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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111620
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240809BHJP
【FI】
B41J2/01 125
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016235
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 博樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130535
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 明
(74)【代理人】
【識別番号】100183025
【弁理士】
【氏名又は名称】大角 孝一
(72)【発明者】
【氏名】山崎 慎也
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056FA10
2C056HA46
2C056HA47
(57)【要約】
【課題】乾燥ムラを抑制しつつ媒体に吐出されたインクを乾燥させる。
【解決手段】媒体Mを搬送する搬送部8と、搬送部8により搬送される媒体Mの画像形成面M1に対してインクを吐出する印刷部5と、印刷部5よりも媒体Mの搬送方向Aの下流に配置され、印刷部5から画像形成面M1に吐出されたインクを乾燥させる乾燥部10と、を備え、乾燥部10は、媒体Mを支持する支持部3Cと、気流Fを発生させる気流発生部12と、搬送部8により搬送される媒体Mの画像形成面M1と対向する位置に配置される気流Fの吹き出し口14と、吹き出し口14から吹き出される気流Fの向かう方向である送風方向を決定する気流方向決定部13と、を有し、送風方向は、吹き出し口14と画像形成面M1との対向方向Oに対して搬送方向Aから見て傾斜している印刷装置1。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送される前記媒体の画像形成面に対してインクを吐出する印刷部と、
前記印刷部よりも前記媒体の搬送方向の下流に配置され、前記印刷部から前記画像形成面に吐出された前記インクを乾燥させる乾燥部と、
を備え、
前記乾燥部は、前記媒体を支持する支持部と、気流を発生させる気流発生部と、前記搬送部により搬送される前記媒体の前記画像形成面と対向する位置に配置される前記気流の吹き出し口と、前記吹き出し口から吹き出される前記気流の向かう方向である送風方向を決定する気流方向決定部と、を有し、
前記送風方向は、前記吹き出し口と前記画像形成面との対向方向に対して前記搬送方向から見て傾斜していることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載された印刷装置において、
前記気流発生部は、前記搬送方向と交差する方向に複数のファンが配置されていることを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項2に記載された印刷装置において、
前記吹き出し口及び前記気流方向決定部は、複数の前記ファンごとに設けられていることを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載された印刷装置において、
前記送風方向は、前記対向方向から見て前記搬送方向における上流側から下流側に傾斜していることを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項3に記載された印刷装置において、
前記送風方向は、前記対向方向から見て前記搬送方向における上流側から下流側に傾斜し、
前記送風方向における上流側の前記気流方向決定部ほど前記搬送方向における上流側に配置されていることを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1項に記載された印刷装置において、
前記媒体として前記搬送方向と交差する幅方向の長さが異なる第1媒体と第2媒体とを使用可能であり、
