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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111580
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】発泡性圧縮成型錠剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20240809BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20240809BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
A61K8/19
A61Q19/10
A61K8/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016171
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺山 香菜江
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 遼太郎
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB311
4C083AB312
4C083AB352
4C083AC022
4C083AC092
4C083AC231
4C083AC292
4C083AC302
4C083AC352
4C083AC422
4C083AC442
4C083AD042
4C083AD202
4C083CC25
4C083DD15
4C083EE41
(57)【要約】
【課題】湯(又は水)に投入した際に、十分な発泡時間及び発泡音を得ることができる発泡性圧縮成型錠剤を提供する。
【解決手段】有機酸(A)、炭酸塩(B)、及び、25℃での粘度が100mPa・s以下である油剤(C)、を含有する発泡性圧縮成型錠剤であって、前記成分(A)が、20℃の水100mLへの溶解度が10g以下である有機酸(A1)を70質量%以上含み、前記錠剤中の前記成分(A)の含有量が40質量%以上であり、前記錠剤中の前記成分(B)の含有量が38質量%以上であり、前記錠剤の体積が7.5cm以上であり、前記錠剤の体積に対する前記錠剤中の前記成分(C)の質量の比が2.0mg/cm以上であり、前記錠剤の硬度が20kgf以上である、発泡性圧縮成型錠剤である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機酸(A)、炭酸塩(B)、及び、25℃での粘度が100mPa・s以下である油剤(C)、を含有する発泡性圧縮成型錠剤であって、
前記成分(A)が、20℃の水100mLへの溶解度が10g以下である有機酸(A1)を70質量%以上含み、
前記錠剤中の前記成分(A)の含有量が40質量%以上であり、
前記錠剤中の前記成分(B)の含有量が38質量%以上であり、
前記錠剤の体積が7.5cm以上であり、
前記錠剤の体積に対する前記錠剤中の前記成分(C)の質量の比が2.0mg/cm以上であり、
前記錠剤の硬度が20kgf以上である、発泡性圧縮成型錠剤。
【請求項2】
前記錠剤の質量が15g以上25g以下である、請求項1に記載の発泡性圧縮成型錠剤。
【請求項3】
前記錠剤が直径30mm以上40mm以下の円筒形状である、請求項1又は2に記載の発泡性圧縮成型錠剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の発泡性圧縮成型錠剤からなる入浴剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性圧縮成型錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
有機酸と炭酸塩とを配合した固体入浴剤は、浴水中で炭酸ガスの泡を発生し、発泡感を楽しむことができると共に、炭酸ガスによる温まり感、血行促進効果が得られることが知られている。発泡性固体入浴剤に、さらに薬効成分等を配合し、疲労回復効果等の種々の機能を付加することも検討されている。
【0003】
その一方で、近年は入浴剤に求められる機能が変化している。特に若年層においては、多忙な日常生活の中で入浴時間が貴重なリラックスタイムとなり、入浴時間が長時間化している傾向がある。そこで、入浴中に、入浴剤が与える五感刺激で心地よさを付与し、より効果的に休息させるという新しい付加価値を提供し得る入浴剤が検討されている。
【0004】
入浴剤が与える五感刺激として、入浴剤の炭酸ガス発泡は効果的なファクターの一つである。例えば、入浴中の炭酸ガス発泡は、視覚、聴覚(発泡音)、触覚(発泡による感触)、嗅覚(香りの変化)にアプローチすることができる。そして、炭酸ガス発泡による心地よい入浴を長時間楽しむために、十分な発泡時間及び発泡音が担保された入浴剤が望まれる。さらに、入浴剤が溶解途中で湯中から湯面に浮上して湯中及び湯面でそれぞれ一定時間以上発泡することで、入浴時に発泡音及び香りの変化を感じやすくなり、心地よい入浴を長時間楽しむことができる。
【0005】
発泡性固体入浴剤において十分な発泡時間及び発泡音を得るためには、湯(又は水)への溶解時間を長時間化できるという観点で、圧縮成型錠剤が有利であると考えられる。
固体入浴剤として、有機酸と炭酸塩とを配合した錠剤又はブリケット製剤も知られている。例えば特許文献1には、炭酸塩、有機酸、及び2質量%を超え10質量%以下の25℃で液状の成分を含有し、且つ所定の要件を満たす発泡性圧縮製剤が、炭酸ガスの泡を良好に発生させるとともに、保存安定性が高く、香料等の液状成分による作用を十分に発揮することができる旨記載されている。
特許文献2には、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、有機酸、カチオン化ポリマーを含有し、打錠硬度が2kgf以上であり、かつ、吸液時間が所定の範囲にある打錠剤が、カチオン化ポリマーと、炭酸塩と酸からなる炭酸ガス発生物とを組み合わせた場合でも、製剤安定性が高く、かつ、崩壊性も良好であることが開示されている。
