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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111604
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】カッターシステム
(51)【国際特許分類】
   B26D 7/26 20060101AFI20240809BHJP
   B65B 69/00 20060101ALI20240809BHJP
   B26D 5/08 20060101ALI20240809BHJP
   B26D 5/00 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
B26D7/26
B65B69/00 D
B26D5/08 B
B26D5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016215
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】591280485
【氏名又は名称】ソフトバンクグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139066
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】孫 正義
【テーマコード(参考)】
3C021
3E058
【Fターム(参考)】
3C021JA09
3E058AA02
3E058CA01
3E058CA03
3E058GA01
(57)【要約】
【課題】より適切な切断が可能なカッターシステムを提供する。
【解決手段】カッターシステムは、刃30を対象物に向かって変位させるアクチュエータ40と、対象物に対する刃30の状態を検出する状態センサ50と、状態センサ50により刃30が対象物を貫通したことが検出されたときの刃の位置に基づいて刃の目標変位位置を学習する目標位置学習部100と、刃30を対象物に向かって変位させる際に目標変位位置に基づいてアクチュエータ40を制御する駆動制御部101と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を切断するための刃と、
前記刃を前記対象物に向かって変位させる駆動部と、
前記対象物に対する前記刃の状態を検出する検出部と、
前記検出部により前記刃が前記対象物を貫通したことが検出されたときの前記刃の位置に基づいて前記刃の目標変位位置を学習する目標位置学習部と、
前記刃を前記対象物に向かって変位させる際に前記目標変位位置に基づいて前記駆動部を制御する駆動制御部と、を備える
カッターシステム。
【請求項2】
ユーザが操作可能な学習用操作部を更に備え、
前記目標位置学習部は、前記学習用操作部が前記ユーザにより操作されたときに前記駆動部を駆動させた後、前記刃が前記対象物を貫通したことが前記検出部により検出されたときの前記刃の位置に基づいて前記目標変位位置を学習する
請求項1に記載のカッターシステム。
【請求項3】
前記目標位置学習部は、前記目標変位位置が既に学習されている状態で前記学習用操作部が前記ユーザにより操作された場合に前記駆動部を駆動させて、前記検出部により前記刃が前記対象物を貫通したことが検出されたときの前記刃の位置に基づいて前記目標変位位置を再学習する
請求項2に記載のカッターシステム。
【請求項4】
前記目標位置学習部は、前記目標変位位置を複数学習することが可能である
請求項1に記載のカッターシステム。
【請求項5】
複数の前記目標変位位置のうちのいずれを用いるかをユーザが選択可能な選択部を更に備え、
前記駆動制御部は、前記選択部において選択されている前記刃の目標変位位置に基づいて前記駆動部を制御する
請求項4に記載のカッターシステム。
【請求項6】
前記目標位置学習部による前記刃の目標変位位置の学習が完了したときにユーザに対して報知を行う報知部を更に備える
請求項1に記載のカッターシステム。
【請求項7】
前記刃の目標変位位置をユーザが手動で調整可能な調整部を更に備える
請求項1に記載のカッターシステム。
【請求項8】
ユーザが操作可能な駆動用操作部を更に備え、