前記第1媒体と前記第2媒体とで前記幅方向における一方側の位置を同じ位置に位置決めして前記媒体を搬送し、
前記送風方向は、前記搬送方向から見て前記幅方向における前記一方側から他方側に向かうように傾斜していることを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか1項に記載された印刷装置において、
前記画像形成面とは反対側から前記媒体を加熱する媒体加熱部を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項8】
請求項1から3のいずれか1項に記載された印刷装置において、
前記気流を加熱する気流加熱部を備えることを特徴とする印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な印刷装置が使用されている。このうち、媒体に吐出されたインクを媒体に気流を吹き付けることによって乾燥させる乾燥部を備える印刷装置がある。例えば、特許文献1には、媒体に吐出されたインクを乾燥するために、媒体に対して送風を行う送風装置を備えた記録装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-37143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の記録装置のような、媒体に吐出されたインクを媒体に気流を吹き付けることによって乾燥させる乾燥部を備える印刷装置においては、媒体上で風速の分布にムラができ、媒体に吐出されたインクの乾燥ムラが生じる場合があった。媒体に吐出されたインクの乾燥ムラが顕著になると、印刷品質が低下する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の印刷装置は、媒体を搬送する搬送部と、前記搬送部により搬送される前記媒体の画像形成面に対してインクを吐出する印刷部と、前記印刷部よりも前記媒体の搬送方向の下流に配置され、前記印刷部から前記画像形成面に吐出された前記インクを乾燥させる乾燥部と、を備え、前記乾燥部は、前記媒体を支持する支持部と、気流を発生させる気流発生部と、前記搬送部により搬送される前記媒体の前記画像形成面と対向する位置に配置される前記気流の吹き出し口と、前記吹き出し口から吹き出される前記気流の向かう方向である送風方向を決定する気流方向決定部と、を有し、前記送風方向は、前記吹き出し口と前記画像形成面との対向方向に対して前記搬送方向から見て傾斜していることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の一実施例に係る印刷装置の概略図。
図2図1の印刷装置の乾燥部を表す斜視図。
図3図1の印刷装置の乾燥部を底面側から見た図。
図4図2及び図3の乾燥部の気流方向決定部を表す斜視図。
図5図4とは異なる角度から見た図2及び図3の乾燥部の気流方向決定部を表す斜視図。
図6図2及び図3の乾燥部の気流発生部による気流の流れを表す概略図であって、吹き出し口と画像形成面との対向方向において乾燥部の上面側から見た透視図。
図7図2及び図3の乾燥部の気流発生部による気流の流れを表す概略図であって、搬送方向の下流側から見た図。
図8図1の印刷装置とは異なる実施例の印刷装置における乾燥部の気流発生部による気流の流れを表す概略図であって、吹き出し口と画像形成面との対向方向において乾燥部の上面側から見た透視図。
図9図1の印刷装置とは異なる実施例の印刷装置における乾燥部の気流発生部による気流の流れを表す概略図であって、搬送方向の下流側から見た図。
図10】参考例の印刷装置における乾燥部の気流発生部による気流の流れを表す概略図であって、吹き出し口と画像形成面との対向方向において乾燥部の上面側から見た透視図。
図11】参考例の印刷装置における乾燥部の気流発生部による気流の流れを表す概略図であって、搬送方向の下流側から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
最初に、本発明について概略的に説明する。
