対の第1スイッチング素子12a、12bの間に接続されており、他端が一対のダイオード32a、32bの間に接続されている。また、交流電源4は、一端が第2インダクタ24を介して一対の第2スイッチング素子22a、22bの間に接続されている。
【0019】
制御部50は、例えば、CPUを備えており、所定のプログラムに基づいて様々な制御や処理を実行可能である。また、制御部50は、記憶部52(例えば、ROM、RAM等)を備えており、様々な情報を記憶可能である。また、制御部50は、ゲート駆動回路を備えており、第1スイッチング素子12及び第2スイッチング素子22にゲート駆動信号(入力信号)を入力することができる。制御部50は、第1スイッチング素子12及び第2スイッチング素子22にゲート駆動信号(入力信号)を入力することにより、第1スイッチング素子12及び第2スイッチング素子22を動作させることができる。
【0020】
制御部50は、第1コンバータ回路10の第1スイッチング素子12を制御することにより、第1コンバータ回路10を動作状態と非動作状態に切り替えることができる。第1コンバータ回路10の動作状態は、第1スイッチング素子12が動作することによりコンバータ2の入力側から第1コンバータ回路10を通じてコンバータ2の出力側へ電流が流れる状態である。第1コンバータ回路10の非動作状態は、第1スイッチング素子12が動作しないことによりコンバータ2の入力側から第1コンバータ回路10を通じてコンバータ2の出力側へ電流が流れない状態である。
【0021】
また、制御部50は、第2コンバータ回路20の第2スイッチング素子22を制御することにより、第2コンバータ回路20を動作状態と非動作状態に切り替えることができる。第2コンバータ回路20の動作状態は、第2スイッチング素子22が動作することによりコンバータ2の入力側から第2コンバータ回路20を通じてコンバータ2の出力側へ電流が流れる状態である。第2コンバータ回路20の非動作状態は、第2スイッチング素子22が動作しないことによりコンバータ2の入力側から第2コンバータ回路20を通じてコンバータ2の出力側へ電流が流れない状態である。
【0022】
制御部50は、第2コンバータ回路20の動作状態と非動作状態を切り替えることにより、コンバータ2の動作フェーズ数を切り替えることができる。変形例では、制御部50は、第1コンバータ回路10の動作状態と非動作状態を切り替えることにより、コンバータ2の動作フェーズ数を切り替えてもよい。
【0023】
次に、実施例のコンバータ2で実行される処理について説明する。コンバータ2では、制御部50が、入力電圧センサ60と入力電流センサ62により、コンバータ2の入力電圧値(Vin)と入力電流値(Iin)を検出する。コンバータ2の入力電流値(Iin)は、2個の入力電流センサ62a、62bによる検出電流値の合計値である。また、制御部50が、出力電圧センサ64と出力電流センサ66により、コンバータ2の出力電圧値(Vout)と出力電流値(Iout)を検出する。コンバータ2の入力電圧値(Vin)、入力電流値(Iin)、出力電圧値(Vout)、及び、出力電流値(Iout)は、各センサ60、62、64、66により継続的に検出される。入力電圧値(Vin)、入力電流値(Iin)、出力電圧値(Vout)、及び、出力電流値(Iout)は、以下で説明する第1処理及び第2処理で用いられる。
【0024】
(第1処理;図2
実施例の第1処理について説明する。第1処理は、例えば、制御部50の電源がオンになると開始される。図2に示すように、第1処理のS2では、制御部50が、目標の出力電圧値(Vta)と出力電圧センサ64により検出される出力電圧値(Vout)との差分(Vta-Vout)を算出する。目標の出力電圧値(Vta)は、例えば、出力先の装置の要求仕様に基づいて設定される。
【0025】
続くS4では、制御部50が、上記のS2で算出される差分(Vta-Vout)に基づいて出力電圧第1補正値(Vc1)を算出する。出力電圧第1補正値(Vc1)は、例えば、下記の式(1)に基づいて算出される。下記の式(1)において、Kは、任意のゲインであり、sは、ラプラス演算子であり、Tは、任意の周期である。KとTは、コンバータ2の仕様に応じて適宜設定可能である。
【数1】
【0026】
続くS6では、制御部50が、特定補正制御の開始フラグ(図3の第2処理のS66参照)がオンであるか否かを判断する。特定補正制御の開始フラグがオンである場合(S6でYES)、処理はS8に進み、開始フラグがオフである場合(S6でNO)、処理はS10に進む。
