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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001116
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】ポリエステル系シュリンクフィルム
(51)【国際特許分類】
   B29C 61/06 20060101AFI20231226BHJP
   B29K 67/00 20060101ALN20231226BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20231226BHJP
【FI】
B29C61/06
B29K67:00
B29L7:00
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023171790
(22)【出願日】2023-10-03
(62)【分割の表示】P 2023501793の分割
【原出願日】2022-09-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-12-05
(31)【優先権主張番号】P 2022059424
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】523012126
【氏名又は名称】ボンセット アメリカ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Bonset America Corporation
(71)【出願人】
【識別番号】523012137
【氏名又は名称】ボンセット ラテン アメリカ ソシエダ アノニマ
【氏名又は名称原語表記】Bonset Latin America S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100106404
【弁理士】
【氏名又は名称】江森 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100112977
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 有子
(72)【発明者】
【氏名】金子 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】勘坂 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】弓削 秀太
(72)【発明者】
【氏名】入船 達也
(57)【要約】      (修正有)
【課題】優れた耐シワ特性を有するポリエステル系シュリンクフィルムを提供する。
【解決手段】結晶性ポリエステル樹脂を、樹脂全体量に対し、30~50重量%の範囲で含む所定のポリエステル系樹脂組成物に由来したポリエステル系シュリンクフィルムであって、主収縮方向をTD方向とし、それと直交する方向をMD方向としたときに、下記構成(a)~(d)及び(h)を満足する。(a)(b)所定条件下の放置前後における、熱収縮率(TD方向、70℃、10秒)をA1(%)及びA2(%)としたときに、A1を0~19%とし、A2を0~24%とし、A2-A1を-4~4%とする。(c)(d)熱収縮率A3(TD方向、80℃、10秒)を30%以上とし、熱収縮率B(MD方向、90℃、10秒)を10%以下とする。(h)所定条件下の水分率を、W1ppm及びW2ppmとしたときに、W2-W1を1500~2500ppmの範囲内の値とする。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性ポリエステル樹脂を、樹脂全体量に対して、30~50重量%の範囲で含み、かつ、1.4-シクロヘキサンジメタノール又はペンチルアルコールを、アルコール成分100モル中、5~30モル%の範囲で用いてなる非結晶性ポリエステル樹脂を含む、ポリエステル系樹脂組成物に由来したポリエステル系シュリンクフィルムであって、
主収縮方向をTD方向とし、当該TD方向と直交する方向をMD方向としたときに、下記構成(a)~(d)及び(h)を満足することを特徴とするポリエステル系シュリンクフィルム。
(a)20℃、90%RHの高湿条件下に、24時間放置した前後において、TD方向における、70℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率をA1(%)及びA2(%)としたときに、熱収縮率A1を0~19%の範囲内の値とし、熱収縮率A2を0~24%の範囲内の値とする。
(b)熱収縮率A1と熱収縮率A2との差であるA2-A1で表される数値を-4~4%の範囲内の値とする。
(c)TD方向における、80℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率をA3としたときに、当該A3を30%以上の値とする。
(d)MD方向における、90℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率をBとしたときに、当該Bを10%以下の値とする。
(h)20℃、90%RHの高湿条件下に、24時間放置した前後における、JIS K 0113:2005に準拠して測定される水分率を、W1(ppm)及びW2(ppm)としたときに、W2-W1で表される数値を1500~2500ppmの範囲内の値とする。
【請求項2】
20℃、90%RHの高湿条件下に、24時間放置した後において、前記TD方向における、80℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率をA4(%)としたときに、A4-A3で表される数値を3%以下の値とすることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル系シュリンクフィルム。
【請求項3】
前記熱収縮率A4を30~70%の範囲内の値とすることを特徴とする請求項2に記載のポリエステル系シュリンクフィルム。
【請求項4】
前記水分率W1を2000~3500ppmの範囲内の値とし、前記水分率W2を4000~5500ppmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル系シュリンクフィルム。
【請求項5】
前記TD方向における、収縮温度85℃での最大収縮応力をCとし、当該Cを12MPa以下の値とすることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル系シュリンクフィルム。
【請求項6】
JIS Z 8781-4:2013に準拠して測定されるCIE1976 L色空間の色度座標におけるbを0.15~0.3の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル系シュリンクフィルム。
【請求項7】
熱収縮前のフィルムのJIS K 7136:2000に準拠して測定されるヘイズ値を8%以下の値とすることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル系シュリンクフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル系シュリンクフィルム(以下、熱収縮性ポリエステル系フィルム、或いは、単に、シュリンクフィルムと称する場合がある。)に関する。
より詳しくは、高湿条件下に、所定時間の条件で放置した後であっても、所定温度における熱収縮率のばらつきが少なく、かつ、耐シワ特性に優れたポリエステル系シュリンクフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シュリンクフィルムは、PETボトル等のラベル用基材フィルムとして幅広く用いられている。特に、ポリエステル系シュリンクフィルムは、強度、透明性等に優れていることから、ラベル用基材フィルムとしてのシェアを伸ばしている状況にある。
ポリエステル系シュリンクフィルムは、このように優れた特性を有するものの、加熱する際、熱応答が急激であるため、不均一に収縮し、シワが発生しやすいという状況が見られた。
すなわち、シュリンクフィルムの放置条件、特に、湿度等に影響され、所定温度における熱収縮率がばらつき、ひいては、シュリンクラベルを熱収縮させる際に、シワが発生しやすいという問題が見られた。
【0003】
そこで、ラベルにおけるシワの発生を防止すべく、幅方向に高い熱収縮率を有すると共に、長手方向は小さい熱収縮率を示し、かつ、長手方向の機械的強度が大きく、ミシン目開封性も良好で、収縮仕上がり性に優れたラベル用途に好適な熱収縮性ポリエステル系フィルムが各種提案されている(例えば、特許文献1参照)。
より具体的には、以下の構成要件(1)~(6)を満足することを特徴とする二軸延伸熱収縮性ポリエステル系フィルムである。
(1)非晶モノマーとして1,4-シクロヘキサンジメタノールをアルコール成分100モル%中、5モル%以上、30モル%以下の範囲で用いる。
(2)98℃の温水にフィルムを10秒間浸漬したときの温湯熱収縮率が、フィルム主収縮方向で60%以上、90%以下である。
(3)98℃の温水にフィルムを10秒間浸漬したときの温湯熱収縮率が、フィルム主収縮方向に直交する方向で-5%以上、5%以下である。
(4)80℃の温水中で主収縮方向に10%収縮させた後の主収縮方向に直交する方向の単位厚み当たりの直角引裂強度が、180N/mm以上、350N/mm以下である。
(5)90℃の熱風で測定したフィルム主収縮方向の最大収縮応力が、2MPa以上、10MPa以下であり、かつ、測定開始から30秒後の収縮応力が最大収縮応力の60%、以上100%以下である。
(6)温度30℃、湿度65%RHで、672時間エージング処理する前後の70℃での主収縮方向の温湯熱収縮率の差が10%以下である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-81378号公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された熱収縮性ポリエステル系フィルムの場合、熱収縮率等の物性のばらつきを少なくするために、所定量の結晶性ポリエステル樹脂を配合してポリエステル系シュリンクフィルムを作成し、吸湿性等を制御することについては、何ら考慮していなかった。