上記課題を解決するための本発明の第1の態様の印刷装置は、媒体を搬送する搬送部と、前記搬送部により搬送される前記媒体の画像形成面に対してインクを吐出する印刷部と、前記印刷部よりも前記媒体の搬送方向の下流に配置され、前記印刷部から前記画像形成面に吐出された前記インクを乾燥させる乾燥部と、を備え、前記乾燥部は、前記媒体を支持する支持部と、気流を発生させる気流発生部と、前記搬送部により搬送される前記媒体の前記画像形成面と対向する位置に配置される前記気流の吹き出し口と、前記吹き出し口から吹き出される前記気流の向かう方向である送風方向を決定する気流方向決定部と、を有し、前記送風方向は、前記吹き出し口と前記画像形成面との対向方向に対して前記搬送方向から見て傾斜していることを特徴とする。
【0008】
送風方向が吹き出し口と画像形成面との対向方向に対して搬送方向から見て垂直であると、吹き出し口に対向する領域と吹き出し口に対向しない領域とで風速に大きな違いが生じ、風速の分布にムラが生じる。しかしながら、本態様によれば、送風方向を決定する気流方向決定部を有し、送風方向は吹き出し口と画像形成面との対向方向に対して搬送方向から見て傾斜している。このような構成とすることで、吹き出し口に対向する領域と吹き出し口に対向しない領域とで風速に大きな違いが生じることを抑制することができる。したがって、乾燥ムラを抑制しつつ媒体に吐出されたインクを乾燥させることができる。
【0009】
本発明の第2の態様の印刷装置は、第1の態様に従属する態様であって、前記気流発生部は、前記搬送方向と交差する方向に複数のファンが配置されていることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、気流発生部は搬送方向と交差する方向に複数のファンが配置されている。このため、複数のファンで効率よくインクを乾燥させることができる。なお、気流発生部は搬送方向と交差する方向に複数のファンが配置されている構成だと、吹き出し口に対向する領域と吹き出し口に対向しない領域とが多くなるので乾燥ムラを生じやすくなる場合がある。しかしながら、送風方向が吹き出し口と画像形成面との対向方向に対して搬送方向から見て傾斜していることで、吹き出し口に対向する領域と吹き出し口に対向しない領域とで風速に大きな違いが生じることを抑制することができ、乾燥ムラを抑制しつつ媒体に吐出されたインクを乾燥させることができる。
【0011】
本発明の第3の態様の印刷装置は、前記第2の態様に従属する態様であって、前記吹き出し口及び前記気流方向決定部は、複数の前記ファンごとに設けられていることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、吹き出し口及び気流方向決定部は複数のファンごとに設けられている。このため、例えば複数のファンごとに気流方向決定部による風向きを調整することや気流方向決定部を交換することなどが可能になる。
【0013】
本発明の第4の態様の印刷装置は、前記第1から第3のいずれか1つの態様に従属する態様であって、前記送風方向は、前記対向方向から見て前記搬送方向における上流側から下流側に傾斜していることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、送風方向は対向方向から見て搬送方向における上流側から下流側に傾斜している。このような構成とすることで、気流が印刷部に向かいインクの吐出位置がずれることや温かい気流が印刷部に向かうことで印刷部周辺の温度上昇を招くことなどを抑制することができる。
【0015】
本発明の第5の態様の印刷装置は、前記第3の態様に従属する態様であって、前記送風方向は、前記対向方向から見て前記搬送方向における上流側から下流側に傾斜し、前記送風方向における上流側の前記気流方向決定部ほど前記搬送方向における上流側に配置されていることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、複数の気流方向決定部を有する構成において、送風方向は対向方向から見て搬送方向における上流側から下流側に向かうように傾斜し、送風方向における上流側の気流方向決定部ほど搬送方向における上流側に配置されている。このような構成とすることで、気流が印刷部に向かいインクの吐出位置がずれることや温かい気流が印刷部に向かうことで印刷部周辺の温度上昇を招くことなどを抑制することができるとともに、隣接する気流方向決定部からの気流と干渉して気流の流れが停滞する部分が生じることを抑制することができる。なお、「送風方向における上流側の気流方向決定部ほど搬送方向における上流側に配置されている」とは、複数の気流方向決定部の全てが徐々に送風方向に上流側にずれて配置されている場合だけでなく、複数の気流方向決定部のうちのいくつかが送風方向においてずれてない配置である場合も含んでいる。