特許文献3には、有機酸、炭酸塩、及びアミノ酸系界面活性剤をそれぞれ所定量含む発泡性入浴剤が、ブリケット型でもよいこと、及び、微細な泡が生じるとともに、水中での発泡持続時間が長く、一度生成した泡の湯面の泡残りが抑制され、さらには肌への刺激を抑制できることが開示されている。
特許文献4には、有機酸、炭酸塩、無水ケイ酸及びケイ酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種、25℃で液状の油性成分、並びに25℃ で液状の非イオン性界面活性剤を含有し、前記油性成分と非イオン性界面活性剤との合計含有量が所定値以下であるブリケット型発泡性入浴剤が、粒の割れ欠けが抑制されるとともに、保存安定性が良好で、湯に溶解した際に湯面の浮き泡や浮遊物が抑制される旨開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-76978号公報
【特許文献2】特開2019-189560号公報
【特許文献3】特開2021-134149号公報
【特許文献4】特開2021-187778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら特許文献1~4の開示技術では、錠剤又はブリケット製剤を湯(又は水)に投入した際に、湯中及び湯面の両方で長時間発泡し、且つ十分な発泡音を得るには至っていない。十分な発泡音を得るためには発泡力を高める必要があるが、発泡力を高めると錠剤の溶解時間が短縮し、発泡時間の長時間化と両立できない。
本発明は、湯(又は水)に投入した際に、十分な発泡時間及び発泡音を得ることができる固体圧縮成型錠剤に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、所定の有機酸、炭酸塩、及び所定の油剤をそれぞれ所定の割合で含有し、錠剤の体積及び硬度が所定値以上である圧縮成型錠剤により、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち本発明は、有機酸(A)、炭酸塩(B)、及び、25℃での粘度が100mPa・s以下である油剤(C)、を含有する発泡性圧縮成型錠剤であって、
前記成分(A)が、20℃の水100mLへの溶解度が10g以下である有機酸(A1)を70質量%以上含み、
前記錠剤中の前記成分(A)の含有量が40質量%以上であり、
前記錠剤中の前記成分(B)の含有量が38質量%以上であり、
前記錠剤の体積が7.5cm以上であり、
前記錠剤の体積に対する前記錠剤中の前記成分(C)の質量の比が2.0mg/cm以上であり、
前記錠剤の硬度が20kgf以上である発泡性圧縮成型錠剤に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、湯(又は水)に投入した際に、十分な発泡時間及び発泡音を得ることができる発泡性圧縮成型錠剤を提供できる。該錠剤は、炭酸ガス発泡性の固体入浴剤として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[発泡性圧縮成型錠剤]
本発明の発泡性圧縮成型錠剤(以下、単に「本発明の錠剤」ともいう)は、有機酸(A)、炭酸塩(B)、及び、25℃での粘度が100mPa・s以下である油剤(C)、を含有する発泡性圧縮成型錠剤であって、前記成分(A)が、20℃の水100mLへの溶解度が10g以下である有機酸(A1)を70質量%以上含み、前記錠剤中の前記成分(A)の含有量が40質量%以上であり、前記錠剤中の前記成分(B)の含有量が38質量%以上であり、前記錠剤の体積が7.5cm以上であり、前記錠剤の体積に対する前記錠剤中の前記成分(C)の質量の比が2.0mg/cm以上であり、前記錠剤の硬度が20kgf以上である。
本発明の錠剤は上記構成を有することにより、湯(又は水)に投入した際に、十分な発泡時間及び発泡音を得ることができる。
本明細書において「発泡性錠剤」とは、湯(又は水)に溶解して発泡(炭酸発泡)する性質を有する錠剤をいう。
本明細書において「十分な発泡時間」とは、錠剤を湯(又は水)に投入した際に、湯中及び湯面での合計発泡時間が長く、且つ発泡音持続性が高いことをいう。また、「十分な発泡音」とは、錠剤を湯(又は水)に投入した際に、使用者に発泡音が聴こえることをいう。これらは具体的には実施例に記載の方法で測定及び評価することができる。
【0011】
本発明の錠剤により上記効果が得られる理由は次のように考えられる。
本発明の錠剤は成分(A)及び成分(B)を含有することで炭酸発泡性を発現する。錠剤中の成分(A)及び成分(B)の含有量がそれぞれ所定値以上であることで、十分な発泡量を得ることができる。そのため、溶解時間を長時間化させる本発明において、溶解中に十分な発泡音を得ることが可能となる。さらに、成分(A)が20℃の水100mLへの溶解度が10g以下である有機酸(A1)を所定量以上含むことで、発泡時間を長時間化することができると考えられる。
本発明の錠剤は、さらに25℃での粘度が100mPa・s以下である油剤(C)を含有する。粘度が所定値以下である油剤(C)を含有することで、錠剤内部への湯(又は水)の侵入を抑制できる。これにより錠剤の溶解時間を長時間化させることができると考えられる。
本発明の錠剤は、圧縮成型錠剤であって、且つ所定値以上の硬度を有する。また、錠剤の体積が所定値以上であり、錠剤の体積に対する錠剤中の成分(C)の質量の比が所定値以上である。これにより、錠剤を湯(又は水)に投入した際に錠剤内部への湯(又は水)の侵入を抑制して錠剤の溶解時間を長時間化させることができると考えられる。
本発明の錠剤は、以上の要件を満たすことで、十分な発泡音を担保しつつ十分な発泡時間を得ることができる。さらに、錠剤を湯(又は水)に投入した際に、錠剤が溶解途中で湯中から湯面に浮上して、湯中及び湯面でそれぞれ一定時間以上発泡する性質を付与でき、これにより使用時の発泡音の変化を得ることができると考えられる。
【0012】
<成分(A):有機酸>
本発明の錠剤は、成分(A)として有機酸を含有する。本発明の錠剤は成分(A)を含有することで、成分(B)との作用により炭酸ガス発泡性を発現する。また、成分(A)が20℃の水100mLへの溶解度が10g以下である有機酸(A1)を所定量以上含むことで、十分な発泡時間及び発泡音、並びに発泡音の変化を得ることができると考えられる。
