(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111627
(43)【公開日】2024-08-19
(54)【発明の名称】産業車両の制動制御装置
(51)【国際特許分類】
B60L 7/24 20060101AFI20240809BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240809BHJP
B60L 7/14 20060101ALI20240809BHJP
F16D 61/00 20060101ALI20240809BHJP
【FI】
B60L7/24 Z
B60L50/60
B60L7/14
F16D61/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016244
(22)【出願日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100192511
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 晃史
(72)【発明者】
【氏名】各務 弘憲
【テーマコード(参考)】
3J058
5H125
【Fターム(参考)】
3J058AB19
3J058BA67
3J058CC15
3J058CC72
3J058CD24
3J058FA11
5H125AA01
5H125AC12
5H125CB02
5H125CB05
5H125CD04
5H125EE68
(57)【要約】
【課題】部品コスト及び設置スペースを要する専用部品の追加をすることなく、遮断スイッチの操作時に制動部への電力供給が可能となる産業車両の制動制御装置を提供する。
【解決手段】産業車両の制動制御装置100は、バッテリ4とインバータ8との間に設けられ、導通状態と遮断状態とを切り替える主接点5aと、主接点5aを駆動するコイル5dと、を含むコンタクタ5と、コンタクタ5を遮断状態へと切り替えるようにコイル5dへの電力供給を遮断可能な遮断スイッチ6と、コイル5dへの電力供給を検出する電流センサ7と、インバータ8を制御するコントローラ10と、を備える。コントローラ10及び電磁ブレーキ3は、コンタクタ5とインバータ8との間の回路部分9から電力供給され、コントローラ10は、バッテリ4からコイル5dへの電力供給の遮断を検知した場合に、モータ2に回生制動させるようにインバータ8を制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用のモータと、電力供給によって前記モータの制動を解除する制動部と、前記モータの回生制動により生成される回生電力を受け入れ可能な電源部と、前記モータと前記電源部との間の相互の電力供給を行うインバータと、を備える産業車両の前記制動部を制御する産業車両の制動制御装置であって、
前記電源部と前記インバータとの間に設けられ、主接点と前記主接点を駆動するコイルとを含み、前記電源部からの電力供給に応じて前記コイルが前記主接点を駆動して導通状態と遮断状態とを切り替えるスイッチ部と、
前記スイッチ部を前記遮断状態へと切り替えるように前記電源部から前記コイルへの電力供給を遮断可能な遮断スイッチと、
前記電源部から前記コイルへの電力供給を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて前記インバータを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部及び前記制動部は、前記スイッチ部と前記インバータとの間の回路部分から電力供給され、
前記制御部は、前記電源部から前記コイルへの電力供給の遮断を検知した場合に、前記モータに回生制動させるように前記インバータを制御する、産業車両の制動制御装置。
【請求項2】
前記制御部及び前記制動部は、
前記スイッチ部が導通状態である場合には、前記電源部に対して前記モータと並列接続となり、
