(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111606
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240809BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20240809BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240809BHJP
【FI】
H02J7/00 B
H02J7/02 A
H02M7/48 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016217
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】張 飛
【テーマコード(参考)】
5G503
5H770
【Fターム(参考)】
5G503AA00
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA01
5G503GB06
5G503GD03
5H770AA15
5H770BA11
5H770CA04
5H770CA05
5H770CA06
5H770DA10
5H770EA01
5H770HA02W
5H770JA20Z
(57)【要約】
【課題】蓄電装置の充電及び放電の制御を行う際に、電流の高い制御性を実現しつつ、電流指令値のゼロ付近における充放電方向の意図しない切り替わりを抑制できる電力変換装置を提供する。
【解決手段】蓄電装置の充電及び放電を行う変換器と、変換器の動作を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、変換器と蓄電装置との間に流れる電流の電流指令値と電流検出値との差分を演算する減算器と、差分に対してデッドバンドを設定することにより、差分のゼロを含む所定の範囲の出力を所定の値にするデッドバンド処理部と、デッドバンド処理部の処理後の差分を基に、制御信号を生成し、制御信号を変換器に入力することにより、電流指令値に応じた大きさの電流を出力させるように、変換器の動作を制御する制御信号生成部と、を有する電力変換装置が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置及び電源に接続され、前記電源で生成された電力を前記蓄電装置に応じた電力に変換し、変換後の電力を前記蓄電装置に供給することにより、前記電源で生成された電力を基に前記蓄電装置の充電を行うとともに、前記蓄電装置に蓄積された電力を前記電源側に応じた電力に変換し、変換後の電力を前記電源側に供給することにより、前記蓄電装置に蓄積された電力の前記電源側への放電を行う変換器と、
前記変換器の動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記変換器と前記蓄電装置との間に流れる電流の電流指令値と、前記変換器と前記蓄電装置との間に流れる電流の電流検出値と、の入力を受け、前記電流指令値と前記電流検出値との差分を演算する減算器と、
前記差分に対してデッドバンドを設定することにより、前記差分のゼロを含む所定の範囲の出力を所定の値にするデッドバンド処理部と、
前記デッドバンド処理部の処理後の前記差分を基に、制御信号を生成し、前記制御信号を前記変換器に入力することにより、前記電流指令値に応じた大きさの電流を出力させるように、前記変換器の動作を制御する制御信号生成部と、
を有する電力変換装置。
【請求項2】
前記所定の値は、前記所定の範囲内の前記差分の値に設定される請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記所定の値は、ゼロである請求項2記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記所定の範囲は、前記変換器の前記蓄電装置側の定格電流の±1%の範囲内に設定される請求項1~3のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電源及び蓄電装置に接続され、電源で生成された電力を基に蓄電装置の充電を行うとともに、蓄電装置に蓄積された電力の電源側への放電を行う電力変換装置がある。電源は、例えば、太陽光発電装置、風力発電装置、燃料電池など、電力系統と連系して用いられる分散型電源である。電力変換装置は、例えば、上記のような分散型電源の発電量の多い時に蓄電装置の充電を行い、発電量の少ない時に蓄電装置の放電を行うことにより、電力系統の安定化を行う。
【0003】