【0013】
(成分(A1):20℃の水100mLへの溶解度が10g以下である有機酸)
成分(A)は、20℃の水100mLへの溶解度が10g以下である有機酸(A1)を70質量%以上含む。
成分(A1)の、20℃の水100mLへの溶解度は、十分な発泡時間及び発泡音の変化を得る観点から、10g以下であり、好ましくは8.0g以下、より好ましくは5.0g以下、さらに好ましくは2.0g以下、よりさらに好ましくは1.0g以下である。また、湯(又は水)への溶解性を得る観点から、好ましくは0.1g以上、より好ましくは0.2g以上、さらに好ましくは0.3g以上である。
成分(A1)としては、カルボン酸系化合物の他、有機スルホン酸系化合物、有機リン酸系化合物が挙げられるが、十分な発泡時間及び発泡音、並びに発泡音の変化を得る観点からはカルボン酸系化合物が好ましい。当該カルボン酸系化合物は少なくとも1個のカルボキシ基を有する化合物であればよいが、2個以上のカルボキシ基を有する多価カルボン酸が好ましい。またカルボン酸系化合物は、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸のいずれでもよい。
【0014】
成分(A1)のうち脂肪族カルボン酸としては、フマル酸(0.49g)、コハク酸(8.0g)、アジピン酸(2.2g)等が挙げられ、芳香族カルボン酸としては、安息香酸(0.3g)、サリチル酸(0.2g)、ピロリドンカルボン酸(5.7g)等が挙げられる。括弧内の値は、20℃の水100mLへの溶解度を意味する(以下の記載においても同じ)。
これらの中でも、十分な発泡時間及び発泡音、発泡音の変化を得る観点、並びに成形性、湯(又は水)への溶解性、経済性の観点から、成分(A1)としては脂肪族カルボン酸が好ましく、フマル酸、コハク酸、及びアジピン酸からなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、フマル酸及びコハク酸からなる群から選ばれる1種以上がさらに好ましく、フマル酸を含むことがよりさらに好ましく、フマル酸単独、又は、フマル酸及びコハク酸からなることがよりさらに好ましい。
【0015】
成分(A)は、十分な発泡時間及び発泡音の変化を得る観点から、有機酸(A1)を70質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であって、100質量%以下含有する。
【0016】
なお、成分(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、成分(A1)以外の有機酸(A2)を含むこともできる。成分(A2)としては、20℃の水100mLへの溶解度が10gを超える有機酸であればよく、十分な発泡音を得る観点、並びに成形性、湯(又は水)への溶解性、経済性の観点から、成分(A1)と同様にカルボン酸系化合物が好ましい。
成分(A2)の具体例としては、酒石酸(20.6g)、リンゴ酸(56g)、クエン酸(62g)、マレイン酸(47.8g)、グルタル酸(63.9g)、シュウ酸(13.3g)等が挙げられる。
【0017】
本発明の錠剤中の成分(A)の含有量は、十分な発泡時間及び発泡音、発泡音の変化を得る観点から、40質量%以上であり、好ましくは42質量%以上、より好ましくは45質量%以上である。また、錠剤の湯(又は水)への溶解性及び成形性の観点から、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは55質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、よりさらに好ましくは48質量%以下である。
【0018】
<成分(B):炭酸塩>
本発明の錠剤は、成分(B)として炭酸塩を含有する。本発明の錠剤は成分(B)を含有することで、成分(A)との作用により炭酸ガス発泡性を発現する。
【0019】
成分(B)としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸ジアルカリ金属塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属重炭酸塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、十分な発泡時間及び発泡音、発泡音の変化を得る観点、並びに成形性、湯(又は水)への溶解性、経済性の観点から、好ましくは炭酸ジアルカリ金属塩及びアルカリ金属重炭酸塩からなる群から選ばれる1種以上であり、より好ましくは炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムからなる群から選ばれる1種以上を含み、さらに好ましくは炭酸ナトリウムを含み、よりさらに好ましくは炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムを含み、よりさらに好ましくは炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムからなる。
【0020】
成分(B)が炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムを含む場合、炭酸ナトリウムに対する炭酸水素ナトリウムの含有量の質量比[炭酸水素ナトリウム/炭酸ナトリウム]は、十分な発泡量を得る観点、並びに成形性の観点から、好ましくは0.50以上、より好ましくは0.60以上、さらに好ましくは0.70以上であり、また、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.3以下、さらに好ましくは1,2以下、よりさらに好ましくは1.1以下である。
【0021】
本発明の錠剤中の成分(B)の含有量は、十分な発泡時間及び発泡音、並びに発泡音の変化を得る観点から、38質量%以上であり、好ましくは40質量%以上である。また、湯(又は水)への溶解性及び成形性の観点から、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは55質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、よりさらに好ましくは45質量%以下である。