前記スイッチ部が遮断状態である場合には、前記モータと直列接続となる、請求項1に記載の産業車両の制動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業車両の制動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サーボモータで制動トルクを発生させるために、サーボモータが発電する電流の経路を形成するための回生抵抗を設けたブレーキ制御装置が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
産業車両の技術分野では、走行中の産業車両を緊急時に停止させるための遮断スイッチを操作した際に電磁ブレーキ等の制動部への電力供給が途絶えて急制動が生じ得ることに対する対策が検討されている。しかしながら、上記従来技術には、上記対策を目的とした専用の回生抵抗及び電磁接触器が追加で必要となり、部品コスト及び設置スペースの増大を招くという問題がある。
【0005】
本発明は、部品コスト及び設置スペースを要する専用部品の追加をすることなく、遮断スイッチの操作時に制動部への電力供給が可能となる産業車両の制動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、モータと、電力供給によってモータの制動を解除する制動部と、モータの回生制動により生成される回生電力を受け入れ可能な電源部と、モータと電源部との間の相互の電力供給を行うインバータと、を備える産業車両の制動部を制御する産業車両の制動制御装置である。産業車両の制動制御装置は、電源部とインバータとの間に設けられ、主接点と主接点を駆動するコイルとを含み、電源部からの電力供給に応じてコイルが主接点を駆動して導通状態と遮断状態とを切り替えるスイッチ部と、スイッチ部を遮断状態へと切り替えるように電源部からコイルへの電力供給を遮断可能な遮断スイッチと、電源部からコイルへの電力供給を検出する検出部と、検出部の検出結果に基づいてインバータを制御する制御部と、を備える。制御部及び制動部は、スイッチ部とインバータとの間の回路部分から電力供給され、制御部は、電源部からコイルへの電力供給の遮断を検知した場合に、モータに回生制動させるようにインバータを制御する。
【0007】
本発明の一態様に係る産業車両の制動制御装置では、遮断スイッチが操作されて電源部からコイルへの電力供給が遮断されると、スイッチ部が遮断状態となる。検出部の検出結果に基づいて、電源部からコイルへの電力供給の遮断が検知されると、制御部によってモータに回生制動させるようにインバータが制御される。このとき、スイッチ部が導通状態から遮断状態に切り替えられているため、モータからの回生電力は、スイッチ部とインバータとの間の回路部分から制御部及び制動部に供給される。したがって、部品コスト及び設置スペースを要する専用部品の追加をすることなく、遮断スイッチの操作時に制動部への電力供給が可能となる。
【0008】
一実施形態において、制御部及び制動部は、スイッチ部が導通状態である場合には、電源部に対してモータと並列接続となり、スイッチ部が遮断状態である場合には、モータと直列接続となってもよい。この場合、スイッチ部が導通状態であるか遮断状態であるかの切り替わりを利用して、回路構成を切り替えることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、部品コスト及び設置スペースを要する専用部品の追加をすることなく、遮断スイッチの操作時に制動部への電力供給が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る産業車両の制動制御装置においてスイッチ部が導通状態である場合の回路構成を例示する概略ブロック図である。
【
図2】一実施形態に係る産業車両の制動制御装置においてスイッチ部が遮断状態である場合の回路構成を例示する概略ブロック図である。
【
図3】コントローラの処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0012】
図1は、一実施形態に係る産業車両の制動制御装置においてスイッチ部が導通状態である場合の回路構成を例示する概略ブロック図である。本実施形態に係る産業車両の制動制御装置100は、産業車両1の電磁ブレーキ(制動部)3を制御する制御装置である。産業車両の制動制御装置100が搭載される産業車両1としては、例えば、電動フォークリフトが挙げられる。
【0013】