電力変換装置は、電力の変換を行う変換器と、変換器の動作を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、電流指令値の入力を受けるとともに、変換器と蓄電装置との間に流れる電流の電流検出値の入力を受ける。そして、制御装置は、電流指令値と電流検出値との差分を基に、変換器と蓄電装置との間に流れる電流の大きさが、電流指令値に応じた大きさとなるように、変換器の動作を制御する。
【0004】
この際、電流検出値には、所定の検出誤差がある。このため、電流指令値がゼロ付近に設定されている際に、蓄電装置の充電方向と放電方向とが頻繁に切り替わってしまう場合がある。蓄電装置の充電方向と放電方向とが頻繁に切り替わると、蓄電装置の寿命を短縮させてしまう可能性がある。
【0005】
例えば、電流指令値に固定偏差値を加算することにより、ゼロ付近における放充電方向の切り替わりを抑制することも提案されている。しかしながら、この場合には、所望の電流指令値に対して偏差が常時に存在し、電流の制御性が低下してしまうことが懸念される。
【0006】
このため、蓄電装置の充電及び放電を行う電力変換装置においては、電流の高い制御性を実現しつつ、電流指令値のゼロ付近における充放電方向の意図しない切り替わりを抑制できるようにすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2015/040725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の実施形態は、蓄電装置の充電及び放電の制御を行う際に、電流の高い制御性を実現しつつ、電流指令値のゼロ付近における充放電方向の意図しない切り替わりを抑制できる電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態によれば、蓄電装置及び電源に接続され、前記電源で生成された電力を前記蓄電装置に応じた電力に変換し、変換後の電力を前記蓄電装置に供給することにより、前記電源で生成された電力を基に前記蓄電装置の充電を行うとともに、前記蓄電装置に蓄積された電力を前記電源側に応じた電力に変換し、変換後の電力を前記電源側に供給することにより、前記蓄電装置に蓄積された電力の前記電源側への放電を行う変換器と、前記変換器の動作を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記変換器と前記蓄電装置との間に流れる電流の電流指令値と、前記変換器と前記蓄電装置との間に流れる電流の電流検出値と、の入力を受け、前記電流指令値と前記電流検出値との差分を演算する減算器と、前記差分に対してデッドバンドを設定することにより、前記差分のゼロを含む所定の範囲の出力を所定の値にするデッドバンド処理部と、前記デッドバンド処理部の処理後の前記差分を基に、制御信号を生成し、前記制御信号を前記変換器に入力することにより、前記電流指令値に応じた大きさの電流を出力させるように、前記変換器の動作を制御する制御信号生成部と、を有する電力変換装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
蓄電装置の充電及び放電の制御を行う際に、電流の高い制御性を実現しつつ、電流指令値のゼロ付近における充放電方向の意図しない切り替わりを抑制できる電力変換装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る制御装置を模式的に表すブロック図である。
【
図3】参考の制御装置を模式的に表すブロック図である。
【0012】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0013】
図1は、実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図1に表したように、電力変換装置10は、変換器12と、制御装置14と、を備える。変換器12は、蓄電装置2及び電源4に接続される。変換器12は、電源4で生成された電力を蓄電装置2に応じた電力に変換し、変換後の電力を蓄電装置2に供給することにより、電源4で生成された電力を基に蓄電装置2の充電を行うとともに、蓄電装置2に蓄積された電力を電源4側に応じた電力に変換し、変換後の電力を電源4側に供給することにより、蓄電装置2に蓄積された電力の電源4側への放電を行う。
【0014】
蓄電装置2は、直流電力の蓄積を行う。蓄電装置2には、例えば、蓄電池やコンデンサなどが用いられる。但し、蓄電装置2は、上記に限ることなく、電力の蓄積を適切に行うことができる任意の装置でよい。
【0015】