又、かかる熱収縮性ポリエステル系フィルムの場合、30℃以下、65%RH条件で、エージング処理を、672時間行い、その前後における70℃での主収縮方向の温湯熱収縮率の差を10%以下の値に制御しているものの、吸湿性を考慮していないことから、現実的には、熱収縮率の安定的な制御が困難であった。
そのため、特許文献1に開示された熱収縮性ポリエステル系フィルムにおいては、シュリンクラベルとしてPETボトルに装着させて、収縮させた際に、シワが発生しやすいという問題が頻繁に見られた。
【0006】
そこで、本発明の発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意努力した結果、所定量の結晶性ポリエステル樹脂を含むポリエステル系樹脂組成物に由来したポリエステル系シュリンクフィルムが、少なくとも所定の構成(a)~(d)等を有することによって、従来の問題を解決するに至った。
すなわち、本発明は、簡易エージングとして、高湿条件(60%RH)下に、24時間放置した前後の吸湿性を制御し、ひいては、所定条件で熱収縮させる際に、所望の値に、安定的に熱収縮し、かつ、耐シワ特性にも優れたポリエステル系シュリンクフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、結晶性ポリエステル樹脂を、樹脂全体量に対して、30~50重量%の範囲で含み、かつ、1.4-シクロヘキサンジメタノール又はペンチルアルコールを、アルコール成分100モル中、5~30モル%の範囲で用いてなる非結晶性ポリエステル樹脂を含む、ポリエステル系樹脂組成物に由来したポリエステル系シュリンクフィルムであって、主収縮方向をTD方向とし、当該TD方向と直交する方向をMD方向としたときに、下記構成(a)~(d)及び(h)を満足することを特徴とするポリエステル系シュリンクフィルムが提供され、上述した問題点を解決することができる。
(a)20℃、90%RHの高湿条件下に、24時間放置した前後において、TD方向における、70℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率をA1(%)及びA2(%)としたときに、熱収縮率A1を0~19%の範囲内の値とし、熱収縮率A2を0~24%の範囲内の値とする。
(b)熱収縮率A1と熱収縮率A2との差であるA2-A1で表される数値を-4~4%の範囲内の値とする。
(c)TD方向における、80℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率をA3としたときに、当該A3を30%以上の値とする。
(d)MD方向における、90℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率をBとしたときに、当該Bを10%以下の値とする。
(h)20℃、90%RHの高湿条件下に、24時間放置した前後における、JIS K 0113:2005に準拠して測定される水分率を、W1(ppm)及びW2(ppm)としたときに、W2-W1で表される数値を1500~2500ppmの範囲内の値とする。
すなわち、結晶性ポリエステル樹脂を、樹脂全体量に対して、30~50重量%の範囲で含むポリエステル系樹脂組成物に由来したポリエステル系シュリンクフィルムであって、構成(a)~(d)及び(h)を全て満足することによって、30℃以下、90%RH程度の高湿条件下に、24~48時間程度の簡易エージングを施したような場合であっても、熱収縮率等の物性変化が少ない、ポリエステル系シュリンクフィルムとすることができる。
又、このようにW2-W1を所定値以下に制限することによって、所定の高湿条件下における吸湿性を抑制し、ひいては、耐シワ特性を更に向上させることができる。
従って、当該シュリンクフィルムをPETボトル等に適用した際に、各収縮温度において、TD方向やMD方向で、所望の熱収縮率が安定的に得られ、それによって、良好な耐シワ特性を得ることができる。
なお、耐シワ特性については、例えば、実施例1の評価7における評価基準に準じて判断することができる。
【0008】
又、本発明のポリエステル系シュリンクフィルムを構成するにあたり、20℃、90%RHの高湿条件下に、24時間放置した後において、TD方向における、80℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率をA4(%)としたときに、A4-A3で表される数値を3%以下の値とすることが好ましい。
このようにA4-A3で表される数値を、所定範囲内に具体的に制限することによって、A2-A1で表される数値についても、制御しやすくなり、ひいては、耐シワ特性を更に向上させることができる。
なお、A3は、上述した構成(c)に対応する熱収縮率である。
【0009】
又、本発明のポリエステル系シュリンクフィルムを構成するにあたり、80℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率A4を30~70%の範囲内の値とすることが好ましい。
このように熱収縮率A4を所定範囲内の値に具体的に制限することによって、A4-A3で表される数値についても、更に所定範囲内に制御しやすくなる。
【0010】
又、本発明のポリエステル系シュリンクフィルムを構成するにあたり、水分率W1を2000~3500ppmの範囲内の値とし、水分率W2を4000~5500ppmの範囲内の値とすることが好ましい。
このように水分率W1及びW2を所定範囲内の値に具体的に制限することによって、W2-W1で表される数値を、所定範囲内に更に制御しやすくなる。
【0011】
又、本発明のポリエステル系シュリンクフィルムを構成するにあたり、TD方向における、収縮温度85℃での最大収縮応力をCとし、当該Cを12MPa以下の値とすることが好ましい。
このように、最大収縮応力を所定値以下に制御することによって、熱収縮時における過剰な最大収縮応力によって発生するシワを、有効に抑制することができる。
【0012】
又、本発明のポリエステル系シュリンクフィルムを構成するにあたり、熱収縮前のフィルムのJIS K 7136:2000に準拠して測定されるヘイズ値を8%以下の値とすることが好ましい。
このようにヘイズ値を所定値以下に具体的に制限することにより、ポリエステル系シュリンクフィルムの透明性についても、定量性をもって制御しやすくなり、かつ、透明性が良好なことから、汎用性を更に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1(a)~(c)は、それぞれポリエステル系シュリンクフィルムの形態を説明するための図である。
図2図2(a)は、ポリエステル系シュリンクフィルムにおける結晶性ポリエステル樹脂の配合量と、CIE色度座標におけるb*の値と、の関係を説明するための図であり、図2(b)は、ポリエステル系シュリンクフィルムにおける結晶性ポリエステル樹脂の配合量と、エージング処理前後のポリエステル系シュリンクフィルムの所定加熱条件(温水70℃、10秒)における熱収縮率の差(A2-A1)と、の関係を説明するための図である。
図3図3(a)~(b)は、所定高湿条件でのエージング処理前後のポリエステル系シュリンクフィルムの所定加熱条件(温水70℃、10秒)における熱収縮率(A1及びA2)と、耐シワ特性の評価(相対値)と、の関係を説明するための図である。
図4図4は、所定高湿条件でのエージング処理前のポリエステル系シュリンクフィルムの所定加熱条件(温水70℃、10秒)における熱収縮率(A1)と、所定の熱収縮率の差(A2-A1)と、の関係を説明するための図である。
図5図5は、所定高湿条件でのエージング処理後のポリエステル系シュリンクフィルムの所定加熱条件(温水70℃、10秒)における熱収縮率(A2)と、所定の熱収縮率の差(A2-A1)と、の関係を説明するための図である。
図6図6は、所定の熱収縮率の差(A2-A1)と、耐シワ特性の評価(相対値)と、の関係を説明するための図である。
図7図7(a)は、実施例1に相当し、シワが発生していない場合の筒状ラベルの外観状態を示す図(写真)であり、図7(b)~(d)は、図7(a)に示された外観の領域P、Q、Rをそれぞれ拡大させた図である。
図8図8(a)は、比較例1に相当し、シワが発生した場合の筒状ラベルの外観状態を示す図(写真)であり、図8(b)~(d)は、図8(a)に示された外観の領域S、T、Uをそれぞれ拡大させた図である。
図9図9は、エージング処理前後のポリエステル系シュリンクフィルムの水分率の差(W2-W1)と、所定の熱収縮率の差(A2-A1)と、の関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、図1(a)~(c)に例示するように、結晶性ポリエステル樹脂を、樹脂全体量に対して、30~50重量%の範囲で含み、かつ、1.4-シクロヘキサンジメタノール又はペンチルアルコールを、アルコール成分100モル中、5~30モル%の範囲で用いてなる非結晶性ポリエステル樹脂を含む、ポリエステル系樹脂組成物に由来したポリエステル系シュリンクフィルム10であって、主収縮方向をTD方向とし、当該TD方向と直交する方向をMD方向としたときに、下記構成(a)~(d)及び(h)を満足するポリエステル系シュリンクフィルムである。
(a)20℃、90%RHの高湿条件下に、24時間放置した前後において、TD方向における、70℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率をA1(%)及びA2(%)としたときに、熱収縮率A1を0~19%の範囲内の値とし、熱収縮率A2を0~24%の範囲内の値とする。
(b)熱収縮率A1と熱収縮率A2との差であるA2-A1で表される数値を-4~4%の範囲内の値とする。
(c)TD方向における、80℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率をA3としたときに、当該A3を30%以上の値とする。
(d)MD方向における、90℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率をBとしたときに、当該Bを10%以下の値とする。