図1に示されるように、産業車両1及び産業車両の制動制御装置100は、モータ2、電磁ブレーキ3、バッテリ(電源部)4、コンタクタ(スイッチ部)5、遮断スイッチ6、電流センサ(検出部)7、インバータ8、回路部分9、コントローラ(制御部)10、及びアクセルペダル11を備えている。
【0014】
モータ2は、産業車両1の走行用のモータジェネレータである。モータ2は、例えば、三相交流回転電動機である。モータ2は、バッテリ4からの電力供給に応じて駆動力を発生させる。モータ2は、産業車両1の回生制動時には駆動輪の回転に応じて発電し、回生電力を生成する。産業車両1は、モータ2によって発生した駆動力が駆動輪に伝達するように構成されている。
【0015】
電磁ブレーキ3は、例えば、産業車両1の駐車時等にパーキングブレーキとして用いられる制動装置である。電磁ブレーキ3は、走行用のモータジェネレータであるモータ2を制動可能に設けられている。電磁ブレーキ3は、電力供給によってモータ2の制動を解除する。電磁ブレーキ3は、電力が供給されなくなると、モータ2を制動する。そのため、例えば産業車両1の走行中に電磁ブレーキ3に電力が供給されなくなると、産業車両1が急制動され得る。
【0016】
バッテリ4は、直流電力を出力する電源である。バッテリ4は、直流電力の入力により充電され得る。バッテリ4は、モータ2の回生制動により生成される回生電力を受け入れ可能である。バッテリ4としては、例えば、鉛蓄電池、リチウムイオン電池等の二次電池が用いられる。バッテリ4の正極4aは、コンタクタ5の主接点5aの一端5bと、遮断スイッチ6の一端6aと、に接続されている。
【0017】
コンタクタ5は、バッテリ4とインバータ8との間に設けられたスイッチ部である。コンタクタ5は、例えば、産業車両1のメインスイッチ(例えばキースイッチ)の操作に応じて、主電源としてのバッテリ4の電気的な接続及び遮断を切り替える。コンタクタ5は、主接点5aと、主接点5aを駆動するコイル5dと、を含んで構成されている。コンタクタ5は、バッテリ4からコイル5dへの電力供給に応じて、コンタクタ5の導通状態と遮断状態とを切り替える。導通状態は、主接点5aが閉じることでバッテリ4とインバータ8とが電気的に接続された状態である。遮断状態は、主接点5aが開くことでバッテリ4とインバータ8とが電気的に遮断された状態である。
【0018】
主接点5aは、主電源としてのバッテリ4の電気的な接続及び遮断を切り替えるための可動の接点である。主接点5aの一端5bは、バッテリ4の正極4aに接続されている。主接点5aの他端5cは、コンタクタ5とインバータ8との間の回路部分9の第一端9aに接続されている。
【0019】
回路部分9は、産業車両の制動制御装置100を構成する回路の一部分であり、コンタクタ5とインバータ8とコントローラ10とを接続する。
図1の例では、回路部分9は、第一端9aから第二端9bまで延びる配線9cと、配線9cから分岐すると共に第三端9dまで延びる配線9eと、を有する。
【0020】
コイル5dは、バッテリ4からの電力供給に応じて励磁又は消磁され、コンタクタ5の主接点5aを開閉するように駆動する。コイル5dの一端5eは、遮断スイッチ6の他端6bに接続されている。コイル5dの一端5eと遮断スイッチ6の他端6bとの間の一部分は、コントローラ10の内部を通過する態様であってもよい。コイル5dの他端5fは、バッテリ4の負極4b側(例えば産業車両1の車体アース部)に接続されている。コイル5dの他端5fとバッテリ4の負極4b側との間の一部分は、コントローラ10の内部を通過する態様であってもよい。
【0021】
遮断スイッチ6は、走行中の産業車両1を緊急時に停止させるために操作される。遮断スイッチ6は、例えば緊急停止ボタンである。遮断スイッチ6は、例えば、産業車両1の運転席において運転者が操作可能な位置に設置されている。遮断スイッチ6は、バッテリ4とコイル5dの一端5eとの間に設けられている。遮断スイッチ6は、操作されていない状態でバッテリ4とコイル5dとを電気的に接続する。遮断スイッチ6は、操作された状態で、バッテリ4とコイル5dとを電気的に遮断する。すなわち、遮断スイッチ6は、操作されることで、コンタクタ5を遮断状態へと切り替えるようにバッテリ4からコイル5dへの電力供給を遮断可能である。