【0027】
S6でYESの後のS8では、制御部50が、出力電圧補正値(V)を、出力電圧第1補正値(Vc1)と出力電圧第2補正値(Vc2)の差分(Vc1-Vc2)に設定する。なお、出力電圧第2補正値(Vc2)については後述する。一方、S6でNOの後のS10では、制御部50が、出力電圧補正値(V)を、出力電圧第1補正値(Vc1)に設定する。
【0028】
続くS12では、制御部50が、目標の入力電流値(Ita)と入力電流センサ62により検出される入力電流値(Iin)との差分(Ita-Iin)を算出する。目標の入力電流値(Ita)は、例えば、上記のS8又はS10で設定される出力電圧補正値(V)に基づいて設定される。具体的には、例えば、制御部50が、入力電圧センサ60により検出される入力電圧値(Vin)に基づいて入力電圧の波形の関数の絶対値(|sinωt|)を算出する。また、制御部50が、出力電圧補正値(V)と入力電圧の波形の関数の絶対値(|sinωt|)とを乗算することにより目標の入力電流値(Ita=V×|sinωt|)を算出する。これにより、目標の入力電流値(Ita)が設定される。
【0029】
続くS14では、制御部50が、上記のS12で算出される差分(Ita-Iin)に基づいて入力電流補正値(I)を算出する。入力電流補正値(I)は、例えば、下記の式(2)に基づいて算出される。下記の式(2)において、Kは、任意のゲインであり、sは、ラプラス演算子であり、Tは、任意の周期である。KとTは、コンバータ2の仕様に応じて適宜設定可能である。
【数2】
【0030】
続くS16では、制御部50が、上記のS14で算出される入力電流補正値(I)に基づいて入力信号を生成する。例えば、制御部50は、入力電流補正値(I)と所定の変換利得(例えば、1)とを乗算することによりデューティ比を算出し、そのデューティ比のパルス信号を生成する。制御部50は、入力信号を生成する際に、入力電流補正値(I)に|sinωt|を加算することにより入力電流補正値(I)に含まれる外乱を除去してもよい。
【0031】
また、S16では、制御部50は、生成した入力信号をコンバータ2の第1スイッチング素子12及び第2スイッチング素子22に入力する。制御部50は、現在の動作フェーズ数が「1」である場合は、入力信号を第1スイッチング素子12に入力する。制御部50は、現在の動作フェーズ数が「2」である場合は、入力信号を第1スイッチング素子12及び第2スイッチング素子22に入力する。制御部50は、入力信号を第1スイッチング素子12及び第2スイッチング素子22に入力する際に、第2スイッチング素子22に入力する入力信号の位相を、第1スイッチング素子12に入力する入力信号の位相に対して180度(=360度/動作フェーズ数)ずらしてもよい。
【0032】
(第2処理;図3
実施例の第2処理について説明する。第2処理は、例えば、制御部50の電源がオンになると開始される。図3に示すように、第2処理のS52では、制御部50が、現在の動作フェーズ数を認識する。即ち、制御部50が、現在の動作状態のコンバータ回路(例えば、第1コンバータ回路10及び第2コンバータ回路20)の数を認識する。
【0033】
続くS54では、制御部50が、出力電圧センサ64により検出される出力電圧値(Vout)と、出力電流センサ66により検出される出力電流値(Iout)とを乗算することにより出力電力値(Wout=Vout×Iout)を算出する。
【0034】
続くS56では、制御部50が、S54で算出される出力電力値(Wout)が所定の閾値を跨ぐか否かを監視する。即ち、制御部50が、出力電力値(Wout)が所定の閾値以上になるか否か、又は、出力電力値(Wout)が所定の閾値未満になるか否かを監視する。出力電力値(Wout)が所定の閾値以上になる場合、又は、出力電力値(Wout)が所定の閾値未満になる場合(S56でYES)、処理はS58に進む。例えば、前回算出された出力電力値(Wout)が閾値未満であり、今回算出された出力電力値(Wout)が閾値以上である場合、処理はS58に進む。又は、前回算出された出力電力値(Wout)が閾値以上であり、今回算出された出力電力値(Wout)が閾値未満である場合、処理はS58に進む。一方、コンバータ2の出力電力値(Wout)が閾値を跨がない場合(S56でNO)、処理はS52に戻る。
