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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111594
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】作業装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20240809BHJP
   B25J 11/00 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
B25J13/08 A
B25J11/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016193
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(72)【発明者】
【氏名】丸井 直樹
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS04
3C707BS03
3C707BS24
3C707BT16
3C707DS01
3C707FS01
3C707FT02
3C707FU01
3C707KS03
3C707KS04
3C707KT03
3C707KT05
3C707LT06
3C707LV04
3C707LV05
3C707LV07
3C707LV09
3C707LW12
(57)【要約】
【課題】ワークに対する作業の成功率を向上することができる作業装置を提供する。
【解決手段】ピックアップ装置1は、撮像装置9と、ワーク20を取り上げるピックアップ部10と、撮像装置9およびピックアップ部10とワーク20を相対的に位置決めする位置決め機構PMと、撮像装置9、ピックアップ部10および位置決め機構PMを制御する制御装置100とを備える。制御装置100は、画像データに基づいて、ワーク20に対する作業の容易さを示す予測値Sと、予測値Sが判定値T以上となると予測されるピックアップ部10の予測姿勢Uとを取得する。全ての予測値Sが判定値T未満である場合には、制御装置100は、いずれかのワーク20に対応する予測姿勢Uにピックアップ部10を移動させ、再度、撮像装置9によってワークを撮像させ画像データを取得し、その姿勢での予測値Sおよび予測姿勢Uを取得することを繰り返す。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを撮像して画像データを出力する撮像装置と、
前記ワークに対して定められた作業を行う作業部と、
前記撮像装置および前記作業部と前記ワークを相対的に位置決めする位置決め機構と、
前記撮像装置、前記作業部および前記位置決め機構を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記撮像装置から出力される画像データに基づいて、前記ワークに対する作業の容易さを示す予測値と、この予測値が判定値以上となると予測される前記作業部の予測姿勢とを取得し、取得された前記予測値に基づいて作業対象とする前記ワークを決定すると共に、前記予測値が前記判定値以上となる場合の前記撮像装置による撮像方向を、作業対象と決定した前記ワークへのアプローチ方向として決定するアプローチ方向等決定手段と、
決定された前記アプローチ方向から作業対象と決定した前記ワークに対して作業を行うように前記作業部を制御する制御部と、を含み、
前記制御装置は、前記予測値が判定値未満である場合に、前記作業部を予測姿勢に移動させ、再度、前記撮像装置で撮像され出力される画像データに対して、前記作業部を移動させた姿勢での前記予測値および予測姿勢を取得することを繰り返す作業装置。
【請求項2】
請求項1に記載の作業装置において、前記アプローチ方向等決定手段は、前記画像データに対して機械学習により生成された予測モデルを適用することによって、前記予測値および前記予測姿勢を取得する作業装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の作業装置において、前記位置決め機構は、前記撮像装置および前記作業部が固定されるステージを有し、前記撮像装置の光軸と前記作業部のアプローチ方向とが平行になるように、前記撮像装置および前記作業部が配置されている作業装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の作業装置において、前記位置決め機構は、ベースと、前記撮像装置および前記作業部が固定されるステージとを備え、前記ベースに対して前記ステージを回転2自由度で位置決めする第1の位置決め機構と、前記ベースを位置決めする第2の位置決め機構とを有する作業装置。
【請求項5】
請求項4に記載の作業装置において、前記制御装置は、前記予測値が判定値以上となった後、前記作業部に対し複数回予測姿勢への姿勢変更を繰り返し、各姿勢にて前記撮像装置で撮像され出力された複数の画像データのうち、前記予測値が最大になる姿勢における撮影方向を、前記ワークへのアプローチ方向として決定する作業装置。
【請求項6】
請求項4に記載の作業装置において、前記撮像装置の光軸と前記ステージの中心軸とが一致するように、前記撮像装置および前記ステージが配置されている作業装置。
【請求項7】
請求項4に記載の作業装置において、前記第1の位置決め機構は、前記ベースおよび前記ステージと、前記ベースに対し前記ステージを姿勢変更可能に連結する2組以上のリンク機構と、前記リンク機構を駆動するアクチュエータとを含む角度調整装置である作業装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業装置に関し、例えば、バラ積み状態のワークを把持する場合のワークへの最適なアプローチ方向等を検出し得る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワーク群を3次元撮像する3次元撮像装置と、前記ワークを把持可能なロボットアームと、前記ロボットアームの動作を制御する制御装置とを備えたピッキング装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-213973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置では、ワークへのアプローチ方向の判断に3次元撮像装置を用いている。しかし、ワークを容器内に乱雑に積んでいる場合、ワークの上方に固定した撮像装置で所望のワークの画像を撮影すると、前記ワークの近傍のワークによって遮られる。そうすると、姿勢検出に必要な映像が欠落してしまうため、ワークを取り上げる成功率が低下するという問題がある。