【0022】
上述のような構成によれば、コンタクタ5では、遮断スイッチ6が操作されていない場合、コイル5dにバッテリ4から電力が供給されるため、コイル5dによって主接点5aが閉じるように駆動される。よって、コンタクタ5は、遮断スイッチ6が操作されていない場合に、バッテリ4とインバータ8とを電気的に接続する導通状態となる。一方、コンタクタ5では、遮断スイッチ6が操作された場合、バッテリ4からコイル5dへの電力が遮断されるため、コイル5dによって駆動されなくなった主接点5aが開く。よって、コンタクタ5は、遮断スイッチ6が操作された場合に、バッテリ4とインバータ8とを電気的に遮断する遮断状態となる。
【0023】
コイル5dの一端5eと遮断スイッチ6の他端6bとの間には、電流センサ7が設けられている。電流センサ7は、バッテリ4からコイル5dへの電力供給を検出する検出部である。電流センサ7は、例えば、コイル5dの一端5eと遮断スイッチ6の他端6bとの間においてコントローラ10の内部を通過する部分に設けられている。電流センサ7は、バッテリ4からコイル5dへ流れる電流を検出し、検出した電流情報をコントローラ10に送信する。
【0024】
インバータ8は、モータ2とバッテリ4との間の相互の電力の変換及び供給を行う。インバータ8は、バッテリ4からの直流電力をモータ2に供給する交流電力に変換する。インバータ8は、例えばIGBT等を含んで構成された公知の三相インバータである。インバータ8の直流側の正極8aは、回路部分9の配線9cの第二端9bに接続されている。インバータ8の直流側の負極8bは、バッテリ4の負極4b側(例えば車体アース部)に接続されている。インバータ8の交流側の端子8cは、モータ2に接続されている。なお、
図1及び
図2の破線L1~破線L14は、電流の流れを示しており、矢印の先端に向かって電流が流れることを意味している。
図1の破線L1に示されるように、インバータ8には、遮断スイッチ6が操作されていない場合に、バッテリ4からコンタクタ5を介して直流電力が供給される。
図1の破線L2に示されるように、インバータ8は、供給された直流電力を交流電力に変換してモータ2に出力する。この場合、モータ2からバッテリ4までの経路は、
図1の破線L3~破線L5に示される経路となり、閉回路が形成される。
【0025】
なお、コンタクタ5とインバータ8との間(例えば配線9c上)には、DC/DCコンバータが介在していてもよい。DC/DCコンバータは、例えば、バッテリ4からインバータ8への直流電力の電圧を昇圧する。この場合、インバータ8は、DC/DCコンバータからの直流電力を交流電力に変換する。
【0026】
インバータ8は、モータ2からの回生電力を直流電力に変換する。インバータ8は、遮断スイッチ6が操作されていない場合に、モータ2からの回生電力を直流電力に変換し、変換した直流電力を回路部分9の配線9c及びコンタクタ5を介してバッテリ4に出力する。この場合、
図1の破線L1~破線L5とは反対の向きに電流が流れるように閉回路が形成される。
【0027】
コントローラ10は、産業車両1の電磁ブレーキ3を制御する電子制御ユニットである。コントローラ10は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]、CAN[Controller Area Network]通信回路等を有する。コントローラ10では、例えば、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。コントローラ10は、複数の電子制御ユニットから構成されていてもよい。
【0028】
コントローラ10は、アクセルペダル11の操作量の検出結果に基づいてインバータ8を制御してもよい。アクセルペダル11は、操作量を検出するセンサを含んでいてもよい。コントローラ10は、例えば、遮断スイッチ6が操作されていない場合、アクセルペダル11の操作量に応じて、交流電力をモータ2に出力するようにインバータ8を制御する。
【0029】
コントローラ10の電源端子の正極10aは、回路部分9の配線9eの第三端9dに接続されている。コントローラ10の電源端子の負極10bは、バッテリ4の負極4b側(例えば車体アース部)に接続されている。コントローラ10は、