【0017】
本発明の第6の態様の印刷装置は、前記第1から第3のいずれか1つの態様に従属する態様であって、前記媒体として前記搬送方向と交差する幅方向の長さが異なる第1媒体と第2媒体とを使用可能であり、前記第1媒体と前記第2媒体とで前記幅方向における一方側の位置を同じ位置に位置決めして前記媒体を搬送し、前記送風方向は、前記搬送方向から見て前記幅方向における前記一方側から他方側に向かうように傾斜していることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、媒体として幅方向の長さが異なる第1媒体と第2媒体とを使用可能であり、送風方向は搬送方向から見て幅方向における一方側から他方側に向かうように傾斜している。媒体として幅方向の長さが異なる第1媒体と第2媒体とを使用可能な構成においては、これらのうちのいずれかの媒体を使用した場合に、幅方向における媒体の端部が吹き出し口に対向しない領域に位置する場合などにおいて、該端部が気流の影響を受けてめくり上げられやすい。しかしながら、媒体の幅方向の位置が位置決めされる側である一方側から他方側に向かうように気流を生成することで、幅方向の長さが異なる媒体のいずれを使用しても、幅方向における媒体の端部が気流の影響を受けてめくり上げられるということを抑制することができる。
【0019】
本発明の第7の態様の印刷装置は、前記第1から第3のいずれか1つの態様に従属する態様であって、前記画像形成面とは反対側から前記媒体を加熱する媒体加熱部を備えることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、画像形成面とは反対側から媒体を加熱する媒体加熱部を備える。このため、画像形成面とは反対側から媒体を加熱することで、乾燥ムラを抑制しつつ媒体に吐出されたインクを特に効率的に乾燥させることができる。
【0021】
本発明の第8の態様の印刷装置は、前記第1から第3のいずれか1つの態様に従属する態様であって、前記気流を加熱する気流加熱部を備えることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、気流を加熱する気流加熱部を備える。このため、気流を加熱することで、乾燥ムラを抑制しつつ媒体に吐出されたインクを特に効率的に乾燥させることができる。
【0023】
以下、図面を参照して、本発明に係る実施形態を具体的に説明する。最初に、図1を参照して本発明の一実施例に係る印刷装置1の概要について説明する。なお、図1においては、構成を分かり易くするために一部の構成部材を簡略化及び省略して表している。ここで、図中のX軸方向は水平方向であって媒体Mがロール状に巻き重ねられたロール体R1を保持する保持部2の支持部の延びる方向であり、Y軸方向は水平方向であるとともに印刷装置1の前後方向であってX軸方向と直交する方向、Z軸方向は鉛直方向である。また、以下においては、矢印の向く方向を+方向、矢印の向く方向とは反対方向を-方向とする。例えば、鉛直上方向は+Z方向、鉛直下方向は-Z方向、印刷装置1の前方は+Y方向、印刷装置1の後方は-Y方向とする。
【0024】
本実施例の印刷装置1は、本体部9を備えており、本体部9のX軸方向の両端部分には、脚部7が取り付けられている。また、本実施例の印刷装置1は、本体部9の後方側である-Y方向側に媒体Mがロール状に巻き重ねられたロール体R1を保持する保持部2を備えている。保持部2は、ロール体R1から媒体Mを本体部9に送り出す送出部の役割をしている。
【0025】
そして、本実施例の印刷装置1においては、媒体Mを搬送方向Aに搬送する際、X軸方向に沿う回転軸となる保持部2を回転方向Cに回転する。保持部2はロール体R1の巻き芯である紙管に挿入する部材である。なお、図1では画像が形成される画像形成面M1が外側になるように巻かれているロール体R1を使用しているが、画像形成面M1が内側になるように巻かれているロール体R1を使用する場合は、保持部2は回転方向Cとは逆方向に回転してロール体R1から媒体Mを送り出すことが可能である。
【0026】
