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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111608
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】熱伝導率測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/18 20060101AFI20240809BHJP
【FI】
G01N25/18 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016219
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000130259
【氏名又は名称】株式会社コベルコ科研
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(74)【代理人】
【識別番号】100208708
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 健志
(74)【代理人】
【識別番号】100215371
【弁理士】
【氏名又は名称】古茂田 道夫
(74)【代理人】
【識別番号】100187997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 厳輝
(72)【発明者】
【氏名】金築 俊介
【テーマコード(参考)】
2G040
【Fターム(参考)】
2G040AB09
2G040BA08
2G040BA18
2G040BA25
2G040BA29
2G040CA02
2G040DA02
2G040DA14
2G040DA22
2G040EA02
2G040EA11
(57)【要約】
【課題】本発明は、低露点環境下で容易に測定試料の熱伝導率を測定できる熱伝導率測定方法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の一態様に係る熱伝導率測定方法は、内部が周囲の雰囲気より低露点であるドライチャンバーと、少なくともセンサ部分が上記ドライチャンバー内に配設されているホットディスクセンサとを用い、上記ドライチャンバーの内部に測定試料を配置する配置工程と、上記センサ部分を上記測定試料に接触させる接触工程と、上記配置工程及び上記接触工程後に、上記測定試料の熱伝導率を測定する測定工程とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が周囲の雰囲気より低露点であるドライチャンバーと、少なくともセンサ部分が上記ドライチャンバー内に配設されているホットディスクセンサとを用い、
上記ドライチャンバーの内部に測定試料を配置する配置工程と、
上記センサ部分を上記測定試料に接触させる接触工程と、
上記配置工程及び上記接触工程後に、上記測定試料の熱伝導率を測定する測定工程と
を備える熱伝導率測定方法。
【請求項2】
上記センサ部分が、金属箔及び絶縁フィルムを有し、
上記金属箔及び上記絶縁フィルムが、上記ドライチャンバーの内部の露点で変質しない材質で構成されている請求項1に記載の熱伝導率測定方法。
【請求項3】
上記配置工程前に、上記ドライチャンバーの内部を乾燥空気又は不活性ガスで充填した状態で所定時間経過させる準備工程を備える請求項1又は請求項2に記載の熱伝導率測定方法。
【請求項4】
上記ドライチャンバーの内部の露点が、-30℃以下である請求項1又は請求項2に記載の熱伝導率測定方法。
【請求項5】
上記測定試料が、露点-30℃超の環境下で変質する特性を有する粉末又は粉末加圧成型体である請求項4に記載の熱伝導率測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導率測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
材料の物性として熱伝導率が測定される場合がある。熱伝導率の測定方法としては、レーザフラッシュ法を用いた方法が広く知られている(例えば特開平8-261967号公報参照)。
【0003】
レーザフラッシュ法を用いた熱伝導率測定方法では、測定試料(材料)の表面側からレーザフラッシュを照射して得られる裏面側の温度応答から、熱拡散率を求め、これとは別に測定されている測定試料の熱容量を用いて熱伝導率を決定する。レーザフラッシュ法は、固体材料に限られるものの、試料は小型でよい、容易に高温測定を行うことができるといった特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-261967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