【0022】
本発明の錠剤中の成分(A)に対する成分(B)のモル当量比[(B)/(A)]は、十分な発泡時間及び発泡音、並びに発泡音の変化を得る観点から、好ましくは0.60以上、より好ましくは0.70以上、さらに好ましくは0.75以上であり、また、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.95以下、さらに好ましくは0.90以下、よりさらに好ましくは0.85以下である。
【0023】
<成分(C):25℃での粘度が100mPa・s以下である油剤>
本発明の錠剤は、成分(C)として、25℃での粘度が100mPa・s以下である油剤を含有する。本発明の錠剤は油剤(C)を含有することで、錠剤の湯(又は水)への溶解時間を長時間化させ、その結果、十分な発泡時間及び発泡音の変化を得ることができると考えられる。
なお本明細書において油剤とは、香料以外の油剤を意味する。
【0024】
成分(C)の25℃における粘度は、錠剤の湯(又は水)への溶解時間を長時間化させる観点から、100mPa・s以下であり、好ましくは80mPa・s以下、より好ましくは70mPa・s以下、さらに好ましくは60mPa・s以下、よりさらに好ましくは50mPa・s以下、よりさらに好ましくは40mPa・s以下、よりさらに好ましくは30mPa・s以下、よりさらに好ましくは20mPa・s以下、よりさらに好ましくは15mPa・s以下、よりさらに好ましくは10mPa・s以下である。粘度の下限は特に制限されないが、好ましくは1.0mPa・s以上であり、より好ましくは2.0mPa・s以上、さらに好ましくは3.0mPa・s以上、よりさらに好ましくは5.0mPa・s以上、よりさらに好ましくは7.0mPa・s以上である。
なお、成分(C)として2種以上の油剤を用いる場合、「成分(C)の25℃における粘度」とは、混合油剤の25℃における粘度を意味し、該混合油剤の粘度が100mPa・s以下であればよい。
成分(C)の25℃における粘度は、回転式粘度計を用いて、実施例に記載の方法により測定できる。
【0025】
成分(C)の具体例としては、通常入浴剤等に用いられる油剤が挙げられ、例えば、シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、高級アルコール、及び高級脂肪酸からなる群から選ばれる1種以上であって、25℃での粘度が100mPa・s以下であるものが挙げられる。
【0026】
(シリコーン油)
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、ジメチコノール(末端にヒドロキシ基を有するジメチルポリシロキサン)、メチルフェニルポリシロキサン、及び変性シリコーンからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
変性シリコーンとしては、アミノ変性シリコーン(アモジメチコン等の、アミノ基を有するジメチルポリシロキサン)、ポリエーテル変性シリコーン、アミノポリエーテル変性シリコーン(アミノ基及びポリエーテル構造を有するシリコーン)、グリセリル変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、脂肪族アルコール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等が挙げられる。
上記の中でも、錠剤の湯(又は水)への溶解時間を長時間化させる観点から、シリコーン油としては、好ましくはジメチルポリシロキサン、ジメチコノール、メチルフェニルポリシロキサン、及び変性シリコーンからなる群から選ばれる1種以上、より好ましくはジメチルポリシロキサン、ジメチコノール、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、及びアミノポリエーテル変性シリコーンからなる群から選ばれる1種以上、さらに好ましくはジメチルポリシロキサンである。
【0027】
(エステル油)
エステル油としては、例えば、1価カルボン酸と1価アルコールとのエステル、1価カルボン酸と多価アルコールとのエステル、多価カルボン酸と1価アルコールとのエステルが挙げられる。
【0028】
1価カルボン酸と1価アルコールとのエステルとして、下記一般式(1)で表されるエステルが挙げられる。
1-COO-R2 (1)
一般式(1)において、R1は、水酸基が置換していてもよく、炭素数1以上25以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、又は炭素数6以上24以下の芳香族含有炭化水素基を示し、R2は、炭素数1以上30以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示す。
【0029】
1がアルキル基又はアルケニル基の場合、炭素数は、好ましくは7以上であり、そして、好ましくは23以下、より好ましくは21以下、さらに好ましくは19以下、よりさらに好ましくは17以下である。
1が芳香族含有炭化水素基の場合、炭素数は、好ましくは6以上であり、そして、好ましくは22以下、より好ましくは20以下である。
2の炭素数は、好ましくは2以上であり、そして、好ましくは28以下、より好ましくは24以下、さらに好ましくは20以下である。
【0030】
一般式(1)で表されるエステルの具体例としては、イソオクタン酸セチル、イソオクタン酸ステアリル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ラウリン酸ヘキシル、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸デシル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸イソステアリル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、ステアリン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸2-ヘキシルデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸2-ヘキシルデシル、オレイン酸エチル、オレイン酸イソデシル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、酢酸ラノリン、ヒマシ油脂肪酸メチル(リシノレイン酸メチル)、及び安息香酸アルキル(アルキルの炭素数12~15)等が挙げられる。