(h)20℃、90%RHの高湿条件下に、24時間放置した前後における、JIS K 0113:2005に準拠して測定される水分率を、W1(ppm)及びW2(ppm)としたときに、W2-W1で表される数値を1500~2500ppmの範囲内の値とする。
すなわち、本発明によれば、所定量の結晶性ポリエステル樹脂、及び、所定の非結晶性ポリエステル樹脂を含むポリエステル系樹脂組成物に由来したポリエステル系シュリンクフィルムであって、主収縮方向をTD方向とし、当該TD方向と直交する方向をMD方向としたときに、下記構成(a)~(d)及び(h)を満足するポリエステル系シュリンクフィルムである。
以下、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムの構成に分けて、適宜、図面を参照しながら、具体的に各種パラメータ等を説明する。
【0015】
1.ポリエステル樹脂
主成分であるポリエステル樹脂は、基本的に、上述した(a)~(d)の構成を満足しやすいポリエステル樹脂であれば、その種類は問わないが、通常、ジオール及びジカルボン酸からなるポリエステル樹脂、ジオール及びヒドロキシカルボン酸からなるポリエステル樹脂、ジオール、ジカルボン酸、及びヒドロキシカルボン酸からなるポリエステル樹脂、あるいは、これらのポリエステル樹脂の混合物であることが好ましい。
ここで、ポリエステル樹脂の原料成分としてのジオールとしては、少なくとも1,4-シクロヘキサンジメタノール又はペンチルアルコールを含んでいることを特徴としている。
そして、その他のポリエステル樹脂の原料成分としてのジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、1,4-ヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール、芳香族ジオール等の少なくとも一つが挙げられる。
そして、これらの中でも、特に、エチレングリコール、ジエチレングリコール、及び1,4-ヘキサンジメタノールが好ましい。
又、同じくポリエステル樹脂の化合物成分としてのジカルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の脂肪酸ジカルボン酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、あるいは、これらのエステル形成性誘導体等の少なくとも一つが挙げられる。
そして、これらの中でも、特に、テレフタル酸が好ましい。
又、同じくポリエステル樹脂の化合物成分としてのヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、ヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン等の少なくとも一つが挙げられる。
【0016】
又、非結晶性ポリエステル樹脂として、1,4-シクロヘキサンジメタノール又はペンチルアルコールを、アルコール成分100モル中、5~30モル%の範囲で用いていることを特徴としている。
例えば、テレフタル酸を少なくとも80モル%含んでなるジカルボン酸と、エチレングリコール50~80モル%及び、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール及びジエチレングリコールから選ばれた1種以上のジオール20~50モル%からなるジオールであって、1,4-シクロヘキサンジメタノール又はペンチルアルコールを、アルコール成分100モル中、5~30モル%を用いてなるジオールを含む非結晶性ポリエステル樹脂を好適に使用できる。
必要に応じ、フィルムの性質を変化させるために、他のジカルボン酸及びジオール、あるいはヒドロキシカルボン酸を使用してもよい。又、それぞれ単独でも、あるいは、混合物であっても良い。
一方、結晶性ポリエステル樹脂として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート等があるが、それぞれ単独であっても、あるいは混合物であっても良い。
【0017】
又、ポリエステル樹脂が、結晶性ポリエステル樹脂と、非結晶性ポリエステル樹脂と、の混合物である場合、良好かつ適当な耐シワ特性、耐熱性、及び熱収縮率等を得るために、ポリエステル系シュリンクフィルムを構成する樹脂の全体量(100重量%)に対し、結晶性ポリエステル樹脂の配合量を、30~50重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このように、結晶性ポリエステル樹脂の配合量を、所定範囲内の値とすることによって、良好な熱収縮特性を発揮すると共に、高湿条件下であっても、物性としての、所定温度における熱収縮率等の変化が少ないポリエステル系シュリンクフィルムとすることができるためである。
より具体的には、結晶性ポリエステル樹脂の含有量が10重量%未満の値になると、所定の高湿環境下に、比較的短時間放置した場合の吸湿性を抑制することが困難となって、所定の熱収縮率の差であるA2-A1で表される数値を、所定範囲内に制御することができない場合があるためである。
すなわち、結晶性ポリエステル樹脂の含有量が30重量%未満の値になると、所定の高湿環境下に、比較的短時間放置した場合の吸湿性が安定しなくなる場合があるからである。
一方、結晶性ポリエステル樹脂の含有量が50重量%を超えると、ポリエステル系シュリンクフィルムの収縮率が過度に低下する場合があるためである。
従って、樹脂の全体量(100重量%)に対し、結晶性ポリエステル樹脂の配合量を、15~45重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、20~40重量%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
すなわち、樹脂の全体量(100重量%)に対し、結晶性ポリエステル樹脂の配合量を、30~45重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、35~40重量%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0018】
ここで、図2(a)に言及して、ポリエステル系シュリンクフィルムにおける結晶性ポリエステル樹脂の配合量と、JIS Z 8781-4:2013に準拠して測定されるCIE1976 L色空間の色度座標(以下、単に、CIE色度座標と称する場合がある。)におけるbとの関係を説明する。
すなわち、図2(a)の横軸に、例えば、厚さ30μmのポリエステル系シュリンクフィルムにおける結晶性ポリエステル樹脂の配合量(重量%)が採って示してあり、縦軸に、CIE色度座標におけるb(-)が採って示してある。
又、図中において、実施例1をEx.1とし、比較例1をCE.1と記載しているが、以下同様である。
そして、図2(a)中の特性曲線から、かかる結晶性ポリエステル樹脂の配合量と、色度座標におけるbの値との関係において、優れた相関関係(相関係数(R)が、0.98)があることが理解される。
従って、かかる結晶性ポリエステル樹脂の配合量を制限することよって、色度座標におけるbの値についても、所定範囲内に制御しやすくなると言える。
逆に言えば、色度座標におけるbを所定範囲内の値(0.15~0.3)に制限することによって、ポリエステル系シュリンクフィルムにおける結晶性ポリエステル樹脂等の配合量を、間接的ではあるが、より精度良く制御することができる。
【0019】
又、図2(b)に言及して、ポリエステル系シュリンクフィルムにおける結晶性ポリエステル樹脂の配合量と、所定高湿条件でのエージング処理前後のポリエステル系シュリンクフィルムの所定加熱条件(温水70℃、10秒)における熱収縮率の差(A2-A1)と、の関係を説明する。
すなわち、図2(b)の横軸に、結晶性ポリエステル樹脂の配合量(重量%)が採って示してあり、縦軸に、所定の熱収縮率の差であるA2-A1(%)が採って示してある。
そして、図2(b)中の特性曲線から、結晶性ポリエステル樹脂の配合量と、A2-A1で表される数値との関係において、優れた相関関係(相関係数(R)が、0.82)があることが理解される。
従って、結晶性ポリエステル樹脂の配合量を制限することよって、A2-A1で表される数値を、所定範囲内に制御しやすくなると言える。
【0020】
2.構成(a)
構成(a)は、ポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、エージング条件として、20℃、90%RHの高湿条件下に、24時間放置した前後において、それぞれ70℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合のTD方向の熱収縮率をA1(%)及びA2(%)としたときに、熱収縮率A1を0~19%の範囲内の値とし、熱収縮率A2を0~24%の範囲内の値とする旨の必要的構成要件である。
この理由は、所定の高湿条件下に、比較的短時間放置した場合における、吸湿に伴う物性変化を抑制し、ひいては、他の構成(b)等を満足することと協働し、耐シワ特性を向上させるためである。
【0021】
より具体的には、かかるフィルムの熱収縮率A1が、20%を超えた値になると、所定範囲内の値に制限することが困難となり、高湿条件下の比較的短時間放置における吸湿に伴う物性変化を抑制できない場合があるためである。
すなわち、熱収縮率A1が、19%を超えた値になると、後述する所定のA2-A1で表される数値の制御が安定しなくなる場合があるためである。
但し、かかるフィルムの熱収縮率A1が、過度に小さくなると、80~100℃における熱収縮率が不十分となり、PETボトルに対して、そのボトル周囲の形状に追従できなくなり、シワの発生を抑制することができない場合がある。
従って、かかるフィルムの熱収縮率A1を2~19%の範囲内の値とすることがより好ましく、3~18%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0022】
一方、上述したフィルムの熱収縮率A2が、24%を超えた値になると、A1の場合と同様に、A2-A1で表される数値を、所定範囲内に制限することが困難となり、高湿条件下の比較的短時間放置における吸湿に伴う物性変化を抑制できない場合があるためである。