電源4は、例えば、太陽光発電装置、風力発電装置、燃料電池などの分散型電源である。電源4は、例えば、電力系統6と連系して用いられる。変換器12は、例えば、蓄電装置2及び電源4に接続されるとともに、電源4側において電力系統6とさらに接続される。電源4の発電電力及び電力系統6の電力は、交流電力である。電源4は、発電した交流電力を電力系統6に供給する。
【0016】
電力変換装置10は、例えば、電源4の発電量の多い時、あるいは電力系統6の電圧上昇時に、電源4側の電力を基に、蓄電装置2の充電を行う。そして、電力変換装置10は、例えば、電源4の発電量の少ない時、あるいは電力系統6の電圧低下時に、蓄電装置2に蓄積された電力の電力系統6(電源4側)への放電を行う。これにより、電力変換装置10は、例えば、電力系統6の安定化を行う。電力変換装置10は、例えば、電力系統6の電圧や周波数の変動を抑制する。
【0017】
変換器12は、例えば、電源4側の交流電力を直流電力に変換して蓄電装置2に供給することにより、蓄電装置2の充電を行い、蓄電装置2の直流電力を交流電力に変換して電力系統6に供給することにより、蓄電装置2の放電を行う。
【0018】
但し、電源4側の電力は、交流電力に限ることなく、直流電力などでもよい。変換器12は、電源4側の直流電力を蓄電装置2に応じた別の直流電力に変換する構成などでもよい。電源4及び電力系統6の電力は、任意の電力でよい。変換器12の構成は、電源4側と蓄電装置2側との間の電力の変換を行うことができる任意の構成でよい。
【0019】
また、電源4及び変換器12は、必ずしも電力系統6と接続されていなくてもよい。電源4及び変換器12は、例えば、負荷回路と接続され、負荷回路に電力を供給する構成などでもよい。変換器12は、例えば、蓄電装置2に蓄積された電力を電源4に放電する構成などでもよい。電源4は、例えば、負荷に電力を供給して負荷の駆動を行うとともに、負荷の動作に応じた回生電力の回収を行うものなどでもよい。変換器12は、例えば、電源4で回収された回生電力を基に蓄電装置2の充電を行うとともに、蓄電装置2に蓄積された電力を負荷の駆動時に電源4に供給することにより、負荷の駆動にともなう電力の消費を補助する構成などでもよい。
【0020】
制御装置14は、変換器12の動作を制御する。換言すれば、制御装置14は、蓄電装置2の充電及び放電を制御する。
【0021】
図2は、実施形態に係る制御装置を模式的に表すブロック図である。
図2に表したように、制御装置14は、減算器20と、デッドバンド処理部22と、制御信号生成部24と、を有する。
【0022】
制御装置14は、変換器12と蓄電装置2との間に流れる電流の電流指令値と、変換器12と蓄電装置2との間に流れる電流の電流検出値と、の入力を受ける。電流指令値は、換言すれば、変換器12から蓄電装置2に対して供給すべき電流の大きさを表す指令値である。電流検出値は、換言すれば、変換器12と蓄電装置2との間に流れる現在の電流の大きさの検出結果を表す。
【0023】
制御装置14は、例えば、図示を省略した上位のコントローラから電流指令値の入力を受ける。制御装置14は、上位のコントローラと通信を行うことにより、上位のコントローラから電流指令値の入力を受ける。但し、電流指令値の入力方法は、これに限定されるものではない。電流指令値は、例えば、操作部の操作などに基づいて制御装置14に手動で入力してもよい。電流指令値の入力方法は、制御装置14に対して電流指令値を適切に入力可能な任意の方法でよい。
【0024】
電力変換装置10は、例えば、電流検出器16をさらに備える(
図1参照)。電流検出器16は、変換器12と蓄電装置2との間に流れる電流の大きさを検出し、検出結果を電流検出値として制御装置14に入力する。但し、電流検出値の入力方法は、これに限定されるものではない。電流検出値は、例えば、上位のコントローラなどから制御装置14に入力してもよい。電流検出値の入力方法は、制御装置14に対して電流検出値を適切に入力可能な任意の方法でよい。電力変換装置10は、必ずしも電流検出器16を備えていなくてもよい。
【0025】
減算器20には、制御装置14に入力された電流指令値と電流検出値とが入力される。減算器20は、入力された電流指令値と電流検出値との差分を演算し、演算した差分をデッドバンド処理部22に入力する。
【0026】
デッドバンド処理部22は、減算器20から入力された差分に対してデッドバンド(不感帯)を設定する処理を行う。デッドバンド処理部22は、減算器20から入力された差分に対してデッドバンドを設定することにより、入力された差分のゼロを含む所定の範囲の出力を所定の値にする。
【0027】
所定の範囲は、より詳しくは、差分のゼロから正側の上限値までの範囲、及び差分のゼロから負側の下限値までの範囲である。換言すれば、所定の範囲は、上限値と下限値との間に差分のゼロが存在するように設定される。
【0028】