【0005】
また、ワークの上方に固定した撮像装置でワークの画像を撮影する場合、把持装置と干渉しないように撮像装置を配置する必要がある。このため、撮影距離が長距離となり取得する画像の分解能が低いという問題もある。画像の分解能が低い場合、画像の特徴点を見つけにくくワークそのものが認識しにくい。したがって、ワークを取り上げる成功率の低下に繋がる。
【0006】
本発明の目的は、ワークに対する作業の成功率を向上することができる作業装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の作業装置1は、ワーク20を撮像して画像データを出力する撮像装置9と、
前記ワーク20に対して定められた作業を行う作業部10と、
前記撮像装置9および前記作業部10と前記ワーク20を相対的に位置決めする位置決め機構PMと、
前記撮像装置9、前記作業部10および前記位置決め機構PMを制御する制御装置100と、を備え、
前記制御装置100は、
前記撮像装置9から出力される画像データに基づいて、前記ワーク20に対する作業の容易さを示す予測値と、この予測値が前記判定値以上となると予測される前記作業部10の予測姿勢とを取得し、取得された前記予測値に基づいて作業対象とする前記ワーク20を決定すると共に、前記予測値が判定値以上となる場合の前記撮像装置9による撮像方向を、作業対象と決定した前記ワーク20へのアプローチ方向として決定するアプローチ方向等決定手段Apと、
決定された前記アプローチ方向から作業対象と決定した前記ワーク20に対して作業を行うように前記作業部10を制御する制御部114と、を含み、
前記制御装置100は、前記予測値が判定値未満である場合に、前記作業部10を予測姿勢に移動させ、再度、前記撮像装置9で撮像され出力される画像データに対して、前記作業部10を移動させた姿勢での前記予測値および予測姿勢を取得することを繰り返す。
前記定められた作業は、ワークに対する用途によって種々定められる。定められた作業として、例えば、ワークの取り上げ、組立、溶接、グリース塗布、外観検査等が挙げられる。
前記判定値は、設計等によって任意に定める値であって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方等により適切な値を求めて定められる。
【0008】
この構成によると、制御装置100のアプローチ方向等決定手段Apは、画像データに基づいて、ワーク20に対する作業の容易さを示す予測値と、この予測値が判定値以上となると予測される作業部10の予測姿勢とを取得する。アプローチ方向等決定手段Apは、前記予測値に基づいて作業対象とするワーク20を決定する。例えば、取得された予測値が最大となったワーク20を作業対象として選択する。前記予測値が判定値以上となる場合には、画像データ取得時の撮像方向を前記ワーク20へのアプローチ方向として決定する。制御部114は、決定されたアプローチ方向からワーク20に対して作業を行うように作業部10を制御する。
【0009】
全ての予測値が判定値未満である場合には、制御装置100は、いずれかのワーク20に対応する予測姿勢に作業部を移動させ、再度、撮像装置9によってワーク20を撮像させ画像データを取得し、その姿勢での予測値および予測姿勢を取得することを繰り返す。
こうすることで、ランダムに作業部10を移動させて予測値が判定値以上となる姿勢を探索する場合と比較して、定められた作業を行える可能性が高いアプローチ方向の探索時間を短縮できる。より作業を行える可能性が高いアプローチ方向からワーク20に対して作業を行うため、前述の従来技術に比べて、ワークに対する作業の成功率を向上することができる。
【0010】
前記アプローチ方向等決定手段Apは、前記画像データに対して機械学習により生成された予測モデルを適用することによって、前記予測値および前記予測姿勢を取得してもよい。
前記予測モデルは、前記ワーク20を撮像し出力された画像データから、少なくとも1つの目標とする作業位置を検出するために学習済みの機械学習結果を含む。前記機械学習結果は、学習対象の画像データに基づいて算出された作業動作の容易さを示す正解値と、前記学習対象の画像データ上に予め指示した作業位置とを教師データとする学習結果である。
この場合、予測モデルを適用することで、必要に応じて目標とする作業部10の姿勢等を微調整することができる。よって、ワーク20に対する作業の成功率をさらに向上し得る。
【0011】
前記位置決め機構PMは、前記撮像装置9および前記作業部10が固定されるステージ33を有し、前記撮像装置9の光軸と前記作業部10のアプローチ方向とが平行になるように、前記撮像装置9および前記作業部10が配置されてもよい。この場合、ワーク20を撮像装置9で撮像後、作業部10を移動させる際に、撮像装置9の光軸方向とのずれを修正する必要がなく、作業部10におけるワーク20の作業時間の短縮および作業の成功率の向上が図れる。
【0012】
前記位置決め機構PMは、ベース32と、前記撮像装置9および前記作業部10が固定されるステージ33とを備え、前記ベース32に対して前記ステージ33を回転2自由度で位置決めする第1の位置決め機構8と、前記ベース32を位置決めする第2の位置決め機構47とを有してもよい。この場合、回転2自由度を有する第1の位置決め機構8における先端側のステージ33に、撮像装置9を固定することにより、撮像装置9をワーク20の近傍に位置決めできる。この場合、ワークの上方に撮像装置を固定する従来技術等よりも分解能の高い画像データを取得できる。また、撮影方向が変更可能に構成された撮像装置9で得られた画像データを用いてワーク20に対する作業の容易さを判定し、撮影方向と同じ方向からアプローチして作業を行う。このため、作業装置1におけるワーク20の作業の成功率が向上する。
【0013】
前記制御装置100は、前記予測値が判定値以上となった後、前記作業部10に対し複数回予測姿勢への姿勢変更を繰り返し、各姿勢にて前記撮像装置9で撮像され出力された複数の画像データのうち、前記予測値が最大になる姿勢における撮影方向を、前記ワーク20へのアプローチ方向として決定してもよい。このように出力された複数の画像データのうち、予測値が最大になる姿勢における撮影方向をワーク20へのアプローチ方向として決定することで、ワーク20の作業の成功率がさらに向上する。
【0014】
前記撮像装置9の光軸と前記ステージ33の中心軸とが一致するように、前記撮像装置9および前記ステージ33が配置されてもよい。ワーク20を撮影した方向から作業部10の姿勢を変更することなく作業部10をワーク20にアプローチすることができる。これにより、撮像装置9の光軸とステージ33の中心軸とが不一致の構成に対し、ワーク20の作業の成功率が向上し、姿勢変更する時間を短縮することができる。