但し、かかるフィルムの熱収縮率A2においても、その値が、過度に小さくなると、80~100℃における熱収縮率が不十分となり、PETボトルに対して、そのボトル周囲の形状に追従できなくなり、シワの発生を抑制することができない場合がある。
従って、かかるフィルムの熱収縮率A2を2~22%の範囲内の値とすることがより好ましく、3~20%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0023】
なお、シュリンクフィルムにおける熱収縮率は、下記式で定義される。
熱収縮率(%)=(L0-L1)/L0×100
0:熱処理前のサンプルの寸法(長手方向又は幅方向)
1:熱処理後のサンプルの寸法(L0と同じ方向)
【0024】
ここで、図3(a)~(b)に言及して、それぞれ熱収縮率A1(%)及びA2(%)、と、耐シワ特性(評価における相対値)と、の関係を説明する。
すなわち、図3(a)の横軸に、熱収縮率A1(%)が採って示してあり、縦軸に、耐シワ特性の評価(相対値)が採って示してある。縦軸の耐シワ特性の評価(相対値)は、評価◎を5点、評価○を3点、評価△を1点、評価×を0点として、数値化したものである。
又、図3(b)の横軸に、熱収縮率A2(%)が採って示してあり、縦軸に、図3(a)と同様に、耐シワ特性の評価(相対値)が採って示してある。
そして、図3(a)~(b)中の各特性曲線は、後述するように、所定量の結晶性ポリエステル樹脂を含む実施例1~3、及び比較例1のポリエステル系シュリンクフィルムにおける耐シワ特性の評価結果に基づくものである。
【0025】
かかる各特性曲線から、熱収縮率A1(%)及びA2(%)と、耐シワ特性と、の関係において、それぞれ所定関係があることが理解される。
より具体的には、図3(a)中の特性曲線から、例えば、熱収縮率A1を、20%以下、すなわち19%以下に制限すれば、耐シワ特性の評価(相対値)は、少なくとも4以上の良好な結果が得られている。
同様に、図3(b)中の特性曲線から、例えば、熱収縮率A2を24%以下に制限すれば、耐シワ特性の評価(相対値)は、少なくとも4以上の良好な結果が得られている。
【0026】
3.構成(b)
構成(b)は、所定の高湿条件下でのエージング処理前後において、所定条件下に測定される熱収縮率A1と、熱収縮率A2との差であるA2-A1で表される数値を-4~4%の範囲内の値とする旨の必要的構成要件である。
この理由は、このようにA2-A1の値を制御することにより、構成(a)等と相俟って、所定の高湿条件下であっても、吸湿性を抑制することができるためである。従って、他の構成(c)及び(d)も満足することで、所定温度における熱収縮率等の変化が少なく、所定条件で安定的かつ再現性良く熱収縮させることができ、かつ、優れた耐シワ特性を発揮することができる。
より具体的には、A2-A1で表される数値が、上述の所定範囲から外れると、所定の高湿条件下において、吸湿性を抑制することが困難となって、80~100℃を熱収縮温度とした場合に、フィルムの熱収縮温度が上昇する過程(例えば、70~80℃)において、主収縮方向の熱収縮率が大きく変化して、耐シワ特性が著しく低下する場合があるためである。
又、A2-A1で表される数値の制御が困難になると、所定温度における熱収縮率等の変化が大きくなり、ひいては、各種PETボトルへ装着する際に、使用する加熱収縮設備における設定条件の大幅な変更が必要となる場合があるためである。
従って、構成(b)として、A2-A1で表される数値を-3~3%の範囲内の値とすることがより好ましく、-2~2%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0027】
ここで、図4に言及して、ポリエステル系シュリンクフィルムにおける、所定高湿条件(20℃、90%RH、24時間放置)のエージング処理前の所定加熱条件(温水70℃、10秒)における熱収縮率(A1)と、かかるエージング処理前後のポリエステル系シュリンクフィルムの所定加熱条件(温水70℃、10秒)における熱収縮率の差(A2-A1)との関係を説明する。
すなわち、図4の横軸に、A1(%)が採って示してあり、縦軸に、A2-A1(%)の値が採って示してある。
そして、図4中の特性曲線は、後述するように、所定量の結晶性ポリエステル樹脂を含む実施例1~3、及び比較例1のポリエステル系シュリンクフィルムにおけるA1及びA2-A1で表される数値の評価結果に基づくものである。
かかる特性曲線から、A1と、A2-A1と、の関係において、優れた相関関係(相関係数(R)が、0.84)があることが理解される。
よって、A1を所定範囲内の値に制限することよって、A2-A1についても、所定範囲内に、精度良く制御できると言える。
【0028】
次いで、図5に言及して、エージング処理後のポリエステル系シュリンクフィルムの所定加熱条件(温水70℃、10秒)における熱収縮率(A2)と、上述した熱収縮率の差(A2-A1)と、の関係を説明する。
すなわち、横軸に、A2(%)が採って示してあり、縦軸に、A2-A1(%)が採って示してある。
そして、図5中の特性曲線は、後述するように、所定量の結晶性ポリエステル樹脂を含む実施例1~3、及び比較例1のポリエステル系シュリンクフィルムにおけるA2及びA2-A1で表される数値の評価結果に基づくものである。
かかる特性曲線から、A2とA2-A1との関係において、優れた相関関係(相関係数(R)が、0.92)があることが理解される。
よって、A2を所定範囲内の値に制限することよって、A2-A1についても、所定範囲内に、精度良く制御できると言える。
【0029】
次いで、図6に言及して、所定の熱収縮率の差(A2-A1)と、耐シワ特性の評価(相対値)と、の関係を説明する。
すなわち、図6の横軸に、A2-A1(%)が採って示してあり、縦軸に、耐シワ特性の評価(相対値)が採って示してある。
そして、耐シワ特性の評価(相対値)は、実施例1等で得られた評価◎を5点、評価○を3点、評価△を1点、評価×を0点として、それぞれ数値化したものである。
かかる図6中の特性曲線から、A2-A1で表される数値が、-4~4%の範囲内の値であれば、耐シワ特性の評価(相対値)は、3点以上となり、良好な耐シワ特性が得られることが理解される。
よって、A2-A1を-4~4%の範囲内の値に制限することよって、ポリエステル系シュリンクフィルムの耐シワ特性についても、精度良く制御できると言える。
【0030】
次いで、図7及び図8に言及し、筒状ラベルとしてのポリエステル系シュリンクフィルムをPETボトルに装着させた場合の、耐シワ特性を具体的に説明する。
すなわち、図7は、実施例1に相当し、シワが発生しない場合の筒状ラベルの外観写真であって、図7(a)は当該筒状ラベルに覆われたペットボトルの胴部全体を示している。そして、図7(b)~(d)は、図7(a)に示される胴部の上部(領域P)、中部(領域Q)、下部(領域R)をそれぞれ拡大させた図であり、上部~下部のどの部位においても、シワが全く発生していないことが理解される。
一方、図8は、比較例1に相当し、シワが発生した場合の筒状ラベルの外観写真であって、図8(a)は当該筒状ラベルに覆われたペットボトルの胴部全体を示している。そして、図8(b)~(d)は、図8(a)に示される胴部の上部(領域S)、中部(領域T)、下部(領域U)をそれぞれ拡大させた図であり、上部~下部のどの部位においても、シワが発生していることが理解される。
又、本発明の少なくとも構成(a)~(d)を満足しない場合、筒状ラベルとしてのポリエステル系シュリンクフィルムをPETボトルに装着させた場合のペットボトルにおいて、ペットボトル自体の変形も発生してしまう場合があることが別途明らかになっている。
【0031】
4.構成(c)
構成(c)は、TD方向における80℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率をA3としたときに、当該A3を30%以上の値とする旨の必要的構成要件である。
すなわち、かかる熱収縮率A3を所定値以上に具体的に制限することによって、エージング処理前後における熱収縮率(A1、A2)を、それぞれ所定範囲内の値に、更に容易に制御しやすくなる。
より具体的には、かかる熱収縮率A3が30%未満になると、高湿条件下のエージング処理前後で、それぞれ70℃、10秒で測定される熱収縮率(A1、A2)を所定範囲内の値に制御できなくなり、シワ発生を抑制できない場合がある。又、80~100℃における熱収縮率が不十分となり、PETボトルに対して、そのボトル周囲の形状に追従できなくなり、シワの発生を抑制できない場合がある。
従って、構成(c)として、TD方向における80℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率A3の下限を、40%以上の値とすることがより好ましく、45%以上の値とすることが更に好ましい。
但し、かかる熱収縮率A3が、過度に大きいと、MD方向の熱収縮とのバランスが悪化し、フィルムの熱収縮時に、良好な耐シワ特性を得ることができない場合がある。
従って、構成(c)として、熱収縮率A3の上限を、75%以下の値とすることが好ましく、65%以下の値とすることがより好ましく、60%以下の値とすることが更に好ましい。
【0032】
5.構成(d)
構成(d)は、MD方向における、90℃の温水中で、10秒の条件でシュリンクフィルムを熱収縮させた場合の熱収縮率をBとしたときに、当該Bを10%以下の値とする旨の必要的構成要件である。
すなわち、かかる熱収縮率Bを所定値以下に具体的に制限することによって、シュリンクフィルムの熱収縮時における、耐シワ特性を更に良好なものとすることができる。
より具体的には、かかる熱収縮率Bが10%を超えると、A1、A2等への影響を少なくすることができず、フィルムの熱収縮時に、良好な耐シワ特性を得ることができない場合がある。
従って、構成(d)として、MD方向における、90℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率Bの上限を、8%以下の値とすることがより好ましく、7%以上の値とすることが更に好ましい。
但し、かかる熱収縮率Bが、過度に小さいと、80~100℃において、TD方向の熱収縮とのバランスが悪化し、フィルムの熱収縮時に、良好な耐シワ特性を得ることができない場合がある。
従って、構成(d)として、熱収縮率Bの下限を、1%以上の値とすることが好ましく、2%以上の値とすることがより好ましく、3%以上の値とすることが更に好ましい。