前記駆動制御部は、前記駆動用操作部が前記ユーザにより操作されたときに前記駆動部を駆動させて前記刃を前記目標変位位置まで変位させた後、前記刃の位置を前記目標変位位置に保持する
請求項1に記載のカッターシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カッターシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ロジスティクスの高度化・自動化が進んでいる。例えば特許文献1には、容器入りケースの開梱作業およびケースと容器との分別作業を自動化および高速化することができるケース開梱分別装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-128136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
他方で、例えば段ボール箱を開梱する際は、カッターナイフを用いて人手で開梱することがある。このとき、カッターナイフの力加減を誤ると、段ボール箱の内部に収容された物を損傷するおそれがある。
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、より適切な切断が可能なカッターシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するカッターシステムは、対象物を切断するための刃と、刃を対象物に向かって変位させる駆動部と、対象物に対する刃の状態を検出する検出部と、検出部により刃が対象物を貫通したことが検出されたときの刃の位置に基づいて刃の目標変位位置を学習する目標位置学習部と、刃を対象物に向かって変位させる際に目標変位位置に基づいて駆動部を制御する駆動制御部と、を備える。
【0006】
この構成によれば、刃が対象物を貫通したことが検出されたときの刃の位置に基づいて目標変位位置が学習されるとともに、その刃の目標変位位置に基づいて駆動部が刃を変位させるため、対象物を丁度貫通する位置に刃を変位させることができる。これにより、対象物の内部に収容された収容物を損傷することなく対象物を切断することができるため、より適切な切断が可能となる。
【発明の効果】
【0007】
本発明のカッターシステムによれば、より適切な切断が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態のカッターシステムのシステム構成を示す断面図。
図2】第1実施形態のカッターシステムの制御系の構成を示すブロック図。
図3】第1実施形態の制御部により実行される学習処理の手順を示すフローチャート。
図4】第1実施形態の学習処理が開始されたときのカッターシステム及び学習用対象物のそれぞれの断面構造を示す断面図。
図5】第1実施形態の刃の先端部が学習用対象物の内部に位置しているときのカッターシステム及び学習用対象物のそれぞれの断面構造を示す断面図。
図6】第1実施形態の刃の先端部が学習用対象物をちょうど貫通したときのカッターシステム及び学習用対象物のそれぞれの断面構造を示す断面図。
図7】第1実施形態の制御部により実行される駆動制御の手順を示すフローチャート。
図8】第2実施形態のカッターシステムの制御系の構成を示すブロック図。
図9】第2実施形態の制御部により実行される駆動制御の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、カッターシステムの実施形態について図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
<第1実施形態>
図1は、本実施形態に係るカッターシステム1のシステム構成の一例を示す図である。本実施形態のカッターシステム1は、主に梱包材である段ボール箱、あるいは段ボール箱を封止しているテープの切断を目的として使用されるものである。図1に示されるカッターシステム1は、筐体10と、抑え部20と、刃30と、アクチュエータ40と、状態センサ50と、位置センサ60と、操作部70と、報知装置80と、制御部90とを備えている。また、図示しないが、カッターシステム1は、制御部90等を駆動するための電源を更に備えている。
【0010】
筐体10は、カッターシステム1を構成する刃30と、制御部90と、状態センサ50と、アクチュエータ40等を収容するためのケースである。