【0031】
1価カルボン酸と1価アルコールとのエステルとして、下記一般式(2)で表されるエステルも挙げられる。
3-COO-(AO)n-R4 (2)
一般式(2)において、R3は、水酸基が置換していてもよく、炭素数1以上25以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、R4は炭素数6以上24以下の芳香族含有炭化水素基を示す。AOは、炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基を示し、nは1以上50以下の平均付加モル数を表す。
3は、好ましくは炭素数が7以上であり、そして、好ましくは23以下、より好ましくは21以下、さらに好ましくは19以下のアルキル基である。
4は、好ましくは炭素数が6以上であり、そして、好ましくは22以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは18以下の芳香族含有炭化水素基、よりさらに好ましくはベンジル基である。
AO基は、好ましくはプロピレンオキシ基であり、nは、好ましくは1以上10以下、より好ましくは1以上5以下である。
一般式(2)で表されるエステルの具体例としては、ミリスチン酸とベンジルアルコールのプロピレンオキシド3モル付加体とのエステル、2-エチルヘキサン酸とベンジルアルコールのプロピレンオキシド3モル付加体とのエステル等が挙げられる。
【0032】
1価カルボン酸と多価アルコールとのエステルとしては、下記一般式(3)で表されるエステルが挙げられる。
5-(OCOR6p (3)
一般式(3)において、R5は多価アルコール残基を示し、好ましくは炭素数2以上10以下の炭化水素基であり、R6は炭素数1以上25以下の1価カルボン酸残基を示し、pは2以上10以下の整数を示す。
なお、R5はエーテル結合を有してもよいが、好ましくは炭素数2以上10以下の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基である。また、pは前記多価アルコールが有するヒドロキシ基と同じ数である。
6は、好ましくは炭素数が7以上であり、そして、好ましくは23以下、より好ましくは21以下、さらに好ましくは19以下のアルキル基である。
【0033】
一般式(3)で表されるエステルとして、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジオレイン酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、ジ(カプリル酸・カプリン酸)プロパンジオール、ジイソステアリン酸プロパンジオール、ジ2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリル、トリ2-エチルヘキシル酸グリセリル、トリ2-ヘプチルウンデカン酸グリセリル、トリ2-エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール等が挙げられる。なお、これらは1気圧下、25℃の環境下で液体状である。
エステル油は、合成エステル油、天然油脂のいずれでもよく、天然油脂としてはアボカド油、オリーブ油、ゴマ油、コメヌカ油、サフラワー油、ダイズ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ヒマシ油、綿実油、ミンク油等のトリグリセリドが挙げられる。
【0034】
多価カルボン酸と1価アルコールとのエステルとしては、下記一般式(4)で表されるエステルも挙げられる。
7-(COOR8q (4)
一般式(4)において、R7は炭素数2以上10以下の多価カルボン酸残基であり、R8は炭素数1以上25以下の1価アルコール残基を示し、qは2以上10以下の整数である。また、qは前記多価カルボン酸が有するカルボキシ基と同じ数である。
8は、好ましくは3以上であり、そして、好ましくは23以下、より好ましくは21以下、さらに好ましくは19以下である。
具体的には、リンゴ酸ジイソステアリル、コハク酸ジ2-エチルヘキシル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジ2-ヘプチルウンデシル、セバシン酸ジ2-エチルヘキシル、セバシン酸ジイソプロピル、トリメリット酸トリ2-エチルヘキシル等が挙げられる。
【0035】
上記の中でも、錠剤の湯(又は水)への溶解時間を長時間化させる観点から、エステル油は、好ましくは一般式(1)、一般式(3)及び一般式(4)で表されるエステルからなる群から選ばれる1種以上であり、より好ましくは、一般式(1)及び一般式(3)で表されるエステルからなる群から選ばれる1種以上であり、さらに好ましくはミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、及びトリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリルからなる群から選ばれる1種以上であり、よりさらに好ましくはミリスチン酸イソプロピル及びパルミチン酸イソプロピルからなる群から選ばれる1種以上である。
【0036】
(エーテル油)
エーテル油としては、下記一般式(5)で表されるジアルキルエーテル化合物が挙げられる。
9-O-R10 (5)
一般式(5)において、R9及びR10は、各々独立に、炭素数6以上22以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、又は炭素数6以上24以下の芳香族炭化水素基を示す。