【0033】
6.構成(h)
構成(h)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、20℃、90%RHの高湿条件下に、24時間放置した前後における、JIS K 0113:2005に準拠して測定される水分率を、W1(ppm)及びW2(ppm)としたときに、W2-W1で表される数値を1500~2500ppmの範囲内の値とする旨の必要的構成要件である。
すなわち、このようにW2-W1を所定の範囲内の値に制限することによって、所定の高湿条件下における吸湿性を精度良く抑制し、ひいては、耐シワ特性を更に向上させることができる。
より具体的には、かかるW2ーW1の値が、2500ppmを超えた値になると、シュリンクフィルムを、比較的短時間放置した際でも、シュリンクフィルム内の水分率が上昇し、ポリエステル樹脂が加水分解しやすくなる場合がある。その結果、平均分子量や極限粘度(IV)が低下して、熱収縮率等の物性が変化し、優れた耐シワ特性を発揮できなくなる場合がある。
従って、構成(h)として、W2-W1で表される数値の上限を、2400ppm以下の値とすることがより好ましく、2300ppm以下の値とすることが更に好ましい。
但し、かかるW2-W1の値が、過度に小さくなると、使用できるポリエステル樹脂の種類が過度に限定されたり、W2-W1の値を安定的に制御したりすることが困難になって、生産上の歩留まりが著しく低下する場合がある。又、A2-A1で表される数値を所定範囲内の値に制御するのが困難となり、ひいては、優れた耐シワ特性を発揮できなくなる場合がある。
従って、構成(h)として、W2-W1で表される数値の下限を、1500ppm以上の値とすることが好ましく、1600ppm以上の値とすることがより好ましく、1700ppm以上の値とすることが更に好ましい。
【0034】
ここで、図9に言及して、エージング処理前後のポリエステル系シュリンクフィルムにおける所定の水分率の差(W2-W1)と、所定の熱収縮率の差(A2-A1)との関係を説明する。
すなわち、図9の横軸に、所定の水分率の差(W2-W1)(ppm)の値が採って示してあり、縦軸に、所定の熱収縮率の差(A2-A1)(%)が採って示してある。
そして、図9中の特性曲線から、W2-W1で表される数値が、2500ppm以下であれば、A2-A1の値を4%以下に制御できることが理解される。
よって、後述する実施例1等で測定されるように、エージング処理前後のポリエステル系シュリンクフィルムにおける所定の水分率の差(W2-W1)を制限することよって、所定の熱収縮率の差(A2-A1)についても制御しやすくなると言える。
【0035】
7.任意的構成要件
(1)構成(e)
構成(e)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムにつき、熱収縮前のフィルムの厚さ(平均厚さ)に関する構成要件であって、通常、10~100μmの範囲内の値にする旨の任意的構成要件である。
すなわち、このように熱収縮前のフィルムの厚さを所定範囲内の値に具体的に制限することにより、熱収縮率A1、A2、A3、B、A1-A2で表される数値、最大収縮応力C等を、それぞれ所定範囲内の値に、更に容易に制御しやすくなる。
従って、所定因子の影響を低下させて、所定温度における熱収縮率のばらつきが少なく、かつ、良好な耐シワ特性を得ることができる。
より具体的には、熱収縮前のフィルムの厚さが、10μm未満になったり、あるいは100μmを超えたりすると、熱収縮時のポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、急激な熱応答による不均一な収縮を抑制できず、シワの発生を抑制することができなくなってしまう場合があるためである。
従って、構成(e)として、熱収縮前のフィルムの厚さを、15~60μmの範囲内の値とすることがより好ましく、20~40μmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0036】
(2)構成(f)
構成(f)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、20℃、90%RHの高湿条件下に、24時間放置した後において、TD方向における、80℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率をA4(%)としたときに、A4-A3で表される数値を3%以下の値にする旨の任意的構成要件である。
すなわち、かかるA4-A3で表される数値を、所定値以下に制限することによって、A2-A1で表される数値についても、制御しやすくなり、ひいては、耐シワ特性を更に向上できるためである。
従って、構成(f)として、A4-A3で表される数値の上限を、2%以下の値とすることがより好ましく、1%以下の値とすることが更に好ましい。
但し、かかるA4-A3で表される数値が過度に小さくなっても、A2-A1で表される数値を制御するのが困難となり、ひいては、良好な耐シワ特性を得ることができない場合がある。
従って、構成(f)として、A4-A3で表される数値の下限を、-1%以上の値とすることが好ましく、-0.5%以上の値とすることがより好ましく、0%以上の値とすることが更に好ましい。
【0037】
(3)構成(g)
構成(g)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、熱収縮率A4を30~70%の範囲内の値とする旨の任意的構成要件である。
すなわち、熱収縮率A4を、前述の熱収縮率A3と共に、それぞれ所定範囲内に制限することによって、A4-A3で表される数値を、所定範囲内の値に更に容易に制御し易くなる。又、A4-A3で表される数値を制御することによって、70℃や、90℃における熱収縮率を所定範囲内の値に、更に容易に制御しやすくなる。
より具体的には、かかる熱収縮率A4が70%を超えた値になると、A4-A3で表される数値を、所定範囲内の値に制御するのが困難となる場合がある。
一方、かかる熱収縮率A4が30%未満の値になると、A4-A3で表される数値を、所定範囲内の値に制御するのが困難となったり、70℃や、90℃における熱収縮率を所定範囲内の値に制御するのが困難となったりする場合がある。
従って、構成(g)として、A4で表される数値を、40~65%の範囲内の値とすることがより好ましく、45~60%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0038】
(4)構成(i)
構成(i)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、水分率W1を2000~3500ppmの範囲内の値とし、水分率W2を4000~5500ppmの範囲内の値とする旨の任意的構成要件である。
すなわち、水分率W1及びW2が、上述した所定範囲内の値から外れると、W2-W1で表される数値を、所定範囲内に制御することが困難な場合がある。
従って、構成(i)として、W1を2800~3200ppmの範囲内の値とすることがより好ましく、2900~3150ppmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
そして、W2を4500~5400ppmの範囲内の値とすることがより好ましく、4800~5300ppmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0039】
(5)構成(j)
構成(j)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、TD方向における、収縮温度85℃での最大収縮応力をCとし、当該Cを12MPa以下の値とする旨の任意的構成要件である。
すなわち、最大収縮応力を所定値以下に制御することによって、熱収縮時における過剰な最大収縮応力によって発生するシワを、有効に抑制することができる。
より具体的には、かかる最大収縮応力Cが、12MPaを超えた値になると、熱収縮時における最大収縮応力が過剰となり、ペットボトル等に装着させた場合に、ペットボトルの形状が変形してしまったり、その変形に伴うシワが発生したりする場合がある。
従って、構成(j)として、最大収縮応力Cの上限を10MPa以下の値とすることがより好ましく、8MPa以下の値とすることが更に好ましい。
但し、かかる最大収縮応力Cの値が、過度に小さくなると、熱収縮時における最大収縮応力が不足して、ペットボトルとフィルムとの間に隙間ができることで、シワが発生する場合がある。
従って、構成(j)として、最大収縮応力Cの下限を2MPa以上の値とすることが好ましく、3MPa以上の値とすることがより好ましく、4MPa以上の値とすることが更に好ましい。
【0040】
(6)構成(k)
構成(k)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、JIS Z 8781-4:2013に準拠して測定されるCIE1976 L色空間の色度座標におけるbを0.15~0.3の範囲内の値とする旨の任意的構成要件である。
すなわち、このようにCIE色度座標におけるbを所定範囲内の値に制限することによって、シュリンクフィルムにおける結晶性ポリエステル樹脂等の配合量を、より精度良く制御することができる。従って、シュリンクフィルムにおける、少なくとも構成(a)~(d)に関する数値を所定範囲に制御しやすくなって、ひいては、高湿条件下に、比較的短時間放置した場合の、耐シワ特性を更に向上させることができる。
【0041】
より具体的には、CIE色度座標におけるbが0.15未満の値になると、シュリンクフィルムにおける結晶性ポリエステル樹脂等の配合量が過度に少なくなり、所定の高湿環境下に、比較的短時間放置した場合の吸湿性を抑制することが困難となる。従って、A2-A1で表される数値を所定範囲内に制御することが困難となる場合がある。
一方、CIE色度座標におけるbが0.30を超えた値になると、シュリンクフィルムにおけるける結晶性ポリエステル樹脂等の配合量が過度に増加し、収縮温度付近における熱収縮率や最大収縮応力等を所望範囲に制御することが困難となる場合がある。
従って、CIE色度座標におけるbを0.17~0.28の範囲内の値とすることがより好ましく、0.19~0.26の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0042】