また、本実施例の印刷装置1は、媒体Mを支持する媒体支持部3などからなる媒体Mの搬送経路を備えている。本実施例の印刷装置1は、媒体支持部3として、搬送方向Aにおける上流側から下流側に向かって、媒体支持部3A、媒体支持部3B及び媒体支持部3Cを備えている。また、印刷装置1は、該搬送経路において媒体Mを搬送方向Aに搬送するための搬送部として、駆動ローラーと従動ローラーとからなるローラー対8を備えている。ただし、搬送部の構成に特に限定はない。
【0027】
また、本実施例の印刷装置1は、媒体支持部3Bと対向する位置に、複数のノズルが設けられ該ノズルからインクを吐出して画像を形成する印刷部としてのヘッド5と、該ヘッド5を搭載して幅方向Bに往復移動可能なキャリッジ4と、を備えている。なお、本実施例の印刷装置1では、媒体支持部3B上のヘッド5と対向する位置における搬送方向Aは+Y方向であり、ヘッド5の移動方向である幅方向BはX軸方向に沿う方向であり、インクの吐出方向は-Z方向である。
【0028】
上記のような構成により、ヘッド5は、搬送方向Aと交差する方向である幅方向Bに往復移動しながら、搬送される媒体Mに不図示のノズルからインクを吐出して画像を形成することが可能である。本実施例の印刷装置1は、所定の搬送量で媒体Mを搬送方向Aに搬送させることと、媒体Mを停止した状態でヘッド5を幅方向Bに移動させながらインクを吐出させることと、を送り返すことで、媒体Mに所望の画像を形成可能である。ただし、このような構成のヘッドの代わりにインクを吐出するノズルがX軸方向全体に亘り設けられる所謂ラインヘッドを備える構成であってもよい。
【0029】
また、媒体支持部3のうちの媒体支持部3Cには、媒体Mの画像形成面M1とは反対側の面M2を加熱するための媒体加熱部としてヒーター21が設けられている。本実施例のヒーター21は電熱線などで構成されるが、このような構成に限定されない。また、媒体支持部3Cだけでなく、媒体支持部3Aや媒体支持部3Bにも媒体Mの画像形成面M1とは反対側の面M2を加熱する媒体加熱部を設けていてもよい。
【0030】
また、搬送経路における媒体支持部3Cと対向する部分には、気流Fを吹き付けることによりヘッド5から媒体Mの画像形成面M1に吐出されたインクを乾燥させる乾燥部10が設けられている。本実施例の乾燥部10は、気流Fを加熱する気流加熱部11を備え、加熱した気体を気流Fとして媒体Mの画像形成面M1に送風することが可能な構成となっているが、このような構成に限定されない。例えば、乾燥部10が、気流加熱部を備えず、常温の気体を気流Fとして媒体Mの画像形成面M1に送風する構成であってもよい。なお、乾燥部10の詳細な構成については後述する。
【0031】
また、搬送方向Aにおける媒体支持部3Cの下流には、搬送方向Aに搬送される媒体Mをロール状に巻き取ってロール体R2とする巻取部としての保持部6が設けられている。なお、本実施例の印刷装置1においては、保持部2と保持部6とは同様の構成をしており、保持部6は回転方向Cに回転する。保持部6はロール体R2の巻き芯である紙管を挿入する部材である。図1では、保持部6が回転方向Cに回転することで画像形成面M1が外側になるように巻かれているが、画像形成面M1が内側になるように媒体Mを巻き取ってもよい。その場合は、保持部6は回転方向Cとは逆方向に回転する。
【0032】
上記のように、本実施例の印刷装置1は、媒体Mを搬送する搬送部としてのローラー対8と、ローラー対8により搬送される媒体Mの画像形成面M1に対してインクを吐出する印刷部としてのヘッド5と、ヘッド5よりも媒体Mの搬送方向Aの下流に配置され、ヘッド5から画像形成面M1に吐出されたインクを乾燥させる乾燥部10と、を備えている。ここで、乾燥部10は本実施例の印刷装置1の要部である。そこで、以下に、図1に加え、図2から図11を参照して、本実施例の印刷装置1の要部である乾燥部10について詳細に説明する。
【0033】
本実施例の乾燥部10は、図2及び図3で表されるようにX軸方向に延設され、図1から図3で表されるように上面10aと底面10bとを有している。そして、図3で表されるように、乾燥部10の底面10bには、気流Fを発生させるファン12と、ファン12と対向する位置に設けられた気流の吹き出し口14と、吹き出し口14に取り付けられたルーバー13と、が設けられている。また、図1で表されるように、媒体支持部3Cは乾燥部10の底面10bと対向する位置の設けられており、媒体支持部3Cも乾燥部10の一部を構成するとみなすことができる。なお、上面10aと底面10bとが対向する方向は、吹き出し口14と、媒体支持部3Cに支持された媒体Mの画像形成面M1と、の対向方向Oに対応する。