抑え部20は、カッターシステム1を用いて対象物を切断する際に、対象物に押し当てられる部分である。抑え部20の一部には、刃30を通すことのできる孔21が空いている。当該孔21を介して刃30の先端部を、抑え部20よりもカッターシステム1の本体からみて外側(図1では下側)に出すことができるようになっている。
【0011】
刃30は、対象物を切断するためのものであり、対象物を切断することのできる形状及び材質で構成されている。例えば、刃30は、カッターナイフの刃と同様の形状及び材質を有していてもよい。本実施形態において、刃30は、間に隙間を有する2枚刃構造のものであるが、これに限らず、1枚刃であってもよい。
【0012】
アクチュエータ40は、刃30を対象物に向かって変位させるための装置である。制御部90の制御により、アクチュエータ40は、カッターシステム1の外側方向(図1では下側方向)及び内側方向(図1では上側方向)の付勢力を刃30に付与することにより、刃30を外側方向及び内側方向に変位させる。また、制御部90の制御により、アクチュエータ40は、刃30への付勢力の付与を停止して、所定の位置で刃30を保持することができる。本実施形態では、アクチュエータ40が、刃30を対象物に向かって変位させる駆動部に相当する。
【0013】
状態センサ50は、対象物に対する刃30の先端部の状態を検知するためのセンサである。状態センサ50は、光、電磁波又は画像を利用したセンサであってもよく、例えば、レーザーセンサ、光センサ、及び画像処理ユニット(MoPU:Motion Processing Unit)のいずれかであってもよい。画像処理ユニットは、毎秒1000フレームの画像をキャプチャできる高速画像処理ユニットを用いることが好適である。本実施形態では、状態センサ50が、対象物に対する刃30の状態を検出する検出部に相当する。
【0014】
本実施形態の状態センサ50は、2枚刃構造の刃30の内部(2枚刃の刃と刃との間)に設置され、刃30の先端部をセンシングする。これにより、刃30の先端部、すなわち切断対象部と刃30の接点となる部分の状態を検知する。なお、状態センサ50の設置位置はこれに限られず、刃30の先端部の状態を検知することができれば任意の部位に設置することができる。例えば、刃30の先端部に状態センサ50を埋め込む、あるいは、貼り付けてもよい。また、抑え部20の孔21の周辺を観測できる位置に状態センサ50を設置してもよい。
【0015】
位置センサ60は、図1における上側方向及び下側方向における刃30の位置を検出する。位置センサ60は、例えば刃30の初期位置から上側方向及び下側方向への刃30の変位量を刃30の位置として検出する。位置センサ60としては、例えば光学式リニアエンコーダや磁気式リニアエンコーダを用いることができる。
【0016】
操作部70は、カッターシステム1に対する各種操作を行う際にユーザが操作する部分である。図2に示されるように、操作部70には、ユーザにより操作可能なスイッチとして、学習スイッチ71と、駆動スイッチ72とが設けられている。
学習スイッチ71は、目標変位位置を学習させる際にユーザが操作するスイッチである。目標変位位置は、アクチュエータ40を駆動させて刃30を変位させる際の刃30の変位位置の目標値である。カッターシステム1を対象物に接触させた状態でユーザが学習スイッチ71をオン操作すると、アクチュエータ40が自動的に駆動して、刃30が、初期位置から下側方向に向かって変位する。その後、刃30が対象物を貫通すると、その時に位置センサ60により検出されている刃30の位置が目標変位位置として学習される。本実施形態では、学習スイッチ71が学習用操作部に相当する。
【0017】
駆動スイッチ72は、アクチュエータ40を駆動させる際にユーザが操作するスイッチである。ユーザが駆動スイッチ72をオン操作した場合、アクチュエータ40が駆動することにより刃30に対して外側方向の付勢力が付与される。刃30は、目標変位位置まで変位した後、その位置で保持される。このとき、刃30が筐体10から突出した状態となる。その後、ユーザが駆動スイッチ72をオフ操作した場合、アクチュエータ40により刃30に対して内側方向の付勢力が付与されて刃30が筐体10内に収容された後、アクチュエータ40の駆動が停止する。本実施形態では、駆動スイッチ72が駆動用操作部に相当する。
【0018】