測定対象となり得る測定試料の中には露点が高い環境下に置かれると、その水分により変質を生じるものもある。一方、レーザフラッシュ法による測定では、測定試料に照射するレーザ機器、レーザ機器から測定試料の表面側に照射されるレーザが通過する光路、測定試料の裏面側で測定試料の温度応答を測定する計測器が連続的、一体的に配置されている必要がある。つまり、レーザ機器と測定試料との間は直線光路で結ばれている必要があり、計測器は測定試料の裏面温度の過渡応答が遅延なく測定できるよう測定試料の裏面近傍に配置される必要がある。このため、測定装置は大掛かりなものとなり、容易に低露点環境下で測定することができない。
【0006】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、低露点環境下で容易に測定試料の熱伝導率を測定できる熱伝導率測定方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る熱伝導率測定方法は、内部が周囲の雰囲気より低露点であるドライチャンバーと、少なくともセンサ部分が上記ドライチャンバー内に配設されているホットディスクセンサとを用い、上記ドライチャンバーの内部に測定試料を配置する配置工程と、上記センサ部分を上記測定試料に接触させる接触工程と、上記配置工程及び上記接触工程後に、上記測定試料の熱伝導率を測定する測定工程とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の熱伝導率測定方法は、低露点環境下で容易に測定試料の熱伝導率を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る熱伝導率測定方法の手順を示すフロー図である。
図2図2は、図1の熱伝導率測定方法で用いる装置構成を示す模式的構成図である。
図3図3は、図2のホットディスクセンサのセンサ部分の構成を示す模式的平面図である。
図4図4は、図3のA-A線での模式的断面図である。
図5図5は、測定試料が粉末である場合の接触工程を説明する模式図である。
図6図6は、測定試料が粉末加圧成型体である場合の接触工程を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本発明の実施形態の説明]
本発明の一態様に係る熱伝導率測定方法は、内部が周囲の雰囲気より低露点であるドライチャンバーと、少なくともセンサ部分が上記ドライチャンバー内に配設されているホットディスクセンサとを用い、上記ドライチャンバーの内部に測定試料を配置する配置工程と、上記センサ部分を上記測定試料に接触させる接触工程と、上記配置工程及び上記接触工程後に、上記測定試料の熱伝導率を測定する測定工程とを備える。
【0011】
当該熱伝導率測定方法は、ホットディスクセンサを用いる。ホットディスクセンサは、そのセンサ部分が測定試料と接触していれば熱伝導率を測定できるので、上記センサ部分をドライチャンバー内に配設しておくことで、上記測定試料の熱伝導率を上記ドライチャンバー内で測定することが可能となる。上記ドライチャンバーは、その内部が低露点環境であるので、上記測定試料を低露点環境下に保ったまま測定を行うことができる。従って、上記測定試料の水分による変質を容易に抑止することができる。
【0012】
上記センサ部分が、金属箔及び絶縁フィルムを有し、上記金属箔及び上記絶縁フィルムが、上記ドライチャンバーの内部の露点で変質しない材質で構成されているとよい。このように上記金属箔及び上記絶縁フィルムを、上記ドライチャンバーの内部の露点で変質しない材質で構成することで、安定して熱伝導率の測定を行うことができる。
【0013】
上記配置工程前に、上記ドライチャンバーの内部を乾燥空気又は不活性ガスで充填した状態で所定時間経過させる準備工程を備えるとよい。上記センサ部分は、上記測定試料に直接接触する部位である。上記センサ部分に水分の付着があると、上記センサ部分が上記測定試料に接触した際に、上記水分が上記測定試料の変質を誘発するおそれがある。これに対し、上記準備工程を行うことで、上記ドライチャンバー内に配設されている上記センサ部分に付着している水分を除去することができるので、より確実に上記測定試料の変質を抑止することができる。
【0014】
上記ドライチャンバーの内部の露点が、-30℃以下であるとよい。このように上記ドライチャンバーの内部の露点を-30℃以下とすることで、より確実に上記測定試料の変質を抑止することができる。
【0015】