9及びR10は、組成物の固形化を容易にする観点、湯(又は水)への分散性の観点、及び入浴時の保湿感向上の観点から、好ましくはアルキル基であり、その炭素数は、好ましくは8以上であり、そして、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、さらに好ましくは12以下である。
【0037】
(炭化水素油)
炭化水素油としては、スクワレン、スクワランからなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0038】
(高級アルコール)
高級アルコールとしては、25℃での粘度が100mPa・s以下であるという観点から、炭素数12以上、好ましくは炭素数12以上22以下の不飽和脂肪族1価アルコール又は分岐型脂肪族1価アルコールが好ましく、例えば、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、及び2-オクチルドデカノールからなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中でも、錠剤の湯(又は水)への溶解時間を長時間化させる観点から、好ましくは2-オクチルドデカノールである。
【0039】
(高級脂肪酸)
高級脂肪酸としては、25℃での粘度が100mPa・s以下であるという観点から、炭素数8以上、好ましくは炭素数12以上22以下の不飽和脂肪酸又は分岐型脂肪酸が好ましく、例えば、オレイン酸、イソステアリン酸、及び、イソパルミチン酸からなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0040】
成分(C)は、上記のうち1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記の中でも、成分(C)としては、錠剤の湯(又は水)への溶解時間を長時間化させる観点から、好ましくはエステル油及び高級アルコールからなる群から選ばれる1種以上であり、より好ましくは前記一般式(1)で表されるエステル、前記一般式(3)で表されるエステル、及び炭素数12以上22以下の分岐型脂肪族1価アルコールからなる群から選ばれる1種以上であり、さらに好ましくはミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリル、及び2-オクチルドデカノールからなる群から選ばれる1種以上であり、よりさらに好ましくはミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、及びトリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリルからなる群から選ばれる1種以上であり、よりさらに好ましくはミリスチン酸イソプロピル及びパルミチン酸イソプロピルからなる群から選ばれる1種以上である。
【0041】
本発明の錠剤中の成分(C)の含有量は、錠剤の湯(又は水)への溶解時間を長時間化させる観点から、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.10質量%以上、よりさらに好ましくは0.15質量%以上である。また、湯(又は水)への溶解性及び錠剤の成形性の観点から、好ましくは5.0質量%以下であり、より好ましくは3.0質量%以下、さらに好ましくは2.0質量%以下、よりさらに好ましくは1.0質量%以下、よりさらに好ましくは0.7質量%以下である。
【0042】
本発明の錠剤中の成分(A)~(C)の合計含有量は、十分な発泡時間及び発泡音、並びに発泡音の変化を得る観点から、好ましくは78.5質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上である。該合計含有量は100質量%以下であり、湯(又は水)への溶解性及び錠剤の成形性の観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。
また、本発明の錠剤中の成分(A1)、成分(B)、及び成分(C)の合計含有量は、十分な発泡時間及び発泡音、並びに発泡音の変化を得る観点から、好ましくは75質量%以上、より好ましくは78.5質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、よりさらに好ましくは85質量%以上である。該合計含有量は100質量%以下であり、湯(又は水)への溶解性及び錠剤の成形性の観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは88質量%以下である。
【0043】
<水溶性高分子>
本発明の錠剤は、湯(又は水)への溶解性及び錠剤の成形性を向上させる観点から、さらに水溶性高分子を含有することができる。
当該水溶性高分子としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ソーダ、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール等の合成水溶性高分子;にかわ、ゼラチン、コラーゲンタンパク、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ファーセレラン、タマリンドガム、ペクチン、アラビアガム、グアーガム、キサンタンガム、トラガントガム、ローカストビーンガム、デキストリン、デキストラン、寒天、澱粉等の天然水溶性高分子;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、アルギン酸プロピレングリコールエステル、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、カチオン澱粉等の半合成水溶性高分子;等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、湯(又は水)への溶解性及び錠剤の成形性を向上させる観点から、ポリエチレングリコール及びデキストリンからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、ポリエチレングリコールがより好ましい。ポリエチレングリコールの分子量は、好ましくは4,000以上10,000以下であり、より好ましくは5,000以上9,000以下である。