報知装置80は、カッターシステム1を使用しているユーザに対して音や光等により各種報知を行う装置である。例えば音により報知を行う場合、報知装置80としてはスピーカ装置を用いることができる。光により報知を行う場合、報知装置80としてはLED装置を用いることができる。本実施形態では、報知装置80が報知部に相当する。
【0019】
図2に示されるように、制御部90には、学習スイッチ71及び駆動スイッチ72のそれぞれの操作情報、並びに状態センサ50及び位置センサ60によりそれぞれ検知された情報が取り込まれている。制御部90は、それらの情報に基づいてカッターシステム1全体の動作を制御する。図1に示されるように、制御部90は例えばプロセッサ91とメモリ92とを含んでいる。
【0020】
プロセッサ91は、カッターシステム1全体の動作を制御する。プロセッサ91としては、例えばCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、又はマイコン(マイクロコントローラ)等を用いることができる。
【0021】
メモリ92は、プロセッサ91により実行される各種プログラムや各種データを記憶する。メモリ92には、例えば、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の揮発性記憶装置、及びHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等の不揮発性記憶装置が含まれている。各種データには、例えば状態センサ50が検知した情報に基づいてアクチュエータ40を制御するためのパターンデータや、学習スイッチ71を操作することにより学習される刃30の目標変位位置の数値等が含まれている。
【0022】
図2に示されるように、制御部90は、メモリ92に記憶されているプログラムをプロセッサ91が実行することにより実現される機能的な構成として、目標位置学習部100と、駆動制御部101とを備えている。目標位置学習部100は、ユーザにより学習スイッチ71が操作された際に、刃30の目標変位位置を学習するための学習処理を実行する。駆動制御部101は、ユーザにより駆動スイッチ72が操作された際に、アクチュエータ40を駆動させて刃30を目標変位位置まで変位させる駆動制御を実行する。
【0023】
本実施形態のカッターシステム1は、工場等において同一形状の対象物、例えば同一形状の段ボール箱を複数切断する作業を行う際に使用するのに好適である。具体的には、ユーザは、複数の対象物のうちの一つを学習用対象物として選択して、その学習用対象物にカッターシステム1を押し付けた後、学習スイッチ71をオン操作すれば、学習用対象物を丁度貫通したときの刃30の位置を目標変位位置として学習させることができる。その後、ユーザは、他の対象物にカッターシステム1を押し付けた後に駆動スイッチ72をオン操作すれば、刃30が目標変位位置まで、すなわち対象物を丁度貫通する位置まで自動的に変位するため、その状態で他の複数の対象物を切断することができる。
【0024】
次に、図3を参照して、目標位置学習部100により実行される学習処理の具体的な処理手順について説明する。なお、図3に示される処理は、目標位置学習部100により所定の周期で繰り返し実行される。また、以下では、学習用対象物が段ボール箱である場合を例に挙げて説明する。
【0025】
図3に示されるように、目標位置学習部100は、まず、学習スイッチ71がオン操作されたか否かを判断する(ステップS10)。学習スイッチ71がオフ状態である場合、目標位置学習部100は、学習スイッチ71がオン操作されていないと判断して(ステップS10:NO)、図3に示される処理を一旦終了する。
【0026】
ユーザが学習スイッチ71をオン操作すると、目標位置学習部100は、学習スイッチ71がオン操作されたと判断して(ステップS10:YES)、刃30の先端部の状態に関するセンシングデータを状態センサ50から取得する(ステップS11)。続いて、目標位置学習部100は、状態センサ50により取得されたセンシングデータに基づいて、刃30の先端部が学習用対象物を貫通したか否かを判断する(ステップS12)。例えば、学習スイッチ71がオン操作された時点、すなわち学習処理が開始された時点では、刃30は、図4に示される筐体10の内部の位置である初期位置に位置している。この場合、目標位置学習部100は、状態センサ50により取得されるセンシングデータに基づいて、刃30が学習用対象物Dから離間している状態であることを検出する。このとき、目標位置学習部100は、図3に示される学習処理において、刃30の先端部が学習用対象物Dを貫通していないと判断して(ステップS12:NO)、刃30をカッターシステム1の外側方向に付勢するようにアクチュエータ40を制御する(ステップS13)。これにより、刃30は、図4に示される初期位置から外側方向(図4では下側方向)に変位する。