【0015】
前記第1の位置決め機構は、前記ベース32および前記ステージ33と、前記ベース32に対し前記ステージ33を姿勢変更可能に連結する2組以上のリンク機構34と、前記リンク機構34を駆動するアクチュエータ31とを含む角度調整装置8であってもよい。この場合、回転位置決め機構を2台直列に配置した2自由度機構に比べて、可動部の質量が小さく、高速位置決めが可能である。そのため、最適アプローチ方向の探索時間を短縮できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の作業装置は、全ての予測値が判定値未満である場合には、制御装置は、いずれかのワークに対応する予測姿勢に作業部を移動させ、再度、撮像装置によってワークを撮像させ画像データを取得し、その姿勢での予測値および予測姿勢を取得することを繰り返す。このため、前述の従来技術に比べて、ワークに対する作業の成功率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態に係る作業装置の構成を示す図である。
図2】同作業装置における角度調整装置の2つのリンク機構を省略した簡易モデルの正面図である。
図3】同角度調整装置の正面図である。
図4】同角度調整装置の1つのリンク機構を直線で表現した図である。
図5】同角度調整装置のステージに固定された撮像装置およびピックアップ部を示す図である。
図6図3に示す角度調整装置に撮像装置およびピックアップ部を搭載した状態を示す図である。
図7】同作業装置の制御系のブロック図である。
図8】学習に用いる画像データの収集の様子を説明するための図である。
図9】学習時における撮影後の処理を説明するための図である。
図10】ピックアップ動作の容易さを示す正解値が最大となる状態の一例を示した図である。
図11A】同作業装置の一連の動作を説明するためのフローチャートである。
図11B図11Aのピックアップ処理を示すフローチャートである。
図12】同制御装置の代表的な構成図である。
図13】変形例のピックアップ部の正面図である。
図14】学習手順を示すフローチャートである。
図15】同作業装置における他の一連の動作を説明するフローチャートである。
図16】本発明の第2の実施形態に係る作業装置の構成を示す図である。
図17】本発明の第3の実施形態に係る作業装置の構成を示す図である。
図18】本発明の第4の実施形態に係る作業装置の構成を示す図である。
図19】本発明の第5の実施形態に係る作業装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1の実施形態]
本発明の実施形態に係る作業装置を図1ないし図15と共に説明する。
<作業装置の全体構成>
図1のように、作業装置の一例であるピックアップ装置1は、ワーク設置台14または容器13の内部等に任意の姿勢で積まれたワーク20をピックアップする。ピックアップ装置1は、撮像装置9と、作業部としてのピックアップ部10と、位置決め機構PMと、制御装置100とを備える。
【0019】
撮像装置9は、少なくとも1つ以上のワーク20を撮像して画像データを出力する。ピックアップ部10は、ワーク20にアプローチ方向から近づき、ワーク20に対して定められた作業としてピックアップを行う。ピックアップ対象となる複数のワーク20は、ワーク容器13内に乱雑に積み上げられる場合が多い。位置決め機構PMは、撮像装置9およびピックアップ部10とワーク20を相対的に位置決めする。制御装置100は、撮像装置9、ピックアップ部10および位置決め機構PMを制御する。
【0020】
<位置決め機構>
位置決め機構PMは、第1の位置決め機構である角度調整装置8と、第2の位置決め機構47とを有する。角度調整装置(「リンク作動装置」とも称される)8は、撮像装置9およびピックアップ部10を姿勢変更可能に支持する図2のパラレルリンク機構30と、パラレルリンク機構30を駆動する姿勢制御用のアクチュエータ31とを有する。図1に示す第2の位置決め機構47は、ワーク20に対する角度調整装置8の相対位置を調整する。第2の位置決め機構47は、直動ユニット4と、回転機構7とを有する。地面である床等に構造体2が固定され、構造体2に直動ユニット4が設置されている。直動ユニット4の出力部6に回転機構7が取り付けられている。
【0021】
<直動ユニット>
直動ユニット4には、直交3軸方向に移動するXYZステージが適用されている。直動ユニット4は、互いに直交するX軸,Y軸,Z軸にそれぞれ対応する第1,第2および第3電動アクチュエータ4X,4Y,4Zを含む。第1電動アクチュエータ4Xは、構造体2の上部において図1の左右方向であるX軸方向に延びるガイド部4Xaと、ガイド部4Xaに沿って摺動するX軸テーブル4Xbと、駆動源であるモータ5Xと、モータ5Xの回転を直線往復動作に変換する図示外のボールねじ等の変換機構とを有する。
【0022】
第2電動アクチュエータ4Yは、X軸テーブル4Xbに支持される。第2電動アクチュエータ4Yは、図1の奥行方向であるY軸方向に沿って延びるガイド部4Yaと、ガイド部4Yaに沿って摺動するY軸テーブル4Ybと、駆動源であるモータ5Yと、モータ5Yの回転を直線往復動作に変換する図示外のボールねじ等の変換機構とを有する。
【0023】
第3電動アクチュエータ4Zは、X軸およびY軸方向にそれぞれ直交するZ軸方向(この例では上下方向)に進退する。第3電動アクチュエータ4Zは、Y軸テーブル4Ybに支持される。第3電動アクチュエータ4Zは、Z軸方向に沿って延びるガイド部4Zaと、ガイド部4Zaに沿って摺動するZ軸テーブル4Zbと、駆動源であるモータ5Zと、モータ5Zの回転を直線往復動作に変換する図示外のボールねじ等の変換機構とを有する。各モータ5X,5Y,5Zにより対応する変換機構を動作させることにより、X,Y,Z軸テーブル4Xb,4Yb,4ZbがX,Y,Z軸方向に移動可能である。出力部6となるZ軸テーブル4Zbに、回転機構7が取り付けられている。
【0024】
<回転機構>
Z軸テーブル4Zbに、ブラケット等を介して回転機構7が支持されている。回転機構7は、Z軸方向の回転軸心回りに回転する回転アクチュエータであり、同回転アクチュエータの出力部に、後述する角度調整装置8のベース32(図2)が取り付けられている。よって、直動ユニット4と回転機構7とを有する第2の位置決め機構47は、ベース32(図2)を位置決めする。この例のピックアップ装置1では、前記回転アクチュエータの回転軸と、ベース32の中心軸QA(図2)とが同軸となるように設けられている。