(7)構成(m)
又、構成(m)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムにつき、熱収縮前のフィルムのJIS K 7136:2000に準拠して測定されるヘイズ値を8%以下の値とする旨の任意的構成要件である。
すなわち、このようにヘイズ値を所定範囲内の値に具体的に制限することにより、ポリエステル系シュリンクフィルムの透明性についても、定量性をもって制御しやすくなり、かつ、透明性が良好なことから、汎用性を更に高めることができる。
より具体的には、熱収縮前のフィルムのヘイズ値が、8%を超えた値になると、透明性が低下し、PETボトルに対する装飾用途等への適用が困難となる場合がある。
一方、熱収縮前のフィルムのヘイズ値が、過度に小さくなると、安定的に制御することが困難になって、生産上の歩留まりが著しく低下する場合がある。
従って、構成(m)として、熱収縮前のフィルムのヘイズ値を0.1~6%の範囲内の値とすることがより好ましく、0.5~5%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0043】
(8)その他
第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルム中、又は、その片面、あるいは両面に、各種添加剤を配合したり、それらを付着させたりすることが好ましい。
より具体的には、加水分解防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、着色剤、有機フィラー、無機フィラー、有機繊維、無機繊維等の少なくとも一つを、ポリエステル系シュリンクフィルムの全体量に対して、通常、0.01~10重量%の範囲で配合することが好ましく、0.1~1重量%の範囲で配合等することがより好ましい。
【0044】
又、図1(b)に示すように、これらの各種添加剤の少なくとも一つを含む他の樹脂層10a、10bを、ポリエステル系シュリンクフィルム10の片面、又は両面に、積層することも好ましい。
その場合、ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さを100%としたときに、追加で積層する他の樹脂層の単層厚さ又は合計厚さを、通常、0.1~10%の範囲内の値とすることが好ましい。
【0045】
そして、他の樹脂層を構成する主成分としての樹脂は、ポリエステル系シュリンクフィルムと同様のポリエステル樹脂であっても良く、あるいは、それとは異なるアクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂等の少なくとも一つであることが好ましい。
【0046】
更に、ポリエステル系シュリンクフィルムを多層構造にして、加水分解防止効果や機械的保護を更に図ったり、あるいは、図1(c)に示すように、ポリエステル系シュリンクフィルムの収縮率が、面内で均一になったりするように、ポリエステル系シュリンクフィルム10の表面に、収縮率調整層10cを設けることも好ましい。
かかる収縮率調整層は、ポリエステル系シュリンクフィルムの収縮特性に応じて、接着剤、塗布方式、あるいは加熱処理等によって、積層することができる。
【0047】
より具体的には、収縮率調整層の厚さは、0.1~3μmの範囲であって、所定温度におけるポリエステル系シュリンクフィルムの収縮率が過度に大きい場合には、それを抑制するタイプの収縮率調整層を積層することが好ましい。
又、所定温度におけるポリエステル系シュリンクフィルムの収縮率が過度に小さい場合には、それを拡大するタイプの収縮率調整層を積層することが好ましい。
よって、ポリエステル系シュリンクフィルムとして、収縮率が異なる各種シュリンクフィルムを作成することなく、収縮率調整層によって、所望の収縮率を得ようとするものである。
【0048】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムの製造方法に関する実施形態である。
【0049】
1.原材料の準備及び混合工程
まずは、原材料として、結晶性ポリエステル樹脂、非結晶性ポリエステル樹脂、ゴム系樹脂、帯電防止剤、加水分解防止剤等の、主剤や添加剤を準備することが好ましい。
次いで、攪拌容器内に、秤量しながら、準備した結晶性ポリエステル樹脂や非結晶性ポリエステル樹脂等を投入し、攪拌装置を用いて、均一になるまで、混合攪拌することが好ましい。
【0050】
2.原反シートの作成工程
次いで、均一に混合した原材料を、絶乾状態に乾燥することが好ましい。
次いで、典型的には、押し出し成形を行い、所定厚さの原反シートを作成することが好ましい。
より具体的には、例えば、押出温度245℃の条件で、L/D24、押出スクリュー径50mmの押出機(田辺プラスチック機械株式会社製)により、押し出し成形を行い、所定厚さ(通常、30~1000μm)の原反シートを得ることができる。
【0051】
3.ポリエステル系シュリンクフィルムの作成
次いで、得られた原反シートにつき、シュリンクフィルム製造装置を用い、ロール上やロール間を移動させながら、加熱押圧して、ポリエステル系シュリンクフィルムを作成する。
すなわち、所定の予備加熱温度、延伸温度、熱固定温度、及び後述の延伸倍率で、フィルム幅を基本的に拡大させながら、加熱押圧しながら、所定方向に延伸することにより、ポリエステル系シュリンクフィルムを構成するポリエステル分子を所定形状に結晶化させることが好ましい。
そして、その状態で固化させることによって、装飾やラベル等として用いられる熱収縮性のポリエステル系シュリンクフィルムを作成することができる。
【0052】
(1)MD方向の延伸倍率
又、熱収縮前のポリエステル系シュリンクフィルムのMD方向における延伸倍率(平均MD方向延伸倍率、単に、MD方向延伸倍率と称する場合がある。)を100~200%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このようにMD方向延伸倍率を所定範囲内の値に具体的に制限し、かつ、熱収縮率A1、A2、B、A2-A1で表される数値、水分率W1、W2、W2-W1で表される数値、及び最大収縮応力C等を、それぞれ所定範囲内の値に具体的に制限することで、高湿条件下に、所定時間の条件で放置した後であっても、所定温度における熱収縮率のばらつきが少なく、かつ、良好な耐シワ特性を有するポリエステル系シュリンクフィルムとすることができるためである。
【0053】
より具体的には、MD方向延伸倍率が、100%未満の値になると、製造上の歩留まりが著しく低下する場合があるためである。
一方、MD方向延伸倍率が200%を超えると、TD方向における収縮率に影響し、その収縮率の調整自体が困難となる場合があるためである。
従って、MD方向延伸倍率を110~180%の範囲内の値とすることがより好ましく、120~160%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0054】
(2)TD方向の延伸倍率
又、熱収縮前のポリエステル系シュリンクフィルムのTD方向における延伸倍率(平均TD方向延伸倍率、単に、TD方向延伸倍率と称する場合がある。)を300~600%の範囲内の値とすることを好適態様とする。
この理由は、上述のMD方向延伸倍率のみならず、TD方向延伸倍率も所定範囲内の値に具体的に制限し、熱収縮率A1、A2、B、A2-A1で表される数値、水分率W1、W2、W2-W1で表される数値、及び最大収縮応力C等をそれぞれ所定範囲内の値に具体的に制限することで、高湿条件下に、所定時間の条件で放置した後であっても、所定温度における熱収縮率のばらつきをより一層少なくし、更に良好な耐シワ特性を有するポリエステル系シュリンクフィルムとすることができるためである。
【0055】
より具体的には、TD方向延伸倍率が、300%未満の値になると、TD方向における収縮率が著しく低下し、使用可能なポリエステル系シュリンクフィルムの用途が過度に制限される場合があるためである。
一方、TD方向延伸倍率が、600%を超えた値になると、熱収縮率が著しく大きくなって、使用可能なポリエステル系シュリンクフィルムの用途が過度に制限されたり、あるいは、その延伸倍率自体を一定に制御することが困難となったりする場合があるためである。
従って、TD方向延伸倍率を350~550%の範囲内の値とすることがより好ましく、400~500%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0056】
4.ポリエステル系シュリンクフィルムの検査工程
作成したポリエステル系シュリンクフィルムにつき、連続的又は間断的に、下記特性等を測定し、所定の検査工程を設けることが好ましい。
すなわち、所定の検査工程によって、下記特性等を測定し、所定範囲内の値に入ることを確認することによって、より均一な収縮特性等を有するポリエステル系シュリンクフィルムとすることができる。
1)ポリエステル系シュリンクフィルムの外観についての目視検査
2)厚さのばらつき測定
3)引張弾性率測定
4)引裂強度測定
5)SS曲線による粘弾性特性測定
【0057】
そして、第2の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムの製造において、下記構成(a)~(d)を測定し、所定範囲内の値であることを確認するのが肝要である。
(a)20℃、90%RHの高湿条件下に、24時間放置した前後において、TD方向における、70℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率をA1(%)及びA2(%)としたときに、熱収縮率A1を0~19%の範囲内の値とし、熱収縮率A2を0~24%の範囲内の値とする。
(b)熱収縮率A1と熱収縮率A2との差であるA2-A1で表される数値を-4~4%の範囲内の値とする。
(c)TD方向における80℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率をA3としたときに、当該A3を30%以上の値とする。
(d)MD方向における、90℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率をBとしたときに、当該Bを10%以下の値とする。