【0027】
目標位置学習部100は、ステップS13の処理を実行した後、ステップS11~S13の処理を繰り返し実行する。これにより、刃30の先端部が学習用対象物Dの上面に接触した後、図5に示されるように学習用対象物Dの内部に進入する。このとき、目標位置学習部100は、状態センサ50により取得されるセンシングデータに基づいて、刃30が学習用対象物の内部に進入している状態であることを検出する。そのため、目標位置学習部100は、図3に示される学習処理において、刃30の先端部が学習用対象物Dを貫通していないと判断して(ステップS12:NO)、刃30をカッターシステム1の外側方向に付勢するようにアクチュエータ40を更に制御する(ステップS13)。これにより、刃30は、図5に示される状態から外側方向(図4では下側方向)に更に変位する。
【0028】
目標位置学習部100は、ステップS13の処理を実行した後、ステップS11~S13の処理を繰り返し実行する。これにより、刃30の先端部が学習用対象物Dの内部を進行し、遂には、図6に示されるように刃30の先端部が学習用対象物Dを貫通する。このとき、目標位置学習部100は、状態センサ50により取得されるセンシングデータに基づいて、刃30が学習用対象物Dを貫通したことを検出する。そのため、目標位置学習部100は、図3に示される学習処理において、刃30の先端部が学習用対象物Dを貫通したと判断して(ステップS12:YES)、そのときの刃30の変位位置を位置センサ60により検出するとともに(ステップS14)、検出された刃30の変位位置に基づいて目標変位位置を設定する(ステップS15)。このとき、目標位置学習部100は、例えば位置センサ60により検出された変位位置を、そのまま目標変位位置として設定する。あるいは、目標位置学習部100は、位置センサ60により検出された変位位置から所定距離だけ下側方向又は上側方向にずれた位置を目標変位位置として設定してもよい。所定距離は、予め定められていてもよいし、ユーザにより設定可能であってもよい。目標位置学習部100は、ステップS15の処理に続いて、設定された目標変位位置をメモリ92に記憶させた後(ステップS16)、報知装置80を所定時間だけ駆動させて(ステップS17)、図3に示される処理を一旦終了する。駆動した報知装置80から音や光等が発せられることにより、目標変位位置の学習が完了したことをユーザに認知させることができる。
【0029】
次に、図7を参照して、駆動制御部101により実行される駆動制御の具体的な処理手順について説明する。なお、図7に示される処理は、駆動制御部101により所定の周期で繰り返し実行される。また、以下では、学習用対象物Dと同一の形状を有する切断対象物にカッターシステム1の抑え部20をユーザが押し付けた状態であるものとする。切断対象物も学習用対象物Dと同様に段ボール箱である。
【0030】
図7に示されるように、駆動制御部101は、まず、駆動スイッチ72がオン操作されているか否かを判断する(ステップS20)。駆動スイッチ72がオフ状態である場合、駆動制御部101は、駆動スイッチ72がオン操作されていないと判断して(ステップS20:NO)、図7に示される処理を一旦終了する。
【0031】
ユーザが駆動スイッチ72をオン操作すると、駆動制御部101は、駆動スイッチ72がオン操作されたと判断して(ステップS20:YES)、メモリ92に記憶されている目標変位位置を読み込む(ステップS21)。続いて、駆動制御部101は、アクチュエータ40を駆動させて刃30を目標変位位置まで変位させた後(ステップS22)、刃30を目標変位位置で保持する(ステップS23)。これにより、刃30が、図6に示される位置まで、すなわち切断対象物を丁度貫通する位置まで自動的に変位して保持される。そのため、その後にユーザがカッターシステム1を切断対象物に対してスライド移動させれば、切断対象物の内部に収容されている収容物を損傷することなく、切断対象物を切断することができる。このように、本実施形態のカッターシステム1では、刃30の目標変位位置を一旦学習させれば、学習用対象物と同様の形状を有する他の複数の切断対象物を、その内部の収容物を損傷することなく切断することが可能である。