【0025】
<角度調整装置>
角度調整装置8は、回転機構7によってZ軸方向の回転軸心回りに回転が可能である。図2のように、角度調整装置8は、パラレルリンク機構30とアクチュエータ31とを含む。パラレルリンク機構30は、ベース32と、図1の撮像装置9およびピックアップ部10が固定されるステージ33と、図3のベース32に対してステージ33を連結する3組のリンク機構34とを含む。アクチュエータ31は、リンク機構34を駆動する姿勢制御用の駆動源である。図2には、図3に示された3組のリンク機構34のうち代表して1組が抽出して示されている。
【0026】
図1に示す位置決め機構PMは、図2のベース32の位置を変更可能に構成される。角度調整装置8は、ベース32に対してステージ33を回転2自由度で位置決めする。角度調整装置8において、アクチュエータ31は、ベース32に対する基端側の端部リンク部材35の成す角度αを変更し得る。
図3のように、パラレルリンク機構30は、ベース32に対してステージ33を3組のリンク機構34によって姿勢変更可能に連結する。ステージ33には、図1の撮像装置9およびピックアップ部10が取り付けられている。本実施形態では、図3に示す3組のリンク34を有するパラレルリンク機構30について示したが、リンク機構34の数は、2組でもよく、4組以上であってもよい。
【0027】
図2のように、各リンク機構34は、基端側の端部リンク部材35、先端側の端部リンク部材36、および中央リンク部材37を有する。リンク機構34は、4つの回転対偶からなる4節連鎖のリンク機構である。図3のように、基端側および先端側の端部リンク部材35,36はL字状の形状を有する。
図2のように、基端側の端部リンク部材35の一端は、ベース32に回転自在に連結されている。先端側の端部リンク部材36の一端は、ステージ33に回転自在に連結されている。中央リンク部材37は、両端に端部リンク部材35,36の各他端がそれぞれ回転自在に連結されている。
【0028】
パラレルリンク機構30は、2つの球面リンク機構を組み合わせた構造を有する。基端側および先端側の端部リンク部材35,36と中央リンク部材37との各回転対偶の中心軸は、ある交差角γをもっていてもよく、平行であってもよい。
【0029】
図4は、一組のリンク機構34を直線で表現した図である。3組のリンク機構34は、幾何学的に同一形状のモデルで示すことができる。幾何学的に同一形状とは、各リンク部材35,36,37を直線で表現した幾何学モデル、すなわち各回転対偶と、これら回転対偶間を結ぶ直線とで表現したモデルが、どのような姿勢をとっていても、中央リンク部材37の中央部に対する基端側部分と先端側部分が対称を成す形状であることを言う。本実施形態のパラレルリンク機構30は回転対称タイプで、基端側のベース32および基端側の端部リンク部材35と、先端側のステージ33および先端側の端部リンク部材36との位置関係が、中央リンク部材37の中心線Cに対して回転対称となる位置構成になっている。各中央リンク部材37の中央部は、共通の軌道円D上に位置している。
【0030】
ベース32とステージ33と3組のリンク機構34とは、2自由度回転機構を構成する。ベース32に対するステージ33の旋回角φは、ベース32の中心軸QAに垂直な平面において、中心軸QAの交点を通る基準直線とステージ33の中心軸QBを投影した直線とが成す角度である。ベース32の中心軸QAに対して、ステージ33の中心軸QBが傾斜した垂直角度を、折れ角θという。この2自由度回転機構は、コンパクトでありながら、ベース32に対するステージ33の可動範囲を広くとれる。
【0031】
例えば、基端側および先端側の球面リンク中心PA,PBを通り、ベース32およびステージ33と、基端側および先端側の端部リンク部材35,36の各回転対偶の中心軸と直角に交わる直線を、ベース32およびステージ33の中心軸QA,QBとした場合、基端側のベース32の中心軸QAと先端側のステージ33の中心軸QBとの折れ角θの最大値である最大折れ角θmaxを約90°とすることができる。なお最大折れ角θmaxが90°以上であってよい。またベース32に対するステージ33の旋回角φを0°~360°の範囲に設定できる。
【0032】
ベース32に対するステージ33の姿勢変更は、基端側のベース32の中心軸QAと先端側のステージ33の中心軸QBとの交点Oを回転中心として行われる。ベース32に対するステージ33の姿勢が変化しても、基端側と先端側の球面リンク中心PA,PB間の距離Lは変化しない。
【0033】
折れ角θの調整はリンク機構34の動作のみで可能であり、多関節ロボットのような複数の関節の動作を伴わない。このため、パラレルリンク機構30は、多関節ロボットの比べて素早い動作が可能である。したがって、図3のパラレルリンク機構30を、後述する機械学習に必要な画像データの収集に用いれば、多関節ロボットと比較して、大量の画像データを短時間で収集することができる。
【0034】
図2に示す姿勢制御用のアクチュエータ31は、モータと減速機構および回転角度センサを備えたロータリアクチュエータである。アクチュエータ31は、ベース32の基端部材40の面に、基端側の端部リンク部材35の回転軸42と同軸上に設置されている。前記減速機構の出力軸は回転軸42に連結されている。アクチュエータ31は、基端部材40に固定されている。図3に示すように、3組のリンク機構34に、それぞれベース32に対する基端側の端部リンク部材35の成す角度α1~α3を変更するための3つのアクチュエータ31を設ければ、角度調整装置8の位置決め剛性が向上する。3組のリンク機構34のうち少なくとも2組に姿勢制御用のアクチュエータ31を設ければ、ベース32に対するステージ33の姿勢を確定することができる。
【0035】
<撮像装置およびピックアップ部>
図5のように、撮像装置9は、その撮像方向を示す光軸9aがステージ33の中心軸QBに一致するように配置される。ステージ33における撮像装置9の両側には、吸着パッド10A,10Bが配置される。吸着パッド10A,10Bは、図1のワーク20を取り上げるピックアップ部10を構成する。図5の撮像装置9の光軸9aとピックアップ部10のアプローチ方向A1とが平行になるように、撮像装置9およびピックアップ部10が配置されている。
【0036】
ピックアップ部10として、本実施形態では、真空吸着方式のピックアップ部10が用いられる。ピックアップ部10は、2つの吸着パッド10A,10Bを有する。吸着パッド10A,10Bは、撮像装置9に隣接させ、かつ、2つの吸着パッド10A,10Bが互いに前記光軸9aに対して軸対称となるように配置される。ピックアップ部10の取り付け位置は、吸着パッド10A,10Bが撮像装置9の観察視野に入らない位置とする。図6のように、ステージ33上には、ピックアップ対象(作業対象)に決定したワーク20(図1)までの距離を検出する距離センサー11が配置されている。距離センサー11は、撮像装置9およびピックアップ部10に近接してステージ33上に設置される。