【0034】
ここで、上記について別の表現をすると、本実施例の乾燥部10は、媒体Mを支持する支持部である媒体支持部3Cと、気流Fを発生させる気流発生部としてのファン12と、搬送部であるローラー対8により搬送される媒体Mの画像形成面M1と対向する位置に配置される気流の吹き出し口14と、吹き出し口14から吹き出される気流Fの向かう方向である送風方向を決定する気流方向決定部としてのルーバー13と、を有している。
【0035】
なお、本実施例の乾燥部10は、ファン12、吹き出し口14及びルーバー13を各々6つ備えている。各々6つのファン12、吹き出し口14及びルーバー13は、各々同じ形状をしている。ここで、図6及び図7で表されるように、本実施例の乾燥部10は、ルーバー13として、-X方向側から+X方向側に向かってルーバー13A、ルーバー13B、ルーバー13C、ルーバー13D、ルーバー13E及びルーバー13Fを有している。ただし、図3では、ファン12及び吹き出し口14の形状を示すためにルーバー13のうちのルーバー13Fを省略して表している。なお、吹き出し口14の形状は、図示された形状に限定されない。
【0036】
上記のように、ルーバー13は、吹き出し口14から吹き出される気流Fの向かう方向である送風方向を決定するが、気流Fの向かう方向は、吹き出し口14と画像形成面M1との対向方向Oに対して搬送方向Aから見て傾斜している。別の表現をすると、気流Fの向かう方向は、吹き出し口14と画像形成面M1との対向方向Oに対して幅方向Bに傾斜している。ルーバー13は、図4及び図5で表されるように、羽状部13aが開口部13bに複数設けられているが、羽状部13aは、搬送方向Aから見て底面10b側から媒体支持部3C側に行くにつれて+X方向側に配置されるように傾斜している。このため、気流Fは、図6及び図7で表されるように、媒体Mの画像形成面M1において、主に-X方向側から+X方向側に向かう。
【0037】
一般的に、図10及び図11で表されるような気流方向決定部を有さない参考例の印刷装置のように、乾燥部10からの送風方向が吹き出し口14と画像形成面M1との対向方向Oに対して搬送方向Aから見て垂直である構成の場合、吹き出し口14に対向する領域S1と吹き出し口14に対向しない領域S2とで風速に大きな違いが生じ、風速の分布にムラが生じやすい。しかしながら、本実施例の印刷装置1は、上記のように、送風方向を決定するルーバー13を有し、送風方向は吹き出し口14と画像形成面M1との対向方向Oに対して搬送方向Aから見て傾斜している。このような構成とすることで、図6及び図7で表されるように、吹き出し口14に対向する領域S1と吹き出し口14に対向しない領域S2とで風速に大きな違いが生じることを抑制することができる。したがって、本実施例の印刷装置1は、乾燥ムラを抑制しつつ媒体Mに吐出されたインクを乾燥させることができる。
【0038】
また、図11で表されるような気流方向決定部を有さない参考例の印刷装置においては、吹き出し口14に対向しない領域S2において隣接するファン12からの気流Fが媒体支持部3Cの近傍でぶつかり上昇気流FUを生じさせる。上昇気流FUは媒体支持部3Cで支持される媒体Mを持ち上げる虞があり、媒体支持部3Cで媒体Mが持ち上げられると例えば媒体支持部3Cに設けられたヒーター21による乾燥効果が低下する虞がある。一方、本実施例の印刷装置1においては、媒体支持部3Cで媒体Mが持ち上げられることが抑制されるので、ヒーター21による乾燥効果が低下することを抑制することもできる。
【0039】
また、本実施例の印刷装置1は、気流発生部としてのファン12をX軸方向に概ね沿って複数有している。別の表現をすると、本実施例の印刷装置1は、搬送方向Aと交差する方向に複数のファンが配置されている。このため、本実施例の印刷装置1は、複数のファン12で効率よくインクを乾燥させることができる。なお、気流発生部は搬送方向Aと交差する方向に複数のファン12が配置されている構成だと、吹き出し口14に対向する領域S1と吹き出し口14に対向しない領域S2とが多くなるので乾燥ムラを生じやすくなる場合がある。しかしながら、本実施例の印刷装置1は、上記のように、送風方向が吹き出し口14と画像形成面M1との対向方向Oに対して搬送方向Aから見て傾斜していることで、吹き出し口14に対向する領域S1と吹き出し口14に対向しない領域とで風速に大きな違いが生じることを抑制することができ、乾燥ムラを抑制しつつ媒体Mに吐出されたインクを乾燥させることができる。