上記測定試料が、露点-30℃超の環境下で変質する特性を有する粉末又は粉末加圧成型体であるとよい。当該熱伝導率測定方法は、露点-30℃超の環境下で変質する特性を有する粉末又は粉末加圧成型体である測定試料に、好適に用いることができる。
【0016】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の一実施形態に係る熱伝導率測定方法について、適宜図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1に示す熱伝導率測定方法は、準備工程S1と、配置工程S2と、接触工程S3と、測定工程S4とをこの順に備える。
【0018】
当該熱伝導率測定方法では、図2に示すようにドライチャンバー1と、ホットディスクセンサ2とを用い、測定試料3の熱伝導率を測定する。
【0019】
<ドライチャンバー>
ドライチャンバー1は、内部が周囲の雰囲気より低露点である。ドライチャンバー1は、周囲に囲いが設けられ、その内部を乾燥空気又は不活性ガスで充填できるようにガス供給装置(不図示)が備え付けられている。ドライチャンバー1では、内部に乾燥空気又は不活性ガスを供給し充填することで、その内部に低露点雰囲気を実現することができる。なお、上記ガス供給から供給されるガスの露点は一般に-70℃よりも低く、例えば高純度Arガスボンベでは、露点は-70℃以下とされている。
【0020】
ドライチャンバー1の内部の露点は、-30℃以下であることが好ましく、-50℃以下であることがより好ましく、-60℃以下であることがさらに好ましい。特にドライチャンバー1の内部の露点を-60℃以下とすることで、より確実に測定試料3の変質を抑止することができる。
【0021】
<ホットディスクセンサ>
ホットディスクセンサ2は、非定常法により測定試料3の熱伝導率を直接測定することができるセンサである。ホットディスクセンサ2は、センサ部分21と、測定部分22とから構成される。
【0022】
(センサ部分)
センサ部分21は、図3及び図4に示すように、金属箔23と、金属箔23を被覆する絶縁フィルム24とを有する。
【0023】
金属箔23は、先端に二重らせん構造23aを有し、この二重らせん構造23a部分が絶縁フィルム24を挟んで測定試料3に接触し、熱伝導率の計測が行われる。二重らせん構造23aの半径としては、特に限定されるものではないが、測定安定性の観点から例えば0.5mm以上30mm以下程度とすることができる。
【0024】
また、金属箔23の末端(二重らせん構造23aが位置する先端とは反対側の端部)に、電極端子23bを有する。この電極端子23bは、後述する測定部分22との電気的接続に用いられる。つまり、電極端子23bと測定部分22との間には配線25が接続される(図2参照)。
【0025】
金属箔23は、比較的電気抵抗が高く、通電により発熱するものが用いられる。また、金属箔23としては、周囲の温度による電気抵抗の変化率が高いものが好ましい。
【0026】
絶縁フィルム24は、金属箔23を測定試料3から電気的に絶縁する。
【0027】
絶縁フィルム24の厚さは、金属箔23と測定試料3との絶縁性が確保できる厚さとされ、例えば20μm以上50μm以下とすることができる。
【0028】
金属箔23及び絶縁フィルム24は、ドライチャンバー1の内部の露点で変質しない材質で構成されているとよい。このように金属箔23及び絶縁フィルム24を、ドライチャンバー1の内部の露点で変質しない材質で構成することで、安定して熱伝導率の測定を行うことができる。
【0029】
具体的には、金属箔23の材質としては、Ni、Mo等を挙げることができる。また、絶縁フィルム24の材質としては、ポリテトラフルオロエチレン、マイカ、ポリイミド等を挙げることができる。中でも、金属箔23の材質がNiであり、絶縁フィルム24の材質がポリイミドであることが好ましい。
【0030】
センサ部分21は、測定時の熱源と温度センサの両方の役割を担っている。つまり、一定の電力をセンサ部分21に供給して、二重らせん構造23a部分に熱を発生させ、同時にセンサ部分21の電圧変化を測定する。電流と電圧変化とからセンサ部分21の電気抵抗が分かり、その電気抵抗の変化から温度変化を測定することができる。この温度変化は二重らせん構造23aと、センサ部分21が接触している測定試料3の熱拡散率とによって決まるから、電気抵抗の時間変化率から測定試料3の熱伝導率を求めることができる。
【0031】
(測定部分)
測定部分22は、センサ部分21への電力供給を制御し、センサ部分21の電流と電圧変化とから測定試料3の熱伝導率を求める。測定部分22は、センサ部分21に電力を供給するソースメータや、センサ部分21の電流と電圧変化とから熱伝導率を算出する解析用コンピュータ等で構成することができる。