所定の範囲は、例えば、変換器12の蓄電装置2側の定格電流の±1%程度の範囲内に設定される。所定の範囲は、例えば、変換器12の蓄電装置2側の定格電流(最大電流)が1000Aである場合に、差分の±10Aの範囲に設定される。変換器12の蓄電装置2側の定格電流が1000Aである場合、所定の範囲は、差分の±5A程度の範囲に設定することがより好適である。デッドバンド処理部22は、例えば、差分の±5Aの範囲の出力を所定の値にする。但し、所定の範囲は、上記に限ることなく、差分のゼロを含む所定の範囲でよい。また、所定の範囲の上限値の絶対値及び下限値の絶対値は、必ずしも同じでなくてもよい。
【0029】
所定の値は、所定の範囲内の差分の値に設定される。例えば、所定の範囲が±5Aである場合、所定の値は、±5Aの間の任意の値に設定される。所定の値は、ゼロに近いことが好ましい。所定の値は、例えば、所定の範囲の上限値又は下限値の絶対値の10%以下に設定されることが好ましい。例えば、所定の範囲の上限値が+5Aである場合には、所定の値は、+0.5A~-0.5Aの範囲に設定されることが好ましい。そして、所定の値は、ゼロとすることが最も好適である。デッドバンド処理部22は、例えば、差分の±5Aの範囲の出力をゼロとする。
【0030】
また、所定の値(デッドバンド処理部22の所定の範囲の出力)は、必ずしも一定でなくてもよい。所定の値は、例えば、差分の元の変化よりも小さい範囲で僅かに変化してもよい。例えば、所定の範囲が±5Aである場合、所定の値は、±0.1A程度などの僅かな範囲で変化させてもよい。但し、所定の値は、所定の範囲の全体にわたって一定の値とすることが好ましい。所定の値は、所定の範囲の全体にわたってゼロとすることが最も好適である。
【0031】
デッドバンド処理部22は、例えば、減算器20から入力された差分が所定の範囲よりも大きい場合、又は減算器20から入力された差分が所定の範囲よりも小さい場合には、減算器20から入力された差分をそのまま出力する。デッドバンド処理部22は、例えば、減算器20から入力された差分が所定の範囲よりも大きい場合、又は減算器20から入力された差分が所定の範囲よりも小さい場合には、減算器20から入力された差分に対して所定の係数を乗算して出力したり、減算器20から入力された差分に対して所定値を加算又は減算して出力したりしてもよい。デッドバンド処理部22は、減算器20から入力された差分に対して上記のようにデッドバンドを設定する処理を行い、処理後の差分を制御信号生成部24に入力する。
【0032】
制御信号生成部24は、デッドバンド処理部22から入力された処理後の差分を基に、電流指令値に応じた大きさの電流を変換器12から出力させるように変換器12の動作を制御するための制御信号を生成し、生成した制御信号を変換器12に入力する。これにより、制御信号生成部24(制御装置14)は、電流指令値に応じた大きさの電流を出力させるように、変換器12の動作を制御する。制御信号生成部24は、換言すれば、入力された差分がゼロになるように、変換器12の動作を制御する。
【0033】
変換器12は、例えば、複数のスイッチング素子を有し、複数のスイッチング素子のスイッチングにより、電力の変換を行う。制御信号生成部24は、例えば、変換器12の複数のスイッチング素子のそれぞれに対応する複数の制御信号を生成し、複数の制御信号を基に、複数のスイッチング素子のそれぞれのスイッチングを制御することにより、変換器12による電力の変換を制御する。
【0034】
制御信号生成部24は、例えば、電流制御器24aと、PWM制御器24bと、を有する。電流制御器24aは、デッドバンド処理部22から入力された処理後の差分をゼロとするために変換器12から出力する電圧の大きさを表す電圧信号を演算する。電流制御器24aは、電流信号の差分を電圧信号に変換する。電流制御器24aは、例えば、PI制御により、差分から電圧信号を演算する。
【0035】
PWM制御器24bは、電流制御器24aで演算された電圧信号に応じた大きさの電圧を変換器12に出力させるためのPWM信号を演算し、演算したPWM信号を制御信号として変換器12に入力する。PWM信号は、変換器12に設けられた複数のスイッチング素子のオン時間及びオフ時間のデューティ比を表す信号である。
【0036】
これにより、制御信号生成部24は、電流指令値に応じた大きさの電流を出力させるように、変換器12の動作を制御する。但し、制御信号生成部24の構成は、上記に限ることなく、変換器12の動作を制御するための制御信号を適切に生成可能な任意の構成でよい。制御信号生成部24の構成は、変換器12の構成などに応じて適宜設定すればよい。
【0037】
図3は、参考の制御装置を模式的に表すブロック図である。