【0032】
なお、例えばユーザが上記の学習処理を未だ実行していないような場合、すなわち目標変位位置が未学習の場合、メモリ92に目標変位位置の情報が記憶されていない状況が想定される。このような場合、駆動制御部101は、ステップS21の処理において、メモリ92に予め記憶されている目標変位位置の初期値を読み込んでステップS23の処理を実行してもよい。あるいは、このような場合、駆動制御部101は、ステップS21以降の処理を実行することなく、報知装置80を駆動させることにより、学習処理の実行をユーザに促すような報知を行ってもよい。
【0033】
駆動制御部101は、ステップS23の処理に続いて、駆動スイッチ72がオフ操作されたか否かを判断する(ステップS24)。駆動スイッチ72がオン状態のままである場合、駆動制御部101は、駆動スイッチ72がオフ操作されていないと判断して(ステップS24:NO)、ステップS23の処理に戻る。したがって、駆動スイッチ72がオン状態である期間、刃30は目標変位位置に保持されている。
【0034】
その後、ユーザがカッターシステム1を用いて切断対象物を切断した後に駆動スイッチ72をオフ操作すると、駆動制御部101は、駆動スイッチ72がオフ操作されたと判断して(ステップS24:YES)、アクチュエータ40を駆動させて、刃30を、図4に示される初期位置に戻した後(ステップS25)、図7に示される処理を一旦終了する。
【0035】
以上説明した本実施形態のカッターシステム1によれば、以下のような作用及び効果を得ることができる。
本実施形態のカッターシステム1は、状態センサ50と、目標位置学習部100と、駆動制御部101とを備える。状態センサ50は、対象物に対する刃30の状態を検出する。目標位置学習部100は、状態センサ50により刃30が対象物を貫通したことが検出されたときの刃30の目標変位位置を学習する。駆動制御部101は、刃30を対象物に向かって変位させる際に目標変位位置に基づいてアクチュエータ40を制御する。
【0036】
この構成によれば、刃30が対象物を貫通したことが検出されたときの刃30の位置に基づいて目標変位位置が学習されるとともに、その刃30の目標変位位置に基づいてアクチュエータ40が刃30を変位させるため、対象物を丁度貫通する位置まで刃30を変位させることができる。これにより、対象物の内部に収容された収容物を損傷することなく対象物を切断することが可能となるため、より適切な切断が可能となる。
【0037】
本実施形態のカッターシステム1は、ユーザが操作可能な学習スイッチ71を更に備える。目標位置学習部100は、学習スイッチ71がユーザにより操作されたときにアクチュエータ40を駆動させた後、刃30が対象物を貫通したことが状態センサ50により検出されたときの刃30の位置に基づいて目標変位位置を学習する。
この構成によれば、ユーザが学習スイッチ71を操作することにより、任意のタイミングで目標変位位置を学習することが可能となる。
【0038】
本実施形態のカッターシステム1は、刃30の目標変位位置の学習が完了したときにユーザに対して報知を行う報知装置80を更に備えている。
この構成によれば、学習が完了したか否かをユーザが認知し易くなるため、利便性を向上させることができる。
【0039】
本実施形態のカッターシステム1は、ユーザが操作可能な駆動スイッチ72を更に備える。駆動制御部101は、駆動スイッチ72がユーザにより操作されたときにアクチュエータ40を駆動させて刃30を目標変位位置まで変位させた後、刃30の位置を保持する。
この構成によれば、刃30が目標変位位置まで変位した状態で保持されるため、その状態でカッターシステム1を対象物に対してスライド移動させることにより、対象物を切断することができる。
【0040】
(第1変形例)
次に、第1実施形態のカッターシステム1の第1変形例について説明する。