【0037】
<制御装置>
図7のように、制御装置100は、画像データ取得部111と、アプローチ方向等決定手段Apと、制御部114とを含む。画像データ取得部111は、撮像装置9から画像データを取得する。アプローチ方向等決定手段Apは、画像データに基づいて、ワークに対する作業の容易さを示す予測値Sと、この予測値Sが判定値T以上となると予測されるピックアップ部10の予測姿勢Uとを取得し、取得された前記予測値Sに基づいて作業対象とするワーク20を決定すると共に、前記予測値Sが判定値T以上となる場合の撮像装置9による撮像方向を、作業対象と決定したワーク20(図1)へのアプローチ方向として決定する。
【0038】
アプローチ方向等決定手段Apは、記憶部115と、検出部112と、学習部113とを含む。記憶部115は、取得した画像データと、後述する教師データおよび機械学習結果を保存する。検出部112は、取得した画像データを処理する。検出部112は、画像データに対して機械学習により生成された予測モデルMを適用することによって、前記予測値Sおよび前記予測姿勢Uを取得する。
【0039】
具体的には、検出部112は、記憶部115から読み込んだ機械学習結果によって取得した画像データを処理して目標とするワークおよびそのピックアップ位置とピックアップ動作の容易さを示す予測値Sと、予測値Sが判定値T以上となる可能性が高い予測姿勢Uを出力する。複数のワークがある場合には、検出部112は、画像データからピックアップ可能なワークを検出し、次に検出されたワークの各々について予測値Sと予測姿勢Uを求め、予測値Sが最大になったワークの把持位置、予測値S、予測姿勢Uを出力する。
【0040】
学習部113は、記憶部115に保存された画像データと、画像毎に予め指示した目標位置であるピックアップ位置およびピックアップ動作の容易さを示す正解値SGを教師データとして機械学習を行なう。
制御部114は、直動ユニット4、回転機構7、角度調整装置8、およびピックアップ部10を制御する。
制御装置100は、画像データ取得部111で撮像装置9から画像データを取得し、取得した画像データを検出部112で処理し、検出部112の処理結果に基づいて制御部114を介して位置決め機構PM、ピックアップ部10の動作を制御する制御信号を出力する。
【0041】
<予測値Sと正解値SGについて>
本実施形態では、学習結果を読み込んだ検出部112が、入力されたワークの画像データに対して出力するピックアップ動作の容易さを示す数値を予測値Sと呼ぶ。学習時に教師データとして与える予測値Sの正解を正解値SGと呼ぶ。予測値Sおよび正解値SGは、いずれも、例えば、「0~100」の範囲の値をとり、ピックアップ動作が容易であるほど大きな値をとる。
【0042】
予測姿勢Uとは、対象ワークにおいて予測値Sが判定値T以上となると予測されるピックアップ部10の姿勢であり、例えば、位置決め機構PMの各軸に対する指令値の組合せで与えてもよい。正解姿勢UGは、学習時に入力されたワークの画像データに対して、そのワークのピックアップに最も適したアプローチ方向にピックアップ部10を移動させる位置決め機構PMへの指令値の教師データとして与える姿勢である。本実施形態では吸着タイプのピックアップ部10を用いるので、図の8ワーク20表面の法線方向A2を最適なアプローチ方向とする。
【0043】
<ワークの検出について>
図7の検出部112は、例えば、ニューラルネットワークを応用してピックアップ位置を検出する。検出部112は、記憶部115に保存された学習結果を用いてニューラルネットワークの数値計算を行なう。ニューラルネットワークには撮像装置9からの画像データを入力する。ニューラルネットワークは入力された画像データに対して中間層と呼ばれるフィルタ処理等を通して、出力層へ数値計算の結果を出力する。
ニューラルネットワークの出力層からは、図9に示すピックアップ可能なワーク20のピックアップ位置の座標(x,y)とともに、検出したピックアップ位置のピックアップ動作の容易さを示す予測値S、入力された画像データから算出された予測値Sが判定値T以上となる可能性が高いと推定される予測姿勢Uが出力される。
【0044】
<学習データの収集について>
学習に用いるデータの収集方法について説明する。本実施形態では、図8のように、容器13の底部に直方体状のワーク20を配置した例を示す。このとき、ワーク20表面の法線方向A2は、予めわかっているものとする。図14は学習手順のフローチャートを示す。図7の制御装置100は、位置決め機構PMを制御し(図14、ステップa1)、図8のように、撮像装置9をワーク20の周囲の様々な位置(A),(B),(C)に移動して(図14、ステップa2)ワーク20を撮影し(図14、ステップa3)、出力された画像データを図7の記憶部115に保存する(図14、ステップa4,a5)。制御装置100は、保存する画像データに関連付けて、角度調整装置8の旋回角φと折れ角θ、その姿勢から図8のワーク20の最適なアプローチ方向である法線方向A2へ移動するためのよりよい指令値として正解姿勢UGも図7の記憶部115に保存する。
【0045】
学習用の画像を撮影後、記憶部115に保存した各画像データに対し作業者が行うアノテーション作業について説明する。図9は、図7の記憶部115に保存した画像データの中の1つを、制御装置100に接続されたモニタ110上に表示させた状態を示している。ここで、作業者がマウスまたはキーボードなどの入力装置109を用いて、図9のように、画像上のワーク20表面にピックアップ位置PPを設定する。ここで設定した座標を(x,y)とすると、これらのデータがピックアップ位置PPを示すものとして図7の記憶部115に記憶される(図14、ステップa5)。
【0046】
図10に示すように、撮像装置9の撮影方向を示す光軸9aとワーク20表面の法線A2とが一致する方向から撮影した画像は、ピックアップが容易な画像であると定義し、この画像のピックアップ位置PP(図9)に対して、ピックアップ動作の容易さを示す正解値SGとして最大値100を設定する。
作業者は、マウスまたはキーボードなどの入力装置109(図7)を用いてピックアップ位置PPを示す点を設定する。ピックアップ動作の容易さを示す正解値SGは、例えば対象とするワーク20の表面の法線A2と角度調整装置のアプローチ方向がなす角εを用いて下記式(1)で算出する。
【0047】