【0032】
測定部分22は、センサ部分21への、あるいはセンサ部分21からの電気信号を必要とするのみであるので、上述のようにセンサ部分21と測定部分22との間は電気的に配線25で接続されていればよい。この場合、測定部分22は、センサ部分21の近傍で特定の位置関係に配置されることを必要としない。つまり、測定部分22は、ドライチャンバー1の内部に配設されることを必要とはせず、図2のように、ドライチャンバー1の外部に配設することができる。従って、少なくともセンサ部分21がドライチャンバー1内に配設されていれば、測定が可能である。
【0033】
当該熱伝導率測定方法では、ドライチャンバー1の内部は、空間の広さも限られることから、センサ部分21のみをドライチャンバー1内に配設して測定が可能であるホットディスクセンサ2を用いることで、ドライチャンバー1内部で測定試料3の熱伝導率の測定を可能としている。
【0034】
<測定試料>
測定試料3は、当該熱伝導率測定方法における熱伝導率の測定対象である。
【0035】
当該熱伝導率測定方法では、測定にホットディスクセンサ2を用いるので、測定試料3として固体に加え、液体、粉体などを測定することが可能であり、センサ部分21が接触できる限り、その形状も問われず、湾曲材等であってもよい。
【0036】
測定試料3は、露点-60℃超の環境下で変質する特性を有する粉末又は粉末加圧成型体であることが好ましい。当該熱伝導率測定方法は、ドライチャンバー1を用いることから、露点-60℃超の環境下で変質する特性を有する粉末又は粉末加圧成型体である場合に、好適に用いることができる。
【0037】
また、測定試料3としては、リチウムを含む電池の原料が好ましく、リチウムイオン電池の原料が特に好ましい。リチウムイオン電池の原料は、特に露点-60℃超の環境下で変質し易い特性を有しており、当該熱伝導率測定方法は、リチウムイオン電池の原料の熱伝導率測定に、特に好適に用いることができる。このようなリチウムイオン電池の原料としては、正極材料のうちNi配合比の高い系、例えばニッケル・コバルト・マンガン酸リチウム(NCM)系の正極材料、ニッケル・コバルト・アルミニウム酸リチウム(NCA)系の正極材料などを挙げることができる。
【0038】
なお、当該熱伝導率測定方法における測定試料3の大きさとしては、円柱近似で直径5mm以上高さ2mm以上程度とされる。なお、直径及び高さの上限は、特に限定されないが、例えば直径は15mm以下、高さは5mm以下程度とできる。
【0039】
以下、当該熱伝導率測定方法の各工程について説明する。当該熱伝導率測定方法は、室温(15℃以上35℃以下、好ましくは20℃以上30℃以下)で行うことができる。なお、加温あるいは冷却された状態で行うことを妨げるものではない。
【0040】
<準備工程>
準備工程S1では、ドライチャンバー1の内部を乾燥空気又は不活性ガスで充填した状態で所定時間経過させる。準備工程S1は後述する配置工程S2の前に実施することが好ましい。
【0041】
ホットディスクセンサ2のセンサ部分21は、測定試料3に直接接触する部位である。センサ部分21に水分の付着があると、センサ部分21が測定試料3に接触した際に、上記水分が測定試料3の変質を誘発するおそれがある。これに対し、準備工程S1を行うことで、ドライチャンバー1内に配設されているセンサ部分21に付着している水分を除去することができるので、より確実に測定試料3の変質を抑止することができる。なお、本明細書において「水分」には、水蒸気も含まれる。
【0042】
上記所定時間の下限としては、0.3時間が好ましく、0.5時間がより好ましい。一方、上記所定時間の上限としては、1.5時間が好ましく、1.0時間がより好ましい。上記所定時間が上記下限未満であると、準備工程S1による測定試料3の変質抑止効果が不十分となるおそれがある。逆に、上記所定時間が上記上限を超えると、変質抑止効果の向上に比して時間の増加量が大きく、測定効率の低下の影響が大きくなり過ぎるおそれがある。
【0043】
<配置工程>
配置工程S2では、ドライチャンバー1の内部に測定試料3を配置する。
【0044】
具体的には、測定試料3を低露点環境下に保持しつつ、内部が周囲の雰囲気より低露点であるドライチャンバー1の内部に移動させる。測定試料3を低露点環境下に保持する方法としては、例えば測定試料3を、内部が低露点環境となっているAlラミネートパックに入れて移動させる方法が挙げられる。この場合、上記Alラミネートパックに入れた状態で、上記Alラミネートパックごと測定試料3をドライチャンバー1の内部に移動させ、低露点環境となっているドライチャンバー1の内部で測定試料3を上記Alラミネートパックから取り出し、ドライチャンバー1内部の所定の場所に測定試料3を配置するとよい。このように測定試料3を配置することで、露点の高い状態に晒されることを抑止することができる。