図1の破線L6に示されるように、回路部分9の配線9eから正極10aに電力が供給されることにより作動する。コントローラ10の出力端子10cは、電磁ブレーキ3に接続されている。
図1の破線L7,破線L8に示されるように、コントローラ10は、正極10aに供給された電力の一部を電磁ブレーキ3に供給することができる。
【0030】
図2は、一実施形態に係る産業車両の制動制御装置においてスイッチ部が遮断状態である場合の回路構成を例示する概略ブロック図である。
図2には、遮断スイッチ6が操作されており、コンタクタ5が遮断状態へと切り替えられている状態の回路構成が例示されている。
【0031】
コントローラ10は、電流センサ7の検出結果に基づいて、バッテリ4からコイル5dへの電力供給の遮断を検知する。コントローラ10は、例えば、電流センサ7によって検出された電流情報に基づいて、遮断スイッチ6が操作されたことによりバッテリ4からコイル5dへ電流が流れなくなったことを検出した場合、バッテリ4からコイル5dへの電力供給の遮断を検知する。コントローラ10は、例えば、バッテリ4からコイル5dへの電流値が所定の遮断閾値以下となった場合に、バッテリ4からコイル5dへの電力供給の遮断を検知する。遮断閾値は、例えば0Aであってもよいし、0Aよりもわずかに大きい電流値であってもよい。
【0032】
コントローラ10は、バッテリ4からコイル5dへの電力供給の遮断を検知した場合に、モータ2に回生制動させるようにインバータ8を制御する。コントローラ10は、遮断スイッチ6が操作されたことによりバッテリ4からコイル5dへの電力供給の遮断を検知した場合、モータ2の回生電力が所定の遮断時回生電力以上となるようにインバータ8を制御してもよい。遮断時回生電力は、遮断スイッチ6が操作された場合にモータ2に生じさせる回生電力である。遮断時回生電力は、コントローラ10及び電磁ブレーキ3の作動に要する電力よりも所定の余裕分だけ大きい電力の大きさとすることができる。所定の余裕分は、例えば回生電力の変動等が生じたとしても、コントローラ10及び電磁ブレーキ3の作動が途中で止まってしまわない程度の電力の余裕代である。
【0033】
ちなみに、遮断スイッチ6が操作された場合、主接点5aが開いてコンタクタ5が遮断状態となるまでに、わずかな時間が存在する。このわずかな時間では、バッテリ4からコントローラ10への電力供給が継続している。そのため、このわずかな時間のうちに、コントローラ10は、モータ2に回生制動させるようにインバータ8を制御する制御信号を送信する。厳密には、コントローラ10とインバータ8との間のCAN通信回路の通信周期を考慮してもよい。例えば、コントローラ10は、バッテリ4からコイル5dへの電力供給の遮断を検知した場合に、CAN通信回路の通信周期に対して非同期に(次の通信周期まで待たずに)、モータ2に回生制動させるようにインバータ8を制御する制御信号を送信してもよい。コントローラ10は、バッテリ4からコイル5dへの電力供給の遮断を検知した場合に、当該電力供給の遮断を検知していない場合と比べて短い通信周期に変更して、モータ2に回生制動させるようにインバータ8を制御する制御信号を送信してもよい。或いは、コントローラ10に含まれるコンデンサ等の蓄電素子を大きくすることで、コンタクタ5が遮断状態となってからの所定時間、インバータ8に制御信号を送信できるようにしてもよい。
【0034】
インバータ8は、バッテリ4からコイル5dへの電力供給の遮断が検知された場合、コントローラ10からの制御信号に応じてモータ2からの回生電力を直流電力に変換する。インバータ8が直流電力に変換した回生電力は、ここでは遮断スイッチ6が操作されておりコンタクタ5が遮断状態へと切り替えられているため、
図2の破線L9~破線L11に示されるように、コンタクタ5を通らず、回路部分9の配線9eからコントローラ10及び電磁ブレーキ3に供給される。具体的には、
図2の破線L9に示されるように、モータ2からの回生電力がインバータ8に供給され、インバータ8で直流電力に変換される。遮断スイッチ6が操作されているため、インバータ8からの直流電力は、
図2の破線L10に示されるように、コンタクタ5を通らず、インバータ8の直流側の正極8aから回路部分9の配線9eを通ってコントローラ10の正極10aに供給される。