【0040】
また、本実施例の印刷装置1においては、吹き出し口14及びルーバー13は、複数のファン12ごとに設けられている。このため、例えば必要に応じて複数のファン12ごとにルーバー13による風向きを調整することや、古くなったルーバー13を複数のファン12ごとに交換することなどが可能になっている。
【0041】
また、本実施例の印刷装置1においては、ファン12からの送風方向は、図6に対応する吹き出し口14と画像形成面M1との対向方向Oから見て搬送方向Aにおける上流側から下流側に傾斜している。このような構成とすることで、気流Fがヘッド5に向かいインクの吐出位置がずれることや温かい気流Fがヘッド5に向かうことでヘッド5周辺の温度上昇を招くこと、さらに媒体Mから蒸発したインクの蒸気を含んだ気流Fがヘッド5に向かいインクの蒸気が結露してヘッド5を汚すことなどを抑制することができる。
【0042】
また、図6で表されるように、本実施例の印刷装置1においては、複数のルーバー13は、ルーバー13A、ルーバー13B、ルーバー13C、ルーバー13D、ルーバー13E及びルーバー13Fと向かうにつれて搬送方向Aにおける下流側に設けられている。詳細には、ルーバー13Aよりルーバー13Bは、ルーバー13Bよりルーバー13Cは、それぞれ搬送方向Aにおける下流側に設けられており、ルーバー13C、ルーバー13D、ルーバー13E及びルーバー13Fは、いずれも搬送方向Aと直交する方向であるX軸方向に一直線上に並んで設けられている。なお、複数のルーバー13のうち他のルーバー13と搬送方向Aにおける位置が異なるルーバー13の数や、ルーバー13ごとの位置の差は適宜調整しうる。別の観点から説明すると、本実施例の印刷装置1における送風方向は、図6に対応する吹き出し口14と画像形成面M1との対向方向Oから見て搬送方向Aにおける上流側から下流側に向かうように傾斜し、+X方向に概ね対応する送風方向における上流側のルーバー13ほど搬送方向Aにおける上流側に配置されている。このような構成とすることで、気流Fが隣接するルーバー13からの気流Fと干渉して気流Fの流れが停滞する部分FCが生じることを抑制することができるとともに、気流Fがヘッド5側に向かうことを抑制することができる。なお、気流Fの流れが停滞する部分FCが生じると湿った気体が停滞することで乾燥効率が低下するため、気流Fの流れが停滞する部分FCが発生すると乾燥ムラが生じやすくなる。
【0043】
ここで、図8及び図9は、本実施例の印刷装置1とは異なる実施例の印刷装置の乾燥部10を表しており、詳細には、複数のルーバー13としての、ルーバー13A、ルーバー13B、ルーバー13C、ルーバー13D、ルーバー13E及びルーバー13Fが、いずれも搬送方向Aと直交する方向であるX軸方向に一直線上に並んで設けられている。ここで、図8及び図9の各々のルーバー13の構成は、図4及び図5で表されるルーバー13と同じ構成である。図8及び図9においても、ルーバー13は搬送方向Aから見て底面10b側から媒体支持部3C側に行くにつれて+X方向側に配置されるように傾斜しているが、このような構成のルーバー13であっても一部の気流Fは-X方向側に向かう。
【0044】
図6及び図7においては、一部の気流Fは-X方向側に向かっても送風方向において上流側の隣接するルーバー13からの気流Fが強いので、-X方向側に向かう気流Fは隣接するルーバー13からの気流Fによって+X方向側に向かう。これは、送風方向において上流側の隣接するルーバー13からの気流Fが強い位置に下流側のルーバー13が配置するためである。一方、図8及び図9においては、送風方向において上流側の隣接するルーバー13からの気流Fが強い位置から外れた位置を含む位置に下流側のルーバー13が配置されていることとなる。このため、-X方向側に向かう一部の気流Fは送風方向において上流側の隣接するルーバー13からの気流Fと衝突することとなり、図9で表されるような気流Fの流れが停滞する部分FCが生じることとなる。