【0058】
[第3の実施形態]
第3の実施形態は、ポリエステル系シュリンクフィルムの使用方法に関する実施形態である。
従って、すなわち、公知のシュリンクフィルムの使用方法を、いずれも好適に適用することができる。
例えば、ポリエステル系シュリンクフィルムの使用方法を実施するに際して、まずは、ポリエステル系シュリンクフィルムを、適当な長さや幅に切断すると共に、長尺筒状物を形成する。
次いで、当該長尺筒状物を、自動ラベル装着装置(シュリンクラベラー)に供給し、更に必要な長さに切断する。
次いで、内容物を充填したPETボトル等に外嵌する。
【0059】
次いで、PETボトル等に外嵌したポリエステル系シュリンクフィルムの加熱処理として、所定温度の熱風トンネルやスチームトンネルの内部を通過させる。
そして、これらのトンネルに備えてなる赤外線等の輻射熱や、90℃程度の加熱蒸気を周囲から吹き付けることにより、ポリエステル系シュリンクフィルムを均一に加熱して熱収縮させる。
よって、PETボトル等の外表面に密着させて、ラベル付き容器を迅速に得ることができる。
【0060】
ここで、本発明のポリエステル系シュリンクフィルムによれば、第1の実施形態で詳述したように、結晶性ポリエステル樹脂を、樹脂全体量に対して、30~50重量%の範囲で含み、かつ、1.4-シクロヘキサンジメタノール又はペンチルアルコールを、アルコール成分100モル中、5~30モル%の範囲で用いてなる非結晶性ポリエステル樹脂を含む、ポリエステル系樹脂組成物に由来したポリエステル系シュリンクフィルムであって、少なくとも構成(a)~(d)及び(h)を満足することを特徴とする。
そうすることで、高湿条件下に、比較的短時間放置したような場合であっても、吸湿に伴う物性変化を防止し、各熱処理温度で、再現性良く、所定の熱収縮率を得ることができる。
従って、熱収縮率等の値が多少ばらついた場合であっても、所定影響因子の要因を低下させて、熱収縮時のポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、急激な熱応答による不均一な収縮を抑制することができ、結果として微細なシワの発生についても抑制することができる。
【0061】
従って、図7(a)~(d)に示すように、当該シュリンクフィルムから作られたラベルを、ボトルの胴部に被せて熱収縮させても、ボトル周囲の形状に追従して装着させることができ、更には、微細なシワの発生をも抑制することができる。
一方、少なくとも構成(a)~(d)を満足しない場合、図8(a)~(d)に示すように、ボトル胴部の上部から下部において、シュリンクフィルムの不均一な収縮が発生し、シワの発生が顕著に観察されることになる。
【実施例0062】
以下、本発明を実施例に基づき、詳細に説明する。但し、特に理由なく、本発明の権利範囲が、実施例等の記載によって制限されることはない。
なお、実施例等において用いたポリエステル樹脂等は、以下の通りである。
【0063】
(PETG1)
ジカルボン酸:テレフタル酸100モル%、ジオール:エチレングリコール70モル%、ネオペンチルグリコール28モル%、ジエチレングリコール2モル%からなる非結晶性ポリエステル
(PETG2)
ジカルボン酸:テレフタル酸100モル%、ジオール:エチレングリコール68モル%、1,4-シクロヘキサンジメタノール22モル%、ジエチレングリコール10モル%からなる非結晶性ポリエステル
(PETG3)
ジカルボン酸:テレフタル酸100モル%、ジオール:エチレングリコール66モル%、1,4-シクロヘキサンジメタノール22モル%、ジエチレングリコール12モル%からなる非結晶性ポリエステル
【0064】
(APET)
ジカルボン酸:テレフタル酸100モル%、ジオール:エチレングリコール100モル%からなる結晶性ポリエステル
(PCR)
ジカルボン酸:テレフタル酸98.6モル%、イソフタル酸1.4%、ジオール:エチレングリコール97.3モル%、ジエチレングリコール2.7モル%からなる、再生ポリエステル樹脂(PCR)である結晶性ポリエステル樹脂
(PBT)
ジカルボン酸:テレフタル酸100モル%、ジオール:1,4-ブタンジオール100モル%からなる結晶性ポリエステル
【0065】
(添加剤(アンチブロッキング剤))
マトリクス樹脂:PET、シリカ含有量:5質量%、シリカの平均粒径:2.7μmからなるシリカマスターバッチ
【0066】
[実施例1]
1.ポリエステル系シュリンクフィルムの作成
攪拌容器内に、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG1)を65重量部と、結晶性ポリエステル樹脂(A-PET)を25重量部と、別な結晶性ポリエステル樹脂(PBT)を10重量部と、所定の添加剤(アンチブロッキング剤)を1重量部と、を収容した。
次いで、これらの原料を絶乾状態にしたのち、押出温度245℃の条件で、L/D24、押出スクリュー径50mmの押出機(田辺プラスチック機械株式会社製)により、押し出し成形を行い、厚さ150μmの原反シートを得た。
次いで、シュリンクフィルム製造装置を用い、原反シートから、予備加熱温度87℃、延伸温度88℃、熱固定温度85℃、延伸倍率(MD方向:120%、TD方向:450%)で、厚さ30μmのポリエステル系シュリンクフィルムを作成した。
【0067】
2.ポリエステル系シュリンクフィルムの評価
(1)評価1:厚さのばらつき
得られたポリエステル系シュリンクフィルムの厚さ(所望値である30μmを基準値として)を、マイクロメータを用いて測定し、以下の基準に準じて評価した。
◎:厚さのばらつきが、基準値±0.1μmの範囲内の値である。
〇:厚さのばらつきが、基準値±0.5μmの範囲内の値である。
△:厚さのばらつきが、基準値±1.0μmの範囲内の値である。
×:厚さのばらつきが、基準値±3.0μmの範囲内の値である。
【0068】
(2)評価2:熱収縮率(A1及びA2)
得られたポリエステル系シュリンクフィルムを、20℃、90%RHの高湿条件下に、24時間放置した前後において、それぞれ下式(1)に準じて、恒温水槽を用いて、70℃の温水中で、10秒の条件で熱収縮させた場合の、TD方向における熱収縮率を、A1(%)及びA2(%)として測定した。
又、得られた熱収縮率A1及びA2から、A2-A1を算出し、各評価に使用した。
熱収縮率=(熱収縮前のフィルムの長さ-熱収縮後のフィルムの長さ)/熱収縮前のフィルムの長さ×100 (1)
【0069】
(2)-1 評価2-1 熱収縮率(A1)
測定された熱収縮率(A1)につき、以下の基準に準じて評価した。
◎:熱収縮率(A1)が、19%以下の値である。
〇:熱収縮率(A1)が、20%以下の値である。
△:熱収縮率(A1)が、25%以下の値である。
×:熱収縮率(A1)が、25%を超える値である。
【0070】
(2)-2 評価2-2 熱収縮率(A2)
測定された熱収縮率(A2)につき、以下の基準に準じて評価した。
◎:熱収縮率(A2)が、22%以下の値である。
〇:熱収縮率(A2)が、24%以下の値である。
△:熱収縮率(A2)が、30%以下の値である。
×:熱収縮率(A2)が、30%を超える値である。
【0071】
(2)-3 評価2-3 熱収縮率の差(A2-A1)
算出されたA2-A1につき、以下の基準に準じて評価した。
◎:熱収縮率の差(A2-A1)が、-3~3%の範囲内の値である。
〇:熱収縮率の差(A2-A1)が、上記範囲外であって、かつ、-4~4%の範囲内の値である。
△:熱収縮率の差(A2-A1)が、上記範囲外であって、かつ、-8~8%の範囲内の値である。
×:熱収縮率の差(A2-A1)が、-8%未満又は8%を超える値である。
【0072】
(3)評価3:熱収縮率(A3及びA4)
得られたポリエステル系シュリンクフィルムを20℃、90%RHの高湿条件下に、24時間放置した前後において、それぞれ上式(1)に準じて、恒温水槽を用いて、80℃の温水中で、10秒の条件で熱収縮させた場合の、TD方向における熱収縮率をA3(%)及びA4(%)として、測定した。
又、得られた熱収縮率A3及びA4から、A4-A3を算出し、各評価に使用した。
【0073】
(3)-1 評価3-1:熱収縮率(A3)
測定された熱収縮率(A3)につき、以下の基準に準じて評価した。
◎:熱収縮率(A3)が、40~65%の範囲内の値である。
〇:熱収縮率(A3)が、上記範囲外であって、かつ、30~70%の範囲内の値である。
△:熱収縮率(A3)が、上記範囲外であって、かつ、25~75%の範囲内の値である。
×:熱収縮率(A3)が、25%未満又は75%を超える値である。
【0074】
(3)-2 評価3-2:熱収縮率(A4)
測定された熱収縮率(A4)につき、以下の基準に準じて評価した。
◎:熱収縮率(A4)が、40~65%の値である。
〇:熱収縮率(A4)が、上記範囲外であって、かつ、30~70%の範囲内の値である。
△:熱収縮率(A4)が、上記範囲外であって、かつ、25~75%の範囲内の値である。
×:熱収縮率(A4)が、25%未満又は75%を超える値である。
【0075】
(3)-3 評価3-3:熱収縮率の差(A4-A3)
算出されたA4-A3につき、以下の基準に準じて評価した。
◎:熱収縮率の差(A4-A3)が、2%以下の値である。
〇:熱収縮率の差(A4-A3)が、3%以下の値である。
△:熱収縮率の差(A4-A3)が、5%以下の値である。
×:熱収縮率の差(A4-A3)が、5%を超える値である。
【0076】
(4)評価4:熱収縮率(B)
得られたポリエステル系シュリンクフィルム(MD方向)を、恒温水槽を用いて、90℃の温水に、10秒間浸漬し、熱収縮させた。
次いで、所定温度(90℃温水)で加熱処理前後の寸法変化から、上式(1)に準じて、熱収縮率(B)を測定し、以下の基準に準じて評価した。
◎:熱収縮率(B)が、8%以下の値である。
〇:熱収縮率(B)が、10%以下の値である。
△:熱収縮率(B)が、12%以下の値である。
×:熱収縮率(B)が、12%を超える値である。
【0077】
(5)評価5:水分率(W1及びW2)
得られたポリエステル系シュリンクフィルムを、20℃、90%RHの高湿条件下に、24時間放置した前後において、JIS K 0113:2005に準拠して測定される水分率を、W1(ppm)及びW2(ppm)として、カールフィッシャー水分計(京都電子工業(株)製、製品名「MKC-700」)を用いて、カールフィッシャー電量滴定法で水分率(水分含有率)を測定した。