図2の破線L11,破線L12に示されるように、コントローラ10に供給された直流電力の一部が電磁ブレーキ3に供給される。遮断スイッチ6が操作されていることでバッテリ4側に閉回路が形成されないため、電磁ブレーキ3から戻る直流電力は、
図2の破線L13に示されるように、バッテリ4の負極4bを通らず、コントローラ10の負極10bからインバータ8の直流側の負極8bに戻る。インバータ8で変換された電力は、
図2の破線L14に示されるように、インバータ8の交流側の端子8cからモータ2に戻る。このようにして、遮断スイッチ6が操作された場合、
図2の破線L9~破線L14で示されるように、モータ2、インバータ8、コントローラ10、及び電磁ブレーキ3が直列接続となる閉回路が形成されることとなる。
【0035】
図3は、コントローラの処理の一例を示すフローチャートである。
図3に示されるフローチャートの処理は、例えば、産業車両1の走行中に所定の演算周期ごとに繰り返し実行される。
【0036】
S10において、産業車両の制動制御装置100のコントローラ10は、検出部である電流センサ7の検出結果の取得を行う。コントローラ10は、例えば、電流センサ7によって検出されたバッテリ4からコイル5dへ流れる電流の電流情報を電流センサ7から受信する。
【0037】
S11において、コントローラ10は、バッテリ4からコイル5dへの電力供給の遮断を検知したか否かの判定を行う。コントローラ10は、例えば、遮断スイッチ6が操作されたことによりバッテリ4からコイル5dへ電流が流れなくなったことを検出した場合、バッテリ4からコイル5dへの電力供給の遮断を検知する。
【0038】
コントローラ10がバッテリ4からコイル5dへの電力供給の遮断を検知しない場合(S11:NO)、コントローラ10は、S12において、アクセルペダル11の操作量に応じたインバータ8の制御を行う。コントローラ10は、例えば、アクセルペダル11の操作量に応じて、交流電力をモータ2に出力するようにインバータ8を制御する。その後、コントローラ10は、
図3の処理を終了する。
【0039】
一方、コントローラ10がバッテリ4からコイル5dへの電力供給の遮断を検知した場合(S11:YES)、コントローラ10は、S13において、モータ2に回生制動させるようにインバータ8の制御を行う。コントローラ10は、例えば、モータ2の回生電力が所定の遮断時回生電力以上となるようにインバータ8を制御する。その後、コントローラ10は、
図3の処理を終了する。
【0040】
以上のように構成された産業車両の制動制御装置100によれば、遮断スイッチ6が操作されてバッテリ4からコイル5dへの電力供給が遮断されると、コンタクタ5が遮断状態となる。電流センサ7の検出結果に基づいて、バッテリ4からコイル5dへの電力供給の遮断が検知されると、コントローラ10によってモータ2に回生制動させるようにインバータ8が制御される。このとき、コンタクタ5が導通状態から遮断状態に切り替えられているため、モータ2からの回生電力は、コンタクタ5とインバータ8との間の回路部分9の配線9eからコントローラ10及び電磁ブレーキ3に供給される(破線L9,破線L10,破線L11)。産業車両1は、モータ2の回生制動により減速して停車に至る。産業車両1が停車に至るまで、モータ2からの回生電力をコントローラ10及び電磁ブレーキ3に供給することができる。したがって、部品コスト及び設置スペースを要する専用部品の追加をすることなく、遮断スイッチの操作時に制動部への電力供給が可能となる。なお、専用部品としての回生抵抗の追加を省けるため、回生抵抗で電力が消費されて効率が悪化しなくて済む。
【0041】
産業車両の制動制御装置100では、コンタクタ5が導通状態である場合には、コントローラ10及び電磁ブレーキ3は、バッテリ4に対してモータ2と並列接続となり、コンタクタ5が遮断状態である場合には、コントローラ10及び電磁ブレーキ3は、モータ2と直列接続となっている。具体的には、コンタクタ5が導通状態である場合には、
図1の破線L1及び破線L6で示されるように、バッテリ4からの電力は、回路部分9で配線9cと配線9eとに分岐して、コントローラ10及び電磁ブレーキ3と、モータ2と、のそれぞれに流れる。モータ2及び電磁ブレーキ3からの電流は、