SG=100×cos(ε/2) …(1)
正解値SGは、ε=0で最大値100をとり、εが大きくなるにつれ小さくなる。εは0~πの範囲の値とする。SGは、ε=πで最小値0をとる。
以上の作業で設定した座標(x,y)およびピックアップ動作の容易さを示す正解値SGが図7の記憶部115に保存される。前記正解値は、本実施形態ではワーク表面の法線方向を基準に求める例を示したが、ワークの形状またはピックアップ部の構造、機能等に応じて決めればよい。上記の説明は直方体形状のワークを吸着タイプのピックアップ部でピックアップする場合に関して一例を述べたものである。
【0048】
<学習処理>
学習部113は、以上の作業で収集した画像データおよびその画像データをもとにコンピュータグラフィックCGを用いて画像内のワーク位置等を変更しn増しした画像データと、座標(x,y)と、ピックアップ動作の容易さを示す正解値SGと、正解値SGが最大値「100」となる正解姿勢UGとを用いて、誤差逆伝播法で学習を行ない、結果を記憶部115に保存する。本実施形態では、図8の撮像装置9の光軸9aとワーク20の法線A2が一致するとき、ピックアップ動作の容易さを示す「予測値」が最大値の「100」となる。図7の検出部112は、この学習結果を用いてニューラルネットワークの数値計算を行なう。
【0049】
<ピックアップ装置の一連の動作>
学習後のニューラルネットワークを用いて、目標とするピックアップ位置の検出からピックアップ動作までの一連の動作が実行される例を示す。図11A,11Bは、ピックアップ装置の一連の動作を説明するためのフローチャートである。図12は、フローチャートの処理を実行する制御装置100の代表的な構成図である。図12において、メモリ102は、図7の記憶部115に相当する。また図12のプロセッサ101は、メモリ102に記憶されたプログラムを読み込んで実行することによって、図7の画像データ取得部111、検出部112、学習部113および制御部114として機能する。
【0050】
制御装置100は、位置決め機構PMを制御し、撮像装置9をワークの近傍に移動する(図11A、ステップS1)。続いて、制御装置100は、位置決め機構PMを制御し、撮像装置9の光軸をワークの方向に向け(図11A、ステップS2)、ある撮影方向から画像を撮影する(図11A、ステップS3)。
【0051】
制御装置100は、撮像装置9から画像データを取得してニューラルネットワークに入力し、ピックアップ可能なワークのピックアップ位置の座標(x,y)を検出し、ピックアップ動作の容易さを示す予測値S、予測姿勢Uを算出する(図11A、ステップS4)。ワークが見つからず予測値が算出できない、または予測値が所定の範囲にない場合(図11A、ステップS5:NO)、制御装置100は、エラー信号を発信し、このフローチャートの処理を終了させる。
【0052】
ワークが見つかり予測値Sが算出された場合(図11A、ステップS5:YES)、制御装置100は、出力層から得られるピックアップ動作の容易さを示す予測値Sを判定値Tと比較する(図11A、ステップS6)。ステップS5のワークの有無判別はステップS3後に従来の画像処理などで判別してもよいが、ワークがない場合に予測値Sが閾値未満となるように学習させておけば、個別の処理が不要となる。
【0053】
出力された画像データの予測値Sが判定値Tより小さいとき(図11A、ステップS6:NO)、予測姿勢Uへ姿勢変更し(図11A、ステップS8)、ステップS3~ステップS6の処理が繰返される。このように制御装置100は、予測値Sが判定値T未満である場合に、ピックアップ部10を予測姿勢に移動させ、再度、撮像装置9で撮像され出力される画像データに対して、ピックアップ部10を移動させた姿勢での予測値Sおよび予測姿勢Uを取得することを繰り返す。
【0054】
一方、予測値Sが判定値T以上のとき(図11A、ステップS6:YES)、位置決め機構PMの移動を停止し、距離センサー11(図6)等でピックアップ位置までの相対距離Dを計測する(図11B、ステップS7)。このとき、ピックアップ前の状態を撮像装置9で撮影する(図11B、ステップS9)。また、撮像装置9の位置と光軸方向を記憶部115に保存する。
【0055】
次に、制御装置100は、相対距離Dと撮像装置9の位置および光軸方向に基づいてピックアップに必要な直動ユニット4の各軸の移動距離を算出し、撮像装置9の光軸に平行に距離Dだけエンドエフェクタであるピックアップ部10を移動する(図11B、ステップS10)。そして制御装置100は、ピックアップ部10を制御してワーク20に対するピックアップ動作を行う(図11B、ステップS11)。このように制御装置100の制御部114は、決定されたアプローチ方向から作業対象と決定したワークに対して作業を行うようにピックアップ部10を制御する。ピックアップ動作後、制御装置100は、進入した方向と平行かつ反対方向に距離Dだけピックアップ部10を退避させる(図11B、ステップS12)。このとき、制御装置100は、ピックアップ動作後の状態を撮像装置9によって撮影する(図11B、ステップS13)。
【0056】
次に、制御装置100は、ワーク20がピックアップできているか否かを判定する。例えば、制御装置100は、ピックアップ動作の前後において撮像装置9から出力された画像データを比較して不一致部分を検出する。制御装置100は、ピックアップの対象としたワークに相当する不一致が検出された場合はピックアップ成功と判定し、変化が検出されなかったときはピックアップ失敗と判定することができる(図11B、ステップS14)。ピックアップ成否の判定処理は、特にこの方法には限定されない。ピックアップの成否を判定できれば、近接センサー等の他のセンサーで判定してもよい。
【0057】
その後制御装置100は、上記の判定結果と、検出した座標(x,y)を、ピックアップ動作前の画像とともに制御装置100の記憶部115に保存する(図11B、ステップS15)。
制御装置100は、ピックアップが成功した場合には(図11A、ステップS16:YES)、このフローチャートの処理を終了させ(図11A、ステップS17)、ピックアップ処理が成功していない場合には(図11A、ステップS16:NO)、再びステップS2以降の処理を繰返す。
【0058】
<追加の学習>
必要に応じて、上記のピックアップ動作結果を用いて追加学習を行なってもよい。制御装置100は、実際のピックアップ動作で撮影された対象物の画像と、その画像において検出されたピックアップ位置と、ピックアップ動作結果に応じて決定されたピックアップ動作の容易さを示す正解値SGとを教師データに追加して機械学習を行なう。そして制御装置100は、追加学習によって更新された機械学習結果に基づいて以降のワークのピックアップ動作を行なわせる。