又、得られた水分率W1及びW2から、W2-W1を算出し、各評価に使用した。
【0078】
(5)-1 評価5-1:水分率(W1)
測定された水分率(W1)につき、以下の基準に準じて評価した。
◎:水分率(W1)が、2800~3200ppmの範囲内の値である。
〇:水分率(W1)が、上記範囲外であって、かつ、2000~3500ppmの範囲内の値である。
△:水分率(W1)が、上記範囲外であって、かつ、1500~4000ppmの範囲内の値である。
×:水分率(W1)が、1500ppm未満、又は4000ppmを超える値である。
【0079】
(5)-2 評価5-2:水分率(W2)
測定された水分率(W2)につき、以下の基準に準じて評価した。
◎:水分率(W2)が、4500~5400ppmの範囲内の値である。
〇:水分率(W2)が、上記範囲外であって、かつ、4000~5500ppmの範囲内の値である。
△:水分率(W2)が、上記範囲外であって、かつ、3000~6000ppmの範囲内の値である。
×:水分率(W2)が、3000ppm未満、又は6000ppmを超える値である。
【0080】
(5)-3 評価5-3:水分率の差(W2-W1)
算出された水分率の差W2-W1につき、以下の基準に準じて評価した。
◎:水分率の差(W2-W1)が、2400ppm以下の値である。
〇:水分率の差(W2-W1)が、2500ppm以下の値である。
△:水分率の差(W2-W1)が、3000ppm以下の値である。
×:水分率の差(W2-W1)が、3000ppmを超える値である。
【0081】
(6)評価6:最大収縮応力(C)
得られたポリエステル系シュリンクフィルムをMD方向に幅25.4mm、TD方向に長さ75mmとし、短冊状に切り出したものを試験片とした。
次いで、加熱炉を備えた強伸度測定機器を用いて、試験片の収縮応力を測定した。
より具体的には、加熱炉を予め85℃に加熱しておき、加熱炉の送風を一旦停止し、加熱炉の扉を開け、試験片を強伸度測定機器のチャックに取り付け、その後速やかに加熱炉の扉を閉めて、送風を再開した。
次いで、収縮応力を30秒以上測定し、測定中の最大値を最大収縮応力Cとして、以下の基準に準じて評価した。
◎:最大収縮応力(C)が、10MPa以下の値である。
〇:最大収縮応力(C)が、12MPa以下の値である。
△:最大収縮応力(C)が、14MPa以下の値である。
×:最大収縮応力(C)が、14MPaを超える値である。
【0082】
(7)評価7:色度座標におけるb
得られたポリエステル系シュリンクフィルムにつき、JIS Z 8781-4:2013に準拠して測定されるCIE1976 L色空間の色度座標におけるbの値を、分光光度計(株式会社島津製作所製、製品名「UV-3600」)を用いて測定し、以下の基準に準じて評価した。
◎:色度座標におけるbが、0.17~0.28の範囲内の値である。
〇:色度座標におけるbが、上記範囲外であって、かつ、0.15~0.3の範囲内の値である。
△:色度座標におけるbが、上記範囲外であって、かつ、0.1~0.35の範囲内の値である。
×:色度座標におけるbが、0.1未満、又は0.35を超える値である。
【0083】
(8)評価8:耐シワ特性
市販の飲料水が充填された状態の円柱状PETボトル(容積:500ml)を準備した。
次いで、ポリエステル系シュリンクフィルムを幅26cmにスリットして得た長尺状のシュリンクフィルムに、長手方向に沿って幅1mmのミシン目を設け、幅方向の端部に1,3-ジオキソランを塗布した。
次いで、重ね代が約1cmとなるように、幅方向の端部同士を重ね合わせて接着し、直径約8cmの筒状ラベルとした。更に、この筒状ラベルを長手方向に16cm毎に切り出し、複数の筒状ラベルを得た。
次いで、当該筒状ラベルを準備した円柱状PETボトルの胴部に被せ、85℃に保持された蒸気トンネルの中を、ベルトコンベアの上にのせると共に、6m/minの通過速度で移動させ、筒状ラベルが円柱状PETボトルの胴部の上部から下部にわたって密着するよう熱収縮させた。
最後に、熱収縮後の筒状ラベルを目視にて観察し、以下の基準に沿って、所定長さ(1cm以上)や所定幅(1mm以上)のシワが発生していないかにより、耐シワ特性を評価した。
◎:筒状ラベルの5個中、5個の全てに所定シワの発生が観察されなかった。
〇:筒状ラベルの5個中、3個以上に所定シワの発生が観察されなかった。
△:筒状ラベルの5個中、1個以上に所定シワの発生が観察されなかった。
×:筒状ラベルの5個中、5個の全てに所定シワの発生が観察された。
【0084】
[実施例2]
実施例2において、表1に示すように、それぞれ構成(a)~(d)等の値を変えるべく、実施例1とは種類が異なる非結晶性ポリエステル樹脂(PETG2)を70重量部と、結晶性ポリエステル樹脂としての再生ポリエステル樹脂(PCR)を30重量部と、所定添加剤(アンチブロッキング剤)を0.8重量部とを用いた。
それと共に、実施例1と同様に、原反シートから、予備加熱温度86℃、延伸温度84℃、熱固定温度82℃とし、延伸倍率(MD方向:125%、TD方向:480%)で、厚さ30μmのポリエステル系シュリンクフィルムを作成した。
そして、作成したポリエステル系シュリンクフィルムにつき、実施例1と同様に、耐シワ特性等につき、評価した。結果を表2に示す。
【0085】
[実施例3]
実施例3において、表1に示すように、それぞれ構成(a)~(d)等の値を変えるべく、実施例1とは種類が異なる非結晶性ポリエステル樹脂(PETG3)を70重量部と、結晶性ポリエステル樹脂としての再生ポリエステル樹脂(PCR)を30重量部と、所定添加剤(アンチブロッキング剤)を0.8重量部とを用いた。
それと共に、実施例1と同様に、原反シートから、予備加熱温度85℃、延伸温度80℃、熱固定温度80℃とし、延伸倍率(MD方向:120%、TD方向:480%)で、厚さ30μmのポリエステル系シュリンクフィルムを作成した。
そして、作成したポリエステル系シュリンクフィルムにつき、実施例1と同様に、耐シワ特性等につき、評価した。結果を表2に示す。
【0086】
[比較例1]
比較例1において、表1に示すように、構成要件(a)~(b)を満足しない、ポリエステル系シュリンクフィルムを作成し、実施例1と同様に、評価して結果を表2に示す。
すなわち、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG2)を90重量部と、結晶性ポリエステル樹脂(PBT)を10重量部と、所定添加剤(アンチブロッキング剤)を0.8重量部と、を用いた。
それと共に、原反シートから、予備加熱温度90℃、延伸温度83℃、熱固定温度81℃とし、延伸倍率(MD方向:105%、TD方向:480%)で、厚さ30μmのポリエステル系シュリンクフィルムを作成した。
そして、作成したポリエステル系シュリンクフィルムにつき、実施例1と同様に、耐シワ特性等につき、評価した。結果を表2に示す。
【0087】
[比較例2]
比較例2において、表1に示すように、構成要件(b)を満足しない、ポリエステル系シュリンクフィルムを作成し、実施例1と同様に、ポリエステル系シュリンクフィルムを作成し、評価して結果を表2に示す。
すなわち、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG1)を60重量部と、別な非結晶性ポリエステル樹脂(PETG3)を40重量部と、所定添加剤(アンチブロッキング剤)を1重量部と、を用いた。
それと共に、原反シートから、予備加熱温度120℃、延伸温度80℃、熱固定温度86.5℃とし、延伸倍率(MD方向:105%、TD方向:480%)で、厚さ30μmのポリエステル系シュリンクフィルムを作成した。
そして、作成したポリエステル系シュリンクフィルムにつき、実施例1と同様に、耐シワ特性等につき、評価した。結果を表2に示す。
【0088】
[比較例3]
比較例3において、表1に示すように、構成要件(a)~(b)を満足しない、ポリエステル系シュリンクフィルムを作成し、実施例1と同様に、ポリエステル系シュリンクフィルムを作成し、評価して結果を表2に示す。
すなわち、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG2)を100重量部と、所定添加剤(アンチブロッキング剤)を0.8重量部と、を用いた。
それと共に、原反シートから、予備加熱温度90℃、延伸温度83℃、熱固定温度81℃とし、延伸倍率(MD方向:105%、TD方向:480%)で、厚さ30μmのポリエステル系シュリンクフィルムを作成した。
そして、作成したポリエステル系シュリンクフィルムにつき、実施例1と同様に、耐シワ特性等につき、評価した。結果を表2に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明によれば、結晶性ポリエステル樹脂を、樹脂全体量に対して、30~50重量%の範囲で含み、かつ、1.4-シクロヘキサンジメタノール又はペンチルアルコールを、アルコール成分100モル中、5~30モル%の範囲で用いてなる非結晶性ポリエステル樹脂を含む、ポリエステル系樹脂組成物に由来したポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、少なくとも構成(a)~(d)及び(h)を満足することにより、所定の高湿条件下に、簡易エージングとして、所定時間放置したような場合であっても、吸湿に伴う物性変化を防止し、各熱処理温度で、安定的かつ再現性良く、所定の熱収縮率が得られるようになった。
すなわち、熱収縮時のポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、急激な熱応答による不均一な収縮を抑制することができ、結果として微細なシワの発生についても抑制できるようになった。
従って、本発明のポリエステル系シュリンクフィルムによれば、各種PETボトルや、弁当の外周被覆材等に好適に適用して、汎用性を著しく広げることができることから、その産業上の利用可能性は極めて高いと言える。
【符号の説明】
【0092】
10:ポリエステル系シュリンクフィルム
10a:他の樹脂層1
10b:他の樹脂層2
10c:収縮率調整層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9