【0044】
水溶性高分子を用いる場合、錠剤中の水溶性高分子の含有量は、湯(又は水)への溶解性及び錠剤の成形性を向上させる観点から、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、さらに好ましくは2.0質量%以上、よりさらに好ましくは5.0質量%以上である。また、十分な発泡量を得る観点から、当該含有量は好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下である。
【0045】
<その他の成分>
本発明の錠剤には、その他の成分として、通常入浴剤に用いられる成分を適宜含有させることができる。かかる成分としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のノニオン界面活性剤、及びその他の界面活性剤;硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、塩化アンモニウム、硫酸鉄、リン酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等の、成分(B)以外の無機塩;ケイ酸カルシウム、ブドウ糖等の賦形剤;崩壊助剤;生薬等の薬効成分;色素;香料;成分(C)以外の油剤;等が挙げられる。
【0046】
但し本発明の錠剤は、十分な発泡量を得る観点、及び、湯(又は水)への溶解時間を長時間化させる観点から、界面活性剤の含有量が少ないことが好ましい。錠剤中の界面活性剤の含有量は、好ましくは1質量%未満、より好ましくは0.5質量%未満、さらに好ましくは0.1質量%未満であり、実質的に含有させないことがよりさらに好ましい。
【0047】
<体積>
本発明の錠剤の体積は、十分な発泡時間及び発泡音を得る観点から、7.5cm以上であり、好ましくは8.0cm以上、より好ましくは9.0cm以上、さらに好ましくは10cm以上、よりさらに好ましくは12cm以上である。上限は特に制限されないが、湯(又は水)への溶解性及び錠剤の成形性を向上させる観点、所望の硬度を有する錠剤を圧縮成型する際の装置負荷を低減する観点から、好ましくは35cm以下、より好ましくは30cm以下、さらに好ましくは20cm以下、よりさらに好ましくは15cm以下である。
【0048】
錠剤の体積に対する、錠剤中の成分(C)の質量の比[成分(C)の質量/錠剤の体積]は、十分な発泡時間及び発泡音、並びに発泡音の変化を得る観点から、2.0mg/cm以上であり、好ましくは2.5mg/cm以上、より好ましくは3.0mg/cm以上である。また、湯(又は水)への溶解性及び錠剤の成形性を向上させる観点、所望の硬度を有する錠剤を圧縮成型する際の装置負荷を低減する観点から、好ましくは20mg/cm以下、より好ましくは15mg/cm以下、さらに好ましくは10mg/cm以下である。
【0049】
<表面積>
本発明の錠剤の表面積は、十分な発泡時間及び発泡音を得る観点から、好ましくは22cm以上、より好ましくは25cm以上、さらに好ましくは30cm以上である。また、湯(又は水)への溶解性及び錠剤の成形性を向上させる観点、所望の硬度を有する錠剤を圧縮成型する際の装置負荷を低減する観点から、好ましくは60cm以下、より好ましくは50cm以下、さらに好ましくは40cm以下である。
【0050】
錠剤の表面積に対する、錠剤中の成分(C)の質量の比[成分(C)の質量/錠剤の表面積]は、十分な発泡時間及び発泡音、並びに発泡音の変化を得る観点から、好ましくは1.0mg/cm以上である。また、湯(又は水)への溶解性及び錠剤の成形性を向上させる観点、所望の硬度を有する錠剤を圧縮成型する際の装置負荷を低減する観点から、好ましくは15mg/cm以下、より好ましくは10mg/cm以下、さらに好ましくは5.0mg/cm以下である。
【0051】
錠剤の体積及び表面積は、例えば錠剤が円筒形状であれば寸法を測定して算出することができる。錠剤が複雑な形状である場合や、表面に溝、凹凸形状等を有する場合には、3Dスキャナ(株式会社キーエンス製「VL-500」)等を用いて計測することができる。
本明細書における錠剤の表面積とは、錠剤の表面に形成される溝や凹凸等を除いたものである。例えば3Dスキャナで錠剤の形状をスキャンした場合、錠剤の最表面をカバーする滑らかな表面を仮定し、その表面積を錠剤の表面積とする。
【0052】
<質量>
本発明の錠剤の質量は、十分な発泡時間及び発泡音を得る観点から、好ましくは10g以上、より好ましくは12g以上、さらに好ましくは15g以上である。また、湯(又は水)への溶解性及び錠剤の成形性を向上させる観点、所望の硬度を有する錠剤を圧縮成型する際の装置負荷を低減する観点から、好ましくは35g以下、より好ましくは30g以下、さらに好ましくは25g以下である。
【0053】
<形状>
本発明の錠剤の形状は、平面形状が円形である円筒形状の他、平面形状が角型、星型、ハート型である錠剤等、任意の形状とすることができる。これらの中でも、所望の硬度を有する圧縮成型錠剤の製造容易性の観点から、好ましくは円筒形状である。
錠剤が円筒形状である場合、その直径は、十分な発泡時間及び発泡音を得る観点から、好ましくは20mm以上、より好ましくは25mm以上、さらに好ましくは30mm以上であり、湯(又は水)への溶解性及び錠剤の成形性を向上させる観点、所望の硬度を有する錠剤を圧縮成型する際の装置負荷を低減する観点から、好ましくは50mm以下、より好ましくは45mm以下、さらに好ましくは40mm以下である。錠剤の厚さは、好ましくは5mm以上20mm以下であり、より好ましくは10mm以上15mm以下である。
また、所望の硬度を有する圧縮成型錠剤の製造容易性の観点、及び、錠剤の湯(又は水)への溶解時間を長時間化させる観点から、錠剤は、表面に溝及び凹凸形状をいずれも有さないことが好ましい。なお、製造上形成され得る微細な凹凸等を有することは許容される。
【0054】
<硬度>