【0035】
S56でYESの後のS58では、制御部50が、コンバータ2の動作フェーズ数を切り替える。例えば、制御部50は、動作フェーズ数を「1」から「2」、又は、「2」から「1」に切り替える。具体的には、例えば、第1コンバータ回路10が動作状態であり、第2コンバータ回路20が非動作状態である場合に、出力電力値(Wout)が閾値未満から閾値以上になる場合(S56でYES)、制御部50は、S58で第2コンバータ回路20を動作状態に切り替える。これにより、コンバータ2の動作フェーズ数を「1」から「2」に切り替えることができる。また、第1コンバータ回路10及び第2コンバータ回路20が動作状態である場合に、出力電力値(Wout)が閾値以上から閾値未満になる場合(S56でYES)、制御部50は、S58で第2コンバータ回路20を非動作状態に切り替える。変形例では、制御部50は、第1コンバータ回路10を非動作状態に切り替えてもよい。これにより、コンバータ2の動作フェーズ数を「2」から「1」に切り替えることができる。
【0036】
続くS60では、制御部50が、動作フェーズ数の切り替え前後における1フェーズあたりの出力電流値(Iophb、Iopha)を算出する。動作フェーズ数の切り替え前の1フェーズあたりの出力電流値(Iophb)は、例えば、下記の式(3)により算出される。制御部50は、下記の式(3)により、動作フェーズ数の切り替え前の出力電流値(Iob)と、動作フェーズ数の切り替え前の動作フェーズ数(N(例えば、「1」))とに基づいて、動作フェーズ数の切り替え前の1フェーズあたりの出力電流値(Iophb)を算出する。なお、動作フェーズ数の切り替え前の出力電流値(Iob)と、動作フェーズ数の切り替え前の動作フェーズ数(N)とは、記憶部52に記憶されている(後述するS74、S76参照)。
【数3】
【0037】
また、動作フェーズ数の切り替え後の1フェーズあたりの出力電流値(Iopha)は、例えば、下記の式(4)により算出される。制御部50は、下記の式(4)により、動作フェーズ数の切り替え後の出力電流値(Ioa)と、動作フェーズ数の切り替え後の動作フェーズ数(N(例えば、「2」))とに基づいて、動作フェーズ数の切り替え後の1フェーズあたりの出力電流値(Iopha)を算出する。
【数4】
【0038】
続くS62では、制御部50が、動作フェーズ数の切り替え前後での1フェーズあたりの出力電流値の変動量(Iophc)を算出する。例えば、制御部50は、下記の式(5)により、動作フェーズ数の切り替え前の1フェーズあたりの出力電流値(Iophb)と、動作フェーズ数の切り替え後の1フェーズあたりの出力電流値(Iopha)とに基づいて、1フェーズあたりの出力電流値の変動量(Iophc=Iophb-Iopha)を算出する。
【数5】
【0039】
続くS64では、制御部50が、上記のS62で算出される動作フェーズ数の切り替え前後での1フェーズあたりの出力電流値の変動量(Iophc)と、所定の係数(K)とを乗算することにより出力電圧第2補正値(Vc2=Iophc×K)を算出する。所定の係数(K)は、例えば、下記の式(6)により算出される。
【数6】
【0040】
続くS66では、制御部50が、特定補正制御の開始フラグをオンにする(図2の第1処理のS6参照)。続くS68では、制御部50が、出力電圧第2補正値(Vc2)を漸減させる。例えば、制御部50は、出力電圧第2補正値(Vc2)を所定の時間間隔(例えば、1ms間隔)で所定の値(例えば、0.1)ずつ漸減させる。制御部50は、S66で出力電圧第2補正値(Vc2)を漸減させる毎に、第1処理(図2参照)のS8における出力電圧第2補正値(Vc2)を漸減後の出力電圧第2補正値(Vc2)に更新する。
【0041】
続くS70では、制御部50が、漸減後の出力電圧第2補正値(Vc2)が0(ゼロ)以下になるか否かを監視する。出力電圧第2補正値(Vc2)が0以下になる場合(S70でYES)、処理はS72に進む。S72では、制御部50が、特定補正制御の開始フラグをオフにする。一方、出力電圧第2補正値(Vc2)が0より大きい場合(S70でNO)、処理はS68に戻る。制御部50は、出力電圧第2補正値(Vc2)を引き続き漸減させる。
【0042】
S72に続くS74では、制御部50が、現在の出力電流値(Iout)を、動作フェーズ数の切り替え前の出力電流値(Iob)として記憶部52に記憶する。S74で記憶部52に記憶される出力電流値(Iout)は、次回の動作フェーズ数の切り替え後に、動作フェーズ数の切り替え前の出力電流値(Iob)として用いられる(S60参照)。