【0059】
この場合、ピックアップに成功したときは、ピックアップの容易さを示す正解値SGを100とし、失敗したときは正解値SGに係数α(ただし、α<1)を乗じた新たな値を正解値SGとする。制御装置100は、このようにして更新された正解値SGおよびピックアップ位置の座標(x,y)を教師データに追加して学習を行ない、学習結果を更新して記憶部115に保存する。
【0060】
係数αは、たとえば、図11BのステップS14で失敗が検出された場合は0.3に設定し、アプローチ動作中に撮影を行ない、図7のピックアップ部10とワーク20(図8)とが接触してワーク姿勢が変化したことを検出したときは0.5に設定してもよい。なお、係数αは、特にこれらの値に限定される必要はなく、ピックアップ動作の失敗要因に応じて設定されればよい。
また、前述のアノテーション作業と同様の作業によって、検出された位置を微調整してもよい。さらに、この微調整された位置を教師データとして学習を行ない、記憶部115に保存された学習結果を更新してもよい。
追加学習により、作業環境等が変化しても迅速に対応することができる。
【0061】
また、図15のフローチャートに示すように、予測値Sが判定値T以上(ステップS6:YES)となる姿勢に変更された後にもN回繰り返して予測値Sが判定値T以上となる予測姿勢Uに変更し、判定値T以上となる予測値Sのうち、最大となる場合の姿勢をアプローチ方向としてもよい(ステップS18~S26)。すなわち図7の制御装置100は、予測値Sが判定値T以上となった後、ピックアップ部10に対し複数回予測姿勢への姿勢変更を繰り返し、各姿勢にて撮像装置9で撮像され出力された複数の画像データのうち、予測値Sが最大になる姿勢における撮影方向を、ワークへのアプローチ方向として決定する。これによりピックアップの成功率を向上させることができる。ここで、図15中のピックアップ処理とは、図11BのS7~S15に示す処理である。
【0062】
なお、図7の制御部114は学習機能を省略し、他の同型装置により作成された学習結果を移植して使用してもよい。学習機能を省略することにより、機械学習に必要な計算機能および学習用データの保管機能が不要になるため、機能の低い部品を使用することができる。このため、学習機能を有する制御部よりも制御部114の価格を低減できる。
【0063】
<作用効果>
以上説明したピックアップ装置1によると、制御装置100は、画像データに基づいて、ワークに対する作業の容易さを示す予測値Sと、この予測値Sが判定値T以上となると予測されるピックアップ部10の予測姿勢Uとを取得する。制御装置100は、例えば、取得された予測値Sが最大となったワークを作業対象として選択する。前記予測値Sが判定値T以上となる場合には、画像データ取得時の撮像方向をワークへのアプローチ方向として決定する。制御部114は、決定されたアプローチ方向からワークに対して作業を行うようにピックアップ部10を制御する。
【0064】
全ての予測値Sが判定値T未満である場合には、制御装置100は、いずれかのワークに対応する予測姿勢Uにピックアップ部10を移動させ、再度、撮像装置9によってワークを撮像させ画像データを取得し、その姿勢での予測値Sおよび予測姿勢Uを取得することを繰り返す。
こうすることで、ランダムにピックアップ部10を移動させて予測値が判定値以上となる姿勢を探索する場合と比較して、ピックアップを行える可能性が高いアプローチ方向の探索時間を短縮できる。よりピックアップを行える可能性が高いアプローチ方向からワークに対して作業を行うため、前述の従来技術に比べて、ワークに対する作業の成功率を向上することができる。
【0065】
制御装置100のアプローチ方向等決定手段Apは、画像データに対して機械学習により生成された予測モデルを適用することによって、予測値Sおよび予測姿勢Uを取得する。この場合、必要に応じて目標とするピックアップ部10の姿勢を微調整することができる。よって、ワークに対する作業の成功率をさらに向上し得る。
【0066】
位置決め機構PMは、撮像装置9およびピックアップ部10が固定される図6のステージ33を有し、撮像装置9の光軸9aとピックアップ部10のアプローチ方向A1(図5)とが平行になるように、撮像装置9およびピックアップ部10が配置される。この場合、ワークを撮像装置9で撮像後、ピックアップ部10を移動させる際に、撮像装置9の光軸方向とのずれを修正する必要がなく、ピックアップ部10におけるワークの作業時間の短縮および作業の成功率の向上が図れる。
【0067】
図1の位置決め機構PMは、図6のベース32と、撮像装置9およびピックアップ部10が固定されるステージ33とを備え、ベース32に対してステージ33を回転2自由度で位置決めする第1の位置決め機構である角度調整装置8と、ベース32を位置決めする図1の第2の位置決め機構47とを有する。この場合、図6のように、回転2自由度を有する角度調整装置8における先端側のステージ33に、撮像装置9を固定することにより、撮像装置9をワークの近傍に位置決めできる。この場合、ワークの上方に撮像装置を固定する従来技術等よりも分解能の高い画像データを取得できる。また、撮影方向が変更可能に構成された撮像装置9で得られた画像データを用いてワークに対する作業の容易さを判定し、撮影方向と同じ方向からアプローチして作業を行う。このため、図1のピックアップ装置1におけるワークの作業の成功率が向上する。
【0068】
図6の撮像装置9の光軸9aとステージ33の中心軸QBとが一致するように、撮像装置9およびステージ33が配置される。この場合、ワークを撮影した方向からピックアップ部10の姿勢を変更することなくピックアップ部10をワークにアプローチすることができる。これにより、撮像装置9の光軸9aとステージ33の中心軸QBとが不一致の構成に対し、ワークの作業の成功率が向上し、姿勢変更する時間を短縮することができる。
【0069】
前記第1の位置決め機構は、ベース32およびステージ33と、ベース32に対しステージ33を姿勢変更可能に連結する2組以上のリンク機構34と、リンク機構34を駆動するアクチュエータ31とを含む角度調整装置8である。この場合、回転位置決め機構を2台直列に配置した2自由度機構に比べて、可動部の質量が小さく、高速位置決めが可能である。そのため、最適アプローチ方向の探索時間を短縮できる。
【0070】
<他の実施形態について>
以下の説明においては、各実施形態で先行して説明している事項に対応している部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している実施形態と同様とする。同一の構成は同一の作用効果を奏する。各実施形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0071】