図3に表したように、参考の制御装置14aは、加算器30と、減算器32と、制御信号生成部34と、を有する。加算器30には、電流指令値と固定偏差値とが入力される。加算器30は、電流指令値に固定偏差値を加算し、加算後の電流指令値を減算器32に入力する。
【0038】
減算器32には、加算器30からの電流指令値が入力されるとともに、電流検出値が入力される。減算器32は、
図2に関して説明した減算器20と同様に、入力された電流指令値と電流検出値との差分を演算し、演算した差分を制御信号生成部34に入力する。
【0039】
制御信号生成部34は、例えば、電流制御器34aと、PWM制御器34bと、を有する。制御信号生成部34は、
図2に関して説明した制御信号生成部24と同様に、減算器32から入力された差分を基に、電流指令値に応じた大きさの電流を変換器12から出力させるように変換器12の動作を制御するための制御信号を生成し、生成した制御信号を変換器12に入力することにより、電流指令値に応じた大きさの電流を出力させるように、変換器12の動作を制御する。
【0040】
例えば、上位のコントローラなどから入力された電流指令値を減算器32に入力し、減算器32で演算された差分を基に、制御信号の生成を行うことも考えられる。しかしながら、電流検出値には、所定の検出誤差がある。このため、電流指令値を直接的に減算器32に入力した場合には、電流指令値がゼロ付近に設定されている際に、差分の符号が、検出誤差に応じて正側及び負側に頻繁に切り替わり、これにともなって蓄電装置2の充電方向と放電方向とが頻繁に切り替わってしまう可能性がある。
【0041】
このため、制御装置14aでは、加算器30により、電流指令値に固定偏差値を加算している。これにより、電流指令値を固定偏差値の分だけシフトさせ、電流指令値のゼロ付近における放充電方向の切り替わりを抑制することができる。
【0042】
一方で、固定偏差値を加算する方法では、変換器12の出力電流が、電流指令値と固定偏差値との合計値に追従するようになるため、所望の電流指令値に対して変換器12の出力電流に偏差が常時に存在し、電流の制御性が低下してしまうことが懸念される。
【0043】
これに対し、本実施形態に係る電力変換装置10では、制御装置14が、デッドバンド処理部22を有し、減算器20から入力された差分に対してデッドバンドを設定することにより、入力された差分のゼロを含む所定の範囲の出力を所定の値にする。これにより、電流指令値がゼロ付近に設定され、減算器20から出力される差分の符号が、電流検出値の検出誤差に応じて正側及び負側に頻繁に切り替わったとしても、デッドバンド処理部22の出力を所定の値とし、蓄電装置2の充電方向と放電方向とが頻繁に切り替わってしまうことを抑制することができる。そして、これにより、蓄電装置2の充電方向と放電方向とが頻繁に切り替わり、蓄電装置2の寿命が短くなってしまうことを抑制することができる。
【0044】
デッドバンド処理部22は、例えば、所定の範囲の出力をゼロとする。これにより、蓄電装置2の充電方向と放電方向とが頻繁に切り替わってしまうことをより適切に抑制することができる。
【0045】
また、デッドバンド処理部22を設ける構成では、固定偏差値を加算する方法と比べて、電流の制御性が低下してしまうことを抑制することができる。従って、本実施形態に係る電力変換装置10では、電流の高い制御性を実現しつつ、電流指令値のゼロ付近における充放電方向の意図しない切り替わりを抑制することができる。
【0046】
デッドバンド処理部22は、例えば、減算器20から入力された差分が所定の範囲よりも大きい場合、又は減算器20から入力された差分が所定の範囲よりも小さい場合には、減算器20から入力された差分をそのまま出力する。これにより、電流の制御性が低下してしまうことをより適切に抑制することができる。
【0047】
デッドバンド処理部22の所定の範囲は、例えば、変換器12の蓄電装置2側の定格電流の±1%の範囲内に設定される。これにより、例えば、デッドバンドが過度に広い範囲に設定されることにより、電流の制御性が低下してしまうことを抑制することができる。電力変換装置10において、より高い電流の制御性を実現することができる。なお、所定の範囲は、上記に限ることなく、電流の高い制御性を実現しつつ、電流指令値のゼロ付近における充放電方向の意図しない切り替わりを適切に抑制可能な任意の範囲でよい。所定の範囲は、変換器12の定格電流や電流検出値の検出誤差の大きさの具合などに応じて適宜設定すればよい。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
2…蓄電装置、 4…電源、 6…電力系統、 10…電力変換装置、 12…変換器、 14、14a…制御装置、 16…電流検出器、 20…減算器、 22…デッドバンド処理部、 24…制御信号生成部、 30…加算器、 32…減算器、 34…制御信号生成部