【0043】
続くS76では、制御部50が、現在の動作フェーズ数(動作状態のコンバータ回路の数)を、動作フェーズ数の切り替え前の動作フェーズ数(N)として記憶部52に記憶する。S76で記憶部52に記憶される動作フェーズ数は、次回の動作フェーズ数の切り替え後に、動作フェーズ数の切り替え前の動作フェーズ数(N)として用いられる(S60参照)。S76の後、処理はS52に戻る。
【0044】
(効果)
以上、実施例のコンバータ2について説明した。以上の説明から明らかなように、コンバータ2では、制御部50が、切り替え前に動作状態であるコンバータ回路の数(N)と、切り替え後に動作状態であるコンバータ回路の数(N)と、切り替え前の出力電流値(Iob)と、切り替え後の出力電流値(Ioa)とに基づいて算出される出力電圧第2補正値(Vc2)に基づいて、切り替え後に動作状態であるコンバータ回路10、20のスイッチング素子12、22に入力する入力信号を生成する(第1処理のS8-S16、第2処理のS58-S70参照)。
【0045】
コンバータ2では、動作フェーズ数が切り替わる場合に、切り替え前後における動作状態のコンバータ回路の数が出力電圧の変動に影響する。そこで、上記の構成を備えることにより、出力電圧の変動を抑制することができる。動作フェーズ数が増える場合も、動作フェーズ数が減る場合も、出力電圧の変動を抑制することができる。そのため、大容量のコンデンサを用いなくても出力電圧の変動を抑制することができる。
【0046】
制御部50は、Iob/NとIoa/Nとの差分に基づいて算出される出力電圧第2補正値(Vc2)に基づいて、切り替え後に動作状態であるコンバータ回路10、20のスイッチング素子12、22に入力する入力信号を生成する(第1処理のS8-S16、第2処理のS58-S70参照)。この構成によれば、切り替え後に動作状態であるコンバータ回路10、20のスイッチング素子12、22に適切な入力信号を入力することができる。
【0047】
(試験例)
上記のコンバータ2を用いて出力電圧値を確認する試験を行った。試験例では、出力電圧第2補正値(Vc2)を用いて第1処理(図2参照)を実行した。比較例では、出力電圧第2補正値(Vc2)を用いずに第1処理を実行した。即ち、比較例では、第1処理のS8の処理が無い状態で第1処理を実行した。
【0048】
図4は、試験例の結果を示す図である。図4に示すように、試験例では、比較例と比較して、コンバータ2の動作フェーズ数を切り替えたときの出力電圧の変動を抑制することができた。
【0049】
(変形例)
(1)上記の実施例は、2個のフェーズを備えるコンバータ2であったが、この構成に限定されず、3個以上のフェーズを備えるコンバータ2であってもよい。コンバータ2は、入力端子と出力端子との間で並列に配置された3個以上のコンバータ回路10、20、・・・を備えていてもよい。追加のコンバータ回路は、第1コンバータ回路10及び第2コンバータ回路20と同様の構成を備えていてもよい。
【0050】
(2)変形例では、コンバータ2は、複数のダイオード32(32a、32b)に代えて、複数のトランジスタ(例えば、MOSFETやGaNHEMT)を備えていてもよい。
【0051】
(3)コンバータ2は、上記の実施例の回路要素以外の回路要素を備えていてもよい。
【0052】
(4)変形例では、第2処理のS58の処理の前に、制御部50が、コンバータ2の動作フェーズ数を確認する処理を実行してもよい。
【0053】
(5)変形例では、第1スイッチング素子12a及び第2スイッチング素子22aがダイオードであってもよい。
【0054】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書又は図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0055】
2:マルチフェーズ型コンバータ、4:交流電源、10:第1コンバータ回路、12:第1スイッチング素子、14:第1インダクタ、20:第2コンバータ回路、22:第2スイッチング素子、24:第2インダクタ、30:コンデンサ、32:ダイオード、40:負荷、50:制御部、52:記憶部、60:入力電圧センサ、62:入力電流センサ、64:出力電圧センサ、66:出力電流センサ
図1
図2
図3
図4