【0045】
<接触工程>
接触工程S3では、センサ部分21を測定試料3に接触させる。
【0046】
測定試料3が粉体31である場合(図5参照)、粉体31は、ケース32に詰めて測定試料3とされる。この場合、二重らせん構造23aが粉体31の中に埋もれるように、センサ部分21を粉体31の内部に差し込むことで、測定試料3に接触させることができる。なお、ケース32の形状としては、粉体31を収容可能である限り特に限定されないが、例えば円筒状とすることができる。
【0047】
測定試料3が粉末加圧成型体33である場合(図6参照)、粉末加圧成型体33は、例えば略同形の2つの部分(第1部分33a及び第2部分33b)に分割され、第1部分33aと第2部分33bとの間に二重らせん構造23aが挟み込まれるように、センサ部分21を接触させる。
【0048】
測定試料3が他の形態である場合も同様に、センサ部分21の二重らせん構造23a全体を測定試料3に接触させるとよい。
【0049】
<測定工程>
測定工程S4では、配置工程S2及び接触工程S3後に、測定試料3の熱伝導率を測定する。
【0050】
上述したように、まず一定の電力をセンサ部分21に供給して、二重らせん構造23a部分に熱を発生させ、同時にセンサ部分21の電圧変化を測定する。次に電流と電圧変化とからセンサ部分21の電気抵抗の変化、ひいては温度変化を測定し、その結果から測定試料3の熱伝導率を求める。これらの制御は測定部分22により行うことができる。
【0051】
<利点>
当該熱伝導率測定方法は、ホットディスクセンサ2を用いる。ホットディスクセンサ2は、そのセンサ部分21が測定試料3と接触していれば熱伝導率を測定できるので、センサ部分21をドライチャンバー1内に配設しておくことで、測定試料3の熱伝導率をドライチャンバー1内で測定することが可能となる。ドライチャンバー1は、その内部が低露点環境であるので、測定試料3を低露点環境下に保ったまま測定を行うことができる。従って、測定試料3の水分による変質を容易に抑止することができる。
【0052】
[その他の実施形態]
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0053】
上記実施形態では、準備工程を備える場合を説明したが、準備工程は必須の構成要素ではなく、省略可能である。
【0054】
上記実施形態では、ホットディスクセンサのセンサ部分のみがドライチャンバー内に配設される場合を説明したが、少なくともセンサ部分がドライチャンバー内に配設されている限り、ホットディスクセンサの他の部分がドライチャンバー内に配設されることを妨げるものではない。
【0055】
上記実施形態では、配置工程、接触工程及び測定工程をこの順に行う場合を説明したが、配置工程と接触工程との順序は問われず、接触工程、配置工程、測定工程の順に行うことも可能である。具体的には、測定試料とセンサとを接触させた後に、ドライチャンバー内部の所定の位置に測定試料を配置してもよい。
【実施例0056】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0057】
測定試料として、粉末加圧成型体である正極合剤ペレット(No.1)、負極合剤ペレット(No.2)及び固体電解質ペレット(No.3)を準備した。
【0058】
上記3つの測定試料について、上述した当該熱伝導率測定方法に従って熱伝導率を測定した。測定結果を表1に示す。なお、測定温度は表1に示すとおり室温である。また、表1において「露点」はドライチャンバー内部の露点を示す。
【0059】
【表1】
【0060】
熱伝導率の測定においていずれの測定試料にも変質は認められず、熱伝導率を短時間かつ容易に測定することができた。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の熱伝導率測定方法は、低露点環境下で容易に測定試料の熱伝導率を測定することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 ドライチャンバー
2 ホットディスクセンサ
21 センサ部分
22 測定部分
23 金属箔
23a 二重らせん構造
23b 電極端子
24 絶縁フィルム
25 配線
3 測定試料
31 粉体
32 ケース
33 粉末加圧成型体
33a 第1部分
33b 第2部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6