本変形例のカッターシステム1では、ユーザが学習スイッチ71を操作して目標変位位置が一旦設定された後、学習スイッチ71を再度オン操作した場合に目標変位位置が再設定される。具体的には、目標位置学習部100は、目標変位位置が既に学習されている状態で、すなわち目標変位位置の情報がメモリ92に既に記憶されている状態で、学習スイッチ71がユーザにより操作された場合にも、図3に示される学習処理を実行する。このときにも、目標位置学習部100は、刃30の先端部が学習用対象物を貫通したときの刃30の変位位置を位置センサ60により検出すると(ステップS14)、検出された刃30の変位位置に基づいて目標変位位置を設定する(ステップS15)。続いて、目標位置学習部100は、ステップS16の処理として、メモリ92に記憶されている目標変位位置の情報を、新たに設定された目標変位位置の情報に更新する。
【0041】
このように、本変形例の目標位置学習部100は、目標変位位置が既に学習されている状態で学習スイッチ71がユーザにより操作された場合には目標変位位置を再学習する。この構成によれば、例えば切断対象物が切り替わったような場合、切り替え後の切断対象物にカッターシステム1を押し付けた後に学習スイッチ71を操作すれば、切り替え後の切断対象物に適した目標変位位置を学習することができる。よって、切断対象物が切り替わったような場合にも適切に対応することが可能である。
【0042】
(第2変形例)
次に、第1実施形態のカッターシステム1の第2変形例について説明する。
本変形例のカッターシステム1では、図2に破線で示されるように、ユーザにより操作可能な調整ボタン74が操作部70に更に設けられている。目標位置学習部100は、ユーザによる調整ボタン74の操作量を読み込むとともに、読み込まれた操作量に基づいて目標変位位置を微調整する。例えば調整ボタン74がロータリー式のものである場合、目標位置学習部100は、調整ボタン74が時計回りの方向に操作されたときに目標変位位置を正の方向に変化させ、調整ボタン74が反時計回りの方向に操作されたときに目標変位位置を負の方向に変化させる。目標変位位置の正の方向は、例えば図4における下側の方向に設定され、目標変位位置の負の方向は、例えば図4に示される上側の方向に設定される。
【0043】
この構成によれば、ユーザが学習スイッチ71を操作して目標変位位置を一旦学習させた後であっても、調整ボタン74を操作することにより目標変位位置を手動で微調整することが可能となる。本変形例では、調整ボタン74が調整部に相当する。
<第2実施形態>
次に、カッターシステム1の第2実施形態について説明する。以下、第1実施形態のカッターシステム1との相違点を中心に説明する。
【0044】
図8に示されるように、本実施形態の操作部70には、第1学習スイッチ71aと、第2学習スイッチ71bとが設けられている。ユーザが第1学習用対象物にカッターシステム1を押し付けた後に第1学習スイッチ71aを操作した場合、目標位置学習部100は、図3に示される処理を実行することにより、第1学習用対象物に対応した第1目標変位位置を学習してメモリ92に記憶する。また、第1学習用対象物とは異なる第2学習用対象物にユーザがカッターシステム1を押し付けた後に第2学習スイッチ71bを操作した場合、目標位置学習部100は、図3に示される処理を実行することにより、第2学習用対象物に対応した第2目標変位位置を学習してメモリ92に記憶する。
【0045】
図8に示されるように、操作部70には対象物選択スイッチ73が設けられている。対象物選択スイッチ73では「第1対象物」と「第2対象物」とを選択することが可能である。本実施形態では、対象物選択スイッチ73が選択部に相当する。
駆動制御部101は、対象物選択スイッチ73における選択状態に基づいて、図9に示される駆動制御を実行する。次に、図9に示される駆動制御について説明する。なお、図9に示される駆動制御において、図7に示される処理と同一の処理には同一の符号を付すことにより重複する説明は割愛する。
【0046】
図9に示されるように、駆動制御部101は、駆動スイッチ72がオン操作されたと判断した場合(ステップS20:YES)、対象物選択スイッチ73において「第1対象物」が選択されているか否かを判断する(ステップS30)。駆動制御部101は、対象物選択スイッチ73において「第1対象物」が選択されている場合(ステップS30:YES)、メモリ92に記憶されている第1目標変位位置を読み込むとともに(ステップS31)、読み込んだ第1目標変位位置に基づいてステップS22以降の処理を実行する。この場合、刃30は第1目標変位位置まで変位して、その位置で保持される。
【0047】