<ピックアップ部の変形例>
第1の実施形態では、図5のピックアップ部10が吸着パッド10A,10Bを備える場合の例を示したが、吸着によりピックアップするもの以外でもよい。例えば、その他のハンド機構で把持するものであっても同様な構成とすることができる。
図13に示す変形例のピックアップ部200は、ステージ33に撮像装置9とともに取り付けられている。ピックアップ部200は、把持部ベース201と把持部202,203とを含む。把持部202と把持部203とは、ワークへのアプローチ時に同図13に示すようにオープン状態となり、ワークをピックアップする時にはクローズ状態となる。クローズ状態では、ピックアップ成功時には把持部202と把持部203との間にワーク20(図1参照)が把持される。
このように、把持部202,203によってワークを把持することによって、ピックアップ動作を行なってもよい。把持部が2本指の例を示したが、3本以上の指であってもよい。
【0072】
[第2の実施形態:垂直多関節型]
図16のように、位置決め機構として、垂直多関節型の多関節機構PMaを適用してもよい。多関節機構PMaは、ベースユニット48と、複数の関節を有する複数(この例では第1~第6)のアーム49a~49fとを備える。ベースユニット48に複数のアーム49a~49fが順次連結される。ベースユニット48は、地面である床等に設置されている。先端側の第6のアーム49fの先端部に、エンドエフェクタであるピックアップ部10と、撮像装置9とが取り付けられている。
【0073】
ベースユニット48に設けられた回転駆動源50に、基端側の第1のアーム49aがZ軸方向回りに回転可能に設けられている。各関節には、モータ等の駆動源51がそれぞれ設けられている。ベースユニット48には、制御装置であるコントローラCRが設けられている。コントローラCRにより、撮像装置9、ピックアップ部10、回転駆動源50、および各駆動源51が制御される。この多関節機構PMaを備えたピックアップ装置1Aによると、パラレルリンク機構を備えた第1の実施形態に比べて、位置決めの速度が劣るものの同様の作用効果を奏する。
【0074】
[第3の実施形態:水平多関節型]
図17のように、位置決め機構として、水平多関節型の多関節機構PMbを適用してもよい。ベースユニット48に設けられた回転駆動源50に、回転機構53を介して基端側の第1のアーム49aがZ軸方向回りに回転可能に設けられている。第1のアーム49aの先端部に、回転機構53を介して第2のアーム49bがZ軸方向回りに回転可能に設けられている。先端側の第3のアーム49cは、直動機構52により第2のアーム49bに対しZ軸方向に移動可能に構成されている。第3のアーム49cの先端部に回転機構53を介してエンドエフェクタであるピックアップ部10と、撮像装置9とが取り付けられている。この多関節機構PMbを備えたピックアップ装置1Bにおいても、パラレルリンク機構を備えた第1の実施形態に比べて、位置決めの速度が劣るものの同様の作用効果を奏する。
【0075】
[第4の実施形態:垂直多関節型+リンク作動装置]
図18のように、位置決め機構は、垂直多関節型の多関節機構PMaを介して、リンク作動装置8が連結された機構としてもよい。この例では、先端側の第3のアームの先端部に、リンク作動装置8のベース32が取り付けられている。
[第5の実施形態:水平多関節型+リンク作動装置]
図19のように、位置決め機構は、水平多関節型の多関節機構PMbを介して、リンク作動装置8が連結された機構としてもよい。この例では、先端側の第3のアーム49cの先端部に、回転機構53を介してリンク作動装置8のベース32が取り付けられている。
第4,第5の実施形態によると、ピックアップ装置全体をコンパクト化し作業スペースの低減を図れる。その他第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0076】
図6の距離センサー11は、撮像装置9と一体に設けてもよいし、撮像装置9の焦点合わせ機能を利用してワーク20(図1)との距離を検出してもよい。
第1の実施形態では、2つの吸着パッド10A,10Bを撮像装置9の両側に隣接するように配置したが、ピックアップするワークの形状に応じて吸着パッド10A,10Bを適切な位置に配置すればよい。
【0077】
第1の実施形態では、2つの吸着パッドを用いたが、ワークの重量および形状に応じて3個以上の吸着パッドを用いてもよい。1個の吸着パッドでワークをピックアップできる場合には、吸着パッドを複数搭載する必要はなく1個の吸着パッドでもよい。ワークを取り上げるピックアップ部10として、吸着パッド以外のクランプ機構または多指ハンド等任意の把持機構を用いることができる。
【0078】
第1の実施形態では、ワーク検出にニューラルネットワークを使用する例を示したが、サポートベクタマシン等の一般的な教師あり学習法、オートエンコーダ(自己符号化器)、k平均法、主成分分析などの教師なし学習法を用いてもよく、複数の学習法を複合した機械学習法を用いてもよい。
図7の学習部113において、誤差逆伝播法以外にも、サポートベクタマシン等の一般的な教師あり学習法を用いてもよく、オートエンコーダ(自己符号化器)、k平均法、主成分分析などの教師なし学習法を用いてもよい。また、複数の学習法を複合した機械学習法を用いてもよい。
【0079】
制御装置100は、画像データに基づいて、機械学習を行うことなくワークに対する作業の容易さを示す予測値Sと、定められた判定基準に従って前記予測値Sが判定値T以上となると予測されるピックアップ部10の予測姿勢Uとを取得してもよい。前記定められた判定基準は、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方等により適切な判定基準を求めて定められる。
定められた作業として、ワークをピックアップする以外に、例えば、組立、溶接、グリース塗布、外観検査等を適用し得る。
【0080】
以上、本発明の実施形態を説明したが、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0081】
1…ピックアップ装置(作業装置)、8…角度調整装置(第1の位置決め機構)、9…撮像装置、10…ピックアップ部(作業部)、20…ワーク、31…アクチュエータ、32…ベース、33…ステージ、34…リンク機構、47…第2の位置決め機構、100…制御装置、114…制御部、Ap…アプローチ方向等決定手段、PM…位置決め機構、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19