本発明の錠剤の硬度は、錠剤の湯(又は水)への溶解時間を長時間化させる観点から、20kgf以上であり、好ましくは22kgf以上、より好ましくは24kgf以上である。また、湯(又は水)への溶解性及び錠剤の成形性を向上させる観点、錠剤を圧縮成型する際の装置負荷を低減する観点から、好ましくは40kgf以下、より好ましくは35kgf以下、さらに好ましくは30kgf以下、よりさらに好ましくは26kgf以下である。
錠剤の硬度は、硬度測定機を用いて、実施例に記載の方法により測定できる。
なお錠剤の硬度は、使用する成分の種類及び配合量、錠剤の体積及び質量、並びに、錠剤製造時の圧縮成型条件(特に加圧条件)により調整することができる。
【0055】
<剤型、製造方法>
本発明の錠剤は、所望の硬度を有する錠剤を得る観点から、圧縮成型錠剤である。圧縮成型錠剤とは、圧縮成型法により製造される錠剤を意味し、打錠剤、ブリケット型剤が含まれる。これらの中でも、前述した所望の硬度を付与する観点から、打錠剤であることが好ましい。
【0056】
本発明の錠剤は、プレス打錠機やブリケットマシーンを用いて、常法により圧縮成型して製造することができる。
打錠剤又はブリケット型剤の製造においては、例えば、本発明の錠剤を構成する全成分をドライブレンドして得られた粉末を圧縮成型に供してもよく、成分の一部を予め造粒あるいは成形した後、残りの成分と混合して得られた混合物を圧縮成型に供してもよい。
【0057】
[入浴剤]
本発明はさらに、前記発泡性圧縮成型錠剤からなる入浴剤を提供する。本発明の入浴剤に含まれる成分の種類及び含有量、性状、形状及びこれらの好適範囲については前記と同じである。
【実施例0058】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されない。
【0059】
実施例1~9、比較例1~8(発泡性圧縮成型錠剤(入浴剤)の作製及び評価)
表1に示す各成分を混合して得られた粉末を、油圧式打錠機にて、約10MPaで圧縮成型し、質量20g、直径35mm、厚さ約13.5mmの円筒形状の打錠剤(実施例1~9、比較例1~7)、もしくは質量10g、直径25mm、厚さ約13.5mmの円筒形状の打錠剤(比較例8)を作製した。
得られた発泡性圧縮成型錠剤について、下記方法にて各種測定及び評価を行った。結果を表1に示す。なお、表1に示す各成分の配合量(質量%)は、いずれもアクティブ量である。
【0060】
<粘度>
油剤の25℃における粘度は、回転式粘度計((株)東機産業製「TVB-10」)を用いて測定した。
【0061】
<硬度>
各例で得られた圧縮成型錠剤の硬度は、(株)藤原製作所の硬度測定機「043019-D」を用いて測定した。錠剤の外周から錠剤の中央に向かって5mmの部分に硬度計のピン(ステンレス製、先端の径が5mm)の中央が当たるようにして荷重をかけ、錠剤が破断した時の荷重の値を錠剤硬度とした。2つの錠剤を測定し、その平均値をもって評価値とした。単位はkgfで表される。
【0062】
<発泡時間>
(1)合計発泡時間
以下の「湯中発泡時間」と「湯面発泡時間」の合計を表1に示した。合計発泡時間が7分以上であれば合格とし、9分以上であればより好ましいと判断した。
(2)湯中発泡時間
各例で得られた圧縮成型錠剤(2錠又は4錠、合計40g)を40℃、150Lの湯を張った浴槽中に投入した後の、湯中での発泡時間を測定し、表1に示した。該発泡時間は2錠又は4錠の平均とした。
(3)湯面発泡時間
各例で得られた圧縮成型錠剤(2錠又は4錠、合計40g)を40℃、150Lの湯を張った浴槽中に投入した後の、湯面での発泡時間を測定し、表1に示した。該発泡時間は2錠又は4錠の平均とした。
【0063】
<発泡音>
(1)発泡音の大きさ
各例で得られた圧縮成型錠剤(合計40g)を40℃、150Lの湯を張った浴槽中に投入した後の発泡音の大きさについて、下記基準にしたがって専門パネラー3名の協議によって4段階で評価した。なお、評価の対象は、浴用剤投入から30秒後の発泡音である。評価A,Bを合格とし、評価C,Dを不合格とした。
A:十分聴こえる
B:聴こえる
C:聴こえるが小さい
D:ほとんど聴こえない
(2)発泡音持続性
各例で得られた圧縮成型錠剤(合計40g)を40℃、150Lの湯を張った浴槽中に投入した直後から発泡音が聴こえなくなるまでの時間を測定し、下記基準にしたがって3段階で評価した。評価A,Bを合格とし、評価Cを不合格とした。
A:9分以上
B:7分以上9分未満
C:7分未満
(3)発泡音の変化
各例で得られた圧縮成型錠剤(合計40g)を40℃、150Lの湯を張った浴槽中に投入し、発泡音の変化について、下記基準にしたがって専門パネラー3名の協議によって4段階で評価した。
AA:湯中・湯面発泡音ともに3分以上
A:湯中発泡音又は湯面発泡音のいずれかが2分以上3分未満
B:湯中発泡音又は湯面発泡音のいずれかが1.5分以上2分未満
C:湯中発泡音又は湯面発泡音のいずれかが1.5分未満
【0064】
【表1】
【0065】
表中に記載の成分の詳細は下記である。
・ミリスチン酸イソプロピル:花王(株)製「エキセパール IPM」
・パルミチン酸イソプロピル:花王(株)製「エキセパール IPP」
・トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル:花王(株)製「ココナード MT」
・流動パラフィン:Sonneborn LLC製「ケイドール」
・モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(6E.O.):花王(株)製「レオドール TW-O106V」
・ポリエチレングリコール:花王(株)製「PEG6000」(分子量6,000)
【0066】
表1より、本実施例の発泡性圧縮成型錠剤は、発泡時間及び発泡音ともに優れることがわかる。これに対し本比較例の圧縮成型錠剤では、発泡時間及び発泡音のいずれかにおいて劣る結果となった。
界面活性剤を配合した実施例9の発泡性圧縮成型錠剤は、界面活性剤を配合していない実施例1~8と比較して発泡時間及び発泡音が若干低下した。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明によれば、湯(又は水)に投入した際に、十分な発泡時間及び発泡音を得ることができる発泡性圧縮成型錠剤を提供できる。該錠剤は、炭酸ガス発泡性の固体入浴剤として好適に用いることができる。