一方、駆動制御部101は、対象物選択スイッチ73において「第1対象物」が選択されていない場合(ステップS30:NO)、すなわち対象物選択スイッチ73において「第2対象物」が選択されている場合には、メモリ92に記憶されている第2目標変位位置を読み込むとともに(ステップS31)、読み込んだ第2目標変位位置に基づいてステップS22以降の処理を実行する。この場合、刃30は第2目標変位位置まで変位して、その位置で保持される。
【0048】
以上説明した本実施形態のカッターシステム1によれば、以下のような作用及び効果を更に得ることができる。
本実施形態の目標位置学習部100は、目標変位位置を複数学習することが可能である。カッターシステム1は、複数の目標変位位置のうちのいずれを用いるかを選択可能な対象物選択スイッチ73を備える。駆動制御部101は、対象物選択スイッチ73において選択されている刃30の目標変位位置に基づいてアクチュエータ40を制御する。
【0049】
例えばユーザが段ボール箱を切断する状況を考えた場合、段ボールそのものを切断することを望む状況もあれば、段ボール箱を封止しているテープを切断することを望む状況もある。本実施形態のカッターシステム1によれば、段ボールに適した第1目標変位位置と、テープに適した第2目標変位位置とを別々に学習することができる。そして、ユーザが段ボールを切断する場合には対象物選択スイッチ73において「第1対象物」を選択すれば、段ボールを貫通した位置で刃30が保持されるため、段ボール箱の内部の収容物を損傷させることがない。また、ユーザがテープを切断する場合には対象物選択スイッチ73において「第2対象物」を選択すれば、テープを貫通した位置で刃30が保持されるため、この場合にも段ボール箱の内部の収容物を損傷させることがない。このように、本実施形態のカッターシステム1によれば、異なる対象物を、より適切に切断することが可能となる。
【0050】
<他の実施形態>
本開示は上記の具体例に限定されるものではない。
例えば、第2実施形態のカッターシステム1は、対象物選択スイッチ73において2種類の対象物が選択できるように構成されているが、対象物選択スイッチ73において3種類以上の対象物が選択できるように構成されていてもよい。
【0051】
第2実施形態のカッターシステム1は、対象物選択スイッチ73によりユーザが切断対象物を選択できる構成を有するものであったが、これに代えて、切断対象物を自動的に認識する構成を有するものであってもよい。例えば刃30に作用する応力を検出することが可能な応力センサをカッターシステム1に設ける。目標位置学習部100は、応力センサにより検出される応力に基づいて、刃30が接触している学習用対象物の種別を自動的に認識する。例えば刃30に作用する応力の時間的な変化と対象物の種別との関係を示すマップを実験等により予め作成しておけば、目標位置学習部100は、このマップに基づいて、応力センサにより検出される応力に基づいて学習用対象物の種別を自動的に認識することができる。目標位置学習部100は、学習処理において、認識された学習用対象物の種別と、設定された目標変位位置とを関連付けてメモリ92に記憶させる。駆動制御部101は、アクチュエータ40を駆動する際に、応力センサにより検出された刃30の応力に基づいて切断対象物の種別を判定するとともに、判定された種別に対応する目標変位位置をメモリ92から読み込んだ後、刃30を目標変位位置に変位させる。このような構成によれば、対象物の種別を自動認識しつつ、対象物の切断が可能となる。なお、応力センサに代えて圧力センサ等の別のセンサを用いてもよい。
【0052】
上記の具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素、及びその配置、条件、形状等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0053】
1:カッターシステム、30:刃、40:アクチュエータ(駆動部)、50:状態センサ(検出部)、71,71a,71b:学習スイッチ(学習用操作部)、72:駆動スイッチ(駆動用操作部)、73:対象物選択スイッチ(選択部)、74:調整ボタン(調整部)、80:報知装置(報知部)、100:目標位置学習部、101:駆動制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9