【0045】
上記より、送風方向が図6に対応する吹き出し口14と画像形成面M1との対向方向Oから見て搬送方向Aにおける上流側から下流側に傾斜し、+X方向に概ね対応する送風方向における上流側の吹き出し口14ほど搬送方向Aにおける上流側に配置されている構成が好ましい。ただし、図8及び図9で表される構成においても、図10及び図11で表される構成に比べれば、乾燥ムラを抑制しつつ媒体Mに吐出されたインクを乾燥させることができる。
【0046】
また、本実施例の印刷装置1は、媒体Mとして搬送方向Aと交差する幅方向Bの長さが異なる第1媒体と第2媒体とを使用可能である。そして、印刷装置1は、第1媒体と第2媒体とで幅方向Bにおける一方側としての-X方向側の位置を同じ位置に位置決めして媒体Mを搬送する。具体的には、搬送部としてのローラー対8は、第1媒体と第2媒体とで幅方向Bにおける一方側としての-X方向側の位置を同じ位置に位置決めして媒体Mを搬送可能に構成されている。ロール体R1を保持する保持部2が、第1媒体と第2媒体とで幅方向Bにおける一方側としての-X方向側の位置を同じ位置に位置決めしていてもよい。そして、図7で表されるように、送風方向は、搬送方向Aから見て幅方向Bにおける一方側である-X方向側から他方側である+X方向側に向かうように傾斜している。
【0047】
媒体Mとして幅方向Bの長さが異なる第1媒体と第2媒体とを使用可能な構成においては、これらのうちのいずれかの媒体Mを使用した場合に、幅方向Bにおける媒体Mの端部が吹き出し口14に対向しない領域S2に位置する場合などにおいて、該端部が気流Fの影響を受けてめくり上げられやすい。特に、該端部が図11で表されるような上昇気流FUが発生している領域に配置されてしまう場合はめくり上げられやすい。しかしながら、本実施例の印刷装置1は、媒体Mの幅方向Bの位置が位置決めされる側である一方側から他方側に向かうように気流Fを生成する。このような構成とすることで、例えば上昇気流FUの発生を抑制できるので、幅方向Bの長さが異なる媒体Mのいずれを使用しても、幅方向Bにおける媒体Mの端部が気流Fの影響を受けてめくり上げられるということを抑制することができる。なお、「媒体Mとして搬送方向Aと交差する幅方向Bの長さが異なる第1媒体と第2媒体とを使用可能である」ことには、幅方向Bの長さが2種類の媒体Mを使用可能な構成だけでなく、幅方向Bの長さが3種類以上の媒体Mを使用可能な構成も含まれる。
【0048】
また、上記のように、本実施例の印刷装置1は、画像形成面M1とは反対側から媒体Mを加熱する媒体加熱部としてのヒーター21を備えている。このため、本実施例の印刷装置1は、画像形成面M1とは反対側から媒体Mを加熱することで、乾燥ムラを抑制しつつ媒体Mに吐出されたインクを特に効率的に乾燥させることができる。
【0049】
また、上記のように、本実施例の印刷装置1は、気流Fを加熱する気流加熱部11を備えている。このため、本実施例の印刷装置1は、気流Fを加熱することで、乾燥ムラを抑制しつつ媒体Mに吐出されたインクを特に効率的に乾燥させることができる。
【0050】
本発明は、上述の実施例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。また、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1…印刷装置、2…保持部、3…媒体支持部、3A…媒体支持部、3B…媒体支持部、3C…媒体支持部(支持部)、4…キャリッジ、5…ヘッド(印刷部)、6…保持部、7…脚部、8…ローラー対(搬送部)、9…本体部、10…乾燥部、10a…上面、10b…底面、11…気流加熱部、12…ファン(気流発生部)、13…ルーバー(気流方向決定部)、13a…羽状部、13b…開口部、13A…ルーバー、13B…ルーバー、13C…ルーバー、13D…ルーバー、13E…ルーバー、13F…ルーバー、14…吹き出し口、21…ヒーター(媒体加熱部)、F…気流、FC…流れが停滞する部分、FU…上昇気流、M…媒体、M1…画像形成面、M2…面、R1…ロール体、R2…ロール体、S1…領域、S2…領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11