図1の破線L3,破線L4及び破線L8のそれぞれから破線L5に合流する経路でバッテリ4に戻る。すなわち、コントローラ10及び電磁ブレーキ3は、コンタクタ5が導通状態である場合には、バッテリ4に対してモータ2と並列接続となり、コンタクタ5とインバータ8との間の回路部分9から電力供給される。一方、
図2に示されるように、コンタクタ5が遮断状態である場合には、
図2の破線L9~破線L11で示されるように、モータ2からの回生電力は、コンタクタ5を通らなくなる代わりに、コントローラ10及び電磁ブレーキ3に向かうように回路部分9の配線9eを通ることができる。電磁ブレーキ3から戻る直流電力は、
図2の破線L13に示されるように、バッテリ4の負極4bを通らず、コントローラ10の負極10bからインバータ8の直流側の負極8bに戻る。インバータ8で変換された電力は、
図2の破線L14に示されるように、インバータ8の交流側の端子8cからモータ2に戻る。すなわち、
図2の破線L9~破線L14で示されるように、モータ2、インバータ8、コントローラ10、及び電磁ブレーキ3が直列接続となる閉回路が形成される。このように、コンタクタ5が導通状態であるか遮断状態であるかの切り替わりを利用して、回路構成を切り替えることができる。
【0042】
[変形例]
本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。
【0043】
例えば、上記実施形態では、コントローラ10及び電磁ブレーキ3は、コンタクタ5が導通状態である場合には、バッテリ4に対してモータ2と並列接続となり、コンタクタ5が遮断状態である場合には、モータ2と直列接続となっていたが、このような回路構成に限定されない。要は、コンタクタ5が遮断状態である場合に、モータ2からの回生電力が、コンタクタ5とインバータ8との間の回路部分9からコントローラ10及び電磁ブレーキ3に供給される回路構成であればよい。
【0044】
上記実施形態では、電源部の一例として、鉛蓄電池、リチウムイオン電池等の二次電池であるバッテリ4を示したが、この例に限定されない。電源部は、例えば、電気二重層キャパシタ等であってもよい。電源部は、燃料電池を含んでもよい。電源部は、外部電源と蓄電池との組み合わせであってもよい。外部電源は、直流電源であってもよいし、AC/DCコンバータを介在させることで交流電源を用いてもよい。
【0045】
上記実施形態では、制動部の一例として電磁ブレーキ3を示したが、この例に限定されない。要は、電力供給によってモータ2の制動を解除できればよく、例えば、パーキングブレーキとして用いられる電磁ブレーキ3とは異なる別の制動装置であってもよい。
【0046】
上記実施形態では、バッテリ4からコイル5dへの電力供給を検出する検出部の一例として電流センサ7を示したが、この例に限定されない。例えば、検出部は、バッテリ4の正極4aとコイル5dの一端5eとの電位差を検出する電圧センサであってもよい。また、検出部は、必ずしも、電流センサ7のように、コイル5dの一端5eと遮断スイッチ6の他端6bとの間においてコントローラ10の内部を通過する部分に設けられていなくてもよい。
【0047】
上記実施形態では、スイッチ部の一例としてコンタクタ5(電磁接触器)を示したが、この例に限定されない。例えば、コンタクタ5にサーマルリレーを組み合わせた電磁開閉器(マグネットスイッチ)であってもよい。
【0048】
上記実施形態では、産業車両の制動制御装置100が搭載される産業車両1として、電動フォークリフトを示したが、この例に限定されない。例えば、産業車両は、牽引車、搬送車等の他の産業車両であってもよい。電源部を電源とするモータを含み、電力供給によってモータの制動を解除できる制動部を含む産業車両であればよく、エンジンを併用可能な構成であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…産業車両、2…モータ、3…電磁ブレーキ(制動部)、4…バッテリ(電源部)、5…コンタクタ(スイッチ部)、5a…主接点、5d…コイル、6…遮断スイッチ、7…電流センサ(検出部)、8…インバータ、9…回路部分、10…コントローラ(制御部)、100…産業車両の制動制御装置。